説明

筋ジストロフィー治療のためのユートロフィン誘導に関するACTRIIBタンパク質およびその改変体およびその使用

特定の態様では、本発明は、筋ジストロフィーのための療法としてActRIIBタンパク質を用いて、筋肉におけるユートロフィン発現を誘導するための組成物および方法を提供する。本発明は、ActRIIBタンパク質および/またはActRIIBリガンドの活性を調節する化合物をスクリーニングする方法も提供する。一実施形態において、筋細胞膜のユートロフィンの増加を必要とする患者において、筋細胞膜のユートロフィンを増加させるための方法が提供され、この方法は、以下:a.配列番号2のアミノ酸29〜109の配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;およびb.ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で配列番号3の核酸とハイブリダイズする核酸によってコードされるポリペプチドからなる群より選択される化合物を有効量で投与するステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この出願は、2009年11月17日に出願された仮出願第61/281,386号、2010年3月26日に出願された同第61/318,126号および2010年5月5日に出願された同第61/331,686号の利益を主張する。上記で参照された出願の教示のすべてが、参考として本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は、ジストロフィンをコードする遺伝子における種々の異なる突然変異に起因する遺伝病である。ジストロフィンは、収縮する筋線維に構造的完全性をもたらす大きな細胞骨格タンパク質である。DMD患者は、あったとしてもわずかな機能性ジストロフィンを産生し、その結果、各筋線維を取り囲む筋細胞膜が脆弱になる。この脆弱性の結果として、DMD患者は、一般には2歳から6歳で始まる骨格筋および心筋の進行性変性を示す。この疾患は、全身性の衰弱および筋消耗を引き起こす。30代前半を越えて生存することはめったにない。
【0003】
関連し、そしていくらか軽度の状態であるベッカー型筋ジストロフィー(BMD)では、患者はいくらかの機能性ジストロフィンを産生するが、筋肉組織の正常な耐久性および維持をもたらすには不十分である。BMD患者は、通常、DMD患者よりも寿命が長い。
【0004】
DMDおよびBMDは現在のところ不治の疾患であるが、調査中の1つの治療的アプローチは、ユートロフィンと呼ばれるタンパク質のレベルを増加させる因子を用いた処置を伴う。ユートロフィンは、ジストロフィンと構造的および機能的に類似している。さらに、ユートロフィンは、通常、胎児発生の間に筋線維に存在し、神経筋接合部の成熟線維に残る。ユートロフィンは、十分なレベルで、筋細胞膜に適切に局在化すると、DMDの動物モデルにおいてジストロフィンが存在しないことを部分的に代償する証拠を示す。
【0005】
DMD患者およびBMD患者は正常なユートロフィン遺伝子を有し、ユートロフィン生成を増加させることによって患者の筋線維の強度が増大する可能性があり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、ユートロフィン生成および/またはユートロフィンの筋細胞膜への局在化を増加させる因子が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
特定の態様では、本開示は、ActRIIBシグナル伝達経路のアンタゴニストを使用することによって、DMD患者およびBMD患者におけるユートロフィンの発現および/または筋線維の細胞膜(筋細胞膜)への局在化を増加させるための方法を提供する。このようなアンタゴニストは、例えば、可溶性のActRIIBタンパク質(例えば、ActRIIB−Fc融合タンパク質)、ActRIIBに結合する、またはActRIIBの発現を阻害するアンタゴニスト、およびActRIIBを通じてシグナルを送り、骨格筋または心筋におけるユートロフィンの発現の調節に関与するリガンドに結合する、またはその発現を阻害するアンタゴニストであり得る。このようなリガンドとしては、ミオスタチン、GDF3、アクチビン、BMP7、BMP2およびBMP4が挙げられる。特に、本開示は、筋ジストロフィーのマウスモデルにおいて、ActRIIB−Fc融合タンパク質が筋細胞膜でのユートロフィンの発現を増加させることを実証している。ActRIIBシグナル伝達経路のアンタゴニストは、筋細胞膜の損傷に対する抵抗性を増加させることによって、DMDおよびBMDなどのジストロフィン欠乏状態の特徴である筋肉傷害、炎症および変性のサイクルを減少させ得る。これらの有益な作用は、全体的な筋肉の量および強度に対するActRIIBアンタゴニストの明白な作用と合わさる。結果として、本開示は、筋障害の管理におけるActRIIB経路のアンタゴニストの使用について、筋線維のサイズおよび強度を増加させることを強調するパラダイムから、筋ジストロフィーに特に関連性のある特徴である筋線維の完全性を増加させることを認めるパラダイムへと移すパラダイムシフトを提供する。筋ジストロフィー患者における筋肉の脆弱性の結果は、クレアチンキナーゼ(特にMMアイソフォーム、CK−MMとも呼ばれる)などの筋肉変性の血清マーカーの増加である。本明細書において提供されるデータは、ActRIIB経路のアンタゴニストは、筋線維の完全性を増加させ、したがって、CK−MMなどの血清マーカーのレベルを減少させ得ることを示している。したがって、血清CK−MMレベルなどの筋肉変性のマーカーが、DMD患者およびBMD患者におけるこのような療法の有効性をモニターするための機構として使用され得る。例えば、筋肉変性のマーカーの減少が不十分であることは、利益が不十分であるため、用量を増加させる、または投薬を終了する指標として使用され得、そして、筋肉変性のマーカーの減少が成功したことは、成功裏の用量に達したことの指標として使用され得る。同様に、筋肉変性のマーカーが上昇している患者は、ActRIIBアンタゴニストで処置するために特に適した候補であり得る。Zatzら(J. Neurol. Sci. 1991年102巻(2号):190〜6頁)に記載の通り、DMD患者およびBMD患者では、CKレベルは筋肉変性が最大になる期間中に最大に到達し(一般には、DMDでは1〜6歳、7歳または8歳、BMDでは10〜15歳の年齢範囲)、したがって、筋肉変性のマーカーが高レベルである(この病態(disease state)を有する他者と比較してさえ上昇している、例えば、このような疾患を有する他の患者の50%、60%、70%、80%、90%より高い血清CK−MMレベル)DMD患者およびBMD患者は、ActRIIB−Fcタンパク質などのActRIIBアンタゴニストで処置するために特に適した患者である。
【0008】
特定の態様では、本開示は、ユートロフィンの筋細胞膜での発現の増加を必要とする患者に、有効量のActRIIB関連ポリペプチドを投与することによってユートロフィンの筋細胞膜での発現を増加させるための方法を提供する。ActRIIB関連ポリペプチドは、GDF3、BMP2、BMP4、BMP7、GDF8、GDF11、アクチビンまたはNodalなどのActRIIBリガンドに結合するActRIIBポリペプチド(例えば、ActRIIBの細胞外ドメインまたはその部分)であり得る。任意選択で、ActRIIBポリペプチドは、ActRIIBリガンドに、10マイクロモル濃度未満または1マイクロモル濃度未満、100ナノモル濃度未満、10ナノモル濃度未満または1ナノモル濃度未満のKdで結合する。種々の適切なActRIIBポリペプチドが、その全てが本明細書中に参考として援用される以下の公開されたPCT特許出願に記載されている:WO00/43781、WO04/039948、WO06/012627、WO07/053775、WO08/097541、およびWO08/109167。任意選択で、ActRIIBポリペプチドは、ActRIIBリガンドによって誘発される細胞内のシグナル伝達事象などの、ActRIIBシグナル伝達を阻害する。このような調製物に用いられる可溶性ActRIIBポリペプチドは、配列番号1、2、5、12および23から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、または配列番号:1、2、5、12および23から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%または99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドなどの本明細書に開示されるもののいずれかであり得る。可溶性ActRIIBポリペプチドは、天然のActRIIBポリペプチドの機能的フラグメント、例えば、配列番号1、2、5、12および23から選択される配列の少なくとも10、20もしくは30アミノ酸を含むもの、またはC末端の1、2、3、4、5もしくは10〜15アミノ酸を欠き、N末端の1、2、3、4もしくは5アミノ酸を欠く配列番号1の配列を含み得る。任意選択で、ポリペプチドは、配列番号1と比較して、N末端の2〜5アミノ酸、およびC末端の3以下のアミノ酸の切断を含む。別のポリペプチドは、配列番号12として示されているものである。可溶性ActRIIBポリペプチドは、天然に存在するActRIIBポリペプチドに対して、(例えば、リガンド結合ドメインにおいて)アミノ酸配列に1、2、3、4、5以上の変更を含み得る。アミノ酸配列の変更は、例えば哺乳動物、昆虫もしくは他の真核細胞において生成される場合にポリペプチドのグリコシル化を変更し得るか、または、天然に存在するActRIIBポリペプチドに対して、ポリペプチドのタンパク質分解による切断を変更し得る。可溶性ActRIIBポリペプチドは、1つのドメインとして、ActRIIBポリペプチド(例えば、ActRIIBのリガンド結合ドメインまたはその改変体)と、所望の特性、例えば、改良された薬物動態、より容易な精製、特定の組織への標的化などを提供する1または複数のさらなるドメインとを有する融合タンパク質であり得る。例えば、融合タンパク質のドメインは、インビボ安定性、インビボ半減期、取込み/投与、組織局在化もしくは分布、タンパク質複合体の形成、融合タンパク質の多量体化、および/または精製のうちの1または複数を増強し得る。可溶性のActRIIB融合タンパク質は、免疫グロブリン定常ドメイン、例えばFcドメイン(野生型または変異体)など、または血清アルブミンを含み得る。特定の実施形態では、ActRIIB−Fc融合物は、Fcドメインと細胞外のActRIIBドメインとの間に位置する比較的構造化されていないリンカーを含む。この構造化されていないリンカーは、ActRIIBの細胞外ドメインのC末端の約15アミノ酸の構造化されていない領域(「テール」)に対応することができるか、またはそれは、二次構造が比較的存在しない5〜15、20、30、50もしくはそれ以上のアミノ酸の人工配列であってもよい。リンカーは、グリシン残基およびプロリン残基が豊富であり得、そして例えば、トレオニン/セリンおよび/またはグリシンの繰り返し配列または非繰り返し配列(例えば、TG、TG、SG、SG、G、G、G、G)を含み得る。融合タンパク質は、エピトープタグ、FLAGタグ、ポリヒスチジン配列、および、GST融合物のような精製サブ配列(purification subsequence)を含み得る。任意選択で、可溶性ActRIIBポリペプチドは、グリコシル化アミノ酸、PEG化アミノ酸、ファルネシル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ビオチン化アミノ酸、脂質部分に結合体化されたアミノ酸、および有機誘導体化因子(organic derivatizing agent)に結合体化されたアミノ酸から選択される1または複数の修飾されたアミノ酸残基を含む。一般に、ActRIIBタンパク質は、患者における望ましくない免疫応答の可能性を低減するために、ActRIIBタンパク質の天然のグリコシル化を適切に媒介する哺乳動物細胞株において発現されることが好ましい。ヒトおよびCHOの細胞株は、首尾よく使用されており、そして、他の一般的な哺乳動物発現ベクターが有用であることが予想される。
【0009】
特定の態様では、本明細書に開示されている化合物は薬学的調製物として処方することができる。薬学的調製物は、ActRIIB関連障害を処置するために使用される化合物のような1または複数のさらなる化合物も含み得る。薬学的調製物は、実質的に発熱物質を含まないことが好ましい。
【0010】
特定の態様では、本開示は、可溶性ActRIIBポリペプチドをコードし、完全なActRIIBポリペプチドをコードしない核酸を提供する。単離されたポリヌクレオチドは、上述のような可溶性ActRIIBポリペプチドのコード配列を含み得る。例えば、単離された核酸は、ActRIIBの細胞外ドメイン(例えば、リガンド結合ドメイン)をコードする配列およびActRIIBの、膜貫通ドメインおよび/もしくは細胞質ドメインの一部もしくは全部をコードする配列を含み得るが、膜貫通ドメイン内もしくは細胞質ドメイン内、または、細胞外ドメインと膜貫通ドメインもしくは細胞質ドメインとの間に位置する終止コドンは除く。例えば、単離されたポリヌクレオチドは、配列番号4などの完全長ActRIIBポリヌクレオチド配列(図4)または部分的切断バージョンを含むことができ、前記単離されたポリヌクレオチドは、3’末端の少なくとも600ヌクレオチド前に、さもなければ、ポリヌクレオチドの翻訳が、完全長ActRIIBの切断部分に任意選択で融合される細胞外ドメインを生成するように置かれた転写終結コドンをさらに含む。本明細書に開示されている核酸は、発現のためのプロモーターに作動可能に連結され得、そして、本開示は、このような組換えポリヌクレオチドで形質転換された細胞を提供する。細胞は、CHO細胞などの哺乳動物の細胞であることが好ましい。
【0011】
特定の態様では、本開示は、可溶性ActRIIBポリペプチドを作製するための方法を提供する。このような方法は、適切な細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などにおいて、本明細書中に開示される核酸のいずれか(例えば、配列番号3)を発現させることを包含し得る。このような方法は、a)可溶性ActRIIBポリペプチドの発現に適した条件下で細胞を培養するステップであって、前記細胞が、可溶性のActRIIB発現構築物で形質転換される、ステップと、b)このようにして発現された可溶性ActRIIBポリペプチドを回収するステップとを包含し得る。可溶性ActRIIBポリペプチドは、細胞培養物からタンパク質を得るための周知技術のいずれかを用いて、粗製、部分的に精製された、または高度に精製された画分として回収することができる。
【0012】
特定の態様では、本明細書に記載の化合物を使用して筋細胞膜でのユートロフィンの発現を増加させることは、ジストロフィンタンパク質が存在しない、欠乏している、または欠損している筋ジストロフィーの処置において有用であり得る。例としては、デュシェンヌ型筋ジストロフィーおよびベッカー型筋ジストロフィーの処置が挙げられる。
【0013】
特定の態様では、本開示は、細胞におけるActRIIBポリペプチドまたはActRIIBリガンド(例えば、GDF8、GDF11、アクチビン、BMP7、およびNodal)の活性に拮抗するための方法を提供する。方法は、細胞を可溶性ActRIIBポリペプチドと接触させるステップを含む。任意選択で、ActRIIBポリペプチドまたはActRIIBリガンドの活性を、ActRIIB/ActRIIBリガンド複合体によって媒介されるシグナル伝達によって、例えば、細胞増殖、肥大、またはユートロフィンの発現のレベルまたはユートロフィンの局在化をモニターすることによってモニターする。この方法の細胞としては、ミオサイトおよび筋肉細胞が挙げられる。
【0014】
特定の態様では、本開示は、本明細書に記載の障害または状態を処置するための医薬を作製するための、可溶性ActRIIBポリペプチドの使用を提供する。
【0015】
特定の態様では、本開示は、ユートロフィンの筋細胞膜での発現の増加を必要とする患者においてユートロフィンの筋細胞膜での発現を増加させるための方法を提供し、このような方法は、配列番号2のアミノ酸29〜109の配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、および配列番号3の核酸(図3)とストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする核酸によってコードされるポリペプチドからなる群より選択される化合物を有効量で投与することを包含し得る。ポリペプチドは、異種部分を含む融合タンパク質であり得る。ポリペプチドは、二量体であり得る。ポリペプチドは、免疫グロブリンの定常ドメインと融合され得る。ポリペプチドは、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4などの免疫グロブリンのFc部分と融合され得る。ポリペプチドは、配列番号2(図2)のアミノ酸29〜109、29〜128、29〜131、29〜134、25〜109、25〜128、25〜131、25〜134または20〜134の配列と少なくとも80%、90%、93%、95%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含み得る。ポリペプチドは、配列番号5、12または23のアミノ酸の配列と少なくとも80%、90%、93%、95%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含み得る。このような化合物で処置される患者は、本明細書に記載の障害、例えば、筋ジストロフィーを含めた障害を有する患者であり得る。
【0016】
特定の態様では、本開示は、ユートロフィンの筋細胞膜での発現の増加を必要とする患者において、ユートロフィンの筋細胞膜での発現を増加させるための方法であって、ActRIIB、またはActRIIBを通じてシグナルを送るリガンドのいずれかを標的化することによってActRIIBシグナル伝達経路を阻害する化合物を、有効な量で投与することを包含する方法を提供する。このような化合物の例としては、ActRIIBのアンタゴニスト;ミオスタチンのアンタゴニスト;BMP7のアンタゴニスト;BMP2のアンタゴニスト;BMP4のアンタゴニストおよびGDF3のアンタゴニストが挙げられる。前述のそれぞれのアンタゴニストは、このような標的に特異的に結合し、それを阻害する抗体または他のタンパク質(例えば、モノクローナル抗体などの抗体、または、ミオスタチンおよびGDF3の場合ではプロペプチド)であり得る。また、前述のアンタゴニストは、ActRIIBまたはリガンドの発現を阻害する核酸ベースの化合物(例えば、アンチセンス核酸またはRNAi核酸)などの化合物であり得る。このような化合物で処置される患者は、本明細書に記載の障害、例えば、筋ジストロフィーを含めた障害を有する患者であり得る。
【0017】
本特許または出願のファイルは、カラーで製作された少なくとも1つの図面を含有する。(1または複数の)カラーの図面を伴う本特許または特許出願公開のコピーは、要請し、必要な料金を支払えば、特許庁により提供されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、ヒトActRIIB可溶性(細胞外)ポリペプチド配列(配列番号1)を示す。C末端の「テール」に下線を付した。
【図2】図2は、ヒトActRIIB前駆体タンパク質配列(配列番号2)を示す。シグナルペプチドに下線を付し;細胞外ドメイン(配列番号1とも呼ばれる)を太字にし;潜在的なN−連結グリコシル化部位を枠で囲った。
【図3】図3は、配列番号3で示される、ヒトActRIIB可溶性(細胞外)ポリペプチドをコードする核酸配列を示す。
【図4】図4は、配列番号4で示される、ヒトActRIIB前駆体タンパク質をコードする核酸配列を示す。
【図5】図5は、本明細書において推定される残基を有するヒトActRIIA(配列番号14)およびヒトActRIIBのアラインメントを示し、これは、枠で示した、リガンドと直接接触させるための多数のActRIIBおよびActRIIAの結晶構造(リガンド結合ポケット)の合成分析に基づく。
【図6】図6は、種々の脊椎動物のActRIIBタンパク質およびヒトActRIIA(配列番号15〜22)の複数の配列アラインメントを示す。
【図7】図7は、ActRIIB(25〜131)−hFcの完全なアミノ酸配列を示す。TPAリーダー(残基1〜22)および切断されたActRIIB細胞外ドメイン(天然の残基25〜131)のそれぞれに下線を付す。配列決定によって成熟融合タンパク質のN末端アミノ酸であることが明らかになったグルタミン酸を目立たせている。
【図8−1】図2は、ActRIIB(25〜131)−hFcをコードするヌクレオチド配列を示す(上にコード鎖を示し、下に3’〜5’で相補物(complement)を示している)。TPAリーダーをコードする配列(ヌクレオチド1〜66)およびActRIIB細胞外ドメインをコードする配列(ヌクレオチド73〜396)に下線を付す。ActRIIB(25〜131)に対応するアミノ酸配列も示されている。
【図8−2】図2は、ActRIIB(25〜131)−hFcをコードするヌクレオチド配列を示す(上にコード鎖を示し、下に3’〜5’で相補物(complement)を示している)。TPAリーダーをコードする配列(ヌクレオチド1〜66)およびActRIIB細胞外ドメインをコードする配列(ヌクレオチド73〜396)に下線を付す。ActRIIB(25〜131)に対応するアミノ酸配列も示されている。
【図9】図9は、筋ジストロフィーのmdxマウスモデルにおける、筋肉におけるユートロフィンタンパク質レベルに対する、20週間にわたるActRIIB(20〜134)−mFc処置の作用を示す。A.大胸筋のホモジネートにおけるユートロフィンタンパク質のウェスタンブロット分析。B.Aに示されているユートロフィンバンドの、GAPDH(グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ)タンパク質に対して正規化した濃度測定による定量化であり、相対単位(RU)で表している。データは、平均±SEM;群当たりn=5;*、p<0.05である。中年のmdxマウスをActRIIB(20〜134)−mFcを用いて慢性的な処置をすることにより、胸筋におけるユートロフィンレベルが80%超増加した。
【図10】図10は、筋ジストロフィーのmdxマウスモデルにおける、筋線維におけるユートロフィンの分布に対する、20週間にわたるActRIIB(20〜134)−mFc処置の作用を示す。長指伸筋(extensor digitorum longus)(EDL)を通った横断切片を示している。スケールバーは50μmである。ActRIIB(20〜134)−mFc処置により、筋細胞膜のユートロフィンのレベルが広く増加した。A.mdxマウスを、ビヒクルで処置した。B.mdxマウスを、ActRIIB(20〜134)−mFcで処置した。
【図11】図11は、図10をより明瞭にするために拡大したものを示す。スケールバーは50μmである。A.mdxマウスを、ビヒクルで処置した。B.mdxマウスを、ActRIIB(20〜134)−mFcで処置した。
【図12】図12は、血清クレアチンキナーゼレベルに対するActRIIB(20〜134)−mFcの作用を示す。A.実施例7に記載の試験の実験設計を示す。B.グラフは、4つの実験群それぞれについての血清クレアチンキナーゼレベルを示す。第4群は、第1群〜第3群のそれぞれよりも統計学的に低い血清クレアチンキナーゼレベルを有した。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.概要
特定の態様では、本発明は、ActRIIBポリペプチドに関する。本明細書中で使用される、用語「ActRIIB」は、任意の種に由来するアクチビンIIB型受容体(ActRIIB)タンパク質およびActRIIB関連タンパク質のファミリーを指す。ActRIIBファミリーのメンバーは、一般に、全てが、システインリッチ領域を有するリガンド結合性細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および予測セリン/スレオニンキナーゼ特異性を有する細胞質ドメインで構成される、膜貫通タンパク質である。ヒトActRIIA前駆体タンパク質(配列番号14、比較のために提供した)およびActRIIB前駆体タンパク質のアミノ酸配列を図5に示す。
【0020】
用語「ActRIIBポリペプチド」は、ActRIIBファミリーのメンバーの任意の天然に存在するポリペプチド、ならびに、有用な活性を保持するその任意の改変体(変異体、フラグメント、融合物、およびペプチド模倣形態を含む)を含むポリペプチドを指すために使用される。例えば、ActRIIBポリペプチドは、ActRIIBポリペプチドの配列と少なくとも約80%同一の配列、および、好ましくは少なくとも85%、90%、95%、97%、99%またはそれより高い同一性を有する任意の公知のActRIIBの配列から誘導されたポリペプチドを包含する。
【0021】
特定の実施形態では、本発明は、可溶性ActRIIBポリペプチドに関する。本明細書に記載の通り、用語「可溶性ActRIIBポリペプチド」は、一般に、ActRIIBタンパク質の細胞外ドメインを含むポリペプチドを指す。本明細書中で使用される場合、用語「可溶性ActRIIBポリペプチド」は、任意の天然に存在するActRIIBタンパク質の細胞外ドメイン、ならびに、有用な活性を保持するその任意の改変体(変異体、フラグメントおよびペプチド模倣形態を含む)を包含する。例えば、ActRIIBタンパク質の細胞外ドメインは、リガンドに結合し、また、一般に可溶性である。可溶性ActRIIBポリペプチドの例としては、図1に示したActRIIB可溶性ポリペプチドが挙げられる(配列番号1)。可溶性ActRIIBポリペプチドの他の例は、ActRIIBタンパク質の細胞外ドメインに加えて、シグナル配列を含む(実施例1を参照されたい)。シグナル配列は、ActRIIBの天然のシグナル配列、または組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)のシグナル配列もしくはミツバチメリチン(melatin)(HBM)シグナル配列などの別のタンパク質由来のシグナル配列であり得る。
【0022】
TGF−βシグナルは、I型およびII型のセリン/スレオニンキナーゼ受容体のヘテロマー複合体(heteromeric complex)によって媒介され、これらは、リガンド刺激の際に、下流のSmadタンパク質をリン酸化および活性化する(Massague、2000年、Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 1巻:169〜178頁)。これらのI型およびII型の受容体は、全て、システインリッチ領域を有するリガンド結合性細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および、予測セリン/スレオニン特異性を有する細胞質ドメインから構成される膜貫通タンパク質である。I型受容体は、シグナル伝達に必須であり、そして、II型受容体は、リガンド結合およびI型受容体の発現に必要とされる。I型およびII型のアクチビン受容体は、リガンド結合の後に安定な複合体を形成し、II型受容体によるI型受容体のリン酸化をもたらす。
【0023】
2つの関連するII型受容体であるActRIIAおよびActRIIBが、アクチビンに対するII型受容体として同定されている(MathewsおよびVale、1991年、Cell 65巻:973〜982頁;Attisanoら、1992年、Cell 68巻:97〜108頁)。ActRIIAおよびActRIIBは、アクチビンに加えて、BMP7、Nodal、GDF8、およびGDF11を含むいくつかの他のTGF−βファミリータンパク質と生化学的に相互作用し得る(Yamashitaら、1995年、J. Cell Biol. 130巻:217〜226頁;LeeおよびMcPherron、2001年、Proc. Natl. Acad. Sci. 98巻:9306〜9311頁;YeoおよびWhitman、2001年、Mol. Cell 7巻:949〜957頁;Ohら、2002年、Genes Dev. 16巻:2749〜54頁)。出願人は、可溶性のActRIIA−Fc融合タンパク質およびActRIIB−Fc融合タンパク質はインビボで実質的に異なる作用を有し、ActRIIA−Fcは骨に対する一次作用を有し、ActRIIB−Fcは骨格筋に対する一次作用を有することを見出だした。
【0024】
特定の実施形態では、本発明は、本主題のActRIIBポリペプチド(例えば、可溶性ActRIIBポリペプチド)でActRIIB受容体のリガンド(ActRIIBリガンドとも称される)に拮抗することに関する。したがって、本発明の組成物および方法は、1または複数のActRIIB受容体のリガンドの異常な活性に関連する障害を処置するために有用である。例示的なActRIIB受容体のリガンドとしては、アクチビン、Nodal、GDF8、GDF11およびBMP7などのいくつかのTGF−βファミリーのメンバーが挙げられる。
【0025】
アクチビンは、二量体ポリペプチド増殖因子であり、そしてTGF−βスーパーファミリーに属する。3種のアクチビン(A、BおよびAB)が存在し、これらは、2つの密接に関連するβサブユニットのホモ二量体/ヘテロ二量体(ββ、ββおよびββ)である。TGF−βスーパーファミリーにおいて、アクチビンは、卵巣および胎盤の細胞におけるホルモン生成を刺激し得、ニューロン細胞(neuronal cell)の生存を支援し得、細胞周期の進行に対して細胞型に依存して正もしくは負に影響を及ぼし得、そして、少なくとも両生類の胚において中胚葉分化を誘導し得る、独特かつ多機能の因子である(DePaoloら、1991年、Proc Soc Ep Biol Med.198巻:500〜512頁;Dysonら、1997年、Curr Biol.7巻:81〜84頁;Woodruff、1998年、Biochem Pharmacol.55巻:953〜963頁)。さらに、刺激されたヒト単球性白血病細胞から単離された赤血球分化因子(EDF)は、アクチビンAと同一であることが分かった(Murataら、1988年、PNAS、85巻:2434頁)。アクチビンAは、骨髄における赤血球生成の天然の制御因子として作用することが示唆された。いくつかの組織では、アクチビンのシグナル伝達は、その関連するヘテロ二量体であるインヒビンによって拮抗される。例えば、下垂体からの卵胞刺激ホルモン(FSH)の放出の間に、アクチビンは、FSHの分泌および合成を促進するが、インヒビンは、FSHの分泌および合成を抑制する。アクチビンの生活性を調節し得、そして/または、アクチビンに結合し得る他のタンパク質としては、フォリスタチン(FS)、フォリスタチン関連タンパク質(FSRP)、α−マクログロブリン、ケルベロス(cerberus)、およびエンドグリン(endoglin)(これらは以下に記載される)が挙げられる。
【0026】
Nodalタンパク質は、中胚葉および内胚葉の誘導および形成、ならびに初期胚形成における心臓および胃などの軸構造物の以降の組織化において機能を果たす。発生中の脊椎動物の胚の背側組織は脊索および前索板の軸構造物に主に寄与し、同時に、それは周辺細胞を動員して非軸性の胚性構造物を形成することが実証されている。Nodalは、I型およびII型の両受容体ならびにSmadタンパク質として公知の細胞内のエフェクターを通してシグナル伝達するようである。最近の研究は、ActRIIAおよびActRIIBがNodalのためのII型受容体の役目を果たすという考えを支持している(Sakumaら、Genes Cells.2002年、7巻:401〜12頁)。Nodalリガンドは、それらの補助因子(例えば、cripto)と相互作用して、Smad2をリン酸化するアクチビンI型およびII型受容体を活性化させることが示唆されている。Nodalタンパク質は、中胚葉形成、前方パターニングおよび左右軸の特異化を含む、初期の脊椎動物の胚に重要な多くの事象との関係が示唆されている。実験上の証拠は、Nodalシグナル伝達が、アクチビンおよびTGF−βに特異的に反応することが前に示されたルシフェラーゼレポーターである、pAR3−Luxを活性化することを実証している。しかし、Nodalは、骨形態発生タンパク質に特異的に反応性であるレポーターであるpTlx2−Luxを誘導することができない。最新結果は、Nodalシグナル伝達がアクチビン−TGF−β経路SmadのSmad2およびSmad3の両方によって媒介されることの直接の生化学的証拠を提供する。さらなる証拠は、細胞外のcriptoタンパク質がNodalシグナル伝達のために必要とされることを示し、このことは、Nodalシグナル伝達をアクチビンまたはTGF−βのシグナル伝達から差別化する。
【0027】
増殖分化因子8(GDF8)は、ミオスタチンとしても公知である。GDF8は、骨格筋量の負の調節因子である。GDF8は、発生中および成体の骨格筋で高く発現される。トランスジェニックマウスでのGDF8ヌル変異は、骨格筋の著しい肥大および過形成を特徴とする(McPherronら、Nature、1997年、387巻:83〜90頁)。骨格筋量の類似した増加は、ウシ(Ashmoreら、1974年、Growth、38巻:501〜507頁;SwatlandおよびKieffer、J. Anim. Sci.、1994年、38巻:752〜757頁;McPherronおよびLee、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、1997年、94巻:12457〜12461頁およびKambadurら、Genome Res.、1997年、7巻:910〜915頁)、および驚くべきことにヒト(Schuelkeら、N Engl J Med、2004年、350巻:2682〜8頁)のGDF8の天然に存在する変異において明白である。研究は、ヒトのHIV感染に関連する筋肉消耗には、GDF8タンパク質発現の増加が付随することも示している(Gonzalez−Cadavidら、PNAS、1998年、95巻:14938〜43頁)。さらに、GDF8は筋肉特異的酵素(例えば、クレアチンキナーゼ)の生成を調節すること、および筋芽細胞増殖を調節することができる(国際公開第00/43781号)。GDF8プロペプチドは、成熟したGDF8ドメイン二量体に非共有結合的に結合し、その生物学的な活性を不活性化することができる(Miyazonoら、(1988年)J. Biol. Chem.、263巻:6407〜6415頁;Wakefieldら(1988年)J. Biol. Chem.、263巻:7646〜7654頁およびBrownら(1990年)Growth Factors、3巻:35〜43頁)。GDF8または構造的に関連するタンパク質に結合して、それらの生物学的な活性を阻害する他のタンパク質には、フォリスタチン、および潜在的に、フォリスタチン関連のタンパク質が含まれる(Gamerら(1999年)Dev. Biol.、208巻:222〜232頁)。
【0028】
BMP11としても公知の増殖分化因子11(GDF11)は、分泌タンパク質である(McPherronら、1999年、Nat. Genet.22巻:260〜264頁)。GDF11は、マウスの発生中、尾芽、肢芽、上顎および下顎弓、ならびに後根神経節で発現される(Nakashimaら、1999年、Mech. Dev.80巻:185〜189頁)。GDF11は、中胚葉および神経の両組織をパターン化することにおいて、特異な役割を演ずる(Gamerら、1999年、Dev Biol.、208巻:222〜32頁)。GDF11は、発生中のニワトリの肢における軟骨形成および筋発生の負の調節因子であることが示された(Gamerら、2001年、Dev Biol.229巻:407〜20頁)。筋肉でのGDF11の発現はまた、GDF8に類似した方法で筋成長を調節することにおけるその役割を示唆する。さらに、脳でのGDF11の発現は、GDF11が神経系の機能に関する活性を有することもできることを示唆する。興味深いことに、GDF11は嗅上皮で神経発生を阻害することが見出された(Wuら、2003年、Neuron.37巻:197〜207頁)。したがって、GDF11は、筋肉疾患および神経変性疾患(例えば、筋萎縮性側索硬化症)などの疾患の処置において、インビトロおよびインビボでの適用を有することができる。
【0029】
骨形成性タンパク質1(OP−1)とも呼ばれる骨形態発生タンパク質(BMP7)は、軟骨および骨の形成を誘導することが周知である。さらに、BMP7は多数の生理過程を調節する。例えば、BMP7は、上皮骨形成の現象に関与する、骨誘導因子である可能性がある。BMP7は、カルシウム調節および骨ホメオスタシスで役割を果たすことも見出されている。アクチビンと同様に、BMP7は、II型受容体、ActRIIAおよびIIBに結合する。しかし、BMP7およびアクチビンは、ヘテロマーの受容体複合体に異なるI型受容体を動員する。観察された主要なBMP7のI型受容体はALK2であったが、アクチビンはALK4(ActRIIB)に排他的に結合した。BMP7およびアクチビンは異なる生物反応を惹起し、異なるSmad経路を活性化した(Macias−Silvaら、1998年、J Biol Chem. 273巻:25628〜36頁)。
【0030】
特定の態様では、本発明は、一般に、ActRIIB活性に関連する任意のプロセスにおいて、ActRIIBリガンドのシグナル伝達に拮抗するためのある特定のActRIIBポリペプチド(例えば、可溶性ActRIIBポリペプチド)の使用に関する。任意選択で、本発明のActRIIBポリペプチドは、アクチビン、Nodal、GDF8、GDF11、およびBMP7などの1または複数のActRIIB受容体のリガンドに拮抗し得、したがって、さらなる障害の処置において有用であり得る。
【0031】
したがって、本発明は、ActRIIBまたはActRIIBリガンドの異常な活性に関連する疾患または状態の処置または予防においてActRIIBポリペプチドを使用することを企図する。ActRIIBまたはActRIIBリガンドは、多くの重大な生物学的プロセスの調節に関与する。これらのプロセスにおけるそれらの重要な機能に起因して、それらは治療介入の望ましい標的であり得る。例えば、ActRIIBポリペプチド(例えば、可溶性ActRIIBポリペプチド)は、ヒトまたは動物の障害または状態を処置するために使用され得る。特に、本開示は、ActRIIB−Fc融合タンパク質などのActRIIBシグナル伝達のアンタゴニストが、筋細胞膜内に存在するユートロフィンのレベルを増加させることによって、ジストロフィンが欠乏した患者における根底にある欠損に直接対処し得るという驚くべき証拠を提供する。以前の刊行物により、このような因子が、筋ジストロフィー患者において筋肉の量および強度を増加させるために有用であり得ることが示されており、そのうえ、これらのデータは、このような因子が、DMD患者およびBMD患者における筋線維の脆弱性に対する直接的な作用を有する可能性があることを示している。これらの障害および状態は、以下に「例示的な治療的用途」の下で考察されている。
【0032】
本明細書中で使用される用語は、一般に、本発明の文脈の範囲内で、かつ、各々の用語が使用される特定の文脈において、当該分野におけるその通常の意味を有する。本発明の組成物および方法、ならびに、これらの作製方法および使用方法の記載において、専門家にさらなる案内を提供するために、特定の用語が以下または本明細書中の他の場所で論じられている。用語の任意の使用の範囲または意味は、その用語が使用される特定の文脈から明らかである。
【0033】
「約」および「およそ」は、一般に、測定の性質または正確さが既知の測定された量についての誤差の容認可能な程度を意味するものとする。代表的には、例示的な誤差の程度は、所与の値または値の範囲の、20パーセント(%)以内、好ましくは10パーセント(%)以内、そしてより好ましくは5%以内である。
【0034】
あるいは、そして、特に生物学的な系において、用語「約」および「およそ」は、所与の値の1桁以内、好ましくは、5倍以内、そしてより好ましくは2倍以内の値を意味し得る。本明細書中に与えられる数量は、特に明記しない限り近似値であり、明白に記述されない場合には、用語「約」または「およそ」が、推量され得ることを意味する。
【0035】
本発明の方法は、配列を互いに比較する工程を包含し得、この比較には、野生型配列の1または複数の変異体(配列改変体)に対する比較を含む。このような比較は代表的には、例えば、当該分野で周知の配列アラインメントのプログラムおよび/またはアルゴリズム(例えば、少数の名を挙げれば、BLAST、FASTAおよびMEGALIGN)を用いた、ポリマー配列のアラインメントを含む。当業者は、変異が残基の挿入または欠失を含む場合のこのようなアラインメントにおいて、配列のアラインメントは、挿入もしくは欠失された残基を含まないポリマー配列中に「ギャップ」(代表的には、ダッシュまたは「A」で表される)を導入することを容易に理解し得る。
【0036】
「相同」は、そのあらゆる文法的な形態および語の綴りのバリエーションにおいて「共通する進化的起源」を有する2つのタンパク質間の関係を指し、同じ生物種のスーパーファミリーからのタンパク質ならびに異なる生物種からの相同タンパク質を含む。このようなタンパク質(およびこれをコードする核酸)は、%同一性の観点であれ、特定の残基もしくはモチーフおよび保存された位置の存在によるものであれ、その配列類似性によって反映されるように、配列の相同性を有する。
【0037】
用語「配列類似性」は、そのあらゆる文法的な形態において、共通する進化の起源を共有している場合も共有していない場合もある、核酸もしくはアミノ酸配列間の同一性もしくは対応性の程度をいう。
【0038】
しかし、一般的な用法およびこの出願において、用語「相同」は、「高度に」のような副詞で修飾されるとき、配列の類似性を指す場合があり、そして、共通する進化の起源に関連していてもしていなくてもよい。
【0039】
2.ActRIIBポリペプチド
特定の態様では、本発明は、ActRIIB改変体ポリペプチド(例えば、可溶性ActRIIBポリペプチド)に関する。任意選択で、フラグメント、機能的改変体、および修飾された形態は、それらの対応する野生型ActRIIBポリペプチドと同様または同一の生物学的な活性を有する。例えば、本発明のActRIIB改変体は、ActRIIBリガンド(例えば、アクチビンA、アクチビンAB、アクチビンB、Nodal、GDF8、GDF11またはBMP7)に結合し、その機能を阻害し得る。任意選択で、ActRIIBポリペプチドは、筋肉の成長を調節する。ActRIIBポリペプチドの例としては、ヒトのActRIIB前駆体ポリペプチド(配列番号2)、および可溶性のヒトActRIIBポリペプチド(例えば、配列番号1、5および12)が挙げられる。
【0040】
本開示は、ActRIIBの機能的に活性な部分および改変体を同定する。出願人は、配列番号2のアミノ酸64に対応する位置にアラニンを有する(A64)、Hildenら(Blood.1994年4月15日;83巻(8号):2163〜70頁)によって開示されている配列を有するFc融合タンパク質が、アクチビンおよびGDF−11に対して比較的低い親和性を有することを確認した。対照的に、64位にアルギニンを持つ(R64)同じFc融合タンパク質は、アクチビンおよびGDF−11に対して、低ナノモル濃度から高ピコモル濃度までの範囲で親和性を有する。したがって、R64を持つ配列は、本開示では、ヒトActRIIBの野生型参照配列として使用される。
【0041】
Attisanoら(Cell.1992年1月10日;68巻(1号)97〜108頁)は、ActRIIBの細胞外ドメインのC末端におけるプロリンノットの欠失により、アクチビンに対する受容体の親和性が減少することを示した。本明細書に示すデータは、配列番号2のアミノ酸20〜119を含有するActRIIB−Fc融合タンパク質、「ActRIIB(20〜119)−Fc」が、プロリンノット領域および完全な膜近傍ドメインを含むActRIIB(20〜134)−Fcと比較してGDF−11およびアクチビンへの結合が減少していることを示す。しかし、ActRIIB(20〜129)−Fcタンパク質は、プロリンノット領域が破壊されているにもかかわらず、野生型と比較して同様だがいくらか減少した活性を保持する。したがって、アミノ酸134、133、132、131、130および129で終止するActRIIB細胞外ドメインは全て活性であると予想されるが、134または133で終止する構築物が最も活性であり得る。同様に、残基129〜134のいずれかにおける変異によってリガンドの結合親和性が大幅に変更されるとは予想されない。この裏付けとして、P129およびP130の変異によってリガンドの結合は実質的に低下しない。したがって、ActRIIB−Fc融合タンパク質は、早ければアミノ酸109(最後のシステイン)で終了し得るが、109〜119で終わる形態は、リガンドの結合が減少していると予想される。アミノ酸119は、不完全に保存されているので、容易に変更または切断される。128以後で終わる形態はリガンドの結合活性を保持している。119〜127で終わる形態は、中間の結合能を有する。これらの形態はいずれも、臨床的または実験的な設定に応じて使用することが望ましい場合がある。
【0042】
ActRIIBのN末端において、アミノ酸29以前で始まるタンパク質は、リガンドの結合活性を保持していると予想される。アミノ酸29は開始システインを表す。24位におけるアラニンからアスパラギンへの変異により、リガンドの結合に実質的に影響を及ぼすことなくN−連結グリコシル化配列が導入される。これにより、アミノ酸20〜29に対応する、シグナル切断ペプチドとシステイン架橋領域との間の領域における変異が良好に許容されることが確認される。具体的には、20位、21位、22位、23位および24位から始まる構築物は活性を保持し、25位、26位、27位、28位および29位から始まる構築物も活性を保持すると予想される。22、23、24または25から始まる構築物は最も活性が高い。
【0043】
総合すると、ActRIIBの活性部分は配列番号2のアミノ酸29〜109を含み、構築物は、例えば、アミノ酸20〜29に対応する残基から始まり、アミノ酸109〜134に対応する位置で終わり得る。他の例としては、20〜29または21〜29からの1つの位置から始まり、119〜134、119〜133、または129〜134、129〜133からの1つの位置で終わる構築物が挙げられる。他の例としては、20〜24(もしくは21〜24、もしくは22〜25)からの1つの位置から始まり、109〜134(もしくは109〜133)、119〜134(もしくは119〜133)または129〜134(もしくは129〜133)からの1つの位置で終わる構築物が挙げられる。これらの範囲内の改変体、特に、配列番号2の対応する部分に対して少なくとも80%、85%、90%、95%または99%の同一性を有する改変体も企図される。
【0044】
本開示は、図5に示される合成ActRIIB構造の分析結果を含み、これは、リガンド結合ポケットが残基Y31、N33、N35、L38〜T41、E47、E50、Q53〜K55、L57、H58、Y60、S62、K74、W78〜N83、Y85、R87、A92、およびE94〜F101によって規定されることを実証している。これらの位置において、保存的変異は許容されると予想されるが、K74A変異は、R40A、K55A、F82A、およびL79位における変異と同様に良好に許容される。R40はツメガエルにおいてKであり、この位置の塩基性アミノ酸が許容されることを示している。Q53は、ウシのActRIIBではRであり、ツメガエルのActRIIBではKであり、したがって、R、K、Q、NおよびHを含めたアミノ酸がこの位置で許容される。したがって、活性なActRIIB改変体タンパク質の一般式は、アミノ酸29〜109を含むものであるが、任意選択で、20〜24または22〜25の範囲の1つの位置から始まり、129〜134の範囲の1つの位置で終わり、リガンド結合ポケットにおいて1、2、5、10または15以下の保存的なアミノ酸の変化を含み、リガンド結合ポケットの40位、53位、55位、74位、79位および/または82位において0、1またはそれ以上の非保存的な変更を含む。このようなタンパク質は、配列番号2のアミノ酸29〜109の配列に対して80%、90%、95%または99%を超える配列同一性を保持し得る。可変性が特に良好に許容され得る結合ポケットの外側の部位は、細胞外ドメインのアミノ末端およびカルボキシ末端(上述のように)、および42〜46位および65〜73位を含む。65位におけるアスパラギンからアラニンへの変更(N65A)は、A64バックグラウンドにおけるリガンドの結合を実際に改善し、したがって、R64バックグラウンドにおいてリガンドの結合に対する好ましくない影響を有さないと予想される。この変化により、A64バックグラウンドにおけるN65のグリコシル化が排除される可能性があり、したがって、この領域における著しい変化が許容される可能性があることが実証されている。R64A変化は許容性が乏しいが、R64Kは良好に許容され、したがって、Hなどの別の塩基性残基が64位において許容され得る。
【0045】
ActRIIBは、完全に保存された細胞外ドメインの大きなストレッチ(stretch)を持ち、ほぼ全ての脊椎動物にわたって良好に保存されている。ActRIIBに結合するリガンドの多くも高度に保存されている。したがって、種々の脊椎動物の生物体からのActRIIB配列を比較することにより、変更され得る残基への洞察がもたらされる(図6)。したがって、活性なヒトActRIIB改変体は、別の脊椎動物のActRIIBの配列からの対応する位置の1つまたは複数のアミノ酸を含み得、または、ヒトまたは他の脊椎動物の配列中の残基と同様の残基を含み得る。以下の例は、活性なActRIIB改変体を定義するためのこのアプローチを例示している。L46は、ツメガエルのActRIIBではバリンであるので、この位置は変更され得、任意選択で、V、IまたはFなどの別の疎水性残基、またはAなどの非極性残基に変更され得る。E52は、ツメガエルではKであり、これは、この部位で、E、D、K、R、H、S、T、P、G、YおよびおそらくAなどの極性残基を含めた多種多様の変化が許容され得ることを示している。T93は、ツメガエルではKであり、これは、この位置において幅広い構造的差異が許容されることを示しており、S、K、R、E、D、H、G、P、GおよびYなどの極性残基が好ましい。F108は、ツメガエルではYであり、したがって、Yまたは他の疎水性群、例えばI、VまたはLが許容されるはずである。E111は、ツメガエルではKであり、これは、この位置において、D、R、KおよびH、ならびにQおよびNを含めた、荷電残基が許容されることを示している。R112は、ツメガエルではKであり、これは、この位置において、RおよびHを含めた塩基性残基が許容されることを示している。119位のAは比較的不完全に保存されており、げっ歯類ではPとして、ツメガエルではVとして現れ、したがって、この位置では本質的にいかなるアミノ酸も許容されるはずである。
【0046】
本開示は、さらなるN−連結グリコシル化部位(N−X−S/T)を加えることにより、ActRIIB−Fc融合タンパク質の血清半減期がActRIIB(R64)−Fc形態と比較して増加することを実証する。24位にアスパラギンを導入することにより(A24N構築物)、より長い半減期を与えるNXT配列が作製される。他のNX(T/S)配列は、42〜44(NQS)および65〜67(NSS)において見出されるが、後者は64位のRで効率的にグリコシル化されないことがあり得る。N−X−S/T配列は、一般に、図5で定義されるリガンド結合ポケットの外側の位置に導入され得る。非内因性N−X−S/T配列の導入に特に適した部位としては、アミノ酸20〜29、20〜24、22〜25、109〜134、120〜134または129〜134が挙げられる。N−X−S/T配列は、ActRIIB配列とFcまたは他の融合成分との間のリンカーにも導入され得る。このような部位は、以前から存在しているSまたはTに対して正しい位置にNを導入することによって、または、以前から存在しているNに対応する位置にSまたはTを導入することによって、最小の労力で導入され得る。したがって、N−連結グリコシル化部位を生じる望ましい変更は、A24N、R64N、S67N(できるかぎりN65Aの変更と組み合わせる)、E106N、R112N、G120N、E123N、P129N、A132N、R112SおよびR112Tである。グリコシル化されることが予測されるSはどれも、グリコシル化によってもたらされる保護のために、免疫原性部位を生じることなくTに変更され得る。同様に、グリコシル化されることが予測されるTはどれも、Sに変更され得る。したがって、S67TおよびS44Tの変更が企図される。同様に、A24N改変体では、S26Tの変更が使用され得る。したがって、ActRIIB改変体は、1つまたは複数の、追加の非内因性N−連結グリコシル化コンセンサス配列を有し得る。
【0047】
L79位は、変更されたアクチビン−ミオスタチン(GDF−11)結合特性を与えるために変更され得る。L79AまたはL79Pにより、GDF−11の結合が、アクチビンの結合よりも大きな程度で減少する。L79EまたはL79DはGDF−11の結合を保持する。著しいことに、L79EおよびL79D改変体は、アクチビンの結合が大幅に減少した。インビボでの実験は、これらの非アクチビン受容体が筋肉量を増加させる著しい能力を保持し、他の組織に対する作用の減少を示すことを示す。これらのデータは、アクチビンに対する作用が減少したポリペプチドを得ることについての望ましさおよび実行可能性を実証する。
【0048】
記載される差異は、種々の方法に組み合わせられ得る。さらに、本明細書中に記載される変異誘発プログラムの結果は、保存が多くの場合有益であるアミノ酸位がActRIIBにあることを示す。これらとしては、64位(塩基性アミノ酸)、80位(酸性または疎水性アミノ酸)、78位(疎水性、そして特にトリプトファン)、37位(酸性、そして特にアスパラギン酸またはグルタミン酸)、56位(塩基性アミノ酸)、60位(疎水性アミノ酸、特にフェニルアラニンまたはチロシン)が挙げられる。したがって、本明細書中に開示される改変体それぞれにおいて、本開示は保存され得るアミノ酸のフレームワークを提供する。保存が望ましいと考えられる他の位置は以下の通りである:52位(酸性アミノ酸)、55位(塩基性アミノ酸)、81位(酸性)、98位(極性または荷電、特にE、D、RまたはK)。
【0049】
特定の実施形態では、ActRIIBポリペプチドの単離されたフラグメントは、ActRIIBポリペプチドをコードする核酸(例えば、配列番号3および4)の対応するフラグメントから組換えにより生成されるポリペプチドをスクリーニングすることによって得られ得る。さらに、フラグメントは、従来のメリフィールド固相f−Mocもしくはt−Boc化学のような当該分野で公知の技術を用いて化学的に合成され得る。フラグメントは、(組換えにより、または、化学合成により)生成され得、そして、例えば、ActRIIBタンパク質またはActRIIBリガンドのアンタゴニスト(インヒビター)またはアゴニスト(活性化因子)として機能し得るペプチジルフラグメントを同定するために試験され得る。
【0050】
特定の実施形態では、ActRIIBポリペプチドの機能的改変体は、配列番号1、2、5、12および23から選択されるアミノ酸配列と少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を有する。ある場合では、機能的改変体は、配列番号1、2、5、12および23から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を有する。
【0051】
特定の実施形態では、本発明は、治療上の効力または安定性(例えば、エクスビボ貯蔵寿命およびインビボでのタンパク質分解に対する抵抗性)の増強のような目的のために、ActRIIBポリペプチドの構造を修飾することによって機能的改変体を作製することを企図する。修飾されたActRIIBポリペプチドはまた、例えば、アミノ酸の置換、欠失または付加によって生成され得る。例えば、ロイシンのイソロイシンもしくはバリンでの単発的な置換、アスパラギン酸のグルタミン酸での単発的な置換、スレオニンのセリンでの単発的な置換、または、あるアミノ酸の、構造的に関連したアミノ酸での同様の置換(例えば、保存的変異)は、結果として生じる分子の生物学的活性に対して大きな影響を及ぼさないと予想するのは理にかなっている。保存的置換は、その側鎖が関連しているアミノ酸のファミリー内で行われる置換である。ActRIIBポリペプチドのアミノ酸配列の変化によって機能的ホモログがもたらされているかどうかは、改変体ActRIIBポリペプチドの、野生型ActRIIBポリペプチドと同様に細胞における反応を生じる能力、または、1または複数のリガンド、例えば、アクチビン、GDF−11またはミオスタチンなどに野生型と同様に結合する能力を評価することにより容易に決定され得る。
【0052】
特定の実施形態では、本発明は、ActRIIBポリペプチドの細胞外ドメイン(リガンド結合ドメインとも呼ばれる)において、改変体(または変異体)ActRIIBポリペプチドのリガンド結合活性(例えば、結合親和性または結合特異性)が変更されるように変異を生じさせることを企図する。ある場合では、このような改変体ActRIIBポリペプチドは、特異的なリガンドに対する結合親和性が変更されている(上昇または低下)。他の場合では、改変体ActRIIBポリペプチドは、そのリガンドに対する結合特異性が変更されている。
【0053】
例えば、本開示は、アクチビンと比較してGDF8/GDF11に優先的に結合する改変体ActRIIBポリペプチドを提供する。このような選択的な改変体は、治療効果のために筋肉量の非常に大きな増加が必要となり得、そしてある程度の的外れの(off−target)作用が許容され得る、重篤な疾患の処置のためにはあまり望ましくない可能性があるが、本開示は、さらに、的外れの作用を減少させることについてのこのようなポリペプチドの望ましさを証明する。例えば、ActRIIBタンパク質のアミノ酸残基、例えばE39、K55、Y60、K74、W78、D80およびF101はリガンド結合ポケット内にあり、そのリガンド、例えばアクチビンおよびGDF8などへの結合を媒介する。したがって、本発明は、これらのアミノ酸残基に1または複数の変異を含む、ActRIIB受容体の変更されたリガンド結合ドメイン(例えば、GDF8結合ドメイン)を提供する。任意選択で、変更されたリガンド結合ドメインは、ActRIIB受容体の野生型のリガンド結合ドメインと比較して、GDF8などのリガンドに対する選択性が増加されていることがあり得る。例示のように、これらの変異は、アクチビンを超える、GDF8への変更されたリガンド結合ドメインの選択性を増加させる。任意選択で、変更されたリガンド結合ドメインは、GDF8の結合についてのKに対するアクチビンの結合についてのKの比を有し、それは、野生型のリガンド結合ドメインに対する比の少なくとも2倍、5倍、10倍、またはさらには100倍である。任意選択で、変更されたリガンド結合ドメインは、GDF8の阻害についてのIC50に対するアクチビンの阻害についてのIC50の比を有し、野生型のリガンド結合ドメインと比較して少なくとも2倍、5倍、10倍、またはさらには100倍である。任意選択で、変更されたリガンド結合ドメインは、アクチビンの阻害についてのIC50の、少なくとも2分の1、5分の1、10分の1、またはさらには100分の1のIC50でGDF8を阻害する。
【0054】
特定の例として、ActRIIBのリガンド結合ドメインの正荷電アミノ酸残基Asp(D80)は、改変体ActRIIBポリペプチドがアクチビンではなくGDF8に優先的に結合するように、異なるアミノ酸残基に変異され得る。D80残基は、非荷電アミノ酸残基、負荷電アミノ酸残基、および疎水性アミノ酸残基からなる群より選択されるアミノ酸残基に変えられることが好ましい。さらなる特定の例として、疎水性残基L79は、GDF11の結合を保持する一方でアクチビンの結合を大きく低下させるために、酸性アミノ酸のアスパラギン酸またはグルタミン酸に変更され得る。当業者に認識されるように、記載された変異、改変体または修飾の大半は、核酸レベルで、または、いくつかの場合、翻訳後修飾または化学合成によって作製され得る。このような技法は当該分野で周知である。
【0055】
特定の実施形態では、本発明は、ActRIIBポリペプチドのグリコシル化を変更するように、ActRIIBポリペプチドの特異的な変異を企図する。ActRIIBポリペプチドのグリコシル化部位の例は、図2に例示される。このような変異は、1または複数のグリコシル化部位(例えば、O−連結もしくはN−連結のグリコシル化部位)を導入もしくは排除するように選択され得る。アスパラギン連結グリコシル化認識部位は、一般に、トリペプチド配列、アスパラギン−X−スレオニン(ここで、「X」は任意のアミノ酸である)を含み、この配列は、適切な細胞のグリコシル化酵素によって特異的に認識される。変化はまた、(O−連結グリコシル化部位については)野生型ActRIIBポリペプチドの配列への、1または複数のセリンもしくはスレオニン残基の付加、または、1または複数のセリンもしくはスレオニン残基による置換によってなされ得る。グリコシル化認識部位の第1位もしくは第3位のアミノ酸の一方もしくは両方における種々のアミノ酸置換もしくは欠失(および/または、第2位におけるアミノ酸の欠失)は、修飾されたトリペプチド配列において非グリコシル化をもたらす。ActRIIBポリペプチドにおける糖質部分の数を増加させる別の手段は、ActRIIBポリペプチドへのグリコシドの化学的もしくは酵素的なカップリングによるものである。使用されるカップリング様式に依存して、糖は、(a)アルギニンおよびヒスチジン;(b)遊離カルボキシル基;(c)遊離スルフヒドリル基(例えば、システインのもの);(d)遊離ヒドロキシル基(例えば、セリン、スレオニンまたはヒドロキシプロリンのもの);(e)芳香族残基(例えば、フェニルアラニン、チロシンまたはトリプトファンのもの);または(f)グルタミンのアミド基に付加され得る。これらの方法は、本明細書中に参考として援用される1987年9月11日に公開されたWO 87/05330ならびにAplinおよびWriston(1981年)CRC Crit. Rev. Biochem.、259〜306頁に記載されている。ActRIIBポリペプチド上に存在する1または複数の糖質部分の除去は、化学的および/または酵素的に達成され得る。化学的な脱グリコシル化は、例えば、化合物トリフルオロメタンスルホン酸または等価な化合物へのActRIIBポリペプチドの曝露を含み得る。この処理は、アミノ酸配列をインタクトなままにしつつ、連結糖(N−アセチルグルコサミンまたはN−アセチルガラクトサミン)を除くほとんどもしくは全ての糖の切断を生じる。化学的な脱グリコシル化は、さらに、Hakimuddinら(1987年)Arch. Biochem. Biophys.259巻:52頁、およびEdgeら(1981年)Anal. Biochem.118巻:131頁によって記載されている。ActRIIBポリペプチド上の糖質部分の酵素的切断は、Thotakuraら(1987年)Meth.Enzymol.138巻:350頁に記載されるように、種々のエンドグリコシダーゼもしくはエキソグリコシダーゼの使用により達成され得る。ActRIIBポリペプチドの配列は、適切なように、使用される発現系のタイプに応じて調節され得る。というのも、哺乳動物、酵母、昆虫および植物の細胞は全て、ペプチドのアミノ酸配列によって影響され得る異なるグリコシル化パターンを導入し得る。一般に、ヒトにおいて使用するためのActRIIBタンパク質は、適切なグリコシル化を提供する哺乳動物細胞株(例えば、HEK293細胞株またはCHO細胞株)において発現されるが、他の哺乳動物発現細胞株も同様に有用であることと期待される。
【0056】
本開示はさらに、改変体、特に、任意選択で切断型改変体を含むActRIIBポリペプチドの組み合わせ改変体のセットを作製する方法を企図する;組み合わせ変異体のプールは、機能的改変体の配列を同定するために特に有用である。このような組み合わせライブラリーをスクリーニングする目的は、例えば、変更された特性(例えば、変更された薬物動態または変更されたリガンド結合)を有するActRIIBポリペプチド改変体を作製するため、であり得る。種々のスクリーニングアッセイが以下に提供され、そして、このようなアッセイは、改変体を評価するために使用され得る。例えば、ActRIIBポリペプチド改変体は、ActRIIBポリペプチドに結合する能力、ActRIIBリガンドのActRIIBポリペプチドへの結合を妨害する能力についてスクリーニングされ得る。
【0057】
ActRIIBポリペプチドまたはその改変体の活性はまた、細胞ベースのアッセイまたはインビボアッセイにおいて試験され得る。例えば、骨芽細胞または前駆体における骨の生成に関与する遺伝子の発現に対するActRIIBポリペプチド改変体の作用が評価され得る。これは、必要な場合、1または複数の組換えActRIIBリガンドタンパク質(例えば、BMP7)の存在下で行われ得、そして、ActRIIBポリペプチドおよび/またはその改変体、そして任意選択でActRIIBリガンドを生成するように細胞がトランスフェクトされ得る。同様に、ActRIIBポリペプチドは、マウスまたは他の動物に投与され得、そして、骨の1または複数の特性(例えば、密度または体積)が評価され得る。骨折に対する治癒速度も評価され得る。同様に、ActRIIBポリペプチドまたはその改変体の活性は、筋肉細胞、脂肪細胞およびニューロン細胞において、これらの細胞の成長に対する任意の作用について、例えば、下記のアッセイによって試験され得る。このようなアッセイは、当技術分野で周知であり、常套的である。SMAD応答性のレポーター遺伝子が、このような細胞株において、下流のシグナル伝達に対する影響をモニターするために使用され得る。
【0058】
天然に存在するActRIIBポリペプチドに対して、選択的効力を有する、組み合わせで得られる(combinatorially−derived)改変体が作製され得る。このような改変体タンパク質は、組換えDNA構築物から発現されたとき、遺伝子治療のプロトコルにおいて使用され得る。同様に、変異誘発は、対応する野生型ActRIIBポリペプチドとは劇的に異なる細胞内半減期を有する改変体を生じ得る。例えば、変更されたタンパク質は、タンパク質分解、または、天然のActRIIBポリペプチドの崩壊もしくは他の方法で不活性化をもたらす他のプロセスに対してより安定性であるかもしくは安定性が低いかのいずれかにされ得る。このような改変体およびこれをコードする遺伝子は、ActRIIBポリペプチドの半減期を調節することによってActRIIBポリペプチドレベルを変更するために利用され得る。例えば、短い半減期は、より一過性の生物学的作用を生じ得、そして、誘導性の発現系の一部である場合、細胞内での組換えActRIIBポリペプチドレベルのより厳しい制御を可能にし得る。
【0059】
特定の実施形態では、本発明のActRIIBポリペプチドは、さらに、ActRIIBポリペプチド中に天然に存在する任意のものに加えて、翻訳後修飾を含み得る。このような修飾としては、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化およびアシル化が挙げられるがこれらに限定されない。結果として、修飾されたActRIIBポリペプチドは、ポリエチレングリコール、脂質、多糖類もしくは単糖類およびホスフェイトのような非アミノ酸成分を含み得る。このような非アミノ酸成分の、ActRIIBポリペプチドの機能に対する影響は、他のActRIIBポリペプチド改変体について本明細書中に記載されるようにして試験され得る。ActRIIBポリペプチドの新生形態を切断することによってActRIIBポリペプチドが細胞内で生成される場合、翻訳後プロセシングもまた、このタンパク質の正確な折り畳みおよび/または機能にとって重要となり得る。様々な細胞(例えば、CHO、HeLa、MDCK、293、WI38、NIH−3T3またはHEK293)が、このような翻訳後の活性のための特定の細胞機構および特徴的なメカニズムを有し、そして、ActRIIBポリペプチドの正確な修飾およびプロセシングを保証するように選択され得る。
【0060】
特定の態様では、ActRIIBポリペプチドの機能的改変体または修飾形態は、少なくともActRIIBポリペプチドの一部分と1または複数の融合ドメインとを有する融合タンパク質を含む。このような融合ドメインの周知の例としては、ポリヒスチジン、Glu−Glu、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、チオレドキシン、プロテインA、プロテインG、免疫グロブリン重鎖定常領域(例えば、Fc)、マルトース結合タンパク質(MBP)、またはヒト血清アルブミンが挙げられるがこれらに限定されない。融合ドメインは、所望される特性を与えるように選択され得る。例えば、いくつかの融合ドメインが、アフィニティクロマトグラフィーによる融合タンパク質の単離に特に有用である。アフィニティ精製の目的では、グルタチオン−、アミラーゼ−、およびニッケル−もしくはコバルト−結合化樹脂のような、アフィニティクロマトグラフィーのための適切なマトリクスが使用される。このようなマトリクスの多くは、Pharmacia GST精製システムおよび(HIS)融合パートナーと共に有用なQIAexpressTMシステム(Qiagen)のような「キット」の形態で利用可能である。別の例としては、融合ドメインは、ActRIIBポリペプチドの検出を容易にするように選択され得る。このような検出ドメインの例としては、種々の蛍光タンパク質(例えば、GFP)、ならびに、「エピトープタグ」(これは、特定の抗体に利用可能な、通常は短いペプチド配列である)が挙げられる。特定のモノクローナル抗体に容易に利用可能な周知のエピトープタグとしては、FLAG、インフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)およびc−mycタグが挙げられる。いくつかの場合、融合ドメインは、関連のプロテアーゼが融合タンパク質を部分的に消化し、それによって、そこから組換えタンパク質を解放することを可能にする、第Xa因子またはトロンビンのようなプロテアーゼ切断部位を有する。解放されたタンパク質は、次いで、その後のクロマトグラフィーによる分離によって、融合ドメインから単離され得る。特定の好ましい実施形態では、ActRIIBポリペプチドは、インビボでActRIIBポリペプチドを安定化させるドメイン(「安定化」ドメイン)と融合される。「安定化」とは、それが、崩壊の減少によるものであるか、腎臓によるクリアランスの減少によるものであるか、他の薬物動態作用によるものであるかとは無関係に、血清半減期を増加させる任意のものを意味する。免疫グロブリンのFc部分との融合は、広範囲のタンパク質に対して所望の薬物動態特性を与えることが公知である。同様に、ヒト血清アルブミンへの融合は、所望の特性を与え得る。選択され得る融合ドメインの他のタイプとしては、多量体化(例えば、二量体化、四量体化)ドメインおよび機能的ドメイン(例えば、筋肉の成長のさらなる刺激のような付加的な生物学的機能を与えるもの)が挙げられる。
【0061】
具体例として、本発明は、Fcドメインに融合された細胞外(例えば、GDF8結合)ドメインを含む、GDF8アンタゴニストとしての融合タンパク質を提供する。(例えば、配列番号13)
【0062】
【化1】

好ましくは、Fcドメインは、Asp−265、リジン322およびAsn−434のような残基における1または複数の変異を有する。特定の場合、これらの変異のうち1または複数(例えば、Asp−265変異)を持つ変異型Fcドメインは、野生型Fcドメインに対する、Fcγ受容体への結合能の低下を有する。他の場合では、これらの変異のうち1または複数(例えば、Asn−434変異)を持つ変異型Fcドメインは、野生型Fcドメインに対する、MHCクラスI関連のFc受容体(FcRN)への結合能の増加を有する。
【0063】
融合タンパク質の様々な成分は、所望の機能と両立するあらゆる様式で配列され得ることが理解される。例えば、ActRIIBポリペプチドは、異種ドメインに対してC末端側に配置されても、あるいは、異種ドメインが、ActRIIBポリペプチドに対してC末端側に配置されてもよい。ActRIIBポリペプチドドメインと異種ドメインとは、融合タンパク質において隣接している必要はなく、そして、さらなるドメインもしくはアミノ酸配列が、いずれかのドメインに対してC末端もしくはN末端側に、または、これらのドメイン間に含められてもよい。
【0064】
特定の実施形態では、本発明のActRIIBポリペプチドは、ActRIIBポリペプチドを安定化させ得る1または複数の修飾を含む。例えば、このような修飾は、ActRIIBポリペプチドのインビトロ半減期を増強させるか、ActRIIBポリペプチドの循環半減期を増強させるか、または、ActRIIBポリペプチドのタンパク質分解を減少させる。このような安定化修飾としては、融合タンパク質(例えば、ActRIIBポリペプチドと安定化ドメインとを含む融合タンパク質が挙げられる)、グリコシル化部位の修飾(例えば、ActRIIBポリペプチドへのグリコシル化部位の付加が挙げられる)、および糖質部分の修飾(例えば、ActRIIBポリペプチドからの糖質部分の除去が挙げられる)が挙げられるがこれらに限定されない。融合タンパク質の場合、ActRIIBポリペプチドは、IgG分子(例えば、Fcドメイン)などの安定化ドメインに融合される。本明細書中で使用される場合、用語「安定化ドメイン」は、融合タンパク質の場合のように融合ドメイン(例えば、Fc)を指すだけでなく、糖質部分のような非タンパク質性修飾、または、ポリエチレングリコールのような非タンパク質性ポリマーも含む。
【0065】
特定の実施形態では、本発明は、ActRIIBポリペプチドの単離および/または精製された形態(他のタンパク質から単離されたか、そうでなければ他のタンパク質を実質的に含まないもの)を利用可能にする。
【0066】
特定の実施形態では、本発明のActRIIBポリペプチド(修飾されていないか、または修飾された)は、種々の当該分野で公知の技法によって生成され得る。例えば、このようなActRIIBポリペプチドは、Bodansky、M. Principles of Peptide Synthesis、Springer Verlag、Berlin(1993年)およびGrant G. A.(編)、Synthetic Peptides: A User’s Guide、W. H. Freeman and Company、New York(1992年)に記載されているものなどの、標準のタンパク質化学の技法を使用して合成され得る。さらに、自動ペプチド合成装置が市販されている(例えば、Advanced ChemTech Model 396;Milligen/Biosearch 9600)。あるいは、ActRIIBポリペプチド、そのフラグメントまたは改変体は、当該分野で周知のように、種々の発現系(例えば、E.coli、チャイニーズハムスター卵巣細胞、COS細胞、バキュロウイルス)(下記もまた参照のこと)を使用して組換えにより生成され得る。さらなる実施形態では、修飾されたか、または修飾されていないActRIIBポリペプチドは、例えば、プロテアーゼ、例えばトリプシン、サーモリシン、キモトリプシン、ペプシン、または対の塩基性アミノ酸変換酵素(PACE)を使用して、天然に存在するかまたは組換えにより生成された完全長ActRIIBポリペプチドを消化することによって生成され得る。コンピュータ解析(市販のソフトウェア、例えば、MacVector、Omega、PCGene、Molecular Simulation,Inc.を使用する)は、タンパク質分解の切断部位を同定するために使用され得る。あるいは、このようなActRIIBポリペプチドは、化学的切断によって(例えば、臭化シアン、ヒドロキシアミン)などの当該分野で公知の標準技法などで天然に存在するかまたは組換えにより生成された完全長ActRIIBポリペプチドから生成され得る。
【0067】
3.ActRIIBポリペプチドをコードする核酸
特定の態様では、本発明は、本明細書に開示されている任意の改変体を含めた、任意のActRIIBポリペプチド(例えば、可溶性ActRIIBポリペプチド)をコードする、単離された核酸および/または組換え型の核酸を提供する。例えば、配列番号4は、天然に存在するActRIIB前駆体ポリペプチドをコードする(図4)一方、配列番号3は、可溶性ActRIIBポリペプチドをコードする(図3)。主題の核酸は、一本鎖であっても二本鎖であってもよい。このような核酸は、DNA分子もしくはRNA分子であり得る。これらの核酸は、例えば、ActRIIBポリペプチドを作製するための方法において、または(例えば、遺伝子治療アプローチにおいて)直接的な治療剤として使用され得る。
【0068】
特定の態様では、ActRIIBポリペプチドをコードする本主題の核酸はさらに、配列番号3の改変体である核酸を含むものと理解される。改変体ヌクレオチド配列は、対立遺伝子改変体のような、1または複数のヌクレオチドの置換、付加もしくは欠失によって異なる配列を含み、したがって、配列番号4に指定されるコード配列のヌクレオチド配列とは異なるコード配列を含む。
【0069】
特定の実施形態では、本発明は、配列番号3に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%または100%同一な単離されたかまたは組換えの核酸配列を提供する。当業者は、配列番号3に対して相補的な核酸配列、および配列番号3の改変体もまた、本発明の範囲内であることを理解する。さらなる実施形態では、本発明の核酸配列は、異種ヌクレオチド配列と共に、または、DNAライブラリーにおいて、単離、組換えおよび/または融合され得る。
【0070】
他の実施形態では、本発明の核酸はまた、配列番号3に指定されるヌクレオチド配列に対して高度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列、配列番号3の相補配列、あるいは、これらのフラグメントを含む。上述のように、当業者は、DNAのハイブリダイゼーションを促進する適切なストリンジェンシー条件が変更され得ることを容易に理解する。当業者は、DNAのハイブリダイゼーションを促進する適切なストリンジェンシー条件が変更され得ることを容易に理解する。例えば、約45℃における6.0×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)でのハイブリダイゼーションの後に、50℃における2.0×SSCの洗浄を行い得る。例えば、洗浄工程における塩濃度は、50℃における約2.0×SSCの低ストリンジェンシーから、50℃における約0.2×SSCの高ストリンジェンシーまで選択され得る。さらに、洗浄工程における温度は、室温(約22℃)の低ストリンジェンシー条件から、約65℃の高ストリンジェンシー条件まで上昇され得る。温度と塩の両方が変更されても、温度または塩濃度が一定に保たれ、他の変数が変更されてもよい。一実施形態では、本発明は、室温における6×SSCとその後の室温で2×SSCでの洗浄の低ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする核酸を提供する。
【0071】
遺伝子コードにおける縮重に起因して配列番号3に示される核酸と異なる単離された核酸もまた、本発明の範囲内である。例えば、多数のアミノ酸が1を超えるトリプレットによって示される。同じアミノ酸を特定するコドンまたは同義語(例えば、CAUおよびCACはヒスチジンに対する同義語である)は、タンパク質のアミノ酸配列に影響を及ぼさない「サイレント」変異を生じ得る。しかしながら、哺乳動物細胞の中には、本主題のタンパク質のアミノ酸配列に変化をもたらすDNA配列の多型が存在することが予想される。当業者は、天然の対立遺伝子改変に起因して、所与の種の個体間に、特定のタンパク質をコードする核酸の1または複数のヌクレオチド(約3〜5%までのヌクレオチド)におけるこれらの改変が存在し得ることを理解する。任意およびあらゆるこのようなヌクレオチドの改変と、結果として生じるアミノ酸の多型とは、本発明の範囲内である。
【0072】
特定の実施形態では、本発明の組換え核酸は、発現構築物において1または複数の調節性ヌクレオチド配列に作動可能に連結され得る。調節性のヌクレオチド配列は、一般に、発現のために使用される宿主細胞に対して適切なものである。種々の宿主細胞について、多数のタイプの適切な発現ベクターおよび適切な調節性配列が当該分野で公知である。代表的には、上記1または複数の調節性ヌクレオチド配列としては、プロモーター配列、リーダー配列もしくはシグナル配列、リボソーム結合部位、転写開始配列および転写終結配列、翻訳開始配列および翻訳終結配列、ならびに、エンハンサー配列もしくは活性化因子配列が挙げられ得るがこれらに限定されない。当該分野で公知の構成的もしくは誘導性のプロモーターが、本発明によって企図される。プロモーターは、天然に存在するプロモーター、または、1を超えるプロモーターの要素を組み合わせたハイブリッドプロモーターのいずれかであり得る。発現構築物は、プラスミドのようにエピソーム上で細胞中に存在し得るか、または、発現構築物は、染色体中に挿入され得る。好ましい実施形態では、発現ベクターは、形質転換された宿主細胞の選択を可能にするために、選択可能なマーカー遺伝子を含む。選択可能なマーカー遺伝子は、当該分野で周知であり、そして、使用される宿主細胞により変化する。
【0073】
本発明の特定の態様では、本主題の核酸は、ActRIIBポリペプチドをコードし、そして、少なくとも1つの調節性配列に作動可能に連結されたヌクレオチド配列を含む発現ベクターにおいて提供される。調節性配列は当該分野で認識され、そして、ActRIIBポリペプチドの発現を誘導するように選択される。したがって、用語、調節性配列は、プロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御エレメントを含む。例示的な調節性配列は、Goeddel;Gene Expression Technology:Methods in Enzymology、Academic Press、San Diego、CA(1990年)に記載される。例えば、作動可能に連結されたときにDNA配列の発現を制御する広範な種々の発現制御配列のいずれかが、ActRIIBポリペプチドをコードするDNA配列を発現させるためにこれらのベクターにおいて使用され得る。このような有用な発現制御配列としては、例えば、SV40の初期および後期プロモーター、tetプロモーター、アデノウイルスもしくはサイトメガロウイルスの前初期プロモーター、RSVプロモーター、lacシステム、trpシステム、TACもしくはTRCシステム、T7 RNAポリメラーゼによってその発現が誘導されるT7プロモーター、ファージλの主要なオペレーターおよびプロモーター領域、fdコートタンパク質の制御領域、3−ホスホグリセリン酸キナーゼもしくは他の糖分解酵素のプロモーター、酸性ホスファターゼのプロモーター(例えば、Pho5)、酵母α−接合因子(mating factor)のプロモーター、バキュロウイルス系の多角体プロモーター、ならびに、原核生物もしくは真核生物の細胞、または、そのウイルスの遺伝子の発現を制御することが公知である他の配列、ならびにこれらの種々の組合せが挙げられる。発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択および/または発現されることが所望されるタンパク質のタイプのような要因に依存し得ることが理解されるべきである。さらに、ベクターのコピー数、コピー数を制御する能力およびベクターによってコードされる任意の他のタンパク質(例えば、抗生物質マーカー)の発現もまた考慮されるべきである。
【0074】
本発明の組換え核酸は、クローニングされた遺伝子またはその一部を、原核生物細胞、真核生物細胞(酵母、鳥類、昆虫または哺乳動物)のいずれか、または両方において発現させるために適切なベクター中に連結することによって生成され得る。組換えActRIIBポリペプチドの生成のための発現ビヒクルとしては、プラスミドおよび他のベクターが挙げられる。例えば、適切なベクターとしては、以下のタイプのプラスミドが挙げられる:原核生物細胞(例えば、E.coli)における発現のための、pBR322由来のプラスミド、pEMBL由来のプラスミド、pEX由来のプラスミド、pBTac由来のプラスミドおよびpUC由来のプラスミド。
【0075】
いくつかの哺乳動物発現ベクターは、細菌中でのベクターの増殖を促進するための原核生物の配列と、真核生物細胞において発現される1または複数の真核生物の転写単位との両方を含む。pcDNAI/amp、pcDNAI/neo、pRc/CMV、pSV2gpt、pSV2neo、pSV2−dhfr、pTk2、pRSVneo、pMSG、pSVT7、pko−neoおよびpHyg由来のベクターは、真核生物細胞のトランスフェクションに適切な哺乳動物発現ベクターの例である。これらのベクターのいくつかは、原核生物細胞および真核生物細胞の両方における複製および薬物耐性選択を容易にするために、細菌プラスミド(例えば、pBR322)からの配列を用いて修飾される。あるいは、ウシパピローマウイルス(BPV−1)またはエプスタイン−バーウイルス(pHEBo、pREP由来およびp205)のようなウイルスの誘導体が、真核生物細胞におけるタンパク質の一過的な発現のために使用され得る。他のウイルス(レトロウイルスを含む)発現系の例は、遺伝子治療送達系の説明において以下に見出され得る。プラスミドの調製および宿主生物の形質転換において用いられる種々の方法は、当該分野で周知である。原核生物細胞および真核生物細胞の両方についての他の適切な発現系、ならびに、一般的な組換え手順については、Molecular Cloning A Laboratory Manual、2nd Ed.、Sambrook、FritschおよびManiatis編(Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989年)第16および17章を参照のこと。いくつかの場合において、バキュロウイルス発現系を用いて組換えポリペプチドを発現させることが望ましくあり得る。このようなバキュロウイルス発現系の例としては、pVL由来のベクター(例えば、pVL1392、pVL1393およびpVL941)、pAcUW由来のベクター(例えば、pAcUWl)およびpBlueBac由来のベクター(例えば、β−galを含むpBlueBac III)が挙げられる。
【0076】
好ましい実施形態では、ベクターは、CHO細胞における本主題のActRIIBポリペプチドの生成のために設計される(例えば、Pcmv−Scriptベクター(Stratagene,La Jolla,Calif.)、pcDNA4ベクター(Invitrogen,Carlsbad,Calif.)およびpCI−neoベクター(Promega,Madison,Wisc))。明らかであるように、本主題の遺伝子構築物は、例えば、タンパク質(融合タンパク質または改変体タンパク質を含む)を生成するため、精製のために、培養物において増殖させた細胞において本主題のActRIIBポリペプチドの発現を引き起こすために使用され得る。
【0077】
本発明はまた、1または複数の本主題のActRIIBポリペプチドのコード配列(例えば、配列番号4)を含む組換え遺伝子をトランスフェクトされた宿主細胞に関する。宿主細胞は、任意の原核生物細胞または真核生物細胞であり得る。例えば、本発明のActRIIBポリペプチドは、E.coliのような細菌細胞、昆虫細胞(例えば、バキュロウイルス発現系を用いる)、酵母細胞または哺乳動物細胞において発現され得る。他の適切な宿主細胞は、当業者に公知である。
【0078】
したがって、本発明はさらに、本主題のActRIIBポリペプチドを生成する方法に関する。例えば、ActRIIBポリペプチドをコードする発現ベクターでトランスフェクトされた宿主細胞は、ActRIIBポリペプチドの発現を起こすことが可能な適切な条件下で培養され得る。ActRIIBポリペプチドは、ActRIIBポリペプチドを含む細胞および培地の混合物から分泌および単離され得る。あるいは、ActRIIBポリペプチドは、細胞質または膜画分に保持され得、そして、細胞が回収、溶解され、そして、タンパク質が単離される。細胞培養物は、宿主細胞、培地および他の副産物を含む。細胞培養に適切な培地は、当該分野で周知である。本主題のActRIIBポリペプチドは、タンパク質の精製についての当該分野で公知の技術(イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、限外濾過、電気泳動、およびActRIIBポリペプチドの特定のエピトープに特異的な抗体を用いた免疫親和性精製を含む)を用いて、細胞培養培地、宿主細胞またはこの両方から単離され得る。好ましい実施形態では、ActRIIBポリペプチドは、その精製を促進するドメインを含む融合タンパク質である。
【0079】
別の実施形態では、精製用リーダー配列(例えば、組換えActRIIBポリペプチドの所望の部分のN末端に位置するポリ−(His)/エンテロキナーゼ切断部位の配列)をコードする融合遺伝子は、Ni2+金属樹脂を用いる親和性クロマトグラフィーによる、発現された融合タンパク質の精製を可能にし得る。その後、精製用リーダー配列は、引き続いて、エンテロキナーゼでの処理によって除去され、精製ActRIIBポリペプチドを提供し得る(例えば、Hochuliら、(1987年)J.Chromatography 411巻:177頁;およびJanknechtら、PNAS USA 88巻:8972頁を参照のこと)。
【0080】
融合遺伝子を作製するための技術は周知である。本質的には、異なるポリペプチド配列をコードする種々のDNAフラグメントの接合は、ライゲーションのための平滑末端もしくはスタガード(staggered)末端、適切な末端を提供するための制限酵素消化、必要に応じた粘着末端のフィルイン(filling−in)、所望されない接合を回避するためのアルカリ性ホスファターゼ処理、および酵素によるライゲーション、を用いる従来の技術に従って行われる。別の実施形態では、融合遺伝子は、自動DNA合成装置を含む従来の技術によって合成され得る。あるいは、遺伝子フラグメントのPCR増幅は、2つの連続した遺伝子フラグメント間の相補的なオーバーハング(overhang)を生じるアンカープライマーを用いて行われ得、これらのフラグメントは、その後、キメラ遺伝子配列を生じるようにアニーリングされ得る(例えば、Current Protocols in Molecular Biology、Ausubelら編、John Wiley & Sons:1992年を参照のこと)。
【0081】
4.抗体
本発明の別の態様は、抗体に関する。ActRIIBポリペプチド(例えば、可溶性ActRIIBポリペプチド)に特異的に反応する抗体およびActRIIBポリペプチドと競合的に結合する抗体が、ActRIIBポリペプチドの活性のアンタゴニストとして使用され得る。例えば、ActRIIBポリペプチドに由来する免疫原を使用することにより、標準のプロトコルによって抗タンパク質/抗ペプチドの抗血清またはモノクローナル抗体が作製され得る(例えば、Antibodies:A Laboratory Manual、HarlowおよびLane編(Cold Spring Harbor Press:1988年)を参照されたい)。マウス、ハムスターまたはウサギなどの哺乳動物を、免疫原性の形態のActRIIBポリペプチド、抗体応答を惹起することができる抗原性フラグメント、または融合タンパク質を用いて免疫化することができる。タンパク質またはペプチドに免疫原性を付与するための技法としては、担体への結合体化または当技術分野で周知の他の技法が挙げられる。ActRIIBポリペプチドの免疫原性部分は、アジュバントの存在下で投与され得る。免疫化の進行は、血漿中または血清中の抗体価を検出することによってモニターされ得る。抗体のレベルを評価するために、標準のELISAまたは他のイムノアッセイが、免疫原としての抗原と一緒に使用され得る。
【0082】
ActRIIBポリペプチドの抗原性調製物を用いて動物を免疫化した後、抗血清を得ることができ、所望であれば、ポリクローナル抗体が血清から単離され得る。モノクローナル抗体を生成するために、免疫化した動物から抗体産生細胞(リンパ球)を回収し、標準の体細胞融合手順によって骨髄腫細胞などの不死化細胞と融合してハイブリドーマ細胞を生じさせることができる。このような技法は当技術分野で周知であり、それらとしては、例えば、ハイブリドーマ技法(KohlerおよびMilstein、1975年、Nature、256巻:495〜497頁によって最初に開発された)、ヒトB細胞ハイブリドーマ技法(Kozbarら、1983年、Immunology Today、4巻:72頁)、およびヒトモノクローナル抗体を生成するためのEBV−ハイブリドーマ技法(Coleら、1985年、Monoclonal AntibodiesおよびCancer Therapy、Alan R. Liss、Inc.77〜96頁)が挙げられる。ハイブリドーマ細胞は、ActRIIBポリペプチドに特異的に反応する抗体の産生について、免疫化学的にスクリーニングされ得、そしてこのようなハイブリドーマ細胞を含む培養物からモノクローナル抗体が単離され得る。
【0083】
用語「抗体」は、本明細書中で使用される場合、対象のActRIIBポリペプチドにも特異的に反応するそのフラグメントを包含することが意図される。抗体は、従来の技法を使用してフラグメント化され得、そして、そのフラグメントは、有用性について、上記の全抗体についてと同様にスクリーニングされ得る。例えば、抗体をペプシンで処理することによって、F(ab)フラグメントが作製され得る。生じたF(ab)フラグメントは、Fabフラグメントを作製するために、ジスルフィド架橋を還元させるように処理され得る。本発明の抗体は、抗体の少なくとも1のCDR領域によって付与されるActRIIBポリペプチドに対する親和性を有する二重特異性分子、単鎖分子、キメラ分子およびヒト化分子を包含することがさらに意図される。好ましい実施形態において、抗体は、抗体に付着し、検出され得る標識をさらに含む(例えば、標識は、放射性同位元素、蛍光化合物、酵素または酵素の補因子であり得る)。
【0084】
特定の好ましい実施形態では、本発明の抗体は、モノクローナル抗体であり、特定の実施形態では、本発明は、新規の抗体を作製するための方法を利用可能にする。例えば、ActRIIBポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体を作製するための方法は、マウスに、ある量の、検出可能な免疫応答を刺激するために有効なActRIIBポリペプチドを含む免疫原性組成物を投与するステップと、マウスから抗体産生細胞(例えば、脾臓からの細胞)を得るステップと、抗体産生細胞を骨髄腫細胞と融合して抗体産生ハイブリドーマを得るステップと、抗体産生ハイブリドーマを試験して、ActRIIBポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを同定するステップとを含み得る。ハイブリドーマが得られたら、それを細胞培養物中で、任意選択で、ハイブリドーマ由来の細胞が、ActRIIBポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体を産生する培養条件において、増殖させることができる。モノクローナル抗体は細胞培養物から精製され得る。
【0085】
形容詞「に特異的に反応する」は、抗体に関して使用される場合、当技術分野で一般に理解されているように、抗体が、対象の抗原(例えば、ActRIIBポリペプチド)と対象でない他の抗原との間で十分に選択的であること、抗体が、最低でも、特定の種類の生物試料中の対象の抗原の存在を検出するために有用であることを意味することが意図される。治療適用などの、抗体を使用する特定の方法では、高い程度の結合の特異性が望まれ得る。モノクローナル抗体は、一般に、(ポリクローナル抗体と比較して)所望の抗原と交差反応性のポリペプチドとを有効に識別する傾向が強い。抗体:抗原相互作用の特異性に影響を及ぼす1つの特徴は、抗体の抗原に対する親和性である。所望の特異性には、種々の異なる親和性で達し得るが、一般に好ましい抗体は、約10−6、10−7、10−8、10−9またはそれ未満の親和性(解離定数)を有する。
【0086】
さらに、望ましい抗体を同定するために抗体をスクリーニングするのに使用される技法は、得られる抗体の特性に影響を及ぼし得る。例えば、抗体を、溶液中の抗原と結合させるために使用する場合、溶液の結合を試験することが望ましいことがある。特に望ましい抗体を同定するために、抗体と抗原との間の相互作用を試験するための種々の異なる技法が利用可能である。このような技法としては、ELISA、表面プラズモン共鳴結合アッセイ(例えば、Biacore結合アッセイ、Bia−core AB,Uppsala,Sweden)、サンドイッチアッセイ(例えば、IGEN International,Inc.,Gaithersburg,Marylandの常磁性ビーズシステム)、ウェスタンブロット、免疫沈降アッセイおよび免疫組織化学が挙げられる。
【0087】
特定の態様では、本開示は、可溶性ActRIIBポリペプチドに結合する抗体を提供する。このような抗体は、上記の通り、可溶性ActRIIBポリペプチドまたはそのフラグメントを抗原として使用して多量に生成され得る。この種類の抗体は、例えば、生物試料中のActRIIBポリペプチドを検出するため、および/または個体における可溶性ActRIIBポリペプチドのレベルをモニターするために使用され得る。ある場合では、可溶性ActRIIBポリペプチドに特異的に結合する抗体は、ActRIIBポリペプチドおよび/またはActRIIBリガンドの活性を調節し、それによって組織(骨、軟骨、筋肉、脂肪およびニューロンなど)の成長を制御する(促進または阻害する)か、または筋細胞膜のユートロフィンを増大させるために使用され得る。
【0088】
5.スクリーニングアッセイ
特定の態様では、本発明は、ActRIIBポリペプチドのアゴニストまたはアンタゴニストである化合物(因子)を同定するための、対象のActRIIBポリペプチド(例えば、可溶性ActRIIBポリペプチド)の使用に関する。このスクリーニングによって同定された化合物は、インビトロで組織の成長を調節するその能力を評価するために、骨、軟骨、筋肉、脂肪および/またはニューロンなどの組織において試験され得る。任意選択で、これらの化合物は、インビボで組織の成長を調節するそれらの能力を評価するために、動物モデルにおいてさらに試験され得る。
【0089】
ActRIIBポリペプチドを標的化することによって、組織の成長を調節するための治療剤についてスクリーニングするための多数のアプローチが存在する。特定の実施形態では、骨、軟骨、筋肉、脂肪および/またはニューロンの成長に対するActRIIB媒介性の作用を混乱させる因子を同定するために、化合物のハイスループットなスクリーニングが行われ得る。特定の実施形態では、アッセイは、ActRIIBポリペプチドの、その結合パートナー、例えば、ActRIIBリガンド(例えば、アクチビン、Nodal、GDF8、GDF11またはBMP7)などへの結合を特異的に阻害する、または減少させる化合物をスクリーニングし、同定するために行われる。あるいは、アッセイは、ActRIIBポリペプチドの、その結合タンパク質、例えばActRIIBリガンドなどへの結合を増強する化合物を同定するために使用され得る。さらなる実施形態では、化合物は、ActRIIBポリペプチドと相互作用するその能力によって同定され得る。
【0090】
種々のアッセイ形式が十分であり、そして、本開示を考慮すれば、本明細書中に明示的に記載されない形式は、本明細書中に記載されていないにもかかわらず、当業者によって理解される。本明細書中に記載されるように、本発明の試験化合物(因子)は、任意の組み合わせ化学の方法によって作製され得る。あるいは、本主題の化合物は、インビボまたはインビトロで合成された天然に存在する生体分子であり得る。組織増殖の調節因子として作用するその能力について試験される化合物(因子)は、例えば、細菌、酵母、植物または他の生物によって生成されても(例えば、天然の生成物)、化学的に生成されても(例えば、ペプチド模倣物を含む低分子)、組換えにより生成されてもよい。本発明によって企図される試験化合物としては、非ペプチジル有機分子、ペプチド、ポリペプチド、ペプチド模倣物、糖、ホルモンおよび核酸分子が挙げられる。特定の実施形態では、試験因子は、約2000ダルトン未満の分子量を持つ小さな有機分子である。
【0091】
本発明の試験化合物は、単一の別個の実体として提供され得るか、または、組み合わせ化学によって作製されたような、より複雑度の高いライブラリーにおいて提供され得る。これらのライブラリーは、例えば、アルコール、ハロゲン化アルキル、アミン、アミド、エステル、アルデヒド、エーテルおよび有機化合物の他の分類を含み得る。試験システムに対する試験化合物の提示は、特に、最初のスクリーニング段階において、単離された形態または化合物の混合物としてのいずれかであり得る。任意選択で、化合物は、任意選択で他の化合物で誘導体化され得、そして、化合物の単離を容易にする誘導体化基を有し得る。誘導体化基の非限定的な例としては、ビオチン、フルオレセイン、ジゴキシゲニン、緑色蛍光タンパク質、同位体、ポリヒスチジン、磁気ビーズ、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、光活性化クロスリンカー、またはこれらの任意の組合せが挙げられる。
【0092】
化合物および天然抽出物のライブラリーを試験する多くの薬物スクリーニングプログラムにおいて、所与の期間に調査される化合物の数を最大にするためには、ハイスループットアッセイが望ましい。精製もしくは半精製(semi−purified)されたタンパク質で誘導され得るような、無細胞のシステムにおいて行われるアッセイは、試験化合物によって媒介される分子標的における変更の迅速な発生と比較的容易な検出とを可能にするように作られ得るという点で、しばしば、「一次」スクリーニングとして好ましい。さらに、試験化合物の細胞毒性またはバイオアベイラビリティの作用は、一般に、インビトロのシステムでは無視され得るが、その代わりに、このアッセイは主として、ActRIIBポリペプチドとその結合タンパク質(例えば、ActRIIBリガンド)との間の結合親和性の変更において明らかになり得るような、分子標的に対する薬物の作用に焦点を当てている。
【0093】
単なる例示として、本発明の例示的なスクリーニングアッセイでは、関心のある化合物は、アッセイの意図に応じて適宜、通常ActRIIBリガンドに結合し得る単離および精製されたActRIIBポリペプチドと接触させられる。その後、化合物とActRIIBポリペプチドとの混合物は、ActRIIBリガンドを含む組成物に加えられる。ActRIIB/ActRIIBリガンド複合体の検出および定量は、ActRIIBポリペプチドとその結合タンパク質との間の複合体の形成の阻害(または助長)における化合物の効力を決定するための手段を提供する。化合物の効力は、種々の濃度の試験化合物を用いて得られたデータから用量応答曲線を生成することによって評価され得る。さらに、比較のためのベースラインを提供するためのコントロールアッセイもまた行われ得る。例えば、コントロールアッセイでは、単離および精製されたActRIIBリガンドは、ActRIIBポリペプチドを含む組成物に加えられ、そして、ActRIIB/ActRIIBリガンド複合体の形成は、試験化合物の非存在下で定量される。一般に、反応物が混合され得る順序は変化し得、そして、同時に混合され得ることが理解される。さらに、適切な無細胞アッセイ系を与えるように、精製したタンパク質の代わりに、細胞の抽出物および溶解物が使用され得る。
【0094】
ActRIIBポリペプチドとその結合タンパク質との間の複合体の形成は、種々の技術によって検出され得る。例えば、複合体の形成の調節は、例えば、検出可能に標識されたタンパク質、例えば、放射標識(例えば、32P、35S、14CまたはH)、蛍光標識(例えば、FITC)、または、酵素標識されたActRIIBポリペプチドまたはその結合タンパク質を用いて、イムノアッセイによって、あるいは、クロマトグラフィーによる検出によって定量され得る。
【0095】
特定の実施形態では、本発明は、直接的または間接的のいずれかで、ActRIIBポリペプチドとその結合タンパク質との間の相互作用の程度を測定する、蛍光偏光アッセイおよび蛍光共鳴エネルギー遷移(FRET)アッセイの使用を企図する。さらに、光導波管(waveguide)(PCT公開WO96/26432および米国特許第5,677,196号)、表面プラズモン共鳴(SPR)、表面電荷センサ、および表面力センサに基づくもののような、他の検出様式が、本発明の多くの実施形態と適合性がある。
【0096】
さらに、本発明は、ActRIIBポリペプチドとその結合タンパク質との間の相互作用を妨害または助長する因子を同定するための、「ツーハイブリッドアッセイ」としても公知である相互作用トラップアッセイの使用を企図する。例えば、米国特許第5,283,317号;Zervosら(1993年)Cell 72巻:223〜232頁;Maduraら(1993年)J Biol Chem 268巻:12046〜12054頁;Bartelら(1993年)Biotechniques 14巻:920〜924頁;およびIwabuchiら(1993年)Oncogene 8巻:1693〜1696頁を参照のこと。特定の実施形態では、本発明は、ActRIIBポリペプチドとその結合タンパク質との間の相互作用を解離させる化合物(例えば、低分子またはペプチド)を同定するための、逆ツーハイブリッドシステムの使用を企図する。例えば、VidalおよびLegrain(1999年)Nucleic Acids Res 27巻:919〜29頁;VidalおよびLegrain(1999年)Trends Biotechnol 17巻:374〜81頁;ならびに米国特許第5,525,490号;同第5,955,280号;および同第5,965,368号を参照のこと。
【0097】
特定の実施形態では、本主題の化合物は、本発明のActRIIBポリペプチドと相互作用するその能力によって同定される。化合物と、ActRIIBポリペプチドとの間の相互作用は、共有結合性であっても非共有結合性であってもよい。例えば、このような相互作用は、光架橋、放射性標識リガンド結合、およびアフィニティクロマトグラフィーを含むインビトロの生化学的な方法を用いて、タンパク質レベルで同定され得る(Jakoby WBら、1974年、Methods in Enzymology 46巻:1頁)。特定の場合には、化合物は、ActRIIBポリペプチドに結合する化合物を検出するためのアッセイのような、機構ベースのアッセイにおいてスクリーニングされ得る。これは、固相もしくは流体相の結合事象を含み得る。あるいは、ActRIIBポリペプチドをコードする遺伝子は、レポーターシステム(例えば、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼまたは緑色蛍光タンパク質)と共に細胞中にトランスフェクトされ、そして、好ましくは、ハイスループットスクリーニングによって、ライブラリーに対して、または、ライブラリーの個々のメンバーを用いてスクリーニングされ得る。他の機構ベースの結合アッセイ(例えば、自由エネルギーの変化を検出する結合アッセイ)が使用され得る。結合アッセイは、ウェル、ビーズもしくはチップに固定されているか、または、固定された抗体によって捕捉されている標的を用いて行われ得るか、あるいは、キャピラリー電気泳動によって分離され得る。結合した化合物は通常、比色または蛍光または表面プラズモン共鳴を用いて検出され得る。
【0098】
特定の態様では、本発明は、例えば、ActRIIBポリペプチドおよび/またはActRIIBリガンドの機能に拮抗することによって、筋肉の成長を刺激し、筋肉量を増加させるための方法および因子を提供する。したがって、同定された任意の化合物は、インビトロまたはインビボで、細胞全体または組織全体において、筋肉の成長を調節する、または筋細胞膜におけるユートロフィンレベルを変更するそれらの能力を確認するために試験され得る。この目的のために当該分野で公知のさまざまな方法を利用することができる。例えば、本発明の方法は、ActRIIBリガンド(例えば、GDF8)への結合によって活性化される、ActRIIBタンパク質を介するシグナル伝達が減少する、または阻害されるように実施される。生物における筋肉組織の成長により、生物における筋肉量が、結果として、対応する、ActRIIBタンパク質を介するシグナル伝達が行われていない生物(または生物の集団)の筋肉量と比較して増加することが認識される。
【0099】
例えば、筋肉細胞の成長/増殖に対するActRIIBポリペプチドまたは試験化合物の作用は、筋原細胞の増殖に関連するPax−3およびMyf−5の遺伝子発現、ならびに筋肉の分化に関連するMyoDの遺伝子発現を測定することによって決定することができる(例えば、Amthorら、Dev Biol. 2002年、251巻:241〜57頁)。GDF8は、Pax−3およびMyf−5の遺伝子発現を下方制御すること、およびMyoDの遺伝子発現を妨げることが公知である。ActRIIBポリペプチドまたは試験化合物は、GDF8のこの活性と拮抗することが予測される。細胞に基づくアッセイの別の例としては、ActRIIBポリペプチドまたは試験化合物の存在下でC(2)C(12)筋芽細胞などの筋芽細胞の増殖を測定することが挙げられる(例えば、Thomasら、J Biol Chem. 2000年、275巻:40235〜43頁)。
【0100】
本発明はまた、筋肉の量および強度を測定するためのインビボまたはエクスビボのアッセイを企図する。例えば、Whittemoreら(Biochem Biophys Res Commun. 2003年、300巻:965〜71頁)は、マウスにおいて、骨格筋量の増加および握力の増加を測定する方法を開示している。任意選択で、この方法を使用して、筋肉疾患または状態、例えば、筋肉量が限定されている疾患に対する試験化合物(例えば、ActRIIBポリペプチド)の治療効果を決定することができる。さらに、治療介入後のその筋肉の生理的完全性を評価するために、収縮の繰り返しに対する筋肉の機械的反応が使用され得る。例えば、筋ジストロフィーのマウスモデルは、一般には、力を発揮する(収縮する)と筋線維が伸びる間の一連の伸張性収縮後に最大強縮力の過剰な急降下を示す。治療剤(例えば、ActRIIBポリペプチド)を投与した後に力の急降下が少なくなることは、筋細胞膜の完全性に対する有益な作用を示し得る。したがって、Kragら(2004年、Proc Natl Acad Sci USA 101巻:13856〜13860頁)は、エクスビボで単離された筋肉を用いてこのようなアッセイを行うための方法を開示している。あるいは、Blaauwら(2008年、Hum Mol Genet 17巻:3686〜3696頁)は、インビボでそのように試験するための方法を開示している。
【0101】
本発明のスクリーニングアッセイは、本主題のActRIIBポリペプチドおよびActRIIBポリペプチドの改変体だけでなく、ActRIIBポリペプチドのアゴニストおよびアンタゴニストを含めた任意の試験化合物にも適用されることが理解される。さらに、これらのスクリーニングアッセイは、薬物の標的の確認および品質管理の目的のために有用である。
【0102】
6.例示的な治療的用途
特定の実施形態では、本発明の組成物(例えば、ActRIIBポリペプチド)は、ActRIIBポリペプチドおよび/またはActRIIBリガンド(例えば、GDF8)の異常な活性に関連する疾患また状態を処置または予防するために使用され得る。これらの疾患、障害または状態は、本明細書中では一般に「ActRIIB関連状態」と呼ばれる。特定の実施形態では、本発明は、治療有効量の上記のActRIIBポリペプチドを個体に投与することによって、疾患、障害または状態の処置または予防を必要とする個体における疾患、障害または状態を処置または予防する方法を提供する。これらの方法は、特に動物、特に、ヒトの治療的および予防的な処置を目的としている。
【0103】
本明細書中で使用される場合、障害または状態を「予防する」治療薬は、統計的試料において、無処置の対照試料に対して、処置試料における障害もしくは状態の出現を低下させるか、あるいは、無処置の対照試料に対して、障害もしくは状態の1または複数の症状の発症を遅延させるか、または、重篤度を低下させるような化合物を指す。用語「処置する」は、本明細書中で使用される場合、指定された状態の予防、または、一度確立された状態の改善もしくは除去を含む。
【0104】
特定の実施形態では、本発明の組成物(例えば、可溶性ActRIIBポリペプチド)は、筋ジストロフィーに対する処置の一部として使用される。用語「筋ジストロフィー」は、骨格筋および場合によっては心臓および呼吸器の筋肉のゆるやかな衰弱および劣化を特徴とする退行性の筋疾患のグループを指す。筋ジストロフィーは、筋肉における微視的な変化で始まる進行性の筋肉の消耗および衰弱を特徴とする遺伝的障害である。時間ともに筋肉が変性するにつれて、その人の筋肉の強度が減退する。特に、本主題のActRIIBポリペプチドを含むレジメンを用いて処置され得る、ジストロフィン機能の喪失によって引き起こされる筋ジストロフィーとしては、デュシェンヌ型筋ジストロフィーおよびベッカー型筋ジストロフィーが挙げられる。
【0105】
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は、フランスの神経科医であるGuillaume Benjamin Amand Duchenneによって1860年代に最初に記載され、男性における最も頻度の高い遺伝性疾患の1つであり、3,500人に1人の少年に影響を及ぼしている。DMDは、全長ジストロフィンタンパク質の形成を妨げる、ジストロフィン遺伝子の変異または欠失によって引き起こされる。特に男性は、ジストロフィン遺伝子を、X染色体上に位置する単一コピーのみしか保有しないので、ジストロフィン欠損の危険性がある。ジストロフィンは、通常、筋肉細胞(線維)の原形質膜(筋細胞膜)とアクチンの細胞骨格および細胞外マトリックスとを連結し、それによって線維収縮の間、筋細胞膜を安定化する多タンパク質複合体の重大な成分として機能する。機能性ジストロフィンの非存在下では、収縮と弛緩のサイクルの間に、筋細胞膜、および最終的には筋線維全体が容易に損傷を受ける。DMDの経過の初期では、筋肉は再生によって補償されるが、最終的に、筋肉前駆細胞は進行中の傷害についていけず、そして、健康な筋肉が、非機能的な線維脂肪性組織に置き換えられる。
【0106】
ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)は、1950年代にDMDのこの変形について最初に記載したドイツの医師であるPeter Emil Beckerにちなんで名付けられた。BMDは、ジストロフィン遺伝子における異なる突然変異に起因する。BMD患者はいくらかのジストロフィンを有するが、量が不十分であるか、または質が悪いかのいずれかである。ある程度のジストロフィンの機能性を有することにより、BMDの人の筋肉は、DMDの人の筋肉と同じくらいひどく、または同じくらい急速に変性することから保護される。
【0107】
ユートロフィンは、ジストロフィンと構造的に類似した常染色体性のタンパク質であり、胚発生の間に筋細胞膜においてジストロフィンと共に広く発現される。筋肉におけるユートロフィンの発現は、通常、出生時までに減退し、成熟線維では神経筋接合部および筋肉腱接合部に限られるようになる。説得力のある証拠は、筋ジストロフィー患者においてユートロフィンがジストロフィンの代わりをし得、初期発生において見られるように、筋細胞膜に沿ってユートロフィンレベルを増加させる方法を考案することができれば、治療的な利益をもたらし得ることを示唆している(Miuraら、2006年、Trends Mol Med 12巻:122〜129頁)。原理の実験的な証明では、mdxマウスモデルにおいて、筋肉におけるユートロフィンのトランスジェニック発現によって正常な機械的機能が完全に回復し、筋ジストロフィーが予防された(Tinsleyら、1998年、Nat Med 4巻:1441〜1444頁)。
【0108】
最近の研究では、インビボでGDF8(ActRIIBリガンド)の機能を遮断または排除することにより、DMD患者およびBMD患者における少なくともある特定の症状が有効に処置され得ることが実証されている。したがって、本主題のActRIIBポリペプチドは、GDF8インヒビター(アンタゴニスト)として作用され得、DMD患者およびBMD患者においてインビボでGDF8および/またはActRIIBの機能を遮断する代替の手段を構成する。このアプローチは、ActRIIB−Fcタンパク質が、筋ジストロフィーのマウスモデルにおいて筋肉の量および強度を増大させたので、筋細胞膜での広範なユートロフィンの発現を誘導することが示されたという本明細書で示されるデータによって確証され、支持される。
【0109】
7.薬学的組成物
特定の実施形態では、本発明の化合物(例えば、ActRIIBポリペプチド)は、薬学的に受容可能なキャリアと共に処方される。例えば、ActRIIBポリペプチドは、単独で、または、薬学的処方物(治療用組成物)の成分として投与され得る。本主題の化合物は、ヒトまたは獣医学における医薬での使用のために任意の簡便な方法で投与するために処方され得る。
【0110】
特定の実施形態では、本発明の治療方法は、局所に(topically)、全身に、または、移植物もしくはデバイスとして局所的に(locally)組成物を投与することを包含する。投与される場合、本発明において使用するための治療用組成物は、当然のことながら、発熱物質を含まない生理学的に容認可能な形態である。さらに、組成物は、標的組織部位(例えば、骨、軟骨、筋肉、脂肪またはニューロン)、例えば、組織の損傷を有する部位へと送達するためにカプセル化されるか、または粘性の形態で注射されることが望ましい場合がある。局所投与は、創傷治癒および組織修復のために適している可能性がある。また、その代わりにまたはそれに加えて、上記の組成物中に任意選択で含められ得るActRIIBポリペプチド以外の治療上有用な因子は、本発明の方法において、本主題の化合物(例えば、ActRIIBポリペプチド)と同時に、または逐次的に投与され得る。
【0111】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、標的組織部位に1または複数の治療用化合物(例えば、ActRIIBポリペプチド)を送達し得、成長中の組織のための構造を提供し得、そして、最適には身体内へと再吸収され得るマトリクスを含み得る。例えば、マトリクスは、ActRIIBポリペプチドのゆっくりとした放出を提供し得る。このようなマトリクスは、他の移植医療用途に現在使用される材料から形成され得る。
【0112】
マトリクス材料の選択は、生体適合性、生分解性、機械的特性、見かけ上の様相および界面の特性に基づく。本主題の組成物の特定の用途が、適切な処方物を画定する。組成物のための可能性のあるマトリクスは、生分解性でかつ化学的に画定された硫酸カルシウム、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、ポリ乳酸およびポリ無水物であり得る。他の可能性のある材料は、生分解性でかつ生物学的に十分に画定されたもの(例えば、骨または皮膚のコラーゲン)である。さらなるマトリクスは、純粋なタンパク質または細胞外マトリクスの成分を含む。他の可能性のあるマトリクスは、非生分解性でかつ化学的に画定されたもの(例えば、焼結ヒドロキシアパタイト、バイオグラス、アルミン酸塩、または他のセラミクス)である。マトリクスは、上述のタイプの材料のいずれかの組合せ(例えば、ポリ乳酸およびヒドロキシアパタイト、または、コラーゲンおよびリン酸三カルシウム)を含み得る。バイオセラミクスは、組成物中(例えば、カルシウム−アルミン酸−リン酸中)で変化され得、孔径、粒径、粒子の形状および生分解性を変更するように加工され得る。
【0113】
特定の実施形態では、本発明の方法は、例えば、カプセル、カシェ、丸剤、錠剤、ロゼンジ(矯味矯臭薬を含む基材、通常はスクロースおよびアカシアまたはトラガントを用いて)、散剤、顆粒剤、または、水性もしくは非水性液体中の溶液もしくは懸濁物として、または、水中油もしくは油中水の液体エマルジョンとして、または、エリキシルもしくはシロップとして、または、トローチ(ゼラチンおよびグリセリン、または、スクロースおよびアカシアのような不活性基材を用いて)および/またはマウスウォッシュなどの形態(この各々が、活性成分として所定量の因子を含む)で、経口投与され得る。因子はまた、ボーラス、舐剤またはペーストとしても投与され得る。
【0114】
経口投与のための固体投薬形態(カプセル、錠剤、丸剤、糖衣錠、散剤、顆粒剤など)において、本発明の1または複数の治療用化合物は、1または複数の薬学的に受容可能なキャリア(例えば、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム)および/または、以下のうちのいずれかと共に混合され得る:(1)充填剤または増量剤(例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよび/またはケイ酸);(2)結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよび/またはアカシアなど);(3)湿潤剤(例えば、グリセロール);(4)崩壊剤(例えば、寒天(agar−agar)、炭酸カルシウム、ポテトもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウム);(5)溶液抑制因子(solution retarding agent)(例えば、パラフィン);(6)吸収加速剤(例えば、四級アンモニウム化合物);(7)加湿剤(例えば、セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールなど);(8)吸着剤(例えば、カオリンおよびベントナイトクレイ);(9)潤滑剤(例えば、滑石、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムおよびこれらの混合物);および(10)着色剤。カプセル、錠剤および丸剤の場合には、薬学的組成物はまた、緩衝剤を含み得る。同様のタイプの固形組成物もまた、ラクトースすなわち乳糖ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどのような賦形剤を用いて、軟充填ゼラチンカプセルおよび硬充填ゼラチンカプセル中の充填物として用いられ得る。
【0115】
経口投与のための液体投薬形態としては、薬学的に受容可能なエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁物、シロップおよびエリキシルが挙げられる。活性成分に加え、液体投薬形態は、当該分野で一般に用いられる不活性希釈剤、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油(特に、綿実油、ピーナッツ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにこれらの混合物を含み得る。不活性な希釈剤に加え、経口用組成物はまた、加湿剤、乳化剤および懸濁剤、甘味剤、矯味矯臭剤、着色剤、芳香剤および保存剤のようなアジュバントを含み得る。
【0116】
懸濁物は、活性な化合物に加えて、懸濁剤、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天およびトラガント、ならびにこれらの混合物を含み得る。
【0117】
本明細書に開示されている特定の組成物は、皮膚または粘膜のいずれかに局所的に投与され得る。局所用処方物は、皮膚または角質層への浸透賦活剤(penetration enhancer)として有効であることが公知の多種多様の因子の1または複数をさらに含み得る。これらの例は、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、プロピレングリコール、メチルアルコールまたはイソプロピルアルコール、ジメチルスルホキシド、およびアゾンである。さらなる因子が、化粧品として容認される処方物を作製するためにさらに含められ得る。これらの例は、脂肪、ワックス、油、色素、芳香剤、保存料、安定剤、および表面活性剤(surface active agent)である。当技術分野で公知のものなどの角質溶解薬(keratolytic agent)も含められ得る。例は、サリチル酸および硫黄である。
【0118】
局所投与または経皮投与するための剤形としては、散剤、スプレー剤、軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、液剤、パッチ剤、および吸入剤が挙げられる。活性化合物は、滅菌条件下で、薬学的に受容可能なキャリアと共に、および必要であり得る任意の保存料、緩衝剤、または噴霧剤(propellant)と共に混合され得る。軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤およびゲル剤は、本発明の本主題の化合物(例えば、ActRIIBポリペプチド)に加えて、賦形剤、例えば、動物および植物の脂肪、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルクおよび酸化亜鉛、またはそれらの混合物などを含み得る。
【0119】
散剤およびスプレー剤は、本主題の化合物に加えて、賦形剤、例えば、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、およびポリアミド粉末、またはこれらの物質の混合物などを含み得る。スプレー剤は、ブタンおよびプロパンなどの、クロロフルオロヒドロカーボンおよび揮発性の非置換型炭化水素などの通例の噴霧剤をさらに含み得る。
【0120】
特定の実施形態では、非経口投与に適した薬学的組成物は、1または複数のActRIIBポリペプチドを、1または複数の薬学的に受容可能な無菌かつ等張の水性もしくは非水性の溶液、分散物、懸濁液もしくはエマルジョン、または、使用直前に無菌の注射可能な溶液もしくは分散物へと再構成され得る無菌粉末と組み合わせて含み得、この組成物は、抗酸化物質、緩衝剤、静菌剤、処方物を意図されるレシピエントの血液と等張にする溶質、または懸濁剤もしくは増粘剤を含み得る。本発明の薬学的組成物中で採用され得る適切な水性および非水性のキャリアの例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)およびこれらの適切な混合物、植物油(例えば、オリーブ油)、ならびに、注射可能な有機エステル(例えば、オレイン酸エチル)が挙げられる。適切な流動性は、例えば、コーティング材料(例えば、レシチン)の使用によって、分散物の場合には必要とされる粒径の維持によって、そして、界面活性剤の使用によって維持され得る。
【0121】
本発明の組成物はまた、保存剤、加湿剤、乳化剤および分散剤のようなアジュバントを含み得る。微生物の作用の阻止は、種々の抗細菌剤および抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、ソルビン酸フェノールなど)を含めることによって保証され得る。糖、塩化ナトリウムなどのような等張化剤を組成物中に含めることも望ましくあり得る。さらに、注射可能な薬学的形態の吸収の延長は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンのような吸収を遅らせる因子を含めることによってもたらされ得る。
【0122】
投薬レジメンは、本発明の主題の化合物(例えば、ActRIIBポリペプチド)の作用を修飾する種々の要因を考慮して主治医によって決定されることが理解される。種々の要因は、処置されるべき疾患に依存する。筋障害の場合では、要因としては、形成されることが望ましい筋肉量、疾患によって最も影響を受ける筋肉、劣化した筋肉の状態、患者の年齢、性別および食事、投与時間、および他の臨床的な要因が挙げられ得るが、これらに限定されない。最終的な組成物に他の公知の増殖因子を加えることも、投与量に影響を及ぼし得る。筋肉の成長および/または修復を、例えば、強度試験、筋肉のサイズのMRI評価および筋肉の生検材料の分析によって定期的に評価することにより、進行をモニターすることができる。
【0123】
本発明のある特定の実施形態では、1または複数のActRIIBポリペプチドは、一緒に(同時に)または違う時間に(逐次的にまたは重複して)投与され得る。さらに、ActRIIBポリペプチドは、別の種類の治療剤、例えば、軟骨誘導因子、骨誘導因子、筋肉誘導因子、脂肪減少因子(fat−reducing)または神経誘導因子(neuron−inducing agent)と共に投与され得る。2種類の化合物は、同時に、または違う時間に投与され得る。本発明のActRIIBポリペプチドは、別の治療剤と協調して、またはことによると相乗的に作用し得ることが予想される。
【0124】
特定の例では、種々の骨形成因子、軟骨誘導因子および骨誘導因子、特に、ビスホスホネートが記載されている。例えば、欧州特許出願第148,155号および同第169,016号を参照されたい。例えば、本主題のActRIIBポリペプチドと組み合わせることができる他の因子としては、種々の増殖因子、例えば、上皮増殖因子(EGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、トランスフォーミング増殖因子(TGF−αおよびTGF−β)、およびインスリン様増殖因子(IGF)などが挙げられる。
【0125】
特定の実施形態では、本発明は、ActRIIBポリペプチドのインビボ産生のための遺伝子治療も提供する。このような治療は、上に列挙したような障害を有する細胞または組織中にActRIIBポリヌクレオチド配列を導入することによってその治療作用を達成する。ActRIIBポリヌクレオチド配列の送達は、キメラウイルスのような組換え発現ベクターまたはコロイド分散系を用いて達成され得る。ActRIIBポリヌクレオチド配列の治療的送達には、標的化されたリポソームの使用が好ましい。
【0126】
本明細書中で教示されるような遺伝子治療に利用され得る種々のウイルスベクターとしては、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニア、または、好ましくはレトロウイルスのようなRNAウイルスが挙げられる。好ましくは、レトロウイルスベクターは、マウスもしくはトリのレトロウイルスの誘導体である。単一の外来遺伝子が挿入され得るレトロウイルスベクターの例としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)、ハーベーマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳腺癌ウイルス(MuMTV)およびラウス肉腫ウイルス(RSV)。多数のさらなるレトロウイルスベクターが多数の遺伝子を組み込み得る。これらのベクターは全て、形質導入された細胞が同定および生成され得るように、選択マーカーについての遺伝子を移送または組み込み得る。レトロウイルスベクターは、例えば、糖、糖脂質またはタンパク質を付着させることによって、標的特異的とされ得る。好ましい標的化は、抗体を用いて達成される。当業者は、ActRIIBポリヌクレオチドを含むレトロウイルスベクターの標的特異的な送達を可能にするために、特定のポリヌクレオチド配列がレトロウイルスゲノム中に挿入され得るか、または、ウイルスエンベロープに付着され得ることを認識する。 一つの好ましい実施形態において、このベクターは、骨、軟骨、筋肉またはニューロンの細胞/組織に標的化される。
【0127】
あるいは、組織培養細胞は、従来のリン酸カルシウムトランスフェクション法によって、レトロウイルスの構造遺伝子gag、polおよびenvをコードするプラスミドを用いて直接トランスフェクトされ得る。これらの細胞は、次いで、関心のある遺伝子を含むベクタープラスミドでトランスフェクトされる。得られた細胞は、培養培地中にレトロウイルスベクターを放出する。
【0128】
ActRIIポリヌクレオチドのための別の標的化送達システムは、コロイド分散系である。コロイド分散系としては、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズおよび脂質ベースの系(水中油エマルジョン、ミセル、混合型ミセルおよびリポソームを含む)が挙げられる。本発明の好ましいコロイド系は、リポソームである。リポソームは、インビトロおよびインビボで送達ビヒクルとして有用な人工の膜小胞である。RNA、DNAおよびインタクトなビリオンが、水性の内部に封入され得、そして、生物学的に活性な形態で細胞へと送達され得る(例えば、Fraleyら、Trends Biochem. Sci.、6巻:77頁、1981年を参照のこと)。リポソームビヒクルを用いた効率的な遺伝子移入のための方法は当該分野で公知であり、例えば、Manninoら、Biotechniques、6巻:682頁、1988年を参照のこと。リポソームの組成は、通常リン脂質の組合せであり、通常ステロイド(特に、コレステロール)と組合わされる。他のリン脂質または他の脂質もまた使用され得る。リポソームの物理的特性は、pH、イオン強度および二価のカチオンの存在に依存する。
【0129】
リポソームの生成において有用な脂質の例としては、ホスファチジル化合物(例えば、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴ脂質、セレブロシドおよびガングリオシド)が挙げられる。例示的なリン脂質としては、卵ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリンおよびジステアロイルホスファチジルコリンが挙げられる。例えば、器官特異性、細胞特異性および細胞小器官特異性に基づいたリポソームの標的化もまた可能であり、当該分野で公知である。
【実施例】
【0130】
本発明は、ここで、一般的に記載されてきたが、単に特定の実施形態および本発明の実施形態を例示する目的のために含められ、本発明を限定することは意図されない以下の実施例を参照するとより容易に理解される。
【0131】
(実施例1)
ActRIIB−Fc融合タンパク質の作製
出願人は、間に最小限のリンカー(3つのグリシンアミノ酸)を用いて、ヒトもしくはマウスのFcドメインに融合させたヒトActRIIbの細胞外ドメインを有する可溶性のActRIIb融合タンパク質を構築した。この構築物を、それぞれActRIIb(20〜134)−hFcおよびActRIIb(20〜134)−mFcと呼ぶ。
【0132】
ActRIIb(20〜134)−hFcを、CHO細胞から精製されたものとして以下に示す(配列番号5)
【0133】
【化2】

ActRIIb(20〜134)−hFcタンパク質およびActRIIb(20〜134)−mFcタンパク質をCHO細胞株中で発現させた。3つの異なるリーダー配列を検討した:
(i)ミツバチメリチン(HBML):MKFLVNVALVFMVVYISYIYA(配列番号7)
(ii)組織プラスミノーゲンアクチベーター(TPA):MDAMKRGLCCVLLLCGAVFVSP(配列番号8)
(iii)天然:MGAAAKLAFAVFLISCSSGA(配列番号9)。
【0134】
選択された形態は、TPAリーダーを採用し、そして、以下のプロセシングを受けていないアミノ酸配列を有する:
【0135】
【化3】

このポリペプチドは、以下の核酸配列によってコードされる(配列番号10):
【0136】
【化4】

CHO細胞が産生した物質のN末端の配列決定により、主要な配列である−GRGEAE(配列番号11)が明らかになった。特に、文献において報告された他の構築物は、−SGR…配列で始まる。
【0137】
精製を、例えば、以下のうちの3またはそれ以上を任意の順序で含む一連のカラムクロマトグラフィーステップによって達成し得る:プロテインAクロマトグラフィー、Qセファロースクロマトグラフィー、フェニルセファロースクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、およびカチオン交換クロマトグラフィー。精製は、ウイルス濾過およびバッファーの交換で完了し得る。
【0138】
ActRIIb−Fc融合タンパク質を、HEK293細胞およびCOS細胞においても発現させた。すべての細胞株由来の材料および妥当な培養条件により、インビボで筋肉増強活性(muscle−building activity)を持つタンパク質がもたらされたが、観察された効力の変動性は、おそらく、細胞株の選択および/または培養条件に関連する。
【0139】
(実施例2)
ActRIIB−Fc変異体の作製
出願人は、ActRIIBの細胞外ドメインに一連の変異を生じさせ、これらの変異体タンパク質を細胞外ActRIIBとFcドメインとの可溶性の融合タンパク質として作製した。バックラウンドのActRIIB−Fc融合物はこの配列を有した(Fc部分に下線を付した)(配列番号12):
【0140】
【化5】

N末端およびC末端の切断を含めた、さまざまな変異をバックラウンドのActRIIB−Fcタンパク質に導入した。実施例1において提示されたデータに基づいて、これらの構築物は、TPAリーダーを用いて発現させる場合、N末端のセリンを欠くことが予想される。PCR変異誘発によって、ActRIIB細胞外ドメインにおいて変異を発生させた。PCRの後、フラグメントをQiagenカラムによって精製し、SfoIおよびAgeIを用いて消化し、ゲル精製した。これらのフラグメントを、発現ベクターのpAID4(WO2006/012627参照)に、ライゲーションすると、ヒトIgG1との融合キメラが創出されるようにライゲーションした。E.coli DH5アルファ中へ形質転換し、コロニーを採集し、DNAを単離した。マウスの構築物(mFc)については、ヒトIgG1をマウスIgG2aに置き換えた。すべての変異体について配列を確認した。
【0141】
変異体は全て、HEK293T細胞において一過性のトランスフェクションによって作製した。要約すると、500mlのスピナー中、HEK293T細胞を、250ml体積のFreestyle(Invitrogen)培地中、1ml当たり細胞6×10個で準備し、一晩成長させた。次の日に、これらの細胞を、DNA:PEI(1:1)複合体を最終的なDNA濃度0.5μg/mlで用いて処理した。4時間後、250mlの培地を加え、細胞を7日間成長させた。細胞を遠心して沈降させることにより馴化培地を回収し、濃縮した。
【0142】
変異体を、例えば、プロテインAカラムを含めたさまざまな技法を使用して精製し、低pH(3.0)のグリシンバッファーを用いて溶出した。中和した後、これらをPBSに対して透析した。
【0143】
変異体は、CHO細胞においても同様の方法論によって作製した。
【0144】
(実施例3)
切断された改変体ActRIIB(25〜131)−hFcの作製
出願人は、ActRIIB(20〜134)−hFcを用いて観察されたものと同様の、筋肉に対する作用を示す、切断された融合タンパク質、ActRIIB(25〜131)−hFc(図7〜8)を作製した。ActRIIB(20〜134)−hFcに関して上記したものと同じリーダーおよび方法論を使用して、ActRIIB(25〜131)−hFcを作製した。CHO細胞において発現させた後に精製した成熟ActRIIB(25〜131)−hFcタンパク質は、以下に示す配列を有する(配列番号23):
【0145】
【化6】

(実施例4)
mdxマウスにおける、筋肉の量および強度に対するActRIIB−Fcの作用
疾患状態において筋肉量を増加させるActRIIB(20〜134)−Fcタンパク質の能力を決定するために、出願人は、筋ジストロフィーのmdxマウスモデルにおいて、ActRIIB−Fcタンパク質の、筋肉量を増加させる能力を決定した。
【0146】
成体のmdxマウスを週2回、ActRIIB(20〜134)−mFcタンパク質(1、3、または10mg/kg;腹腔内)またはPBSビヒクル対照で処置した。力変換器(force transducer)を引っ張る際にマウスが発揮した力を測定して前肢の握力を決定する。5回の引っ張り試行の平均の力を使用してコホート間の握力を比較した。試験終了時に、大腿筋、腓腹筋、胸筋および横隔膜筋を解剖し、秤量した。握力測定でも有意な増加が示された。筋肉量の結果が以下の表に要約されている。
【0147】
【表1】

この表において例示されているように、ActRIIB(20〜134)−mFc処置群は、mdxマウスにおいて、PBS処置したマウスと比較して除脂肪組織質量(lean tissue mass)の増加を示した。ActRIIB−Fc処置により、ビヒクル対照群と比較して、腓腹筋のサイズが25.9%、大腿部のサイズが31.8%、および胸筋が85.4%増加した。可能性のある臨床的な重要性として、我々は、ActRIIB(20〜134)−mFc処置マウスの横隔膜の重量が、対照コホートと比較して34.2%増加したことも見出した。これらのデータは、筋ジストロフィー疾患状態におけるActRIIB−Fcタンパク質の有効性を実証している。
【0148】
さらに、ActRIIB−Fcタンパク質で処置したmdxマウスは、ビヒクルで処置した対照と比較して、握力の増加を示す。16週の時点で、1、3および10mg/kgのActRIIB−Fc群は、それぞれ、ビヒクル対照群と比較して、31.4%、32.3%および64.4%の握力の増加を実証した。ActRIIB(20〜134)−mFc処置群の握力性能の改善は、処置群において見出される筋肉の増加が、生理的に意味があるという観念を支持する。mdxマウスは、収縮誘導性傷害を受けやすく、それらの野生型対応物よりも有意に多い変性と再生のサイクルを受ける。これらの筋肉表現型にもかかわらず、mdxマウスにおいて、ActRIIB(20〜134)−mFc処置により握力が増加する。
【0149】
デュシェンヌ型筋ジストロフィーでは、疾患の発症は小児期の初期、しばしば、早ければ5歳で起こる。したがって、成体マウスに関して上に提示されているデータは、必ずしも、ActRIIB分子がDMDの小児において有し得る作用を反映しない。これに対処するために、若齢のmdxマウスを用いて試験を行った。
【0150】
ActRIIB(20〜134)−mFc処置により、若齢(4週齢)のC57BL/10マウスおよびmdxマウスにおいて体重が有意に増加する。インビボNMR分光法を使用した体組成分析により、より重い体重に伴う除脂肪組織質量の増加が明らかになった。ActRIIB(20〜134)−mFcで処置したC57BL/10マウスでは、それらのそれぞれの対照コホートよりも、除脂肪組織質量が35.2%増加し、処置したmdx群では除脂肪組織質量が48.3%増加した。さらに、強度に対するActRIIB(20〜134)−mFc処置の作用を評価した。ビヒクルで処置したmdxマウスの握力スコアは、ビヒクルC57BL/10コホートよりも15.7%低く、それにより、ジストロフィン欠乏に関連する筋肉の衰弱が例示されている。対照的に、ActRIIB(20〜134)−mFcで処置したmdxマウスでは、それらの握力がmdxビヒクル群と比較して改善され、C57BL/10ビヒクルマウスを凌ぐ握力測定値が達成され、処置したC57BL/10の握力スコアのレベルに到達した(ビヒクルmdx:0.140±0.01KgF;処置したmdx:0.199±0.02KgF;ビヒクルC57BL/10:0.166±0.03;0.205±0.02KgF)。驚くべきことに、この処置により、若齢のmdxマウスが野生型の握力のレベルまで回復した。したがって、ActRIIB(20〜134)−mFc分子は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、特に、この疾患の発症に近い年齢の若齢の患者において重要な臨床的適用を有する可能性がある。
【0151】
(実施例5)
mdxマウスにおける、筋細胞膜でのユートロフィンの発現に対するActRIIB−Fcの作用
最も一般的な種類の筋ジストロフィーは、機能性ジストロフィンタンパク質の部分的または完全な喪失によって引き起こされ、筋細胞膜(筋肉細胞膜)の脆弱性、筋肉の衰弱、および最終的な筋肉の壊死に至る。ユートロフィンは、正常状態下では成熟筋線維における分布が非常に限られてはいるが、構造的に類似したタンパク質である。説得力のある証拠は、ユートロフィンが、ジストロフィンの代わりをし得、初期発生の間の場合と同様に筋線維の筋細胞膜全体を通してユートロフィンレベルを増加させる方法を考案することができれば、多くの筋ジストロフィー患者において、治療的な利益をもたらし得ることを示唆している(Miuraら、2006年、Trends Mol Med 12巻:122〜129頁)。
【0152】
したがって、出願人は、ジストロフィン遺伝子のエクソン10における点変異が中途での終止コドンおよび機能不全のジストロフィンタンパク質を生み出すmdx5cvマウスモデルにおいて、ActRIIB(20〜134)−mFcの、筋線維の筋細胞膜全体を通してユートロフィンレベルを増加させる能力を調査した。4〜6カ月齢で始めて、mdx5cvマウスを、ActRIIB(20〜134)−mFc、10mg/kg、s.c.で、またはビヒクル(トリス緩衝生理食塩水)で、週2回、20週間にわたって処置した。投薬を終了したら、大胸筋および長指伸筋(EDL)を取り出し、後で分析するために凍結させた。
【0153】
筋肉におけるユートロフィンの発現に対するActRIIB−Fcの作用を、ウェスタンブロット分析および免疫組織化学によって調査した。ウェスタンブロット分析のための調製において、大胸筋を、手持ち式の組織ホモジナイザーを用いて、プロテアーゼおよびホスファターゼのインヒビターの存在下で機械的にホモジナイズした。タンパク質試料を4〜12%アクリルアミドNuPAGE(登録商標)Novex(登録商標)トリスミニゲル(Invitrogen)にかけ、Immobilon(登録商標)−FLフッ化ポリビニリデン膜(Millipore)に転写した。免疫検出する前に、タンパク質がレーン間で均等に投入されていること、およびタンパク質が膜に均一に転写されていることを、Ponceau染色を用いて確認した。膜に結合したユートロフィンを、組換えヒトユートロフィンを対象とするマウスモノクローナル抗体(MANCHO3 クローン8A4、1:200に希釈;Developmental Studies Hybridoma Bank、University of Iowa)を用いて検出した。この抗体は、マウスユートロフィン、ならびにヒト、イヌおよびツメガエルのホモログを認識することが示されている。二次抗体は、西洋ワサビペルオキシダーゼとコンジュゲートしたウサギ抗マウス抗体(1:2000希釈)であった。濃度測定を、Chemi Genius Bioimaging System(Syngene)を用いて実施し、ユートロフィンレベルを、不均一な処理について調整するために各試料中のGAPDH(グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ)レベルに対して正規化した。免疫組織化学的な分析のために、ヒトユートロフィンのC末端を対象とするマウス一次抗体(Santa Cruz Biotechnology、カタログ番号sc−81556)およびAlexa Fluor488で標識したヤギ抗マウス二次抗体(Invitrogen、カタログ番号A21121)を用いて、アセトンで固定したEDL筋線維の横断切片(厚さ14μm)上でユートロフィンを可視化した。
【0154】
これらの相補的なアプローチにより、ActRIIB−Fcがmdxマウスにおいて筋細胞膜でのユートロフィンの発現を誘導する強力な証拠がもたらされた。ウェスタンブロットによって評価された通り、中年のmdxマウスにおけるActRIIB(20〜134)−mFcを用いた慢性的な処置により、ユートロフィンタンパク質レベルが、胸筋全体にわたって平均すると、対照と比較して80%超増加した(図9)。さらに、EDL筋線維の免疫組織化学的な分析により、ユートロフィンの発現の増加が筋細胞膜に局在したことが確認された。図10〜11に示されているように、mdxの成体の成熟筋線維について予測されるように、ユートロフィンは、ビヒクルで処置したmdxマウスの大部分の筋細胞膜のセグメントにおいてほとんど検出できなかった。対照と比較して、年齢を釣り合わせたActRIIB(20〜134)−mFcで処置したmdxマウスにおいて、筋細胞膜のユートロフィン(utophin)レベルが顕著に増加し、ユートロフィンは個々の線維の筋細胞膜に沿って広範に分布していた(図10〜11)。これらの結果は、ActRIIB(20〜134)−mFc処置により、筋ジストロフィーのマウスモデルにおいて、筋線維へのユートロフィンの広範な筋細胞膜分布が予想外に誘導され得ることを実証している。ユートロフィンを誘導し、そして、ジストロフィン欠乏を潜在的に補償するこの能力により、ActRIIB(20〜134)−mFc処置によって、筋肉のサイズおよび強度が増大するので、筋細胞膜の不安定性および収縮に関連する細胞損傷が改善され得ることが示されている。したがって、患者に筋肉の量および強度の増大がもたらされることに加えて、ActRIIBシグナル伝達のアンタゴニストを用いた処置により、DMDおよびBMDの典型である損傷および変性に対してより抵抗性である筋線維が作られ得る。
【0155】
(実施例6)
mdxマウスにおける、伸長性収縮に伴う筋細胞膜の完全性および力の急降下に対するActRIIB−Fcの作用
出願人は、筋ジストロフィーのマウスモデルにおいて、ActRIIB−Fcのユートロフィンを誘導する特性により、筋細胞膜の不安定性および収縮に関連する筋肉損傷が保護されるかどうかを決定するために、mdx5cvマウスをActRIIB(20〜134)−mFcまたはビヒクルを用いて上記の通り処置する。さらに、対照としての機能を果たす野生型マウスを、ActRIIB(20〜134)−mFcまたはビヒクルで処置する。エバンスブルー色素を用いたトレーサーアッセイを使用して、筋線維への血漿血清アルブミンの浸潤を検出することによって使用依存性の筋細胞膜浸透性(膜の完全性の指標として)を評価する。各群のマウスを、トレッドミルで定期的に運動させ、次いで、投薬終了時に滅菌エバンスブルー色素(体重10g当たり10mg/mlの緩衝溶液50μl)をIP注射する。筋肉を24時間後に切除し、そして冷却したイソペンタン中で直ちに凍結させる。横断切片を、クライオスタットを用いて調製し、そして個々の線維内へのエバンスブルー色素の浸潤を顕微鏡で可視化するために処理する。筋細胞膜の境界を確認または示すために、筋細胞膜のタンパク質(ラミニンなど)の免疫組織化学的染色が使用され得、血清アルブミン(エバンスブルー色素)が浸潤した全線維の百分率が定量化され得る。出願人は、ActRIIB(20〜134)−mFcを用いた処置により、筋細胞膜の完全性が改善されたことの指標として、運動したmdx5cvマウスの筋線維へのエバンスブルー色素の浸潤が改善される、または妨げられることを予測する。
【0156】
mdxマウスでは、骨格筋(特に速筋)は、力を発揮する(収縮する)と筋線維が伸びる一連の伸長性収縮の後に最大強縮力の過剰な急降下を示す。この力の過剰な急降下は、ジストロフィン欠乏筋細胞膜の破壊に由来する収縮依存性の線維傷害に起因している(Blaauwら、2008年、Hum Mol Genet 17巻:3686〜3696頁)。したがって、ActRIIB−Fcが、そのユートロフィンを誘導する能力によって、伸長性収縮によって媒介される線維損傷に対する抵抗性をもたらし得るかどうかを決定するために、追加的なmdxマウスおよび野生型対照を試験する。本実験では、mdx5cvマウス(または野生型対照)をトレッドミルで、規則的な間隔で運動させ、そして、ActRIIB(20〜134)−mFcまたはビヒクルで上記の通り処置した。投薬休止時に、主として速筋線維(EDLなど)を含有する筋肉を切除し、Kragら、(2004年、Proc Natl Acad Sci USA 101巻:13856〜13860頁)のものと同様のエクスビボプロトコールに従って試験する。。簡単に述べると、筋肉を秤量し、酸素添加したリンゲル液を含有する器官浴槽(organ bath)内でマイクロメーター(micrometer)および力変換器の両方に付ける。刺激器ユニットに接続したフィールド電極(field electrode)を用いて刺激を行う。伸長性収縮に伴う力の急降下を、標準のプロトコールの最初の強縮間に生成される等尺性の力と20番目の強縮の間に生成される等尺性の力との差異を用いて算出する。生理学的試験の終わりに、組織学的分析のために筋肉を冷却したイソペンタン中で急速冷凍する。出願人は、ActRIIB(20〜134)−mFcを用いた処置により、筋細胞膜の脆弱性の低下の指標として、伸長性収縮に伴う力の急降下が低下することを予測する。
【0157】
(実施例7)
mdxマウスにおける、運動に誘導される筋肉損傷に対するActRIIB−Fcの作用
出願人は、mdx5cvマウスモデルにおいて、ActRIIB(20〜134)−mFcの、運動に誘導される筋肉損傷を鈍らせるまたは逆転させる能力を調査した。5週齢のmdxマウスを4つの群(各群についてN=10)に分けた。第1群には、介入を与えず、4週間後に屠殺し、そして血清クレアチンキナーゼレベルについて評価した。第2群には、トレッドミル運動を与え、そして、4週間後に屠殺した。第3群には、8週間にわたってトレッドミル運動を与え、4週から8週にかけてビヒクル処置(TBS)を与えた。第4群には、8週間にわたってトレッドミル運動を与え、4週から8週にかけてActRIIB(20〜134)−mFc処置(10mg/kg、週2回)を与えた。
【0158】
図12に各群についての血清クレアチンキナーゼレベルが示されている。ActRIIB−Fc処置により、第4週の後に生じる運動に誘導される損傷が完全に妨げられ(血清クレアチンキナーゼレベルによって測定したところ)、さらに、第4週の前に損傷の逆転が起こっている(第2群と第4群を比較する)。したがって、ActRIIB−Fcは、デュシェンヌ型筋ジストロフィーのマウスモデルにおいて、筋線維への損傷を妨げ、逆転させ、これは本明細書中のユートロフィンレベルの増加に関する他の所見と一致している。
【0159】
参考としての援用
本明細書中で言及される全ての刊行物および特許は、各個々の刊行物または特許が、具体的かつ個別に参考として援用されると示されるかのように、その全体が本明細書に参考として援用される。
【0160】
本主題の特定の実施形態が考察されてきたが、上記明細書は、例示的であり、限定的なものではない。本明細書および以下の特許請求の範囲を精査すれば、多くの変更が当業者に明らかとなる。本発明の完全な範囲は、その等価物の完全な範囲と共に特許請求の範囲を、そして、このような変更と共に明細書を参照することによって決定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筋細胞膜のユートロフィンの増加を必要とする患者において、筋細胞膜のユートロフィンを増加させるための方法であって、該方法は、以下:
a.配列番号2のアミノ酸29〜109の配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
b.ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で配列番号3の核酸とハイブリダイズする核酸によってコードされるポリペプチド
からなる群より選択される化合物を有効量で投与するステップを含む、方法。
【請求項2】
前記ポリペプチドが、ActRIIBに対して異種である部分を含む融合タンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリペプチドが二量体である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリペプチドが、免疫グロブリンの定常ドメインに融合している、請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリペプチドが、免疫グロブリンのFc部分に融合している、請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記免疫グロブリンがヒトIgG1である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリペプチドが、配列番号5または23の配列を含む、請求項1から6までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記患者がデュシェンヌ型筋ジストロフィーを有する、請求項1から7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記患者がベッカー型筋ジストロフィーを有する、請求項1から7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリペプチドが、配列番号2のアミノ酸29〜109の配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリペプチドが、配列番号2のアミノ酸29〜109の配列と少なくとも97%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリペプチドが、配列番号2のアミノ酸29〜109の配列と少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリペプチドが、配列番号2のアミノ酸25〜131の配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリペプチドが、配列番号2のアミノ酸25〜131の配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリペプチドが、配列番号2のアミノ酸25〜131の配列と少なくとも97%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリペプチドが、配列番号2のアミノ酸25〜131の配列と少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記化合物を投与することにより、処置される前記患者において筋線維の筋細胞膜の強度が増大する、請求項1から16までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記ユートロフィンの発現が骨格筋または心筋で増加する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
筋細胞膜のユートロフィンの増加を必要とする患者において、筋細胞膜のユートロフィンを増加させるための方法であって、該方法は、以下:
a.ActRIIBのアンタゴニスト;
b.ミオスタチンのアンタゴニスト;
c.アクチビンAのアンタゴニスト;および
d.アクチビンBのアンタゴニスト
からなる群より選択される化合物を有効量で投与するステップを含む、方法。
【請求項20】
前記化合物がActRIIBのアンタゴニストである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ActRIIBのアンタゴニストが、ActRIIBに結合する抗体、およびActRIIBをコードする核酸とハイブリダイズし、ActRIIBの産生を阻害する核酸からなる群より選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記化合物がミオスタチンのアンタゴニストである、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記ミオスタチンのアンタゴニストが、ミオスタチンに結合する抗体、ミオスタチンをコードする核酸とハイブリダイズし、ミオスタチンの産生を阻害する核酸、およびミオスタチンのプロペプチドまたはその改変体を含むポリペプチドからなる群より選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記化合物がアクチビンAのアンタゴニストである、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記アクチビンAのアンタゴニストが、アクチビンAに結合する抗体、およびアクチビンAをコードする核酸とハイブリダイズし、アクチビンAの産生を阻害する核酸からなる群より選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記化合物がアクチビンBのアンタゴニストである、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
前記アクチビンBのアンタゴニストが、アクチビンBに結合する抗体、およびアクチビンBをコードする核酸とハイブリダイズし、アクチビンBの産生を阻害する核酸からなる群より選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記患者の筋肉変性についてのマーカーが上昇している、請求項1から27までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記患者の筋肉変性についてのマーカーのレベルが、同じ病態の患者についての標準値と比較して上昇している、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記患者の血清CK−MMレベルが上昇している、請求項28または29に記載の方法。
【請求項31】
前記患者の血清CK−MMレベルが、同じ病態の患者についての標準値と比較して上昇している、請求項28または29に記載の方法。
【請求項32】
筋肉変性についてのマーカーを評価するステップと、該筋肉変性についてのマーカーのレベルに基づいて用量レベルまたは頻度を選択するステップとをさらに含む、請求項1から31までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記筋肉変性についてのマーカーが血清CK−MMである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
筋肉変性についてのマーカーが上昇しているDMDまたはBMDの患者を処置するための方法であって、該方法は、該患者に、以下:
a.配列番号2のアミノ酸29〜109の配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
b.ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で配列番号3の核酸とハイブリダイズする核酸によってコードされるポリペプチド
からなる群より選択される化合物を有効量で投与するステップを含む、方法。
【請求項35】
前記筋肉変性についてのマーカーが血清CK−MMである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記ポリペプチドが、ActRIIBに対して異種である部分を含む融合タンパク質である、請求項34または35に記載の方法。
【請求項37】
前記ポリペプチドが二量体である、請求項34から36までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記ポリペプチドが、免疫グロブリンの定常ドメインに融合している、請求項34から37までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記ポリペプチドが、免疫グロブリンのFc部分に融合している、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記免疫グロブリンがヒトIgG1である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記ポリペプチドが、配列番号5または23の配列を含む、請求項34から40までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記ポリペプチドが、配列番号2のアミノ酸29〜109の配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項34から40までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記ポリペプチドが、配列番号2のアミノ酸29〜109の配列と少なくとも97%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項34から40までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記ポリペプチドが、配列番号2のアミノ酸29〜109の配列と少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項34から40までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記ポリペプチドが、配列番号2のアミノ酸25〜131の配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項34から40までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記ポリペプチドが、配列番号2のアミノ酸25〜131の配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項34から40までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記ポリペプチドが、配列番号2のアミノ酸25〜131の配列と少なくとも97%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項34から40までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記ポリペプチドが、配列番号2のアミノ酸25〜131の配列と少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項34から40までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記化合物を投与することにより、処置される前記患者において筋線維の筋細胞膜の強度が増大する、請求項34から48までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記ユートロフィンの発現が骨格筋または心筋で増加する、請求項34から49までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
筋肉変性についてのマーカーを評価するステップと、該筋肉変性についてのマーカーのレベルに基づいて用量レベルまたは頻度を選択するステップとをさらに含む、請求項34から50までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記筋肉変性についてのマーカーが血清CK−MMである、請求項51に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図12】
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【図6】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2013−511474(P2013−511474A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539083(P2012−539083)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/057074
【国際公開番号】WO2011/063018
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(509125475)アクセルロン ファーマ, インコーポレイテッド (21)
【Fターム(参考)】