説明

筆記具用軸筒

【課題】軸筒の緩みを防止する。
【解決手段】軸筒1は、筒状の前軸10と、ねじ部11,21を介して前軸10の後端部に螺合される後軸20と、前軸10の外周面に装着されるグリップ部30とを備える。グリップ部30は、径方向内側に突出する突出部33を後端部に有し、突出部33は、前軸10と後軸20との間に、軸方向に圧縮力が付与された状態で挟設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールペンやシャープペン等の筆記具に用いられる筆記具用軸筒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、前軸と、前軸の後端部に螺合される後軸と、前軸の外周面に一体に装着される弾性体からなるグリップ部とを有する軸筒が知られている(例えば特許文献1参照)。この特許文献1記載の軸筒では、前軸の外周面に凹部を形成し、凹部に二色成形によってグリップ部を装着するとともに、凹部に連なって前軸の外周面にリング状の突起部を形成し、軸筒の組立状態において、突起部の後端面に後軸の前端面を当接させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−82809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1記載の軸筒では、組立状態において突起部の後端面と後軸の前端面とが互いに当接するため、筆記具として軸筒を使用している際に後軸の緩みが生じやすい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、筒状の第1の軸体と、第1の軸体の軸方向一端部に着脱可能に取り付けられる筒状の第2の軸体と、第1の軸体の外周面に装着されるグリップ部と、を備えた筆記具用軸筒であって、グリップ部は、内径方向に突出する突出部を軸方向一端部に有し、突出部は、第1の軸体と第2の軸体との間に、軸方向に圧縮力が付与された状態で挟設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、グリップ部の軸方向一端部に径方向内側に突出する突出部を設け、第1の軸体と第2の軸体との間に、軸方向に圧縮力が付与された状態で突出部を挟設するようにしたので、第2の軸体の取付部に突出部からの反発力が作用し、第2の軸体の緩みを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施の形態に係る軸筒が適用される筆記具の軸線に沿った断面図。
【図2】図1の軸筒の断面図。
【図3】(a)は図2の要部拡大図であり、(b)は図2のIII-III断面図。
【図4】グリップ部の要部寸法LおよびΔdを示す図。
【図5】図3(a)の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図1〜図5を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の実施形態にかかる軸筒が適用される筆記具100の軸線L0に沿った断面図であり、一例としてノック式ボールペンを示している。なお、説明の便宜上、以下では、図示のように前後方向を定義し、この定義に従い各部の構成を説明する。
【0009】
図1の筆記具100は、軸線L0に沿って前後方向に延在する軸筒1と、軸筒1の内部に配置されたレフィル2と、軸筒1の後端部に設けられたノック部3とを有する。レフィル2は、筆記具用インキを収容したインキ収容管の前端部にボールペンチップを装着して構成され、ばね4によって後方に付勢されている。ノック部3は、不図示のクリップを一体に有し、ばね4の付勢力に抗してノック部3を押圧操作することで、レフィル2が軸筒1の内部を前後方向に移動し、レフィル2の先端を軸筒1の前端部から進退させることができる。
【0010】
図2は、軸筒1の断面図である。図2に示すように、軸筒1は、筒状の前軸10および後軸20と、前軸10の外周面に装着されるグリップ部30とを有する。前軸10の後端部外周面および後軸20の前端部内周面には、それぞれねじ部11,21が設けられ、ねじ部11,21を介して前軸10の後端部に後軸20が螺合されている。このため、後軸20は前軸10に着脱可能であり、前軸10から後軸20を取り外すことで、軸筒内部のレフィル2を容易に交換することができる。
【0011】
グリップ部30は、二色成形によって前軸10の外周面に装着されている。すなわち、一次成形品である前軸10の外周面を被覆するように、二次成形品であるグリップ部30が前軸10に一体に融着されている。前軸10は、例えばポリプロピレンやポリカーボネート等の硬質の樹脂材によって構成され、後軸20も、前軸10と同一の樹脂材によって構成されている。なお、後軸20を前軸10とは別の材料によって構成することもできる。グリップ部30は、例えば熱可塑性エラストマー等の軟質の樹脂材によって構成され、グリップ部30の弾性係数は、前軸10および後軸20の弾性係数よりも小さい。
【0012】
図3(a)は、図2の要部拡大図(後軸20の前端部近傍における拡大図)であり、図3(b)は、図2のIII−III線断面図である。図3(a),(b)に示すように、前軸10は、グリップ部30の後端部近傍において、その外周面が全周にわたって膨出し、フランジ部12が形成されている。フランジ部12は、径方向外側に向けて斜めに形成されたテーパ面12aと、テーパ面12aの後方に連なり、軸線L0(図1)に平行に形成された円筒面12bと、円筒面12bの後方に連なり、軸線L0に垂直に形成された垂直面12cとを有する。垂直面12cの後方には、外周面が段差なく軸線に平行であるストレート部13が連設され、ストレート部13の後方にねじ部11が設けられている。
【0013】
グリップ部30の後端部は、フランジ部12のテーパ面12a、円筒面12bおよび垂直面12cの全体を覆うように形成されている。すなわち、グリップ部30は、テーパ面12aを覆うテーパ部31と、円筒面12bを覆う薄肉部32と、垂直面12cを覆う突出部33とを有する。突出部33は、グリップ部の全周にわたって均等に設けられ、その内周面は、前軸10のストレート部13の外周面に接触している。突出部33の前端面は、軸線L0に対して垂直に形成され、この前端面によりフランジ面34が形成されている。グリップ部30の外周面は、前後方向に段差なく滑らかに形成されている。
【0014】
後軸20の前端部には、内周面が段差なく軸線に平行であるストレート部23が設けられ、ストレート部23の後方にねじ部21が設けられている。ストレート部23の内径は、前軸10の円筒面12bの径よりも小さく、ストレート部23の前後方向長さは、前軸10のストレート部13の前後方向長さとほぼ等しい。後軸20の前端面は、軸線L0に対して垂直に形成され、この前端面により突き当て面24が形成されている。後軸20の外周面は、前後方向に段差なく滑らかに形成され、後軸20の外径はグリップ部30の外径とほぼ等しい。
【0015】
以上のように構成された軸筒1は、後軸20の突き当て面24がグリップ部30のフランジ面34に当接するまで、前軸10の後端部に後軸20がねじ込まれる。このねじ込み力によって、組立状態においてグリップ部30の突出部33が軸方向に圧縮され、突出部33から後軸20に反発力が付与される。これにより、ねじ部11,21同士の軸方向の接触力が増大し、後軸20の緩みを防止することができる。
【0016】
上述したように突出部33を介して後軸20をねじ込む場合、突出部33の軸方向の長さL(図4参照)が長すぎると、突出部33の変形量が大きくなり、軸筒1の軸方向および径方向の寸法が大きく変化する。これを避けるため、長さLは、例えば0mmより大きく10mm以下の範囲で定めることが好ましい。なお、厳密には、長さLは、グリップ部30や後軸20の材質、形状、大きさ等に応じて適宜最適値が選定されるものであり、10mmを超える場合もありうる。
【0017】
また、後軸20のストレート部23の内径が前軸10のフランジ部12(円筒面12b)の外径よりも小さければ、突出部33に軸方向の圧縮力が作用し、後軸20の緩み止めの効果が得られるが、前軸10や後軸20の成形時の誤差等を考慮して、内外径の差Δdは例えば0.2mm以上0.5mm以下の範囲で定めることが好ましい。なお、Δdは、厳密には、材質や形状に応じて適宜最適値が選定されるものであり、0.2mmより小さい場合や、0.5mmより大きい場合もありうる。
【0018】
本実施の形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)グリップ部30の後端部に係方向内側に突出する突出部33を設け、この突出部30を軸方向に挟んで前軸10に後軸20を螺合するようにした。これにより、ねじ部11,21に突出部33からの反発力が作用してねじ部11,21同士の接触力が増大し、後軸20の緩みを防止することができる。
【0019】
(2)前軸10の外周面にフランジ部12を突設するので、フランジ部12の後端の垂直面12cにより、後軸20のねじ込み時の突出部33の圧縮量が制限され、軸筒1の軸方向および径方向の寸法を精度よく設計値に保つことができる。
(3)フランジ部12をグリップ部30により被覆し、グリップ部30の後端部において前軸10を表面に露出させないようにしたので、軸筒1のデザイン性も向上する。
【0020】
(4)二色成形によってグリップ部30を前軸10の外周面に一体に装着するので、グリップ部30がフランジ部12の全体を覆うように容易に構成することができる。
(5)突出部33をグリップ部30の全周にわたって設けるようにしたので、ねじ部11,21の全周にわたり突出部33からの反発力が均等に作用し、後軸20の緩み止めの効果を良好に発揮することができる。
(6)グリップ部30の後端部にテーパ部31を設け、薄肉部32にかけて徐々に肉厚を薄くするようにしたので、成形性も容易である。
【0021】
なお、上記実施の形態では、グリップ部30の全周にわたって突出部33を設けるようにしたが、突出部33の構成はこれに限らない。図5は、図3(b)の変形例を示す図である。図5では、周方向に等間隔に2個の突出部33が設けられている。このように複数の突出部33を周方向に離間して設けることで、薄肉形状の突出部33の成形性を高めることができる。なお、突出部33の個数は3個以上であってもよい。
【0022】
突出部33の内周面に周方向全体にわたり半円状の切り欠きを形成し、突出部33を花びら形状のように構成してもよい。薄肉部32から突出部33にかけてグリップ部30を断面略L字状に形成したが(図3(a)参照)、グリップ部30の形状はこれに限らない。例えばフランジ面34を軸線L0に対して垂直に形成するのではなく、傾斜して形成あるいは円弧状に形成してもよい。
【0023】
上記実施の形態では、二色成形によってグリップ部30を前軸10の外周面に一体に装着するようにしたが、例えばグリップ部30と前軸10を別々に成形した後、治具等を用いてグリップ部30の内側に前軸10を押し込みながら挿入し、前軸10の外周面にグリップ部30を装着するようにしてもよい。
【0024】
上記実施の形態では、前軸10の後端部および後軸20の前端部にそれぞれねじ部11,21を設けて前軸10に後軸20を螺合するようにしたが、前軸10と後軸20の間に突出部33を挟設して、突出部33に圧縮力を付与するのであれば、後軸20の取り付け構造は上述したものに限らない。例えば前軸10の外周面および後軸20の内周面のいずれか一方に係合部を設けるとともに、いずれか他方に被係合部を設け、前軸10に後軸20を押し込んで、係合部を被係合部に係合するようにしてもよい。
【0025】
上記実施の形態では、前軸10と後軸20の間に、グリップ部30の突出部33を軸方向に挟設するようにしたが、例えば前軸10の前端部に口金を着脱可能に取り付けて軸筒1を構成する場合には、グリップ部30の前端部に上述したのと同様に突出部を設け、この突出部を口金と前軸10の間に挟設するようにしてもよい。すなわち、前軸10を第1の軸体として構成するとき、第2の軸体は後軸20に限らず、口金であってもよい。
【0026】
以上では、ノック式ボールペンに軸筒を適用する場合について説明したが、本発明の軸筒は、シャープペン等、他の筆記具の軸筒にも同様に適用することができる。すなわち、本発明の特徴、機能を実現できる限り、本発明は実施の形態の筆記具用軸筒に限定されない。
【符号の説明】
【0027】
1 軸筒
10 前軸
11 ねじ部
20 後軸
21 ねじ部
30 グリップ部
33 突出部
100 筆記具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の第1の軸体と、
前記第1の軸体の軸方向一端部に着脱可能に取り付けられる筒状の第2の軸体と、
前記第1の軸体の外周面に装着されるグリップ部と、を備えた筆記具用軸筒であって、
前記グリップ部は、径方向内側に突出する突出部を軸方向一端部に有し、
前記突出部は、前記第1の軸体と前記第2の軸体との間に、軸方向に圧縮力が付与された状態で挟設されていることを特徴とする筆記具用軸筒。
【請求項2】
請求項1に記載の筆記具用軸筒において、
前記第2の軸体は、前記第1の軸体に螺合されていることを特徴とする筆記具用軸筒。
【請求項3】
請求項1または2に記載の筆記具用軸筒において、
前記グリップ部は、二色成形によって前記第1の軸体の外周面に装着されていることを特徴とする筆記具用軸筒。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の筆記具用軸筒において、
前記突出部は、前記グリップ部の軸方向一端部に全周にわたって設けられていることを特徴とする筆記具用軸筒。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の筆記具用軸筒において、
前記突出部は、前記グリップ部の軸方向一端部に周方向に離間して複数設けられていることを特徴とする筆記具用軸筒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−35230(P2013−35230A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174207(P2011−174207)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000005957)三菱鉛筆株式会社 (692)