説明

等方性黒鉛材料及びその製造方法

【課題】嵩密度が高く、クラックの抑制された等方性黒鉛材料を提供すること、及び、このような等方性黒鉛材料を容易に製造できる製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の等方性黒鉛材料は、球形化黒鉛及び/又は塊状化黒鉛を、等方的加圧して成型したことを特徴とし、嵩密度が1.5g/cm3以上であることが好ましい。また、本発明の製造方法は、球形化黒鉛及び/又は塊状化黒鉛を、等方的加圧により成型することを特徴とする。前記球形化黒鉛及び/又は塊状化黒鉛のタップ密度は、0.8g/cm3以上が好ましく、体積平均粒子径は、8μm〜50μmが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、等方性黒鉛材料に関するものであり、特に嵩密度が高い等方性黒鉛材料、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、黒鉛材料は、アルミニウム蒸着用のるつぼ、放電加工用の黒鉛電極等に、また最近では、その高い熱伝導性を利用して伝熱材料としても使用されている。ここで、黒鉛材料を作製するにあたり、原料として天然黒鉛を用いた場合、加圧成型により得られる成型体は、強度が低く、また、異方性を有するため電気抵抗率等のばらつきが大きいという問題がある(特許文献1(比較例4)参照)。そこで、電気抵抗率や機械的強度に等方性を有する等方性黒鉛材料を得る方法が提案されている。例えば、特許文献1には、コークス等の非黒鉛炭素を微粉砕したものにバインダーピッチ等の結合剤を混合して、得られた混合物をラバープレス(等方圧成型)した成形物を炭化、黒鉛化して等方性黒鉛材料を製造する方法が提案されている(特許文献1(請求項1)参照)。
【0003】
また、特許文献2には、フィラー原料として、針状コークス微粉末と天然黒鉛微粉末を使用し、これらのフィラー原料とピッチ系バインダーとの混練物を微粉砕し、粉砕微粉を静水圧プレスにより成型し、黒鉛化して等方性黒鉛材料を製造する方法が提案されている(特許文献2(請求項1)参照)。この製造方法では、針状コークス微粉末を用いることで黒鉛化工程における黒鉛材料の膨張を抑制し、天然黒鉛微粉末を配合させることで黒鉛材料を気体不透過性にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平1−16789号公報
【特許文献2】特開平7−165467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
黒鉛材料を製造するにあたり、コークス微粉末等の非黒鉛性炭素質材料を原料として用いることにより、得られる黒鉛材料の等方性を高めることができる。しかしながら、原料にコークス微粉末を用いた場合、成型するにはピッチ等の結合剤を多量に使用する必要がある。このピッチ等は熱処理によっても黒鉛化し難く、最終的に得られる黒鉛材料の黒鉛化度が小さく、黒鉛材料の嵩密度が低くなり、電気伝導率が高くなる傾向がある。また、熱処理によって、コークスやピッチを黒鉛化する際に、結晶化の進行に伴って黒鉛材料が変形して、クラックを発生するという問題がある。
一方、鱗片状天然黒鉛を原料として用いれば、原料の黒鉛化度が高いため、得られる黒鉛材料の黒鉛化度も高くなる。また、成型時の加圧圧力を高めることで嵩密度の高い黒鉛材料を得ることもできる。しかしながら、原料形状が鱗片状であるため、加圧成型時に鱗片状黒鉛が一定方向に配向し易く、得られる成型体に異方性が生じ易い。また、鱗片状黒鉛はタップ密度が低いため、プレス成型前とプレス成型後の体積差が大きく、プレス時に変形やクラックの発生等の問題が生じ易い。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、嵩密度が高く、クラックの抑制された等方性黒鉛材料を提供すること、及び、このような等方性黒鉛材料を容易に製造できる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決することができた本発明の等方性黒鉛材料は、球形化黒鉛及び/又は塊状化黒鉛を、等方的加圧して成型したことを特徴とする。前記等方性黒鉛材料の嵩密度は1.5g/cm3以上が好ましい。
本発明の等方性黒鉛材料の製造方法は、球形化黒鉛及び/又は塊状化黒鉛を、等方的加圧により成型することを特徴とする。前記球形化黒鉛及び/又は塊状化黒鉛のタップ密度は、0.8g/cm3以上が好ましく、体積平均粒子径は、8μm〜50μmが好ましい。前記製造方法は、前記球形化黒鉛及び/又は塊状化黒鉛と、結合剤とを混合した後、等方的加圧する態様;前記等方的加圧した後、成型物を熱処理する態様も好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の等方性黒鉛材料は、クラックが抑制されており、且つ、嵩密度が高いため、電気抵抗率が低く、圧縮強さが高い。
本発明の製造方法では、原料として、結晶性が高く、真密度が高い黒鉛を用いるため、成型後の嵩密度を容易に高めることができる。また、球状及び/又は塊状の黒鉛を用いるため、成型前の嵩密度が高められ、成型時のクラック発生を低減でき、さらに成型体の構造も等方性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の等方性黒鉛材料は、球形化黒鉛及び/又は塊状化黒鉛を、等方的加圧して成型されたものである。これら球形化黒鉛や塊状化黒鉛はもともと黒鉛化度が高いため、得られる等方性黒鉛材料の黒鉛化度も高くなる。また、球形化黒鉛、塊状化黒鉛は、黒鉛結晶の方向がランダムであり等方性が高い。さらに、球形化あるいは塊状化によって嵩密度が高められており、等方的加圧により成型した場合でも黒鉛が配向せず、且つ、圧縮変形量が小さい。そのため、本発明の黒鉛材料は、等方性及び嵩密度が高く、且つ、クラックが抑制されたものとなる。
【0010】
以下、本発明の等方性黒鉛材料について、その製造方法とともに、詳細に説明する。本発明の等方性黒鉛材料は、原料として球形化黒鉛及び/又は塊状化黒鉛を使用する。
【0011】
前記球形化黒鉛としては、天然黒鉛(好ましくは鱗片状天然黒鉛)を球形化した球形化黒鉛、炭素含有材料(ピッチ等)を球形化して黒鉛化処理した球形化黒鉛等が挙げられる。前記塊状化黒鉛としては、天然黒鉛(好ましくは鱗片状天然黒鉛)と炭素含有材料(ピッチ等)とを混合し、焼成した後、粉砕したものが挙げられる。原料としては、球形化黒鉛が好ましく、より好ましくは鱗片状天然黒鉛を球形化した球形化黒鉛である。鱗片状天然黒鉛は黒鉛化度が高いため、より電気抵抗率が低減された黒鉛材料が得られる。
【0012】
前記鱗片状天然黒鉛を球形化した球形化黒鉛を製造する方法としては、例えば、鱗片状天然黒鉛粒子を衝突させて、球形化(凝集、粉砕、再凝集していてもよい)する方法が挙げられる。具体的には、円筒状に配置された衝突板と、この衝突板内部に配された回転ブレードを有する装置を使用し、前記ブレードによって鱗片状黒鉛を衝突板に衝突させながら球形化する方法;ジェットミルを使用して、鱗片状天然黒鉛を造粒処理する方法(本発明者らが先に提案した方法(特開平11−263612号公報))が挙げられる。また、鱗片状天然黒鉛を球形化した後、球形化されなかった微粉末を除去してもよい。
【0013】
球形化方法の一例として、ジェットミルを用いた造粒処理について説明する。ジェットミルを用いた造粒処理では、衝突域の気流に入った鱗片状黒鉛粒子は互いに衝突し、凝集あるいは粉砕されながら再凝集して球形化する。
前記ジェットミルとしては、例えば、ホソカワミクロン社製、「カウンタージェットミル 100AFG」が挙げられる。造粒処理では、ノズル吐出空気圧を0.03MPa(より好ましくは0.05MPa、さらに好ましくは0.1MPa)以上、0.3MPa(より好ましくは0.25MPa、さらに好ましくは0.2MPa)以下とすることが好ましい。分級ロータの回転速度は8000rpm(より好ましくは9000rpm、さらに好ましくは10000rpm)以上、15000rpm(より好ましくは14000rpm、さらに好ましくは13000rpm)以下とすることが好ましい。操作時間は5分間(より好ましくは10分間、さらに好ましくは15分間)以上、60分間(より好ましくは40分間、さらに好ましくは30分間)以下とすることが好ましい。
【0014】
前記球形化黒鉛及び塊状化黒鉛の体積平均粒子径は、8μm以上が好ましく、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは15μm以上であり、50μm以下が好ましく、より好ましくは45μm以下、さらに好ましくは40μm以下である。原料黒鉛の体積平均粒子径が上記範囲内であれば、得られる黒鉛材料の電気抵抗率、圧縮強さが良好となる。
黒鉛材料の電気抵抗率を特に低くしたい場合には、前記球形化黒鉛及び/又は塊状化黒鉛の体積平均粒子径は15μm以上が好ましく、より好ましくは20μm以上、さらに好ましくは25μm以上である。また、黒鉛材料の圧縮強さを特に高くしたい場合には、前記球形化黒鉛及び/又は塊状化黒鉛の体積平均粒子径は40μm以下が好ましく、より好ましくは35μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。
【0015】
前記球形化黒鉛及び塊状化黒鉛のタップ密度は、0.8g/cm3以上が好ましく、より好ましくは0.85g/cm3以上、さらに好ましくは0.9g/cm3以上である。原料のタップ密度が高い程、加圧成型時の圧縮変形量が減少し、得られる黒鉛材料のクラックをより低減できる。前記タップ密度の上限は特に限定されないが、通常1.4g/cm3程度である。
【0016】
前記球形化黒鉛及び塊状化黒鉛は、高密度化処理した後、使用することも好ましい態様である。球形化黒鉛及び/又は塊状化黒鉛のタップ密度を高めることで、加圧成型時の圧縮変形量をさらに減少させ、得られる黒鉛材料の嵩密度を一層向上させ、電気抵抗率を一層低減することができる。
【0017】
前記球形化黒鉛及び/又は塊状化黒鉛を高密度化処理する方法としては、例えば、ガス、液体等の加圧媒体を用いて、球形化された黒鉛を等方的に加圧する方法(後述する成型のための等方的加圧と区別するため、前処理加圧という。)が好ましい。当該方法としては、例えば、高温で等方的に加圧する熱間等方加圧処理(Hot Isostatic Pressing)、水、アルゴン等を加圧媒体として用いて、室温で等方的に加圧する冷間等方加圧処理(Cold Isostatic Pressing)等が挙げられ、冷間等方加圧処理が好適である。
【0018】
前処理加圧処理を行う際の圧力は20MPa以上が好ましく、より好ましくは50MPa以上、さらに好ましくは100MPa以上である。加圧圧力が高い程、黒鉛中の内部空隙を低減し嵩密度を高められる。なお、加圧圧力がある程度高くなると、内部空隙を低減する効果が飽和するため、加圧圧力の上限は200MPa程度である。
【0019】
前処理加圧処理の処理時間(加圧保持時間)は、1分間以上が好ましく、より好ましくは3分間以上、さらに好ましくは5分間以上である。加圧保持時間が長いほど、黒鉛中の内部空隙を低減し嵩密度を高められる。なお、加圧保持時間がある程度長くなると、内部空隙を低減する効果が飽和するため、加圧保持時間の上限は30分間程度である。
【0020】
前記加圧処理を施した球形化黒鉛、塊状化黒鉛は解砕することが好ましい。得られた加圧成型体を解砕することによって、好ましい体積平均粒子径を有し、且つ、嵩密度が高められた黒鉛原料が得られる。解砕の方法は特に限定されないが、例えば、撹拌羽根を有する撹拌機を用いて行うことができ、通常のジェットミル、振動ミル、ピンミル、ハンマーミル等の公知の粉砕機を使用してもよい。また、解砕不足を防止するため、解砕後の黒鉛粒子は篩を通過させることが好ましい。
【0021】
また、前記球形化黒鉛及び/又は塊状化黒鉛には、結合剤を混合してもよい。結合剤を含ませることにより、得られる黒鉛材料の圧縮強さをより高めることができる。
【0022】
前記結合剤としては、例えば、石炭ピッチ、コールタールピッチ、石油系ピッチ、合成ピッチ等のピッチ;石油系油(石油系重質油の接触分解油、熱分解油、常圧残油、減圧残油等)、石炭系油等の重質油;ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、クリセン、ペリレン等の縮合多環芳香族を加熱加圧して得られるタール;塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、芳香族ポリアミド、フルフリルアルコール樹脂、イミド樹脂等の樹脂;が挙げられる。これらの結合剤は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、石炭ピッチ、コールタールピッチ、石油系ピッチ、合成ピッチ等のピッチが好ましい。
【0023】
前記結合剤を配合する場合、結合剤の使用量は、前記球形化黒鉛及び塊状化黒鉛と結合剤との合計100質量%中、3質量%以上が好ましく、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは8質量%以上であり、30質量%以下が好ましく、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。
【0024】
前記球形化黒鉛及び/又は塊状化黒鉛と結合剤とを混合する方法は、特に限定されず、材料の融点や軟化点によるが、例えば、黒鉛原料及び結合剤がいずれも固体の状態で機械的に混合する方法;結合剤が液体の状態で機械的に混合する方法;結合剤を溶媒(例えば、N−メチルピロリドン)に溶解させて、これらを混合する方法等の従来用いられる方法を採用すればよい。また混合する際の温度は、使用する結合剤の融点や軟化点以上、硬化温度や揮発温度以下等、使用する結合剤に応じて適宜決定すればよい。
【0025】
なお、前記結合剤を用いた場合、得られる黒鉛材料の黒鉛化度が低下し、電気抵抗率が上昇する傾向がある。そのため、黒鉛材料の電気抵抗率を低くしたい場合には、前記結合剤の使用量を、10質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。電気抵抗率を低くする場合には、結合剤を使用しないことも好ましい態様である。
【0026】
本発明の等方性黒鉛材料は、前記球形化黒鉛及び/又は塊状化黒鉛、又は、球形化黒鉛及び/又は塊状化黒鉛と結合剤との混合物を、等方的加圧(本加圧)により成型することで得られる。
【0027】
前記等方的加圧の方法としては、例えば、高温で等方的に加圧する熱間等方加圧処理(Hot Isostatic Pressing)、水、アルゴン等を加圧媒体として用いて、室温で等方的に加圧する冷間等方加圧処理(Cold Isostatic Pressing)等が挙げられ、冷間等方加圧処理が好適である。
【0028】
加圧処理を行う際の圧力は100MPa以上が好ましく、より好ましくは150MPa以上、さらに好ましくは180MPa以上である。加圧圧力が高い程、得られる黒鉛材料の嵩密度を高くできる。なお、加圧圧力がある程度高くなると、嵩密度を高める効果が飽和するため、加圧圧力の上限は300MPa程度である。
【0029】
加圧処理の処理時間(加圧保持時間)は、1分間以上が好ましく、より好ましくは3分間以上、さらに好ましくは5分間以上である。加圧保持時間が長い程、得られる黒鉛材料の嵩密度を高くできる。なお、加圧保持時間がある程度長くなると、嵩密度を高める効果が飽和するため、加圧保持時間の上限は30分間程度である。
【0030】
また、等方的加圧により得られた成型物(本加圧)は、熱処理を施してもよい。熱処理することにより、得られる黒鉛材料の黒鉛化度を一層高めることができ、また、結合剤を使用した場合には結合剤を黒鉛化することができ、熱伝導性、電気伝導性を向上できる。
【0031】
前記熱処理を行う際の加熱温度は500℃以上が好ましく、より好ましくは600℃以上、さらに好ましくは700℃以上である。加熱温度が高い程、結合剤の黒鉛化度、真密度を高めることができるため、得られる黒鉛材料の電気抵抗率を一層低減し、嵩密度をより高めることができる。加熱温度の上限としては、3000℃程度が一般的である。なお、熱処理時の雰囲気は、アルゴン、ヘリウム、窒素等の不活性ガス雰囲気が好ましい。
【0032】
等方性黒鉛材料は、加圧成型により所望とする形状に成型してもよいし、加圧成型後の成型物に切削等を施して、所望とする形状に成型してもよい。前記等方性黒鉛材料は、嵩密度が1.5g/cm3以上であることが好ましく、より好ましくは1.7g/cm3以上、さらに好ましくは1.8g/cm3以上、一層好ましくは1.85g/cm3以上、特に好ましくは1.9g/cm3以上である。嵩密度が高いほど、電気抵抗率が低下し、圧縮強さ及び耐摩耗性が向上する傾向がある。なお、嵩密度の上限は特に限定されないが、通常2.2g/cm3程度である。
【0033】
本発明の等方性黒鉛材料は、電極、抵抗熱ヒーター、るつぼ等に好ましく使用される。
【実施例】
【0034】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、前・後記の趣旨に適合しうる範囲で適宜変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0035】
1.評価方法
体積平均粒子径
レーザー式粒度分布測定装置(島津社製、SALD(登録商標)−2000A)を用いて測定を行い、体積基準メディアン径を求めた。
【0036】
タップ密度(密充填嵩密度)
試料容器(150ml)に黒鉛粒子30gを投入し、タッピング式粉体減少度測定器(筒井理化学器械社製、TPM−3形)を用いて、タッピング巾45mm、タッピング回数500回の条件でタッピングを行った。タッピング後の黒鉛粒子の体積を確認し、嵩密度を算出し、これをタップ密度とした。
【0037】
嵩密度
黒鉛成型体の質量を測定し、また、黒鉛成型体の高さ、幅、奥行きを測定して体積を求めた。得られた質量、体積から、黒鉛成型体の嵩密度を算出した。
【0038】
電気抵抗率
黒鉛成型体の電気抵抗率(体積低効率)を四端子法により測定した。具体的には、黒鉛成型体の幅方向の両端をステンレス鋼板で挟みこみ、両端に1Aの電流を流した。この際、黒鉛成型体の幅方向の長さの2/3の距離(L)間の電位差(V)を測定した。黒鉛成型体の電流を流した方向に対して垂直方向の断面積(S)とL、Vから次式を用いて電気抵抗率を算出した。
電気抵抗率={電位差(V)×断面積(S)}/{電流(1A)×距離(L)}
【0039】
圧縮強さ
圧縮試験機(オリエンテック社製、TENSILON RTC−1325A)を用いて、黒鉛成型体を10mm/minの速度で圧縮し、破壊した時の荷重(N)を測定した。圧縮方向に対して垂直方向の断面積(S)とNから次式を用いて圧縮強度を算出した。
圧縮強度=破壊時荷重(N)/断面積(S)
【0040】
2.CIP処理球形化黒鉛の調製
調製例1
球形化天然黒鉛粒子(平均粒子径20μm、タップ密度1.00g/cm3、鱗片状天然黒鉛を球形化したもの)を、ポリプロピレン製袋に充填、密閉した後、静水圧成型装置(日本研究開発株式会社製)に装填し、100MPa、5分間の条件で加圧処理した。得られた加圧体を75μm以下に解砕して、CIP処理球形化天然黒鉛粒子を得た。このCIP処理球形化天然黒鉛粒子の平均粒子径は21μm、タップ密度は1.07g/cm3であった。
【0041】
3.黒鉛成型体の製造
製造例1
球形化天然黒鉛粒子(平均粒子径28μm、タップ密度1.01g/cm3、鱗片状天然黒鉛を球形化したもの)を、ポリプロピレン製袋に充填、密閉した後、静水圧成型装置(日本研究開発株式会社製)に装填し、200MPa、5分間の条件で加圧処理した。得られた加圧体を窒素気流中、800℃で2時間熱処理して黒鉛成型体を得た。得られた黒鉛成型体は、略円柱状のクラックのない成型体であった。得られた黒鉛成型体を、一辺が20〜25mmの立方体に切り出し、嵩密度、電気抵抗率、圧縮強さを測定した。
【0042】
製造例2
球形化天然黒鉛粒子(平均粒子径20μm、タップ密度1.00g/cm3、鱗片状天然黒鉛を球形化したもの)を、ポリプロピレン製袋に充填、密閉した後、静水圧成型装置(日本研究開発株式会社製)に装填し、200MPa、5分間の条件で加圧処理した。得られた加圧体を窒素気流中、800℃で2時間熱処理して黒鉛成型体を得た。得られた黒鉛成型体は、略円柱状のクラックのない成型体であった。得られた黒鉛成型体を、一辺が20〜25mmの立方体に切り出し、嵩密度、電気抵抗率、圧縮強さを測定した。
【0043】
製造例3
球形化天然黒鉛粒子(平均粒子径13μm、タップ密度0.88g/cm3、鱗片状天然黒鉛を球形化したもの)を、ポリプロピレン製袋に充填、密閉した後、静水圧成型装置(日本研究開発株式会社製)に装填し、200MPa、5分間の条件で加圧処理した。得られた加圧体を窒素気流中、800℃で2時間熱処理して黒鉛成型体を得た。得られた黒鉛成型体は、略円柱状のクラックのない成型体であった。得られた黒鉛成型体を、一辺が20〜25mmの立方体に切り出し、嵩密度、電気抵抗率、圧縮強さを測定した。
【0044】
製造例4
調製例1で得たCIP処理球形化天然黒鉛粒子(平均粒子径21μm、タップ密度1.07g/cm3)を、ポリプロピレン製袋に充填、密閉した後、静水圧成型装置(日本研究開発株式会社製)に装填し、200MPa、5分間の条件で加圧処理した。得られた加圧体を窒素気流中、800℃で2時間熱処理して黒鉛成型体を得た。得られた黒鉛成型体は、略円柱状のクラックのない成型体であった。得られた黒鉛成型体を、一辺が20〜25mmの立方体に切り出し、嵩密度、電気抵抗率、圧縮強さを測定した。
【0045】
製造例5
球形化天然黒鉛粒子(平均粒子径28μm、タップ密度1.01g/cm3、鱗片状天然黒鉛を球形化したもの)95質量部に、ピッチ(軟化点120℃、揮発分40質量%)5質量部をN−メチルピロリドン(NMP)4質量部に溶解した溶液を添加し、撹拌機を用いて混合した。得られた混合物を100℃の乾燥機中で乾燥した後、ポリプロピレン製袋に充填、密閉した後、静水圧成型装置(日本研究開発株式会社製)に装填し、200MPa、5分間の条件で加圧処理した。得られた加圧体を窒素気流中、800℃で2時間熱処理して黒鉛成型体を得た。得られた黒鉛成型体は、略円柱状のクラックのない成型体であった。得られた黒鉛成型体を、一辺が20〜25mmの立方体に切り出し、嵩密度、電気抵抗率、圧縮強さを測定した。
【0046】
製造例6
球形化天然黒鉛粒子(平均粒子径20μm、タップ密度1.00g/cm3、鱗片状天然黒鉛を球形化したもの)95質量部に、ピッチ(軟化点120℃、揮発分40質量%)5質量部をN−メチルピロリドン(NMP)4質量部に溶解した溶液を添加し、撹拌機を用いて混合した。得られた混合物を100℃の乾燥機中で乾燥した後、ポリプロピレン製袋に充填、密閉した後、静水圧成型装置(日本研究開発株式会社製)に装填し、200MPa、5分間の条件で加圧処理した。得られた加圧体を窒素気流中、800℃で2時間熱処理して黒鉛成型体を得た。得られた黒鉛成型体は、略円柱状のクラックのない成型体であった。得られた黒鉛成型体を、一辺が20〜25mmの立方体に切り出し、嵩密度、電気抵抗率、圧縮強さを測定した。
【0047】
製造例7
球形化天然黒鉛粒子(平均粒子径13μm、タップ密度0.88g/cm3、鱗片状天然黒鉛を球形化したもの)90質量部に、ピッチ(軟化点120℃、揮発分40質量%)10質量部をN−メチルピロリドン(NMP)7質量部に溶解した溶液を添加し、撹拌機を用いて混合した。得られた混合物を100℃の乾燥機中で乾燥した後、ポリプロピレン製袋に充填、密閉した後、静水圧成型装置(日本研究開発株式会社製)に装填し、200MPa、5分間の条件で加圧処理した。得られた加圧体を窒素気流中、800℃で2時間熱処理して黒鉛成型体を得た。得られた黒鉛成型体は、略円柱状のクラックのない成型体であった。得られた黒鉛成型体を、一辺が20〜25mmの立方体に切り出し、嵩密度、電気抵抗率、圧縮強さを測定した。
【0048】
製造例8
鱗片状天然黒鉛粒子(平均粒子径20μm、タップ密度0.34g/cm3)を、ポリプロピレン製袋に充填、密閉した後、静水圧成型装置(日本研究開発株式会社製)に装填し、200MPa、5分間の条件で加圧処理した。得られた加圧体を窒素気流中、800℃で2時間熱処理して黒鉛成型体を得た。得られた黒鉛成型体は、表面に凹凸やクラックが多数発生し、変形した成型体であった。得られた黒鉛成型体を、一辺が20〜25mmの立方体に切り出し、嵩密度、電気抵抗率、圧縮強さを測定した。
【0049】
製造例9
コークス(平均粒子径10μm、タップ密度0.78g/cm3)90質量部に、ピッチ(軟化点120℃、揮発分40質量%)10質量部をN−メチルピロリドン(NMP)7質量部に溶解した溶液を添加し、撹拌機を用いて混合した。得られた混合物を100℃の乾燥機中で乾燥した後、ポリプロピレン製袋に充填、密閉した後、静水圧成型装置(日本研究開発株式会社製)に装填し、200MPa、5分間の条件で加圧処理した。得られた加圧体を窒素気流中、800℃で2時間熱処理して黒鉛成型体を得た。得られた黒鉛成型体は、略円柱状ではあったが、空隙(クラック)が多いものであった。得られた黒鉛成型体を、一辺が20〜25mmの立方体に切り出し、嵩密度、電気抵抗率、圧縮強さを測定した。
【0050】
【表1】

【0051】
製造例1〜7は、原料として球形化天然黒鉛粒子を用いた場合であるが、いずれにおいても得られた黒鉛成型体は嵩密度が高く、且つ、クラックが抑制されていた。これらの中でも、結合剤を使用していない製造例1〜4では電気抵抗率がより低減されていることがわかる。一方、結合剤を使用した製造例5〜7では圧縮強さがより向上していることがわかる。
【0052】
製造例8は、原料として鱗片状黒鉛を用いた場合であるが、鱗片状黒鉛のタップ密度が小さく、加圧処理時における圧縮変形量が大きいため、得られた黒鉛成型体にはクラックが発生していた。また、加圧処理時に鱗片状黒鉛が配向してしまい、電気抵抗率等に異方性を有するものとなった。
製造例9は、原料として塊状コークスを用いた場合であるが、加圧処理時のコークスの変形が生じないため、コークス粒子間の間隙が小さくならず、得られた黒鉛成型体にはクラックが発生していた。また、コークスを用いる場合、結合剤としてピッチを使用する必要があるため、得られる黒鉛成型体は黒鉛化度が低く、電気抵抗率が高いものであった。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の等方性黒鉛材料は、電極、抵抗熱ヒーター、るつぼ等に好ましく使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
球形化黒鉛及び/又は塊状化黒鉛を、等方的加圧して成型したことを特徴とする等方性黒鉛材料。
【請求項2】
嵩密度が1.5g/cm3以上である請求項1に記載の等方性黒鉛材料。
【請求項3】
球形化黒鉛及び/又は塊状化黒鉛を、等方的加圧により成型することを特徴とする等方性黒鉛材料の製造方法。
【請求項4】
前記球形化黒鉛及び/又は塊状化黒鉛のタップ密度が、0.8g/cm3以上である請求項3に記載の等方性黒鉛材料の製造方法。
【請求項5】
前記球形化黒鉛及び/又は塊状化黒鉛の体積平均粒子径が、8μm〜50μmである請求項3又は4に記載の等方性黒鉛材料の製造方法。
【請求項6】
前記球形化黒鉛及び/又は塊状化黒鉛と、結合剤とを混合した後、等方的加圧する請求項3〜5のいずれか1項に記載の等方性黒鉛材料の製造方法。
【請求項7】
前記等方的加圧した後、成型物を熱処理する請求項3〜6のいずれか1項に記載の等方性黒鉛材料の製造方法。

【公開番号】特開2013−1582(P2013−1582A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131578(P2011−131578)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000156961)関西熱化学株式会社 (117)
【出願人】(507249993)株式会社MCエバテック (8)
【Fターム(参考)】