説明

筆跡照合システム及び方法

【課題】冊子体に署名記入されたときの筆跡データを電子的に照合し,筆跡データの照合結果を冊子体に記録できるシステムを提供する。
【解決手段】冊子体である健康保険証3に記入された署名の筆跡データはデジタルペン2に記憶され、照合装置4は,デジタルペン2から筆跡データを読み取り,健康保険証3に実装されたRFIDモジュール30に該筆跡データを照合させ,RFIDモジュール30から受信した照合結果に対応するジャーナルログを健康保険証3に印字する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,健康保険証やパスポートなどの冊子体に記入された署名の筆跡データを照合し,照合結果を冊子体に記録するための技術に係わる。
【背景技術】
【0002】
社会保障制度全体を通じた情報化の共通基盤として、年金手帳・健康保険証・介護保険証の役割を果たす社会保障カード(仮称)の導入が国家レベルで検討され,社会保障カードを利用する際のカード所有者認証として,ユーザID・パスワード認証方式を用いる方向にある。
【0003】
しかし,ユーザID及びパスワード認証方式では,社会保障カードの所有者が,所有者のユーザID及びパスワードを入力しなければならないが,社会保障カードを健康保険証として利用する際,社会保証カードの所有者が重篤の症状であると,該所有者がユーザID・パスワードを入力することができないため,このようなときは,社会保障カードの所有者の代わりに,社会保障カードの所有者の代理人がユーザID・パスワードを入力できるようにする必要がある。
【0004】
社会保障カードの所有者の代理人が,社会保障カードの所有者の代わりにユーザID・パスワードを入力する場合,社会保障カードの所有者の代理人に成りすましがないことを後日確認できるように,社会保障カードの所有者の代理人に署名を求めることが一般的であるが,社会保障カードには,社会保障カードの所有者の代理人に署名を残すことはできないため,社会保障カードの所有者の代理人に署名を残せるように,複数のページから成る冊子体をカードの代わりに利用することが考えられる。
【0005】
複数のページから成る冊子体を社会保障カードのように機能させるためには,特許文献1,2,3で開示されている冊子体のように,アンテナや非接触ICチップがモールドされたRFIDモジュールを冊子体に実装させればよいが,従来の技術では,冊子体に記入される署名の照合結果を記録することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−42068号公報
【特許文献1】特開2002−42067号公報
【特許文献1】特開2002−42076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで,本発明は,冊子体に署名記入されたときの筆跡データを電子的に照合し,筆跡データの照合結果を冊子体に記録できるシステム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決する第1の発明は、筆跡データの照合に利用する参照筆跡データを一つ以上記憶し,外部装置から受信した筆跡データと前記参照筆跡データそれぞれを照合する手段を有するRFIDモジュールが実装された冊子体と,前記冊子体のページに署名を記入するときに利用され,該署名が記入されたときの前記筆跡データを記憶するデジタルペンと,前記デジタルペンから前記筆跡データを読み取り,前記RFIDモジュールを利用して該筆跡データを照合し,前記筆跡データの照合結果に対応するジャーナルログを前記冊子体に印字する照合装置とから少なくとも構成されることを特徴とする筆跡照合システムである。
【0009】
上述した課題を解決する第2の発明は、デジタルペンが、RFIDモジュールが実装された冊子体に署名が記入されたときの筆跡データを記憶するステップ、照合装置が,前記デジタルペンから筆跡データを読み取り,前記RFIDモジュールに該筆跡データを照合させるステップ,前記RFIDモジュールが,前記RFIDモジュールに記憶している参照筆跡データそれぞれと前記照合装置から受信した前記筆跡データを照合し,照合結果を前記照合装置に送信するステップ,前記照合装置が,前記RFIDモジュールから受信した照合結果に対応するジャーナルログを冊子体に印字するステップ、が実行されることを特徴とする筆跡照合方法である。
【発明の効果】
【0010】
このように,上述した本発明によれば,冊子体に署名が記入されたときにデジタルペンに筆跡データが記憶され,照合装置は,デジタルペンに記憶された筆跡データと,冊子体に記憶された筆跡データを照合し,照合結果を冊子体に印字することになり,冊子体に署名記入されたときの筆跡データを電子的に照合し,筆跡データの照合結果を冊子体に記録できるようになる。また,デジタルペンを用いて冊子体に記入された筆跡は目視で確認できるので,照合結果に加え,照合に利用された筆跡データの元になった筆跡をも冊子体に残すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】筆跡照合システムを説明する図。
【図2】冊子体である健康保険証を説明する図。
【図3】デジタルペンを説明する図。
【図4】照合装置を説明する図。
【図5】筆跡照合システムの一連の動作を説明するフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここから,本願発明の実施形態について,本願発明の技術分野に係わる当業者が,本願発明の内容を理解し,本願発明を実施できる程度に説明する。
【0013】
図1は,本実施形態における筆跡照合システム1を説明する図である。図1で図示した筆跡照合システム1では,RFIDモジュール30が実装された冊子体である健康保健証3と,被保険者等や被保険者の代理人の署名を健康保険証3に記載するときに利用されるデジタルペン2と,健康保険証3に署名が記入された筆跡データを照合し,該筆跡データの照合結果に係わるジャーナルログを健康保険証3に印刷する照合装置4とから少なくとも構成されている。
【0014】
図2は,健康保険証3を説明する図で,図2(a)は健康保健証3の外観を説明する図,図2(b)は被保険者等の署名及びジャーナルログを記録するページを説明する図である。
【0015】
図2(a)に図示したように,健康保険証3は,被保険者等の署名及びジャーナルログを記録するための複数のログページ3aを備えた冊子体で,健康保険証3の表紙側には,アンテナ30bと非接触ICチップ30bを少なくとも有するRFIDモジュール30が実装されている。図2(a)では,RFIDモジュール30が健康保険証3の表紙から目視できるかのように記載しているが,実際には,RFIDモジュール30は,健康保険証3の表紙から目視できないように実装されている。
【0016】
健康保険証3に実装されたRFIDモジュール30には,予め,健康保険証3の利用が許可された者(被保険者及び被保険者の代理人)がデジタルペン2を用いて署名したときの筆跡データが参照筆跡データとして記憶され,更に,外部装置(ここでは,照合装置)から送信された筆跡データと参照筆跡データそれぞれを照合するコマンドが記憶されている。
【0017】
図2(b)に図示したように,被保険者等の署名及びジャーナルログを記録するためのログページ3aには,被保険者等の署名とジャーナルログを対に記録する複数の欄3bが通常インキを用いて印刷されている。
【0018】
また,健康保健証3の少なくともログページ3aには,カーボンを含んだ特殊インキを用いて、デジタルペン2によって読み取られる格子状のドットパターン3cが印刷されている。このドットパターン3cに含まれる各ドットは、格子の交点において上下左右のいずれかの方向に微妙にずれた状態で配置され,6ドット×6ドットの単位で,ログページ3a上の座標値が表されている。
【0019】
図3はデジタルペンを説明する図である。デジタルペン2は,既に市販されているアノトペン(登録商標)と同じ機能を備え,図3で図示したように,従来のペンとして機能するペン部23に加え、デジタルペン2として機能するために、ログページ3aに印刷されたドットパターン3cを読取る手段であるCCDカメラ22と、照合装置4と無線通信するための手段である通信ユニット25(例えば、ブルートゥース)と、ペン部23のペン先に加わる圧力を計測するための筆圧センサ24と、CCDカメラ22が撮像した画像の画像処理などの行うためのイメージプロセッサ20と、イメージプロセッサ20が処理した情報を記憶するメモリ21を備えている。
【0020】
ログページ3aに印刷されたドットパターン3cを読取る手段であるCCDカメラ22は光源と光学系を備えている。上述しているように、ドットパターン3cは、カーボンを含んだ特殊インキで健康保険証3のログページ3aに印刷されているため、CCDカメラ22が赤外線を利用しログページ3aを撮像することで、CCDカメラ22はログページ3aに印刷されたドットパターン3cを6ドット×6ドットの単位で読み取る。
【0021】
デジタルペン2に備えられた通信ユニット25は、照合装置4に対応した手段であればよく、例えば,通信ユニット25としてブルートゥースや赤外線通信を利用できる。
【0022】
筆圧センサ24は、ユーザがデジタルペン2のペン部23の先端に加わる圧力すなわち筆圧を検出し、イメージプロセッサ20へ伝達する手段である。イメージプロセッサ20は筆圧センサ25から送信される信号を参照することで、ペン部23のペン先がON状態、すなわち、用紙に接した状態(=記入している状態)であるか、OFF状態、すなわち、用紙に接していない状態(=記入していない状態)であるか判断できる。
【0023】
画像処理を行うイメージプロセッサ20は、ペン部23のペン先がON状態であるときに、CCDカメラ22を用いて高速(50回〜100回/秒)でドットパターン3cを撮像し、撮像したドットパターン3cから座標情報を演算する。
【0024】
イメージプロセッサ20は、ドットパターン3cを撮像した時間情報、ドットパターン3cから得られる座標値、および、座標値の軌跡を解析することで得られるストローク情報を少なくとも筆跡データとして、時系列でメモリ21に記憶する。なお,デジタルペン2に記憶した筆跡データは,デジタルペン2が照合装置4のペン挿入口4aに挿入され,照合を開始する操作ボタンが押されたとき,照合装置に通信ユニット25で送信される。
【0025】
図4は,照合装置を説明する図である。照合装置4には,CPU,RAMなどを備えた制御ボード40と,文字などを表示するディスプレイ41と,照合を開始するときに押される操作ボタン42と,ジャーナルログを印字するときに押される操作ボタン43と,健康保険証3の利用に係わるジャーナルログをログページ3aに印刷するときに使用するプリンタ44と,ペン挿入口4aに挿入されたデジタルペン2とデータ通信するための通信ユニット46と,健康保険証3のRFIDモジュール30とデータ通信するリーダライタ45を備え,制御ボード10のCPUを動作させるコンピュータプログラムによって実現される手段として,RFIDモジュール30を利用して,デジタルペン2から読み取った筆跡データを照合する照合手段400と,該筆跡データの照合に成功すると,プリンタ44を作動させ,署名が記入された欄3bにジャーナルログを印字する処理を実行する印字手段401が備えられる。
【0026】
照合装置4の通信ユニット46は,デジタルペン2の通信ユニット25に対応し,操作ボタン42が押されたことを検知すると,ペン挿入口4aに挿入されたデジタルペン2のメモリ21に記憶されている筆跡データを読み取った後,該筆跡データをデジタルペン2のメモリ21から消去する動作を行う。
【0027】
照合装置4の照合手段400は,リーダライタ45を作動させて,デジタルペン2から読み取った筆跡データを照合するコマンドを健康保険証3のRFIDモジュール30に送信することで,該筆跡データを照合し,筆跡データの照合結果をディスプレイ41に表示する動作を行う。
【0028】
照合装置4の印字手段401は,照合手段400が筆跡データの照合した後,操作ボタン43が押されたことを検知すると,筆跡データの照合結果を示すジャーナルログを所定の位置に印字する手段である。なお,ジャーナルログを印字する箇所は,筆跡データに含まれる座標値から特定できる。
【0029】
ジャーナルログのフォーマットは任意であるが,冊子体を健康保険証3としたとき,筆跡データの照合の成功を示すジャーナルログには,健康保険証3が利用されるときの日付または日時,健康保険証3が利用される病院名,被保険者の主治医の氏名などが含まれる。また,筆跡データの照合の失敗を示すジャーナルログには米印を利用するとよい。
【0030】
ここから,方法の発明の説明も兼ねて,図1で図示した筆跡照合システム1の一連の動作について説明する。図5は,図1で図示した筆跡照合システム1の一連の動作を説明するフロー図である。被保険者または被保険者の代理人が,デジタルペン2を用いて健康保健証3のログページ3aに署名すると,該署名に対応する筆跡データがデジタルペン2のメモリ21に記憶される(S1)。
【0031】
照合装置4の照合手段400は,操作ボタン42が押されたことを検知すると,ペン挿入口4aに挿入されたデジタルペン2のメモリ21に記憶された筆跡データを読み取り,該筆跡データをデジタルペン2のメモリ21から消去する動作を行った後(S2),読み取った筆跡データを照合するコマンドを健康保険証3のRFIDモジュール30に対して送信する動作を行う(S3)。
【0032】
健康保険証3のRFIDモジュール30は,筆跡データを照合するコマンドを受信すると,RFIDモジュール30に記憶された参照筆跡データを順に利用して,参照筆跡データと該筆跡データの照合を行い,参照筆跡データと筆跡データの照合に成功すると,筆跡データの照合に成功したことを示す照合結果を照合装置4に送信し,筆跡データの照合に成功する参照筆跡データがRFIDモジュール30に記憶されていないとき,筆跡データの照合に失敗したことを示す照合結果を照合装置4に送信する(S4)。
【0033】
照合装置4の照合手段400は,筆跡データの照合結果を健康保険証3のRFIDモジュール30から受信すると,照合結果をディスプレイ41に表示させ,操作ボタン43が押されると,照合装置4の印字手段401は,照合結果に対応するジャーナルログをログページ3aに印字する処理を実行し,この手順を終了させる(S5)。
【0034】
このように,図1で図示した筆跡照合システム1によれば,デジタルペン1を用いて署名を健康保険証3に記入することで,健康保険証3を利用するときの被保険者又は代理人の署名を記録できる。また,デジタルペン1を用いて署名を健康保険証3に記入することで,該署名に対応する筆跡データを取得でき,該筆跡データを電子的に照合し,照合結果を健康保険証3に記憶することができるようになる。
【0035】
なお、本発明は、これまで説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能である。例えば,上述した実施形態では,RFIDモジュールが実装された冊子体を健康保険証としているが,RFIDモジュールが実装された冊子体は,入出国審査に利用されるパスポートや、年金手帳、介護保険などの各種の社会保健及び医療福祉分野にも応用できる。
【符号の説明】
【0036】
1 筆跡照合システム
2 デジタルペン
3 健康保険証
30 RFIDモジュール
4 照合装置
400 照合手段
401 印字手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
筆跡データの照合に利用する参照筆跡データを一つ以上記憶し,外部装置から受信した筆跡データと前記参照筆跡データそれぞれを照合する手段を有するRFIDモジュールが実装された冊子体と,前記冊子体のページに署名を記入するときに利用され,該署名が記入されたときの前記筆跡データを記憶するデジタルペンと,前記デジタルペンから前記筆跡データを読み取り,前記RFIDモジュールを利用して該筆跡データを照合し,前記筆跡データの照合結果に対応するジャーナルログを前記冊子体に印字する照合装置とから少なくとも構成されることを特徴とする筆跡照合システム。
【請求項2】
デジタルペンが、RFIDモジュールが実装された冊子体に署名が記入されたときの筆跡データを記憶するステップ、照合装置が,前記デジタルペンから筆跡データを読み取り,前記RFIDモジュールに該筆跡データを照合させるステップ,前記RFIDモジュールが,前記RFIDモジュールに記憶している参照筆跡データそれぞれと前記照合装置から受信した前記筆跡データを照合し,照合結果を前記照合装置に送信するステップ,前記照合装置が,前記RFIDモジュールから受信した照合結果に対応するジャーナルログを冊子体に印字するステップ、が実行されることを特徴とする筆跡照合方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−70455(P2011−70455A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−221657(P2009−221657)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】