説明

筆記具用部材

【課題】軸筒(内軸部材)に軸方向や周方向に移動可能な空間がある為、その軸筒に設けたクリップの狭持筒の弾撥力のみの固定では、狭持筒の位置ズレや脱落防止としては足りない恐れがあった。また、軸筒の外表面に挟持筒が嵌り込む縮径部(凹部)を形成したとしても、軸筒や挟持筒の生産時のばらつきにより空いた空間により前記狭持筒の位置ズレや脱落が発生し、確実な固定をすることができず、外観の崩れや使用中の煩わしさが生じる筆記具となることが考えられる。
【解決手段】内軸部材と、その内軸部材を被覆するように配置される外筒部材とを有する筆記具用部材であって、その外筒部材の縁部は、前記内軸部材との接触面側に突起を有し、その突起は、前記縁部の全周、又は、少なくとも2方向に形成され、前記突起を前記内軸部材に喰い込ませたことを特徴とする筆記具用部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内軸部材と、その内軸部材を被覆するように配置される外筒部材とを有する筆記具用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、筆記具の内軸部材(軸筒)に、クリップや把持部材(グリップ)、装飾リングなどの円筒ないし略円筒状の外筒部材を被覆する構成が良く知られているが、筆記具の使用中や携帯時などに外力が加わった際、外筒部材の位置がズレてしまったり、ややもすると外れてしまったりすることがあった。このような悪さを解決する為に様々な提案がなされている。
その構造の一例が、一端から他端まで連続する切込部(割溝状の隙間)を形成し、弾撥的に挟持させて装着する構成を持つクリップ(外筒部材)の挟持筒である(実公平2−19278号公報(特許文献1))。
【0003】
前記特許文献1に記載のクリップ(外筒部材)の挟持筒は、軸筒(内軸部材(軸体))の外径より小さい内径をしていて、軸方向に一端から他端まで連続した切込部(割溝状の隙間)を有し、該挟持筒に筆記具の軸筒を挿通し、弾撥的に挟持させて装着することで、弾撥力による固定をし、位置ズレや脱落の防止をしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平2−19278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に記載の従来技術にあっては、軸筒(内軸部材)に前記クリップ(外筒部材)の狭持筒の移動を妨げる規制部がないため、軸筒の軸線方向や周方向に移動が可能となっており、狭持筒の弾撥力のみの固定では位置ズレや脱落防止としては足りない恐れがあった。また、軸筒(内軸部材)の外表面に挟持筒が嵌り込む縮径部(凹部)を形成したとしても、軸筒(内軸部材)や挟持筒の生産時のばらつきにより軸筒(内軸部材)の凹部と狭持筒の端面との間に隙間が形成され、前記狭持筒の位置ズレや脱落が発生し、確実な固定をすることができず、外観の崩れや使用中の煩わしさが生じる筆記具となることが考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、内軸部材と、その内軸部材を被覆するように配置される外筒部材とを有する筆記具用部材であって、その外筒部材の縁部は、前記内軸部材との接触面側に突起を有し、その突起は、前記縁部の全周、又は、少なくとも2方向に形成され、前記突起を前記内軸部材に喰い込ませたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、内軸部材と、その内軸部材を被覆するように配置される外筒部材とを有する筆記具用部材であって、その外筒部材の縁部は、前記内軸部材との接触面側に突起を有し、その突起は、前記縁部の全周、又は、少なくとも2方向に形成され、前記突起を前記内軸部材に喰い込ませたので、外観の崩れや使用中の煩わしさのない筆記具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1実施例の製品全体の外観図である。
【図2】図1の状態から周方向に180度回転させた際の外観図である。
【図3】図1の状態から周方向に90度回転させた際の外観図である。
【図4】図1の状態における縦断面図である。
【図5】図4における先部材4周辺の拡大図である。
【図6】図1におけるA−A線断面図である。
【図7】図6におけるV部周辺の拡大図である。
【図8】図6におけるW部周辺の拡大図である。
【図9】第1実施例の軸筒本体5の外観斜視図である。
【図10】第1実施例の把持部材25の外観斜視図である。
【図11】図10の断面斜視図(一部拡大図)である。
【図12】突起の変形例(突起56)の拡大図である。
【図13】軸筒本体5への把持部材25の装着方法(装着前)を表す図である。
【図14】第2実施例の製品全体の外観図である。
【図15】図14の状態から周方向に180度回転させた際の外観図である。
【図16】図14の状態における縦断面図である。
【図17】第2実施例の把持部材25の外観斜視図である。
【図18】図17の断面斜視図(一部拡大図)である。
【図19】第3実施例の製品全体の外観図である。
【図20】図19の状態から周方向に180度回転させた際の外観図である。
【図21】図19の状態における縦断面図である。
【図22】第3実施例の軸筒本体5の外観斜視図である。
【図23】第3実施例の把持部材25の外観斜視図である。
【図24】図23の断面斜視図(一部拡大図)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
作用について説明する。本発明は、内軸部材と、その内軸部材を被覆するように配置される外筒部材とを有する筆記具用部材であって、その外筒部材の縁部は、前記内軸部材との接触面側に突起を有し、その突起は、前記縁部の全周、又は、少なくとも2方向に形成され、前記突起を前記内軸部材に喰い込ませたので、使用者の指や、衣服などのひっかかりによる外力が頻繁に加わったとしても、外筒部材の位置ズレや脱落の起点となる縁部を確実に固定することができ、軸筒の軸線方向、周方向どちらの位置ズレに対しても防止可能となり、結果として外筒部材の位置ズレや脱落がなく外観の崩れや使用中の煩わしさのない筆記具を提供することができる。
【0010】
本発明の第1実施例を図1〜図13に示し、説明する。尚、以下では、後述の先部材4側を前方と言い、押圧部材17側を後方という。本実施例は、本発明をシャープペンシルに展開した例である。なお、本発明は、シャープペンシルに限らず、ボールペンやマーカーペン、万年筆、筆ペンなど、種々の筆記具に適用することが出来る。
【0011】
軸筒1は、前方にステンレス製のパイプ2と内部に芯保持部材3が圧入固定されている先部材4と、その先部材4の後端に配置された軸筒本体(内軸部材)5とから構成されており、その軸筒1の内部には芯繰り出し機構を有する芯繰り出しユニット6が配置されている。前記軸筒本体5は、前記先部材4と前記芯繰り出しユニット6とで挟みこまれており、後述するように、前記先部材4と前記芯繰り出しユニット6とを螺着させることで、軸筒本体5を固定している。
芯繰り出しユニット6は、芯を収納する芯タンク7を有し、その芯タンク7の前端には中継ぎ部材8が圧入によって固定されている。そして、その中継ぎ部材8の前方には、芯Lを把持、解放するためのチャック体9が圧入によって固定されており、そのチャック体9には、チャック体9の開閉を行うチャックリング10が囲繞した状態で配置されている。更に、前記中継ぎ部材8、チャック体9、チャックリング10を内包するように中ネジ部材11が配置されている。その中ネジ部材11の位置決めは、中ネジ部材11の前方内部に形成された段部12とチャックリング10の後端面との当接、及び、中ネジ部材11の後方に形成された大径部13の後端と前記芯タンク7の前方に形成された縮径部14の前端との間に張設された弾撥部材(コイルスプリング)15により、なされている。その弾撥部材15は、芯繰り出しユニット6が、軸筒1内に配置された際に、チャック体9、中継ぎ部材8及び芯タンク7を軸筒1の後方に付勢する。また、芯タンク7の後端には、消しゴム16と押圧部材17が着脱自在に取り付けられている。
ここで、軸筒本体5の固定方法について詳述する。前記先部材4の後方内面には、雌螺子部18が形成されており、一方、前記芯繰り出しユニット6における中ネジ部材11の縮径部14の外面には、雄螺子部19が形成されている。また、前記軸筒本体5は、その前方内面に小径部20を有し、その小径部20により段部21が形成されている。その軸筒本体5の段部21と前記中ネジ部材11の大径部13の前端とを当接するように構成することで、前記芯繰り出しユニット6の軸筒本体5内での位置決めをし、その軸筒本体5から突出した前記中ネジ部材11の雄螺子部19と先部材4の雌螺子部18とを、先部材4と軸筒本体5とが当接するまで螺着せしめることで、軸筒本体5は固定される。
符号22は、前記軸筒本体5の上部に取り付けられた金属製のクリップである。このクリップ22は、前記軸筒本体5の後方に形成された凹部23に嵌め込まれている。
【0012】
前記軸筒本体5の前方部には、縮径部(把持部)24が形成されており、その縮径部(把持部)24には金属製の円筒状の把持部材(外筒部材)25が装着されている。尚、本実施例では、前記軸筒本体5は、アクリロニトリルスチレンブタジエン樹脂(ABS)により形成しているが、これに限らず、任意の材料から内軸本体を形成することができる。
前記軸筒本体5の縮径部24の前方部には、円周突部26が形成されており、この円周突部26が前記把持部材25を装着する際の乗り越え段部となっている。更に、前記軸筒本体5の縮径部24の後方部には、軸筒1の前方方向に突出した台形形状部(台形状部27)が形成されており、この軸筒側台形状部27は、前記縮径部24よりも大径となっている。
【0013】
次に、前記金属からなる円筒状の把持部材25について詳述する。
本実施例の把持部材25は、前端部から後端部に渡り連続したスリット部(切込部)28が形成されている。このスリット部28は、軸筒1の軸線方向と沿うように形成されており、その前端部から後端部まで、幅が均一な直線状に形成されている。
前記スリット部28の縁部29には、軸筒本体5との接触面側に凸であり、縁部29に対してスリット部28と逆側に傾斜したフック状の突起30が形成されており、そのフック状の突起30が、把持部材25を前記軸筒本体5の縮径部24に装着した際に軸筒本体5の外表面にひっかかる様に喰い込む(図6、図7)。このため、スリット部28が広がり外れる方向に外力が加わった場合でもフック状の突起30が軸筒本体5にひっかかることで把持部材25の位置ズレや脱落や緩みを防止することができる。また、前記構成により把持部材25を軸筒本体5から容易に外せなくなる為、子どもによる把持部材25の誤飲などの事故防止にも繋がる。
また、把持部材25の後端部には、台形形状に切込部31が形成されており(台形状切込部31)、その形状は、前記軸筒1側の台形状部27と対応する形状となっている。
更に、把持部材25には、軸筒の軸線方向を直線(直線部32)、周方向を円弧(円弧部33)で繋いだ形状の貫通孔34が複数形成されている(図10)。この貫通孔34の縁部35全周には、軸筒本体5との接触面側に凸であり、縁部35に沿った面、即ち、軸筒本体5に対して垂直な面を持つ突起36が形成されており、その突起36が、把持部材25を軸筒本体5に装着した際に軸筒本体5に喰い込む(図6、図8)。この際、貫通孔34の直線部32の縁部に形成された突起36aは周方向(回転方向)に対する外力に対して周方向への把持部材25の回転を防止することができ、また、円弧部33の縁部に形成された突起36bは軸線方向に対する把持部材25の位置ズレを防止することができる(図11)。ここで、本実施例にあっては、前記貫通孔34の突起36に、縁部35に対して垂直な面(垂直面37)を形成することで、その突起36が軸筒本体5に喰い込んだ際に、軸筒本体5も突起36と係合するように変形し、軸筒本体5にも垂直面38が形成される(図8)。この為、外力がかかった際に軸筒本体5の垂直面38が、軸筒本体5の内径方向に深く形成されることとなり、突起の垂直面37と軸筒本体5の垂直面38との係合が強まり、ズレ防止の効果を高めることができる。
以上のように、本実施例の把持部材25の縁部29、35には、その全周に、軸筒本体5との接触面側に凸の突起30、36が形成されており、把持部材25を軸筒本体5の縮径部24を被覆するように装着すると、前記突起30、36が軸筒本体5に喰い込む。このため、使用者の指や、衣服などのひっかかりによる外力が頻繁に加わったとしても、把持部材25の位置ズレや脱落の起点となる縁部29、35を確実に固定することができ、軸筒1の軸線方向、周方向どちらの位置ズレに対しても防止可能となり、結果として把持部材25の位置ズレや脱落がなく外観の崩れや使用中の煩わしさのない筆記具を提供することができる。特に、把持部材25の様に、筆記具の使用中に最も外力が加わり、かつ位置ズレや脱落の恐れがあり、外観の崩れや使用中の煩わしさへの影響が大きい部品に本発明を適用することでより大きな効果が得られる。
【0014】
ここで、前記把持部材25の貫通孔34、及び、その貫通孔34に形成した突起36について詳述する。
前記貫通孔34は、軸筒の軸線方向に等間隔で4箇所配置されており(貫通孔群39)、その貫通孔群39は、前記把持部材25の周方向に等間隔で6箇所配置されている。
このように配置することで、どの位置を把持した際でも貫通孔34が指に当たるようになり滑り止めの効果を得ることができる。更に、本実施例にあっては、把持部材25の複数箇所に刻印40を設けており、その刻印40の1箇所あたりの形成領域(外枠)を、軸筒の軸線方向を直線(直線部32)、周方向を円弧(円弧部33)で繋いだ前記貫通孔34と同形状としている。より詳細には、前記刻印40には、一定間隔を設けて溝部41を形成しており、その刻印40を前記貫通孔34同士の間に配置するように複数形成することで、筆記中のグリップ力(滑り止め力)を向上している。尚、貫通孔34の形状や大きさ、また、その配置については、本実施例に記載のものに限らず、任意のものとすることができる。
また、本実施例においては、突起30、36を形成する箇所を前端部から後端部に渡り連続したスリット部(切込部)28と貫通孔34の縁部29、35全周としたが、もちろんその他の縁部に形成しても良い。例としては、後端部に形成された台形状切込部31の縁部に設ける事で少なくとも異なる2方向の突起を形成する事ができ、把持部材25の位置ズレや脱落の防止を行うことができるのは言うまでもない。更に、前端から後端に渡り連続したスリット部28を直線でなくテーパ角度を付けたり曲線から構成したりするなど異形にし、その縁部に突起を形成することでも同様の効果が得られる。
更に、突起の配置は縁部の全周に限らず、力が加わると予想される一部分や、間隔を空けて設けるなど様々なパターンが考えられるが、適宜必要とされる箇所に配置することで軸筒本体や把持部材に与える負荷を軽減することができる。例えば、図12に記載の突起56の様に、突起を断続的に、又は、不均一に設けても良い。このように貫通孔34の縁部に対して複数の凸部を有する突起56を設けることで、突起56が軸筒本体5に喰い込んだ際に、各凸部(各突起)が軸筒本体5に対して2方向の接触面を形成することができる為、外力が加わった際の把持部材25と軸筒本体5との係合が強まり、把持部材25の位置ズレ防止や脱落防止の効果を高め、外観の崩れや使用中の煩わしさのない筆記具を提供することができる。
ここで、縁部に形成された前記突起の高さは、軸筒本体(内軸本体)5に喰い込み、確実な固定ができれば良いが、望ましくは0.01mm〜0.1mm程度の高さが望ましい。その理由は、把持部材(外筒部材)25の固定にあっては、0.01mmよりも突起が低い場合、喰い込みが浅い為、軸筒本体5に対して十分な固定ができず、把持部材25の位置ズレや脱落が発生しやすくなる恐れがあり、0.1mmよりも高い場合は突起がすべて軸筒本体5に喰い込むことができず、浮いてしまい十分な固定ができないどころが、軸筒本体5に嵌らず、外観の低下などの問題が発生してしまう恐れがある。また、樹脂材料で把持部材(外筒部材)25を作製した場合ではアンダーカットで突起を作成する為、0.1mmより高いと狙いの形状通りに作製できない恐れがある。
突起の形状に関しては、本第1実施例で記述した突起の形状以外にも縁部に対し断面両側をテーパとした突起や、円錐状の突起などの喰い込み易い形状の突起などを種々用いることができる。その際、突起が配置される場所や、外筒部材と軸筒本体との材料硬度の差により、突起の形状を選択することでより高い効果を得ることができる。
この他、本実施例では、前記金属製の把持部材(外筒部材)25はプレス加工によって作製している。プレス加工で作製することによって金属板から外枠や貫通孔を形成する際に、打ち抜き方向に向けて金属が変形する事で縁部に突起を形成する事ができる為、生産性の向上を図ることができる。更に、このようにプレス加工で外枠や貫通孔を形成した場合には、把持部材25の外表面側にはR部57が同時に形成される為、把持感触が良く、把持した際の指へのストレスを軽減する事ができる。尚、切削加工などでも加工の過程で突起を形成できる。
【0015】
前記把持部材(外筒部材)25の軸筒本体5への装着は、冶具を用いて以下のように行う。用いる冶具42は、軸筒本体5の後方に向かってその外径が大きくなるテーパが形成された円筒状の筒体である(図13)。この冶具42の最大外径は、前記軸筒本体5の円周突部26の外形よりも大径に形成されており、また、この冶具42は、軸筒本体5の前方部に着脱可能に形成されている。
前記把持部材25の装着時には、まず、前記冶具42を軸筒本体5の前方部に装着し、その前方部から前記把持部材25を挿入する。すると、前記把持部材25は、前記冶具42により外径方向へ力を受けることとなる。このように、把持部材25の挿入方向への力と共に、外径方向への力も受けるため、前記把持部材25は、前端部から後端部に渡り連続したスリット部(切込部)28が拡開されながら、軸筒本体5の後方へ移動せしめられる。完全に前記冶具42を乗り越え、通過した際に、把持部材25はその復元力により、装着前の形状に復元し、軸筒本体5の縮径部24の径に合った状態で装着される。尚、この装着完了時には、把持部材25側の前記台形状切込部31と軸筒1側の前記台形状部27が当接し、係合した状態となる。
以上のように、本実施例の把持部材25においては、軸筒本体5への把持部材25の装着過程において、前記把持部材25の前端部から後端部に渡り連続したスリット部(切込部)28が拡開し、また、その把持部材25の弾撥力(復元力)により軸筒本体5の把持部に適合した状態での装着が可能となっている。
前述の様に装着を行うことで、把持部材25の弾撥力により、前記把持部材25の縁部29、35に形成された突起30、36には軸筒本体5に喰い込む方向に力が働くため、より確実な固定が実現できる。
また、本実施例にあっては、前記把持部材25にスリット部28を設けることにより、把持部材25に弾撥力を付与し、軸筒本体5に装着・固定している。この際、前記把持部材25の弾撥力での固定により強い喰い込みを軸筒本体5へ常時かけていても良いが、本実施例にあっては、把持した際に把持部材(外筒部材)25が撓むことができるようにせしめている。また、本実施例にあっては、最初は突起が軽く喰い込む程度の弾撥力とし、筆記中の把持力を利用し、突起を強固に喰い込ませることで筆記中のズレや回転を無くすことができ、筆記時以外には軸筒へ必要以上のストレスがかからなくなり、経時での万が一の変形や破損を防ぐことができる。
尚、本実施例においては、前記把持部材25が軸筒本体5に装着された際、その前端部から後端部に渡り連続したスリット部(切込部)28の位置が、前記クリップ22のクリップ本体43と180度対面の位置となるように配置されている。
【0016】
次に、本発明の第2実施例を図14〜図18に示し、説明する。第2実施例は、把持部材25における貫通孔の形状と配置箇所、個数を変化させた把持部材の例である。尚、以下では、第1実施例と同様の構成に関する説明は省略する。
【0017】
本実施例においても前記軸筒本体5の前方部には、縮径部(把持部)24が形成されており、その縮径部(把持部)24には金属製の円筒状の把持部材(外筒部材)25が装着されている。前記軸筒本体5の縮径部24の後方部には、軸筒1の前方方向に突出した台形形状部(台形状部27)が形成されている。
【0018】
本実施例における金属製の円筒状の把持部材25について詳述する。
本実施例の把持部材25には、菱形形状の貫通孔44が複数形成されており、前記貫通孔44の縁部45全周には軸筒本体5との接触面側に凸であり、縁部45に沿った面、即ち、軸筒本体5に対して垂直な面を持つ突起46が形成されており、その突起46が、把持部材25を軸筒本体5に装着した際に軸筒本体5に喰い込む。前記貫通孔44の様に、軸筒の軸線方向に対して2方向に傾斜した縁部45を有する菱形形状を形成する事でねじれ方向に働く外力に対しての把持部材25の位置ズレを防止することができる。
本実施例の貫通孔44の形状においても、周方向(回転方向)や軸線方向に対する外力に対して周方向への把持部材25の回転を防止や軸線方向に対する把持部材25の位置ズレを防止することができるのは言うまでもないが、使用中や、筆記時以外に把持部材を触るなどの実使用外でも外力が加わることの多い把持部材の場合、同時に様々な方向の外力がかかることが想定される為、軸線に対してねじれの方向に突起を設けることで、把持部材25の位置ズレや脱落防止の効果を高めることができる。
本実施例においても、前端部から後端部に渡り連続したスリット部(切込部)28が軸筒1の軸線方向と沿うように前端部から後端部まで、幅が均一な直線状に形成されている。
前記スリット部28の縁部29には、軸筒本体5との接触面側に凸であり、縁部29に対してスリット部28と逆側に傾斜したフック状の突起30が形成されており、そのフック状の突起30が、把持部材25を前記軸筒本体5の縮径部24に装着した際に軸筒本体5の外表面にひっかかる様に喰い込む。このため、スリット部28が広がり外れる方向に外力が加わった場合でもフック状の突起30が軸筒本体5にひっかかることで把持部材25の位置ズレや脱落や緩みを防止することができる。また、前記構成により把持部材25を軸筒本体5から容易に外せなくなる為、子どもによる把持部材25の誤飲などの事故防止にも繋がる。
以上のように、本実施例の把持部材25の縁部29、45には、その全周に、軸筒本体5との接触面側に凸の突起30、46が形成されており、把持部材25を軸筒本体5の縮径部24を被覆するように装着すると、前記突起30、46が軸筒本体5に喰い込む。このため、使用者の指や、衣服などのひっかかりによる外力が頻繁に加わったとしても、把持部材25の位置ズレや脱落の起点となる縁部29、45を確実に固定することができ、軸筒1の軸線方向、周方向どちらの位置ズレに対しても防止可能となり、結果として把持部材25の位置ズレや脱落がなく外観の崩れや使用中の煩わしさのない筆記具を提供することができる。また、このように、特に、把持部材25の様に、筆記具の使用中に最も外力が加わり、かつ位置ズレや脱落の恐れがあり、外観の崩れや使用中の煩わしさへの影響が大きい部品に本発明を適用することでより大きな効果が得られる。
この他、把持部材25の後端部には、台形形状に切込部31が形成されており(台形状切込部31)、その形状は、前記軸筒1側の台形状部27と対応する形状となっている。
【0019】
前記把持部材25の貫通孔44について詳述する。
前記貫通孔44は、軸筒の軸線方向に等間隔で4箇所配置された列(貫通孔群47)と軸線方向に等間隔で3箇所配置された列(貫通孔群48)の組み合わせが、周方向に等間隔で3箇所配置されている。
このように配置することで、把持した場所により指に当たる貫通孔44の具合にパターンができ、使用者の様々な把持感覚の好みに対応することができる。
更に、本実施例にあっては、把持部材25に前記貫通孔44同士の間に配置するようにローレット状の刻印49を形成することで、筆記中のグリップ力(滑り止め力)を向上している。
【0020】
軸筒本体5への把持部材25の装着方法は、第1実施例と同様に把持部材25を軸筒本体5の前方から挿入して装着するが、この方法に限らず、任意の方法で装着することが出来る。
本実施例の把持部材25の場合も、軸筒本体5への把持部材25の装着過程において、前記把持部材25のスリット部(切込部)28が拡開し、また、その把持部材25の弾撥力(復元力)により軸筒本体5の把持部に適合した状態での装着が可能となっている。前述の様に装着を行うことで、把持部材25の弾撥力により、前記把持部材25の縁部29、45に形成された突起30、46には軸筒本体5に喰い込む方向に力が働くため、より確実な固定が実現できる。
尚、本実施例においても、前記把持部材25が軸筒本体5に装着された際、その前端部から後端部に渡り連続したスリット部(切込部)28の位置が、前記クリップ22のクリップ本体43と180度対面の位置となるように配置されている。
【0021】
本実施例の場合には、貫通孔44を菱形形状としたことから、把持した際の指の角度と貫通孔44の菱形形状の一辺の軸筒の軸線方向に対する傾斜角度が近くなり、よりフィット感を得ることができる。また前記理由より、把持力が突起に伝わり易く、筆記時の突起の食い込みを更に強固とすることができる。
【0022】
最後に、本発明の第3実施例について図19〜図24に示し、説明する。
第3実施例は、把持部材25における貫通孔の形状と配置箇所、個数、並びに、把持部材25の後方の形状、及び、軸筒本体5の縮径部(把持部)24後方の形状を変化させた例である。尚、以下では、第1、2実施例と同様の構成に関する説明は省略する。
【0023】
本実施例においても前記軸筒本体5の前方部には、縮径部(把持部)24が形成されており、その縮径部(把持部)24には金属製の円筒状の把持部材(外筒部材)25が装着されている。前記軸筒本体5の縮径部24の後方部は、軸筒1の軸線方向に直交するように、即ち、周方向に平行に形成されている。
【0024】
本実施例における金属製の円筒状の把持部材25について詳述する。
本実施例の把持部材25は、軸線方向に周方向よりも長い一辺(長辺50)を有する長方形状の貫通孔51が複数形成されており、前記貫通孔51の縁部52全周には軸筒本体5との接触面側に凸であり、縁部52に沿った面、即ち、軸筒本体5に対して垂直な面を持つ突起53が形成されており、その突起53が、把持部材24を軸筒本体5に装着した際に軸筒本体5に喰い込む。この際、前記貫通孔51の軸線方向に直交する一辺(短辺54)の縁部に形成された突起53aにより、軸線方向に対する把持部材25の位置ズレを防止することができることは勿論、前記貫通孔51の様に、軸線方向に長い辺(長辺50)を有することで、長辺50の縁部に設けた突起53bによって周方向(回転方向)に対する外力に対しての周方向への把持部材25の回転をより確実に防止することができる。
また、本実施例においても、前端部から後端部に渡り連続したスリット部(切込部)28が軸筒1の軸線方向と沿うように前端部から後端部まで、幅が均一な直線状に形成されている。前記スリット部28の縁部29には、軸筒本体5との接触面側に凸であり、縁部29に対してスリット部28と逆側に傾斜したフック状の突起30が形成されており、そのフック状の突起30が、把持部材25を前記軸筒本体5の縮径部24に装着した際に軸筒本体5の外表面にひっかかる様に喰い込む。このため、スリット部28が広がり外れる方向に外力が加わった場合でもフック状の突起30が軸筒本体5にひっかかることで把持部材25の位置ズレや脱落や緩みを防止することができる。また、前記構成により把持部材25を軸筒本体5から容易に外せなくなる為、子どもによる把持部材25の誤飲などの事故防止にも繋がる。
以上のように、本実施例の把持部材25の縁部29、52には、その全周に、軸筒本体5との接触面側に凸の突起30、53が形成されており、把持部材25を軸筒本体5の縮径部24を被覆するように装着すると、前記突起30、53が軸筒本体5に喰い込む。このため、使用者の指や、衣服などのひっかかりによる外力が頻繁に加わったとしても、把持部材25の位置ズレや脱落の起点となる縁部29、52を確実に固定することができ、軸筒1の軸線方向、周方向どちらの位置ズレに対しても防止可能となり、結果として把持部材25の位置ズレや脱落がなく外観の崩れや使用中の煩わしさのない筆記具を提供することができる。また、このように、特に、把持部材25の様に、筆記具の使用中に最も外力が加わり、かつ位置ズレや脱落の恐れがあり、外観の崩れや使用中の煩わしさへの影響が大きい部品に本発明を適用することでより大きな効果が得られる。
【0025】
前記把持部材25の貫通孔51について詳述する。
前記貫通孔34は、軸筒の軸線方向に等間隔で3箇所配置されており(貫通孔群55)、その貫通孔群55は、前記把持部材25の周方向に等間隔で6箇所配置されている。
このように配置することで、いかなる周方向に対する外力がかかった際にも十分な固定を行うことができる。把持部材25にあっては、前記貫通孔の軸線方向の長さに関して、貫通孔51の長辺50の和の割合は30%〜50%とすることが望ましい。その理由は30%以下の場合、周方向に対する外力に対し十分な固定ができず、70%以上の場合は貫通孔同士の軸線方向の間に十分な肉厚が取れず、貫通孔同士の間における肉薄部の変形や破断の可能性が生じるからである。
【0026】
軸筒本体5への把持部材25の装着方法は、第1、2実施例と同様に把持部材25を軸筒本体5の前方から挿入して装着するが、この方法に限らず、任意の方法で装着することが出来る。
本実施例の把持部材25の場合も、軸筒本体5への把持部材25の装着過程において、前記把持部材25のスリット部(切込部)28が拡開し、また、その把持部材25の弾撥力(復元力)により軸筒本体5の把持部に適合した状態での装着が可能となっている。前述の様に装着を行うことで、把持部材25の弾撥力により、前記把持部材25の縁部29、52に形成された突起30、53には軸筒本体5に喰い込む方向に力が働くため、より確実な固定が実現できる。
尚、本実施例においても、前記把持部材25が軸筒本体5に装着された際、その前端部から後端部に渡り連続したスリット部(切込部)28の位置が、前記クリップ22のクリップ本体43と180度対面の位置となるように配置されている。
【0027】
本実施例の場合には、貫通孔51を軸線方向に周方向よりも長辺50を有する長方形状としたことから、突起53によって、把持部材25の回転をより確実に防止することができ、把持部材25の形状を単純化したことから生産性の向上が図れる。
【0028】
以上のように、第1〜3実施例を構成したが、この他にも、貫通孔及び突起形状は種々の形状とすることがき、把持部材のみならずクリップや装飾リングなど内軸部材(軸筒)に外筒部材を被覆する構成に応用することができる。
また、以上の第1〜3実施例では、いずれも円筒状の外筒部材及び内軸部材を示したが、外筒部材及び内軸部材は円筒状に限定されるものではなく、筒体であれば良い。例えば、前記外筒部材及び内軸部材は、3角形状の筒体や5角形状の筒体、8角形状の筒体など角形状の筒体からなしても良い。また、内軸部材にあっては、筒体でなくとも、軸体であれば良い。いずれの場合においても、外筒部材に形成された縁部に、前記内軸部材との接触面側に突起を設け、その突起を、前記縁部の全周、又は、少なくとも2方向に形成し、前記突起を前記内軸部材に喰い込ませることで部品のズレや脱落がなく外観の崩れや使用中の煩わしさのない筆記具を提供することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 軸筒
2 パイプ
3 芯保持部材
4 先部材
5 軸筒本体(内軸部材)
6 芯繰り出しユニット
7 芯タンク
8 中継ぎ部材
9 チャック体
10 チャックリング
11 中ネジ部材
12 段部
13 大径部
14 縮径部
15 弾撥部材(コイルスプリング)
16 消しゴム
17 押圧部材
18 雌螺子部
19 雄螺子部
20 小径部
21 段部
22 クリップ
23 凹部
24 縮径部(把持部)
25 把持部材(外筒部材)
26 円周突部
27 台形状部
28 スリット部(切込部)
29 縁部
30 突起
31 台形状切込部(切込部)
32 直線部
33 円弧部
34 貫通孔
35 縁部
36 突起
36a 突起
36b 突起
37 垂直面
38 垂直面
39 貫通孔群
40 刻印
41 溝部
42 冶具
43 クリップ本体
44 貫通孔
45 縁部
46 突起
47 貫通孔群
48 貫通孔群
49 刻印
50 長辺
51 貫通孔
52 縁部
53 突起
53a 突起
53b 突起
54 短辺
55 貫通孔群
56 突起
57 R部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内軸部材と、その内軸部材を被覆するように配置される外筒部材とを有する筆記具用部材であって、その外筒部材の縁部は、前記内軸部材との接触面側に突起を有し、その突起は、前記縁部の全周、又は、少なくとも2方向に形成され、前記突起を前記内軸部材に喰い込ませたことを特徴とする筆記具用部材。
【請求項2】
前記外筒部材は、少なくとも1つの切欠部を有することを特徴とする請求項1に記載の筆記具用部材。
【請求項3】
前記外筒部材は、少なくとも1つの貫通孔を有することを特徴とする請求項1或いは請求項2に記載の筆記具用部材。
【請求項4】
前記外筒部材は、把持部材であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の筆記具用部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2013−111920(P2013−111920A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262004(P2011−262004)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】