説明

筆記具

【課題】 繰出メカの固定筒を頭にして継ぎ手の尾端開口から挿入し、固定筒と継ぎ手の螺着部を接着剤で固着する際に接着剤を容易に塗布できる筆記具を提供する。
【解決手段】 固定筒に対して回動筒を正逆回転させることによりレフィール保持部が前後動する繰出メカを内蔵し、繰出メカの固定筒は円筒状の継ぎ手を介して前軸に固定され、回動筒は後軸の回転に伴って回動するように連結され、前軸に対して後軸を正逆回転させるとレフィール保持部に保持されたレフィール先端のペン体が前軸の先端開口から出没する筆記具において、繰出メカの固定筒を継ぎ手の尾端側から挿入して螺合するとともに、継ぎ手の内ねじ部に形成された径方向の透孔から注入された接着剤により継ぎ手と固定筒の螺合部を固着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前軸に対して後軸を正逆回転させるとレフィール先端のペン体が前軸の先端開口から出没する回転式の筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
ボールペンレフィールなどのペン体を軸筒の先端開口から出没させる筆記具は、ノック操作により出没させるノック式と前軸に対して後軸を正逆回転させることにより出没させる回転式に大別されるが、回転式の方が高級感を出しやすい利点がある。この回転式は、円筒を斜めに切裁した略ハート型の端面をカム面としたカム筒を後軸に固定し、レフィールの尾端に接続された作動子をスプリングの弾発力を利用してカム面に当接させ、カム筒の回転によりレフィールを前後動させてペン体を出没させるものや、らせん溝に回転不能な係合子を係合させ、らせん溝の正逆回転により係合子が前後動するボールねじ送りを利用してペン体を出没させるものなどがある。
【特許文献1】特開2008−162066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記のボールねじ送りを利用する回転式の筆記具は、らせん溝が形成された筒体と前後動可能で回転不能な係合子などをユニット化した繰出メカを軸筒内に取り付けるのが組立が容易で構造的にも簡単になる。つまり、この繰出メカは、内面にらせん溝が形成された回動筒を固定筒に回動可能に接続し、らせん溝に係合する係合部を有し、前方がレフィール保持部である前後動部を固定筒に対して回転不能に回動筒内に配置したものである。この繰出メカを軸筒内に取り付けるには、固定筒を前軸に固定し、かつ前軸に対する後軸の回転によって回動筒が回転するようにする必要がある。繰出メカの固定筒を円筒状の継ぎ手を介して前軸に固定するとき、円筒状の継ぎ手内周面の内ねじと固定筒外周の外ねじを螺合するのみでは固着力が十分でないので螺合部を接着剤で固着するのが好ましい。
【0004】
螺合部を接着剤で固着するとき、継ぎ手の内ねじの全面に接着剤を塗布すると、ねじ込むにつれて接着剤が螺進方向に押しやられ、ねじ込みが完了したときには、余剰の接着剤が螺合部からはみ出す。このため、接着剤は雌部材の内ねじの先端部(ねじ込みが始まる部であって、一般的には雌部材の開口端)にのみ接着剤を塗布し、ねじ込むにつれて接着剤がねじ溝に沿って移動して螺合部全体に行き渡り、螺合部からはみ出さないようにしている。
【0005】
ところで、円筒状の継ぎ手内に繰出メカを挿入して固定筒を継ぎ手に螺着するとき、継ぎ手の先端開口に繰出メカの位置決め用の内鍔を形成することもあり、繰出メカは固定筒を頭にして継ぎ手の尾端側から挿入する必要がある。したがって、ねじ込みが始まる部分は継ぎ手の先端開口のねじ溝からではなく、尾端側(継ぎ手の先端開口から見て奥側)のねじ溝からねじ込みが始まる。このため、継ぎ手の内ねじの先端開口から見て奥側にのみ接着剤を塗布する必要があるが、接着剤を継ぎ手の開口部には塗らずに内ねじの奥側にのみ塗布するのはなかなか困難である。
そこで本発明は、繰出メカの固定筒を頭にして継ぎ手の尾端開口から挿入し、固定筒と継ぎ手の螺着部を接着剤で固着する際に接着剤を容易に塗布できる筆記具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、本発明は、固定筒に対して回動筒を正逆回転させることによりレフィール保持部が前後動する繰出メカを内蔵し、繰出メカの固定筒は円筒状の継ぎ手を介して前軸に固定され、回動筒は後軸の回転に伴って回動するように連結され、前軸に対して後軸を正逆回転させるとレフィール保持部に保持されたレフィール先端のペン体が前軸の先端開口から出没する筆記具において、繰出メカの固定筒を継ぎ手の尾端側から挿入して螺合するとともに、継ぎ手の内ねじ部に形成された径方向の透孔から注入された接着剤により継ぎ手と固定筒の螺合部を固着する。
【発明の効果】
【0007】
固定筒に対して回動筒を正逆回転させることによりレフィール保持部が前後動する繰出メカを内蔵した回転式の筆記具であるので高級感のある筆記具とすることができるが、継ぎ手の内ねじ部に形成された径方向の透孔から注入された接着剤により継ぎ手と固定筒の螺合部を固着するので、ねじ込みが始まる部分にのみ適量の接着剤を塗布することができ、継ぎ手の尾端開口から固定筒を頭にして挿入して螺合するにもかわらず、余剰の接着剤が螺合部からはみ出さないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に図面に基づいて発明を実施するための最良の形態を説明する。図1において、前軸1の先端開口にはリング12を介して先口11が螺着されているが、前軸1の先端部を先口11と同じ形状にすることより先口11を省略してもよい。前軸1の尾端開口には円筒状の継ぎ手3が螺着されている。レフィール8交換時には前軸1を継ぎ手3から取り外せるようになっている。クリップ23が取り付けられた後軸2の先端開口には飾りリング21が固定され、この飾りリング21が前軸1の尾端開口に回転自由に嵌め込まれている。後軸2の内周面には微小な縦リブで構成された縦溝22が形成されている。そして、前軸1と後軸2内に繰出メカ4が内蔵されている。
【0009】
繰出メカ4は、図2に示すように、固定筒6に回動筒5が回動可能に接続されている。固定筒6の外周面には外ねじ61が形成されており、回動筒5の外周面には微小な縦リブ51が形成されている。固定筒6および回動筒5内に、前方にレフィール保持部71が取り付けられた前後動部材72が配置されている。回動筒5内にはらせん溝が形成され、前後動部材72の係合部がらせん溝に係合している。また前後動部材72と固定筒6の間にはキーがはめ込まれ、前後動部材72は固定筒6に対して回転不能、かつ前後動可能になっている。そして、レフィール保持部71にはボールペンレフィール8が差し込まれて保持されている。したがって、固定筒6に対して回動軸5を正逆回転させるとレフィール8が前後動し、ペン体81が先口の先端開口から出没する。筒状をした継ぎ手3は、先端内部に内ねじ32が形成され、内ねじ32が形成された部分には内径が2mm程度の透孔31が径方向に成形されている。また、先端開口にはストッパーの役目をする内鍔33が形成されている。
【0010】
組立に際しては、先ず、透孔31からエポキシ系などの接着剤を注入し、内ねじ32の先端開口から見て奥側32aに適量塗布するが、透孔31を利用するので奥側32aのみに容易に塗布できる。。そして、図3に示すように、繰出メカ4をその固定筒6を頭にして継ぎ手3の尾端開口から挿入し、固定筒6の外ねじ61を継ぎ手3の内ねじ32にねじ込み、固定筒6の先端を内鍔33に当接させる。ねじ込みによって奥側32aに塗布された接着剤はねじ溝に沿って先端側に移動し、螺合部全体に行き渡るが、接着剤は内ねじ32の奥側32aにのみ適量塗布されているので、余剰の接着剤が螺合部からはみ出すことがなく固着することができる。
【0011】
繰出メカ4を継ぎ手3に固着すると、図4に示すように、前軸1を継ぎ手3に螺着し、次に、図1に示すように、後軸2を繰出メカ4に被せ、縦溝22を回動筒5の縦リブ51にはめ合わせると組立が完了する。そして、固定筒6が継ぎ手3を介して固定された前軸1に対して後軸2を正逆回転させると、それに伴って回動筒5が固定筒6に対して正逆回転し、レフィール8のペン体81が前後動して先口11の先端開口から出没する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明実施例の断面図である。
【図2】組立の説明図である。
【図3】同じく要部の断面図である。
【図4】組立の説明図である。
【符号の説明】
【0013】
1 前軸
11 先口
12 リング
2 後軸
22 縦溝
23 クリップ
3 継ぎ手
31 透孔
32 内ねじ
33 内鍔
4 繰出メカ
5 回動筒
51 縦溝
6 固定筒
71 レフィール保持部
72 前後動部材
8 レフィール
81 ペン体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定筒に対して回動筒を正逆回転させることによりレフィール保持部が前後動する繰出メカを内蔵し、該繰出メカの固定筒は円筒状の継ぎ手を介して前軸に固定され、回動筒は後軸の回転に伴って回動するように連結され、前軸に対して後軸を正逆回転させるとレフィール保持部に保持されたレフィール先端のペン体が前軸の先端開口から出没する回転式の筆記具において、
前記繰出メカの固定筒は継ぎ手の尾端側から挿入されて螺合されるとともに、継ぎ手の内ねじ部に形成された径方向の透孔から注入された接着剤により継ぎ手と固定筒の螺合部が固着されたことを特徴とする筆記具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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