説明

筐体内冷却装置

【課題】本発明は、通常時と同様の冷却状態を維持したままで、故障した冷却ファンユニットを交換することが可能な筐体内冷却装置の提供を目的とする。
【解決手段】本発明の筐体内冷却装置は、筐体100内の子基板102を冷却する筐体内冷却装置であって、複数の冷却ファンユニット107a〜107fと、冷却ファンユニット107a〜107fを、筐体100開口部の内側の所定位置に保持するユニットホルダ106と、ユニットホルダ106と子基板102との間に設けられ、冷却ファンユニット107a〜107fからの冷却空気流をバッファして子基板102に導入する前置室113とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続運転が要求される機器を冷却する筐体内冷却装置に関し、特に、複数の冷却ファンユニットを備えた筐体内冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
24時間の連続運転を行う機器の冷却装置には、一つの冷却ファンユニットが故障しても他の冷却ファンユニットで冷却を継続する冗長性が求められる。
【0003】
例えば特許文献1には、2個以上の冷却ファンユニットを直列的に重合した冗長冷却式の筐体冷却装置が開示されており、こうした筐体冷却装置がサーバー装置やディスプレイウォールプロセッサの筐体内部に実装されて、電気部品の冷却に利用されている。
【0004】
筐体冷却装置を実装したサーバー装置やディスプレイウォールプロセッサは、特許文献2の図1に示されるように、複数の筐体単位で4本の支柱からなるラックマウントに取り付けて設置されることが多い。そして、いずれかの冷却ファンユニットが故障すると、ラックマウントから筐体を引き出して冷却ファンユニットの交換を行うのであるが、他の筐体と接続する配線の全長に制限がある場合には、筐体を引き出すことが困難なことがあった。
【0005】
こうした問題を解決するため、特許文献2の図1には、複数の冷却ファンユニットを纏めてファンケースに取り付け、冷却ファンユニットを交換する際にはファンケースごと冷却ファンユニットを引き出す構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−006994号公報
【特許文献2】特開2009−117629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献2の構成によれば、冷却ファンユニットの交換時に冷却ファンユニットと冷却対象との相対位置が変化する。そのため、特に交換作業に時間を要する場合には、定常と異なる冷却状態が継続することによって冷却障害が発生し、システムダウン等の問題に繋がる可能性がある。
【0008】
そこで、本発明は上述の問題点に鑑み、通常時と同様の冷却状態を維持したままで故障した冷却ファンユニットを交換することが可能な、筐体内冷却装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の筐体内冷却装置は、筐体内の冷却対象を冷却する筐体内冷却装置であって、複数の冷却ファンユニットと、冷却ファンユニットを筐体開口部の内側の所定位置に保持するユニットホルダと、ユニットホルダと冷却対象との間に設けられ、冷却ファンユニットからの冷却空気流をバッファして冷却対象に導入する前置室とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の筐体内冷却装置は、筐体内の冷却対象を冷却する筐体内冷却装置であって、複数の冷却ファンユニットと、冷却ファンユニットを筐体開口部の内側の所定位置に保持するユニットホルダと、ユニットホルダと冷却対象との間に設けられ、冷却ファンユニットからの冷却空気流をバッファして冷却対象に導入する前置室とを備える。そのため、いずれかの冷却ファンユニットが故障して停止した場合には、他の冷却ファンユニットの回転数を上げることによって、前置室から冷却対象に導入する冷却空気量を一定に保ち、冷却性能を維持することが可能である。また、冷却ファンユニットを筐体開口部の内側に設置して、他の冷却ファンユニットを動かすことなく個別に冷却ファンユニットの脱着を可能にすることにより、冷却性能を維持しながら冷却ファンユニットの入れ替えが可能である。また、冷却ファンユニットを直列的に重合しなくても冗長性を確保できるので、コストや動作時の騒音を低減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施の形態1の筐体内冷却装置を取り付けた筐体をラックマウントに取り付ける様子を示す斜視図である。
【図2】実施の形態1の筐体内冷却装置を取り付けた筐体の外観を示す斜視図である。
【図3】実施の形態1の筐体内冷却装置を取り付けた筐体の各構成部材を示す分解斜視図である。
【図4】実施の形態1の筐体内冷却装置を取り付けた筐体内の空気の流れを示す断面図である。
【図5】冷却ファンユニットの交換作業を説明するための筐体内冷却装置の斜視図である。
【図6】実施の形態2の筐体内冷却装置を取り付けた筐体の背面斜視図である。
【図7】逆流防止板の外形図である。
【図8】逆流防止板の動作を説明するための冷却ファンユニットと逆流防止板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施の形態1)
<構成>
図1は、実施の形態1に係る筐体内冷却装置が実装された複数の筐体100を4本の支柱からなるラックマウント101に取り付けた状態を示す斜視図である。
【0013】
図2は、筐体100の外観を示す斜視図であり、図3は、筐体100と筐体内冷却装置の各構成部材を示す分解斜視図である。
【0014】
図3に示すように、親基板103に対して垂直に取り付けられた複数の子基板102が筐体内冷却装置の冷却対象となる。子基板102には信号処理の電子部品が搭載され、図2に示す配線104によって筐体100の背面から外部、例えば同じラックマウント101を共有する他の機器と接続される。
【0015】
筐体内冷却装置は、親基板103と離間して筐体100内に設けられたユニットホルダ106と、ユニットホルダ106に取り付けられた同一仕様の複数の冷却ファンユニット107a,107b,107c,107d,107e,107fを備えている。図2,3では、2行3列の冷却ファンユニット107a〜107fがユニットホルダ106に並列的に取り付けられている様子を示しているが、冷却ファンユニットの数や、配置における行数及び列数はこれに限定されるものではない。また、ユニットホルダ106の冷却ファンユニット107a〜107fを取り付ける箇所には排気口が形成され、冷却ファンユニット107a〜107fの軸流方向の空気流を阻害しない構成となっている。
【0016】
筐体100の前面を構成するフロントパネル105は、その一辺が筐体100の底面と連結した状態で開け閉め可能になっており、フロントパネル105を動かすことにより筐体100の前面に開口が形成される。ユニットホルダ106はこの開口近傍に、閉めた状態のフロントパネル105と平行な向きで設置されているので、図2に示すようにフロントパネル105を開いた状態で、ユーザーは開口部から冷却ファンユニット107a〜107fを個別に脱着することが可能である。冷却ファンユニット107a〜107fは、ユニットホルダ106に固定されたストッパー109と係合することによりユニットホルダ106に取り付けられており、ストッパー109との係合状態を解消又は形成することにより、他の冷却ファンユニットを動かすことなく個別に冷却ファンユニットの脱着が可能になっている。また、フロントパネル105は、冷却ファンユニット107a〜107fに空気流を導入するための吸気口を有している。
【0017】
<動作>
図4は、冷却ファンユニット107a,107dを通る筐体100の断面図であり、筐体100内部における冷却空気流を示している。冷却ファンユニット107a〜107fが駆動すると、フロントパネル105の吸気口から筐体内部に冷却空気が導入され、ユニットホルダ106の排気口を通過する。さらに、冷却空気流は親基板103とユニットホルダ106に仕切られた空間(前置室113)で攪拌された後、親基板103の下部に設けられた冷却口108から均一な流量で子基板102に導入される。その後、冷却空気流は図示しない筐体100の排気口から筐体100外部に排出される。
【0018】
本実施の形態の筐体内冷却装置では、冷却ファンユニット107a〜107fからの冷却空気流を一旦、前置室113でバッファしてから子基板102に導入しているので、子基板102を冷却する能力は、冷却ファンユニット107a〜107fの総冷却能力に依存することとなる。そのため、冷却ファンユニット107a〜107fを直列的に重合しなくとも、冗長性を確保することができる。
【0019】
具体的には、冷却ファンユニット107a〜107fは、通常時には定格回転数より低い回転数で動作する。そして、いずれかの冷却ファンユニット107a、例えば冷却ファンユニット107aが故障して停止した場合には、冷却口108から流れ出す空気量が通常時と同量になるよう、残りの冷却ファンユニット107b〜107fが通常時より高い回転数で動作する。よって、子基板102は冷却ファンユニット107aの故障後も同様に冷却される。
【0020】
停止した冷却ファンユニット107aを放置しておくと、他の冷却ファンユニット107b〜107fがさらに故障した場合に、残りの冷却ファンユニット107c〜107fに加わる負担が増大する。そのため、停止した冷却ファンユニット107aは早急に正常なものと交換する必要がある。
【0021】
その点、冷却ファンユニット107a〜107fはストッパー109によってユニットホルダ106のフロントパネル105側に固定されているため、図5に示すようにフロントパネル105を開けた状態で容易に交換することができる。
【0022】
また、冷却ファンユニット107a〜107fは汎用の中継コネクタ110を通して電源供給されているので、特別な基板や電源端子は冷却ファンユニット107a〜107fに付属しない。冷却ファンユニット107a〜107fのみを交換すれば良いので、交換コストを低くすることができる。
【0023】
<効果>
本実施の形態の筐体内冷却装置は、筐体100内の子基板102(冷却対象)を冷却する筐体内冷却装置であって、複数の冷却ファンユニット107a〜107fと、冷却ファンユニット107a〜107fを、筐体開口部の内側の所定位置に保持するユニットホルダ106と、ユニットホルダ106と冷却対象との間に設けられ、冷却ファンユニット107a〜107fからの冷却空気流をバッファして冷却対象に導入する前置室113と、を備える。子基板102に導入される冷却空気量は、冷却ファンユニット107a〜107fの総冷却能力に依存するので、いずれかの冷却ファンユニット107a〜107fが故障して停止したとしても、他の冷却ファンユニット107a〜107fの回転数を上げることによって、冷却性能を維持することができる。また、冷却ファンユニット107a〜107fを直列的に重合しなくても冗長性を確保できるので、コストや動作時の騒音を低減することが可能である。
【0024】
また、本実施の形態の筐体内冷却装置において、ユニットホルダ106は、ユニットホルダ106を移動することなく筐体開口部から冷却ファンユニット107a〜107fを取り出し可能な位置に設けられる。そのため、他の冷却ファンユニット107a〜107fを動かすことなく個別に冷却ファンユニット107a〜107fの脱着が可能になり、冷却性能を維持しながら冷却ファンユニット107a〜107fの入れ替えが可能である。
【0025】
また、本実施の形態の筐体内冷却装置は、冷却口108を有し、冷却口108を除いて冷却ファンユニット107a〜107fと冷却対象とを隔離する親基板103(隔離板)をさらに備え、前置室113は、親基板103とユニットホルダ106によって仕切られた筐体100内の空間である。そのため、いずれかの冷却ファンユニット107a〜107fが故障して停止したとしても、他の冷却ファンユニット107a〜107fの回転数を上げて冷却口108から冷却対象に導入する冷却空気量を維持することにより、冷却性能を維持することができる。
【0026】
また、本実施の形態の筐体内冷却装置は、いずれかの冷却ファンユニット107a〜107fが故障停止した場合に、他の冷却ファンユニット107a〜107fは、故障前と略同量の空気流が冷却口108から冷却対象に導入されるよう回転数を上げて駆動する。よって、いずれかの冷却ファンユニット107a〜107fが故障しても冷却性能を維持することができる。
【0027】
(実施の形態2)
冷却ファンユニット107aが故障して停止すると、ユニットホルダ106と親基板103に挟まれた空間から冷却ファンユニット107aのプロペラ部分を通って冷却空気が逆流する。逆流が生じない場合には、他の冷却ファンユニット107b〜107fを定常状態の1.2倍の能力で動作させることにより冷却性能を維持することができるが、逆流を考慮するとそれ以上の能力で動作させる必要があり、冷却効率が悪くなる。
【0028】
そこで、実施の形態2ではユニットホルダ106の排気口を逆流防止板で覆うこととする。なお、逆流防止板以外の構成は実施の形態1と同様である。
【0029】
図6は、実施の形態2に係る筐体内冷却装置を実装した筐体の背面斜視図である。図7に、逆流防止板111の構成を示す。逆流防止板111は軽量なプラスチック板であり、突起部112をユニットホルダ106の排気口に挿入された状態で保持される。
【0030】
図8は、冷却ファンユニット107a,107d周辺の要部断面図である。回転中の冷却ファンユニット107dの後段に設けられた逆流防止板111は、冷却ファンユニット107dの静圧によって突起部112を支点に所定の角度だけ回転した状態に保たれるので、冷却ファンユニット107dから前置室113に向かう冷却空気流を妨げない。一方、停止した冷却ファンユニット107aの後段に設けられた逆流防止板111は、自重によってユニットホルダ106と略平行な向きに保持され、夫々が重なりあうことによってユニットホルダ106の排気口を塞ぐので、前置室113から冷却ファンユニット107aへ向かう冷却空気流を遮断する。
【0031】
このような逆流防止板111を設けることによって、いずれかの冷却ファンユニット107a〜107fが停止した場合の冷却効率の悪化を抑制する。
【0032】
<効果>
本実施の形態の筐体内冷却装置において、ユニットホルダ106は、冷却ファンユニット107a〜107fの取り付け面に冷却空気流が通過する排気口を有し、排気口を覆うようにしてユニットホルダ106に取り付けられ、前置室113から排気口を通過する向きの空気流を遮断する逆流防止板111をさらに備えるので、停止した冷却ファンユニット107a〜107fのプロペラ部分から冷却空気流が漏れ出すことによる冷却効率の悪化を抑制する。
【符号の説明】
【0033】
100 筐体、101 ラックマウント、102 子基板、103 親基板、104 配線、105 フロントパネル、106 ユニットホルダ、107a,107b,107c,107d,107e,107f 冷却ファンユニット、108 冷却口、109 ストッパー、110 中継コネクタ、111 逆流防止板、112 突起部、113 前置室。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内の冷却対象を冷却する筐体内冷却装置であって、
複数の冷却ファンユニットと、
前記冷却ファンユニットを、筐体開口部の内側の所定位置に保持するユニットホルダと、
前記ユニットホルダと前記冷却対象との間に設けられ、前記冷却ファンユニットからの冷却空気流をバッファして前記冷却対象に導入する前置室と、
を備える、筐体内冷却装置。
【請求項2】
前記ユニットホルダは、前記ユニットホルダを移動することなく前記筐体開口部から前記冷却ファンユニットを取り出し可能な位置に設けられる、
請求項1に記載の筐体内冷却装置。
【請求項3】
冷却口を有し、前記冷却口を除いて前記ユニットホルダと前記冷却対象とを隔離する隔離板をさらに備え、
前記前置室は、前記隔離板と前記ユニットホルダによって仕切られた前記筐体内の空間である、
請求項1に記載の筐体内冷却装置。
【請求項4】
いずれかの前記冷却ファンユニットが故障停止した場合に、他の前記冷却ファンユニットは、故障前と略同量の空気流が前記冷却対象に導入されるよう回転数を上げて駆動する、
請求項1〜3のいずれかに記載の筐体内冷却装置。
【請求項5】
前記ユニットホルダは、前記冷却ファンユニットの取り付け面に冷却空気流が通過する排気口を有し、
前記排気口を覆うようにして前記ユニットホルダに取り付けられ、前記前置室から前記排気口を通過する向きの空気流を遮断する逆流防止板をさらに備える、
請求項1〜4のいずれかに記載の筐体内冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−102102(P2013−102102A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246041(P2011−246041)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】