説明

等化器及び等化方法

【課題】従来の等化器は、アナログの処理対象の信号を精度よく線形等化することができない。
【解決手段】等化器の機能を有する処理部5は、アナログの処理対象の信号を線形等化するアナログ等化部11と、アナログの処理対象の信号をデジタル信号に変換する第1A/D変換部12と、第1A/D変換部12によって得られたデジタル信号を線形等化する線形等化部13と、線形等化部13よって得られた信号を仮判定する仮判定部14とを有し、線形等化部13は、仮判定部14によって仮判定された信号を等化目標値として線形等化のための係数を導出し、アナログ等化部11は、線形等化部13によって導出された係数に基づいて、線形等化を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号を等化する等化器及び等化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクから読み出した信号を良好に復号するために、等化回路とビタビ復号回路とを併用することが有効である。これは、例えば、DVDフォーラムにより公開されているHD DVD(High Definition DVD)−ROM Part1(物理)規格書等に示されている。これに対応した光ディスク再生装置では、ディスク駆動回路は、光ディスクを所定の回転速度で回転させ、光ピックアップは、光ディスクに記録されている信号を読み出す。読み出された信号は、プリアンプで増幅された後、AGC(Auto Gain Control)回路等で所定の振幅に増幅される。
【0003】
その後、アナログ等化回路は、AGC回路等によって増幅されたアナログの処理対象の信号を線形等化し、A/D変換回路は、アナログ等化回路によって線形等化されたアナログ信号をデジタル信号に変換する。更に、PLL(Phase Locked Loop)回路は、A/D変換回路によって得られたデジタル信号からクロックを生成し、デジタル等化回路は、生成されたクロックに同期して、A/D変換回路によって得られたデジタル信号を等化する。最後に、ビタビ復号回路は、生成されたクロックに同期して、デジタル等化回路によって等化された信号を復号する。これにより、光ディスクに記録された画像データや音データが再現される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−226546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、光ディスクと光ピックアップとの間で、光ディスク等の傾きによるタンジェンシャルチルトが生じる場合、光ピックアップによって読み出されるアナログ信号は、時間軸方向に関して立ち上がりと立ち下がりとで非対称となる。この時間軸方向に非対称な信号をそのままデジタル信号に変換すると、PLL回路の動作精度は低下し、PLL回路により生成されるクロックの精度が低くなる。
【0006】
この時間軸方向に非対称な信号をより対称となるように回復させるために、PLL回路の前段に配置されるアナログ等化回路による線形等化の精度を高める必要がある。しかしながら、従来、アナログ等化回路における線形等化のためのタップ係数は、固定されるか、又は出力信号に基づいてユーザによって制御されるので、アナログ等化回路による線形等化の精度を高めることは困難であった。
【0007】
本発明は、アナログの処理対象の信号を精度よく線形等化する等化器及び等化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決し上記目的を達成するために、本発明の等化器は、アナログの処理対象の信号を線形等化するアナログ等化部と、前記アナログの処理対象の信号をデジタル信号に変換する変換部と、前記変換部によって得られたデジタル信号を線形等化する線形等化部と、前記線形等化部によって得られた信号を仮判定する仮判定部とを備え、前記線形等化部は、前記仮判定部によって仮判定された信号を等化目標値として線形等化のための係数を導出し、前記アナログ等化部は、前記線形等化部によって導出された係数に基づいて、線形等化を実行する。
【0009】
本発明の等化方法は、アナログの処理対象の信号を線形等化するステップと、前記アナログの処理対象の信号をデジタル信号に変換するステップと、変換によって得たデジタル信号を線形等化するステップと、デジタル信号を線形等化した信号を仮判定するステップとを含み、デジタル信号を線形等化するステップでは、仮判定した信号を等化目標値として線形等化のための係数を導出し、アナログの処理対象の信号を線形等化するステップでは、導出した係数に基づいて、線形等化を実行する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、アナログの処理対象の信号を精度よく線形等化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施の形態1の再生装置の構成図である。
【図2】実施の形態1の処理部の構成図である。
【図3】図2のアナログ等化部の構成図である。
【図4】図2の第1A/D変換部の構成図である。
【図5】図2の第1A/D変換部の別の構成図である。
【図6】図2の線形等化部の構成図である。
【図7】図2の仮判定部の構成図である。
【図8】図2の仮判定部がパーシャルレスポンス(1,2,2,2,1)に対応する場合の状態遷移を示す図である。
【図9】図2の仮判定部がパーシャルレスポンス(1,2,2,2,1)に対応する場合の状態遷移を示す別の図である。
【図10】図7のブランチメトリック演算部の構成図である。
【図11】図7のパスメモリ部の構成図である。
【図12】図7の特定部に保持されるテーブルのデータ構造を示す図である。
【図13】図2の非線形等化部の構成図である。
【図14】図2のアナログ等化部が使用する線形等化のためのタップ係数を導出する動作を示すフローチャートである。
【図15】従来及び図1の再生装置による出力信号のヒストグラムを示す図である。
【図16】実施の形態2の処理部の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態を具体的に説明する前に概要を述べる。本実施の形態は、光ディスクに記録されている信号を光ピックアップにより読み出し、読み出したアナログの処理対象の信号を線形等化し、線形等化した信号をデジタル信号に変換し、変換したデジタル信号を等化し、等化した信号を復号する再生装置に関する。本実施の形態の再生装置は、デジタル信号に対して等化処理と復号処理とを実行するため、変換したデジタル信号からクロックを生成するPLL部を有しており、PLL部により生成したクロックに同期して、デジタル信号を等化する処理と復号処理とを実行する。
【0013】
上述したように、光ディスクと光ピックアップとの間にタンジェンシャルチルトがある場合、アナログの処理対象の信号は時間軸方向に非対称となる。そのため、その信号をそのままデジタル信号に変換すると、PLL部により生成されるクロックの精度は低下する。本実施の形態の再生装置は、PLL部により生成されるクロックの精度を向上させるために、アナログの処理対象の信号に対する線形等化を適切に行う。
【0014】
本実施の形態の再生装置は、アナログの処理対象の信号に対する線形等化を適切に行うために、アナログの処理対象の信号をデジタル信号に変換する変換部と、変換されたデジタル信号を線形等化する線形等化部と、線形等化された信号を仮判定する仮判定部とを有する。線形等化部は、デジタル信号処理における適応アルゴリズムを使用することができ、仮判定部によって仮判定された信号を等化目標値として線形等化のための係数を導出する。
【0015】
本実施の形態の再生装置は、アナログの処理対象の信号を線形等化するアナログ等化部を有しており、アナログ等化部は、線形等化部によって導出された係数に基づいて、線形等化を実行する。このように、本実施の形態の再生装置は、デジタル信号処理における適応アルゴリズムを使用することができる線形等化部により、アナログの処理対象の信号から得たデジタル信号を利用して、アナログ等化部が使用する係数を導出する。これにより、本実施の形態の再生装置は、アナログの処理対象の信号を精度よく線形等化することができる。その結果、PLL部により生成されるクロックの精度は向上する。
【0016】
以下に、本発明を実施するための形態を図面を参照して具体的に説明する。
【0017】
(実施の形態1)
先ず、実施の形態1の再生装置100の構成を説明する。図1は、実施の形態1の再生装置100の構成図である。再生装置100は、光ディスクAに記録されている信号を再生する装置であって、ディスク駆動部1と、光ピックアップ2と、プリアンプ3と、AGC部4と、処理部5とを有する。
【0018】
ディスク駆動部1は、所定の回転速度で光ディスクAを回転させるためのモータである。光ピックアップ2は、光ディスクAに記録されている信号を読み出すとともに、その信号に対して光電変換及び増幅を実行する。光ピックアップ2は、処理したアナログ信号をプリアンプ3へ出力する。
【0019】
プリアンプ3は、光ピックアップ2からの信号を増幅し、AGC部4は、プリアンプ3からの信号を所定の振幅に増幅する。AGC部4によって増幅された信号はアナログ信号であって、AGC部4は、増幅したアナログの処理対象の信号を処理部5へ出力する。処理部5は、AGC部4からのアナログの処理対象の信号を線形等化し、線形等化した信号をデジタル信号に変換し、変換したデジタル信号を等化し、等化した信号を復号する。処理部5は復号した信号を再生装置100の外部へ出力する。光ディスクAは、例えば、DVD又はBD等の再生装置100に着脱可能に構成された記録媒体である。
【0020】
次に、処理部5の構成を詳細に説明する。図2は、実施の形態1の処理部5の構成図である。処理部5は、アナログ等化部11と、第1A/D変換部12と、線形等化部13と、仮判定部14と、第1遅延部15と、第1等化誤差生成部16と、第2A/D変換部17と、デジタル等化部18とを有する。
【0021】
図1に示すAGC部4によって増幅されたアナログの処理対象の信号は、アナログ等化部11と第1A/D変換部12とに送られる。
【0022】
アナログ等化部11は、AGC部4からのアナログの処理対象の信号を順次線形等化する。アナログ等化部11は、トランスバーサルフィルタにより構成されており、多段タップによりアナログの処理対象の信号を遅延させるとともに、多段タップからの出力と対応するタップ係数とを乗算し、各乗算結果を加算する。なお、タップ係数の初期値として、所定の値が設定される。アナログ等化部11は、加算結果を、アナログの処理対象の信号を線形等化した信号として第2A/D変換部17へ出力する。アナログ等化部11の詳細な構成は、図3を用いて後述する。
【0023】
第1A/D変換部12は、AGC部4からのアナログの処理対象の信号をデジタル信号に変換するとともに、デジタル信号からクロックを生成する。第1A/D変換部12の詳細な構成は、図4及び図5を用いて後述する。
【0024】
線形等化部13は、第1A/D変換部12によって生成されたクロックに同期し、デジタル信号処理における適応アルゴリズムを使用して、第1A/D変換部12によって得られたデジタル信号を順次線形等化する。線形等化部13は、FIR(Finite Impulse Response)フィルタにより構成されており、多段タップにより第1A/D変換部12によって得られた信号を遅延させるとともに、多段タップからの出力と対応するタップ係数とを乗算し、各乗算結果を加算する。なお、タップ係数の初期値として、所定の値が設定される。
【0025】
また、線形等化部13は、第1等化誤差生成部16から線形等化用誤差信号302を受け取り、線形等化用誤差信号302に基づいて複数のタップ係数を導出する。その際、線形等化部13は、LMS(Least Mean Square)アルゴリズムのような適応アルゴリズムを使用して、複数のタップ係数を導出する。線形等化部13は、導出した複数のタップ係数303を、自らが実行する線形等化のために使用するとともに、アナログ等化部11へ出力する。線形等化部13によって導出される複数のタップ係数は、デジタルの係数である。線形等化部13の詳細な構成は、図6を用いて後述する。
【0026】
仮判定部14は、線形等化部13から線形等化された信号を受け取り、第1A/D変換部12によって生成されたクロックに同期して、線形等化部13からの信号に対して仮判定を実行する。仮判定部14は、ブランチメトリック演算回路と、パスメトリック演算回路と、パスメモリとを有する。ブランチメトリック演算回路は、線形等化部13によって線形等化された信号からブランチメトリックを算出し、パスメトリック演算回路は、ブランチメトリックを1クロック毎に累積加算してパスメトリックを算出する。パスメモリは、複数の候補系列を保持しており、パスメトリック演算回路からの選択信号にしたがって、パスメトリックが最小となるデータ系列を最も確からしい候補系列として選択して記憶する。
【0027】
また、仮判定部14は、パスメモリに記憶されているデータ系列に対して、パーシャルレスポンス規則にしたがって仮判定を実行することにより、線形等化部13によって線形等化された信号を順次仮判定する。つまり、仮判定部14は、パスメモリに記憶されている候補系列に対して、所定のビット数を使ってパーシャルレスポンスの仮判定を実行する。具体的に説明すると、仮判定部14は、パーシャルレスポンス等化が正常に行われた場合、所定の入力ビットに対する出力のレベルを仮判定し、入力ビットに対して仮判定したレベルを第1仮判定信号301として第1等化誤差生成部16へ出力する。
【0028】
なお、仮判定部14は、パスメモリの最終結果に対して仮判定を行ってもよいが、それに限らず、パスメモリの途中の候補系列に対して仮判定を行ってもよい。例えば、パスメモリ長が64ビットであれば、仮判定部14は、24ビット目又は32ビット目の候補系列に対して仮判定を行ってもよい。仮判定部14の詳細な構成は、図7から図12を用いて後述する。
【0029】
第1遅延部15は、線形等化部13から線形等化された信号を受け取り、その信号を遅延させた後、遅延した信号を第1等化誤差生成部16へ出力する。第1遅延部15は、仮判定部14によって行われる仮判定のための処理遅延に応じた期間にわたって遅延を実行する。つまり、第1遅延部15によって、線形等化された信号が線形等化部13から仮判定部14へ至った後に仮判定部14から出力された第1仮判定信号301が第1等化誤差生成部16へ入力するタイミングと、線形等化部13によって線形等化されて遅延した信号が第1等化誤差生成部16へ入力するタイミングとが合わされる。第1遅延部15は、例えば、ビットクロックで駆動されるラッチ回路により構成される。
【0030】
第1等化誤差生成部16は、第1遅延部15から線形等化された信号を受け取るとともに、仮判定部14から第1仮判定信号301を受け取る。上述したように、線形等化された信号と第1仮判定信号301との第1等化誤差生成部16への入力のタイミングは合っている。第1等化誤差生成部16は、線形等化された信号と第1仮判定信号301との差に基づいて、線形等化用誤差信号302を生成する。例えば、第1等化誤差生成部16は、線形等化された信号から第1仮判定信号301を減ずることによって線形等化用誤差信号302を生成する。第1等化誤差生成部16は、線形等化用誤差信号302を線形等化部13へ出力する。
【0031】
線形等化部13は、上述したように、第1等化誤差生成部16から線形等化用誤差信号302を受け取り、線形等化用誤差信号302に基づいて適応アルゴリズムを使用して複数のタップ係数を導出し、導出した複数のタップ係数を用いて線形等化を実行する。また、線形等化部13は、導出した複数のタップ係数303をアナログ等化部11へ出力する。
【0032】
アナログ等化部11は、線形等化部13から複数のタップ係数303を受け取り、受け取った複数のタップ係数を使用して、図1に示すAGC部4からのアナログの処理対象の信号を線形等化する。アナログ等化部11が使用するタップ係数は、アナログの処理対象の信号から変換されたデジタル信号が利用されて、線形等化部13によって導出された係数である。このように、アナログ等化部11は、デジタル信号処理における適応アルゴリズムを使用することができる線形等化部13によって導出された係数を使用するので、アナログの処理対象の信号を精度よく線形等化することができる。なお、以下では、アナログ等化部11によって得られた信号を「プレ等化信号」と呼ぶ。
【0033】
第2A/D変換部17は、アナログ等化部11によって線形等化されたアナログのプレ等化信号をデジタル信号に変換するとともに、デジタルのプレ等化信号からクロックを生成する。
【0034】
デジタル等化部18は、第2A/D変換部17からデジタルのプレ等化信号を受け取り、受け取ったデジタルのプレ等化信号を等化し、等化した信号を復号する。デジタル等化部18は、図2に示すように、非線形等化部21と、第2遅延部22と、加算部23と、ビタビ復号部24と、第3遅延部25と、第2等化誤差生成部26とを有する。
【0035】
非線形等化部21は、第2A/D変換部17からデジタルのプレ等化信号を受け取り、第2A/D変換部17によって生成されたクロックに同期して、プレ等化信号を順次非線形等化する。非線形等化部21は、ニューラルネットワークにより構成されている。非線形等化部21は、第2等化誤差生成部26から非線形等化用誤差信号305を受け取り、非線形等化用誤差信号305に基づいて、ニューラルネットワークにおける複数のタップ係数を導出する。
【0036】
後述するが、非線形等化用誤差信号305は、第3遅延部25によって遅延した加算部23からの加算信号と、ビタビ復号部24からの第2仮判定信号304との差により生成される。そのため、非線形等化部21は、第2仮判定信号304を教師信号として非線形等化のための係数を導出するといえる。非線形等化部21は、非線形等化によって得た非線形等化信号を加算部23へ出力する。非線形等化部21の詳細な構成は、図13を用いて後述する。
【0037】
第2遅延部22は、第2A/D変換部17からデジタルのプレ等化信号を受け取り、プレ等化信号を遅延させた後、遅延したプレ等化信号を加算部23へ出力する。第2遅延部22は、非線形等化部21によって行われる非線形等化のための処理遅延に応じた期間にわたって遅延を実行する。第2遅延部22は、例えば、ビットクロックで駆動されるラッチ回路により構成される。
【0038】
加算部23は、非線形等化部21から非線形等化信号を受け取るとともに、第2遅延部22からプレ等化信号を受け取り、第2A/D変換部17によって生成されたクロックに同期して、非線形等化信号とプレ等化信号とを加算し、それにより加算信号を生成する。加算部23は、加算信号をビタビ復号部24と第3遅延部25とへ出力する。なお、第2遅延部22によって、プレ等化信号が非線形等化部21へ至った後に非線形等化部21から出力された非線形等化信号が加算部23へ入力するタイミングと、遅延したプレ等化信号が加算部23へ入力するタイミングとが合わされる。
【0039】
ビタビ復号部24は、加算部23から加算信号を受け取り、第2A/D変換部17によって生成されたクロックに同期して、加算信号に対してビタビ復号を実行する。ビタビ復号部24は、仮判定部14と同様に、ブランチメトリック演算回路と、パスメトリック演算回路と、パスメモリとを有する。ビタビ復号部24は、パスメモリにより選択された候補系列をデータ系列として、図1に示す再生装置100の外部へ出力する。
【0040】
また、ビタビ復号部24は、仮判定部14と同様に、加算信号を順次仮判定する。つまり、ビタビ復号部24は、パーシャルレスポンス等化が正常に行われた場合、所定の入力ビットに対する出力のレベルを仮判定し、入力ビットに対して仮判定したレベルを第2仮判定信号304として第2等化誤差生成部26へ出力する。
【0041】
第3遅延部25は、加算部23から加算信号を受け取り、加算信号を遅延させた後、遅延した加算信号を第2等化誤差生成部26へ出力する。第3遅延部25は、ビタビ復号部24による仮判定のための処理遅延に応じた期間にわたって遅延を実行する。つまり、第3遅延部25によって、加算信号が加算部23からビタビ復号部24へ至った後にビタビ復号部24から出力された第2仮判定信号304が第2等化誤差生成部26へ入力するタイミングと、加算信号が第2等化誤差生成部26へ入力するタイミングとが合わされる。第3遅延部25は、例えば、ビットクロックで駆動されるラッチ回路により構成される。
【0042】
第2等化誤差生成部26は、第3遅延部25から加算信号を受け取るとともに、ビタビ復号部24から第2仮判定信号304を受け取る。上述したように、加算信号と第2仮判定信号304との第2等化誤差生成部26への入力のタイミングは合っている。第2等化誤差生成部26は、加算信号と第2仮判定信号304との差に基づいて非線形等化用誤差信号305を生成する。例えば、第2等化誤差生成部26は、加算信号から第2仮判定信号304を減ずることによって非線形等化用誤差信号305を生成する。第2等化誤差生成部26は、非線形等化用誤差信号305を非線形等化部21へ出力する。
【0043】
図3は、アナログ等化部11の構成図である。アナログ等化部11は、トランスバーサルフィルタにより構成されており、多段タップ30と、線形処理部32とを有する。多段タップ30は、遅延タップ34と総称される第1遅延タップ34a、第2遅延タップ34b、第3遅延タップ34c、及び第N遅延タップ34nを有する。線形処理部32は、乗算部36と総称される第1乗算部36a、第2乗算部36b、第3乗算部36c、及び第N+1乗算部36n+1と、タップ係数付与部38と、積算部40とを有する。
【0044】
多段タップ30は、複数の遅延タップ34がシリアルに接続されることによって構成されている。具体的に説明すると、第1遅延タップ34aは、アナログの処理対象の信号を受け取り、遅延後、その信号を出力する。第2遅延タップ34bは、第1遅延タップ34aからアナログの処理対象の信号を受け取り、遅延後、その信号を出力する。第3遅延タップ34cから第N遅延タップ34nも、同様の処理を実行する。遅延タップ34への入力と出力が多段タップ30からの出力信号であり、例えば、4個の遅延タップ34が配置される場合、5個の出力信号が存在する。これらの出力信号は、乗算部36へ送られる。
【0045】
乗算部36は、遅延タップ34から出力信号を受け取るとともに、タップ係数付与部38からタップ係数を受け取る。タップ係数付与部38は、線形等化部13からデジタル信号のタップ係数303を受け取り、受け取ったタップ係数303をアナログ信号に変換して、遅延タップ34からの各出力信号に対応するタップ係数を各乗算部36へ付与する。乗算部36は、対応づけられている出力信号とタップ係数とを乗算する。なお、タップ係数の初期値として、所定の値が設定される。乗算部36は、各乗算結果を積算部40へ出力する。積算部40は、各乗算部36からの乗算結果を加算して加算結果を得て、加算結果をアナログの処理対象の信号を線形等化したアナログ信号として第2A/D変換部17へ出力する。
【0046】
図4は、第1A/D変換部12の構成図である。第1A/D変換部12は、図4に示すように、変換実行部41と、アナログPLL(APLL)42とを有する。変換実行部41は、アナログ信号をデジタル信号に変換し、APLL42は、変換実行部41によって得られたデジタル信号からクロックを生成する。APLL42は、位相比較部43と、ループフィルタ44と、VCO(Voltage Controlled Oscillator)45とを有する。位相比較部43は、変換実行部41によって得られたデジタル信号と、VCO45からのクロック信号とを比較する。ループフィルタ44は、位相比較部43からの信号を直流信号に変換するローパス・フィルタである。VCO45は、ループフィルタ44からの直流信号に基づいて発振周波数を制御し、クロックを生成する。第1A/D変換部12の後段の構成部は、第1A/D変換部12によって生成されたクロックに同期して動作する。
【0047】
図5は、第1A/D変換部12の第2の構成図である。第1A/D変換部12は、図4に示す構成でもよいが、図5に示す構成でもよい。図5に示す第1A/D変換部12は、変換実行部41と、デジタルPLL(DPLL)46とを有する。変換実行部41は、アナログ信号をデジタル信号に変換し、DPLL46は、変換実行部41によって得られたデジタル信号とシステムクロックとの位相誤差を検出し、検出結果を利用して変換実行部41によって得られたデジタル信号からクロックを生成する。
【0048】
このように、第1A/D変換部12は、図4に示す構成でもよいし、図5に示す構成でもよい。なお、第2A/D変換部17も、図4に示す構成でもよいし、図5に示す構成でもよい。
【0049】
図6は、線形等化部13の構成図である。線形等化部13は、FIRフィルタにより構成されており、多段タップ50と、線形処理部52とを有する。多段タップ50は、遅延タップ54と総称される第1遅延タップ54a、第2遅延タップ54b、第3遅延タップ54c、及び第N遅延タップ54nを有する。線形処理部52は、乗算部56と総称される第1乗算部56a、第2乗算部56b、第3乗算部56c、及び第N+1乗算部56n+1と、タップ係数導出部58と、積算部60とを有する。
【0050】
多段タップ50は、複数の遅延タップ54がシリアルに接続されることによって構成されており、図3に示すアナログ等化部11の多段タップ30と同様に動作する。そのため、多段タップ50の詳細な説明を省略する。ただし、多段タップ50は、線形等化部13の多段タップ30とは異なり、デジタル信号を処理する。乗算部56は、遅延タップ54から出力信号を受け取るとともに、タップ係数導出部58からタップ係数を受け取り、アナログ等化部11の乗算部36と同様に、対応づけられている出力信号とタップ係数とを乗算する。乗算部56は、各乗算結果を積算部60へ出力する。積算部60は、各乗算部56からの乗算結果を加算して加算結果を得て、加算結果を、第1A/D変換部12によって得られたデジタル信号を線形等化した信号として仮判定部14及び第1遅延部15へ出力する。
【0051】
タップ係数導出部58は、第1等化誤差生成部16から線形等化用誤差信号302を受け取り、第1A/D変換部12によって得られたデジタル信号がパーシャルレスポンス特性に適合するように、線形等化用誤差信号302と、乗算部56によって得られる乗算結果とを使用して、複数のタップ係数を導出する。その際、タップ係数導出部58は、LMSアルゴリズムのような適応アルゴリズムを使用し、線形等化用誤差信号302が小さくなるようにタップ係数を導出する。タップ係数導出部58は、導出した複数のタップ係数303をアナログ等化部11へ出力する。なお、タップ係数導出部58によって導出される複数のタップ係数は、デジタルの係数である。
【0052】
図7は、仮判定部14の構成図である。仮判定部14は、ブランチメトリック演算部90と、パスメモリ部92と、多数決部94と、特定部96とを有する。ブランチメトリック演算部90は、線形等化部13からの線形等化された信号に基づいて、ブランチメトリック演算及びパスメトリック演算を実行する。そのため、ブランチメトリック演算部90には、上述したブランチメトリック演算回路とパスメトリック演算回路とが含まれる。上述したように、本実施の形態では、パーシャルレスポンス方式が適用される。そこで、仮判定部14の構成を説明する前に、パーシャルレスポンス方式における状態遷移を説明する。
【0053】
図8は、仮判定部14がパーシャルレスポンス(1,2,2,2,1)に対応する場合の状態遷移を示す図である。パーシャルレスポンス(1,2,2,2,1)では、振幅が±4の範囲に収まる。4ビットを1個の組合せとすれば、組合せに含まれる値に応じて、S0からS9までの10状態が規定されている。また、次に入力されるビット値に応じて図8に示すように、状態が遷移する。例えば、状態S0にビット値「1」が入力されると、状態S1へ遷移する。図8において、状態間を結ぶ矢印に「x/y」の値が示されているが、xは、入力されるビット値を示し、yは、元の状態に新たなビット値が加わった5ビットに対する仮判定値を示す。
【0054】
図9は、仮判定部14がパーシャルレスポンス(1,2,2,2,1)に対応する場合の状態遷移を示す。図9は、連続した2個のタイミングでの状態を示しており、各状態は、図8と同様である。
【0055】
図10は、ブランチメトリック演算部90の構成図である。ブランチメトリック演算部90は、加算部110と、二乗回路112と、ACS(Add Compare Select)回路114と、加算部116とを有する。
【0056】
加算部110は、第1加算部110aと、第2加算部110bと、第3加算部110cと、第4加算部110dと、第5加算部110eと、第6加算部110fと、第7加算部110gと、第8加算部110hと、第9加算部110iと、第10加算部110jと、第11加算部110kと、第12加算部110lと、第13加算部110mと、第14加算部110nと、第15加算部110oと、第16加算部110pとを有する。
【0057】
二乗回路112は、第1二乗回路112aと、第2二乗回路112bと、第3二乗回路112cと、第4二乗回路112dと、第5二乗回路112eと、第6二乗回路112fと、第7二乗回路112gと、第8二乗回路112hと、第9二乗回路112iと、第10二乗回路112jと、第11二乗回路112kと、第12二乗回路112lと、第13二乗回路112mと、第14二乗回路112nと、第15二乗回路112oと、第16二乗回路112pとを有する。
【0058】
ACS回路114は、第1ACS回路114aと、第2ACS回路114bと、第3ACS回路114cと、第4ACS回路114dと、第5ACS回路114eと、第6ACS回路114fとを有する。加算部116は、第1加算部116aと、第2加算部116bと、第3加算部116cと、第4加算部116dとを有する。
【0059】
加算部110は、線形等化部13からの線形等化された信号から所定の目標値を減じる。二乗回路112は、加算部110によって得られた減算結果の二乗値を算出する。ACS回路114は、二乗回路112によって得られた二乗値に対して、加算、比較、及び選択によるメトリック演算を実行する。また、ACS回路114は、メトリック演算の結果として、第0選択信号SEL0、第1選択信号SEL1、第2選択信号SEL2、第7選択信号SEL7、第8選択信号SEL8、及び第9選択信号SEL9をパスメモリ部92へ出力する。以下では、第0選択信号SEL0、第1選択信号SEL1、第2選択信号SEL2、第7選択信号SEL7、第8選択信号SEL8、及び第9選択信号SEL9を、選択信号SELと総称する。また、パーシャルレスポンス特性からACS回路114へ入力されない二乗値も存在する。加算部116は、そのような二乗値を加算する。図7に戻る。
【0060】
パスメモリ部92は、ブランチメトリック演算部90から選択信号SELを受け取り、選択信号SELに応じたパスを記憶する。図11は、パスメモリ部92の構成図である。パスメモリ部92は、メモリ120と、選択部122と、多数決部124とを有する。
【0061】
メモリ120は、第11メモリ120aa〜第110メモリ120ajと、第21メモリ120ba〜第210メモリ120bjと、第(L+1)1メモリ120(l+1)a〜第(L+1)10メモリ120(l+1)jとを有する。
【0062】
選択部122は、第11選択部122aa〜第16選択部122afと、第L1選択部122la〜第L6選択部122lfとを有する。
【0063】
実施の形態1では、メモリ120によって1個のパスが記憶され、かつ図8及び図9に示す10種類の状態のそれぞれに対応するように、10種類のパスが記憶される。選択部122は、選択信号SELに応じて、いずれかのパスを選択する。選択されたパスが、生き残りパスに相当する。パスの途中のメモリ120に記憶されたビット値がビット信号306として図7に示す多数決部94へ送られる。ビット信号306には、10種類のパスのうち、同一のタイミングに対応した10のビット値が含まれる。図7に戻る。
【0064】
多数決部94は、ビット信号306を受け取り、ビット信号306に含まれる10のビット値に対して多数決を実行する。多数決部94は、多数決によって選択したビット値(以下、「選択値」という。)を特定部96へ出力する。特定部96は、多数決部94からの選択値を受け取り、ラッチにより選択値を保持する。特定部96は、過去の選択値を含めて、5個のタイミングに対応した選択値から1個の組合せを選択する。なお、特定部96に新たな選択値が入力されると、組合せの中から最も過去の選択値が除外されることにより、組合せが更新される。
【0065】
図12は、特定部96に保持されるテーブルのデータ構造を示す図である。図12に示すように、特定部96に記憶されたテーブルのデータ構造は、メモリ値欄200と、b(k)欄202と、b(k−1)欄204と、b(k−2)欄206と、b(k−3)欄208と、b(k−4)欄210と、仮判定出力欄212とを有する。b(k)は、最も新しく入力された選択値に相当し、b(k−1)は、一つ前のタイミングに入力された選択値に相当し、b(k−4)は、四つ前のタイミングに入力された選択値に相当する。上述したように、これらはラッチにより保持される。
【0066】
b(k)欄202からb(k−4)欄210には、ラッチに保持された選択値が取り得る値の組合せが示されている。メモリ値欄200には、取り得る値に対応したメモリ値が示され、仮判定出力欄212には、取り得る値に対応した仮判定値が示されている。例えば、パスメモリの内容が「00000」であれば、それには仮判定値「−4」が対応づけられており、パスメモリの内容が「00001」であれば、それには仮判定値「−3」が対応づけられている。図7に戻る。特定部96は、図12に示すテーブルを参照しながら、組合せに対応した仮判定値を特定する。特定部96は、仮判定値を第1仮判定信号301として第1等化誤差生成部16へ出力する。
【0067】
図7から図12を用いて仮判定部14を説明したが、ビタビ復号部24は、仮判定部14と同様に構成されている。ビタビ復号部24では、図7に示すブランチメトリック演算部90は、加算部23からの加算信号に基づいて、ブランチメトリック演算及びパスメトリック演算を実行する。また、ビタビ復号部24では、図7に示す特定部96は、仮判定値を第2仮判定信号304として第2等化誤差生成部26へ出力する。更に、ビタビ復号部24では、図11に示すパスメモリ部92の多数決部124は、第(L+1)1メモリ120(l+1)aから第(L+1)10メモリ120(l+1)jのそれぞれに記憶されたビット値を受け取り、多数決を実行する。多数決によって選択されたビット値が、復号結果に相当し、多数決部124は、復号結果を図1に示す再生装置100の外部へ出力する。
【0068】
図13は、非線形等化部21の構成図である。非線形等化部21は、多段タップ70と、非線形処理部72とを有する。多段タップ70は、遅延タップ74と総称される第1遅延タップ74a、第2遅延タップ74b、及び第N遅延タップ74nを有する。非線形処理部72は、乗算部76と、積算部78と、関数演算部80と、乗算部82と、積算部84と、関数演算部86と、タップ係数導出部88とを有する。
【0069】
乗算部76は、第11乗算部76aaと、第12乗算部76abと、第1M乗算部76amと、第21乗算部76baと、第22乗算部76bbと、第2M乗算部76bmと、第(N+1)1乗算部76(n+1)aと、第(N+1)2乗算部76(n+1)bと、第(N+1)M乗算部76(n+1)mとを有する。積算部78は、第1積算部78aと、第2積算部78bと、第M積算部78mとを有する。関数演算部80は、第1関数演算部80aと、第2関数演算部80bと、第M関数演算部80mとを有する。乗算部82は、第1乗算部82aと、第2乗算部82bと、第M乗算部82mとを有する。
【0070】
非線形等化部21は、図13に示すように、3層パーセプトロン型のニューラルネットワークにより構成されている。入力層が多段タップ70に相当し、隠れ層が関数演算部80に相当し、出力層が関数演算部86に相当する。
【0071】
多段タップ70は、複数の遅延タップ74がシリアルに接続されることによって構成されている。具体的に説明すると、第1遅延タップ74aは、第2A/D変換部17からデジタルのプレ等化信号を受け取り、遅延後、プレ等化信号を出力する。第2遅延タップ74bは、第1遅延タップ74aからデジタルのプレ等化信号を受け取り、遅延後、プレ等化信号を出力する。第N遅延タップ74nも、同様の処理を実行する。遅延タップ74への入力と出力が多段タップ70からの出力信号である。これらの出力信号は、乗算部76へ送られる。
【0072】
乗算部76は、多段タップ70からの出力信号と、タップ係数導出部88からのタップ係数とを乗算する。具体的に説明すると、第IJ乗算部76ijは、多段タップ70の先頭からi番目の出力信号S(i)と、タップ係数W1(i,j)とを乗算し、それにより乗算結果U(i,j)を生成する。積算部78は、乗算部76によって得られた乗算結果を次々に加算する。具体的に説明すると、第J積算部78jは、乗算結果U(1,j)、U(2,j)、U(3,j)、・・・、及びU(n+1,j)を加算し、それにより積算結果V(j)を生成する。関数演算部80は、積算部78によって得られた積算結果V(j)を次の(式1)のシグモイド関数のxに代入して演算する。
【0073】
f(x)=(1−exp(−αx))/(1+exp(−αx))…(式1)
関数演算部80によって得られた演算結果が、隠れ層からの出力に相当する。
【0074】
乗算部82は、関数演算部80によって得られた演算結果とタップ係数導出部88からのタップ係数とを乗算する。具体的に説明すると、第J乗算部82jは、第J関数演算部80jによって得られた演算結果X(j)と、タップ係数W2(j)とを乗算し、それにより乗算結果Y(j)を生成する。積算部84は、乗算部82によって得られた乗算結果を次々に加算する。積算部84は、全ての乗算部82によって得られた乗算結果を加算し、それにより積算結果Zを生成する。関数演算部86は、積算部84によって得られた積算結果Zを(式1)のシグモイド関数のxに代入して演算する。関数演算部86によって得られた演算結果が、出力層からの出力に相当し、加算部23へ送られる非線形等化信号である。
【0075】
タップ係数導出部88は、乗算部76及び乗算部82によって使用されるタップ係数W1(i,j)及びタップ係数W2(j)を導出する。タップ係数W1(i,j)及びタップ係数W2(j)の初期値として、所定の値が設定される。タップ係数導出部88は、図6のタップ係数導出部58と同様にLMSアルゴリズムによって、タップ係数W1(i,j)及びタップ係数W2(j)を更新する。タップ係数W1(i,j)及びタップ係数W2(j)の学習は、バックプロパゲーションによって行われる。非線形等化用誤差信号305の二乗値は、次の(式2)により示される。
【0076】
E=(A−D)…(式2)
Aは、非線形等化信号とデジタルのプレ等化信号との和(加算信号)に相当し、Dは、第2仮判定信号304に相当する。つまり、(A−D)は、非線形等化用誤差信号305に相当する。タップ係数導出部88は、Eが最小となるように、タップ係数W1(i,j)及びタップ係数W2(j)を制御する。出力層でのバックプロパゲーションの結果は次の(式3)により示される。
【0077】
(∂E)/(∂Y(j))=f’(Y(j))×2(A−D)…(式3)
タップ係数導出部88は、タップ係数W2(j)を次の(式4)ように更新する。
【0078】
W2(j)=W2(j)old−ε×(∂E)/(∂W2(j))…(式4)
W2(j)oldは、一つ前のタイミングにおけるタップ係数W2(j)を示す。他方、隠れ層でのバックプロパゲーションは次の(式5)ように示される。
【0079】
(∂E)/(∂U(i,j))=
f’(U(i,j))×(∂E)/(∂Y(j))×W2(j)…(式5)
タップ係数導出部88は、タップ係数W1(i,j)を次の(式6)ように更新する。
【0080】
W1(i,j)=
W1(i,j)old−ε×(∂E)/(∂W1(i,j))…(式6)
W1(i,j)oldは、一つ前のタイミングにおけるタップ係数W1(i,j)を示す。
【0081】
次に、再生装置100の動作を説明する。図14は、アナログ等化部11が使用する線形等化のための複数のタップ係数を導出する動作を示すフローチャートである。
【0082】
第1A/D変換部12は、アナログの処理対象の信号をデジタル信号に変換し(S1)、線形等化部13は、第1A/D変換部12によって得られたデジタル信号を線形等化する(S2)。仮判定部14は、線形等化部13からの線形等化された信号を仮判定する(S3)。線形等化部13は、仮判定部14によって仮判定された信号を等化目標値として線形等化のための複数のタップ係数を導出し(S4)、導出した複数のタップ係数をアナログ等化部11に付与する(S5)。アナログの処理対象の信号がまだ存在していれば(S6でYes)、ステップS1へ移行し、アナログの処理対象の信号が存在していなければ(S6でNo)、アナログ等化部11が使用する線形等化のための複数のタップ係数を導出する動作は終了する。
【0083】
このように、実施の形態1では、デジタル信号処理における適応アルゴリズムを使用することができる線形等化部13が、アナログ等化部11による線形等化の精度を高めるために、アナログ等化部11が使用する線形等化のための複数のタップ係数を導出する。アナログ等化部11は、線形等化部13によって導出された複数のタップ係数を用いて、アナログの処理対象の信号を線形等化する。
【0084】
アナログ等化部11によって線形等化されたアナログのプレ等化信号は第2A/D変換部17へ送られ、第2A/D変換部17は、アナログ等化部11からのアナログのプレ等化信号をデジタル信号に変換する。デジタル等化部18は、第2A/D変換部17からのデジタルのプレ等化信号を等化し、等化した信号を復号する。
【0085】
図15は、従来及び再生装置100による市販のBlu−rayディスクから再生した信号のヒストグラムを示す図である。図15(a)は、従来の再生装置により等化した信号のヒストグラムを示す。このときのビットエラーレートは、1.1×10−3であった。他方、図15(b)は、再生装置100により等化した信号のヒストグラムを示す。このときの目標値は、上述したように、パーシャルレスポンス(1,2,2,2,1)の9値である。また、このときのビットエラーレートは、1.5×10−5であった。従来の再生装置における特性の不良は、波形に非線形成分が含まれているので、ビタビ目標値に収束されないためであると推定される。
【0086】
また、同じディスクについてのタンジェンシャルチルトが0.4度である場合、従来の再生装置により再生した信号のビットエラーレートは、2.5×10−4であったのに対し、再生装置100により再生した信号のビットエラーレートは、1.5×10−4であった。更に、タンジェンシャルチルトが0.55度である場合、従来の再生装置により再生したところPLL回路の動作が不良でビットエラーレートを測定することができなかった。それに対し、再生装置100により再生した信号のビットエラーレートは、1.0×10−3であって、問題なく復号処理を行うことができた。
【0087】
上述したように、実施の形態1の再生装置100では、デジタル信号処理における適応アルゴリズムを使用することができる線形等化部13が、アナログの処理対象の信号から変換されたデジタル信号を利用して、アナログ等化部11が使用する線形等化のための複数のタップ係数を導出する。これにより、アナログ等化部11による線形等化の精度が向上する。そのため、光ディスクAと光ピックアップ2との間にタンジェンシャルチルトがあって、光ピックアップ2によって読み出される信号が時間軸方向に非対称な信号であっても、その時間軸方向に非対称な信号をより対称となるように回復させることができる。その結果、第2A/D変換部17のクロックを生成する動作の精度が向上し、精度の高いクロックが生成される。
【0088】
また、実施の形態1の再生装置100では、非線形等化部21は、ビタビ復号部24が出力する第2仮判定信号304を教師信号とするので、トレーニング信号を使用することなく、非線形等化のための係数を導出することができる。つまり、再生装置100は、トレーニング信号を使用することなく非線形等化を実行することができる。したがって、再生装置100は、記録密度の向上や記録パワー変動等によって、光ディスクAから読み出された信号に非線形歪が含まれていても、トレーニング信号を用いることなくその非線形歪を低減することができる。
【0089】
なお、上述した実施の形態1では、アナログの処理対象の信号は、光ディスクAから読み出されたアナログ再生信号である。しかしながら、アナログの処理対象の信号は、通信によって受信された信号であってもよい。
【0090】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2の再生装置を説明する。実施の形態1と実施の形態2とは、処理部5の構成のみが異なる。したがって、実施の形態2では、処理部5を図16を用いて説明する。
【0091】
図16は、実施の形態2の再生装置を構成する処理部5の構成図である。実施の形態2の処理部5は、図16に示すように、実施の形態1の処理部5が有する構成部と同じ構成部を有している。しかし、デジタル等化部18の内部構成が実施の形態1と実施の形態2とで異なる。なお、図16に示す実施の形態2の処理部5が有する第1線形等化部13は、図2に示す実施の形態1の処理部5が有する線形等化部13と同一である。
【0092】
実施の形態2のデジタル等化部18は、実施の形態1のデジタル等化部18が有する構成部と同様の構成部を有しているが、実施の形態1のデジタル等化部18が有する第2遅延部22を有しておらず、第2線形等化部27と、第4遅延部28と、第3等化誤差生成部29とを有する。
【0093】
第2線形等化部27は、第1線形等化部13と同一の構成であって、FIRフィルタにより構成されており、第2A/D変換部17によって生成されたクロックに同期して、第2A/D変換部17によって得られたデジタルのプレ等化信号を線形等化する。加算部23は、第2線形等化部27によって得られた線形等化信号と、非線形等化部21によって得られた非線形等化信号とを加算し、それによって加算信号を生成する。
【0094】
第4遅延部28は、加算部23から加算信号を受け取り、ビタビ復号部24による仮判定のための処理遅延に応じた期間にわたって加算信号を遅延させた後、遅延した加算信号を第3等化誤差生成部29へ出力する。第4遅延部28によって、加算信号が加算部23からビタビ復号部24へ至った後にビタビ復号部24から出力された第2仮判定信号304が第3等化誤差生成部29へ入力するタイミングと、加算信号が第3等化誤差生成部29へ入力するタイミングとが合わされる。第4遅延部28は、例えば、ビットクロックで駆動されるラッチ回路により構成される。
【0095】
第3等化誤差生成部29は、第4遅延部28から加算信号を受け取るとともに、ビタビ復号部24から第2仮判定信号304を受け取る。第3等化誤差生成部29は、加算信号と第2仮判定信号304との差に基づいて第2線形等化用誤差信号307を生成する。例えば、第3等化誤差生成部29は、加算信号から第2仮判定信号304を減ずることによって第2線形等化用誤差信号307を生成する。第3等化誤差生成部29は、第2線形等化用誤差信号307を第2線形等化部27へ出力する。
【0096】
第2線形等化部27は、第3等化誤差生成部29から第2線形等化用誤差信号307を受け取り、第2線形等化用誤差信号307に基づいて適応アルゴリズムを使用して複数のタップ係数を導出し、導出した複数のタップ係数を用いて線形等化を実行する。
【0097】
実施の形態2では、処理部5において、第2線形等化部27がデジタルのプレ等化信号を線形等化する。これにより、実施の形態2の再生装置は、実施の形態1の再生装置100に比べて、線形誤差をより強力に等化することができる。
【0098】
なお、上述した各実施の形態の再生装置の各構成要件は、例えば、コンピュータのCPU及びメモリ等のハードウエアと、ソフトウエア(プログラム)とが協働することによって実現される。しかしながら、再生装置の各構成要件は、専用のハードウエアによって実現されてもよく、実現手段は限定されない。
【符号の説明】
【0099】
100 再生装置、 1 ディスク駆動部、 2 光ピックアップ、 3 プリアンプ、 4 AGC部、 5 処理部、 11 アナログ等化部、 12 第1A/D変換部、 13 線形等化部、 14 仮判定部、 15 第1遅延部、 16 第1等化誤差生成部、 17 第2A/D変換部、 18 デジタル等化部、 21 非線形等化部、 22 第2遅延部、 23 加算部、 24 ビタビ復号部、 25 第3遅延部、 26 第2等化誤差生成部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログの処理対象の信号を線形等化するアナログ等化部と、
前記アナログの処理対象の信号をデジタル信号に変換する変換部と、
前記変換部によって得られたデジタル信号を線形等化する線形等化部と、
前記線形等化部によって得られた信号を仮判定する仮判定部とを備え、
前記線形等化部は、前記仮判定部によって仮判定された信号を等化目標値として線形等化のための係数を導出し、
前記アナログ等化部は、前記線形等化部によって導出された係数に基づいて、線形等化を実行する
等化器。
【請求項2】
更に、前記変換部によって得られたデジタル信号からクロックを生成するクロック生成部を備え、
前記線形等化部及び前記仮判定部は、前記クロック生成部によって生成されたクロックに同期して動作する
請求項1に記載の等化器。
【請求項3】
更に、
前記アナログ等化部によって線形等化されたアナログ信号をデジタル信号に変換する第2変換部と、
前記第2変換部によって得られたデジタル信号を等化するデジタル等化部と
を備える請求項1に記載の等化器。
【請求項4】
更に、前記第2変換部によって得られたデジタル信号からクロックを生成するクロック生成部を備え、
前記デジタル等化部は、前記クロック生成部によって生成されたクロックに同期して動作する
請求項3に記載の等化器。
【請求項5】
アナログの処理対象の信号を線形等化するステップと、
前記アナログの処理対象の信号をデジタル信号に変換するステップと、
変換によって得たデジタル信号を線形等化するステップと、
デジタル信号を線形等化した信号を仮判定するステップとを含み、
デジタル信号を線形等化するステップでは、仮判定した信号を等化目標値として線形等化のための係数を導出し、
アナログの処理対象の信号を線形等化するステップでは、導出した係数に基づいて、線形等化を実行する
等化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−8836(P2011−8836A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148642(P2009−148642)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】