説明

筐体、塗膜の形成方法、電子機器及びその製造方法

【課題】基材の材料として、汎用される石油系材料を用い、基材との密着性に優れ、しかも透明度及び硬度が高い塗膜を実現し、環境負荷が小さく信頼性の高い筐体及び電子機器を実現する。
【解決手段】筐体基材1を石油系材料、その塗膜10をポリ乳酸を含む材料で形成し、塗膜10の筐体基材10との界面部位よりも塗膜10の表面部位の方がでポリ乳酸の含有率が高く、前者の含有率が30%以上40%以下であり、後者の含有率が50%以上70%以下とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体、塗膜の形成方法、電子機器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境への配慮から、ノート型パーソナル・コンピュータ(ノートパソコン)、携帯電話等の電子機器にも環境負荷の低減が求められている。現在、電子機器の筐体材料は、ウレタン樹脂又はエポキシ樹脂等の石油を原料とする樹脂を主成分としており、環境負荷の低い材料の適用が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−129094号公報
【特許文献2】特開2004−224887号公報
【特許文献3】特開2006−282960号公報
【特許文献4】特開2003−261752号公報
【特許文献5】特開2010−83942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近時では、電子機器の筐体の塗装に、環境負荷の小さい材料を用いた塗料の適用が検討されている(例えば特許文献1〜5を参照)。
環境負荷の小さい材料としては、ポリ乳酸を含む材料を用いた塗料が好適である。しかしながらこの場合、基材へのアタックが強過ぎて塗料として不適であること(特許文献4の場合)、塗膜が白味を帯びて透明性を損なうこと(特許文献5の場合)等の問題がある。
【0005】
ポリ乳酸を主成分とする塗料は、アクリル樹脂又はウレタン樹脂等の石油系樹脂と混合し、或いはイソシアネート系架橋剤と混合する等して用いるのが一般的である。しかしながらこの場合、基材に依って付着性が異なり、良好な硬度及び外観と良好な付着性とを満足する塗膜が得られ難いという問題がある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、基材の材料として、汎用される石油系材料を用い、基材との密着性に優れ、しかも透明度及び硬度が高い塗膜を実現し、環境負荷が小さく信頼性の高い筐体、塗膜の形成方法、電子機器及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
筐体の一態様は、石油系材料からなる基材と、前記基材上を塗料で塗装してなる塗膜とを備え、前記塗料はポリ乳酸を含み、前記塗膜は、当該塗膜の表面部位の方が当該塗膜の前記基材との界面部位よりもポリ乳酸の含有率が高い。
【0008】
塗膜の形成方法の一態様は、石油系材料からなる基材上に、ポリ乳酸を含む第1の塗料を塗装する工程と、前記基材上に塗装された前記第1の塗料を半乾燥させる工程と、半乾燥状態の前記第1の塗料上に、ポリ乳酸を含む第2の塗料を塗装する工程と、前記基材上に順次塗装された前記第1の塗料及び前記第2の塗料を一括して熱乾燥し、第1の塗膜及び第2の塗膜が積層されてなる塗膜を形成する工程とを含み、前記塗膜は、当該塗膜の表面部位の方が当該塗膜の前記基材との界面部位よりもポリ乳酸の含有率が高い。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、基材の材料として、汎用される石油系材料を用い、基材との密着性に優れ、しかも透明度及び硬度が高い塗膜が得られ、環境負荷が小さく信頼性の高い筐体、及び電子機器が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態による筐体を有するノートパソコンの製造方法を工程順に示すフロー図である。
【図2】作製されたノートパソコン筐体を示す概略断面図である。
【図3】本実施形態によるノートパソコンを示す概略斜視図である。
【図4】本実施形態によるノートパソコン筐体の構成要素であるフロントカバーを示す概略平面図である。
【図5】本実施形態によるノートパソコン筐体の構成要素であるバックカバーを示す概略平面図である。
【図6】本実施形態によるノートパソコン筐体の構成要素であるアッパーカバーを示す概略平面図である。
【図7】本実施形態によるノートパソコン筐体の構成要素であるロアカバーを示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態を詳述するにあたり、石油系材料からなる基材に、ポリ乳酸を含む塗料を塗装して塗膜を形成した場合の、塗料中のポリ乳酸の含有率と塗膜性能との関係について調べた。その結果を以下の表1に示す。
【0012】
【表1】

【0013】
塗料中のポリ乳酸の含有率を上げると、塗膜が脆くなって鉛筆硬度が低下したり、白味を帯びて透明性が劣化して外観が悪くなる傾向がある。塗膜性能としては、ポリ乳酸の含有率が50%〜70%程度の場合が良好である。しかしながら、石油系基材に対する付着性を確保するためには、塗料中のポリ乳酸の含有率を下げる必要があり、環境負荷の低減効果がさほど期待できなくなる。
【0014】
以下、上記の検討結果を考慮して得られた具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態を適用する筐体としてノートパソコンの筐体を例示し、ノートパソコンの構成を製造方法と共に説明する。本実施形態による筐体は、ノートパソコンのみならず、携帯電話等に代表される各種の電子機器の筐体に適用することができる。
【0015】
図1は、本実施形態による筐体を有するノートパソコンの製造方法を工程順に示すフロー図である。
先ず、石油系材料を用いて筐体基材を作製する(ステップS1)。
詳細には、石油系材料、例えばアクリル樹脂又はウレタン樹脂等を含む材料を用いて射出成形を行う。即ち、所定の射出成形機により、石油系材料をノートパソコンの筐体基材の金型に注入して固化する。これにより、石油系材料からなるノートパソコンの筐体基材が作製される。
【0016】
本実施形態では、筐体基材上に塗装する塗料として、ポリ乳酸をバインダー樹脂として含む塗料を用いる。
このポリ乳酸を含む塗料は、以下のように作製する。
例えば酢酸エチル等の溶剤に、例えば非晶質のポリ乳酸を溶解し、所定濃度のポリ乳酸溶液を作製する。
ポリ乳酸溶液と、ポリ乳酸との相溶性を有する塗料用の樹脂、例えばアクリル樹脂とを配合し、塗料を作製する。ポリ乳酸との相溶性を有する塗料用の樹脂として、アクリル樹脂の代わりに、ウレタン樹脂又はイソシアネート系樹脂等を用いても良い。ここで、ポリ乳酸のアクリル樹脂との配合率(固形分比)、即ちポリ乳酸の含有率(固形分比)が異なる2種の塗料を作製する。これらの樹脂を第1の塗料及び第2の塗料とする。第1の塗料及び第2の塗料は、後者が前者よりもポリ乳酸の含有率が高いものである。具体的には、第1の塗料は、ポリ乳酸の含有率が50%未満、より好ましくは30%以上40%以下の所定値とされる。第2の塗料は、ポリ乳酸の含有率が50%以上70%以下の所定値とされる。
作製された第1の塗料及び第2の塗料は、適宜希釈して、スプレー塗装が可能な粘度に調整される。このとき、第1の塗料用のシンナーには、揮発性の高い、沸点が100℃以下の溶剤を10%未満の含有率となるように配合しておくことが望ましい。
【0017】
続いて、第1の塗料を筐体基材上に塗装する(ステップS2)。
詳細には、上記のように作製された第1の塗料を用い、例えばスピンドル塗装機により筐体基材上にスプレー塗装する。
【0018】
続いて、第1の塗料を半乾燥させる(ステップS3)。
詳細には、スピンドル塗装機において、表面に第1の塗料が塗装された筐体基材を、スプレーを停止させた状態で所定時間、例えば5分間程度回転を継続させる。これにより、筐体基材上に塗装された第1の塗料が半乾燥する。ここで半乾燥とは、塗装された第1の塗料が、その上に重ねて塗装される第2の塗料と均一に混合することなく、少なくとも第1の塗料の筐体基材との界面部位と第2の塗料の表面部位とでポリ乳酸の含有率が異なる程度の乾燥状態であることを言う。第1の塗料は、揮発性の高い、沸点が100℃以下の溶剤を10%未満の含有率で含む。これにより、第1の塗料の半乾燥には熱処理が不要となり、上記のように筐体基材を所定時間回転させたり、セッティング時間を長目に設定したりすることのみで、第1の塗料の半乾燥が可能となる。
【0019】
続いて、第2の塗料を第1の塗料上に塗装する(ステップS4)。
詳細には、上記のように作製された第2の塗料を用い、スピンドル塗装機により、筐体基材上に塗装された第1の塗料上にスプレー塗装する。
【0020】
続いて、第1の塗料及び第2の塗料を一括して熱乾燥する(ステップS5)。
詳細には、筐体基材上に積層された第1の塗料及び第2の塗料を、50℃〜80℃程度の温度、例えば70℃で15分間〜60分間程度の時間、例えば40分間、熱乾燥する。これにより、筐体基材上に、第1の塗料及び第2の塗料が熱乾燥してなる第1の塗膜及び第2の塗膜が形成される。以上により、ノートパソコンの筐体基材上に第1の塗膜及び第2の塗膜が積層形成されてなるノートパソコン筐体が作製される。
【0021】
作製されたノートパソコン筐体の概略断面を図2に示す。
ノートパソコン筐体は、筐体基材1上に第1の塗膜2及び第2の塗膜3が順次積層して一体化し、塗膜10とされて構成される。塗膜10は、上記のように第1の塗料及び第2の塗料が一括して熱乾燥され、第1の塗料が固化して第1の塗膜2が、第2の塗料が固化して第2の塗膜3が形成されたものである。第1の塗膜2は膜厚3μm〜20μm程度、第2の塗膜3は膜厚5μm〜20μm程度に形成される。塗膜10では、第1の塗膜2と第2の塗膜3とが一体化される。そのため、その接続面(便宜上、破線で示す。)は不明瞭となり、接続面の近傍部位では、塗膜10の筐体基材1との界面へ向かうほど徐々に第1の塗料中のポリ乳酸の含有率(固形分比)に近づいてゆく。一方、塗膜10の表面へ向かうほど徐々に第2の塗料中のポリ乳酸の含有率(固形分比)に近づいてゆく。
【0022】
塗膜10では、その筐体基材1との界面部位におけるポリ乳酸の含有率と、その表面部位におけるポリ乳酸の含有率とが異なる。具体的には、前者の含有率が50%未満、より好ましくは30%以上40%以下の所定値とされる。一方、後者の含有率が50%以上70%以下の所定値とされる。
【0023】
本実施形態では、筐体基材1は石油系材料から形成され、塗膜10はポリ乳酸を含有する材料から形成される。塗膜10について、第1の塗膜2における筐体基材1との界面部位では、ポリ乳酸の含有率を比較的低く、具体的には50%未満に抑える。ここで、当該界面部位における含有率が30%未満では、塗膜材料(塗料)に環境負荷の小さいポリ乳酸を有意に用いているとは言い難い。当該界面部位における含有率が50%以上では、塗膜10の筐体基材1との密着性が低下する。密着性をより確実に得るには、当該界面部位における含有率を40%以下とすれば良い。従って、当該界面部位における含有率を30%以上40%以下の所定値とすることで、環境負荷が小さく、筐体基材1との密着性の高い塗膜10が得られる。
【0024】
一方、塗膜10について、第2の塗膜3における表面部位では、ポリ乳酸の含有率を比較的高くする。当該表面部位における含有率が50%未満では、塗膜材料(塗料)に環境負荷の小さいポリ乳酸を有意に用いているとは言い難い。当該表面部位における含有率が70%を越えると、塗膜10の透明性及び硬度が損なわれる可能性がある。従って、当該含有率を50%以上70%以下とすることで、環境負荷が小さく、透明性及び硬度の高い塗膜10が得られる。
以上のように、本実施形態では、石油系材料からなる筐体基材1を用いる場合に、環境負荷の小さい植物性樹脂であるポリ乳酸を塗膜10に用い、筐体基材1との密着性が高く、しかも透明度及び硬度が高い塗膜10を備えたノートパソコン筐体が実現する。
【0025】
ステップS5の後、作製されたノートパソコン筐体に、所定のパソコン機能を備えたノートパソコン本体を適宜装着して組み込み、ノートパソコンを作製する(ステップS6)。
図3に、上記のように作製されたノートパソコンの一例を示す。ノートパソコン20は、ノートパソコン本体12の表面の少なくとも一部がノートパソコン筐体11により覆われている。ノートパソコン筐体11は、ノートパソコン本体12のLCD12aのフロントカバー11a、LCD12aのバックカバー11b、アッパーカバー11c、ロアカバー11dからなる。
フロントカバー11aを図4に、バックカバー11bを図5に、アッパーカバー11cを図6に、ロアカバー11dを図7に、それぞれ示す。
【0026】
以上説明したように、本実施形態によれば、石油系材料からなる筐体基材1を用いる場合に、環境負荷の小さい植物性樹脂であるポリ乳酸を塗膜10に用いるも、筐体基材1との密着性に優れ、しかも透明度及び硬度が高い塗膜10が得られ、環境負荷が小さく信頼性の高いノートパソコン筐体、及びノートパソコンが実現する。
【実施例】
【0027】
以下、本発明の好適な諸実施例について説明する。本実施例では、上記した実施形態に基づいて作製されたノートパソコン筐体について、その密着性、鉛筆硬度、及び外観について、塗膜のポリ乳酸の含有率を変えて実際に調べた結果について説明する。
【0028】
(実施例1)
筐体基材の材料として、ポリカーボネート/アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(PC/ABS)を使用し、これを射出成形して平板を作製した。この平板を筐体基材のサンプルとして用いた。
塗料の材料として、非晶質ポリ乳酸である東洋紡株式会社の商品名バイロエコールBE−450を使用し、これを酢酸エチルに溶解させて50%溶液を作製した。以下の表2に示すような配合比(固形分比)で、塗料用アクリル樹脂と配合した塗料(1),(2),(3),(4),(5)を作製した。
【0029】
【表2】

【0030】
サンプル(4),(5)を、ミカサペイント製の商品名ハイコートシンナーで希釈し、スプレー塗装が可能な粘度に調整した。第1の塗料として用いる塗料(1)〜(3)には、ハイコートシンナーに、揮発性の高い沸点が100℃以下の溶剤、例えばシクロヘキサンを含有率が10%未満となるように追加して、粘度を調整した。
スピンドル塗装機を用いて、塗料(1)〜(3)を第1の塗料として平板上に塗装した。
スピンドル塗装機のスプレーを停止させた状態で、平板の回転を5分間継続した。これにより、各平板上に塗装された第1の塗料を半乾燥した。
【0031】
引き続き、スピンドル塗装機を用いて、塗料(2)〜(5)を第2の塗料として第1の塗料に重ねて塗装した。
第1の塗料及び第2の塗料を一括して、温度70℃で40分間、熱乾燥した。これにより、各平板上に第1の塗膜及び第2の塗膜が積層されてなる試料A〜試料Fを作製した。試料Aでは、第1の塗膜が塗料(1)、第2の塗膜が塗料(2)から形成される。試料Bでは、第1の塗膜が塗料(1)、第2の塗膜が塗料(4)から形成される。試料Cでは、第1の塗膜が塗料(1)、第2の塗膜が塗料(5)から形成される。試料Dでは、第1の塗膜が塗料(2)、第2の塗膜が塗料(3)から形成される。試料Eでは、第1の塗膜が塗料(2)、第2の塗膜が塗料(5)から形成される。試料Fでは、第1の塗膜が塗料(3)、第2の塗膜が塗料(4)から形成される。試料Gでは、第1の塗膜が塗料(3)、第2の塗膜が塗料(5)から形成される。
【0032】
上記の試料A〜試料Gについて、塗膜の平板との密着性、塗膜の鉛筆硬度、塗膜の外観、を評価した。密着性は、クロスカット試験(1mm□の碁盤目をカッターで作製し、テープを貼り付けた後、テープを剥離し、碁盤目の皮膜の剥離状態を評価する試験)により行い、全ての碁盤目で剥離の無い状態をOKとした。鉛筆硬度は、塗膜の表面を5回引っ掻いて、5回全てにおいて剥離しない状態をOKとした。試料A〜Gの評価結果を以下の表3に示す。総合評価では、OKが良好、△が限定的ではあるが良、NGが不可である。
【0033】
【表3】

【0034】
第1の塗膜に塗料(1)(ポリ乳酸の含有率が40%)、第2の塗膜に塗料(2)(ポリ乳酸の含有率が50%)を使用した試料Aでは、密着性、硬度、外観の全てについて良好な結果が得られた。第1の塗膜に塗料(1)、第2の塗膜に塗料(4)(ポリ乳酸の含有率が70%)を使用した試料Bでは、やや透明性に劣り、使用範囲が濃色に限定されるレベルであった。第1の塗膜に塗料(1)、第2の塗膜に塗料(5)(ポリ乳酸の含有率が80%)を使用した試料Cでは、外観が白味を帯びておりNGであった。第1の塗膜に塗料(2)、第2の塗膜に塗料(3)(ポリ乳酸の含有率が60%)を使用した試料Dでは、クロスカット試験で80/100となり、マージンはないものの使用可能なレベルであった。第1の塗膜に塗料(2)、第2の塗膜に塗料(5)を使用した試料Eでは、外観が白味を帯びておりNGであった。第1の塗膜に塗料(3)を使用した試料F,Gでは、クロスカット試験で60/100となり、パソコン及び携帯電話向けとしてはNGであった。
以上より、実施例1の実験では、第1の塗膜はポリ乳酸の含有率が40%程度以下であり、第2の塗膜はポリ乳酸の含有率が50%確保されていれば、好適であることが判った。
【0035】
(実施例2)
本実施例では、ノートパソコン筐体のバックカバーを作製した。
詳細には、実施例1と同様の塗料(1),(4)にカーボンブラックを加えて、黒の塗料を作製した。実施例1と同様に、PC/ABSを射出成形して筐体基材を作製し、上記の塗料(1),(4)を順次塗装して、実施例1の試料Bと同様の塗膜を形成した。このように作製した、塗面の比較的広いバックカバーでは、塗膜が全面に亘り均一に塗装形成され、密着性、外観、鉛筆硬度の全てについて満足する塗膜が得られた。
【0036】
以下、諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0037】
(付記1)石油系材料からなる基材と、
前記基材上を塗料で塗装してなる塗膜と
を備え、
前記塗料はポリ乳酸を含み、
前記塗膜は、当該塗膜の表面部位の方が当該塗膜の前記基材との界面部位よりもポリ乳酸の含有率が高いことを特徴とする筐体。
【0038】
(付記2)前記塗膜は、当該塗膜の前記基材との界面部位におけるポリ乳酸の含有率が50%未満であり、当該塗膜の表面部位におけるポリ乳酸の含有率が50%以上70%以下であることを特徴とする付記1に記載の筐体。
【0039】
(付記3)前記塗膜は、当該塗膜の前記基材との界面部位におけるポリ乳酸の含有率が30%以上40%以下であり、当該塗膜の表面部位におけるポリ乳酸の含有率が50%以上70%以下であることを特徴とする付記1に記載の筐体。
【0040】
(付記4)石油系材料からなる基材上に、ポリ乳酸を含む第1の塗料を塗装する工程と、
前記基材上に塗装された前記第1の塗料を半乾燥させる工程と、
半乾燥状態の前記第1の塗料上に、ポリ乳酸を含む第2の塗料を塗装する工程と、
前記基材上に順次塗装された前記第1の塗料及び前記第2の塗料を一括して熱乾燥し、第1の塗膜及び第2の塗膜が積層されてなる塗膜を形成する工程と
を含み、
前記塗膜は、当該塗膜の表面部位の方が当該塗膜の前記基材との界面部位よりもポリ乳酸の含有率が高いことを特徴とする塗膜の形成方法。
【0041】
(付記5)前記第1の塗膜は、前記基材との界面部位におけるポリ乳酸の含有率が50%未満であり、前記第2の塗膜は、表面部位におけるポリ乳酸の含有率が50%以上70%以下であることを特徴とする付記4に記載の塗膜の形成方法。
【0042】
(付記6)前記第1の塗膜は、前記基材との界面部位におけるポリ乳酸の含有率が30%以上40%以下であり、前記第2の塗膜は、表面部位におけるポリ乳酸の含有率が50%以上70%以下であることを特徴とする付記4に記載の塗膜の形成方法。
【0043】
(付記7)前記第1の塗料は、沸点が100℃以下の溶剤を10%未満の含有率で含むことを特徴とする付記4〜6のいずれか1項に記載の塗膜の形成方法。
【0044】
(付記8)筐体と、
前記筐体が装着される電子機器本体と
を備えた電子機器であって、
前記筐体は、
石油系材料からなる基材と、
前記基材上を塗料で塗装してなる塗膜と
を備え、
前記塗料はポリ乳酸を含み、
前記塗膜は、当該塗膜の表面部位の方が当該塗膜の前記基材との界面部位よりもポリ乳酸の含有率が高いことを特徴とする電子機器。
【0045】
(付記9)前記塗膜は、当該塗膜の前記基材との界面部位におけるポリ乳酸の含有率が50%未満であり、当該塗膜の表面部位におけるポリ乳酸の含有率が50%以上70%以下であることを特徴とする付記8に記載の電子機器。
【0046】
(付記10)前記塗膜は、当該塗膜の前記基材との界面部位におけるポリ乳酸の含有率が30%以上40%以下であり、当該塗膜の表面部位におけるポリ乳酸の含有率が50%以上70%以下であることを特徴とする付記8に記載の電子機器。
【0047】
(付記11)筐体を作製する工程と、
電子機器本体を前記筐体に組み込む工程と
を備え、
前記筐体を作製する工程は、
石油系材料からなる基材上に、ポリ乳酸を含む第1の塗料を塗装する工程と、
前記基材上に塗装された前記第1の塗料を半乾燥させる工程と、
半乾燥状態の前記第1の塗料上に、ポリ乳酸を含む第2の塗料を塗装する工程と、
前記基材上に順次塗装された前記第1の塗料及び前記第2の塗料を一括して熱乾燥し、第1の塗膜及び第2の塗膜が積層されてなる塗膜を形成する工程と
を含み、
前記塗膜は、当該塗膜の表面部位の方が当該塗膜の前記基材との界面部位よりもポリ乳酸の含有率が高いことを特徴とする電子機器の製造方法。
【0048】
(付記12)前記第1の塗膜は、前記基材との界面部位におけるポリ乳酸の含有率が50%未満であり、前記第2の塗膜は、表面部位におけるポリ乳酸の含有率が50%以上70%以下であることを特徴とする付記11に記載の電子機器の製造方法。
【0049】
(付記13)前記第1の塗膜は、前記基材との界面部位におけるポリ乳酸の含有率が30%以上40%以下であり、前記第2の塗膜は、表面部位におけるポリ乳酸の含有率が50%以上70%以下であることを特徴とする付記11に記載の電子機器の製造方法。
【0050】
(付記14)前記第1の塗料は、沸点が100℃以下の溶剤を10%未満の含有率で含むことを特徴とする付記11〜13のいずれか1項に記載の電子機器の製造方法。
【符号の説明】
【0051】
1 筐体基材
2 第1の塗膜
3 第2の塗膜
10 塗膜
11 ノートパソコン筐体
11a フロントカバー
11b バックカバー
11c アッパーカバー
11d ロアカバー
12 ノートパソコン本体
12a LCD
20 ノートパソコン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石油系材料からなる基材と、
前記基材上を塗料で塗装してなる塗膜と
を備え、
前記塗料はポリ乳酸を含み、
前記塗膜は、当該塗膜の表面部位の方が当該塗膜の前記基材との界面部位よりもポリ乳酸の含有率が高いことを特徴とする筐体。
【請求項2】
前記塗膜は、当該塗膜の前記基材との界面部位におけるポリ乳酸の含有率が50%未満であり、当該塗膜の表面部位におけるポリ乳酸の含有率が50%以上70%以下であることを特徴とする請求項1に記載の筐体。
【請求項3】
前記塗膜は、当該塗膜の前記基材との界面部位におけるポリ乳酸の含有率が30%以上40%以下であり、当該塗膜の表面部位におけるポリ乳酸の含有率が50%以上70%以下であることを特徴とする請求項1に記載の筐体。
【請求項4】
石油系材料からなる基材上に、ポリ乳酸を含む第1の塗料を塗装する工程と、
前記基材上に塗装された前記第1の塗料を半乾燥させる工程と、
半乾燥状態の前記第1の塗料上に、ポリ乳酸を含む第2の塗料を塗装する工程と、
前記基材上に順次塗装された前記第1の塗料及び前記第2の塗料を一括して熱乾燥し、第1の塗膜及び第2の塗膜が積層されてなる塗膜を形成する工程と
を含み、
前記塗膜は、当該塗膜の表面部位の方が当該塗膜の前記基材との界面部位よりもポリ乳酸の含有率が高いことを特徴とする塗膜の形成方法。
【請求項5】
前記第1の塗膜は、前記基材との界面部位におけるポリ乳酸の含有率が50%未満であり、前記第2の塗膜は、表面部位におけるポリ乳酸の含有率が50%以上70%以下であることを特徴とする請求項4に記載の塗膜の形成方法。
【請求項6】
前記第1の塗膜は、前記基材との界面部位におけるポリ乳酸の含有率が30%以上40%以下であり、前記第2の塗膜は、表面部位におけるポリ乳酸の含有率が50%以上70%以下であることを特徴とする請求項4に記載の塗膜の形成方法。
【請求項7】
筐体と、
前記筐体が装着される電子機器本体と
を備えた電子機器であって、
前記筐体は、
石油系材料からなる基材と、
前記基材上を塗料で塗装してなる塗膜と
を備え、
前記塗料はポリ乳酸を含み、
前記塗膜は、当該塗膜の表面部位の方が当該塗膜の前記基材との界面部位よりもポリ乳酸の含有率が高いことを特徴とする電子機器。
【請求項8】
筐体を作製する工程と、
電子機器本体を前記筐体に組み込む工程と
を備え、
前記筐体を作製する工程は、
石油系材料からなる基材上に、ポリ乳酸を含む第1の塗料を塗装する工程と、
前記基材上に塗装された前記第1の塗料を半乾燥させる工程と、
半乾燥状態の前記第1の塗料上に、ポリ乳酸を含む第2の塗料を塗装する工程と、
前記基材上に順次塗装された前記第1の塗料及び前記第2の塗料を一括して熱乾燥し、第1の塗膜及び第2の塗膜が積層されてなる塗膜を形成する工程と
を含み、
前記塗膜は、当該塗膜の表面部位の方が当該塗膜の前記基材との界面部位よりもポリ乳酸の含有率が高いことを特徴とする電子機器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−25048(P2012−25048A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−166367(P2010−166367)
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】