説明

筋肉損失の治療のための方法

本発明は、個体における筋肉損失を治療する方法を提供する。一実施形態において、本発明は、分岐鎖アミノ酸(BCAA)、BCAA前駆体、BCAA代謝物、BCAAリッチタンパク質、BCAA含量が増加するように操作されたタンパク質、又はそれらの任意の組合せ、の有効量を個体に投与することを含む。本発明は、そのような投与のための栄養製品(例えば、経口投与可能な栄養製品)を更に提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
1.技術分野
本発明は、概して、哺乳類における筋肉損失の治療に関する。より詳細には、そのような筋肉損失の治療における、1つ又は2つ以上の分岐鎖アミノ酸(BCAA)、BCAA前駆体、BCAA代謝物、BCAAリッチタンパク質、BCAA含量が増加するように操作されたタンパク質、又はそれらの任意の組合せ、の投与に関する。本発明は更に、そのような投与に適した栄養製剤に関する。
【0002】
2.背景技術
アミノ酸は、タンパク質の単量体構成単位であり、タンパク質は、酵素、抗体、ホルモン、イオン若しくは小分子の輸送分子、コラーゲン及び筋組織を始めとする広範な生体化合物を構成する。アミノ酸は、水への溶解性、特に側鎖の極性に基づいて、疎水性又は親水性と見なされる。極性側鎖を有するアミノ酸は親水性であり、非極性側鎖を有するアミノ酸は疎水性である。アミノ酸の溶解性は、タンパク質の構造をある程度決定する。親水性アミノ酸は、タンパク質の表面を構成する傾向があり、疎水性アミノ酸は、タンパク質の、水に不溶性の内部を構成する傾向がある。
【0003】
通常の20種のアミノ酸のうち、9種は、人体が合成することができないことから、ヒトにおいて不可欠(必須)と考えられている。むしろ、これらの9種のアミノ酸は、個体が食事から得なければならない。1種又は複数のアミノ酸の欠乏は、負の窒素バランスをもたらす場合がある。負の窒素バランスとは、例えば、摂取されるよりも多くの窒素が排出されることである。このような状態は、酵素活性の喪失及び筋肉量の低下をもたらす可能性がある。
【0004】
多くの筋消耗状態について、アミノ酸サプリメントによる治療の有効性が判明している。例えば、悪液質は、著明な体重減少、食欲不振、無力症及び貧血を特徴とする重度の身体消耗状態である。悪液質は、癌、敗血症、慢性心不全、関節リウマチ及び後天性免疫不全症候群(AIDS)を始めとする多くの病気の共通の特徴である。他の筋消耗疾患及び障害としては、例えば、筋肉減少症、加齢に伴う筋肉量低下が知られている。
【0005】
タンパク質分解誘導因子(PIF):
特定の腫瘍が、タンパク質分解誘導因子(PIF)と呼ばれる24kDaの糖タンパク質の産生を介して悪液質を誘導する可能性があることが判明している。提唱されているPIFの作用機序の1つは、タンパク質合成を低下させることであり、提唱されているPIFの作用機序のもう1つは、タンパク質分解の活性化であり、提唱されている第3の機序は、上述のタンパク質合成の低下及びタンパク質分解の活性化の組合せである。PIFに関連するタンパク質合成の低下は、タンパク質合成の翻訳プロセスを阻害するPIFの能力によるものとの仮説が立てられている。もう1つの因子であるアンジオテンシンII(Ang II)は同様の作用を示すが、悪液質の一部の症例で観察される筋消耗に関与している可能性がある。
【0006】
ユビキチン−プロテアソーム経路におけるPIFの元々の役割は知られている。PIFは、アラキドン酸放出の増大を引き起こし、アラキドン酸は、プロスタグランジン及び15−ヒドロキシエイコサテトラエン酸(15−HETE)に代謝される。15−HETEは、タンパク質分解及び転写因子NF−κB(B細胞においてκ免疫グロブリン軽鎖遺伝子エンハンサーに結合する核因子)の核結合、の顕著な増大を引き起こすことが判明している。
【0007】
翻訳開始を介したタンパク質合成の制御:
タンパク質合成の阻害におけるPIFの役割は、下流因子のRNA依存性タンパク質キナーゼ(PKR)活性化を介して翻訳を阻害するという、PIFの理論的に裏付けられた能力によるものとの仮説が立てられている。PIFによるタンパク質合成の阻害は、生理学的濃度又はそれ以下の濃度のインスリンによって減弱される。インスリンは、翻訳開始におけるメッセンジャーRNA(mRNA)結合ステップの活性化を介してタンパク質合成を制御するので、上述のことは、PIFが翻訳開始段階でタンパク質合成を阻害する可能性があることを示唆する。
【0008】
翻訳の開始には、制御されるステップが2つある。それは、(1)開始メチオニン転移RNA(Met−tRNA)の、40sリボソームサブユニットへの結合、及び(2)mRNAの、43s前開始複合体への結合、である。
【0009】
第1のステップでは、Met−tRNAが、真核生物翻訳開始因子2(eIF2)及びグアノシン三リン酸(GTP)との三重複合体として40sリボソームサブユニットに結合する。次いで、eIF2に結合しているGTPが加水分解されてグアノシン二リン酸(GDP)となり、eIF2が、GDP−eIF2複合体としてリボソームサブユニットから放出される。eIF2は、新ラウンドの翻訳開始に参加するために、GDPをGTPと交換しなくてはならない。これは、eIF2でのグアニンヌクレオチド交換を媒介する別の真核生物翻訳開始因子、eIF2Bの作用を介して起こる。eIF2Bは、eIF2のαサブユニットでのリン酸化によって制御され、これにより、eIF2はeIF2Bの基質から競合阻害物質へと変換される。
【0010】
第2のステップでは、mRNAの43s前開始複合体への結合に、eIF4Fと総称されるタンパク質群、すなわち、eIF4A(RNAヘリカーゼ)、eIF4B(eIF4Aとともに機能して、mRNAの5’非翻訳領域の二次構造を巻き戻す)、eIF4E(mRNAの5’末端に存在するm7GTPキャップに結合する)、及びeIF4G(eIF4E、eIF4A及びmRNAの足場として機能する)、からなるマルチサブユニット複合体が必要となる。eIF4F複合体は共働して、mRNAを認識し、その折り畳みを解き、それを43s前開始複合体に導く。eIF4F複合体形成におけるeIF4Eの利用可能性は、翻訳抑制因子であるeIF4E結合タンパク質1(4E−BP1)によって制御されるようである。4E−BP1は、eIF4Gと競合してeIF4Eに結合し、eIF4Eを不活性複合体中に隔離することができる。4E−BP1の結合は、キナーゼである哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)によるリン酸化を介して制御され、リン酸化の増大は、4E−BP1のeIF4Eに対する親和性の低下を引き起こす。
【0011】
mTORは、ホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)/セリン/スレオニンキナーゼ経路(PI3K/AKT経路)のシグナル伝達を介した、結節性硬化症複合体(TSC)1−TSC2複合体のリン酸化及び阻害によって活性化されると考えられている。mTORはまた、p70S6キナーゼをリン酸化し、p70S6キナーゼはリボソームタンパク質S6をリン酸化し、リボソームタンパク質S6は、5’キャップ構造に隣接する一続きのピリミジン残基を有するmRNAの翻訳を促進する。このようなmRNAによってコードされるタンパク質としては、リボソームタンパク質、翻訳伸長因子及びポリA結合タンパク質が挙げられる。
【0012】
翻訳開始に関与するタンパク質同化因子:
多数の研究により、タンパク質同化因子(例えば、インスリン、インスリン様成長因子(IGF)、アミノ酸)は、タンパク質合成を増大させ、筋肥大を引き起こすことが示されている。分岐鎖アミノ酸(BCAA)、特にロイシンは、翻訳開始を調節するシグナル伝達経路を開始できる。このような経路は、しばしばmTORを含む。他の研究では、分裂促進物質(例えば、インスリン及びBCAA)は、eIF2を通じてシグナルを伝達することが示されている。アミノ酸欠乏は、eIF2−αのリン酸化の増大及びタンパク質合成の減少をもたらす。
【0013】
タンパク質合成及び分解に関与するシグナル伝達経路:
上述のように、PIFは、NF−κB経路を通じてタンパク質分解を誘導することが知られている。それ故、PIFによるタンパク質合成の阻害は、共通のシグナル伝達開始点を通じて起こり、次いで、2つの別々の経路に分岐し、一方は、NF−κBを通じてタンパク質分解を促進し、他方は、mTOR及び/又はeIF2を通じてタンパク質合成を阻害する、と考えるのが妥当である。
【0014】
AKTはセリン/スレオニンキナーゼであり、タンパク質キナーゼB(PKB)としても知られている。AKTの活性化は、PI3Kのイノシトール脂質産物の、プレクストリン相同ドメインへの直接結合を介して起こる。AKTのPI3K依存性活性化はまた、スレオニン308の、ホスホイノシチド依存性キナーゼ(PDK1)によるリン酸化を介して起こり、これは、セリン473の自己リン酸化をもたらす。最初は別々のシグナル伝達経路のコンポーネントとして作動すると考えられていたが、いくつかの研究により、NF−κB及びAKTシグナル伝達経路は合流することが示された。研究の結果、AKTシグナル伝達は、in vitroで、種々の細胞型においてアポトーシスを阻害し、これは、NF−κB活性化に関与するキナーゼであるIκKを含むアポトーシス制御コンポーネントをリン酸化する能力によって媒介されることが明らかとなった。したがって、AKTの活性化は、NF−κBの活性化を促進する。これは一連のシグナル伝達事象において、AKTをNF−κB活性化の上流に位置づけるものであるが、ある研究では、AKTがNF−κBの下流標的である可能性が報告されている。全体的にみれば、このことは、AKTが異化経路に関与していることを示唆する。しかし、AKTが、mTORの活性化と、その結果起こるp70S6キナーゼ及び4E−BP1のリン酸化と、を介して同化プロセスにも関与して、タンパク質合成の増大をもたらすことを示唆するデータもある。
【0015】
PKRは、抗ウイルス防御経路の制御を担うインターフェロン誘導性、RNA依存性セリン/スレオニンタンパク質キナーゼである。PKRは、インターフェロン以外の形態の細胞ストレスによって誘導される可能性がある。腫瘍壊死因子(TNF)−αもPKRを通じて作用することを示唆する証拠がいくつか存在する。興味深いことに、インターフェロン及びTNF−αはいずれも、悪液質状態の原因因子とされている。PKRは、活性化物質(例えば、インスリン、IGF、BCAA)との相互作用後に、ホモ二量体を形成して自己リン酸化することが報告されている。結果的に、PKRは、標的基質のリン酸化を触媒することができるが、ここで最も特徴的なのは、eIF2−αサブユニットでのセリン51のリン酸化である。そして、eIF2は、翻訳の律速コンポーネントであるeIF2Bを隔離して、タンパク質合成の阻害をもたらす。最近の研究では、PKRは、IκK複合体と物理的に結合しており、NF−κB誘導性キナーゼ(NIK)を刺激し、他方、IκKをリン酸化してその後の分解をもたらすことが示唆される。NF−κBが、eIF2キナーゼ活性とは独立の機序に基づいてPKRにより活性化されることを示唆する研究があり、他方、eIF2−αのリン酸化がNF−κBの活性化に必要であることを示す研究もある。
【0016】
PKR様ERキナーゼ(PERK)は、eIF2−αをリン酸化し、NF−κBを活性化するもう1つのキナーゼである。しかし、PERKは、NF−κBからのIκKの放出をもたらすが、その分解は引き起こさないので、PIFがこの経路を通じて作用するとは考えにくい。更に、PIFは、NF−κBの活性化の際のIκKの分解を引き起こすことが判明している。
【0017】
筋肉損失のための公知の治療法:
悪液質のような状態の治療は、多くの場合、タンパク質合成の増大を目的とした栄養補充、特にアミノ酸補充を含む。3種のBCAAは、バリン、ロイシン及びイソロイシンである。これまでに、ロイシンは、タンパク質構成単位としてだけではなく、翻訳開始を調節するシグナル伝達経路の誘導因子としても機能することが判明している。本発明者らの最新の研究では、3種のBCAAのすべてが、同程度に、タンパク質分解を低下させ、タンパク質翻訳を増大させる能力を有することが示唆される。
【0018】
悪液質は、アミノ酸補充が有効であることが判明している状態、障害及び疾患の1つにすぎない。アミノ酸補充はまた、糖尿病、高血圧症、血清コレステロール高値及びトリグリセリド高値、パーキンソン病、不眠、薬物及びアルコール嗜癖、疼痛、不眠、並びに低血糖を治療するためにも用いられている。BCAAの補充は、肝機能障害(肝硬変等)を含む肝臓障害;胆嚢疾患;舞踏病及びジスキネジア;並びに尿毒症を含む腎臓障害、の治療に特に使用されている。BCAA補充はまた、血液透析を受けている患者の治療においても奏功し、健康及び気分全般の改善をもたらすことが判明している。
【0019】
今日まで、アミノ酸による栄養補充を伴う治療を含めて、筋肉損失の治療は、筋肉同化の促進に重点を置いてきた。例えば、Verlaanらの米国特許出願公開第2004/0122097号には、筋肉組織の生成を促進するための、ロイシン及びタンパク質の両方を含有する栄養補助食品が記載されている。ロイシンの前駆体(例えば、ピルベート)及び代謝物(例えば、β−ヒドロキシ−β−メチルブチレート、α−ケトイソカプロエート)は、ロイシンと同様の特性を示す。注目すべきは、β−ヒドロキシ−β−メチルブチレートが、ヒトによって臨床的に十分な量は産生されず、そのため、補充しなくてはならない点である。
【0020】
タンパク質同化ホルモンであるインスリンは、大量投与された場合に、タンパク質合成を促進することができることが明らかとされている。したがって、公知の治療法は、筋肉損失に罹患した個体に筋肉組織の生成の増大を介して利益を提供するが、筋肉損失自体には影響を及ぼさない。すなわち、筋肉損失を治療する公知の方法は、筋肉異化の減少よりむしろ筋肉同化の増大のために行われている。
【0021】
骨格筋を構成するアミノ酸は、新参のアミノ酸(経腸ルート又は非経口ルートにより投与されたか、再循環されたもの)がタンパク質として貯蔵され、現存のタンパク質が分解される定常的な流動状態にある。筋肉量の低下は、タンパク質合成速度の低下(分解は正常)、分解増大(合成は正常)、又は合成減少及び分解増大の両方の進行、を始めとする多数の因子の結果生じたものである可能性がある。結果的に、合成増大を目的とする治療は、筋消耗疾患における問題の1/2に対処するにすぎない。
【0022】
そのため、当技術分野では、筋肉異化を減少させ、場合により、筋肉同化を増大させる、筋肉損失の治療方法への要求が存在する。
【発明の概要】
【0023】
本発明は、個体において筋肉損失を治療するための方法を提供する。一実施形態において、本発明は、分岐鎖アミノ酸(BCAA)、BCAA前駆体、BCAA代謝物、BCAAリッチタンパク質、BCAA含量が増加するように操作されたタンパク質、又はそれらの任意の組合せ、の有効量を個体に投与することを含む。本発明は、そのような投与のための栄養製品(例えば、経口投与可能な栄養製品)を更に提供する。
【0024】
第1の態様において、本発明は、個体における筋肉損失を治療する方法であって、分岐鎖アミノ酸(BCAA)、BCAA前駆体、BCAA代謝物、BCAAリッチタンパク質、又はBCAA含量が増加するように操作されたタンパク質、の少なくとも1種の有効量を個体に投与するステップを含み、BCAA、BCAA前駆体、BCAA代謝物、BCAAリッチタンパク質、及びBCAA含量が増加するように操作されたタンパク質、の少なくとも1種がタンパク質異化に拮抗する方法、を提供する。
【0025】
第2の態様において、本発明は、分岐鎖アミノ酸(BCAA)、BCAA前駆体、BCAA代謝物、BCAAリッチタンパク質、又はBCAA含量が増加するように操作されたタンパク質、の少なくとも1種を含み、BCAA、BCAA前駆体、BCAA代謝物、BCAAリッチタンパク質、及びBCAA含量が増加するように操作されたタンパク質、の少なくとも1種がタンパク質異化に拮抗する、経口投与可能な栄養製品を提供する。
【0026】
本発明の具体的な態様は、本明細書に記載されている問題、及び論じられてはいないが、当業者によって発見可能なその他の問題を解決することを目的としている。
【0027】
本発明のこのような特徴は、本発明の種々の実施形態を示す添付の図面と併用される、本発明の種々の態様に関する以下の詳細な説明からより容易に理解される。
【0028】
本発明の図面は正確な縮尺で表したものでないことに留意されたい。図面は、本発明の典型的な態様のみを表すものであり、それ故、本発明の範囲を制限するものとみなされるべきではない。
【詳細な説明】
【0029】
上述のように、本発明は、個体における筋肉損失の治療のための方法及び関連製品を提供する。より具体的には、本発明の方法及び製品は、筋肉異化、特に、タンパク質分解誘導因子(PIF)媒介性筋肉異化を減少させる。
【0030】
本明細書において、「治療」及び「治療する」という語は、疾病を患う危険性があるか、疾病を患っていると疑われる患者、並びに病気の患者、又は疾病若しくは医学的症状を患っていると診断された患者、の治療を含む、予防的又は防止的治療及び治癒的又は疾患修飾的治療の両方を指す。「治療」及び「治療する」という語はまた、疾病を患っていないが、窒素不均衡、筋肉損失等の非健康的な状態を発現しやすい個体における健康の維持及び/又は促進を指す。それ故、「有効量」とは、個体において疾病又は医学的症状を治療する量であり、より一般的には、個体に栄養的、生理的又は医学的な利益を提供する量である。治療は、患者又は医師に関連したものであり得る。更に、「個体」及び「患者」という語は、本明細書において、多くの場合、ヒトを指すのに用いられるが、本発明はそれに限定されない。つまり、「個体」及び「患者」という語は、筋肉損失等の医学的症状を患っているか、その危険性のある任意の哺乳類を指す。
【0031】
実験データ:
筋肉異化の減少における、分岐鎖アミノ酸(BCAA)及びその他の物質の効力を調べるために、マウスC12筋管を、アミノ酸(BCAAを含む)、インスリン、インスリン様成長因子−1(IGF−1)及びPKR阻害剤と組み合わせた、PIF又はアンジオテンシンIIに曝露した。PIFは、Smithら,Effect of a Cancer Cachectic Factor on Protein Synthesis/Degradation in Murine C2C12 Myoblasts:Modulation by Eicosapentaenoic Acid,Cancer Research,59:5507〜13頁(1999)(参照されることにより本明細書に組み込まれる。)に記載の方法で、MAC16腫瘍から抽出し、精製した。タンパク質分解は、Whitehouseら,Increased Expression of the Ubiquitin−Proteasome Pathway in Murine Myotubes by Proteolysis−inducing Factor(PIF) is Associated with Activation of the Transcription Factor NF−κB,British Journal of Cancer,89:1116〜22頁(2003)(参照されることにより本明細書に組み込まれる。)に記載の方法を用いて測定した。
【0032】
図1は、濃度を増大させた場合の、PIFによる、タンパク質合成の抑制を示すグラフである。タンパク質合成の抑制は、1分当たりカウント(CPM)(PIFを含まない対照(control)に対するパーセントで示す。)で測定されている。タンパク質合成の有意な低下が認められ、タンパク質合成の最大抑制は4.2nMのPIF濃度で生じている。測定されたPIFのタンパク質分解活性は、より具体的には、ユビキチン様分解活性と呼ぶことができる。
【0033】
図2は、PIF、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン及びアルギニン(これらは、単独で、又はPIFと組み合わせて用いる。)とともにインキュベートされたC12筋管におけるリン酸化eIF2−αのウエスタンブロットのデンシトメトリー分析の結果を示すグラフである。対照サンプルは、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中でのみインキュベートした。図2に示されるように、PIFは、対照と比較して、eIF2−αのリン酸化を有意に増大させる。各アミノ酸は、PIF単独の場合と比較して、PIFの存在下でeIF2−αリン酸化を低下させた。しかし、BCAA(すなわち、ロイシン、イソロイシン及びバリン)は、このようなリン酸化を、ほぼ対照のレベル又はそれより低いレベルまで低下させ、他方、メチオニン誘導性リン酸化及びアルギニン誘導性リン酸化のレベルは対照より高かった。驚くべきことに、タンパク質合成を高めることを目的とする公知の治療法(ロイシンはその他のBCAAより高い効力を示す。)とは異なり、eIF2−αのPIF誘導性リン酸化の低下においては、すべてのBCAAがほぼ同等に有効であることを、これらのデータは示している。実際、イソロイシン及びバリンとのインキュベーションにより生じたリン酸化レベルは、ロイシンとのインキュベーションについて観察されたものと異ならなかった。
【0034】
図3は、インスリン及びIGF−1(これらは、単独で、又はPIFと組み合わせて用いる。)のインキュベーションを含む同様の実験の結果を示す図である。インスリン及びIGF−1はいずれも、PIF単独の場合と比較して、PIFの存在下でeIF2−αリン酸化を有意に低下させた。したがって、BCAAの、PIF媒介性タンパク質分解を低下させる能力は、インスリン及び/又はIGF−1の添加によって、又はインスリン及び/又はIGF−1のレベルを増大させる処置によって補完又は増強することができる。
【0035】
図4は、PIF誘導性タンパク質分解の低下及びタンパク質合成の増大のいずれにも有用なPKR阻害剤(PKR阻害の陽性対照として用いた。)の構造を示す。図5〜8は、PIF又はアンジオテンシンIIのいずれかと組み合わせたPKR阻害剤のインキュベーションを含む実験の結果を示す。図5には、PIFが、単独でインキュベートされた場合にタンパク質分解を最大87%増大させ、PKR阻害剤の添加がタンパク質分解レベルをほぼ対照のレベルにまで戻したことが示されている。同様に、図6には、PIFが、単独でインキュベートされた場合にタンパク質合成を最大約25%低下させ、PKR阻害剤の添加がタンパク質合成レベルをほぼ対照のレベルにまで戻したことが示されている。
【0036】
図7及び8は、アンジオテンシンIIとともにPKR阻害剤をインキュベーションした際の同様の結果を示す。図7では、アンジオテンシンは、対照と比較して、タンパク質分解を最大約51%増大させた。PKR阻害剤の添加はこの傾向を逆転させ、タンパク質分解レベルをほぼ対照のレベルに維持させた。同様に、図8では、アンジオテンシンIIは、対照と比較して、タンパク質合成を約40%低下させたが、PKR阻害剤の添加は、タンパク質合成レベルをほぼ対照のレベルで維持された。
【0037】
PKR阻害剤は、タンパク質分解及びタンパク質合成のいずれにおいても、PIF及びアンジオテンシンIIの作用を減弱した。このことは、PIF及びアンジオテンシンIIは、同様の機序を介して、また、恐らくはPKRを含む共通のメディエーターを通じてその作用を発現することを示唆する。より具体的には、これらの結果は、PIFがPKRを活性化し、次いで、これが、eIF2−αのリン酸化を引き起こし、開始メチオニンtRNA(Met−tRNA)の40sリボソームサブユニットへの結合を阻害することを示唆する。BCAA、インスリン及びIGF−1は、PIFに起因するeIF2−αのリン酸化を減弱するが、このことは、PIFがeIF2−αのリン酸化をアップレギュレートしてタンパク質合成を阻害するという仮説を更に支持する。PKRはタンパク質合成を阻害し、NF−κBを活性化することができ、これがタンパク質分解をもたらすので、PKRは恐らく、PIFのシグナル伝達経路における初期コンポーネントである。
【0038】
また、PKRが4E−BP1リン酸化の制御に関与しているという証拠がある。したがって、PIFがPKRを通じてシグナルを伝達するとすれば、PIFが、セリン/スレオニンホスファターゼPP2AのPKRによる活性化を介してタンパク質合成を低下させ、これが、4E−BP1の脱リン酸化を引き起こし、これが今度は、eIF4Eを不活性複合体中に隔離して、43s前開始複合体の形成を妨げるということもあり得る。
【0039】
図9は、別の機序を示す図である。タンパク質分解誘導因子(PIF)及びアンジオテンシンII(Ang II)は、タンパク質合成を40%低下させ、タンパク質合成の抑制において最も効果的な両物質の濃度は、タンパク質分解の誘導において最も効果的な濃度と同じである。この結果は、インスリン及びIGF1がいずれも、少なくとも部分的に、PKR及び/又はeIF2αリン酸化の阻害を介してPIFによって誘導されるタンパク質分解を減弱することを示唆する。PIF及びAng IIによる活性化の機序は、PKRの細胞性タンパク質アクチベーターであるPACT(インターフェロン誘導性タンパク質キナーゼのタンパク質アクチベーター)を介したものである可能性がある(もっとも、PIFはポリアニオン性分子であり、そのため、直接的な活性化を行うこともできる)。そうではあるが、PKR阻害剤がタンパク質合成に対する両物質の阻害作用を減弱したことから、PIF及びAng IIによるeIF2αのリン酸化は、PKRを通じて起こるものと考えられる。タンパク質翻訳に対するPIF及びAng IIの作用は、eIF2αのリン酸化の増大に起因するものと思われる。
【0040】
腫瘍壊死因子−α(TNF−α)によるアポトーシスにおけるタンパク質合成の阻害もまた、eIF2αのリン酸化の増大と関連する。PIF及びAng IIによるタンパク質合成の阻害におけるeIF2αリン酸化の役割に関する更なる根拠が、インスリン及びIGF1(これらは、タンパク質合成の阻害の抑制において有効であった。)がいずれも、eIF2αリン酸化の誘導を完全に減弱したという知見によって提供される。集められたデータは、BCAAがまた、PIFによって開始される分解経路を阻害するように、同様の機序を介して働くことを示唆する。この研究は、PKRの活性化及びeIF2αリン酸化を介した、PIF(及びAng II)による骨格筋におけるタンパク質合成の抑制と、ユビキチン−プロテアソームタンパク質分解経路の発現及び活性の増大をもたらすNF−κBの活性化を介した、筋原線維タンパク質ミオシンの分解の増大と、の関係についての第1の証拠を提供するものである。これは、PKRを標的とする物質(例えば、BCAA)が、癌悪液質における筋萎縮の治療において有効である可能性があることを示唆する。
【0041】
図10は、更に別の機序を示す図である。前述のように、タンパク質分解誘導因子(PIF)及びアンジオテンシンII(Ang II)は、PKR及び/又はeIF2αのリン酸化を介してタンパク質分解を増大させる。NF−κBは、NF−κBの放出を介して生じる、PIF又はPIFの下流メディエーター(PKR及び/又はeIF2α)によって活性化される可能性がある。この更に別の機序において、NF−κBは、同様のリン酸化カスケードの一部をなすものではない(もっとも、同様の標的を有し、分解されるタンパク質へのユビキチンタグの付加を促進する)。
【0042】
まとめると、上述のデータは、本発明の多くの新規態様を支持する。第1に、BCAAは、PIF及び/又はアンジオテンシンIIにより媒介されるタンパク質異化に、PKR及び/又はeIF2αの活性化の阻害を介して拮抗することによって、個体における筋肉損失の治療に使用することができる。第2に、各BCAAは、そのような拮抗作用において同等に有効である。第3に、インスリン、IGF−1及び/又はPKR阻害剤の同時投与、或いはインスリン及びIGF−1のいずれか又は両方のレベルを高める処置の使用は、タンパク質異化への更なる拮抗、タンパク質合成の増大、又はその両方、によってBCAA治療の効果を増大させる。
【0043】
それ故、本発明の栄養製品は、BCAAを単独で含有してもよいし、また、インスリン、IGF−1及び/又はPKR阻害剤とともに含有してもよい。BCAAは、遊離形、ジペプチド、トリペプチド、ポリペプチド、BCAAリッチタンパク質、及び/又はBCAA含量が増加するように操作されたタンパク質、として投与することができる。ジペプチド、トリペプチド及びポリペプチドは、2つ以上のBCAAを含んでもよい。ジペプチド、トリペプチド又はポリペプチドに非BCAAが含まれる場合は、好ましいアミノ酸として、例えばアラニン及びグリシンが挙げられるが、非BCAAは、可欠又は不可欠(必須又は非必須)アミノ酸のいずれであってもよい。好ましいジペプチドとしては、これらに限定されないが、例えば、アラニル−ロイシン、アラニル−イソロイシン、アラニル−バリン、グリシル−ロイシン、グリシル−イソロイシン、及びグリシル−バリンが挙げられる。
【0044】
本発明の栄養製品は、BCAAに加えて、又はBCAAの代わりに、BCAAの前駆体及び/又は代謝物、特にロイシンの前駆体及び/又は代謝物、を含んでもよい。このような製品は、種々の追加成分(例えば、タンパク質、繊維、脂肪酸、ビタミン、ミネラル、糖、炭水化物、香味料、薬物及び治療薬)を更に含んでもよい。
【0045】
本発明の栄養製品は、経口的に、又は栄養チューブを通じて、又は非経口的に投与することができる。このような製剤は、種々の筋消耗疾患、障害若しくは状態、又は筋肉損失と関連する任意の疾患、障害若しくは状態、例えば、悪液質;癌;腫瘍に起因する体重減少;敗血症;慢性心不全;関節リウマチ;後天性免疫不全症候群(AIDS);筋肉減少症;糖尿病;高血圧症;血清コレステロール高値;トリグリセリド高値;パーキンソン病;不眠;薬物嗜癖;アルコール嗜癖;疼痛;不眠;低血糖;肝硬変を含む肝機能障害;胆嚢疾患;舞踏病;ジスキネジア;及び尿毒症を含む腎障害、を患っている個体の治療に使用可能である。
【0046】
本発明の様々な態様に関する以上の説明は、例示及び説明目的で提示されたものである。これは、網羅的であること、又は本発明を、開示された正確な形に限定すること、を意図したものではない。多くの修飾及び変形が可能であるのは明らかである。当業者には明らかと思われるこのような修飾及び変形は、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲に包含されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】種々の濃度のタンパク質分解誘導因子(PIF)による、タンパク質合成の抑制を示すグラフである。
【図2】eIF2−αのリン酸化に対するアミノ酸の作用を示すグラフである。
【図3】eIF2−αのリン酸化に対するインスリン及びインスリン様成長因子1(IGF)の作用を示すグラフである。
【図4】本発明で使用するのに適したRNA依存性タンパク質キナーゼ(PKR)阻害剤の構造を示す図である。
【図5】PIFのタンパク質分解活性に対する、図4のPKR阻害剤の作用を示すグラフである。
【図6】PIFにより媒介されるタンパク質合成低下を無効にする、図4のPKR阻害剤の作用を示すグラフである。
【図7】アンジオテンシンIIのタンパク質分解活性に対する、図4のPKR阻害剤の作用を示すグラフである。
【図8】アンジオテンシンIIにより媒介されるタンパク質合成低下を無効にする、図4のPKR阻害剤の作用を示すグラフである。
【図9】タンパク質分解誘導因子(PIF)により引き起こされ、分岐鎖アミノ酸、インスリン及びIGF−1により阻害されるタンパク質分解の別の機序を示す図である。
【図10】PKR及びeIF2αの活性化を介してタンパク質分解誘導因子(PIF)により引き起こされ、分岐鎖アミノ酸、インスリン及びIGF−1により阻害されるタンパク質分解の更に別の機序を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体における筋肉損失を治療する方法であって、
分岐鎖アミノ酸(BCAA)、
BCAA前駆体、
BCAA代謝物、
BCAAリッチタンパク質、又は
BCAA含量が増加するように操作されたタンパク質、
の少なくとも1種の有効量を個体に投与するステップを含み、
BCAA、BCAA前駆体、BCAA代謝物、BCAAリッチタンパク質、及びBCAA含量が増加するように操作されたタンパク質、の少なくとも1種がタンパク質異化に拮抗する方法。
【請求項2】
投与ステップが、複数のBCAAを投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
BCAAが、ロイシン、イソロイシン及びバリンからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
BCAA、BCAA前駆体、BCAA代謝物、BCAAリッチタンパク質、又はBCAA含量が増加するように操作されたタンパク質、の少なくとも1種がタンパク質合成を促進する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
BCAAを、ジペプチド、トリペプチド、ポリペプチド、又はBCAAに富むペプチド、の少なくとも1種として投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ジペプチドが、2つの分岐鎖アミノ酸を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ジペプチド、トリペプチド又はポリペプチドが、少なくとも1つの可欠又は不可欠アミノ酸を含み、少なくとも1つの不可欠アミノ酸がBCAAである、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
ジペプチドが、アラニン及びグリシンの一方を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
ジペプチドが、アラニル−ロイシン、アラニル−イソロイシン、アラニル−バリン、グリシル−ロイシン、グリシル−イソロイシン、及びグリシル−バリン、からなる群より選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
トリペプチドが、少なくとも2つのBCAAを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
BCAA前駆体がピルベートを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
BCAA代謝物が、β−ヒドロキシ−β−メチルブチレート及びβ−ケトイソカプロエートからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
個体に、インスリン及びインスリン様成長因子1(IGF−1)の少なくとも一方を投与するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
個体に、RNA依存性プロテインキナーゼ(PKR)阻害剤を投与するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
PKR阻害剤が下記構造を有する、請求項14に記載の方法。
【化1】

【請求項16】
インスリン及びIGF−1の少なくとも一方のレベルを高めるように個体を処置するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
BCAA、BCAA前駆体、BCAA代謝物、BCAAリッチタンパク質、又はBCAA含量が増加するように操作されたタンパク質、の少なくとも1種を、経口投与可能な栄養製品の形態で投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
経口投与可能な栄養製品が、タンパク質、繊維、脂肪酸、ビタミン、ミネラル、糖、炭水化物、香味料、薬物及び治療薬の少なくとも1種を更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
BCAA、BCAA前駆体、BCAA代謝物、BCAAリッチタンパク質、又はBCAA含量が増加するように操作されたタンパク質、の少なくとも1種を、栄養チューブを通じて投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
BCAA、BCAA前駆体、BCAA代謝物、及び少なくとも1つのBCAAを含むジペプチド若しくはトリペプチド、の少なくとも1種を非経口的に投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
タンパク質異化が、
(a)タンパク質分解誘導因子(PIF)、
(b)アンジオテンシンII、
(c)PKR、
(d)eIF2α、又は
(e)それらの組合せ、
によって直接的又は間接的に媒介される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
個体が、悪液質;癌;腫瘍に起因する体重減少;敗血症;慢性心不全;関節リウマチ;後天性免疫不全症候群(AIDS);筋肉減少症;糖尿病;高血圧症;血清コレステロール高値;トリグリセリド高値;パーキンソン病;不眠;薬物嗜癖;アルコール嗜癖;疼痛;不眠;低血糖;肝硬変を含む肝機能障害;胆嚢疾患;舞踏病;ジスキネジア;及び尿毒症を含む腎障害、の少なくとも1種を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
分岐鎖アミノ酸(BCAA)、
BCAA前駆体、
BCAA代謝物、
BCAAリッチタンパク質、又は
BCAA含量が増加するように操作されたタンパク質、
の少なくとも1種を含み、
BCAA、BCAA前駆体、BCAA代謝物、BCAAリッチタンパク質、及びBCAA含量が増加するように操作されたタンパク質、の少なくとも1種がタンパク質異化に拮抗する栄養製品。
【請求項24】
複数のBCAAを含む、請求項23に記載の製品。
【請求項25】
BCAAがロイシン、イソロイシン及びバリンからなる群より選択される、請求項23に記載の製品。
【請求項26】
BCAA、BCAA前駆体、BCAA代謝物、BCAAリッチタンパク質、又はBCAA含量が増加するように操作されたタンパク質、の少なくとも1種が更に、タンパク質合成を促進する、請求項23に記載の製品。
【請求項27】
BCAAが、ジペプチド、トリペプチド又はポリペプチドの少なくとも1種として投与される、請求項23に記載の製品。
【請求項28】
ジペプチドが、2つの分岐鎖アミノ酸を含む、請求項27に記載の製品。
【請求項29】
ジペプチド、トリペプチド又はポリペプチドが、少なくとも1つの可欠又は不可欠アミノ酸を含み、少なくとも1つの不可欠アミノ酸がBCAAである、請求項27に記載の製品。
【請求項30】
ジペプチドが、アラニン及びグリシンの一方を含む、請求項27に記載の製品。
【請求項31】
ジペプチドが、アラニル−ロイシン、アラニル−イソロイシン、アラニル−バリン、グリシル−ロイシン、グリシル−イソロイシン、及びグリシル−バリン、からなる群より選択される、請求項27に記載の製品。
【請求項32】
トリペプチドが、少なくとも2つのBCAAを含む、請求項27に記載の製品。
【請求項33】
BCAA前駆体がピルベートを含む、請求項23に記載の製品。
【請求項34】
BCAA代謝物が、β−ヒドロキシ−β−メチルブチレート及びβ−ケトイソカプロエートからなる群より選択される、請求項23に記載の製品。
【請求項35】
インスリン及びインスリン様成長因子1(IGF−1)の少なくとも一方を更に含む、請求項23に記載の製品。
【請求項36】
RNA依存性プロテインキナーゼ(PKR)阻害剤を更に含む、請求項23に記載の製品。
【請求項37】
PKR阻害剤が下記構造を有する、請求項36に記載の製品。
【化2】

【請求項38】
タンパク質、繊維、脂肪酸、ビタミン、ミネラル、糖、炭水化物、香味料、薬物及び治療薬の少なくとも1種を更に含む、請求項23に記載の製品。
【請求項39】
タンパク質異化が、
(a)タンパク質分解誘導因子(PIF)、
(b)アンジオテンシンII、
(c)PKR、
(d)eIF2α、又は
(e)それらの組合せ、
によって直接的又は間接的に媒介される、請求項23に記載の製品。
【請求項40】
経口的に、又は栄養チューブを通じて投与することが可能な、請求項23に記載の製品。
【請求項41】
BCAA、BCAA前駆体、BCAA代謝物、及び少なくとも1つのBCAAを含むジペプチド若しくはトリペプチド、の少なくとも1種が非経口的に投与される、請求項23に記載の製品。
【請求項42】
分岐鎖アミノ酸(BCAA)、
BCAA前駆体、
BCAA代謝物、
BCAAリッチタンパク質、及び
BCAA含量が増加するように操作されたタンパク質、
の少なくとも1種の有効量の、それから利益を得ることが可能な個体への投与であって、
BCAA、BCAA前駆体、BCAA代謝物、BCAAリッチタンパク質、及びBCAA含量が増加するように操作されたタンパク質、の少なくとも1種がタンパク質異化に拮抗する投与。
【請求項43】
個体が、悪液質;癌;腫瘍に起因する体重減少;敗血症;慢性心不全;関節リウマチ;後天性免疫不全症候群(AIDS);筋肉減少症;糖尿病;高血圧症;血清コレステロール高値;トリグリセリド高値;パーキンソン病;不眠;薬物嗜癖;アルコール嗜癖;疼痛;不眠;低血糖;肝硬変を含む肝機能障害;胆嚢疾患;舞踏病;ジスキネジア;及び尿毒症を含む腎障害、の少なくとも1種を有する、請求項42に記載の投与。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−517473(P2009−517473A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543378(P2008−543378)
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/045497
【国際公開番号】WO2007/064618
【国際公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】