説明

筋肥大促進のための食品、補助食品、及びサプリメント

【課題】 筋肥大促進効果を有する、筋肥大促進剤、食品組成物、食品、サプリメントなどを提供すること。
【解決手段】 α-グルコシルイソクエルシトリンを有効成分として含有する筋肥大促進剤とし、α-グルコシルイソクエルシトリン及びホエイプロテインを含有する食品組成物、食品、サプリメントとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筋肥大促進のための食品、補助食品、及びサプリメントに関する。
【背景技術】
【0002】
筋肥大のプロセスとして、筋肉に負荷をかけることによって筋繊維にある程度の筋損傷が生じると、筋繊維の回復の際に元のレベル以上に超回復し、筋肥大が生じるとされている。
【0003】
一方、筋肉疲労回復や筋肉量増加に関するサプリメントとして、BCAA、アミノ酸、プロテイン、αリポ酸、カルニチンなどを含む商品が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平16−182630
【特許文献2】特開平16−256513
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、筋肥大促進効果を有する、筋肥大促進剤、食品組成物、食品、サプリメントなどを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、正常マウス、及び筋肥大モデルマウスにおいて、酵素処理イソクエルシトリンが筋肥大を促進する効果を有することを見出し、本発明の完成に至った。
【0007】
本発明の一実施態様では、筋肥大促進剤がα-グルコシルイソクエルシトリンを有効成分として含有する。α-グルコシルイソクエルシトリンとして、酵素処理イソクエルシトリンを含有してもよい。
【0008】
本発明の一実施態様では、食品組成物がα-グルコシルイソクエルシトリン、及び、カゼインプロテイン、クレアチン、グルタミン、ホエイプロテイン(乳清)、大豆プロテイン、BCAA、アルギニン、シトルリン、オルニチンからなる群から選択される少なくとも一つを含有する。α-グルコシルイソクエルシトリンとして、酵素処理イソクエルシトリンを含有してもよい。
【0009】
本発明の一実施態様では、食品が、上記いずれかの食品組成物を含有する。
【0010】
本発明の一実施態様では、サプリメントがα-グルコシルイソクエルシトリン、及び、カゼインプロテイン、クレアチン、グルタミン、ホエイプロテイン(乳清)、大豆プロテイン、BCAA、アルギニン、シトルリン、オルニチンからなる群から選択される少なくとも一つを含有する。α-グルコシルイソクエルシトリンとして、酵素処理イソクエルシトリンを含有してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によって、筋肥大促進効果を有する、筋肥大促進剤、食品組成物、食品、サプリメントなどを提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例において、CE2粉末飼料(日本クレア)に0.02%サンエミック(三栄源、15%EMIQ)を添加した餌の、筋肥大促進効果を調べたグラフである。
【図2】本発明の一実施例において、ホエイ食(AIN−93Gの蛋白源をホエイプロテインで置換したもの)に0.004%、0.02%、0.2%のサンエミック(三栄源、15%EMIQ)を添加した餌の、筋肥大促進効果を調べたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、上記知見に基づき完成した本発明の実施の形態を、実施例を挙げながら詳細に説明する。
【0014】
なお、本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態及び具体的な実施例等は、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図ならびに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々に修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
【0015】
本発明に係る筋肥大促進剤、食品組成物、食品、及びサプリメントは、下式で表されるα-グルコシルイソクエルシトリンを含有する。α-グルコシルイソクエルシトリンの含有量は特に限定されないが、固形分換算で0.0006%以上、好ましくは0.003%以上、さらに好ましくは0.03%以上であることが好ましい。
【化1】

式中、Glcはグルコース残基、nは1以上の整数を示し、好ましくは100以下、より好ましくは30以下、さらに好ましくは10以下である。
【0016】
α-グルコシルイソクエルシトリンの製造方法は、特に限定されないが、例えば、特公昭54−32073号公報に記載されているように、イソクエルシトリンと澱粉質などのグルコース供与体を含有する溶液に対して糖転移酵素を作用させることにより、イソクエルシトリンにグルコース供与体からグルコース残基を等モル以上転移させ、次いで、アミラーゼを作用させてα-グルコシルイソクエルシトリンを生成させればよい。この方法によって製造したα-グルコシルイソクエルシトリンは、酵素処理イソクエルシトリン(enzyme-modified isoquercitrin: EMIQ)と呼ばれる。さらに、多孔性合成吸着剤に接触させて、その吸着性の違いを利用することにより、α-グルコシルイソクエルシトリンを精製することも可能である。
【0017】
特に、日本国特許第2926411号に記載されているように、反応基質として、0.5w/v%以上、好ましくは約1.0〜20.0W/V%の高濃度懸濁状イソクエルシトリンや、アルカリ側pHで溶解若しくは有機溶媒水溶液で溶解させた0.5w/v%以上、好ましくは約1.0〜20.0W/V%の高濃度溶液状イソクエルシトリンを用いることで、高濃度の酵素処理イソクエルシトリンを得ることができる。
【0018】
このように、EMIQの主成分はα-グルコシルイソクエルシトリンであるが、精製次第で、基質や生成過程で生じる中間体などの夾雑物を含有しうる。なお、イソクエルシトリンはアルカリ性水溶液には可溶であるが、水、酸性水溶液に難溶であるのに対し、EMIQは水溶性であり、従来、酸化防止剤、食品添加物などに用いられてきた。
【0019】
EMIQの製造に用いられるイソクエルシトリンは、高度に精製されたイソクエルシトリンに限定されず、イソクエルシトリンと、例えば、シトロニン、ナリンジン、ヘスペリジンなどのフラボノイド配糖体との混合物、更には、イソクエルシトリンを含有している各種植物由来の抽出物、またはその部分精製物などを適宜使用できる。ここで用いられる植物組織は、イソクエルシトリンを含有すれば特に限定されないが、例えば、ソバの葉茎、エンジュのつぼみ(槐花または槐米)、エニシダのつぼみ、ユーカリの葉茎、イチョウの葉茎、柑橘類果実などを用いることができる。
【0020】
特に、イソクエルシトリンとして、日本国特許第2926411号に記載されているように、高濃度イソクエルシトリンを用いることが好ましい。高濃度イソクエルシトリンは、イソクエルシトリンを高濃度、例えば0.5w/v%以上、好ましくは約1.0〜20.0W/V%に含有するものであればよい。この高濃度イソクエルシトリンは、イソクエルシトリンを懸濁することにより、または、pH7.0を越えるアルカリ性水溶液や、有機溶媒を含有する水溶液にイソクエルシトリンを溶解させることにより作製することができる。
【0021】
アルカリ性水溶液としては、例えばカセイソーダ水、アンモニア水などを用いることができる。また、水溶液に含有させる有機溶媒としては、水と互いに溶解しうる有機溶媒であればよく、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、アセトール、アセトンなどの低級アルコール、低級ケトンなどを用いることができる。水溶液中の有機溶媒濃度は、イソクエルシトリンが高濃度に溶解し、かつ、澱粉質や糖転移酵素が不溶化せず、α−グルコシルイソクエルシトリンが生成する濃度であれば特に限定されないが、通常、約3〜70V/V%、好ましくは、約5〜60V/V%とする。また、イソクエルシトリンをできるだけ高濃度に容易に溶解するためには、予め、イソクエルシトリンを上記のアルカリ性水溶液に溶解し、これを有機溶媒水溶液と混合し、更に中和して糖転移反応に利用してもよい。
【0022】
高濃度イソクエルシトリンと共に糖転移酵素を作用させるグルコース供与体は、その糖転移酵素によってイソクエルシトリンからグルコース残基を等モル以上結合したα−グルコシルイソクエルシトリンを生成することのできるものであれば限定されないが、α−グルコシルイソクエルシトリンの生成を容易にするためには、用いる糖転移酵素に適したグルコース供与体を用いることが好ましい。従って、一般的には、アミロース、デキストリン、シクロデキストリン、マルトオリゴ糖などの澱粉部分加水分解物、液化澱粉、糊化澱粉などを用いることができるが、糖転移酵素として、α−グルコシダーゼ(EC 3.2.1.20)を用いる際には、マルトース、マルトトリオース、マルトテトラオースなどのマルトオリゴ糖、またはDE約10〜70の澱粉部分加水分解物などを用いることが好ましく、シクロマルトデキストリン グルカノトランスフェラーゼ(EC 2.4.1.19)を用いる際には、シクロデキストリンまたはDE1以下の澱粉糊化物からDE約60の澱粉部分加水分解部など用いることが好ましく、α−アミラーゼ(EC 3.2.1.1)を用いる際には、DE1以下の澱粉糊化物からDE約30のデキストリン、澱粉部分加水分解物など用いることが好ましい。なお、糖転移反応時の澱粉質濃度は、イソクエルシトリンに対して約0.5〜50倍の範囲が好適である。
【0023】
これらの糖転移酵素の由来は、特に限定されず、例えば、α−グルコシダーゼは、ブタの肝臓、ソバの種子などの動植物組織、または、ムコール(Mucor)属、ペニシリウム(Penicillium)属などに属するカビ、またはサッカロミセス(Saccharomyces)属などに属する酵母などの微生物を栄養培地で培養し得られる培養物などに由来してもよく、シクロマルトデキストリン グルカノトランスフェラーゼは、バチルス(Bacillus)属、クレブシーラ(Klebsiella)属などに属する細菌培養物に由来してもよく、β−アミラーゼは、バチルス属などに属する細菌、または、アスペルギルス(Aspergillus)属などに属するカビ培養物などに由来してもよい。なお、これらの糖転移酵素は、精製して使用してもよいが、通常は、粗酵素として用いることができる。また、市販の糖転移酵素を用いてもよい。
【0024】
高濃度の懸濁状イソクエルシトリンとグルコース供与体を含有するイソクエルシトリン高含有液に糖転移酵素を作用させる場合、反応液のpHは約4.5〜6.5とし、反応液の温度は、糖転移酵素の作用しうる限りで、できるだけ高温、具体的には、約70〜90℃に維持することが好ましい。反応が進行し、イソクエルシトリンがα−グルコシルイソクエルシトリンに変換するにつれて懸濁状イソクエルシトリンが徐々に溶解し、同時に、α−グルコシルイソクエルシトリン、α−マルトシル イソクエルシトリン、α−マルトトリオシル イソクエルシトリン、α−マルトテトラオシル イソクエルシトリン、α−マルトペンタオシル イソクエルシトリン、α−マルトヘキサオシル イソクエルシトリンなどのα−グルコシルイソクエルシトリンが容易に高濃度に生成する。
【0025】
また、イソクエルシトリンをpH7.0を越えるアルカリ性水溶液に溶解させた高濃度イソクエルシトリン溶液を用いた場合、pHが約7.5〜10.0の水に約0.5W/V%以上、好ましくは、約1.0〜5.0W/V%のイソクエルシトリンを加熱溶解し、これに適量のグルコース供与体を溶解して得られるイソクエルシトリン高含有液を、糖転移酵素の作用しうる限り、高いpHと高温、具体的には、pHを約7.5〜10.0、温度を約50〜80℃に維持し、これに糖転移酵素を作用させるとα−グルコシルイソクエルシトリンが容易に高濃度に生成する。この際、アルカリ性溶液中のイソクエルシトリンは、分解を起しやすいので、これを防ぐため、できるだけ遮光、嫌気下に維持するのが望ましい。必要ならば、L−アスコルビン酸、エリソルビン酸などの抗酸化剤を共存させてもよい。
【0026】
また、イソクエルシトリンを有機溶媒水溶液中で溶解させた高濃度イソクエルシトリン溶液を用いた場合、イソクエルシトリンを、予め、有機溶媒に加熱溶解し、次いで、これを澱粉質水溶液と混合し、これに糖転移酵素を加えたり、または、イソクエルシトリンと澱粉質とを有機溶媒水溶液に加熱して溶解させ、所定温度に冷却し、これに糖転移酵素を加えたりして、反応させる。
【0027】
更に、これらの条件を組み合せ、例えば、約2.0〜20.0W/V%の懸濁状イソクエルシトリンと適量のグルコース供与体を含有するイソクエルシトリン高含有液をpH約7.5〜10.0、温度約50〜80℃に維持し、これに糖転移酵素を作用させてもよく、同様に、α−グルコシルイソクエルシトリンが容易に高濃度に生成する。
【0028】
また、イソクエルシトリンとして、例えば約0.1〜1.0規定のカセイソーダ水溶液、カセイカリ水溶液、炭酸ソーダ水溶液、水酸化カルシウム水、アンモニア水などの強アルカリ性水溶液に約5.0〜20.0W/V%の高濃度に溶解させたものを用い、これに塩酸、硫酸などの酸性水溶液を加えて酵素の作用しうるpHに調整するとともにグルコース供与体を加え、直ちに糖転移酵素を作用させてもよく、α−グルコシルイソクエルシトリンを容易に高濃度に生成させることができる。この際、高濃度に溶解させたイソクエルシトリン溶液も、酸性水溶液でpH調整するとイソクエルシトリンが析出し易いので、そのpH調整前に、グルコース供与体や少量のα−グルコシルイソクエルシトリンなどを共存させてイソクエルシトリンの析出を抑制しつつ糖転移反応を開始することが好ましい。
【0029】
以上のようにして得られるα−グルコシルイソクエルシトリン含有溶液は、通常、室温下、中性付近で、大量のα−グルコシルイソクエルシトリンと少量の未反応イソクエルシトリンとを溶解含有しており、その合計量が、イソクエルシトリン換算で約5.0〜20.0 W/V%もの高濃度に達する。
【0030】
糖転移反応により生成させた比較的高分子のα−グルコシルイソクエルシトリンは、必要により、そのままで、または、多孔性合成吸着樹脂により精製した後、グルコアミラーゼ(EC 3.2.1.3)またはβ−アミラーゼ(EC 3.2.1.2)などのアミラーゼによって部分加水分解し、α−グルコシルイソクエルシトリンのα−D−グルコシル基の数を低減させることができる。例えば、グルコアミラーゼを用いれば、α−マルトシル イソクエルシトリン以上の高分子物を加水分解し、グルコースを生成するとともにα−グルコシル イソクエルシトリンを生成させることができ、また、β−アミラーゼを用いれば、α−マルトトリオシル イソクエルシトリン以上の高分子物を加水分解し、マルトースを生成するとともに主にα−グルコシルイソクエルシトリンとα−マルトシル イソクエルシトリンとの混合物を生成させることができる。
【0031】
以上のようにして得られたα−グルコシルイソクエルシトリンを含有する溶液は、そのままでα−グルコシルイソクエルシトリン製品にすることもできる。さらに、溶液を濾過、濃縮してシロップ状にしたり、更に乾燥、粉末化して粉末状にしたりすることもできる。
【0032】
さらに、精製されたα−グルコシルイソクエルシトリン製品を製造する場合には、多孔性合成吸着剤による吸着性の差を利用し、α−グルコシルイソクエルシトリンとグルコース供与体などの夾雑物を分離すればよい。また、多孔性合成吸着剤による精製は、グルコース供与体、水溶性糖類だけでなく、水溶性の塩類などの夾雑物も同時に除去できる特長を有している。
【0033】
多孔性合成吸着剤は、多孔性で広い吸着表面積を有し、かつ非イオン性のスチレン−ジビニルベンゼン重合体、フェノール−ホルマリン樹脂、アクリレート樹脂、メタアクリレート樹脂などの合成樹脂であり、例えば、市販されているRohm & Haas社製造の商品名アンバーライトXAD−1、アンバーライトXAD−2、アンバーライトXAD−、アンバーライトXAD−7、アンバーライトXAD−8、アンバーライトXAD−11、アンバーライトXAD−12、三菱化成工業株式会社製造の商品名ダイヤイオンHP−10、ダイヤイオンHP−20、ダイヤイオンHP−30、ダイヤイオンHP−40、ダイヤイオンHP−50、IMACTI社製造の商品名イマクティSyn−42、イマクティSyn−44、イマクティSyn−46などが例示できる。
【0034】
これらの多孔性合成吸着剤をカラムに充填し、α−グルコシルイソクエルシトリン溶液をカラムに通液すると、α−グルコシルイソクエルシトリンおよび比較的少量の未反応イソクエルシトリンが多孔性合成吸着剤に吸着するのに対し、多量に共存するグルコース供与体、水溶性糖類は吸着されることなくそのまま流出する。
【0035】
特に、α−グルコシルイソクエルシトリン溶液が有機溶媒を含有している場合には、その有機溶媒濃度を除去した後に多孔性合成吸着剤と接触させて精製することが好ましい。
【0036】
必要ならば、糖転移酵素反応終了後、多孔性合成吸着剤に接触させるまでの間に、例えば、反応液を加熱して生じる不溶物を濾過して除去したり、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、アルミン酸マグネシウムなどで処理して反応液中の蛋白性物質などを吸着除去したり、強酸性イオン交換樹脂(H型)、中塩基性または弱塩基性イオン交換樹脂(OH型)などで処理して脱塩するなどの精製方法などによって部分精製してもよい。
【0037】
多孔性合成吸着剤カラムに選択的に吸着したα−グルコシルイソクエルシトリンと比較的少量の未反応イソクエルシトリンは、カラムを希アルカリ、水などで洗浄した後、比較的少量の有機溶媒または有機溶媒と水との混合液、例えば、メタノール水、エタノール水などを通液することにより、まず、α−グルコシルイソクエルシトリンを溶出させ、その後、通液量を増したり有機溶媒濃度を高めたりすることによって未反応イソクエルシトリンを溶出させることができる。
【0038】
このα−グルコシルイソクエルシトリン高含有溶出液に対し、まず有機溶媒を溜去した後、適当な濃度にまで濃縮すればα−グルコシルイソクエルシトリンを主成分とするシラップ状製品が得られる。更に、これを乾燥し粉末化することによって、α−グルコシルイソクエルシトリンを主成分とする粉末状製品が得られる。
【0039】
この有機溶媒によるα−グルコシルイソクエルシトリンおよび未反応イソクエルシトリンの溶出操作は、同時に、多孔性合成吸着剤の再生操作にもなるので、この多孔性合成吸着剤の操り返し使用を可能にする。
【0040】
なお、EMIQは、市販品も入手でき、例えば、サンエミック、サンメリンAO-3000、サンメリンパウダーC-10(三栄源)などを用いてもよい。
【0041】
以上のようにして得られたα−グルコシルイソクエルシトリンを主成分として含んだEMIQ、あるいはα−グルコシルイソクエルシトリンを、常法により剤形化し筋肥大促進剤の有効成分として用いてもよく、食品組成物、食品、及びサプリメントなどの成分として用いてもよい。そして、こうして作製された筋肥大促進剤、食品組成物、食品、及びサプリメントを摂取することによって、筋肥大を促進することができる。特に、筋損傷後、筋繊維の超回復で生じる筋肥大に適用することが好ましい。食品中のEMIQの含有濃度は、適宜決定できるが、固形分換算で0.003W/W%以上であることが好ましく、0.03 W/W%以上であることが好ましい。
【0042】
なお、筋肥大促進剤、食品組成物、食品、及びサプリメントには、α−グルコシルイソクエルシトリンまたはEMIQ以外に、周知の筋強化、筋損傷修復、筋肥大促進、筋疲労回復などの効果を有する物質を共存させても構わない。例えば、カゼインプロテイン、クレアチン、グルタミン、ホエイプロテイン(乳清)、大豆プロテイン、BCAA、アルギニン、シトルリン、オルニチンにα−グルコシルイソクエルシトリンまたはEMIQを加えて、食品組成物としてもよく、それらの少なくとも一つとα−グルコシルイソクエルシトリンまたはEMIQを含んだ食品やサプリメントとしてもよい。なお、これらの物質を含む食品やサプリメントの摂取量や摂取方法は特に限定されないが、物質自体の摂取量や摂取方法に基づいて摂取することが好ましい。
【0043】
本発明において、筋肥大促進効果をもたらすのに有効なEMIQの摂取量は、通常、成人(15歳以上)1日当り1〜500mgであり、好ましくは成人1日当り 5〜350mgである。また体重1kgあたりの摂取量は通常0.015〜8.5mg/kg、より好ましくは0.080〜5.0mg/kgである。
【0044】
本発明のα−グルコシルイソクエルシトリンまたはEMIQを含む食品組成物は、上記の有効摂取量で、毎日摂取し続けることにより、運動前、運動後の筋肥大促進効果を一層もたらすことができる。
【0045】
特にホエイプロテインは、非常に吸収がよく、運動後の筋肉の修復、筋肉増強、疲労回復などに効果があるとされている。従って、ホエイプロテインに、筋肥大の促進効果を有するα−グルコシルイソクエルシトリンまたはEMIQを加えることによって、ホエイプロテインの筋肉発育に対する効果が増強される。
【0046】
本発明の食品組成物や食品の製造に用いるホエイプロテインは、周知の方法によって牛乳や乳製品から製造されるホエイまたはその調製品(濃縮品、乾燥品、粉末品、精製品など)であって、例えば、ホエーパウダー、ホエイプロテインアイソレイトパウダー(WPI)及びホエイプロテインコンセントレイトパウダー(WPC)等の、ホエイプロテインを含む乳製品であればよい。ホエイプロテインを調製するためのホエイには、酸ホエイ、チーズホエイ、膜処理ホエイなどの種類があるが、特に限定されない。例えば、殺菌した牛乳にスターターを加えて発酵させた後、凝固材を加えてカードを収縮させる時に排出させたホエイを、限外濾過およびイオン交換法により濃縮することにより、タンパク質含量90重量%以上の分離ホエイプロテインを製造できる。また、市販のホエイプロテインを用いてもよく、アラセン472(フォンテラ社製)NZMP8899(フォンテラ社製)、WPI 9000(Protient社製)、ホエイプロテイン(森永乳業社製)などを用いてもよい。これらのホエイプロテインに、適宜形状を適合させたα−グルコシルイソクエルシトリンまたはEMIQを混合して、食品組成物、食品、サプリメントとすればよい。
【0047】
なお、本明細書で言及される食品は、健康食品や機能性食品を含み、特定保健用食品や栄養機能食品などの保険機能食品であっても一般食品であってもよい。また、サプリメントは、栄養補給を主な目的とする補助食品のことで、栄養補助食品や健康補助食品や機能性補助食品が含まれ、特定保健用食品や栄養機能食品などの保険機能食品であってもよい。これらは、ヒト用であっても、ヒト以外の哺乳動物用であっても、ヒト以外の脊椎動物用であっても、ヒト以外の動物用であってもかまわない。
【実施例】
【0048】
[実施例1]
6週齢のICRマウスを2週間粉末飼料で飼育し、粉末飼料に馴化させた。足底筋に過負荷を与えるため、8週齢時に両脚の腓腹筋とヒラメ筋を切除して切開創を縫合し、その上から接着剤で接着した。対照群(非切除群)については飼育を行わず、その他の群の手術日に足底筋を採取した。各群9−10匹の手術前体重の平均が等しくなるように、均等に割り付けた後、表1に記載の試験食を3週間自由摂取させた。試験食のベースはCE2粉末飼料(日本クレア)とし、そこにEMIQとして0.02%サンエミック(三栄源、15%EMIQ)(EMIQ濃度で、0.003%)を添加した。試験期間中は週3回、体重と摂餌量の測定を行った。(実施例中の%は、全てW/W%を表す)
【0049】
【表1】

【0050】
手術より3週間後に頸椎脱臼を行い、左脚足底筋の筋腹部分を切り出し、足底筋の凍結切片を作製し、HE染色を行って筋線維断面積および最短直径を測定(NIHイメージ,ver,J1.42)した。データは統計解析用ソフトSPSS(Ver.13.0)を用い、解析を行い、全て平均+/-標準誤差(SE)で示した。足底筋筋線維面積と最短直径について、C群とR群間で、OC群とOR群間の比較をT検定で行った。なお、手術3週間後の総摂餌量、体重および体重増加量、飼料効率について、各群で差はみられなかった。また、手術3週間後の足底筋重量および足底筋重量の体重比も、各群で差が見られなかった。
【0051】
図1に示すように、C群よりR群で、またOC群よりOR群で、足底筋筋線維面積と最短直径の両方とも、有意に増加が見られた。即ち、この結果は、0.02%サンエミックの投与により、筋肥大が促進されたことを示している。
【0052】
[実施例2]
6週齢のICRマウスを、実施例1と同様に処理したが、各群7−8匹を用い、ここでは表2に記載の試験食を自由摂取させた。試験食のベースはAIN93G粉末飼料(日本クレア)のタンパク源をホエイプロテイン(フォンテラ社製、アラセン)に置換したホエイ食とし、そこにEMIQとして0.004%、0.02%、0.2%のサンエミック(三栄源、15%EMIQ)(EMIQ濃度で、0.0006%、0.003%、0.03%)を添加した。試験期間中は週3回、体重と摂餌量の測定を行った。
【0053】
【表2】

【0054】
実施例1と同様に、筋線維断面積および最短直径を測定し、解析を行った。なお、実施例1と同様、手術3週間後の総摂餌量、体重および体重増加量、飼料効率について、各群で差はみられなかった。また、手術3週間後の足底筋重量および足底筋重量の体重比も、各群で差が見られなかった。
【0055】
図2に示すように、筋線維横断面積については、EMIQを含まないOW群、EMIQを中濃度に含むMR群に対してEMIQを高濃度含むHR群で筋線維横断面積が有意に高値を示す。EMIQを低濃度に含むLR群に対しては、有意水準を5%にとると有意ではないが、p値は0.1であり、EMIQを高濃度含むHR群で、かなり高値を示す傾向が強いといえる。最短直径については、OW群、LR群、MR群のいずれに対しても、HR群は高値を示す傾向が強かった(p=0.159-0.165)。
【0056】
これらの結果より、ホエイプロテインを餌のベースとした場合、サンエミックの含有量が0.2%以上で効果が確認された。これは、ホエイプロテイン自体に筋損傷の修復効果があるため、EMIQが低濃度では、ホエイプロテインの効果に隠れてしまったのではないかと考えられる。しかしながら、その様な強い効果のある物質であっても、EMIQを適量添加することによって、筋肥大がさらに促進されることが証明された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
α-グルコシルイソクエルシトリンを有効成分として含有する筋肥大促進剤。
【請求項2】
酵素処理イソクエルシトリンを含有することを特徴とする請求項1に記載の筋肥大促進剤。
【請求項3】
α-グルコシルイソクエルシトリン、及び、カゼインプロテイン、クレアチン、グルタミン、ホエイプロテイン(乳清)、大豆プロテイン、BCAA、アルギニン、シトルリン、オルニチンからなる群から選択される少なくとも一つを含有する食品組成物。
【請求項4】
酵素処理イソクエルシトリンを含有することを特徴とする請求項3に記載の食品組成物。
【請求項5】
α-グルコシルイソクエルシトリン及びホエイプロテインを含有する請求項3に記載の食品組成物。
【請求項6】
酵素処理イソクエルシトリンを含有することを特徴とする請求項5に記載の食品組成物。
【請求項7】
請求項3から6のいずれか1項に記載の食品組成物を含有する食品。
【請求項8】
α-グルコシルイソクエルシトリン、及び、カゼインプロテイン、クレアチン、グルタミン、ホエイプロテイン(乳清)、大豆プロテイン、BCAA、アルギニン、シトルリン、オルニチンからなる群から選択される少なくとも一つを含有するサプリメント。
【請求項9】
酵素処理イソクエルシトリンを含有することを特徴とする請求項8に記載のサプリメント。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−12327(P2012−12327A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149911(P2010−149911)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000006116)森永製菓株式会社 (130)
【Fターム(参考)】