説明

筐体の防水構造

【課題】振動などで防水部材が外れることなく、筐体内部に水の進入がしにくい防水構造を提供する。
【解決手段】筐体の防水構造は、第1筐体1及び第2筐体2と、周縁部43が第1筐体1及び第2筐体2の間の全周に配置される防水部材4とを備える。第2筐体2には、防水部材4の周縁部43を圧入する凹部23を設ける。第1筐体1には、防水部材4の凹部23に圧入される周縁部43と対向する位置に当該周縁部43の抜けを防止する規制部13を設ける。防水部材4には、周縁部43から内部方向に折曲して第1筐体1側に向かって起立する周壁部42を設ける。周壁部42を第1筐体1及び第2筐体2で案内する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯型電子機器等における筐体の防水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯型送信機の防水構造として、分割された二つのケースとの間に防水カバーの周囲端部を配置して、二つのケースにより防水カバーを挟持する構造がある(特許文献1、2参照)。
なお、秤の防水構造として、ケースに設けた凹部状の係合溝に防水ダイヤフラムの端部を圧入して防水を図るものもある(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−288635号公報
【特許文献2】特開2004−312621号公報
【特許文献3】特開2003−322556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1、2の構造のように、分割された二つのケースによって防水カバー端部を上下から挟持すると、縦(上下)方向に弾性力が働くようになるため分割されたケースを固定するのに多数のビス、または多数のフック部などが必要となってしまう。
また、特許文献3の構造のように、ケースに設けた凹部状の係合溝に防水ダイヤフラムの端部を圧入しただけでは、防水ダイヤフラムの端部が振動などによって外れてしまい、防水機能が損なわれてしまう恐れがあった。
【0005】
本発明の課題は、筐体の防水構造において、分割された筐体の固定が少ないビスなどで容易に行えるとともに、振動などで防水部材が外れることなく、筐体内部に水の進入がしにくい防水構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、この発明の第1の観点に係る防水構造は、
重ね合わせて合体される第1筐体及び第2筐体と、
周縁部が当該第1筐体と第2筐体との間の全周に配置される防水部材と、を備える防水構造であって、
前記第2筐体には、前記防水部材の周縁部を横方向に接触させ縦方向に弾性力を働かせることなく圧入する凹部を設け、
前記第1筐体には、前記防水部材の前記凹部に圧入される前記周縁部と対向する位置に当該周縁部の抜けを防止する規制部を設け、
前記防水部材には、前記周縁部から内部方向に折曲して前記第1筐体側に向かって起立する周壁部と、前記第1筐体と前記第2筐体との間に配置される平面部から、この防水部材内に周壁部と同じ方向に折曲げられ、さらに外側に折曲げられて、当該防水部材と一体的に成形される金属板とを設け、
前記周壁部を前記第1筐体及び第2筐体で案内することを特徴とする。
【0007】
また、前記防水部材は、前記第1筐体と第2筐体との間を覆う膜状である、ことも可能である。
【0008】
また、前記第2筐体には、前記防水部材の前記周壁部の端面を支持する支持部を設けることも可能である。
【0009】
また、前記防水部材の一部分に導光板を装着する装着部を設けることも可能である。
【0010】
また、上記目的を達成するため、この発明の第2の観点に係る筐体の防水構造は、
第1筐体と、
前記第1筐体に重ね合わせて合体される第2筐体と、
前記第1筐体と前記第2筐体との間の全周に配置される周縁部と、前記周縁部から前記第1筐体側に向かって起立する周壁部とを含み、前記第1筐体と前記第2筐体との間に設けられる、弾性変形可能な材料から形成される板状の防水部材と、を有し、
前記第2筐体は、前記防水部材の周縁部を圧入する凹部を有し、
前記防水部材は、その一部として、前記第2筐体側に張り合わされる金属板を含み、
前記金属板は、その端部より所定距離内側位置で前記第2筐体側に向かって折曲げられ、該折曲げられた位置より若干距離外側位置で前記第1筐体側に向かって折曲げられる、第1フックを有し、前記第1フックの端部は、前記周壁部から突出しており、
前記第2筐体は、前記第1フックと係合可能な第2フックを有する、ことを特徴とする。
【0011】
また、前記防水部材は、前記周壁部から略水平に延設する平面部を有し、
前記金属板は、前記平面部の前記第2筐体側に一体的に設けられる、ことも可能である。
【0012】
また、前記金属板には、第1開口が設けられ、
前記第1筐体には、前記防水部材を挟んで、前記第1開口と対向する位置に、第2開口が設けられている、ことも可能である。
【0013】
また、前記金属板には、第1開口が設けられ、該第1開口には、弾性材料から形成されたシールが嵌め込まれ、
前記シールを露出する第2開口が、前記第1筐体に設けられている、ことも可能である。
【0014】
また、前記第1開口及び前記第2開口は、円形乃至楕円形の開口である、ことも可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、縦方向に弾性力が働かず、固定する筐体間に反発力が発生することがないため、少ないビスなどによる固定ができて分割された筐体の固定が容易に行え、且つ防水部材の抜けを防止しているため、振動などによって防水部材が外れることがなく、筐体内部に水の進入がしにくい防水構造を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明を適用した実施形態1の構成を示すもので、第1及び第2筐体と防水部材等の分解斜視図である。
【図2】図1の第2筐体に内装品を組み込んで防水部材とともに示した分解斜視図である。
【図3】第1及び第2筐体に防水部材等を組み付けた一部破断の斜視図である。
【図4】図3の矢印A部の拡大断面図である。
【図5】防水板を構成する、板状パッキン及び金属板を分解して示す斜視図である。
【図6】第2筐体の凹部に防水部材の周縁部が嵌められた状態、及びその防水部材に対して封止用突起が及ぼす力の様子を示す説明図である。
【図7】実施形態3に係る防水構造において、金属板と第1筐体とが接している、拡大断面図である。
【図8】実施形態4に係る防水構造において、金属板が弾性部材の平面部を介して第1筐体と合わせられている、拡大断面図である。
【図9】実施形態5に係る防水構造において、弾性部材の平面部が外気に露出している、拡大断面図である。
【図10】実施形態6に係る防水構造において、弾性部材の開口部にシールが嵌められている、拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施形態1)
以下、図を参照して本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
図1は本発明を適用した一実施形態の構成を示すもので、1は第1筐体、2は第2筐体、3は内装品、4は防水部材、5は外装品である。
この実施形態において、防水構造は、折り畳み式携帯電話機の表示側本体を構成する第1筐体1及び第2筐体2に適用したものである。第1筐体1及び第2筐体2の間に収容される内装品3は液晶表示パネル31及びそのシールドケース32等により構成される。防水部材4は膜状のゴムパッキンである。この防水部材4の材質としては、ポリブタジエン、ポリアクリロニトリル、ポリクロロプレン、ポリイソプレン等を用いることができる。
外装品5は透明パネル51の一端側にヒンジピース52を有して他端側に左右一対のネジ目隠し53を有している。
【0018】
なお、表示側本体は、図示しない操作側本体に対し2軸ヒンジ部を介して連結されている。その2軸ヒンジ部により、第1ヒンジ軸回りに表示側本体を操作側本体に対し開いた状態(使用状態)と、第1ヒンジ軸回りに表示側本体を操作側本体に重ねて閉じた折り畳み状態(非使用状態)の他、第2ヒンジ軸回りに表示側本体を180度回転させて表示部を表側にした折り畳み状態(カメラ撮影やテレビ視聴できる状態)にすることができる。
【0019】
具体的には、第1筐体1及び第2筐体2は、液晶表示パネル31及びシールドケース32等の内装品3を収容して、四隅部を図示しないネジにより結合される。
そして、第2筐体2の外表面に外装品5が取り付けられる。すなわち、第2筐体2の外表面において、液晶表示パネル31の表示画面が位置する開口部21の周囲に透明パネル51が両面テープ6(図4参照)で貼り付けられるとともに、その一端側のヒンジピース52及び他端側の左右一対のネジ目隠し53が同様に図略の両面テープで貼り付けられ、これにより防水が図れている。
【0020】
防水部材4は、図示のように、液晶表示パネル31及びシールドケース32等の内装品3を覆う平面部41及び周壁部42を含むとともに、周壁部42の外周にフランジ状で平行に突出する周縁部43を含む。
この防水部材4の平面部41には、図2に示すように、外表面のほぼ中央に凹部による装着部47が形成され、この装着部47に導光板7がインサート成型されている。すなわち、防水部材4は透明なゴムで作製されているが、液晶表示パネル31が高精細である場合には平面部41のほぼ中央に導光板7をインサートすることで見易い表示にすることができるもので、その成形時に金型において、外表面側に導光板7をセットしてインサート成型されている。
このように、防水部材4の平面部41に導光板7をインサート成型により一体成形することで、例えば防水部材4に開口窓を設けて導光板を組み付ける場合と比べて防水箇所を削減するともに、その防水施工部の厚み及び部品点数を削減して、防水性能を安定できる。
【0021】
そして、防水部材4の平面部41の内表面には、そのほぼ全面に電磁シールド8が形成されている。すなわち、成形時に金型において、平面部41の内表面側に銀シート(または金属板)8をセットしてインサート成型することで、電磁シールド8が形成されている。
このように、防水部材4の平面部41の内表面に銀シート(または金属板)8をインサート成型して電磁シールド8を一体成形することで、従来は第1筐体1の内表面に施していた銀蒸着等の工程を削減できる。
【0022】
また、第2筐体2には、その全周に渡って、図3及び図4に示すように、防水部材4の周縁部43を圧入する凹部23が形成されるとともに、防水部材4の周壁部42の端面を支持する面状の支持部24が形成されている。この凹部23の左右両側部のほぼ中央に、第1筐体1側に突出する案内部22が形成されている。
さらに、第2筐体2の左右両側部には、図2に示すように、凹部23の外周側に位置する一対の係合爪26が突出して形成されている。
【0023】
そして、第1筐体1には、その全周に渡って、内周部12が形成されるとともに、その内周部12の端面で、防水部材4の前記凹部23に圧入される周縁部43と対向する位置に当該周縁部の抜けを防止する規制部13が形成されている。
また、第1筐体1のほぼ中央には、図1に示すように、防水部材4の導光板7に重なってロゴ等を表示した照光部17が形成されている。
なお、第1筐体1の左右両側部には、第2筐体2の係合爪26に各々係合する図示しない一対の係合爪が突出して形成されている。
【0024】
次に、第1筐体1及び第2筐体2の合体の仕方について説明する。
まず、液晶表示パネル31及びシールドケース32等の内装品3を収容した第2筐体2の内部に防水部材4を装着する。すなわち、防水部材4の平面部41を内装品3に被せて、周壁部42の両側部を、第2筐体2の案内部22の外側に被せるとともに、係合爪26の内側に入れてから、周縁部43を第2筐体2の凹部23に圧入する。
【0025】
そして、第2筐体2及び防水部材4に第1筐体1を被せる。すなわち、防水部材4の平面部41に第1筐体1を重ねて、防水部材4の周壁部42の外側に内周部12を被せるとともに、防水部材4の周縁部43に第1筐体1の規制部13を重ねる。このとき、第2筐体2の左右両側部において、係合爪26に第1筐体1の係合爪が係合して合体状態となる。その後、第1筐体1及び第2筐体2の四隅部において、図示しないネジにより互いに結合する。
【0026】
図3及び図4は防水構造部を示したもので、防水部材4の周縁部43から内部方向に折曲して第1筐体1側に向かって起立する周壁部42が、第1筐体1の内周部12と第2筐体2の左右両側部の案内部22との間で案内される。そして、防水部材4の周縁部43が第2筐体2の凹部23に圧入されるとともに、その周縁部43が凹部23と対向する位置において、第1筐体1の規制部13により押え付けられて抜けが防止されている。さらに、防水部材4の周壁部42の端面が、第2筐体2の支持部24によって支持されている。また、防水部材の平面部41が、第2筐体2の左右両側部の案内部22によって支持されている。
【0027】
以上のように、第1筐体1及び第2筐体2の合体工程において、防水部材4を組み込む際には、第2筐体2の左右両側部の案内部22と第1筐体1の内周部12がガイドとなって作業を容易に行なうことができる。
また、第2筐体2の両側面部の案内部22によって、防水部材4の周壁部42が揺れたりするのを防止することができる。
そして、第2筐体2の左右両側部の案内部22の支持によって、防水部材の平面部41が揺れたりするのを防止することができる。
【0028】
従って、図4において、従来のような縦(上下)方向に弾性力が働かず、固定する第1筐体1及び第2筐体2間に反発力が発生することがないため、少ないビスなど、実施形態では四本のビスと係合爪等による固定ができて分割された第1筐体1及び第2筐体2の固定が容易に行えるものである。しかも、防水部材4の抜けを防止しているため、振動などによって防水部材4が外れることがなく、確実な防水を図ることができるものである。
また、縦(上下)方向に弾性力が働かない防水構造となり、第1筐体1及び第2筐体2の剛性を必要以上に持たせる必要がないため、筐体の肉厚を少なくして薄型化・小型化を図ることができる。
【0029】
なお、第1筐体1の内周部12と第2筐体2の左右両側部の案内部22との間において、防水部材4の周壁部42をガイドするだけでなく挟持するように構成すれば、更に防水性が向上するものとなる。
【0030】
また、実施形態では、第1筐体1のほぼ中央の照光部17において、防水部材4の導光板7からの照光によりロゴ等を表示することができるものとなっている。
【0031】
(実施形態2)
本発明の実施形態2に係る筐体の防水構造が図5に示される。実施形態2に係る防水構造は、実施形態1と異なり、防水部材4は、金属板110を有する。
【0032】
金属板110は、図5において示されているように、平面視して概ね長方形状をもつ。ただし、当該長方形状のうち、図5中上方の2つの角部、及び、図5中下方の辺の中央部分は切り欠かれている。これにより、金属板110は、それぞれ指摘した箇所に、切り欠き部110a,110a及び切り欠き部110bを備え、厚さ1.0〜5.0mmで形成されている。
なお、図5においては、これら切り欠き部110a,110bの存在を強調するため、当該切り欠き部が仮に存在しないとした場合における輪郭形状を破線で示している。
【0033】
この金属板110には、図5中左下部分に示すように、概略長方形状の窓511が形成されている。窓511は、当該金属板110に段差を設けるべく形成された凸部514の形成領域内に形成されている。
【0034】
また、この金属板110には、前述の凸部514と同様の、凸部512,513が形成されている。これら凸部512,513は、例えば、筐体内部に組み込まれる電気回路基板に含まれる比較的肉厚となる諸要素の配置等に応じて設けることができる。つまり、これら凸部512,513が金属板110のどこに設置されるべきかは、当該要素の配置等に応じて自由に設定されうる(かかる事情は、前記凸部514についてもあてはまる。)。
凸部512乃至514の存在により、単純平坦な金属板よりも、金属板110の強度が増加する。
【0035】
金属板110は更に、図5及び図6に示されるように、その左右の側縁部に係合壁111をもつ。この係合壁111は、当該金属板110の大部分を占める平板状部からみて、垂直に立ち上がる。かかる係合壁111は、シート状パッキン112との接合を図る際に利用される。金属板110は、例えばステンレス鋼等の錆び難い金属により作られると好適である。
【0036】
一方、シート状パッキン112は、図5において示されるように、平面視して、金属板110の外形形状よりも一回り大きい概略長方形状をもつ。より詳細に言えば、シート状パッキン112の幅方向(図5中左右方向)の長さについては、金属板110のそれとほぼ同一であり、当該幅方向と直交する方向の長さについては、金属板110のそれよりも大きい。シート状パッキン112は、金属板110が配置される開口部529をもつ。開口部529は、金属板110よりも少し小さく、金属板110の周縁部がシート状パッキン112の開口部529の周縁部に接合される。
【0037】
また、シート状パッキン112は、その輪郭を取り巻くようにして周縁部43をもつ。この周縁部43は、開口部529に金属板110が配置されると、当該金属板110の平板状部から垂直に立ち上がる。なお、この周縁部43の立ち上がる方向は、前記係合壁111の立ち上がる方向と同じである(図6参照)。また、周縁部43の中間部の幅は、凹部23の幅よりも広い(図6参照)。図6に示されるように、凹部23は、凹部23の内部に突起を挿入できる窪み231を有する。そして、周縁部43は、該窪み231と係合可能な突起441を有する。この突起441と窪み231とが係合することにより、周縁部43が凹部23から抜け出ることを防止する。周縁部43は、浸水を防止する主要な役割を担う。
【0038】
さらに、シート状パッキン112は、帯状突起部522及び6つの排水溝522Gをもつ。帯状突起部522は、図5に示すように、金属板110の図中上側の形状とほぼ同一である。なお、帯状突起部522の突出方向は、周縁部43の立ち上がる方向とは逆である。
【0039】
排水溝522Gは、この帯状突起部522の一部が、4箇所において断絶されることによって形成されている。金属板110が存在する場所と、帯状突起部522を挟んで当該場所と反対側の場所(図5では、図中上方に位置する場所)とは、排水溝522Gを通して空間的に連通する。
【0040】
シート状パッキン112は、弾性樹脂(例えば、シリコンゴム、ポリエチレン系エラストマー樹脂等)から作られる。周縁部43に関しては、一定程度以上の弾性変形能力をもつ樹脂、特に好適にはシリコンゴムから作られるのが好ましい。
【0041】
図5に示されるように、シート状パッキン112の開口部529に対して、金属板110が配置されることで、防水部材4が形成される。
【0042】
この場合、これらシート状パッキン112及び金属板110を接合するためには、インサート成形法を用いるのが最適手段の一つである。ここでインサート成形とは、所定の形状をもつ金型内に金属素材等を挿入した後、樹脂を注入することで、当該金属素材と樹脂素材とを一体化した成形品を得る方法である。本実施形態に関して言えば、金属素材として、予め図5に示すような形状に形作った金属板110を用意するとともに、金型の形状を、図5に示すようなシート状パッキン112の形状にほぼ合致するように形作る。金型内における係合壁111の配置関係を適切に定める。すると、図6に示すように、係合壁111とシート状パッキン112とが接合して、金属板110とシート状パッキン112との間の接合がなされる。
【0043】
次に、防水部材4を例えば携帯電話に組み付けする際の態様等について説明する。
まず、防水部材4を、電気回路基板等が設置済みである携帯電話の第2筐体2の内面の上に載置する。周縁部43は、第2筐体2の凹部23の上に位置付けられるように載置し、周縁部43を指で凹部23に押し込む(図6参照)。これにより、周縁部43の側面に設けられた突起441が、凹部23の横壁に設けられた窪み231に入り込み、該突起441と該窪み231とが係合する。そして、周縁部43が凹部23から抜けにくくなる。続いて、第1筐体1を、防水部材4の上に重ねるように配置する。そして、第1筐体1の、周壁部42に当接する位置に設けられる封止用突起136が、前記周縁部43及び凹部23の上に位置付けられる。
【0044】
そして、この状態で、第1筐体1と第2筐体2とをネジ止めする。これにより、封止用突起136は、周縁部43を凹部23に更に押し込む。そして封止用突起136は、周縁部43が凹部23から浮き上がったり外れたりすることを防止する。周縁部43には、図6に示す矢印の方向に力(第1の力)が作用する。
【0045】
周縁部43の図中上端では、当該周縁部43を下に押さえ付けるような力が働く。この結果、第1の力は凹部23の底によって受け止められ、且つ、周縁部43は上述のように弾性変形可能な樹脂材料から作られているので、当該周縁部43の下端付近では、図6に示すように、径方向へ拡散するかのような力が作用する。周縁部43が径方向に圧縮される結果、周縁部43と凹部23との間の密着性は高められる。
【0046】
周縁部43が弾性変形可能な樹脂材料から作られ、周縁部43の幅が、凹部23の幅にほぼ同一であり、かつ、この凹部23の幅が、封止用突起136の幅よりも大きいと、径方向の圧縮作用が最も好適に発揮される。ここでいう「幅」はすべて、図6でいえば、図中左右方向の長さを意味する。なお、凹部23の幅と封止用突起136の幅とは、ほぼ同一でもよい。
【0047】
従って、本実施形態に係る筐体の防水構造によれば、周縁部43と凹部23とが密着しているため極めて実効的な防水機能を有する。即ち、周縁部43は、封止用突起136の力を受ける結果、下端部が、径方向に拡散し、且つ、それによって凹部23の側壁から径方向に圧縮される反作用力を受ける。周縁部43と凹部23とは、このようにして密着性が高められるから、実効的に防水される。
【0048】
凹部23の側壁から径方向に圧縮される反作用力を受けるから、第2筐体2が捻れ等の変形を受けとしても、周縁部43と凹部23との密着性が維持さる。つまり、本実施形態においては、第2筐体2が変形しても、浸水の生じるおそれは極めて低い。
【0049】
また、本実施形態では、第1筐体1の組み付け作業は容易である。なぜなら、防水部材4は、全体的に見て板状の形態であり、比較的剛性が大きく変形し難いからである。防水部材4の組み付け作業は、周縁部43を凹部23に位置させ、周縁部43を凹部23に押し込むだけだから、特別な注意を払う必要はない。本実施形態の優位性は、従来広くみられた、比較的変形容易な環状のパッキンの場合と比較した場合、より際立つ。
また、同じ理由から、防水部材4の組み付け作業は容易であり、量産される携帯電話の歩留まりのばらつきが生じるおそれも殆どなく、筐体の防水が維持される。
【0050】
さらに、本実施形態においては、防水部材4が金属板110を備えているため、防水部材4の全体剛性が向上し防水部材4全体を薄型にできる。
以上のように、金属板110があるから、防水部材4あるいは第1筐体1を薄くし、ひいては携帯電話全体を小型にする。更には、筐体の組み付け作業を容易にする。
金属板110に凸部513乃至514が形成されていることにより、当該金属板110の強度は高い。そのため、防水部材4全体の剛性が、維持・向上する。
【0051】
次に、金属板110はシールド機能を有する。即ち、防水部材4の近傍に、例えば電気回路基板が当該防水部材4に対向するように配置されることにより、金属板110は、これに対する、又は、これから発するノイズを遮蔽できる。
従って、本実施形態に係る携帯電話は、ノイズ等の影響を受けず、より正確に動作する。なお、金属板110は、適当な手段によって接地されることも可能である。
【0052】
(実施形態3)
本発明の実施形態3に係る筐体の防水構造の断面が図7に示される。実施形態3に係る防水構造は、実施形態1と異なり、周壁部42から筐体内側かつ略水平に延設する位置に金属板110が設けられる。この金属板110は、ステンレスで形成されている。金属板110は厚さ1.0〜5.0mmで形成されている。
【0053】
この金属板110は、その端部114より所定距離内側位置115で第2筐体2側に向かって折曲げられ、該折曲げられた位置115より若干距離外側位置116で第1筐体1側に向かって折曲げられる、第1フック120を有する。この第1フック120の端部121は、周壁部42から所定距離だけ突出している。
【0054】
第2筐体2には、筐体外側にある第1凸状体28と、筐体内側にある第2凸状体29との間に設けられている凹部23が形成されている。図7に示すように、この第1凸状体28の突出している先端は、鈎状形状の第2フック130を形成している。
【0055】
図7に矢印で示されるように、この第2フック130と第1フック120とが係合することで、防水部材4が第2筐体2から外れることを防止する。
【0056】
次に、実施形態3に係る防水構造において、第1筐体1及び第2筐体2の合体の仕方について説明する。ただし、実施形態1に係る防水構造における合体の仕方と共通するところについては省略する。
まず、内装品3を収容した第2筐体2の内部に防水部材4を装着する。すなわち、周縁部43を第2筐体2の凹部23に圧入するとともに、周壁部42から突出している第1フック120を第2フック130に係合させる。第1フック120を第2フック130に係合させるには、第1フック120の端部121を筐体内側に若干付勢した状態で防水部材4を第2筐体2に押し込む。
【0057】
そして、第2筐体2及び防水部材4に第1筐体1を被せる。その後、第1筐体1及び第2筐体2の四隅部において、図示しないネジにより互いに結合する。
【0058】
そして、防水部材4の周壁部42の内側端部44が、第2筐体2の第2凸状体29によって支持される。
【0059】
以上のように、第1筐体1及び第2筐体2の合体工程において、防水部材4の組み込み作業は、防水部材4の周壁部42から突出している第1フック120を、第2筐体2の第1凸状体28の先端に設けられている第2フック130に係合させるだけなので、容易に行なうことができる。
また、第1フック120と第2フック130とが係合しているから、防水部材4が第2筐体2から外れることは起こりにくい。
そして、第1フック120の端部121は金属の弾力により筐体外側に付勢され、その端部121の筐体外側への付勢力は第2フック130の面131により受け止められるから、防水部材4が左右に揺れたりするのを防止することができる。
【0060】
従って、従来のような第1筐体1及び第2筐体2間に反発力が発生することがないため、少ないビスなどで第1筐体1及び第2筐体2の固定が容易に行える。しかも、防水部材4の抜けを防止しているため、振動などによって防水部材4が外れることがなく、確実な防水を図ることができるものである。
また、縦(上下)方向に弾性力が働かない防水構造となり、第1筐体1及び第2筐体2の剛性を必要以上に持たせる必要がないため、筐体の肉厚を少なくして薄型化・小型化を図ることができる。
【0061】
(実施形態4)
実施形態4では、実施形態3と異なり、図8に示されるように、防水部材4は、周壁部42から筐体内側かつ略水平に延設する平面部41を含む。そして、金属板110は、平面部41の第2筐体2側に一体的に設けられている。このように構成することで、防水部材4は、その平面部41で第1筐体1と弾性的に密着することができる。
【0062】
(実施形態5)
実施形態5では、実施形態3及び4と異なり、筐体内部の圧力の高低の影響による筐体の変形・ひび割れ等を起こりにくくする、圧力影響緩和のための構造が設けられている。
この圧力影響緩和のための構造は、図9に示されるように、金属板110の中央部に設けられた第1開口140と、防水部材4を挟み、第1筐体1の第1開口140と対向する位置に設けられた第2開口150と、第1開口140と第2開口150との間に位置し、外気に対して露出している平面部41の露出部分411と、から構成される。第1開口140は断面が円形の開口である。第2開口150も、断面が第1開口140と同一直径の円形の開口である。断面が円形の開口であることにより、該開口からの亀裂を発生しにくくすることができる。
【0063】
携帯電話等の持ち運び可能な電子機器は、極寒の場所、灼熱の場所等種々な環境の場所に携帯されうる。かかる場合、筐体内の圧力が上昇若しくは下降することで、筐体内部の構造が力を受け、その結果筐体に変形・ひび割れ等が生じるおそれがある。筐体にひび割れ等が生じるとそこから外部からの水分が侵入して防水構造が阻害される。
しかしながら、実施形態5のように、圧力影響緩和のための構造が設けられていると、例えば外気温が高い場合は、第1開口140と第2開口150との間に位置する平面部41の露出部分411が、筐体外側に膨張するから、筐体内部の圧力の上昇を防止することができる。これにより、筐体にひび割れ等を生じさせにくくすることができる。そのため、本実施形態に係る筐体の防水構造を維持することができる。
【0064】
(実施形態6)
実施形態6においても圧力影響緩和のための構造が設けられているが、その構造は実施形態5と異なる。図10に示すように、実施形態6では、圧力影響緩和のための構造は、金属板110の中央部に設けられた第1開口140と、第1開口140と重なる位置に第1筐体1に設けられた第2開口150と、第1開口140に嵌め込まれた弾性材料から形成されたシール160と、から構成される。シール160の材質としては、ポリブタジエン、ポリアクリロニトリル、ポリクロロプレン、ポリイソプレン等を用いることができる。なお、シール160は、第2開口150から水分が侵入しないように、第1開口140に隙間無く嵌め込まれている。
【0065】
防水部材4に平面部41は設けられていない。図10に示すように、防水部材4は、第1フック120を有する金属板110と、金属板110の端部に設けられた周壁部42及び周縁部43と、から形成される。平面部41を設けないことにより簡易に防水部材4を作成できる。
【0066】
実施形態6おいても、例えば外気温が高い場合は、シール160が、筐体外側に膨張するから、筐体内部の圧力の上昇を防止することができる。これにより、筐体にひび割れ等を生じさせにくくすることができる。
【0067】
なお、以上の実施形態においては、携帯電話機としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、電卓、電子辞書、クロック、ウォッチ、カメラ、PDA、ウェアラブルパソコンなどの電子機器であっても良い。
また、筐体及び防水部材の形状等も任意であり、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。例えば、液晶表示パネルやLEDなどの表示装置と対応する防水部材4の一部を透明にしても良い。また、第1筐体1も透明にして、実施形態のように防水部材4の内部側に電磁シールド(銀シートまたは金属板)8を設けることで、筐体のスケルトンに対応することができる。
また、実施形態のように防水部材が透明なゴムで作製されている場合は導光板をインサートしなくともよい。例えば、表示装置の文字サイズが大きい場合やバックライトの光量が十分な場合、さらにLEDなどを用いている場合には導光板は不要となる。
【0068】
上述の実施形態1では、防水部材4は、周縁部43と、周壁部42と、平面部41とを有して構成される膜状であった。もっとも防水部材4は、平面部41を有さないで構成する略リング状体とすることも可能である。
【0069】
上述の実施形態では、第1開口140及び第2開口150は、断面が円形の開口であった。もっともこれに限定されない。断面が楕円形の開口を用いることもできる。また、断面が、三角形、正方形、長方形、五角形、六角形等の多角形の開口を用いることも可能である。
【0070】
上述の実施形態では、第1開口140は金属板110の中央部に設けられ、第2開口150は第1筐体1の中央部に設けられた。もっともこれに限定されない。第1開口140は金属板110の中央部以外の場所に設けることも可能であり、例えば金属板110の端部に設けることも可能である。また、第2開口150も第1筐体1の中央部以外の場所に設けることも可能であり、例えば第1筐体1の端部に設けることも可能である。
【符号の説明】
【0071】
1…第1筐体、2…第2筐体、3…内装品、4…防水部材、5…外装品、6…両面テープ、7…導光板、8…電磁シールド(銀シートまたは金属板)、12…内周部、13…規制部、17…照光部、22…案内部、23…凹部、24…支持部、26…係合爪、28…第1凸状体、29…第2凸状体、41…平面部、42…周壁部、43…周縁部、47…装着部、51…透明パネル、52…ヒンジピース、53…ネジ目隠し、110…金属板、120…第1フック、130…第2フック、140…第1開口、150…第2開口、160…シール、231…窪み、441…突起


【特許請求の範囲】
【請求項1】
重ね合わせて合体される第1筐体及び第2筐体と、
周縁部が当該第1筐体と第2筐体との間の全周に配置される防水部材と、を備える防水構造であって、
前記第2筐体には、前記防水部材の周縁部を横方向に接触させ縦方向に弾性力を働かせることなく圧入する凹部を設け、
前記第1筐体には、前記防水部材の前記凹部に圧入される前記周縁部と対向する位置に当該周縁部の抜けを防止する規制部を設け、
前記防水部材には、前記周縁部から内部方向に折曲して前記第1筐体側に向かって起立する周壁部と、前記第1筐体と前記第2筐体との間に配置される平面部から、この防水部材内に周壁部と同じ方向に折曲げられ、さらに外側に折曲げられて、当該防水部材と一体的に成形される金属板とを設け、
前記周壁部を前記第1筐体及び第2筐体で案内することを特徴とする筐体の防水構造。
【請求項2】
前記防水部材は、前記第1筐体と第2筐体との間を覆う膜状である、
ことを特徴とする請求項1記載の筐体の防水構造。
【請求項3】
前記第2筐体には、前記防水部材の前記周壁部の端面を支持する支持部を設けることを特徴とする請求項1又は2に記載の筐体の防水構造。
【請求項4】
前記防水部材の一部分に導光板を装着する装着部を設けることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の筐体の防水構造。
【請求項5】
第1筐体と、
前記第1筐体に重ね合わせて合体される第2筐体と、
前記第1筐体と前記第2筐体との間の全周に配置される周縁部と、前記周縁部から前記第1筐体側に向かって起立する周壁部とを含み、前記第1筐体と前記第2筐体との間に設けられる、弾性変形可能な材料から形成される板状の防水部材と、を有し、
前記第2筐体は、前記防水部材の周縁部を圧入する凹部を有し、
前記防水部材は、その一部として、前記周壁部から略水平に延設する位置に設けられる金属板を含み、
前記金属板は、その端部より所定距離内側位置で前記第2筐体側に向かって折曲げられ、該折曲げられた位置より若干距離外側位置で前記第1筐体側に向かって折曲げられる、第1フックを有し、前記第1フックの端部は、前記周壁部から突出しており、
前記第2筐体は、前記第1フックと係合可能な第2フックを有する、
ことを特徴とする筐体の防水構造。
【請求項6】
前記防水部材は、前記周壁部から略水平に延設する平面部を有し、
前記金属板は、前記平面部の前記第2筐体側に一体的に設けられる、
ことを特徴とする請求項5記載の筐体の防水構造。
【請求項7】
前記金属板には、第1開口が設けられ、
前記第1筐体には、前記防水部材を挟んで、前記第1開口と対向する位置に、第2開口が設けられている、
ことを特徴とする請求項6記載の筐体の防水構造。
【請求項8】
前記金属板には、第1開口が設けられ、該第1開口には、弾性材料から形成されたシールが嵌め込まれ、
前記シールを露出する第2開口が、前記第1筐体に設けられている、
ことを特徴とする請求項5記載の筐体の防水構造。
【請求項9】
前記第1開口及び前記第2開口は、円形乃至楕円形の開口である、
ことを特徴とする請求項7又は8に記載の筐体の防水構造。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−174617(P2011−174617A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90527(P2011−90527)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【分割の表示】特願2007−188606(P2007−188606)の分割
【原出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】