説明

筋萎縮に対する可溶性食物繊維の使用

食物繊維が少なくとも30重量%のガラクトオリゴ糖または主に無水ピラノース単位を有し、3〜10単位の鎖長を有する他のオリゴ糖を含んでなる場合、食物繊維を含有する栄養組成物は、筋萎縮の治療に有用である。前記組成物は、他のオリゴ糖または多糖類、特に多数の無水フラノース単位を有する多糖類をさらに含んでよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筋萎縮の発生の治療または減少のための、非消化性オリゴ糖を含んでなる栄養組成物または医薬組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
重篤な体重減少および特に筋萎縮は、疾患、障害および心的外傷に罹患している患者において広範に生じる深刻な現象である。慢性疾患における筋萎縮(MWと略される)は、1ヶ月以内に5%より多く体重が不随意に減少することを意味する。除脂肪体重(LBMと略される)の低下がより緩やかにより長い期間で生じる場合、発明者は、慢性的な筋萎縮と表し(CMWと略される)、特に、6ヶ月で10%より多く体重が減少する場合である。MWは、典型的に、心的外傷または手術の回復の間に観察される。CMWは、典型的に、癌、AIDS、COPD、糖尿病および心疾患のような重篤な疾患において観察される。筋萎縮の割合は、罹患率および死亡率の増大に関連する。疾患の結果としての筋萎縮の発生は、多因子性であると考えられる。筋萎縮は、栄養不良、特にタンパク質−エネルギー栄養不良によっても生じ得る。特に、後者のタイプの栄養不良は、EP0721742に示されているように、余分にタンパク質またはエネルギーを供給することにより治療または予防することができる。
【0003】
筋肉減少症(SPと略される)は、除脂肪筋肉量(lean muscle mass)における強度および機能の不随意性の減少であり、加齢に伴って生じる。SPは、高齢者における機能的な能力の低下のリスクを増大させ、必ずしも疾患とは関連しない。
【0004】
食物繊維は、体重減少を誘導するためにしばしば使用される。食物繊維は、食後の血中グルコースレベルを低下させ、飽満効果を有する。それ故、相当量の食物繊維の投与は、栄養不良、体重減少および筋萎縮の場合には通常勧められない。食物繊維は、結腸フローラに影響を及ぼすための臨床的な栄養に含まれ、特別な繊維またはその混合物は、例えばWO 02/26242において全身性の感染症の割合を減少させること、例えばEP-B 1105002において特別な免疫関連パレメータを増大させること、例えばTaper H., J Nutr., 129 (1999), 1488-1491において動物における選択された腫瘍の増殖速度を減少させることについて権利請求されている。
【0005】
多くのタイプの食物繊維は、栄養的な製品の製造において使用されている。粘度を強く増大させるものもあれば、溶解性を有し、口に入れた場合に砂のような感触を生じるものもある。それ故、筋萎縮または慢性的な筋萎縮を有する患者により容易に食され、高い粘度の液体飲料のような先行する製品の不都合を有さない、筋萎縮と闘い、予防する栄養的な製品に対する必要性がある。
【0006】
WO 2004/026294は、腫瘍誘発性の体重減少の効果を改善するためのロイシンを含む遊離必須アミノ酸の混合物の使用について開示している。前記混合物は、完全なタンパク質、ω-3脂肪酸および加水分解されたグアーガム等の可溶性繊維のようなさらなる成分と組み合わせてよい。
【0007】
米国特許第6,387,883号は、ω-3脂肪酸、分枝鎖アミノ酸、および可能であれば食物繊維を含むさらなる成分の投与によるカヘキシーおよび摂食障害の治療について教示する。
【0008】
米国特許第2005/153019号は、ホエイタンパク質、ω-3脂肪酸、糖質、ビタミン等を含有する組成物を与えることにより体内タンパク質合成を刺激することに関する。前記組成物は、ビフィズス菌の増殖を促進するためのフルクトオリゴ糖のようなプレビオティック繊維をさらに含んでよいが、そのような組成物についてはさらに説明されていない。
【0009】
米国特許第5,444,054号は、ω-3脂肪酸EPAおよびDHAと、アラビアゴムおよびフルクトオリゴ等およびキシロオリゴ糖のような非消化性の糖質との組み合わせを使用して、潰瘍性結腸炎または大腸炎における栄養状態を改善する方法を教示する。
【発明の説明】
【0010】
少なくとも30重量%の非消化性オリゴ糖を含んでなる食物繊維およびそのような繊維を含有する栄養的な製品または医薬品がこのような必要性を満たすことは驚くべき発見である。これは、体重減少を誘発するために繊維をしばしば使用してきた先行技術と比較される。本発明において使用される非消化性オリゴ糖は、3〜10の無水モノース(anhydromonose)単位の鎖長を有する。
【0011】
好ましい実施形態において、非消化性オリゴ糖の無水モノース単位は、多数の無水ピラノース単位を有する。これらの無水ピラノース単位は、六員環構造を有し、ガラクトース、マンノース、キシロースのようなアルドースの無水形態、ならびにそれらのデオキシ形態(フコースおよびラムノースのような)、ガラクツロネートおよびグルクロネートのようなそれらの酸形態、それらのアミノ形態およびN-アシルアミノ形態(ガラクトサミンのような)、ならびにそれらのより高い相同体(ノイラミン酸および他のシアル酸のような)を含んでなる。それらは、オリゴ糖が本質的に非消化性である限り、無水グルコース単位およびその誘導体も含んでよい。それ故、前記オリゴ糖は、2より多い、または好ましくは2より少ないα-1,4-結合無水グルコース単位を含まない。また、少数の他の無水モノース単位、例えば無水アラビノース単位(ピラノシドまたはフラノシド型)は、オリゴ糖中に存在してよい。前記無水モノース単位は、1の無水モノースの1位(アノマー)炭素原子と隣接する無水モノース部分の2位、3位、4位(またはヘキソースの場合6位)の炭素原子との間で酸素原子により相互に連結されてよく、多くの非消化性の糖質について先行技術で述べられている。
【0012】
この実施形態の好ましいオリゴ糖は、ガラクト-、マンノ-および/またはキシロ-オリゴ糖である。それらは、ガラクトース、マンノースおよび/またはキシロース単位を含むホモオリゴ糖またはヘテロオリゴ糖であってよく、好ましくは末端部位に、10〜35%の無水グルコースおよび/または無水アラビノース単位、無水フコース、無水グリコサミンおよび/またはN-アセチル-無水グルコサミン単位をさらに含んでよい。ヘテロオリゴマーが有効であるが、費用対効果の観点から、相同性のピラノースオリゴ糖の変異体を含むことがしばしば好ましい。この文脈において、ガラクトオリゴ糖におけるグルコース単位のように末端部位に単一の異なる単糖単位を有するオリゴ糖は、ホモオリゴマーであると考えられる。
【0013】
もう1つの実施形態において、非消化性オリゴ糖の無水モノース単位は、多数の無水フラノース単位を有する。これらの無水フラノース単位は、5員環構造を有し、フルクトースもしくはアラビノースのようなアルドースまたはケトースの無水形態、ならびにそれらのデオキシ形態、それらのアミノ形態およびN-アシルアミノ形態、ならびにそれらのより高い相同体を含んでなる。それらは、オリゴ糖が本質的に非消化性である限り、無水グルコース単位およびその誘導体も含んでよい。それ故、これらのオリゴ糖は、2より多い、または好ましくは2未満のα-1,4-結合無水グルコース単位を含まない。また、ピラノシドまたはフラノシド型のわずかな他の無水モノース単位は、これらのオリゴ糖中に存在してよい。
【0014】
本発明のさらなる好ましい実施形態において、前記オリゴ糖は2つの分類で構成され、1つは多数の無水ピラノース単位を有し、1つは多数の無水フラノース単位を有し、それぞれ上記で定義されている。この実施形態において、食物繊維は、少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは60重量%の非消化性の全オリゴ糖を含み、30〜98重量%、好ましくは50〜96%のオリゴ糖が第1の分類(ピラノースベース)であり、2〜50重量%、好ましくは4〜30重量%のオリゴ糖が第2の分類(フラノースベース)である。これらの重量%は、繊維組成物の重量に基づく。第1の分類と第2の分類との間の重量比は、好ましくは98:2〜2:98であり、より好ましくは97:3〜10:90であり、最も好ましくは96:4〜50:50である。
【0015】
本発明において使用されるオリゴ糖は、当該分野で周知の方法により得られる。第1の方法によると、適切な多糖類は、化学的(酸)、好ましくは酵素的な加水分解により、選択的またはランダムに加水分解されてよい。例えば、グアーガム、ローカストビーンガム、イナゴマメまたはタラ(tara)ガラクトマンナンは、pH3〜6でβ-マンナナーゼおよび/またはα-ガラクトシダーゼで処理され、特に、α-ガラクトシダーゼの作用を介してガラクトースの一部または全部がポリマーから除去される場合に、低粘度の産物を産生する。もう1つの例として、ガラクタンおよびアラビノガラクタンは、任意にアラビノシダーゼと組み合わせて、適切な(エンド-β-1,3-)ガラクタンにより加水分解され、アラビノース側鎖を除去されてよく、キシランおよびアラビノキシランは、任意にアラビノシダーゼおよび/またはガラクツロニダーゼと共に、(β-)キシラーゼを用いて加水分解されてよい。適切な加水分解条件を選択することにより、必要な鎖長を有する低粘度のオリゴ糖が得られる。一般的に、ガラクトシル-オリゴマンナン、アラビノシル-オリゴガラクタンおよびアラビノシル-オリゴキシランのようなヘテロ-オリゴ糖は、内解糖的な(endoglycolytic)加水分解に基づいて得られ、側鎖は除去されず、大部分のホモオリゴ糖は側鎖の酵素的な除去により得られる。グアーガムのようなガラクトマンナンの加水分解の場合、マンノビオース、マンノトリオースおよびガラクト-マンノ-オリゴ糖の量は、好ましくはオリゴ糖の20%より多く、好ましくは40〜100%である。さらなる例として、イヌリンは、そのまままたは化学的もしくは酵素的な加水分解の後に使用することができ;そのような加水分解は、末端グルコース単位を有するオリゴフルクトースおよび純粋なオリゴフルクトースを結果として生じる。
【0016】
第2の一般的な方法によると、(ヘテロ)オリゴ糖は、1以上の適切な酵素またはこれらの酵素を備えた1以上の微生物もしくは酵母を用いた適切な基質の酵素的なグルコース転位により製造されてよい。適切な基質の例は、モノ-もしくはジ-ヘキソース、ラクトースもしくは繊維またはグアーガムの加水分解産物のようなその部分的な加水分解物の溶液である。
【0017】
特に、ガラクトオリゴ糖(GOS)は、効果的な栄養組成物または医薬組成物の製造に非常に適している。適切なガラクトオリゴ糖は、商業的に入手可能であり、β-ガラクトシダーゼを用いた反応によりラクトースから製造されるオリゴ糖を含む。好ましくは、これらのガラクトオリゴ糖は、単糖およびラクトースのような二糖類に関わらず、少なくとも67重量%、特に少なくとも80重量%の3〜5単位の鎖長を有するオリゴ糖を含んでなる。
【0018】
可溶性食物繊維組成物の有効量は、体重80kgの人に対して0.1〜20g、好ましくは0.6〜10g、より好ましくは0.8〜5gの用量である。異なる体重のヒト(小児を含む)の場合、用量は比例的に減少する。kg体重当りの用量の場合、好ましい1日量は、1.2〜250mg/kg/日、好ましくは7.5〜130mg/kg/日、より好ましくは10〜65mg/kg/日である。
【0019】
可溶性の繊維画分の他の部分は、可溶性および発酵性および非発酵性の繊維のような非オリゴ糖が含まれてよく、フラノース型の多糖類が含まれる。例は、イヌリン、他のフルクト多糖類(フルクタン)、適度に加水分解されたペクチンならびにグルコマンナン(例えばコンニャク)、ガラクトマンナン(例えばグアー)、キサンタン、およびアラビアゴムのような他のガムである。これらの多糖類(10単位より多い鎖長(DP)を有する)は、可溶性の繊維組成物の70重量%以下含まれてよい。しかしながら、前記繊維組成物は、少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%、例えば95%または98%または100%以下のオリゴ糖、特に上述したような(ガラクト-、マンノ-、キシロ-)オリゴ糖を含むことが好ましい。残りは、1以上の可溶性の多糖類繊維、特にフルクタン型により構成されてよい。可溶性繊維画分に加えて、不溶性の繊維が繊維混合物中に組み込まれてよく、耐性デンプン、セルロースのような不溶性発酵性および非発酵性の繊維である。前記不溶性繊維は、可溶性繊維画分の50重量%未満、好ましくは5〜25重量%存在することが好ましい。
【0020】
特別な実施形態において、前記可溶性繊維組成物は、2〜50重量%、特に5〜30重量%のフルクタン(DP≧3)および/または2〜35重量%、特に5〜25重量%の加水分解されたガラクトマンナン(10より多い無水モノース単位を有する)のような他の可溶性多糖類を含んでよい。
【0021】
前記組成物に有益に含まれてよい他の成分は、特定のタンパク質、脂質、糖質、および微量成分である。
【0022】
前記組成物は、液体、半固体または固体であってよい。溶液において、本発明によるオリゴ糖の包含は、有効量が包含された場合、100sec−1せん断および20℃において、70以下、好ましくは1〜40、より好ましくは2〜30MPa.sの粘度を有する非粘稠性の産物を結果として得られ、チューブを通して与えるのに適した溶液となる。液体において、有効量は1人分の量で含まれてよい。チューブで与える場合、1日当り2000ml、1日2回与えることが想定される。液体製品が補助剤として例えば200mlの量で使用される場合、濃度は適宜計算される。典型的に、オリゴ糖の有効濃度は、15%w/v以下、例えば0.05〜10%w/v、好ましくは0.5〜9%w/v、より好ましくは1〜8%w/vである。生成物が、プリンのような半固形またはバーのような固形である場合、前記生成物は補助剤として使用され、25〜200mlの1人分の量である。濃度は、生成物25〜200g当り0.1〜20gであってよい。エネルギーベースで、可溶性繊維組成物の量は、好ましくは419KJ(100kcal)当り0.5〜10g、より好ましくは419KJ(100kcal)当り1〜4gである。
【0023】
液体組成物のエネルギーは、典型的に、2.5〜16.8、好ましくは5.0〜16.8、より好ましくは5.4〜8.4、最も好ましくは6.3〜8.0KJ/ml(0.6〜4.0、好ましくは1.2〜4.0、より好ましくは1.3〜2.0、最も好ましくは1.5〜1.9kcal/ml)の範囲である。
【0024】
本発明による栄養組成物は、少なくともタンパク質画分を含むことが好ましい。繊維画分とタンパク質画分との間の重量比は、好ましくは5:95〜75:25、より好ましくは10:90〜50:50である。
【0025】
前記タンパク質画分は、好ましくは、全アミノ酸に基づいて、45重量%より多い、好ましくは48〜70重量%、より好ましくは52〜65重量%の必須アミノ酸を含んでなるべきである。必須アミノ酸は、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン、リシンおよびスレオニンである。液体生成物における必須アミノ酸の量は、典型的に、100ml当り4.75gより多く、好ましくは4.9〜9.0g、より好ましくは5.1〜7gである。
【0026】
特に、ロイシン+イソロイシンの量は、アミノ酸の全量に基づいて、18.0重量%より多いことが好ましく、より好ましくは18.5〜25重量%である。ロイシンの量は、好ましくは11.0重量%より多く、より好ましくは11.4重量%より多く、最も好ましくは12.2〜20重量%である。分枝鎖アミノ酸の量は、典型的に、液体生成物100ml当り2.9gより多く、好ましくは3.0〜4.0g、より好ましくは3.0〜3.4gである。
【0027】
タンパク質画分のエネルギー寄与は、好ましくは栄養組成物の25〜75en%、より好ましくは26〜60en%、最も好ましくは26〜50en%である。完全なタンパク質画分のエネルギー寄与は、好ましくは栄養組成物の17〜40en%、より好ましくは19〜30en%、最も好ましくは20〜29en%である。タンパク質画分は、好ましくは、10%より多い、より好ましくは20〜60%の完全なホエイタンパク質またはそのペプチド断片を含むべきである。
【0028】
液体画分は、ω-3型の長鎖脂肪酸を含んでなるべきである。長鎖は、少なくとも18C原子を意味する。特に好ましいのは、20〜26の炭素原子および4以上の不飽和結合を有する脂肪酸である。長鎖ポリ不飽和脂肪酸の全量は、全脂肪酸の和の10重量%より多く、好ましくは15〜50重量%、より好ましくは17〜42重量%、特に18〜42重量%であるべきである。α-リノレン酸、ステアリドン酸、チムノドン酸(EPA)、ドコサペンタエン酸(DPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)およびニシン(nisinic)酸(THA)のようなω-3長鎖ポリ不飽和脂肪酸(LCP)と可溶性繊維との間の重量比は、好ましくは90:10〜5:95、より好ましくは80:20〜15:85である。長鎖ポリ不飽和脂肪酸および可溶性繊維および任意のさらなる成分の組み合わせは、適切に、食品補助剤として使用されてよい。前記可溶性繊維は、ガラクト-、マンノ-および/またはキシロ-オリゴ糖、特にガラクトオリゴ糖を、例えば可溶性繊維の少なくとも50%w/wのレベルで含んでなることが好ましい。液体画分のエネルギー寄与は、好ましくは栄養組成物の15〜45en%、より好ましくは20〜35en%である。
【0029】
糖質画分は、グルコース、マルトデキストリン、デンプンおよび/または他の糖を含んでよい。好ましい実施形態において、前記糖質画分は、筋萎縮を予防するために、5〜50重量%のリボース、特に8〜25重量%のリボースを含んでなる。可溶性繊維組成物に基づいて、リボースは、好ましくは9:1〜1:9、より好ましくは4:1〜1:4の重量比で存在する。この組み合わせは、食品補助剤として使用することができる。そのような補助剤は、他の消化可能な糖質をリボース1当り1〜19の割合で含んでなることが好ましい。脂質および/またはタンパク質を含有する栄養組成物において、消化可能な糖質画分のエネルギー寄与は、好ましくは組成物の15〜55en%、より好ましくは25〜50en%である。
【0030】
糖質画分はラクトースを含んでなることがさらに好ましい。存在する場合、ラクトースの量は、消化可能な糖質画分の2重量%より多く、より好ましくは3〜40重量%、最も好ましくは10〜30重量%である。有用な糖質組成物は、上述したように3〜40重量%、好ましくは5〜30重量%の可溶性繊維組成物、および3〜40重量%、好ましくは5〜30重量%のリボース、および/または5〜40重量%、好ましくは8〜30重量%のラクトース、および好ましくは20〜80重量%、より好ましくは35〜70重量%の他の消化可能な糖質を含んでよい。
【0031】
先行技術に反して、筋萎縮の速度の減少または体重の減少を達成するための低い血糖指数を有する有用な糖質画分を含むことは重要である。前記有用な糖質画分は、低い血糖指数(GI)を有すると定義され、その値はグルコースの値の70%未満である。前記糖質画分は、好ましくは20重量%、より好ましくは40〜80重量%のこれらの糖質を含むべきである。低いGIの糖には、ラクトース、トレハロース、イソマルトオリゴ糖(α-1,6グルコース単位の主な部分を有するオリゴ糖)が含まれる。
【0032】
疾患を有する人の食物消費量を増大させるために、少量の甘い糖を含むことは好ましい。ショ糖の70%未満の甘みを有する糖の量は、前記有用な糖質画分の20重量%より多いべきである。特に、前記量は25〜60重量%である。甘みの少ない糖には、パラチノース(イソマルツロース)、マルトデキストリンDE2-47、ガラクトース、マンノース、ラクトースおよびトレハロースが含まれる。あるいは、ガラクトース、マンノース、ショ糖およびマルトース以外の他のグルコース含有二糖類(ラクトース、トレハロースおよびパラチノースを含む)、ならびにイソマルト-オリゴ糖から選択される低GIおよび/または甘みの少ない糖の全割合は、好ましくは20〜80重量%、より好ましくは25〜60重量%である。
【0033】
ヒトの適切な食事に対して必要な全てのミネラルおよび微量成分は、典型的に含まれる。典型的に、1日所要量の1〜4倍含まれる葉酸を除いて、1日量当り0.5〜1.5×1日所要量が含まれる(特に300〜1200μg/日または50〜1000μg、特に60〜600μg/gの可溶性繊維)。
【実施例】
【0034】
例1:
物質および方法
雄のCD2F1マウス(BALB/c×DBA/2, Harlan, the Netherlands)を使用し、腫瘍を有する群(TB)においてカヘキシーを誘発するためにC-26腺癌細胞を使用し、一方、対照マウス(C)には偽の注射を行った。実験1において、食物は、51%ガラクトオリゴ糖(GOS)およびフルクト多糖類(9:1)、19%マルトデキストリン、16%ラクトースならびに14%グルコースで構成された。実験2において、FOSは付加的なGOSで置換された。トランス-ガラクトオリゴ糖のGOS噴霧乾燥粉末はある程度の重合度(dp)3-8を有し(Vivinal GOS, Borculo Domo, Zwolle, NL)、FOSは高い重合度を有していた(Raftiline HP, Orafti, Wijchen, NL; 平均dp >23)。腫瘍細胞の接種の後、腫瘍量および骨格筋(長指伸筋(EDL)およびヒラメ筋)を分析し、重さを量った。
【0035】
実験1
-対照マウス =C
-腫瘍を有するマウス =TB
-腫瘍を有する+GOS/FOS =TB-Gos Fos
実験2
-対照マウス =C
-腫瘍を有するマウス =TB
-腫瘍を有する+GOS =TB-Gos
結果
以下の表は、実験1および2の筋肉量(mg、+Cに対する%減少)を示す。
【表1】

【0036】
上記データから、ガラクトオリゴ糖は癌カヘキシーにおける筋肉減少の減弱の原因であることが分かる。アスタリスク(*)は、TB群との統計学的な違い(P<0.025)を示す。
【0037】
例2:
液体製剤は、慢性的な筋萎縮に罹患している患者のために調製された。100ml当り以下を含む:
エネルギー 658kJ(157kcal)
タンパク質[8.2gカゼインおよびホエイ、1.8g Leu] 10.0g
脂質[魚油、植物] 5.3g
a. EPA 0.56g
b. DHA 0.27g
糖質 17.4g
a. ショ糖 4.21g
b. マルトデキストリン 8.42g
c. トレハロース 4.21g
d. ラクトース 0.59g
繊維 2.05g
a. インスリンDP>20 0.1g
b. 加水分解されたインスリンDP<20 0.08g
c. GOS 1.53g
d. 耐性デンプン 0.05g
e. セルロース 0.31g。
【0038】
例3:
液体製剤は、慢性的な筋萎縮に罹患している患者のために調製された。前記製剤は、100ml当り以下を含む:
エネルギー 662kJ(158kcal)
タンパク質[カゼイン、ホエイ+1g Leu、0.5g Met、0.5g Arg] 10.0g
脂質[魚油、植物] 5.3g
糖質[糖類ブレンド] 17.5g
繊維[GOS+ポリフルクトース9:1] 2.1g
灰分 1.2g。
【0039】
例4:
液体製剤は、慢性的な筋萎縮に罹患している患者のために調製された。前記製剤は、100ml当り以下を含む:
エネルギー 587kJ(140kcal)
タンパク質[カゼイン+0.9g Leu、0.5 Ile、0.2g Val] 9g
脂質 5.0g
糖質(10重量%遊離リボース) 15g
繊維[加水分解されたグアー+GOS比3:7] 1.5g
ミネラル/微量成分/60μgの葉酸を含むビタミン 2.0g。
【0040】
例5:
慢性的な筋萎縮に罹患している患者のための液体製剤は、100ml当り以下を含む:
タンパク質[カゼイン6.1+ホエイ2.9+遊離Leu 1.1] 10.1g
脂質[EPA 0.6、DHA 0.29、ω-3/ω-6=1.16、
PUFA’s 2.5;MUFA 1.5;飽和0.76] 5.6g
消化可能な糖質[ショ糖3.92、ラクトース0.7、
マルトデキストリン7.84、トレハロース3.92] 16.4g
繊維[加水分解されたインスリンDP<20 0.2+GOS 1.8] 2.0g
ミネラル/微量成分/ビタミン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筋萎縮および/または慢性的な筋萎縮および/または筋肉減少症の発生の治療または減少のための栄養組成物または医薬組成物を調製するための可溶性食物繊維の使用であって、前記食物繊維は、少なくとも30重量%の3〜10無水モノース単位の鎖長を有するオリゴ糖を含んでなる使用。
【請求項2】
請求項1に記載の使用であって、前記食物繊維は少なくとも30重量%のオリゴ糖を含んでなり、前記無水モノース単位は、ガラクトース、マンノース、キシロース、それらのデオキシ形態、アミノ形態およびN-アシルアミノ形態の群から選択される多数の無水ピラノース単位を有する使用。
【請求項3】
請求項1または2に記載の使用であって、前記食物繊維は、前記無水モノース単位が多数の無水ガラクトース単位を有する30〜96重量%のオリゴ糖ならびに前記無水モノース単位が多数の無水フルクトース単位を有する4〜50重量%のオリゴ糖および/または多糖類を含んでなる使用。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用であって、前記食物繊維は、50〜100重量%、好ましくは70〜98重量%の前記オリゴ糖を含んでなる使用。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用であって、前記筋萎縮は、腫瘍、手術、心的外傷または炎症と関連する使用。
【請求項6】
請求項5に記載の使用であって、前記腫瘍は、肝臓、膵臓、肺、皮膚、食道、脳、頭および頸部における腫瘍である使用。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の使用であって、前記組成物は、消化可能な糖質、脂質およびタンパク質を含んでなる栄養組成物である使用。
【請求項8】
請求項7に記載の使用であって、前記栄養組成物は、100sec−1のせん断速度、20℃において、35Mpa.s未満の粘度を有する液体組成物である使用。
【請求項9】
請求項7または8に記載の使用であって、前記栄養組成物は、5.0〜16.8kJ/ml(1.2〜4.0kcal/ml)、好ましくは5.4〜8.4kJ/ml(1.3〜2.0kcal/ml)のエネルギー密度を有する使用。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の使用であって、前記組成物は、ヌクレオチド合成および葉酸代謝を補助する成分、特に繊維組成物1g当り50〜1000μgの量の葉酸をさらに含んでなる使用。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の使用であって、前記組成物は、グルコースの血糖指数の70%未満の血糖指数を有する糖質画分をさらに含んでなる使用。
【請求項12】
10〜90重量%の請求項1〜4のいずれか1項で定義された可溶性繊維組成物および90〜10重量%のリボースを含有する食品補助剤。
【請求項13】
3〜40重量%の請求項1〜4のいずれか1項で定義された可溶性繊維組成物、3〜40重量%のリボース、5〜40重量%のラクトースおよび20〜80重量%の他の消化可能な糖質を含有する糖質組成物。
【請求項14】
10〜95重量%の請求項1〜4のいずれか1項で定義された可溶性繊維組成物、および5〜90重量%のω-3脂肪酸を含有する食品補助剤であって、前記可溶性繊維はガラクトオリゴ糖を含んでなる食品補助剤。
【請求項15】
請求項1〜4のいずれか1項で定義された可溶性繊維組成物およびタンパク質画分を含有する栄養組成物であって、前記繊維組成物と前記タンパク質画分との重量比は5:95〜75:25であり、前記タンパク質画分は少なくとも48重量%の必須アミノ酸を含有し、前記可溶性繊維はガラクトオリゴ糖を含んでなる栄養組成物。

【公表番号】特表2009−519328(P2009−519328A)
【公表日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−545522(P2008−545522)
【出願日】平成18年12月18日(2006.12.18)
【国際出願番号】PCT/NL2006/050320
【国際公開番号】WO2007/069900
【国際公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(505296821)エヌ.ブイ.・ヌートリシア (32)
【Fターム(参考)】