説明

筋疾患および心臓血管障害を処置するための組成物および方法

【課題】mir−208−2が患者において過剰発現されている肥大型心筋症に対する医薬組成物の提供。
【解決手段】オリゴヌクレオチド治療剤(mir−208−2を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドおよび/または二本鎖オリゴヌクレオチド)をmir−208−2の調節異常によって惹起される筋疾患および心臓血管障害の処置に使用する医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、筋疾患および心臓血管障害に関与する新規なマイクロRNA、mir−208−2に関する。本発明はまた、オリゴヌクレオチド治療剤(アンチセンスオリゴヌクレオチドおよび/または二本鎖オリゴヌクレオチド)および、mir−208−2の調節異常によって惹起される筋疾患および心臓血管障害の処置におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
マイクロRNA(miRNA)は、その最終生成物が〜22ntの機能的RNA分子である非コーディングRNA遺伝子群である。これは内生的にコード化された不完全ヘアピン前駆体から1本鎖RNAとして処理される。これは標的mRNAの3’非翻訳領域(UTR)との塩基対形成によって翻訳を抑制する機能を有すると考えられている(Griffith-Jones et al., 2006, Nucleic Acids Research, Vol. 34, D140-D144)。
【0003】
マイクロRNA(miRNA)生合成は複雑な、多工程のプロセスである。一次miRNA転写はRNAポリメラーゼIIによって転写され、そして数百乃至数千ヌクレオチド長のサイズ範囲であり得る(pri−miRNA)。miRNAは2つのゲノム源に遡ることができる。いくつかのmiRNAはタンパク質コーディング遺伝子のイントロン領域に位置する。他のものは、非コーディングRNAのイントロンまたはエキソン中に位置する。興味深いことに、pri−miRNAは1個のmiRNAをコードすることができるが、多様なmiRNAのクラスターを含んでいてもよい。その後pri−miRNAは核リボヌクレアーゼIII(RNase III)エンドヌクレアーゼ、Droshaによって、〜70ntヘアピン(pre−miRNA)に処理される。pre−miRNAは核から細胞質に、Exporin5/RanGTPによって排出される。細胞質中で、二次RNase III、DicerはそのdsRBDタンパク質パートナーと共に前記ヘアピンの幹領域中のpre−miRNAを切断して、〜21ヌクレオチドのRNA二本鎖を遊離させる。当該miRNA二本鎖の一方の鎖が、標的遺伝子の発現を抑制するタンパク質複合体であるRNA誘導性サイレンシング複合体(RISC)に参入し、他方の鎖は分解される。鎖の選択はmiRNA二本鎖の局所熱力学的安定性に依存する。5’末端がより安定性の低い対を形成している鎖が、RISC複合体に負荷される。RISC複合体に負荷されたmiRNAは、標的mRNAの3’非翻訳領域(UTR)と塩基対を形成して翻訳を抑制する機能を有すると考えられている(Du, T. and Zamore, P.D. et al. micro-Primer: the biogenesis and function of microRNA. Development (2005) 132, 4645-4652)。現在462個のヒトmiRNA配列がmiRBase(http://microrna.sanger.ac.uk)に寄託されており、この一覧が800点に達するであろうことが示唆されている。これまで多数のmiRNAが同定されたことは、これらが生物学的プロセスの制御および微調整において複雑な役割を有し得ることを示唆している。実際、多様なmiRNAが細胞増殖制御(mir−125bおよびlet−7)、造血B細胞系統(lineage fate)(mir−181)、B細胞生存(mir−15aおよびmir−16−1)、脳パターニング(mir−430)、膵臓細胞インシュリン分泌(mir−357)、脂肪細胞発達(mir−375)、ならびに筋増殖および分化(miR−1およびmiR−133)に関与している。多くのmiRNAはがんに関与するゲノム領域に位置する。例えば、mir−16−1およびmir−15を含むクラスターはB細胞慢性リンパ性白血病の多くを消失させ、下方制御する(B-CLL; Calin, G.A., et al. MicroRNA-Cancer connection: The beginning of a new tale. Cancer Res.(2006) 66, 7390-7394)。
【0004】
制御異常マイクロRNAによって惹起され得る疾患および障害の有効な治療処置が満たされておらず、継続的に必要とされている。本発明は、この要求に応える化合物を提供し、さらに他の利点も提供する。本発明の化合物は、制御異常マイクロRNAを特異的に標的とし、これを処置することができる核酸である。ある群はアンチセンスDNAまたはRNAであり;他の群は二本鎖RNA(dsRNA)である。これらはまた、小分子干渉RNA(siRNA)として知られる群を含む。
【0005】
siRNAは、RNA干渉(RNAi)として知られる高度に保存的な制御機構において遺伝子発現を阻止することが知られている、治療剤の新規な群である。WO 99/32619(Fire et al.)はC. elegansにおける遺伝子の発現を阻害するための少なくとも25ヌクレオチドのdsRNAの使用を開示している。siRNAはまた、植物(例えばWO 99/53050, Waterhouse et al.;およびWO 99/61631, Heifetz et al.参照)、ショウジョウバエ(例えばYang, D., et al., Curr. Biol. (2000) 10:1191-1200参照)、および哺乳類(WO 00/44895, Limmer;およびDE 101 00 586.5, Kreutzer et al.参照)を含む他の生物において標的RNAを分解することが示されている。この天然のメカニズムは、遺伝子の異常または望ましくない制御によって惹起される障害を処置するための薬剤の新規クラスを開発するために注目を集めている。
【0006】
RNAiの分野の顕著な前進にも拘わらず、新規な分子病理学、例えば制御異常マイクロRNAによって惹起される疾患を処置することができる多種の薬剤が未だ必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
発明の要約
本発明者らは、上記必要を満足する新たなmiRNA、mir−208−2を同定した。したがって本発明は、500個未満のヌクレオチドの単離核酸分子であって、mir−208−2(配列番号7)を含むことを特徴とする単離核酸分子に関する。1つの態様において、例えばpri−miRNAを標的とするために、mir−208−2(配列番号7)を含む単離核酸分子は200ヌクレオチド長未満を有する。他の態様において、例えばpre−miRNAを標的とするために、mir−208−2(配列番号7)を含む単離核酸分子は80ヌクレオチド長未満を有する。
【0008】
本発明の具体的な態様は、配列番号1、配列番号2、配列番号3および配列番号4から成るか、または配列番号7から成る群から選択される単離核酸分子である。
【0009】
当業者は、本発明の範囲が上記のものと相補的な核酸配列から成る500個未満のヌクレオチドの単離核酸分子も含むことを容易に理解しよう。例えば、配列番号8から成る単離核酸。
【0010】
本発明の他の態様は、8〜50ヌクレオチド長を有する単離核酸分子であって、生理的条件下、例えば細胞(細胞質または核)内、またはかかる条件を模した条件下で、上記単離核酸分子とハイブリダイズして、mir−208−2(配列番号7)の機能、例えばmir−208−2のその標的との結合を阻害することができる単離核酸分子である。
かかる分子の具体的な例は、配列番号10〜配列番号77から成る群から選択される単離核酸分子である。
【0011】
上記単離核酸分子が、例えばa)3’キャップ、b)5’キャップ、c)修飾ヌクレオシド間(internucleoside)結合、またはd)修飾糖または塩基部分から選択される1種以上の化学的修飾を担持し得ることは、当業者に容易に理解されよう。
【0012】
上記核酸と少なくとも1種のベクター増殖(propagation)配列を含む核酸ベクターも本発明の態様である。本発明はまた、上記核酸と少なくとも1種のベクター増殖配列を含む核酸ベクターに関する。
【0013】
本発明の単離核酸分子または本発明の核酸ベクターを、例えば脂質またはポリマー利用医薬送達系において、医薬として使用することができる。
かかる本発明の医薬は筋疾患を有する対象の筋疾患を処置するために使用することができる。
当該筋疾患の具体的な態様は、心臓血管障害である。したがって、対象における心臓血管障害を処置するための、または筋疾患または心臓血管障害の処置用医薬の製造のための本発明の医薬。
【0014】
本発明はまた、心臓血管障害の診断または処置戦略の決定に使用するためのキットを含む。典型的には、当該キットはRNA、DNA、混合RNAまたはDNAにおける本発明の核酸分子と、所望によりいずれかの化学修飾を含む核酸試薬を含む。
【0015】
本発明の核酸分子は、例えば実験目的のようないずれかの他の目的にも使用することができる。したがって本発明は、mir−208−2の発現を上昇または低下させる方法であって、本発明の単離核酸分子を、例えば細胞中で用いる方法を含む。
同様に、本発明の核酸分子はまた、診断プローブとして、または実験プローブとして用いることができる。
【0016】
さらに本発明は、2種の他のmiRNA、miRNAs、mir−208およびmir−499がmir−208−2の発現と密接に関連していることを見出した。したがって本発明はまた、筋疾患または心臓血管障害の処置用、または筋疾患または心臓血管障害の診断用医薬の製造のための使用であって、mir−208(配列番号6)を含むことを特徴とする500個未満のヌクレオチドの単離核酸分子、および/またはmir−499(配列番号9)を含むことを特徴とする500個未満のヌクレオチドの単離核酸分子、および/またはmir−208(配列番号6)またはmir−499(配列番号9)の相補配列を含む500個未満のヌクレオチドの単離核酸分子の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ヒトmir−208を含むMYH6とmir−208−2を含むゼブラフィッシュ、ヒト、チンパンジー、イヌおよびラットのMYH7のイントロンのアラインメント。
【図2】異なる発生段階のマウス心臓から単離したRNAについての、MYH6、MYH7および18SのRT−PCR。
【図3】異なる発生段階のマウス心臓から単離したRNAについての、mir−208、mir−208−2、mir−499およびmir−206のノーザンブロット分析。U6 snRNAを負荷対照として用いた。11−14レーンは50pg合成miRNAに対応する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明:
本発明は、筋疾患または心臓血管障害に関与する新規なマイクロRNA、mir−208−2の発見に関する。また、オリゴヌクレオチド治療剤(アンチセンスDNA/RNAおよび/または二本鎖RNA)、およびmir−208−2の調節異常によって惹起される筋疾患または心臓血管障害の処置におけるその使用に関する。
【0019】
mir−208−2はMYH7遺伝子のイントロン30に位置する遺伝子である。MYH7(GenBank受託番号000257:第14染色体上)。MYH7は、球形ヘッド(アクチンおよびATP結合部位を含む)とそれに続くロッド状テイル配列から成るモーター収縮タンパク質であり、太いミオシンフィラメントの構造ブロックの1つである。各ミオシンフィラメントは、2個の重鎖と4個の軽鎖を含む。心筋収縮速度はミオシン分子のヘッド領域におけるATPアーゼ活性の程度によって調節される。ミオシンATPアーゼ活性、したがって筋収縮速度の主要な決定要因は、2つのミオシン重鎖アイソマー、MYH6とMYH7の相対量に依存する。高いATPアーゼ活性を示すMYH6アイソフォームは、MYH7の約4倍の酵素活性を有する。MYH6とMYH7の両方がヒト心臓において異なる量で発現される。不全なヒト心臓において、MYH6 mRNAおよびタンパク質レベルは下方制御させるが、MYH7は上方制御される。
【0020】
mir−208−2の転写は、独立したプロモーターを有さないため、MYH7転写と密接に関係している。したがってMYH7の転写が行われるときにのみ、これが転写される。pre−mRNAが処理されて、イントロンが除去されるときmir−208−2マイクロRNAがMYH7転写産物から放出されると考えられている。イントロン30の残留イントロン配列はさらに処理されて全長mir−208−2を生産する。
【0021】
mir−208−2は脊椎動物間で高度に保存されている。図1は複数種間のmir−208−2のアラインメントを示す。mir−208の類似性およびMYH6のイントロン28に存在する別のマイクロRNAも示す。
【0022】
本発明者らによって同定されたmir−208−2遺伝子は下記配列を有する(隣接領域を含む:実際のmir−208−2配列は太字下線を付したものである):
【表1】

【0023】
配列比較のために、既知のMYH6のイントロン28由来のmir−208も提供する。
【表2】

【0024】
図1は多様な種間でのmir−208−2の顕著な保存性を示す。このアラインメントから、下記:
【表3】

機能性ガイド配列およびアンチガイド配列であると結論されるこのマイクロRNAの最も高度に保存されている部分を同定することが可能である。
【0025】
MYH6およびMYH7とは異なり、MYH7B(GenBank受託番号020884:第20染色体上)は十分に特徴付けられていない。MYH7との高度なホモロジーに基づいて、MYH7Bを遅いMYHアイソフォームと分類する。今日まで、MYH7Bの明確な機能は文献には記載されていない。さらに、MYH7B機能不全に寄与する疾患リンクは存在しない。興味深いことに、MYH6およびMYH7のように、MYH7Bはまた、イントロンの1つにmiRNA、すなわちmir−499を含む。
【表4】

【0026】
バイオインフォマティクス分析および下記実施例は、新規なmicroRNA、mir−208−2が心臓肥大に関与するシグナル伝達経路の調節に関与していることを示している。したがって、このマイクロRNAは、これに関連し得る障害および疾患の処置の標的として極めて有用である。
【0027】
本発明者らは本明細書において、治療上有用性を有する多様な方法および組成物を開示する。一般的な概観として、標的マイクロRNAのレベルを低下させることによって、いくつかの場合において治療上の利益が得られると考えられている。かかる低下は標的miRNA、例えばmir−208−2と直接結合するアンチセンス核酸分子、例えばアンチセンスDNAの使用によって容易に得ることができる。他の場合において、標的マイクロRNA、例えばmir−208−2のレベルの上昇によって利益が得られる。かかる上昇はセンス核酸分子およびいくつかのdsRNA分子、例えばmiRNAの標的と結合して当該miRNAと相乗的に作用するいくつかのmiRNAの使用によって容易に得ることができる。したがって本発明は両方のタイプの治療剤に関する。
【0028】
下記定義を本明細書および特許請求の範囲を通じて使用する。
【0029】
「単離核酸分子」は、当該物質がその起源環境(例えば、天然由来であるならばその天然環境)から取出されていることを意味する。例えば、生きている動物に存在する天然に生じるポリペプチドは単離されていないが、天然系に共に存在する物質のいくつかまたは全てから分離された同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、たとえその後天然系に再導入されたとしても、単離されている。かかるポリヌクレオチドはベクターの一部であってもよく、そして/またはかかるポリヌクレオチドは組成物の一部であってもよく、そして当該ベクターまたは組成物がその天然環境の一部ではないため、単離されている。
【0030】
「核酸ベクター」は、細胞溶解物または全細胞のような細胞環境に曝されると増殖および/または転写するように設計された核酸配列である。「遺伝子治療ベクター」は、1種以上の遺伝子および/またはタンパク質の発現を上昇させる意図で全細胞にトランスフェクションするための機能的な局面も担持する核酸ベクターを意味する。各場合において、かかるベクターは通常、一般に細胞内でのベクターの増殖を許容する、細胞によって認識される複製起点である「ベクター増殖配列」を含む。広い範囲の核酸ベクターおよび遺伝子治療ベクターが当業者に周知されている。
【0031】
本明細書において使用するとき、「治療上有効量」および「予防上有効量」なる句は、mir−208−2の調節異常によって介在される病的状態の処置、予防または管理に治療的利益を提供する量を意味する。治療上有効である具体的な量は、通常の医療従事者によって容易に決定され、そして例えば病的状態のタイプ、患者の薬歴および年齢、病的状態のステージおよび他の薬剤の組合せ投与のような当該技術分野において既知の要因に依存して変化し得る。
【0032】
本明細書において使用するとき、「医薬組成物」は薬理学的有効量の本発明の治療剤と薬学的に許容される担体を含む。本明細書において使用するとき、「薬理学的有効量」、「治療上有効量」または単なる「有効量」は、意図した薬理学的、治療的または予防的結果を得るために有効な薬剤の量を意味する。例えば、疾患または障害に関連する測定可能なパラメーターの少なくとも25%減少が存在するとき所定の臨床的処置が有効であると考えるならば、疾患または障害の処置のための薬剤の治療上有効量は当該パラメーターの少なくとも25%減少に必要な量である。
【0033】
「薬学的に許容される担体」なる用語は、治療剤の投与のための担体を意味する。かかる担体は、食塩水、緩衝化食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、およびそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。当該用語は明確に細胞培養培地を除外する。薬剤を経口的に投与するための薬学的に許容される担体は、不活性希釈剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、甘味剤、風味剤、着色剤および保存剤のような薬学的に許容される賦形剤を含むが、これらに限定されない。好適な不活性希釈剤は、炭酸ナトリウムおよび炭酸カルシウム、リン酸ナトリウムおよびリン酸カルシウム、およびラクトースを含み、コーンスターチおよびアルギン酸が好適な崩壊剤である。結合剤はデンプンおよびゼラチンを含み得て、存在するとき滑沢剤は一般にステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクである。所望により錠剤をモノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルのような物質でコーティングして、胃腸管での吸収を遅延させることができる。
【0034】
本明細書において使用するとき、「筋疾患」なる表現は、心臓病を含むが、これに限定されない。この表現は一次的病状が横紋筋重量の減少および/またはその機能の低下であり得るあらゆるタイプの変性筋疾患に関する。これは筋ジストロフィー、外傷および重症筋無力症を含むが、これらに限定されない。
【0035】
本明細書において使用するとき、「形質転換細胞」は、dsRNA分子を発現し得るベクターを導入した細胞である。一時的または安定的にトランスフェクトされた本発明の薬剤のような外から供給される核酸を含む細胞も形質転換細胞と考えられる。
【0036】
一次miRNA転写産物は、RNAポリメラーゼIIによって転写され、そして数百乃至数千ヌクレオチド長のサイズ範囲であり得る(pri−miRNA)。pri−miRNAは1個のmiRNAをコードすることができるが、多様なmiRNAのクラスターを含んでいてもよい。その後pri−miRNAは核リボヌクレアーゼIII(RNase III)エンドヌクレアーゼ、Droshaによって、〜70ntヘアピン(pre−miRNA)に処理される。したがって本発明の単離核酸分子は、意図する標的に基づいて多様な好ましい長さを有する。pri−miRNAを標的とするとき、約500ヌクレオチド、例えば499、450、400、350、300、250ヌクレオチドの好ましい長さを用いることができる。pre−miRNAを標的とするとき、好ましい長さは100〜200ヌクレオチド長、例えば100、120、150、180または200ヌクレオチド長で変化する。細胞質中で、二次RNase III、DicerはそのdsRBDタンパク質パートナーと共に前記ヘアピンの幹領域中のpre−miRNAを切断して、〜21ヌクレオチドのRNA二本鎖を遊離させる。したがって例えば80、70、60、50、40、30、25、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9または8ヌクレオチド長の単離ポリヌクレオチドがまた、本発明の1つの態様と考えられる。
【0037】
本発明者らは、mir−208−2の阻害剤をゼブラフィッシュ(Dario rerio)の受精卵に注射すると心臓機能(血液循環、心拍等)の劇的な減少が導かれることを発見した。「mir−208−2(配列番号7)の機能」はしたがって、このアッセイまたは同様のアッセイで評価することができる。「mir−208−2(配列番号7)の機能」をアッセイするための他の可能性は、mir−208−2とその標的の相互作用、例えばそれとの結合である。
【0038】
本発明の実施において、分子生物学、微生物学および組換えDNAにおける多くの常套の技術を用いる。これらの技術は周知であり、例えば、Current Protocols in Molecular Biology, Volumes I, II, and III, 1997 (F. M. Ausubel ed.); Sambrook et al., 1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.; DNA Cloning: A Practical Approach, Volumes I and II, 1985 (D. N. Glover ed.); Oligonucleotide Synthesis, 1984 (M. L. Gait ed.); Nucleic Acid Hybridization, 1985, (Hames and Higgins); Transcription and Translation, 1984 (Hames and Higgins eds.); Animal Cell Culture, 1986 (R. I. Freshney ed.); Immobilized Cells and Enzymes, 1986 (IRL Press); Perbal, 1984, A Practical Guide to Molecular Cloning; the series, Methods in Enzymology (Academic Press, Inc.); Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells, 1987 (J. H. Miller and M. P. Calos eds., Cold Spring Harbor Laboratory);およびMethods in Enzymology Vol. 154 and Vol. 155 (Wu and Grossman, and Wu, eds., respectively)に記載されている。
【0039】
治療剤
本発明のある治療剤は、本明細書において、細胞中のmir−208−2活性の上昇または低下に使用するmir−208−2のアンチガイド配列およびガイド配列を含むsiRNAとして記載される。本発明の他の治療剤は、細胞中のmir−208−2活性の低下に有用なアンチセンスDNAまたはRNA組成物である。
【0040】
dsRNA医薬
本発明のsiRNA分子はRNA干渉(“RNAi”)を仲介する。「RNAi」なる用語は、当該技術分野において周知であり、標的遺伝子に相補的な領域を有するsiRNAによる細胞の1種以上の標的遺伝子の阻害を意味すると一般に理解される。dsRNAのRNAiを介在する能力について試験する多様なアッセイが当該技術分野において知られている(例えばElbashir et al., Methods 26 (2002), 199-213参照)。本発明のdsRNAの遺伝子発現に対する効果は、典型的には、本発明のRNA分子で処理していない細胞と比較したとき、標的遺伝子の少なくとも10%、33%、50%、90%、95%または99%の阻害をもたらす。本発明の「siRNA」または「小分子干渉リボ核酸」は、下記局面を含む当該技術分野において既知の意味を有する。siRNAは生理的条件下で相補領域とハイブリダイズするリボヌクレオチドの二本の鎖から成る。当該鎖は通常分離している。当該二本の鎖が細胞中で別個の役割を有するため、一方の鎖が「アンチセンス」鎖と呼ばれ、「ガイド」配列とも知られており、これは機能性RISC複合体において切断のために正しいmRNAにそれをガイドするために使用される。RNA化合物と関連するため、この「アンチセンス」の使用は本明細書における他の箇所で記載されているアンチセンスDNA化合物とは異なる。他方の鎖は「アンチガイド」配列として知られており、これは標的配列と同じヌクレオチド配列を含むため、センス鎖として知られている。当該鎖はある態様において、分子リンカーによって結合され得る。個々のリボヌクレオチドは未修飾の、天然に生じるリボヌクレオチド、未修飾の、天然に生じるデオキシリボヌクレオチドであり得るか、またはこれらは、本明細書の他の箇所に記載されるように化学的に修飾されているかもしくは合成的であってよい。
【0041】
本明細書において使用するとき、dsRNAは2個の基本的な群を含む。上記siRNAが存在する。しかしまた、二本の鎖が1つのより大きな分子の一部であるとき、したがって一方の鎖の3’末端と各二本鎖構造を形成する他方の鎖の5’末端間でヌクレオチド中断されていない鎖によって結合されているとき、当該結合RNA鎖は「ヘアピンループ」、「短ヘアピンRNA」または「shRNA」と称する。shRNAは通常、核酸ベクターから転写され、目的の標的細胞中で発現する。
【0042】
本発明の核酸分子は配列番号7または配列番号8を含むいずれかのdsRNAであってよく、そしてmir−208−2のような同じ細胞性mRNAおよび/または請求項に定義するようにmir−208−2それ自体を標的とする。
【表5】

【0043】
本発明の核酸分子は、標的遺伝子のmRNAのある領域と実質的に同一の領域を含む。標的遺伝子の対応する配列と100%同一の領域が好ましい。この状態を、「完全に相補的」と称する。しかし、miRNAの性質およびその作用機構の観点から、当該領域はまた、標的とされるmRNAの領域の長さに依存して、標的遺伝子の対応する領域と比較して1、2または3個のミスマッチ、またはそれ以上を含んでいてもよく、そしてそれ自体が完全に相補的でなくともよい。しかし最も重要な特徴は、当該分子が生理的条件下、例えば細胞中でmir−208−2と特異的に結合できることである。ある態様において、本発明のRNA分子は1個の所定の遺伝子を特異的に標的とする。所望のmRNAのみを標的とするために、siRNA剤は標的mRNAと100%ホモロジーを有しており、そして細胞または生物に存在する全ての他の遺伝子と少なくとも2個のミスマッチヌクレオチドを有する。特定の標的配列の発現を効果的に阻害するための十分な配列同一性を有するsiRNAを分析または同定する方法は、当該技術分野において知られており、例えばWO2005/059132に記載の方法がある。配列同一性は配列比較および当該技術分野において既知のアラインメントアルゴリズムによって最適化することができ(Gribskov and Devereux, Sequence Analysis Primer, Stockton Press, 1991およびその引用文献参照)、そしてヌクレオチド配列間の相違率を、例えばBESTFITソフトウェアプログラムにおいて実行されるようにSmith-Watermanアルゴリズムによって、標準的なパラメーターを用いて計算することができる(例えば、University of Wisconsin Genetic Computing Group)。
【0044】
本発明の標的に相補的なsiRNAの領域長は10〜100ヌクレオチド、12〜25ヌクレオチド、14〜22ヌクレオチドまたは15、16、17もしくは18ヌクレオチドであり得る。対応する標的領域に対するミスマッチが存在するとき、相補領域の長さは一般に、ある程度長い必要がある。
【0045】
siRNAがオーバーハング末端(これは標的に相補的であってもなくてもよい)またはそれ自体に相補的であるが標的遺伝子にはそうではないさらなるヌクレオチドを担持し得るため、siRNAの各個別の鎖の総長さは10〜100ヌクレオチド、15〜49ヌクレオチド、17〜30ヌクレオチドまたは19〜25ヌクレオチドであり得る。
【0046】
「各鎖が49ヌクレオチド未満である」なる句は、全ての修飾および未修飾ヌクレオチドを含むが、鎖の3’または5’末端に加え得るいずれかの化学部分を含まない鎖の連続的ヌクレオチドの総数を意味する。鎖に挿入される短い化学部分は数えないが、2本の別個の鎖を結合するようにデザインされた化学リンカーは連続的ヌクレオチドを作るものと考慮しない。
【0047】
「5’末端または3’末端の少なくとも一方の1〜6ヌクレオチドオーバーハング」なる句は、生理的条件下で二本の別個の鎖から形成する相補的siRNAの構造を意味する。末端ヌクレオチドがsiRNAの二本鎖領域の一部であるとき、当該siRNAは平滑末端を有すると考えられる。末端で1個以上のヌクレオチドが対を形成していないとき、オーバーハングが生じる。オーバーハング長はオーバーハングヌクレオチドの数によって測定される。オーバーハングヌクレオチドはいずれかの鎖の5’末端または3’末端に存在し得る。
【0048】
本発明のsiRNAは少なくとも一本の鎖に少なくとも1個の修飾ヌクレオチドを含ませることによって、高いインビボ安定性を示し、経口送達にとりわけ好適であり得る。したがって本発明のsiRNAは、少なくとも1個の修飾または非天然リボヌクレオチドを含む。多くの既知の化学修飾についての長大な説明は、PCT公開特許出願WO 200370918に記載されており、ここでは反復しない。好適な送達のための修飾は:
a)3’キャップ;
b)5’キャップ;
c)修飾ヌクレオシド間(internucleoside)結合;または
d)修飾糖または塩基部分
から選択される化学修飾を含む。
【0049】
好適な修飾は、糖部分(すなわち糖部分の2’位、例えば2’−O−(2−メトキシエチル)または2’−MOE)(Martin et al., Helv. Chim. Acta, 1995, 78, 486-504)すなわちアルコキシアルコキシ基)または塩基部分(すなわち別のヌクレオチド鎖の他の特定の塩基と対を形成する能力を維持している非天然または修飾塩基)を含むが、これらに限定されない。他の修飾は、リン酸エステル基の置換(隣接リボヌクレオチドと、例えばホスホロチオエート、キラルホスホロチオエートまたはホスホロジチオエートとの結合)を含む、いわゆる「骨格」修飾を含むがこれに限定されない。
【0050】
本明細書において3’キャップまたは5’キャップとも称される末端修飾は重要であり得る。キャップはsiRNAに安定性を賦与することが知られている「T−T」のようなさらなるヌクレオチドを単に加えることから成り得る。キャップは当業者に既知のより複雑な化学から成ってもよい。
【0051】
1つの態様において、3’キャップは3’炭素を介して3’末端と結合する化学基であり、式I
【化1】

〔XはOまたはSであり、
R1およびR2は独立してOH、NH2、SH、アルキル、アリール、アルキル−アリール、アリール−アルキルであり、ここでアルキル、アリール、アルキル−アリール、アリール−アルキルはさらなるヘテロ原子および官能基、好ましくはN、OもしくはSから選択されるヘテロ原子またはOH、NH2、SH、カルボン酸もしくはエステル基から選択される官能基で置換されていてもよい;
またはR1およびR2は式Y−Zであってよく、ここでYはO、N、Sであり、ZはH、アルキル、アリール、アルキル−アリール、アリール−アルキルであり、ここでアルキル、アリール、アルキル−アリール、アリール−アルキルはさらなるヘテロ原子、好ましくはN、OまたはSの群から選択されるヘテロ原子で置換されていてもよい〕
の化合物から選択される。
【0052】
糖部分についての修飾の例は、2’アルコキシリボヌクレオチド、2’アルコキシアルコキシリボヌクレオチド、ロックド核酸リボヌクレオチド(LNA)、2’−フルオロリボヌクレオチド、モルホリノヌクレオチドを含む。
【0053】
ヌクレオシド間(internucleoside)結合も修飾され得る。ヌクレオシド間結合の例は、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロアミデートおよびアミド結合を含む。
【0054】
R1はOHであり得る。
【0055】
R1とR2は、合計して、1〜24個のC原子、1〜12個のC原子、2〜10個のC原子、1〜8個または2〜6個のC原子を含んでいてもよい。他の態様において、R1およびR2は独立して、OH、低級アルキル、低級アリール、低級アルキル−アリール、低級アリール−アルキルであり、ここで低級アルキル、低級アリール、低級アルキル−アリール、低級アリール−アルキルは上記定義のさらなるヘテロ原子および官能基で置換されていてもよい。他の態様において、R1およびR2の両方がOHではない。
【0056】
「低級」なる用語は、有機基または化合物との関係において、7個以下の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を含む分枝鎖または非分枝鎖であり得る化合物または基を意味する。低級アルキルは例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチルおよび分枝鎖ペンチル、n−ヘキシルおよび分枝鎖ヘキシルを意味する。
【0057】
アルコキシの例は、O−Met、O−Eth、O−prop、O−but、O−pent、O−hexを含む。
【0058】
少なくとも1個の修飾または非天然リボヌクレオチドを含むsiRNAの合成方法は当業者に周知であり、容易に利用可能である。例えば、多様な合成化学がPCT公開特許公報WO2005021749およびWO200370918(いずれも出典明示により本明細書の一部とする)に記載されている。反応は、溶液中または好ましくは固相上で、またはポリマー支持反応剤を用いて、その後合成RNA鎖を、RNAiを介在させることができるsiRNAが形成される条件下で混合して、実施することができる。
【0059】
本発明はまた、経口送達に好適な少なくとも1個の修飾ヌクレオチドを含むsiRNAを包含する。機能的な意味で、これはsiRNAが経口投与によって意図する標的組織への送達を達成するための好適な薬物動態および生体内分布を有することを意味する。とりわけ、これは血清安定性、免疫応答がないこと、そして薬剤様動態を必要とする。siRNAのこれらの特徴の多くは、本明細書の別の箇所に記載されている標準的な胃酸アッセイおよび標準的な血清アッセイに基づいて明らかとなり得る。
【0060】
具体的な治療剤の設計を多様な形態で行うことができるが、ある機能的特徴は好ましいdsRNAと他のdsRNAを区別する。とりわけ、良好な血清安定性、高い能力、誘導性免疫応答がないこと、および良好な薬剤様動態のような特徴(全て当業者に測定可能である)は、好ましい本発明のdsRNAを同定するために試験される。いくつかの状況において、これらの機能的局面の全てが好ましいdsRNAに存在しない。しかし、当業者はこれらの可変部および好ましい本発明の化合物を選択するための他のものを最適化することができる。
【0061】
mir−208−2制御不全を含む哺乳類に本発明のdsRNAを投与するために、何れかの方法を使用することができる。例えば、投与は局所的(例えば経膣、経皮等);経口的;または非経腸的(例えば皮下、心室内、筋疾患内、または腹腔内注射、または静脈点滴)であり得る。投与は迅速(例えば注射による)であってよく、または長時間にわたって(例えばゆっくりとした輸液、または遅延放出型製剤による)行ってもよい。
【0062】
例えば、リポソームと共に、またはそれなしで製剤化したdsRNAを目的の組織に直接、局所的に適用することができる。局所投与のために、dsRNA分子は滅菌および非滅菌水溶液、一般的な溶媒、例えばアルコールの非水性溶液、または液体または固体油ベースの溶液のような製剤に製剤化することができる。かかる溶液はまた、バッファー、希釈剤および他の好適な添加剤を含んでいてもよい。局所投与用組成物は経皮パッチ、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、ドロップ、座薬、スプレー、液体および粉末の形態で製剤化することができる。ゲルおよびクリームは当該技術分野で既知のポリマーおよび透過剤を用いて製剤化することができる。
【0063】
非経腸的、髄腔内または心室内投与のために、dsRNA分子を滅菌水溶液のような組成物に製剤化することができ、これはまた、バッファー、希釈剤および他の好適な添加剤(例えば透過促進剤、担体化合物および他の薬学的に許容される担体)を含んでいてもよい。
【0064】
さらに、dsRNA分子は、例えば米国特許第6,271,359号に記載されている生物学的または非生物学的方法のような非ウイルス的方法を用いて哺乳類に投与することができる。非生物学的送達は、(1)リポソームに本明細書で提供されるdsRNA酸分子を負荷すること;(2)dsRNA分子と脂質またはリポソームを混合して核酸脂質または核酸リポソーム複合体を形成させること;または(3)ポリマー利用治療送達系を得ることを含むが、これらに限定されない多様な方法によって行うことができる。これらの技術は一般に当該技術分野において周知である。簡潔な説明は下記のとおりである。
【0065】
リポソームは、インビトロで細胞をトランスフェクトするために一般に使用されるカチオン性および中性脂質から成り得る。カチオン性脂質は負に荷電した核酸と複合化して(例えば電荷を介して)、リポソームを形成することができる。カチオン性リポソームの例は、リポフェクチン、リポフェクタミン、リポフェクテースおよびDOTAPを含むが、これらに限定されない。リポソームを形成する方法は当該技術分野において周知である。リポソーム組成物は例えば、ホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルグリセロールまたはジオレオイルホスファチジルエタノールアミンから形成される。多様な親油性反応剤が商業的に入手可能であり、Lipofectin.RTM.(Invitrogen/Life Technologies, Carlsbad, Calif.)およびEffectene.TM.(Qiagen, Valencia, Calif.)を含む。さらに、全身的送達方法を、各々DOPEまたはコレステロールのような中性脂肪と混合することができるDDABまたはDOTAPのような商業的に入手可能なカチオン性脂質を用いて最適化することができる。いくつかの場合において、Templeton et al.(Nature Biotechnology, 15: 647-652 (1997))に記載のもののようなリポソームを用いることができる。他の態様において、ポリエチレンイミンのようなポリカチオンを用いてインビボおよび位クスビボで送達することができる(Boletta et al., J. Am Soc. Nephrol. 7: 1728 (1996))。核酸を送達するためのリポソームの使用に関するさらなる情報は、米国特許第6,271,359号、PCT公報WO 96/40964およびMorrissey, D. et al. 2005. Nat Biotechnol. 23(8):1002-7に見ることができる。
【0066】
生物学的送達は、ウイルス性ベクターの使用を含むが、これに限定されない多様な方法で行うことができる。例えば、ウイルス性ベクター(例えば、アデノウイルスおよびヘルペスウイルスベクター)を用いてshRNA分子を皮膚細胞および子宮頸部細胞に送達することができる。標準的な分子生物学技術を用いて、本明細書で提供されるshRNAの1種以上を、核酸を細胞に送達するために開発されたウイルスベクターの1個に導入することができる。これらの得られたウイルスベクターを用いて、1種以上のdsRNAを例えば感染によって細胞に、送達することができる。
【0067】
本発明のdsRNAを薬学的に許容される担体または希釈剤中に製剤することができる。「薬学的に許容される担体」(本明細書において「賦形剤」とも称する)は、薬学的に許容される溶媒、懸濁剤、またはいずれかの他の薬理学的に不活性なビークルである。薬学的に許容される担体は液体または固体であってよく、意図されている投与法を考慮して、嵩高さ、均質性、その他適切な搬送性および化学的性質を達成するように選択され得る。典型的な薬学的に許容される担体は、例えば、水;食塩水;結合剤(例えば、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース);増量剤(例えば、ラクトースおよび他の糖、ゼラチンまたは硫酸カルシウム);滑沢剤(例えば、デンプン、ポリエチレングリコールまたは酢酸ナトリウム);崩壊剤(例えば、デンプンまたはデンプングリコレートナトリウム);および湿潤剤(例えば、ラウリルスルフェートナトリウム)を含むが、これらに限定されない。
【0068】
さらに、本発明のdsRNAを、混合し、カプセル充填し、または他の分子、分子構造物または核酸の混合物と複合化しまたはその他の方法で結合させて含む組成物に製剤化することができる。例えば、1種以上の本発明のdsRNA剤を含む組成物は、同様の障害の処置に使用される他の治療剤と組み合わせることができる。
【0069】
かかる化合物の毒性および治療効果を、例えばLD50(集団の50%が致死となる用量)およびED50(集団の50%が治療上有効である用量)を測定するための、細胞培養または実験動物の標準的な医薬的方法によって測定することができる。毒性と治療効果間の用量比は治療指数であり、これはLD50/ED50比として表すことができる。高い治療指数を示す化合物が好ましい。
【0070】
細胞培養アッセイおよび動物試験から得たデータを、ヒトに使用する投与量の製剤に使用する。本発明の組成物の投与量は、一般に、毒性がほとんどまたは全くないED50を含む循環濃度の範囲にある。投与量は使用する投与形態および利用する投与経路に依存して、この範囲内で変化し得る。本発明の方法に使用する化合物について、治療上有効用量はまず細胞培養アッセイから確立され得る。用量は動物モデルにおいて、化合物または適当であるとき標的配列のポリペプチド生成物の、細胞培養で測定したIC50(すなわち、症状の最大阻害の半分が得られる試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を得られるように(例えば、ポリペプチドの濃度低下が得られるように)製剤することができる。かかる情報を用いてより正確にヒトに有用な用量を決定することができる。血漿レベルを例えば、高速液体クロマトグラフィーで測定することができる。いずれにせよ、投与する医師は当該技術分野において既知の、または本明細書に記載の標準的な効果測定方法を用いて観察された結果に基づいて、dsRNA投与の量および時期を調節することができる。
【0071】
アンチセンスDNA治療剤
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド(本明細書において「アンチセンス」と称することもある)は、mir−208−2を標的とし、その転写レベルを低下させるように設計される。当該アンチセンスそれ自体がこのmir−208−2の何れかの部分を標的としてその細胞内レベルをノックダウンさせてもよい。
【0072】
アンチセンス化合物は一般に、調査薬および診断薬として使用されており、長年治療的開発の対象であった。アンチセンスオリゴヌクレオチドは優れた特異性で遺伝子発現を阻害することができ、特定の遺伝子の機能を解明するために当業者によってしばしば使用されている。アンチセンス化合物はまた、例えば多様な生物学的経路のメンバーの機能を消失させるために使用される。
【0073】
アンチセンスの特異性および感受性はまた、治療的使用のために当業者によって利用されている。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、動物およびヒトの疾患状態の処置における治療手段として使用されている。アンチセンスオリゴヌクレオチドはヒトへの投与に安全かつ有効であり、そして多くの臨床試験が現在も行われている。したがって、オリゴヌクレオチドが細胞、組織および動物、とりわけヒトの処置のための処置レジメンを有用とさせ得る有用な治療方法であり得ることが確立されている。本発明の文脈において、「アンチセンス」なる用語は、デオキシリボ核酸(DNA)のオリゴマーまたはポリマー、またはその模倣物を意味する。当該用語は、天然に生じる核酸塩基、糖および共有ヌクレオシド間(骨格)結合、ならびに同様の機能を有する天然に生じない部分を有するオリゴヌクレオチドから成るオリゴヌクレオチドを含む。かかる修飾または置換アンチセンスは、例えば細胞取り込みの促進、核酸標的親和性の向上およびヌクレアーゼの存在下での安定性の向上のような所望の特性のため、天然形態よりもしばしば好ましい。
【0074】
アンチセンスオリゴヌクレオチドはアンチセンス化合物の好ましい形態であるが、本発明は、下記のもののようなオリゴヌクレオチド模倣物を含むがこれに限定されない他のオリゴマーアンチセンス化合物を含む。本発明のアンチセンス化合物は、好ましくは約8〜30個の核酸塩基を含む。特に好ましいものは、約8〜30個の核酸塩基(すなわち約8〜30個の結合ヌクレオシド)を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドである。当該技術分野において知られているように、ヌクレオシドは塩基と糖の組合せである。ヌクレオシドの塩基部分は通常、ヘテロ環式塩基である。かかるヘテロ環式塩基の最も一般的な2つの群は、プリン群とピリミジン群である。ヌクレオチドは、ヌクレオシドの糖部分と共有結合しているリン酸基をさらに含むヌクレオシドである。ペントフラノシル糖を含むヌクレオシドにおいて、リン酸基は糖の2’、3’または5’ヒドロキシル基と結合することができる。オリゴヌクレオチドの形成において、リン酸基は隣接ヌクレオシド基と互いに共有結合して直線ポリマー状化合物を形成する。この直線ポリマー状構造の各末端は順に、さらに結合して環構造を形成し得るが、開環直鎖構造が一般に好ましい。オリゴヌクレオチド構造において、リン酸基は一般に、オリゴヌクレオチドのヌクレオシド間骨格を形成すると言われる。通常の結合またはDNAの骨格は、3’から5’へのホスホジエステル結合である。
【0075】
本発明において有用な好ましいアンチセンス化合物の具体例は、修飾骨格または非天然ヌクレオシド間(internucleoside)結合を含むオリゴヌクレオチドを含む。本明細書に定義のとおり、修飾骨格を有するオリゴヌクレオチドは、骨格にリン原子を保つもの、および骨格にリン原子を保持しないものを含む。本明細書の目的のため、そして当該技術分野において呼ばれることもあるように、ヌクレオシド間骨格にリン原子を保有しない修飾オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオシドであるとも考えられる。
【0076】
好ましい修飾オリゴヌクレオチド骨格は、例えばホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、メチルおよび他のアルキルホスホン酸エステル、例えば3’−アルキレンホスホネートおよびキラルホスホネート、ホスホネート、ホスフィネート、3’−アミノホスホロアミデートおよびアミノアルキルホスホロアミデートを含むホスホロアミデート、チオノホスホロアミデート、チオノアルキルホスホトリエステル、および通常の3’−5’結合を有するボラノホスフェート、これらの2’−5’結合アナログ、ヌクレオシド単位の隣接対が逆極性を有する、3’−5’から5’−3’または2’−5’から5’−2’に結合しているものを含む。多様な塩、塩混合物および遊離酸形態も含む。上記修飾骨格または非天然ヌクレオシド間結合を有するオリゴヌクレオチドを含むアンチセンス化合物の合成技術は、常套の方法論を用いて行うことができ、当業者に親しまれている。上記リン含有結合の製造を教示する代表的な米国特許は、米国特許第3,687,808号;第4,469,863号および第5,625050号を含むが、これらに限定されない(各々その全体を出典明示により本明細書の一部とする)。
【0077】
リン原子を含まない好ましい修飾オリゴヌクレオチド骨格は、短鎖アルキルまたはシクロアルキルヌクレオシド間結合、ヘテロ原子とアルキルまたはシクロアルキルヌクレオシド間結合の混合物、または1個以上の短鎖ヘテロ原子もしくはヘテロ環式ヌクレオシド間結合によって形成される骨格を有する。これらは、モルホリノ結合(ヌクレオシドの糖部分から部分的に形成される);シロキサン骨格;スルフィド、スルホキシドおよびスルホン骨格;フォームアセチル(formacetyl)およびチオフォームアセチル骨格;メチレンフォームアセチルおよびチオフォームアセチル骨格;アルケン含有骨格;スルファメート骨格;メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノ骨格;スルホネートおよびスルホンアミド骨格;アミド骨格;および混合N、O、SおよびCH2成分部分を含む他のものを有するものを含む。かかるオリゴヌクレオチドの合成は、当業者に、常套の方法、例えば米国特許第5,034,506号;第5,166,315号または第5,677,439号に記載の方法によって行うことができる(各々その全体を出典明示により本明細書の一部とする)。
【0078】
他の好ましいオリゴヌクレオチド模倣物において、糖とヌクレオシド間結合、すなわちヌクレオチド単位の骨格の両方が新たな基で置換されている。適切な核酸標的化合物とのハイブリダイゼーションのために、当該塩基単位は維持されている。かかるオリゴマー化合物の1つである、際立ったハイブリダイゼーション特性を有することが示されているオリゴヌクレオチド模倣物は、ペプチド核酸(PNA)と呼ばれている。PNA化合物では、オリゴヌクレオチドの糖−骨格が、アミド含有骨格、特にアミノエチルグリシン骨格で置換されている。核酸塩基は保持され、骨格のアミド部分のアザア(aza)窒素原子と直接または間接に結合している。PNA化合物の製造を教示する代表的な米国特許は、米国特許第5,539,082号;第5,714,331号;および第5,719,262号を含むが、これらに限定されない(各々その全体を出典明示により本明細書の一部とする)。PNA化合物の更なる教示は、Nielsen et al., Science, 1991, 254, 1497-1500に見出すことができる。
【0079】
本発明の最も好ましい態様は、米国特許第5,034,506号に記載のモルホリノ骨格構造を有するオリゴヌクレオチドである。また好ましいものは、ホスホロチオエート骨格を有するオリゴヌクレオチドおよびヘテロ原子骨格、とりわけ米国特許第5,489,677号に記載の−CH2−NH−O−CH2−、−CH2−N(CH3)−O−CH2−[メチレン(メチルイミノ)またはMMI骨格として知られる]、−CH2−O−N(CH3)−CH2−、−CH2−N(CH3)−N(CH3)−CH2−および−O−N(CH3)−CH2−CH2−[ここで、天然ホスホジエステル骨格は−O−P−O−CH2−で示される]および米国特許第5,602,240に記載のアミド骨格を有するオリゴヌクレオシドである。
【0080】
修飾オリゴヌクレオチドは、1個以上の置換糖部分をも有していてもよい。好ましいオリゴヌクレオチドは、2’位に下記の1個を含む:OH;F;O−、S−またはN−アルキル;O−、S−またはN−アルケニル;O−、S−またはN−アルキニル;またはO−アルキル−O−アルキル(ここで、当該アルキル、アルケニルおよびアルキニルはC1〜C10アルキルまたはC2〜C10アルケニルおよびアルキニルで置換されているか、非置換であってよい)。とりわけ好ましいものは、O[(CH2)n O]m CH3、O(CH2)n OCH3、O(CH2)n NH2、O(CH2)n CH3、O(CH2)n ONH2、およびO(CH2)n ON[(CH2)n CH3)]2(ここで、nおよびmは1〜約10である)である。他の好ましいオリゴヌクレオチドは、2’位に下記の1個を含む:C1〜C10低級アルキル、置換低級アルキル、アルコアリール、アラルキル、O−アルコアリールまたはO−アラルキル、SH、SCH3、OCN、Cl、Br、CN、CF3、OCF3、SOCH3、SO2CH3、ONO2、NO2、N3、NH2、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルコアリール、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA開裂基、レポーター基、インターカレーター、オリゴヌクレオチドの薬物動態学的特性を向上させる化学基、又はオリゴヌクレオチドの薬力学的特性を向上させる化学基、および類似する特性を有する他の置換基。好ましい修飾には、2’−メトキシエトキシ(2’−O−−CH2CH2OCH3、2’−O−(2−メトキシエチル)または2’−MOEとも知られる)(Martin et al., Helv. Chim. Acta, 1995, 78, 486-504)、すなわちアルコキシアルコキシ基が含まれる。さらに好ましい修飾には、2’−ジメチルアミノオキシエトキシ、すなわちO(CH2)2ON(CH3)2基(2’−DMAOEとしても知られる)が含まれる。さらに好ましいこのカテゴリーの修飾は、Rajwanshi et al., Angew. Chem. Int. Ed. 2000, 39, 1656-1659に記載のLNA(ロックド核酸)として集合的に知られている二環式群の修飾である。
【0081】
他の好ましい修飾には、2’−メトキシ(2’−O−CH3)、2’−アミノプロポキシ(2’−OCH2CH2CH2NH2)および2’−フルオロ(2’−F)が含まれる。同様の修飾は、オリゴヌクレオチドの他の位置でも、とりわけ3’末端ヌクレオチドまたは2’−5’結合オリゴヌクレオチドの糖の3’位、および5’末端ヌクレオチドの5’位で行われていてもよい。オリゴヌクレオチドは、ペントフラノシル糖に代わるシクロブチル部分のような糖模倣物を有していてもよい。当業者は常套の方法を用いてかかる修飾糖構造を製造することができる。かかる修飾糖構造の製造を教示する代表的な米国特許は、米国特許第4,981,957号;第5,118,800号および第5,700,920号を含むが、これらに限定されない(各々その全体を出典明示により本明細書の一部とする)。
【0082】
アンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、核酸塩基(しばしば、当該分野において、単に「塩基」と称される)修飾または置換を含んでいてもよい。本明細書において使用するとき、「未修飾」又は「天然」核酸塩基は、プリン塩基であるアデニン(A)およびグアニン(G)、ならびにピリミジン塩基であるチミン(T)、シトシン(C)およびウラシル(U)を含む。修飾核酸塩基は、他の合成および天然核酸塩基、例えば5−メチルシトシン(5−me−C)、5−ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2−アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6−メチルおよび他のアルキル誘導体、アデニンおよびグアニンの2−プロピルおよび他のアルキル誘導体、2−チオウラシル、2−チオチミンおよび2−チオシトシン、5−ハロウラシルおよびシトシン、5−プロピニルウラシルおよびシトシン、6−アゾウラシル、シトシンおよびチミン、5−ウラシル(偽ウラシル)、4−チオウラシル、8−ハロ、8−アミノ、8−チオール、8−チオアルキル、8−ヒドロキシルおよび他の8−置換アデニンおよびグアニン、5−ハロ、とりわけ5−ブロモ、5−トリフルオロメチルおよび他の5−置換ウラシルおよびシトシン、7−メチルグアニンおよび7−メチルアデニン、8−アザグアニンおよび8−アザアデニン、7−デアザグアニンおよび7−デアザグアニン、ならびに3−デアザグアニンおよび3−デアザアデニンを含む。さらなる核酸塩基は米国特許第3,687,808に記載のもの、The Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering, pages 858-859, Kroschwitz, J. I., ed. John Wiley & Sons, 1990に記載のもの、Englisch et al., Angewandte Chemie, International Edition, 1991, 30, 613に記載のもの、そしてSanghvi, Y. S., Chapter 15, Antisense Research and Applications, pages 289-302、Crooke, S. T. and Lebleu, B. ed., CRC Press, 1993に記載のものを含む。これら核酸塩基の幾つかは、本発明のオリゴマー化合物の結合親和性を高めることにとって特に有用である。これらには、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジンおよび2-アミノプロピルアデニンを含むN−2、N-6およびO-6置換プリン、5-プロピルウラシルならびに5-プロピニルシトシンが含まれる。5-メチルシトシン置換によって、核酸二本鎖安定性が0.6−1.2℃高まることが示され(Sanghvi, Y. S., Crooke, S. T. and Lebleu, B., eds., Antisense Research and Applications, CRC Press, Boca Raton, 1993, pp. 276-278)、それは、2'−O−メトキシエチル糖修飾と組み合わせたときさらに特に好ましい塩基置換である。
【0083】
当業者は、当該技術分野において周知の方法によって修飾核酸塩基を製造することができる。例えば、上記修飾核酸塩基および他の修飾核酸塩基の製造を教示する代表的な米国特許は、米国特許第3,687,808号、および米国特許第4,845,205号;第5,130,302号および第5,134,066号を含むが、これらに限定されない(各々その全体を出典明示により本明細書の一部とする)。
【0084】
本発明のオリゴヌクレオチドの他の修飾は、活性、オリゴヌクレオチドの細胞分布または細胞取り込みを向上させるオリゴヌクレオチドの1個以上の部分またはコンジュゲートと化学的に結合している。かかる基は、脂質部分、例えばコレステロール部分(Letsinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1989, 86, 6553-6556)、コール酸(Manoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Let., 1994, 4, 1053-1060)、チオエーテル、例えばヘキシル−S−トリチルチオール(Manoharan et al., Ann. N.Y. Acad. Sci., 1992, 660, 306-309; Manoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Let., 1993, 3, 2765-2770)、チオコレステロール(Oberhauser et al., Nucl. Acids Res., 1992, 20, 533-538)、脂肪鎖、例えばドデカンジオールまたはウンデシル残基(Saison-Behmoaras et al., EMBO J., 1991, 10, 1111-1118; Kabanov et al., FEBS Lett., 1990, 259, 327-330; Svinarchuk et al., Biochimie, 1993, 75, 49-54)、リン脂質、例えばジ−ヘキサデシル−rac−グリセロールまたはトリエチルアンモニウム1,2−ジ−O−ヘキサデシル−rac−グリセロ−3−H−ホスホネート(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 36, 3651-3654; Shea et al., Nucl. Acids Res., 1990, 18, 3777-3783)、ポリアミンまたはポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al., Nucleosides & Nucleotide, 1995, 14, 969-973)、またはアダマンタン酢酸(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 36, 3651-3654)、パルミチル部分(Mishra et al., Biochim. Biophys. Acta, 1995, 1264, 229-237)、またはオクタデシルアミンもしくはヘキシルアミノ−カルボニル−オキシコレステロール部分(Crooke et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 1996, 277, 923-937)を含むがこれらに限定されない。かかるオリゴヌクレオチドコンジュゲートの製造を教示する代表的な米国特許は、米国特許第4,828,979号;第4,948,882号および第5,688,941号を含むが、これらに限定されない(各々その全体を出典明示により本明細書の一部とする)。
【0085】
所与の化合物のすべての位置が統一的に修飾される必要はなく、事実、複数の上記修飾が、単一の化合物またはオリゴヌクレオチド内の単一のヌクレオシドでも組み込まれていてもよい。本発明はまた、キメラ化合物であるアンチセンス化合物を含む。「キメラ」アンチセンス化合物または「キメラ」は、本発明の文脈において、アンチセンス化合物、特に、少なくとも1つのモノマー単位、すなわちオリゴヌクレオチド化合物の場合のヌクレオシドでそれぞれが作られている、2個以上の化学的に明らかな領域を有するオリゴヌクレオチドである。これらオリゴヌクレオチドは、典型的には、ヌクレアーゼ分解に対する耐性の上昇、細胞取り込みの上昇、および/または標的核酸に対する結合親和性の上昇をオリゴヌクレオチドに付与するようにオリゴヌクレオチドが修飾されている、少なくとも1個の領域を含む。オリゴヌクレオチドの付加的な領域は、RNA:DNAまたはRNA:RNAハイブリッドを切断することが可能な酵素の基質として機能する。例として、RNAアーゼHは、RNA:DNA二本鎖のRNA鎖を分解する細胞性エンドヌクレアーゼである。したがって、RNアーゼHの活性化は、RNA標的の切断を引き起こし、それによって、遺伝子発現のオリゴヌクレオチド阻害の効率を大幅に向上させる。結果として、同じ標的領域とハイブリダイズするホスホロチオエートデオキシオリゴヌクレオチドと比較して、キメラオリゴヌクレオチドを使用したとき、より短いオリゴヌクレオチドによって同様な結果を頻繁に得ることができる。
【0086】
本発明のキメラアンチセンス化合物は、2個以上のオリゴヌクレオチド、修飾オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチドおよび/または上記のオリゴヌクレオチド模倣物の複合構造として形成され得る。かかる化合物は当該技術分野においてハイブリッドまたはギャップマーとも称される。当業者は当該ハイブリッド構造を常套の方法によって製造することができる。当該ハイブリッド構造の製造を教示する代表的な米国特許は、米国特許第5,013,830号;第5,149,797号および第5,700,922号を含むが、これらに限定されない(各々その全体を出典明示により本明細書の一部とする)。
【0087】
本発明において使用されるアンチセンス化合物は、周知の固相合成の技術によって簡便かつごく普通に製造することができる。かかる合成のための機器は、例えばApplied Biosystems(Foster City, Calif.)を含むいくつかの製造供給元によって販売されている。当該技術分野で既知のかかる合成のためのあらゆる他の手段も、付加的または代替的に用いることができる。ホスホロチオエートおよびアルキル化誘導体のようなオリゴヌクレオチドを製造するために、同様の技術を使用することが良く知られている。
【0088】
さらに、当業者は本発明のアンチセンス化合物がmir−208−2それ自体を標的とせず、mir−208−2を含むmRNA、例えばpri−miRNAまたはpre−miRNAを標的としてもよいことを容易に理解するであろう。
【0089】
表1はmir−208−2を下方制御する好ましいアンチセンス配列を示す。これらの配列は本明細書に開示するいずれかの化学修飾を行って用いてもよい。
【0090】
【表6】

【表7】

【表8】

【0091】
本発明のアンチセンス化合物はインビトロで合成されるが、生物学的起源のアンチセンス組成物、またはアンチセンス分子のインビボ合成に関与するように設計された遺伝子ベクター構造物を含んでいてもよい。本発明の化合物はまた、取り込み、分布、および/または吸収を補助するために、例えば、リポソーム、レセプター標的分子、経口、直腸、局所的または他の製剤として、混合し、カプセル充填しまたは他の分子、分子構造物または分子の混合物と複合化し、または他の方法で結合させてよく、そしてそのようにする常套的方法が存在し、当業者に周知である。例えば、代表的な米国特許は、米国特許第5,108,921号;第5,354,844号および第5,595,756号を含むが、これらに限定されない(各々その全体を出典明示により本明細書の一部とする)。
【0092】
本発明のアンチセンス化合物は、いずれかの薬学的に許容される塩、エステルまたはかかるエステルの塩、またはヒトを含む動物に投与したとき(直接または間接的に)生物学的に活性な代謝産物またはその残基を得られるあらゆる他の化合物を含む。したがって例えば、本開示は、本発明の化合物のプロドラッグおよび薬学的に許容される塩、かかるプロドラッグの薬学的に許容される塩、および他の生物学的均等物についても記載している。「薬学的に許容される塩」なる用語は、本発明の化合物の生理的および薬学的に許容される塩:すなわち親化合物の所望の生物学的活性を保持し、それに望ましくない毒性を賦与することのない塩を意味する。かかる化合物は常套の方法にしたがって当業者によって製造され得る(Berge et al., “Pharmaceutical Salts,” J. of Pharma Sci., 1977, 66, 1-19)。
【0093】
「プロドラッグ」なる用語は、内因性酵素または他の化学物質および/または条件の作用によって体内または細胞内で活性形態(すなわち薬剤)に変換される不活性形態で製造される薬剤を意味する。とりわけ、本発明のオリゴヌクレオチドのプロドラッグ版は、SATE[(S−アセチル−2−チオエチル)ホスフェート]誘導体として、WO 93/24510(Gosselin et al.、1993年12月9日公開)またはWO 94/26764(Imbach et al.)に記載の方法によって製造される。
【0094】
本発明のアンチセンス化合物は、診断、治療、予防のため、および調査キットとして利用することもできる。治療のため、mir−208−2の発現を調節することによって処置することができる疾患または障害を有する疑いのある動物、好ましくはヒトを、本発明のアンチセンス化合物を投与して処置する。本発明の化合物は有効量のアンチセンス化合物と好適な薬学的に許容される希釈剤または担体を加えて医薬組成物として利用可能である。アンチセンス化合物の使用および本発明の方法は、例えば感染、炎症または腫瘍形成の例えば予防または遅延のために、予防的に有用でもある。
【0095】
本発明のアンチセンス化合物は、mir−208−2をコードする核酸とハイブリダイズし、この事実を活用するサンドイッチ法および他のアッセイ法を容易に構築することを可能とするため、研究および診断のために有用である。本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドとmir−208−2をコードする核酸のハイブリダイゼーションを当該技術分野において既知の方法によって検出することができる。かかる方法は、酵素とオリゴヌクレオチドのコンジュゲーション、オリゴヌクレオチドの放射性標識化またはあらゆる他の好適な検出方法を含んでいてもよい。サンプル中のmir−208−2のレベルを検出するためのかかる検出方法を用いるキットを製造することもできる。
【0096】
本発明はまた、本発明のアンチセンス化合物を含む医薬組成物および製剤を含む。本発明の医薬組成物は、局所または全身的処置が望まれるか、処置する領域に依存して多様な方法で投与され得る。投与は局所(目および膣および直腸送達を含む粘膜)、肺、例えば吸入またはネブライザーに含まれる粉末もしくはエアロゾルのガス注入によって;気管内、鼻腔内、上皮および経皮)、経口または非経腸であり得る。非経腸投与は静脈内、動脈内、皮下、腹腔内または筋肉内注射または輸液;または脳内、例えば、髄腔内または脳室内投与を含む。2’−O−メトキシエチル修飾を有するオリゴヌクレオチドは、経口投与にとりわけ有用であると考えられている。
【0097】
本発明の組成物の使用
上記のとおり、本発明の組成物は調査、診断および治療を含むがこれらに限定されない複数の態様における使用を見出す。
【0098】
治療的使用のため、本明細書に記載の組成物は疾患およびmir−208−2の調節異常によって引き起こされた状態を処置するために使用することができる。本明細書に記載のとおり、この新規なマイクロRNAは主として筋肉組織、特に心臓組織で発現することを見出し、そしてMYH7転写および発現と関連していることを見出した。mir−208−2の調節異常に関連する疾患は、筋疾患および心臓障害を含むが、これらに限定されず、そしてMYH6、MYH7またはMYH7Bの変異に関連したかかる疾患を含み得る。miRNAの制御異常発現は疾患の進行の原因であってよく、したがって潜在的な治療標的として、siRNAまたはshRNAと好適な送達系を用いたmiRNAの阻害またはdsRNAの再導入によって適格とする。
【0099】
例えば本発明の化合物を用いて、最も一般的な持続性の不整脈である心房細動(AF)を処置することができ、そしてこれは長期間AFを安定させる目的で、極度の構造的、収縮性、そして電気生理的なリモデリングに関連している(Allessie, M., J. Ausma, and U. Schotten, Electrical, contractile and structural remodeling during atrial fibrillation. Cardiovasc Res, 2002. 54(2): p. 230-46)。AFは心房筋の心室内ミオシンアイソフォームの発現増加に関連しており、分化プロセスの一部と考えられている。興味深いことに、AF心筋において、心室筋の特徴である遺伝子の機能的クラスは上方制御されるが、心房筋において主として発現している機能的クラスは下方制御されることが見出された。(Barth, A.S., et al., Reprogramming of the Human Atrial Transcriptome in Permanent Atrial Fibrillation: Expression of a Ventricular-Like Genomic Signature 10.1161/01.RES.0000165480.82737.33. Circ Res, 2005. 96(9): p. 1022-1029)。AFにおいて上方制御されることが見出された遺伝子の1つがMYH7Bであり、これはイントロンの1つにmir−499を含む遺伝子である。ヒト心房組織において観察されるMYHファミリーメンバーのアイソザイムシフトは、血液動態過負荷への初期適応であると考えられている(Buttrick, P.M., et al., Myosin isoenzyme distribution in overloaded human atrial tissue. Circulation, 1986. 74(3): p. 477-83; Yazaki, Y., et al., Molecular adaptation to pressure overload in human and rat hearts. J Mol Cell Cardiol, 1989. 21 Suppl 5: p. 91-101.)。
【0100】
他の例において、化合物は小さな、顕著に肥大した、超収縮左心室(LV)によって特徴付けられる肥大型心筋症(HCM)において使用される(Maron, B.J., Hypertrophic cardiomyopathy: a systematic review. Jama, 2002. 287(10): p. 1308-20)。ヒト心室筋はMYH6とMYH7の両方を発現し、MYH7が主である。肥大中でもMYH7発現に顕著な差は見られない。しかし、過負荷ヒト心室筋は通常含まれる少量のMYH6を失うと、この形態が高血圧疾患を有する患者の剖検材料または弁心臓疾患を有する患者の術中生検において検出されないため、考えられている。(Schwartz, K., et al., Left ventricular isomyosins in normal and hypertrophied rat and human hearts. Eur Heart J, 1984. 5 Suppl F: p. 77-83、 Mercadier, J.J., et al., Myosin isoenzymes in normal and hypertrophied human ventricular myocardium. Circ Res, 1983. 53(1): p. 52-62)。
【0101】
同定されたマイクロRNA、mir−208−2、mir−208およびmir−499は、早発型心房細動または肥大型心筋症の検出におけるバイオマーカーとして使用することもできる。
【0102】
本発明の化合物の局所投与用医薬組成物または製剤は、経皮パッチ、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、ドロップ、座薬、スプレー、液体および粉末を含む。常套の医薬担体、水性、粉末または油性基剤、増粘剤等が必要または望まれ得る。コーティングしたコンドーム、手袋等も有用である。
【0103】
経口投与用組成物および製剤は、粉末、顆粒、水または非水性媒体の懸濁液または溶液、カプセル剤、サシェットまたは錠剤を含む。増粘剤、風味剤、希釈剤、乳化剤、分散剤または結合剤が望まれ得る。
【0104】
非経腸、髄腔内または心室内投与用組成物または製剤は、滅菌水溶液を含み、これはまたバッファー、希釈剤および他の好適な添加剤、例えば透過促進剤、単体化合物および他の薬学的に許容される担体または賦形剤を含んでいてもよいが、これらに限定されない。
【0105】
本発明の医薬組成物は、溶液、エマルジョン、およびリポソーム含有製剤を含む。これらの組成物は、予め形成された液体、自己乳化固体および自己乳化半固体を含むがこれらに限定されない多様な成分から、常套の方法にしたがって、当業者によって製造され得る。
【0106】
簡便には単位投与形態で存在していてもよい本発明の医薬組成物は、医薬産業において周知の常套の技術によって製造することができる。かかる技術は、有効成分と医薬担体または希釈剤を組み合わせる工程を含む。一般に製剤は、有効成分と液体担体または良好に分散した固体担体またはその両方と均一かつ密接に連携させ、次に所望により生成物を成形して製造する。
【0107】
本発明の組成物は、錠剤、カプセル剤、液体シロップ、ソフトゲル、座薬およびエネマのような多くの可能な投与形態のいずれかに製剤化することができるが、これらに限定されない。本発明の組成物はまた、水性、非水性または混合媒体の懸濁液として製剤化することもできる。水性懸濁液はさらに、懸濁液の粘度を増加させる物質、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールおよび/またはデキストランを含んでいてもよい。懸濁液はまた、安定化剤を含んでいてもよい。
【0108】
本発明の1つの態様において、医薬組成物は泡として製剤化および使用することができる。医薬泡はエマルジョン、ミクロエマルジョン、クリーム、ゼリーおよびリポソームのような製剤を含むがこれらに限定されない。基本的に同じ性質であるが、これらの製剤は最終生成物の組成および濃度が異なる。かかる組成物および製剤の製造法は、一般に医薬分野の当業者に既知であり、本発明の組成物の製剤化に適用することができる。
【0109】
組成物は単独で、または少なくとも1種の他の薬剤、例えば安定化化合物との組合せで投与することができ、これは食塩水、緩衝化食塩水、デキストロースおよび水を含むがこれらに限定されないあらゆる滅菌、生物学的に適合性の医薬担体において投与することができる。該組成物は患者に単独で、または他の薬剤、医薬またはホルモン剤と組み合わせて投与することができる。
【0110】
本発明に含まれる医薬組成物を、多様な経路、例えば経口、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、髄内、髄腔内、心室内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、経腸、局所、舌下または直腸手段によって投与することができるが、これらに限定されない。有効成分に加えて、これらの医薬組成物は、薬学的に使用され得る製剤への活性化合物の処理を容易にする賦形剤および助剤を含む好適な薬学的に許容される担体を含んでいてもよい。製剤化および投与のための更に詳細な技術はRemington’s Pharmaceutical Sciences(Maack Publishing Co., Easton, Pa.)の最新版に見出すことができる。経口投与用医薬組成物は、経口投与に好適な投与量で、当業者に周知の薬学的に許容される担体を用いて製剤化することができる。かかる担体は、医薬組成物を患者に接種されるための錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル剤、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液等に製剤化することを可能とする。経口用医薬製剤は、有効成分と固体賦形剤を混合し、所望により得られた混合物を摩砕し、好適な助剤を加えた後顆粒の混合物を処理して、錠剤または糖衣錠コアを得ることができる。好適な賦形剤は、炭水化物またはタンパク質増量剤、例えば糖、例えばラクトース、ショ糖、マンニトールまたはソルビトール;トウモロコシ、コムギ、コメ、ジャガイモまたは他の植物由来のデンプン;セルロース、例えばメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロースまたはカルボキシメチルセルロースナトリウム;ゴム、例えばアラビアゴムおよびトラガカント;およびタンパク質、例えばゼラチンおよびコラーゲンである。所望により、崩壊剤または可溶化剤、例えば架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、またはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムを加えることができる。
【0111】
糖衣錠コアは、好適なコーティング、例えばアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコールおよび/または二酸化チタン、ラッカー液および好適な有機溶媒または溶媒混合物を含む、濃縮糖溶液と組み合わせて使用され得る。着色剤または着色料を錠剤または糖衣錠コーティングに加えて、製品の識別および活性化合物の量、例えば投与量を特徴付けることもできる。
【0112】
経口的に使用することができる医薬製剤は、ゼラチン製の押し込み式カプセル、ならびにゼラチンおよびグリセロールまたはソルビトールのようなコーティングでできた軟密封カプセル剤を含む。押し込み式カプセル剤はラクトースまたはデンプンのような増量剤または結合剤、タルクまたはステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤、および所望により安定化剤と混合した有効成分を含み得る。軟カプセル剤において、活性化合物を脂肪油、液体または液体ポリエチレングリコールのような好適な液体に、安定化剤と共にまたはそれなしで溶解または懸濁することができる。
【0113】
非経腸投与に好適な医薬組成物は、水溶液、好ましくは生理的に適合性のバッファー、例えばハンクス液、リンゲル液または生理的緩衝化食塩水中に製剤化することができる。水性注射懸濁液は懸濁液の粘度を上昇させる物質、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールまたはデキストランを含んでいてもよい。さらに、活性化合物の懸濁液は適切な油性注射懸濁液として製剤することができる。好適な親油性溶媒またはビークルは、脂肪油、例えばゴマ油または合成脂肪酸エステル、例えばエチルオレエートまたはトリグリセリド、またはリポソームを含む。非脂質ポリカチオン性アミノポリマーを送達に用いることもできる。所望により、懸濁液は好適な安定化剤または化合物の溶解性を向上させて高濃度溶液の製造を可能とする薬剤を含んでもよい。
【0114】
局所または経鼻投与のために、透過させるべき特定の障壁に適切な透過剤を製剤中に用いる。かかる透過剤は一般に当該技術分野において既知である。
【0115】
本発明の医薬組成物を当該技術分野において既知の方法で、例えば常套の混合、溶解、造粒、糖衣製造、摩砕、乳化、カプセル充填、充填、または凍結乾燥プロセスによって製造することができる。
【0116】
医薬組成物は塩として提供することができ、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸等と共に形成することができる。塩は対応する遊離塩基形態よりも水性または他のプロトン性溶媒により溶解し易くさせる傾向がある。他の場合では、好ましい製剤は下記のいずれかまたは全てを含んでいてもよい、使用前にバッファーと組み合わせる凍結乾燥粉末であり得る:1−50mM ヒスチジン、0.1%−2%ショ糖、および2−7%マンニトール、pH範囲4.5〜5.5。
【0117】
医薬組成物を製造した後、これを適切な容器に入れ、適応状態の処置のためのラベルを貼り付けることができる。投与のために、かかるラベルは投与量、頻度および方法を含む。
【0118】
本発明の使用に好適な医薬組成物は、有効成分が意図した目的を達成するのに有効な量で含まれている組成物を含む。有効量の決定は十分に当業者の能力の範囲内である。いずれかの化合物について、治療上有効用量はまず、例えば新生物細胞の細胞培養アッセイ、または通常マウス、ウサギ、イヌまたはブタの動物モデルから確立され得る。動物モデルを用いて適切な濃度範囲および投与経路を決定することもできる。かかる情報は、ヒトにおける投与に有用な用量および経路を決定するために使用することができる。治療上有効用量は、症状または状態を改善する有効成分の量を意味する。治療効果および毒性、例えばLD50(集団の50%が致死となる用量)およびED50(集団の50%が治療上有効である用量)を、細胞培養または実験動物の標準的な薬学的方法によって測定することができる。毒性と治療効果間の用量比は治療指数であり、これはLD50/ED50比として表すことができる。大きな治療指数を示す医薬組成物が好ましい。細胞培養アッセイおよび動物試験から得られたデータを、ヒトに使用する投与量範囲を製剤化するために使用する。係る組成物に含まれる投与量は、好ましくは毒性がほとんどまたは全くないED50を含む循環濃度の範囲にある。投与量はこの範囲内で、使用する投与形態、患者の感受性および投与経路に依存して変化する。正確な投与量は処置を必要とする対象に関連した要因に基づいて、実施者によって決定される。投与量および投与は、活性部分の十分なレベルが得られるが、所望の効果が維持されるように調節される。考慮され得る要因は、疾患状態の重症度、対象の一般的な健康、食餌、投与の時間および頻度、薬剤の組合せ、応答感受性、および治療に対する耐容性/応答性を含む。長期作用型医薬組成物は3〜4日毎、1週間毎、または2週間に1回、具体的な製剤の半減期およびクリアランス速度に依存して投与することができる。
【0119】
通常の投与量は0.1〜100,000マイクログラムの範囲で、最大耐容量約1gまでで、投与経路に依存して変化し得る。具体的な投与量および送達方法に関する基準は、当業者に一般に入手可能な文献から得られる。当業者はタンパク質またはその阻害剤と異なるヌクレオチドのための製剤を用いる。同様に、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの送達は具体的な細胞、状態、位置などに特異的である。
【0120】
本発明の組成物の別の使用は、バイオマーカー適用、診断および調査使用を含むが、これに限定されない非治療的使用を含む。当業者は本発明において、本発明の化合物を、本明細書に開示されているmir−208−2の新規な発見に基づいて、これらの目的のために使用することができる。具体的な興味の調査使用の方法は、mir−208−2マイクロRNAの細胞内での発現の低下または上昇を含む。本発明それ自体はまた、心臓血管障害または筋疾患の診断またはその処置戦略の決定に使用するためのキット、細胞中のmir−208−2、mir−208および/またはmir−499の発現を低下または上昇させる方法、および細胞中のmir−208−2、mir−208および/またはmir−409活性を低下または上昇させる方法を含む。
【実施例1】
【0121】
実施例:
miRNA−208−2の同定および特徴付け。
マイクロRNA発現プロファイリングを下記プロトコルにしたがって得た:
【0122】
RNA単離
ラットおよびマウスをイソフルラン(3%、20L/分)で深く麻酔した後開胸し、心臓の左心室をかん流した。左心室を、洗浄液(NaCl 0.9%と250,000U/l ヘパリン、38℃)を含む気密加圧シリンジに接続した翼付輸液セット(SV- 19BLK; Termudo, Elkton, MD)の23ゲージ針で穿刺した。右心房に流出口を設けるために穿刺し、かん流液を120mmHgの正確に制御された圧力下で注入した。かん流を2分間、一定速度(20ml)で続けた。臓器を摘出し、液体窒素で瞬間凍結し、−80℃で保存した。製造業者から得られるプロトコルにしたがって、臓器を1ml Trizol(登録商標)Reagent (Life-Technologies(商標), カタログ番号: 15596-018)の存在下、Trizol/100mg組織で、ポリトロンホモジナイザーを用いてホモジナイズした。RNAをRNアーゼを含まない水に溶解させ、−80℃で保存した。
【0123】
ノーザンDNAプローブ
mir−208(5’-acaagctttttgctcgtcttat-3’)、mir−208−2(5’-acaaaccttttgttcgtcttat-3’)、mir−499(5’-aaacatcactgcaagtctt-3’)、mir−206(5’-ccacacacttccttacattcca-3’)およびU6 snRNA(5’-gccatgctaatcttctctgtatc-3’)に対するプローブを5’−ジゴキシゲニン標識した。全てのプローブおよび合成miRNA配列は、Microsynth GmbHから得た。
【0124】
ノーザンブロッティング
ノーザンブロット分析をジゴキシゲニン標識化DNAオリゴヌクレオチドを用いて行った。簡潔に言うと、各組織の全RNA5μgを1xTBE中変性15%ポリアクリルアミド/7M ウレアゲル(Invitrogen, カタログ番号: EC68855BOX)上で分離した。分解したRNAを正に荷電したナイロン膜(Roche, カタログ番号: 1209299)に90分間、0.5xTBE中0.8mA/cmで移した。120mJでUV架橋後、膜を2xSSCで洗浄し、DIG Easy Hyb-バッファー(Roche, カタログ番号: 11603558001)で20分間ブロックした。ブロック後、膜を1pmol/ml 5’−DIG標識化DNAオリゴを含むDIG Easy Hyb-バッファーと共に60分間インキュベートした。膜を0.1%SDS/2xSSCで濯いだ後、2xSSCで2回洗浄した。続いて、製造業者のプロトコルにしたがって、膜を洗浄し、ブロックし(Roche, カタログ番号: 1585762, Roche)、アルカリホスファターゼ複合化抗ジゴキシゲニン抗体(Roche, カタログ番号: 1093274)と共にインキュベートした。膜をすぐに使用できるCDP−Star(Roche, カタログ番号: 2041677)中でインキュベートし、ChemiDoc XRS (BioRad)を用いて化学発光を検出した。
【0125】
結果:異なるマウス組織のmiRNA発現プロファイリングから、mir−208とmir−499両方の発現が心臓において極めて富化されていることが分かった。マウスとラット両方の組織のノーザンブロット分析によって、これらのmiRNAの観察された発現パターンを確認する(データは示さず)。
【0126】
より詳細には、mir−208は心臓の心房および心室で高度に発現しており、この発現はマウスおよびラットの両方で保存されていることが見出された。他方、Mir−499は心臓の心室領域に限定されている。mir−206は主として筋肉において発現しており、心臓では低いレベルの発現が検出される。これらの知見から、本発明者らは、mir−499(Bentwich, I., et al., Identification of hundreds of conserved and nonconserved human microRNAs. Nat Genet, 2005.)の発現が心臓の心室領域で極めて富化されていることを同定し;そしてmir−208(Lagos-Quintana, M., et al., Identification of tissue-specific microRNAs from mouse. Curr Biol, 2002. 12(9): p. 735-9.)およびmir−206(Sempere, L.F., et al., Expression profiling of mammalian microRNAs uncovers a subset of brain-expressed microRNAs with possible roles in murine and human neuronal differentiation. Genome Biol, 2004. 5(3): p. R13.)の心臓および筋肉富化発現プロファイルを確認した。
【0127】
心臓からクローン化されたmir−208(Lagos-Quintana, M., et al., New microRNAs from mouse and human. Rna, 2003. 9(2): p. 175-9.)はミオシン重鎖6遺伝子のイントロンに位置し、動物間で高度に保存されている。興味深いことに、mir−499(Bentwich, et al. supra)はヒトミオシン重鎖7B遺伝子のイントロンに位置する。miRNA mir−499はmir−208と比較してより大きな種群にわたって高度に保存されている(ゼブラフィッシュ、ヒト、チンパンジー、イヌ、ラット、マウスおよびアフリカツメガエル)。
【0128】
このデータは遺伝子とmiRNA機能の両方が保存されていることを示唆しており、したがって驚くべきことに、mir−499の保存の同様のレベルがmir−208においては見られない。興味深いことに、ゼブラフィッシュ(Danio rerio)心室ミオシン重鎖(vmhc)はヒトMYH6の密接に関連したホモログであり、その転写は同様のイントロン/エキソン構造を有する。
【0129】
mir−208配列を含むMYH6イントロンとvmhc転写産物のアラインメントによって、異なる4個のヌクレオチドを有する類mir−208配列の存在が明らかとなった(図1)。興味深いことに、vmhcは、vmhcとMYH7の両方が、ATP加水分解の速度が遅いため遅い収縮速度を有するので、MYH6メンバーよりもむしろ哺乳類MYH7ファミリーメンバーにより関連している。他方、MYH6は‘速い’アイソフォームに属する(Weiss, A. and L.A. Leinwand, The mammalian myosin heavy chain gene family. Annu Rev Cell Dev Biol, 1996. 12: p. 417-39)。驚くべきことに、mir−208−2を含むvmhcイントロンと哺乳類MYH7イントロンのアラインメントによって、本明細書においてmir−208−2と呼ぶ新規なmir−208様miRNAが明らかとなった。
【0130】
要するに、本発明者らは、ゼブラフィッシュ遺伝子vmhcのイントロンおよび哺乳類MYH7遺伝子に含まれる新規なmiRNA配列を同定した。
【0131】
実施例:mir−208−2の特徴付け。
正常なマウスおよびラットの心臓において、MYH7は心臓の新生児発育中にのみ発現される(Lyons, G.E., et al., Developmental regulation of myosin gene expression in mouse cardiac muscle. J Cell Biol, 1990. 111(6 Pt 1): p. 2427-36.)。しかし、MYH7および他の胎児遺伝子は、心臓が肥大を招く圧力過負荷に曝されているときに再び発現する。mir−208−2の存在を検証するため、全RNAをマウス心臓から、発生の異なる段階で単離した。RT−PCR(図2)およびノーザンブロット分析(図3)を行って、遺伝子発現およびmiRNA発現をそれぞれ確認した。
【0132】
RNA単離
誕生後胚日(ED)17〜19日の範囲の異なる発生段階のマウス心臓を単離し、液体窒素でスナップ凍結し、−80℃で保存した。製造業者から得られるプロトコルにしたがって、臓器を1ml Trizol(登録商標)Reagent (Life-Technologies(商標), カタログ番号: 15596-018)の存在下、Trizol/100mg組織で、ポリトロンホモジナイザーを用いてホモジナイズした。RNAをRNアーゼを含まない水に溶解させ、−80℃で保存した。
【0133】
ノーザンDNAプローブ
mir−208(5’-acaagctttttgctcgtcttat-3’)、mir−208−2(5’-acaaaccttttgttcgtcttat-3’)、mir−499(5’-aaacatcactgcaagtctt-3’)、mir−206(5’-ccacacacttccttacattcca-3’)およびU6 snRNA(5’-gccatgctaatcttctctgtatc-3’)に対するプローブを5’−ジゴキシゲニン標識した。全てのプローブおよび合成miRNA配列は、Microsynth GmbHから得た。
【0134】
ノーザンブロッティング
ノーザンブロット分析をジゴキシゲニン標識化DNAオリゴヌクレオチドを用いて行った。簡潔に言うと、各組織の全RNA5μgを1xTBE中変性15%ポリアクリルアミド/7M ウレアゲル(Invitrogen, カタログ番号: EC68855BOX)上で分離した。分解したRNAを正に荷電したナイロン膜(Roche, カタログ番号: 1209299)に90分間、0.5xTBE中0.8mA/cmで移した。120mJでUV架橋後、膜を2xSSCで洗浄し、DIG Easy Hyb-バッファー(Roche, カタログ番号: 11603558001)で20分間ブロックした。ブロック後、膜を1pmol/ml 5’−DIG標識化相補的DNAオリゴを含むDIG Easy Hyb-バッファーと共に60分間インキュベートした。膜を0.1%SDS/2xSSCで濯いだ後、2xSSCで2回洗浄した。続いて、製造業者のプロトコルにしたがって、膜を洗浄し、ブロックし(Roche, カタログ番号: 1585762, Roche)、アルカリホスファターゼ複合化抗ジゴキシゲニン抗体(Roche, カタログ番号: 1093274)と共にインキュベートした。膜をすぐに使用できるCDP−Star(Roche, カタログ番号: 2041677)中でインキュベートし、ChemiDoc XRS (BioRad)を用いて化学発光を検出した。
【0135】
遺伝子発現分析
MYH6(Mm00440354_m1)、MYH7(Mm00600555_m1)および18S(Hs99999901-s1)のPCRプライマーセットを製造業者のプロトコルにしたがって、Applied Biosystems(AB)から1工程RT−PCR Master Mix反応剤(AB, カタログ番号: 4309169)を用いて得た。全サンプルを7500 FAST Real-Time PCR System(AB)を用いて3連で測定した。
【0136】
本発明者らは、MYH7発現がマウス心臓発生の新生児段階に限定されることを確認した。誕生後2日で、MYH7はRT−PCRによって最早検出されない。mir−208−2は誕生前および誕生直後(8日目)に発現するが、実質的には14日目まで検出されない。mir−208のノーザンブロット分析はMYH6の発現と相関しており、新生児段階および出生後段階で存在する。
【0137】
成人ヒト心臓におけるmir−208−2発現:マウスおよびラットとは異なり、健常ヒト心臓はMYH6とMYH7の両方を発現している。Schiaffino ら(Schiaffino, S., et al., Myosin changes in hypertrophied human atrial and ventricular myocardium. A correlated immunofluorescence and quantitative immunochemical study on serial cryosections. Eur Heart J, 1984. 5 Suppl F: p. 95-102.)は、特定の抗ミオシン抗体を用いてヒト心臓の剖検および生検標本においてMYH6とMYH7の両方を検出した。著者らはMYH6はほとんどの正常心室標本において5%未満であり、圧力過負荷の影響で完全に消失したと報告している。他方、重鎖ベータは一般に左心房心筋において検出されないが、肥大心房の生検において90%まで増加した。Satoら(Sato, H., et al., [mRNA detection of beta-myosin heavy chain gene in the autopsy cases of hypertrophic cardiomyopathy]. Nippon Hoigaku Zasshi, 2000. 54(3): p. 408-13)はまた、MYH7の過剰発現は突然の心臓死と関連しており、これは制御異常MYH発現が心臓の病的機能不全に寄与することを示唆していると報告している。(Garcia-Castro, M., et al., Hypertrophic cardiomyopathy: low frequency of mutations in the beta-myosin heavy chain (MYH7) and cardiac troponin T (TNNT2) genes among Spanish patients. Clin Chem, 2003. 49(8): p. 1279-85; Perrot, A., et al., Prevalence of cardiac beta-myosin heavy chain gene mutations in patients with hypertrophic cardiomyopathy. J Mol Med, 2005. 83(6): p. 468-77)。
【0138】
MYH7イントロン中の新規マイクロRNAの同定によって、このmiRNAの制御異常発現が実際にMYH7それ自体に起因する心臓障害に関係していることが確立された。本明細書は、この発見に関連する組成物および方法を提供する。
【0139】
本明細書中で言及した全ての出版物、特許および特許出願は、本発明が属する技術分野における当業者の技術レベルの指標となる。本明細書中で言及した全ての出版物、特許および特許出願を、それらの全体について参照により本明細書の一部とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
500個未満のヌクレオチドの単離核酸分子であって、mir−208−2(配列番号7)を含むことを特徴とする、単離核酸分子。
【請求項2】
単離核酸分子の長さが200ヌクレオチド未満である、請求項1に記載の単離核酸分子。
【請求項3】
単離核酸分子の長さが100ヌクレオチド未満である、請求項1に記載の単離核酸分子。
【請求項4】
単離核酸分子が配列番号1、配列番号2、配列番号3および配列番号4から成る群から選択される、請求項1〜3のいずれかに記載の単離核酸分子。
【請求項5】
単離核酸分子が配列番号7から成る、請求項1〜4のいずれかに記載の単離核酸分子。
【請求項6】
500個未満のヌクレオチドの単離核酸分子であって、配列番号1、配列番号2、配列番号3および配列番号4から成る群から選択される核酸配列に相補的である核酸配列から成る、単離核酸分子。
【請求項7】
配列番号8から成る、請求項6に記載の単離核酸。
【請求項8】
8〜50ヌクレオチド長を有する単離核酸分子であって、生理的条件下、好ましくは細胞内で請求項6の単離核酸分子とハイブリダイズして、mir−208−2(配列番号7)の機能を阻害することができる、単離核酸分子。
【請求項9】
配列番号10〜配列番号77から成る群から選択される、請求項8に記載の単離核酸分子。
【請求項10】
所望により
a)3’キャップ;
b)5’キャップ;
c)修飾ヌクレオシド間結合;または
d)修飾糖または塩基部分
から選択される1種以上の化学修飾を含む、アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(ASO)または二本鎖オリゴリボヌクレオチド(dsRNA)である請求項8または9に記載の核酸。
【請求項11】
a)3’キャップ;
b)5’キャップ;
c)修飾ヌクレオシド間結合;または
d)修飾糖または塩基部分
から選択される1種以上の化学修飾を含む、請求項1〜9のいずれかに記載の核酸。
【請求項12】
配列番号7および配列番号8から成る群から選択される核酸配列と、少なくとも1個のベクター増殖(propagation)配列を含む核酸ベクター。
【請求項13】
医薬として使用するための、請求項1〜6のいずれかに記載の単離核酸分子。
【請求項14】
脂質またはポリマー利用医薬送達系における、請求項1または6に記載の核酸分子を含む組成物。
【請求項15】
医薬として使用するための、請求項10に記載の核酸ベクター。
【請求項16】
請求項12の核酸ベクターを含む細胞。
【請求項17】
筋疾患を処置する方法であって、筋疾患を有する対象に、請求項13に記載の単離核酸分子を含む組成物を投与することを含む方法。
【請求項18】
心臓血管障害を処置する方法であって、心臓血管障害を有する対象に、請求項13に記載の単離核酸分子を含む組成物を投与することを含む方法。
【請求項19】
筋疾患または心臓血管障害の処置用医薬の製造のための、請求項1〜6のいずれかに記載の単離核酸分子の使用。
【請求項20】
心臓血管障害の診断または処置戦略の決定に使用するためのキットであって、RNA、DNA、混合RNAまたはDNAにおける請求項1〜9のいずれかに記載の核酸分子と、所望によりいずれかの化学修飾を含む核酸試薬を含むキット。
【請求項21】
細胞中のmir−208−2発現を低下または上昇させる方法であって、細胞に請求項1〜6のいずれかに記載の単離核酸分子を含む組成物を投与することを含む方法。
【請求項22】
筋疾患または心臓血管障害の処置用医薬の製造のための使用であって、mir−208(配列番号6)を含むことを特徴とする500個未満のヌクレオチドの単離核酸分子、および/またはmir−499(配列番号9)を含むことを特徴とする500個未満のヌクレオチドの単離核酸分子、および/またはmir−208(配列番号6)またはmir−499(配列番号9)の相補配列を含む500個未満のヌクレオチドの単離核酸分子の使用。
【請求項23】
筋疾患または心臓血管障害の処置のための使用であって、mir−208(配列番号6)を含むことを特徴とする500個未満のヌクレオチドの単離核酸分子、および/またはmir−499(配列番号9)を含むことを特徴とする500個未満のヌクレオチドの単離核酸分子、および/またはmir−208(配列番号6)またはmir−499(配列番号9)の相補配列を含む500個未満のヌクレオチドの単離核酸分子の使用。
【請求項24】
患者を処置する方法であって、請求項19、22または23に記載の医薬の使用を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−131812(P2012−131812A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−34691(P2012−34691)
【出願日】平成24年2月21日(2012.2.21)
【分割の表示】特願2009−541384(P2009−541384)の分割
【原出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】