説明

筋肉疲労度測定装置

【課題】非侵襲的な測定装置による手軽な測定で、その人間の筋肉疲労度等の情報を得ること。
【解決手段】本発明の筋肉疲労度測定装置は、体重を測定する重量計測手段と、身体の一部に振動を与える振動手段と、身体を伝達した振動を身体の他部にて検出する検出手段と、検出した振動と測定した体重とに基づいて身体の筋肉の特性を解析して報知する解析手段とを備えた。身体の一方の足の踵に振動を与え、他方の足の踵から振動を検出する。解析手段は、検出手段で検出した振動信号をフーリエ解析する第1演算部と、この演算結果と重量計測手段で測定した重量信号とに基づいて筋肉硬度を解析する第2演算部とから構成する。第2演算部では、フーリエ解析結果と重量信号と筋肉硬度との関係を、回帰分析によって予め求めておき、測定した振動によるフーリエ解析結果と重量信号とに基づいて、関係を参照して筋肉硬度を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間等の動物に関して、その筋肉疲労度等の筋肉の特性を測定する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、人間等の筋肉疲労度は筋肉硬度に関連していることが知られているので、筋肉硬度を測定することによって、筋肉疲労度を知ることが可能である。
筋肉疲労度を測定する技術としては、筋肉の2点間の電位差を検出し、FFT演算を行って周波数パワースペクトル分布に変換して筋肉疲労度合いを求める装置が開示されている。(特許文献1参照)
また、マッサージ器におけるマッサージ強度を制御するために筋肉の振動を測定するものがあるが、マッサージ部分の振動を測定するだけである。
【0003】
【特許文献1】特開2003−169782号公報 特許請求の範囲他
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上述した特許文献1に記載の技術は、身体に電極を取り付ける必要があるので、測定が簡便ではないという問題があり、マッサージ器のものは、マッサージ強度を制御するためのものであって、筋肉の特性を人間が直接認知可能な情報として画面表示、印刷、音声出力等のように報知するものではない。
また、これらの公知の技術を用いて測定結果を報知するように構成したと仮定しても、測定を繰り返すことによって、個々の人間における筋肉特性の相対的な変化は知ることができても、1回の測定で、その人間の筋肉の客観的な状態を知ることはできなかった。
【0005】
過度の筋肉疲労は2次弊害を起こすことが言われており、一般家庭等においても、日々のきめこまやかなケアが大切である。しかし、筋肉硬度計や乳酸値測定器などは専門知識を必要とするとともに、非常に高価であるので、一般家庭には普及することは難しい。
しかも、筋硬度計は、局所的な測定であり、脚全体の筋硬度を一元的に測定することはできない。また、乳酸値測定器等は血液を採取する必要が有り、毎日測定するには適していない。
そこで、本発明は、非侵襲的な測定装置による1回の手軽な測定でも、その人間の筋肉疲労度等の情報を客観的な測定値として得ることのできる技術を提案することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる請求項1の筋肉疲労度測定装置においては、
体重を測定する重量計測手段と、身体の一部に振動を与える振動手段と、前記身体を伝達した振動を身体の他部にて検出する検出手段と、前記検出した振動と前記測定した体重とに基づいて身体の筋肉の特性を解析して報知する解析手段とを備えている。
請求項2では、
前記振動手段は、身体の一方の足の踵に振動を与えるように構成され、前記検出手段は、身体の他方の足の踵から振動を検出するように構成されている。
請求項3では、
前記解析手段は、前記検出手段で検出した振動信号をフーリエ解析する第1演算部と、
該第1演算部での演算結果と前記重量計測手段で測定した重量信号とに基づいて筋肉硬度を解析する第2演算部とから構成されている。
請求項4では、
前記第2演算部は、フーリエ解析結果と重量信号と筋肉硬度との関係を、回帰分析によって予め求めておき、測定した振動によるフーリエ解析結果と重量信号とに基づいて、前記関係を参照して筋肉硬度を得る。
請求項5では、
前記振動手段にて発生させる振動は、ほぼ一定振幅で0Hz〜2000Hzまでスイープする低周波信号、一定周波数のパルス信号、ホワイトノイズ信号、もしくはピンクノイズ信号の少なくとも何れか1つの信号に基づいた振動である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の筋肉疲労度測定装置によれば、専門知識を必要としない安価な装置で、脚全体の筋肉疲労度を測定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明にかかる筋肉疲労度測定装置を、その実施の形態を示した図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明にかかる筋肉疲労度測定装置の正面図、図2は内部の概略配置図、図3はブロック図である。
各図において、
10は筋肉疲労度測定装置であり、その筐体11の上には踏台12がかぶさるように配設されている。そして、前記踏台12の上面には振動発振部8と振動受振部5とが配設されている。また、前記踏台12と筐体11の間には、踏台12にかかる体重を測定するための体重センサ61が配設されている。また、前記踏台12の上面の前記振動受振部5と振動発振部8とに干渉しない位置(例えば、中央から離れた部分)に、身長、性別、年齢層等の情報を入力する入力部2と、入力された情報や、体重、筋肉疲労度等の測定値を表示する表示部1とが配設されている。
【0009】
前記踏台12の下の筐体11の内部空間には、前記体重センサ61から入力される体重信号に基づいた体重を前記表示部1に表示させる体重測定回路6と、前記振動発振部8を駆動して所定の振動を発生させるための発振装置7と、前記振動受振部5にて検出した振動信号をFFT(高速フーリエ変換)するFFT演算回路4と、前記演算回路4から出力される周波数分布特性を、身長、性別、年齢等の違いに応じて予め設定されている疲労度変換データと対比させて、筋肉疲労度を得て、前記表示部1に表示させる筋肉疲労度演算回路3とが設置してある。
【0010】
前記発振装置7においては、前記FFT演算回路4からの指令に基づいて所定のタイミングで、0Hz〜2000Hzまでのスイープ信号もしくはホワイトノイズ信号が発生されて、前記振動発振部8に供給される。
このとき、前記振動発振部8で発生した振動は、測定者の一方の足の踵から下肢に伝達して他方の足にも伝達する。そこで、他方の足の踵に伝達した振動を前記振動受振部5で検出する。 そして、前記振動受振部5で検出した振動は、前記FFT演算回路4でフーリエ変換され、前記筋肉疲労度演算回路3で演算されて筋肉疲労度が得られる。
【0011】
この筋肉疲労度演算回路3には、予め、幅広い年齢層、性別、体重別、体格別の多数の被験者を対象にして筋肉疲労度を測定し、振動受振部5で検出する振動の周波数分布特性と筋硬度計での測定値との間の相関関係を、年齢層別、性別、体重別、体格別に回帰分析等の統計手法を用いて解析し、年齢層、性別、体重別、体格別の検量線(変換関数)が組み込まれている。
図5は、検出される振動の強度(振幅)と周波数分布特性との関係が、性別によって異なることを示す図である。このことから、測定者の年齢だけでなく、性別を入力することも重要であることが明らかである。
【0012】
測定者の年齢層、性別、身長等を前記入力部2から入力する。
なお、一度入力した測定者の年齢層、性別、身長等の情報はメモリに保存できるので、次回からはメモリから読み出すだけで入力する必要はない。
そして、前記体重センサで測定した体重データとに基づいて、所定の検量線が選択され、FFT変換によって得られた周波数分布特性に基づいて筋肉疲労度が得られるのである。
【0013】
次に、本発明の筋肉疲労度測定装置による筋肉疲労度測定手順を図4のフローチャートを参照して説明する。
図4に示したように、
計測スタートすると、ステップS1で測定者の身長・性別等の情報を測定者等が入力部2を操作して入力する。
ステップS2では、体重を測定し一時的にメモリに記憶しておく。
ステップS3では、振動発振部を駆動して振動を発振し、測定者の足の裏から振動を与える。
ステップS4では、前記与えられた振動が測定者の下肢を経由して振動受振部に伝達したものを検出する。
ステップS5では、前記検出した振動をフーリエ変換して周波数分布特性を得て、ステップS6では、予め設定された検量線(変換関数)に基づいて筋硬度を得る。
ステップS7では、得られた筋硬度を回帰分析して筋肉疲労度を得る。
ステップS8では、得られた筋硬度もしくは筋肉疲労度の両方もしくは何れか一方を表示する。
以上の手順において、ステップS1のみが人為的な操作を要するものであって、他は自動的に進行して測定されて表示されるのである。
【0014】
図6は、同一被験者における筋肉の緊張時(筋肉疲労度が大きい時)と弛緩時(筋肉疲労度が小さい時)によって、周波数分布特性が異なることを示す図である。
本発明の筋肉疲労度測定装置のために、予め、図6のようなデータを多数得て、周波数分布特性とそのときの筋肉疲労度との相関関係を得ておき、その相関関係を筋肉疲労度演算回路3に設定しておく。
図6に示されているように、筋肉が緊張すると、弛緩時の周波数分布特性と比較して、分布パターン(曲線)が全体的に周波数が低い側へシフトしていることが分かる。緊張すると筋肉は硬くなり、弛緩すると筋肉は柔らかくなるからである。このことから、周波数分布特性から筋肉の硬さを測定することができるのである。
また、筋肉は疲労すると硬くなることが分かっているので、筋肉の硬さと体感する筋肉疲労度との関係のデータから、筋硬度と筋肉疲労度との検量線を作成し、0Hz〜2000Hzまでフーリエ解析したデータをPLS解析(最小二乗分析)して筋肉疲労度を算出する。このようにして得られた検量線による筋肉疲労度と筋硬度とは、図7に示したように、非常に強い相関関係にある(相関係数=0.99)ことが示されている。
従って、本発明の筋肉疲労度測定装置によって、高精度で筋肉疲労度を測定することが可能となるのである。
【0015】
なお、測定者の身体の一部に振動を与えるために振動発振部を設けたが、この振動発振部は、空気層を介して音波等で振動を与える等のように、身体と非接触で振動を与えるものでもよい。
また、筋肉疲労度と体重とともに、身体インピーダンスを測定して、体脂肪も測定してもよい。
さらに、身体の下肢に限らず、他の部位の筋肉の疲労度を測定するようにしてもよい。例えば、一方の手先から振動を与えて、その肩で振動を検出するように構成して、腕の筋肉の疲労度を測定するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明にかかる筋肉疲労度測定装置の実施の形態の構成を示した正面図である。
【図2】前記筋肉疲労度測定装置の内部配置図である。
【図3】前記筋肉疲労度測定装置のブロック図である。
【図4】前記筋肉疲労度測定装置の測定手順を示すフローチャートである。
【図5】検出される振動の強度(振幅)と周波数分布特性との関係の性差を示す図である。
【図6】同一被験者における筋肉の緊張時(筋肉疲労度が大きい時)と弛緩時(筋肉疲労度が小さい時)による周波数分布特性の差異を示す図である。
【図7】相関特性を示す図である。
【符号の説明】
【0017】
10 筋肉疲労度測定装置
1 表示部
2 入力部
3 筋肉疲労度演算回路
4 FFT演算回路
5 振動受振部
6 体重測定部
61 体重センサ
7 発振装置
8 振動発振部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体重を測定する重量計測手段と、
身体の一部に振動を与える振動手段と、
前記身体を伝達した振動を身体の他部にて検出する検出手段と、
前記検出した振動と前記測定した体重とに基づいて身体の筋肉の特性を解析して報知する解析手段と、
を備えていることを特徴とする筋肉疲労度測定装置。
【請求項2】
前記振動手段は、身体の一方の足の踵に振動を与えるように構成され、
前記検出手段は、身体の他方の足の踵から振動を検出するように構成され、
ていることを特徴とする請求項1に記載の筋肉疲労度測定装置。
【請求項3】
前記解析手段は、前記検出手段で検出した振動信号をフーリエ解析する第1演算部と、
該第1演算部での演算結果と前記重量計測手段で測定した重量信号とに基づいて筋肉硬度を解析する第2演算部とから構成されていることを特徴とする請求項1、2の何れか1項に記載の筋肉疲労度測定装置。
【請求項4】
前記第2演算部は、
フーリエ解析結果と重量信号と筋肉硬度との関係を、回帰分析によって予め求めておき、測定した振動によるフーリエ解析結果と重量信号とに基づいて、前記関係を参照して筋肉硬度を得る
ことを特徴とする請求項3に記載の筋肉疲労度測定装置。
【請求項5】
前記振動手段にて発生させる振動は、
ほぼ一定振幅で0Hz〜2000Hzまでスイープする低周波信号、
一定周波数のパルス信号、
ホワイトノイズ信号、
もしくはピンクノイズ信号の少なくとも何れか1つの信号に基づいた振動である
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の筋肉疲労度測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−230861(P2006−230861A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−52730(P2005−52730)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(505072889)
【Fターム(参考)】