説明

筋肉疲労改善剤

【課題】 肩こり、首痛、腰痛等の筋肉疲労の諸症状を改善する筋肉疲労改善剤及び外用剤を提供すること。
【解決手段】β−エンドルフィン産生促進作用をもつ植物抽出物、例えば、キク科 ヘリクリスムイタリクム(Helichrysum italicum)、セリ科 クリスマムマリチマム(Crithmum maritimum)、シソ科 フランスラベンダー(Lavandula stoechas)、及びハンニチバナ科 シスツスモンスペリエンシス(Cistus monspeliensis)、マメ科 ウレックス ユーロパエウス(Ulex europaeus)に肩こり改善する効果や筋肉痛改善効果があり、さらに、この効果は単に筋肉の痛みの感覚を軽減するというものでなく、筋肉の過剰な収縮を抑制して疲労回復することを見出し、本発明を完成するに至った。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、β−エンドルフィンの産生を促進する物質、すなわちβ−エンドルフィン産生促進剤を有効成分とする組成物を皮膚に塗布して、肩こり、首痛、腰痛等の筋肉疲労の諸症状を改善する筋肉疲労改善剤及び外用剤に関する。より詳細には、β−エンドルフィン産生促進作用をもつ植物エキスを塗布することにより、筋肉の収縮を抑制し、肩こり、首痛、腰痛等の筋肉疲労の諸症状を改善する筋肉疲労改善剤及び外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
肩こり、首痛、腰痛等は、筋肉が硬くなってその部分が重く感じられることであり、現代社会において非常に多くの人々がこの悩みを抱えている。
【0003】
こりの原因は様々であるが、(1)長時間同じ姿勢や無理な姿勢をとることにより筋肉が緊張した結果、血液の循環が悪くなる、(2)目の疲れが原因で、その結果交感神経は興奮状態になり、血管が収縮して血液の循環が悪くなる、(3)精神的に緊張したり悩んだりすると、交感神経が優位になり、筋肉内の血管が収縮し、筋肉を使っていないにもかかわらず、血行が悪くなり筋肉に老廃物がたまる、等が主な原因として挙げられる。
【0004】
現在、こりを解消するための方法としては、針、灸等による医学的な方法やマッサージや温熱による血流の改善等が挙げられているが、その多くは、自宅で簡単に行うことができない。
【0005】
血行促進剤を配合したパップ剤の貼付等はこりの改善には有効である。(特許文献1参照)しかしながら、パップ剤のもつ特有なにおいが倦厭されており、とくに女性は使用を好まないのが現状である。
【0006】
さらに、入浴剤や浴用剤が提案されているが、これは一日たまった筋肉疲労を改善するためには有効であるが、突発的におこる肩こり等諸症状を改善するためには有効であるとはいえなかった。(特許文献2、3参照)
【0007】
一方、β−エンドルフィンは、我々の健康にかかわっている"抗ストレス"ペプチドである。β−エンドルフィンは、主に心臓や脳、その他の臓器に含まれているが、1999年にZanelloらによってβ−エンドルフィンが、皮膚中にも存在することが明らかにされた。(非特許文献1参照)最近では、Bigliardiらが、β−エンドルフィンがケラチノサイトの増殖を促進すること、及び、線維芽細胞の増殖を促進することを報告している。(非特許文献2、3参照)また、皮膚をはじめとして、筋肉、神経、血中などの体内組織や器官のβ−エンドルフィンの量を増加させることで、リラックス効果、抗炎症効果、スリミング効果、保湿効果、皮膚の障壁機能の増強効果、初期老化を改善するタンパク質であるラミニン5、インボルクリン、ロリクリン、サイトケラチン、フィラグリン、デスモソームなどを増加する効果、鎮痛作用が見出されており(特許文献4〜6、非特許文献4、5参照)、ケラチノサイトからのβ−エンドルフィンの産生を促す植物エキスを配合した化粧品の例がある。
【0008】
しかしながら、皮膚をはじめとして、筋肉、神経、血中などの体内組織や器官のβ−エンドルフィンの濃度を高めることで過剰な筋肉の収縮を抑制し、肩こり、首痛、腰痛等の筋肉疲労を改善する筋肉疲労改善剤及び外用剤は全く知られていない。
【特許文献1】特開平12−072615号公報
【特許文献2】特開平09−025226号公報
【特許文献3】特開平11−158058号公報
【特許文献4】WO2005−018664号公報
【特許文献5】特開平17−047914号公報
【特許文献6】特開平H16−502713号公報
【非特許文献1】S.B.Zanello,D.M.Jaclson et al.,Ann N.Y.Acad Aci.,Oct 20,885,85−99(1999)
【非特許文献2】P.L.Bigliardi,S.Buchner et al.,J.Recept Signal Transduct Res.,Feb.−Nov.22(1−4),191〜199(2002)
【非特許文献3】P.L.Bigliardi,L.T.Sumanovski et al.,J.Invest.Dermatol.,Jan.120(1),145〜152(2003)
【非特許文献4】Codif Recherche et Nature社技術資料(70 rue du Cdt L‘Herminier,BP 11709−35417 Saint Malo Cedex, France)
【非特許文献5】Nishiyama et al.,J.Dermatol Sci.,Dec.24,Suppl 1:S51−9(2000)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、肩こり、首痛、腰痛等の筋肉疲労の諸症状を改善する筋肉疲労改善剤及び外用剤を提供することを課題とした。この外用剤は、パップ剤のもつ特有の臭いを有さず、外出先などでも手軽に使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、肩こり、首痛、腰痛等の筋肉疲労の諸症状を改善する効果をもつ外用剤を提供すべく鋭意研究した。その結果、β−エンドルフィン産生促進作用をもつ植物抽出物、例えば、キク科 ヘリクリスムイタリクム(Helichrysum italicum)、セリ科 クリスマムマリチマム(Crithmum maritimum)、シソ科 フランスラベンダー(Lavandula stoechas)、及びハンニチバナ科 シスツスモンスペリエンシス(Cistus monspeliensis)、マメ科 ウレックス ユーロパエウス(Ulex europaeus)に肩こり改善する効果や筋肉痛改善効果があり、さらに、この効果は単に筋肉の痛みの感覚を軽減するというものでなく、筋肉の過剰な収縮を抑制して疲労回復することを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0011】
肩こり部位及び筋肉痛部位に対する、β−エンドルフィン産生促進作用をもつ植物抽出物の筋肉疲労改善効果を調べた結果、処置前後と比較して、肩こり部位及び筋肉痛部位における有意な筋肉疲労改善効果が認められた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
β−エンドルフィンは、31個のアミノ酸からなるペプチドである。脳や心臓をはじめとする多くの臓器に認められる内因性のモルヒネ様ペプチドで、その体内における主な役割は疼痛感を軽減することであり、ストレスをコントロールする際に産生される。体内でβ−エンドルフィンの産生が促進されると、同時に高揚感や喜びの感情が芽生えることから、別名"快楽分子"ともよばれている。
【0013】
皮膚におけるβ−エンドルフィン産生促進剤としては特に限定しないが、オリゴ糖や、キク科 ヘリクリスムイタリクム、セリ科 クリスマムマリチマム、シソ科 フランスラベンダー、ハンニチバナ科 シスツスモンスペリエンシス、マメ科 ウレックス ユーロパエウス、カカオ種子の殻、セイヨウハッカ、テルミナリア、グレープフルーツ、薔薇などの植物エキス、植物汁、香気成分などが挙げられる。
【0014】
本発明では、β−エンドルフィン産生促進作用が確認されている物質として、海岸の過酷な環境に育成するキク科 ヘリクリスムイタリクム(Helichrysum italicum)、セリ科 クリスマムマリチマム(Crithmum maritimum)、シソ科 フランスラベンダー(Lavandula stoechas)、ハンニチバナ科 シスツスモンスペリエンシス(Cistus monspeliensis)、及び、マメ科 ウレックス ユーロパエウス(Ulex europaeus)から真空マイクロ水蒸気蒸留法(VMHD法)を用いて得た抽出物(Codif Recherche et Nature社製)を検討した。これらの植物抽出物は種々の芳香成分を含んでいる。キク科 ヘリクリスムイタリクムの主な芳香成分は、ユーカリプトール、リナノール、グアドール、オイゲノール、テルピネオール、ヘリフォレンなど、セリ科 クリスマムマリチマムでは、γ−テルピネン、エピ−グロブノール、p−シメン、カルバクロール、サビネン、α−テルピネオールなど、シソ科 フランスラベンダーでは、カンファー、ブリジフロロール、フェンコン、オイゲノール、p−シメン、ベルベノンなど、ハンニチバナ科 シスツスモンスペリエンシスでは、カンファー、オイゲノール、クレゾール、イソ吉草酸などが挙げられる。
【0015】
本発明の筋肉疲労改善剤及び外用剤に用いられるβ−エンドルフィン産生促進剤の組成物または外用剤への添加量は、特に制限されることはないが、0.001質量%〜99.99質量%であれば有効に機能を発揮する。好ましくは0.01質量%以上であり、更に好ましくは0.1質量%以上である。また添加量の上限は特に制限されることは無いが、実質的には20質量%以下、好ましくは5質量%以下である。
【0016】
本発明の筋肉疲労改善剤及び外用剤は、β−エンドルフィン産生促進剤を必須成分とするが、血行促進剤、温熱効果を有する成分、経皮吸収促進剤と併用することにより、相剰的な筋肉疲労改善効果が認められる。
【0017】
好適な血行促進剤としては、特に限定しないが、アルニカ、イチョウ、イラクサ、ウイキョウ、エンメイソウ、オタネニンジン、オトギリソウ、オノニス、カミツレ、カラシナ、キイチゴ、キナ、クスノキ、グビジンソウ、クララ、ケイ、コウホネ、サルビア、サンザシ、サンショウ、ジオウアルニカ、シブガキ、シャクヤク、ショウガ、ショウキョウ、ショウブ、セイヨウサンザシ、セイヨウトチノキ、セイヨウトチノミ、センキュウ、センブリ、ダイオウ、タイム、ダイダイ、タマサキツツラフジ、タマネギ、チョウジ、テルミナリア、テンダイウヤク、トウガラシ、トウキ、トウキンセンカ、トウショウ、ドクダミ、ニラ、ニンニク、ニンジン、ネギ、ハッカ、ハマメリス、ビスナガベラ、ブドウ、ベニバナ、ボタイジュ、ボタン、ホップ、マツ、マロニエ、マンネリロウ、メリッサ、メリロート、ヤマザクラ、ヤマボウフウ、ヤマモモ、ユーカリ、ヨモギ、ラッキョウ、ラベンダー、リンドウ等の植物エキス、ニコチン酸(別名ナイアシンアミド)及びその誘導体(ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸トコフェロール、ニコチン酸β−ブトキシエチル)、ビタミンE及びその誘導体(酢酸トコフェロール等)等のビタミン類、ヘパリン及びヘパリン類似物質、デキストラン硫酸ナトリウム等の高分子、炭酸ガス、クロロゲン酸類、カフェ酸、フェルラ酸等の有機酸及びそれらの塩、オロチン酸エステル、酢酸エステル、コハク酸エステル等のエステル類、フェニルシクロアルキルエーテル誘導体、メトキシフェニルアルキルエーテル誘導体、メトキシ基置換フェニルアルコキシアルキルエーテル誘導体、バニリルブチルエーテル 等のエーテル類、メントール、オリザノール、ヒノキチオール等のテルペン系アルコール、アセチルコリン(アミノアルコール)及びその誘導体、カフェイン(アルカロイド)及びその誘導体、塩化カプロニウム(四級アンモニウム)、ミノキシジル及びその類縁体、オクチルフタリド、セファラチン、カンフル、ノニル酸ワニリルアミド等の薬剤が挙げられる。
【0018】
血行促進剤の配合量は,筋肉疲労改善剤及び外用剤全量中0.001〜20質量%が好ましく,さらに好ましくは0.01〜10質量%である。
【0019】
好適な温熱効果を有する成分としては、特に限定しないが、臭いが少ないことを特徴とするイチョウエキス、オランダカラシ、ショウガ、トウガラシ、トウヒ、ニンニク等の植物エキス、ニコチン酸(別名ナイアシンアミド)及びその誘導体(ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸トコフェロール、ニコチン酸β−ブトキシエチル)、ビタミンE及びその誘導体(酢酸トコフェロール等)等のビタミン類、グリセリン、エチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール、マグネシウム、ゲルマニウム、カルシウム、モリブデン、バナジウム、アルミニウム等及びその塩等のイオン化合物、カプサイシン、ノニル酸ワニリルアミド、ペラルゴン酸等の薬剤が挙げられる。
【0020】
温熱効果を有する成分の配合量は,筋肉疲労改善剤及び外用剤全量中0.001〜20質量%が好ましく,さらに好ましくは0.01〜10質量%である。
【0021】
好適な経皮吸収促進剤としては、特に限定しないが、皮膚への親和性を高める物質である直鎖脂肪酸と低級アルコールとのエステル、直鎖脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル、直鎖脂肪酸と分岐アルコールとのエステル、分岐脂肪酸と低級アルコールとのエステル、分岐脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル、脂肪酸と多価アルコールとのエステル、分岐脂肪酸と分岐アルコールとのエステル、水酸基をもつエステル、二塩基酸のエステル等のエステル類等が挙げられる。また、細胞間脂質に作用する物質である多価アルコール脂肪酸エステル、多価アルコールアルキルエーテル、グリセリンモノ脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンエーテル、その他分子内にエーテルとエステルをもつ物質、含窒素誘導体、フッ素系、シリコーン系、ポリペプチド誘導体、レシチン等の非イオン界面活性剤、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセチアミド等の非プロトン溶媒、植物油(アボカド油、ククイナッツ油、オリーブ油、ピスタチオナッツ油、キウイ種子油等)、動物油(馬油、卵黄脂肪油等)等の油脂類、ホホバ油、ラノリン等のロウ類、流動パラフィン、イソパラフィン、オレフィンオリゴマー、スクワラン、テルペン類等の炭化水素類、バチルアルコール、セラキルアルコール、キミルアルコール等のアルキルグリセリルエーテル類が挙げられる。さらに、有効成分の皮膚への分配率を変化させる物質であるアルコール類、多価アルコール類、芳香族アルコール類、フェノール類、ステロール類等のアルコール類、角層の保湿・軟化剤である乳酸、尿酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、べへン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、ウンデシレン酸等の直鎖、分岐脂肪酸及びその誘導体、グリコール酸、ピロリドン酸、ヒアルロン酸、サリチル酸、川弓(センキュウ)エキス、トウガラシエキス(カプサイシン)、ニンニクエキス、アロエベラエキス、呉茱萸(ゴシュユ)エキス等の植物エキス、有効成分の皮膚上での滞留性を向上させる物質であるムコ多糖類、シクロデキストリン、ポリエチレングリコール/ポリジメチルシロキサン共重合体、ポリエチレングリコール/イソシアナトシクロヘキサン共重合体、ポリプロプレングリコール/イソシアナトシクロヘキサン共重合体等の高分子が挙げられる。その他に、ブチロフェノン系、ビタミンB1、エイゾン類、グリチルリチン酸誘導体等の薬剤、ニトログリセリン、クロニジン、スコポラミン、硝酸イソソルビド、クレアチニン等の窒素化合物、低級アルキレンカーボネート及びジアルキルカーボネート等のカーボネート化合物が挙げられる。
【0022】
経皮吸収促進剤の配合量は,筋肉疲労改善剤及び外用剤全量中0.001〜20質量%が好ましく,さらに好ましくは0.01〜10質量%である。
【0023】
本発明の筋肉疲労改善剤及び外用剤は、β−エンドルフィン産生促進剤を必須成分とするが、本発明の効果を損なわない範囲でその他化粧品、医薬部外品等の皮膚外用剤に配合される成分を配合することができる。
【0024】
例えば、油脂類、エステル類、炭化水素類、ロウ類、シリコーン系の油相成分、脂肪酸類、低級アルコール類、高級アルコール類、多価アルコール類、界面活性剤、水溶性高分子類、香料、水、各種溶媒等と併用することができ、さらに、老化防止剤、保湿剤、育毛剤、発毛剤、経皮吸収促進剤、紫外線吸収剤、細胞賦活剤、抗炎症剤、美白剤、その他生理活性成分、防腐防カビ剤等を配合することができる。
【0025】
本発明の筋肉疲労改善剤及び外用剤は、好ましくは皮膚外用剤として医薬品組成物、化粧料等に好適に応用することができる。皮膚外用剤の使用形態としては、例えば軟膏、クリーム、ローション、貼付剤等が挙げられる。外用剤の基剤としては、公知の外用基剤でよく、特に限定されない。
【0026】
本発明に係る、肩こり、首痛、腰痛等の筋肉疲労の諸症状を改善する筋肉疲労改善剤及び外用剤は、筋肉疲労改善効果に優れる。
【0027】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明の技術範囲がこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0028】
(1)β−エンドルフィン産生促進剤による肩こり改善効果
【0029】
1.試験方法
シソ科 フランスラベンダーの水蒸気蒸留物を0.1質量%配合したローション(発明品1)、キク科 ヘリクリスムイタリクム、又は、セリ科 クリスマムマリチマム、又は、シソ科 フランスラベンダー、又は、ハンニチバナ科 シスツスモンスペリエンシス、又は、マメ科 ウレックス ユーロパエウスの水蒸気蒸留物を1.0質量%配合したゲルローション(発明品2〜6)、シソ科 フランスラベンダーの水蒸気蒸留物を10質量%配合したクリーム(発明品7)、シソ科 フランスラベンダーの水蒸気蒸留物を99.8質量%配合したローション(発明品8)、及び、それぞれのプラセボ(比較品1、2、7、8)を調製した。日常的に肩こりを抱えている男女の被験者15名の片側の肩に、発明品1のローションを0.5g程度塗布した。もう片方の肩にも同様に、比較品1を塗布した。塗布して5分〜10分後、比較品1と比較したときの発明品1の肩こりの改善度合いを、下記の基準で自己評価してもらった。発明品2〜8についても同様に評価した。
評価基準1:肩こりの感じ方
肩こりが完全になくなった:◎
肩が楽になった:○
肩がやや楽になった:△
変化なし:×
評価基準2:肩の筋肉の硬さ
軟らかくなった:◎
やや軟らかくなった:○
変化なし:×
【0030】
【表1】

【0031】
調製法:Aを40℃で加温溶解し、Cを常温で溶解する。Aを撹拌しながらB、Cの順に添加し、室温まで冷却する。
【0032】
【表2】

【0033】
調製法:Bを60〜70℃で均一混合後、室温にもどす。Aを攪拌しながら、BとCを室温で順次添加する。均一になったら、調製を終了する。
【0034】
【表3】

【0035】
調製法:A、Cともに80℃に加温する。Aを攪拌しながら、B、Cを添加する。放冷しながら50℃以下でDを添加し、室温まで冷却する。
【0036】
【表4】

【0037】
調製法:Aを常温で溶解する。Aを撹拌しながらBを添加する。
【0038】
2.結果
結果を表5に示す。なお、表中の数字は人数である。β−エンドルフィン産生促進剤である、キク科 ヘリクリスムイタリクム、又は、セリ科 クリスマムマリチマム、又は、シソ科 フランスラベンダー、又は、ハンニチバナ科 シスツスモンスペリエンシス、又は、マメ科 ウレックス ユーロパエウスの水蒸気蒸留物を配合した組成物を適用することで、著しい肩こり改善効果が認められた。植物の水蒸気蒸留物を0.1質量%配合したローション(発明品1)についてもわずかに肩こり改善効果が確認されたが、特に、植物の水蒸気蒸留物を1.0質量%以上配合した発明品について著しい肩こり改善効果が認められた。特記すべきは、単に肩こりの痛みが軽減しただけでなく、肩の筋肉の緊張がほぐれ、筋肉の硬さが軟らかくなったと実感できていることである。
【0039】
【表5】

【0040】
(2)β−エンドルフィン産生促進剤による筋肉痛改善効果
【0041】
1.試験方法
実施例1の(1)で調製した発明品1、2、8、比較品1、2、8を用いて、筋肉痛改善効果を評価した。普段運動をしていない男女8名に腕立て伏せを反復してもらった。翌日または翌々日、筋肉痛を訴えた男女の被験者6名の右上腕部に、発明品1のローションを0.5g程度塗布した。左上腕部肩にも同様に、比較品1を塗布した。塗布して5分〜10分後、比較品1と比較したときの発明品1の筋肉痛の改善度合いを、下記の基準で自己評価してもらった。発明品2、8についても同様に評価した。
評価基準:
痛みが完全に治まった:◎
痛みがかなり治まった:○
痛みがやや治まった:△
変化なし:×
【0042】
2.結果
結果を表6に示す。なお、表中の数字は人数である。シソ科 フランスラベンダーの水蒸気蒸留物を配合した組成物を適用することで、著しい筋肉痛緩和効果が認められた。この効果は、シソ科 フランスラベンダーの水蒸気蒸留物を0.1質量%配合したローション(発明品1)でも確認されたが、特に、シソ科 フランスラベンダーの水蒸気蒸留物を1.0質量%以上配合した発明品について著しい筋肉痛緩和効果が認められた。
【0043】
【表6】

【実施例2】
【0044】
(1)β−エンドルフィン産生促進剤と血行促進剤、又は、温熱効果を有する成分、又は、経皮吸収促進剤を併用したときの肩こり改善の相乗効果
【0045】
1.試験方法
β−エンドルフィン産生促進剤として、シソ科 フランスラベンダー、ハンニチバナ科 シスツスモンスペリエンシスを使用した。β−エンドルフィン産生促進剤を5.0質量%配合の処方(発明品9又は10)に、血行促進剤をさらに追加したローション(発明品11、12)、温熱効果を有する成分をさらに追加したローション(発明品13、14)、経皮吸収促進剤をさらに追加したローション(発明品15、16)を調製した。日常的に肩こりを抱えている男女の被験者15名の片側の肩に、発明品9のローションAを0.5g程度塗布した。もう片方の肩にも同様に、比較品9塗布した。塗布して5分〜10分後、比較品9と比較したときの発明品9の肩こりの改善度合いを、実施例1に記載の基準で自己評価してもらった。発明品10〜16についても同様に評価した。
【0046】
【表7】

【0047】
調製法:Aを常温で溶解する。Aを撹拌しながらBを添加する。
【0048】
【表8】

【0049】
調製法:A、Bをそれぞれ80〜85℃で攪拌しながら溶解する。Cは室温で均一に溶解する。Aをホモミキサーで攪拌しながらBを添加し、マイクロフルイダイザーで処理すする。放冷しながら40℃以下でCを添加し、室温まで冷却する。
【0050】
2.結果
結果を表9に示す。なお、表中の数字は人数である。発明品9及び10では、β−エンドルフィン産生促進剤による肩こり善効果が認められた。発明品9及び10に、さらに、血行促進剤、又は、温熱効果を有する成分、又は、経皮吸収促進剤を併用したものでは、著しい肩こり善効果が認められ、この効果は、血行促進剤、温熱効果を有する成分、経皮吸収促進剤が無配合の発明品9及び10よりもさらに高まっていることが確認された。特記すべきは、単に肩こりの痛みが軽減しただけでなく、肩の筋肉の緊張がほぐれ、筋肉の硬さが軟らかくなったと実感しているボランティアが、発明品9及び10の試験結果と比較してさらに増えていることである。
【0051】
【表9】

【0052】
(2)β−エンドルフィン産生促進剤と血行促進剤及び/又は温熱効果を有する成分及び/又は経皮吸収促進剤を併用したときの肩こり改善の相乗効果
【0053】
1.試験方法
β−エンドルフィン産生促進剤として、キク科 ヘリクリスムイタリクム、セリ科 クリスマムマリチマム、シソ科 フランスラベンダー、ハンニチバナ科 シスツスモンスペリエンシス、マメ科 ウレックス ユーロパエウスを使用した。β−エンドルフィン産生促進剤を5.0質量%配合のゲルローション(発明品17)及び10.0質量%配合のローション(発明品19)に、血行促進剤及び/又は温熱効果を有する成分及び/又は経皮吸収促進剤などさらに追加したゲルローション(発明品18)及びローション(発明品20)を調製した。日常的に肩こりを抱えている男女の被験者15名の片側の肩に、発明品17のローションを0.5g程度塗布した。もう片方の肩にも同様に、比較品17を塗布した。塗布して5分〜10分後、比較品17と比較したときの発明品17の肩こりの改善度合いを、実施例1に記載の基準で自己評価してもらった。発明品18〜20についても同様に評価した。
【0054】
【表10】

【0055】
調製法:Bを60〜70℃で均一混合後、室温にもどす。Aを攪拌しながら、BとCを室温で順次添加する。均一になったら、調製を終了する。
【0056】
【表11】

【0057】
調製法:A、Bをそれぞれ80〜85℃で攪拌しながら溶解する。Cは室温で均一に溶解する。Aをホモミキサーで攪拌しながらBを添加し、マイクロフルイダイザーで処理すする。放冷しながら40℃以下でCを添加し、室温まで冷却する。
【0058】
2.結果
結果を表12に示す。なお、表中の数字は人数である。発明品17及び19では、β−エンドルフィン産生促進剤による肩こり改善効果が認められた。さらに、血行促進剤及び/又は温熱効果を有する成分及び/又は経皮吸収促進剤を併用したものでは、著しい肩こり善効果が認められ、この効果は、血行促進剤及び/又は温熱効果を有する成分及び/又は経皮吸収促進剤が無配合の発明品17及び19よりもさらに高まっていることが確認された。特記すべきは、単に肩こりの痛みが軽減しただけでなく、肩の筋肉の緊張がほぐれ、筋肉の硬さが軟らかくなったと実感しているボランティアが、発明品17及び19の試験結果と比較してさらに増えていることである。
【0059】
【表12】

【産業上の利用可能性】
【0060】
β−エンドルフィン産生促進剤を有効成分とする組成物を皮膚に塗布することで、過剰な筋肉の収縮を抑制し、肩こり、首痛、腰痛等の筋肉疲労を改善する筋肉疲労改善剤及び外用剤を提供することができる。この筋肉疲労改善剤及び外用剤は、パップ剤のもつ特有の臭いを有さず、外出先などでも手軽に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
β−エンドルフィン産生促進剤を有効成分とする筋肉疲労改善剤。
【請求項2】
筋肉疲労が肩こり、首痛、腰痛等の諸症状であることを特徴とする請求項1に記載の筋肉疲労改善剤。
【請求項3】
β−エンドルフィン産生促進剤と血行促進剤とを含有することを特徴とする筋肉疲労改善剤。
【請求項4】
β−エンドルフィン産生促進剤と温熱効果を有する成分とを含有することを特徴とする筋肉疲労改善剤。
【請求項5】
β−エンドルフィン産生促進剤と経皮吸収促進剤とを含有することを特徴とする筋肉疲労改善剤。
【請求項6】
β−エンドルフィン産生促進剤が、キク科、セリ科、シソ科、ハンニチバナ科、マメ科に属する植物抽出物から選ばれるものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の筋肉疲労改善剤。
【請求項7】
請求項6に記載の植物抽出物が、水蒸気蒸留法により得られることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の筋肉疲労改善剤。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の植物抽出物が、キク科 ヘリクリスムイタリクム(Helichrysum italicum)、セリ科 クリスマムマリチマム(Crithmum maritimum)、シソ科 フランスラベンダー(Lavandula stoechas、)、及びハンニチバナ科 シスツスモンスペリエンシス(Cistus monspeliensis)、マメ科 ウレックス ユーロパエウス(Ulex europaeus)の植物抽出物から選ばれるものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の筋肉疲労改善剤。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の筋肉疲労改善剤を配合することを特徴とする外用剤。

【公開番号】特開2007−63135(P2007−63135A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−246961(P2005−246961)
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【出願人】(000226437)日光ケミカルズ株式会社 (60)
【Fターム(参考)】