説明

筐体用冷却装置

【課題】筐体内に設置される発熱体の設置態様等に影響を受けることなく、筐体内を効率的に冷却してドレンの発生を防止可能な冷却装置を提供する。
【解決手段】筐体用冷却装置1は、空気熱交換器20と、吸熱側ヒートシンク31と排熱側ヒートシンク33との間にペルチェ素子35を配設した電子冷却器30と、筐体内部の温度T1、外気温度T2、ペルチェ素子の冷気温度T3に基づいて、空気熱交換器のファン22,23、吸熱ファン32、排熱ファン34、及びペルチェ素子の駆動を制御する制御ユニット40とを有する。制御ユニットは、予め設定されている筐体内の通常運転温度範囲内において、第1設定温度に上昇したとき、(T2<T1)を条件としてファン22,23を駆動し、第1設定温度よりも高い第2設定温度に上昇したとき、ファン22,23の駆動を停止すると共に、(T3≧SVB結露判定値)を条件として、ペルチェ素子35を冷却駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御基板などの発熱する部品(発熱体とも称する)を収納した筐体を冷却する筐体用冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記したような発熱体を収納した筐体内部を一定温度以下に冷却する冷却装置が知られている。例えば、特許文献1には、空気熱交換型空気調和機と冷媒型空気調和機を一体とした冷却装置を筐体内に設置した冷却装置が開示されている。この冷却装置は、筐体内温度と外気温度に応じて、空気熱交換型空気調和機と冷媒型空気調和機を使い分けするように構成されており、このような冷却装置は、発熱負荷(発熱体の数)に応じて複数台設置されている。また、特許文献2には、筐体内からの内気通路と筐体外からの外気通路を独立して配置し、両者が交差する部分に空気熱熱交換素子を配置すると共に、その後方側の内気通路に吸熱部が面し、後方側の外気通路に放熱部が面するようにペルチェ素子を配置した構成が開示されている。このような冷却装置では、空気熱交換素子を通過した内気の温度が高い場合、ペルチェ素子によって冷却するようになっている。
【0003】
また、特許文献3には、筐体内の温度以外にも湿度管理することが可能な冷却装置が開示されている。この冷却装置は、ペルチェ素子を利用したものであり、筐体内に湿度センサを設置し、所定湿度以上となったときに除湿運転するよう運転制御される。さらに、特許文献4には、ペルチェ素子の吸熱側を筐体内に収納された発熱体に対して直接接触させて冷却効果を得る冷却装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−193995号
【特許文献2】特開2005−55025号
【特許文献3】特開2008−141089号
【特許文献4】特開2003−8275号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記した特許文献1に開示されている冷却装置は、空気熱交換型空気調和機と冷媒型空気調和機を一体とした冷却装置を負荷に応じて複数台設置する構造であるため、冷却装置の設置スペースが多くなると共に、コストも高くなり、冷却する際の制御も複雑化してしまう。また、上記した特許文献2に開示されている冷却装置は、外気温が内気よりも高い場合、空気熱交換素子によって内気が暖められてしまい、暖められた内気をペルチェ素子によって冷却する必要がある。すなわち、特許文献2に開示された構成では、外気温が高いと、直接、内気をペルチェ素子によって冷却する場合と比較して多くのエネルギが必要とされてしまう。
【0006】
また、上記した特許文献3に開示されている冷却装置は、湿度センサを設け、所定の湿度を超えたときにペルチェ素子を運転して除湿させているが、気密性の高い筐体内にドレンを発生させることとなり、ドレンの排出等に問題が生じる。さらに、上記した特許文献4に開示されている冷却装置は、筐体内に複数の発熱体がある場合、ペルチェ素子及び放熱器も同数必要となってしまい、発熱体の設置数や設置方法に制約が生じてしまうと共に、コストも高くなり、冷却する際の制御も複雑化してしまう。また、ペルチェ素子をじかに発熱体に接触させるため、結露の発生により、発熱体に影響が生じる可能性もある。
【0007】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、筐体内に設置される発熱体の設置態様等に影響を受けることなく筐体内を効率的に冷却することが可能な冷却装置を提供することを目的とする。また、本発明は、筐体内を効率的に冷却することが可能で、ドレンの発生を防止する冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明に係る筐体用冷却装置は、発熱体を収納した筐体に設置され、前記筐体外部との間で空気による熱交換が可能な空気熱交換器と、前記筐体内側に吸熱ファンを具備する吸熱側ヒートシンクを、前記筐体外側に排熱ファンを具備する排熱側ヒートシンクをそれぞれ露出させ、前記吸熱側ヒートシンクと前記排熱側ヒートシンクとの間に冷却素子を配設した電子冷却器と、前記筐体内部の温度T1、外気温度T2、前記冷却素子の冷気温度T3に基づいて、前記空気熱交換器のファン、前記吸熱ファン、前記排熱ファン、及び冷却素子の駆動を制御する制御部と、を有しており、前記制御部は、予め設定されている筐体内の通常運転温度範囲内において、第1設定温度に上昇したとき、(T2<T1)を条件として前記空気熱交換器のファンを駆動し、前記第1設定温度よりも高い第2設定温度に上昇したとき、前記空気熱交換器のファンの駆動を停止すると共に、(T3≧SVB;SVBは予め定めた結露判定値)を条件として、前記冷却素子を冷却駆動する、ことを特徴とする。
【0009】
上記した構成の筐体用冷却装置は、発熱体を収納した筐体に、空気熱交換器と電子冷却器とを配設し、制御部が、所定条件に応じて運転を切換制御するため、筐体内を効率的に冷却することが可能となる。この場合、空気交換器と電子冷却器の切換制御は、筐体内部の温度T1、外気温度T2、前記冷却素子の冷気温度T3に基づいて実行されるため、効率的な冷却効果を得ることができ、特に、予め設定されている筐体内の通常運転温度範囲内において、第1設定温度に上昇したとき、空気熱交換器のファンを駆動し、しかも、このファンの駆動は、(T2<T1)を条件とするため、筐体内の温度よりも外気温が高いときは、不必要に高い温度の外気を筐体内に導入して筐体内の温度を急激に上昇させるようなことはない。また、さらに、第1設定温度よりも高い第2設定温度に上昇したとき、空気熱交換器のファンの駆動を停止して冷却素子を冷却駆動する(運転を切り換える)ことから、筐体内を効率的に冷却することが可能となる。なお、冷却素子の冷却駆動は、冷却素子の冷気温度が、結露判定値(SVB)よりも低くなったときは、その冷却駆動を停止制御することから、筐体内でドレンが発生することを防止することが可能となる。
【0010】
上記した構成の筐体用冷却装置では、前記制御部は、通常運転温度範囲内において、前記第1設定温度よりも低い第3設定温度に低下したとき、前記冷却素子を加熱駆動するように制御しても良い。
【0011】
この場合、筐体内の温度が通常運転温度範囲内であっても、筐体内の温度は低下した状態にあるため、冷却素子を加熱駆動することにより、筐体内の温度を適正な温度に上昇させ、維持することが可能となる。
【0012】
また、上記した構成の筐体用冷却装置では、前記冷却素子を並列して複数系統設けておき、前記制御部は、前記筐体内部の温度T1に応じて、1系統毎にON/OFF駆動するようにしても良い。
【0013】
このような構成では、筐体内に収納された発熱体の負荷(温度負荷)に応じて、1系統毎に順次運転することから、負荷に適した最小の構成(負荷に合わせた最適な能力)で制御運転することができ、省エネルギ化を図ることが可能となる。特に、1系統毎、段階的に制御運転を行うことで、一度に冷却素子をON/OFF駆動する構成と比較して、庫内温度のハンチングの度合いが改善されるようになる。
【0014】
そして、冷却素子を並列して複数系統設配設する構成では、並列して複数系統設けられた冷却素子は、それぞれ複数個が直列に接続されるようにしても良い。
【0015】
このように構成することで、冷却、及び加熱能力の向上を図ることが可能となる。
【0016】
また、上記した構成の筐体用冷却装置では、前記制御部は、通常運転温度範囲内において、前記吸熱ファンを駆動状態に維持するように制御しても良い。
【0017】
このように構成することで、筐体内では、吸熱ファンの駆動により、内気が常に循環される状態が保たれ、筐体内部の温度T1を安定化することが可能となる。
【0018】
また、上記した構成の筐体用冷却装置では、前記制御部は、通常運転温度範囲内において、前記第1設定温度に上昇したとき、前記排熱ファンを駆動するように制御しても良い。
【0019】
このように構成することで、電子冷却器の冷却素子が冷却駆動される前段階で、電子冷却器の排熱側のヒートシンクが冷却されるため、電子冷却器が冷却駆動された際の冷却効率が高められると共に、速やかな冷却効果を発揮することが可能となる。また、冷却素子の冷却駆動が停止した後も、しばらく排熱ファンが駆動されるため、冷却素子の性能を長期に亘って安定維持することが可能となる。
【0020】
また、上記した構成の筐体用冷却装置では、前記制御部は、通常運転温度範囲の上限値を超えたとき、前記空気熱交換器のファンの駆動、前記吸熱ファンの駆動、前記排熱ファンの駆動、及び冷却素子の冷却駆動を維持するように制御しても良い。
【0021】
このような構成では、筐体内の温度が、通常運転温度範囲を超えて上昇しているため、空気熱交換器及び電子冷却器の両方を駆動して、筐体内部の温度を速やかに冷却し、筐体内を通常運転温度範囲に戻すことが可能となる。すなわち、空気熱交換器及び電子冷却器の双方駆動は、通常運転温度範囲を超えて上昇したときに限られるため、効率的な冷却運転を実施することが可能となる。
【0022】
また、上記した構成の筐体用冷却装置では、前記制御部は、通常運転温度範囲の下限値から下がったとき、前記空気熱交換器のファンの駆動、前記吸熱ファンの駆動、前記排熱ファンの駆動、及び冷却素子の加熱駆動を停止するように制御しても良い。
【0023】
通常、筐体内部の温度は、発熱体の運転によって次第に上昇するが、通常運転温度範囲の下限値から下がった状態にあると、各駆動要素が加熱異常している可能性があるため、停止状態にすることで、省エネルギ運転、及び安全性の向上を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、筐体内に設置される発熱体の設置態様等に影響を受けることなく、筐体内を効率的に冷却することができる。また、筐体内の効率的な冷却によって、ドレンの発生を防止することが可能な筐体用冷却装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る筐体用冷却装置の一実施形態を示す全体概略構成図。
【図2】筐体用冷却装置の各駆動部を運転制御する制御ユニットの構成を示すブロック図。
【図3】制御部において実施される空気熱交換器、及び電子冷却器の制御運転の態様を示す制御テーブル。
【図4】筐体内の温度と電子冷却器の制御運転との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る筐体用冷却装置の一実施形態について、添付図面を参照しながら具体的に説明する。
図1は、冷却装置を有する筐体の全体構成を示す概略図である。
本実施形態の筐体1は、断熱材壁3によって仕切られる断面略矩形形状の箱型に構成されており、その内部空間(以下、庫内と称する)4は、前面部3Aに装着された開閉扉3A´によって密閉可能となっている。庫内4には、例えば、通信機器のモデム、電源装置等の各種の発熱体が収納されるようになっており、本実施形態では、庫内4に、複数の棚板5aを有するラック5を配設し、その棚板5a上に各種の発熱体が設置されるようになっている。
【0027】
前記筐体1には、筐体内の温度を制御、管理する冷却装置10が分散して配設されている。この冷却装置10は、筐体1の天井部3Bに配設され、筐体の内外を接続する空気熱交換器20と、背面部3Cに配設され、筐体の内外を接続する電子冷却器30と、前記空気熱交換器10及び電子冷却器20の運転を制御する制御ユニット40とを備えている。この場合、制御ユニット40は、筐体1のいずれかの位置に設置されていれば良く、本実施形態では、庫内4のラック5の棚板5a上に設置されている。また、冷却装置10は、筐体内部の温度T1を測定するセンサS1、外気温度T2を測定するセンサS2、及び前記電子冷却器30を構成する冷却素子の冷気温度T3を測定するセンサS3を備えており、これらのセンサS1〜S3によって検知される温度情報は、後述するように、制御ユニット40を構成する制御部に入力され、各駆動要素の運転を制御するトリガー信号となっている。
【0028】
前記空気熱交換器20は、天井部3B上に設置されるケーシング21を備えており、このケーシング21内には、天井部3Bの内側に設置されたファン22によって内気22Aが排出されると共に、ケーシング21に設置されたファン23によって外気23Aが通過するようになっている。この場合、本実施形態におけるケーシング21は、外気23Aを通過させる流路21Aと、内気22Aを通過させる流路21Bとを備えており、各流路21A,21Bは、好ましくは、外気と内気が混ざり合わないように上下に独立して形成され、隣り合った流路の壁面21Cより熱交換する構造となっている。また、各流路21A,21Bについては、放熱し易いようにフィン形状に構成されることが好ましい。
なお、上記したファン22及びファン23は、前記制御ユニット40の制御部によって同期駆動される。
【0029】
前記電子冷却器30は、庫内側に配設される吸熱側ヒートシンク(放熱ファン)31と、庫外側に配設される排熱側ヒートシンク33とを備えており、これらは、筐体1の背面部3Cに設けられた取付用板(図示せず)に形成された開口3dを通過するように配設されている。この場合、電子冷却器30は、冷却素子としてペルチェ素子35を備えており、このペルチェ素子35は、前記取付用板にパッキンを介して接続される金属プレート36と吸熱側ヒートシンク(放熱ファン)31との間に配置されている。また、前記排熱側ヒートシンク33は、金属プレート36のペルチェ素子35を取り付けた面とは反対側の面に取り付けられている。なお、ペルチェ素子35は、放熱フィンと組み合わされるが、放熱フィンは、各種フィン形状の異なるもの、或いは、ヒートパイプを利用したもので構成することが可能である。
【0030】
前記吸熱側ヒートシンク31の一端部には、庫内の内気を通過させるように吸熱ファン32が設置されており、庫内の内気32Aを吸熱側ヒートシンク31内に流し、他端部から排出させる。この場合、他端部には、上記したように、冷却素子(ペルチェ素子35)の冷気温度T3を測定するセンサS3が配設されている。また、前記排熱側ヒートシンク33の一端側には、排熱側ヒートシンク33内に滞留した空気を排出するように、排熱ファン34が設置されており、前記ペルチェ素子35によって冷却されて暖められた空気34Aを庫外に排出させる。
【0031】
上記した冷却素子35、及び、吸熱ファン32と排熱ファン34は、前記制御ユニット40の制御部によって個別に駆動される。この場合、吸熱ファン32と排熱ファン34は、それぞれのヒートシンク31,33内において、空気の流れが対向となるような位置関係になっていることが好ましく、特に、排熱ファン34については、排熱側ヒートシンク33内の空気を上方側に排出して効率的な排熱がされるよう、下端部から内気を上昇させるように配設されていることが好ましい。
【0032】
なお、上記した構成において、前記筐体1を構成する材料は、耐候性や強度を重視し、外板をステンレスにすることが望ましい。但し、遮光板や筐体内部のフレーム材については軽量化を考慮し、アルミ材を使用することが好ましい。また、内部の棚板5a(ラック5)等を構成する材料については、強度及び防塵の観点から、ステンレスを使用することが好ましい。さらに、上記した金属プレート36については、熱伝導から見ると銅板を用いることが望ましいが、重量がかさむことからアルミ材を用いることが好ましい。
【0033】
図2は、上記した冷却装置の各駆動部を運転制御する制御ユニットの構成を示したブロック図である。
制御ユニット40は、所定の動作プログラムを格納し、各センサS1〜S3から送信される検知温度信号に基づいて、前記空気熱交換器20のファン22,23、並びに、前記電子冷却器30の吸熱ファン32、排熱ファン34、及び冷却素子(ペルチェ素子)35の駆動を制御する機能を備えた制御部41を有している。すなわち、空気熱交換器20のファン22,23は、駆動回路を備えたファン駆動部42を介して同期してON/OFF駆動され、電子冷却器30の吸熱ファン32及び排熱ファン34は、それぞれ駆動回路を備えたファン駆動部43,44を介して個別にON/OFF駆動される。
【0034】
また、本実施形態のペルチェ素子35は、並列して複数系統設けられており(図2では、ペルチェ素子35A〜35Dの4系統が示されている)、前記制御部41は、複数系統のペルチェ素子を1系統毎にON/OFF駆動制御するようになっている。すなわち、各系統のペルチェ素子35A〜35Dは、それぞれ電流の極性を反転させることが可能な駆動回路を備えたペルチェ駆動部45〜48を介して、個別に加熱/冷却駆動、及び、ON/OFF駆動される。
【0035】
なお、本実施形態では、さらに、並列して複数系統設けられた冷却素子35A〜35Dは、それぞれ複数個のペルチェ素子、具体的には、各系統に2つのペルチェ素子(35A,35a1),(35B,35b1),(35C,35c1),(35D,35d1)が直列に接続されて構成されている。もちろん、ペルチェ素子の系統数や、直列されるペルチェ素子の個数については、冷却装置の仕様等によって、適宜変形することが可能である。
【0036】
次に、上記した制御ユニット40による制御運転方法について、図3を参照しながら具体的に説明する。
図3は、制御ユニット40の制御部41において実施される空気熱交換器20のファン22,23、及び電子冷却器30の吸熱ファン32、排熱ファン34、及びペルチェ素子35の制御運転の一態様例を示す制御テーブルを示している。
【0037】
前記制御部41は、予め設定されている筐体内の通常運転温度範囲R内において、筐体内の温度T1が、第1設定温度(SV2)に上昇したとき、外気温度T2が筐体内の温度T1より小さいこと(T2<T1)を条件として、空気熱交換器20のファン22,23を駆動する(制御テーブル(ア)参照)。また、筐体内の温度T1が第1設定温度(SV2)よりも高い第2設定温度(SV3)に上昇したとき、空気熱交換器20のファン22,23の駆動を停止すると共に(制御テーブル(イ)参照)、ペルチェ素子35の冷気温度T3が予め定めた結露判定値(SVB)以上であることを条件として(T3≧SVB)、ペルチェ素子35を冷却駆動する(制御テーブル(ウ)参照)。
【0038】
上記のように、筐体1内の通常運転温度範囲R内において、その内部温度T1が、第1設定温度(SV2)にまで上昇したとき、空気熱交換器20のファン22,23を駆動することで、上昇した庫内温度を冷却することが可能となる。このように、筐体内の温度と外気温度に差がある領域では、空気熱交換器20のみによる運転とし、電子冷却器30の運転を実施しないことから、省エネルギ化を図ることができる。この場合、ファン22,23の駆動は、上記したように、外気温度T2<内気温度T1を条件としているため、筐体内の温度よりも外気温が高いときは、不必要に高い温度の外気が筐体1内に導入されることはなく、筐体1内の温度を急激に上昇させてしまうことはない。すなわち、外気温度が庫内温度よりも低くなるまでは、空気熱交換器20のファン22,23の駆動を停止しており、極力、外部の熱が筐体内部に移動しないようしている。
【0039】
そして、ファン22,23の駆動の停止によって、筐体内の温度T1が上昇し、第1設定温度(SV2)よりも高い第2設定温度(SV3)に上昇したときは、ペルチェ素子35を冷却駆動して、庫内を冷却して一定温度に保つように制御する(制御テーブル(ウ)参照)。なお、ペルチェ素子35が全系統に亘って故障している場合、ファン22,23の駆動は、外気温度T2<内気温度T1を条件としてそのまま駆動を継続し、庫内の冷却を実施する(制御テーブル(イ)※1参照)。
【0040】
このペルチェ素子35の冷却駆動をする場合、ペルチェ素子35の冷気温度T3が、予め定めてある結露判定値(SVB)よりも低くなったときは、吸熱側ヒートシンク(放熱ファン)31の部分で結露が発生する可能性があるため、冷却駆動を停止制御して、庫内でドレンが発生することを防止する(制御テーブル(ウ)参照)。すなわち、本実施形態では、結露が発生し易い部分において、結露が発生する温度域(結露判定値以下)にならないように冷却運転を制御しており、庫内温度を一定に保つように制御をしている。
【0041】
なお、結露の判定については、例えば、湿度センサと庫内温度の検出によって露点温度を判定して運転制御しても良いが、本実施形態のように、結露判定値(SVB)を予め定めておき、その温度以下を露点温度として運転制御を行うことにより、制御項目を簡易化することが可能となる。また、本実施形態では、筐体内の温度T1を検出するセンサS1が万一故障しても、冷気温度T3を測定するセンサS3を代用することが可能となる。
【0042】
また、前記制御部41は、通常運転温度範囲Rの上限値(SV3+10℃)を超えたとき、空気熱交換器20のファン22,23の駆動、及び、電子冷却器30の駆動部である吸熱ファン32の駆動、排熱ファン34の駆動、及びペルチェ素子35の冷却駆動を維持するように制御する。
【0043】
このように、筐体1内の温度T1が、通常運転温度範囲Rを超えて上昇していることから、空気熱交換器20及び電子冷却器30の両方を駆動して、筐体内部の温度を速やかに冷却し、筐体内を通常運転温度範囲Rに戻すようにする。すなわち、空気熱交換器20及び電子冷却器30の双方駆動は、筐体内の温度T1が、通常運転温度範囲Rを超えて上昇したときに限られるため、効率的な冷却運転を実施することが可能となる。
【0044】
以上のように、上記した冷却装置10によれば、発熱体を収納した筐体1に、空気熱交換器20と電子冷却器30とを配設し、制御部40が、所定条件に応じて運転を切換制御するため、運転コストを軽減することが可能になると共に、筐体内を効率的に冷却することが可能となる。また、空気熱交換器20及び電子冷却器30は、各々最適な状態で、いずれか一方の駆動、双方駆動が切換えられることから、空気熱交換器と電子冷却器が一体化した冷却装置を発熱体の負荷に応じて複数台設置する必要がなく、筐体内の設置スペースが大きくなることや、コストが高騰するようなこともない。さらに、空気交換器20と電子冷却器30の切換制御は、筐体内の温度T1、外気温度T2、ペルチェ素子35の冷気温度T3に基づいて実行されるため、効率的な冷却効果を得ることができ、ペルチェ素子の冷却駆動は、その冷気温度が結露判定値(SVB)よりも低くなったときは、その冷却駆動を停止制御するため、筐体内でドレンが発生することを防止することが可能となる。
【0045】
また、本実施形態では、前記制御部41は、通常運転温度範囲R内において、前記第1設定温度(SV2)よりも低い第3設定温度(SV1)に低下したとき、ペルチェ素子35を加熱駆動するように制御している(制御テーブル(エ)参照)。
【0046】
この場合、通常運転温度範囲R内であっても、筐体1内の温度はかなり低下していることから、ペルチェ素子35を加熱駆動することにより、筐体1内の温度を、より適正な温度に上昇させ、維持することが可能となる。なお、上記したペルチェ素子35による加熱運転でも筐体内の温度が上昇しない状況が、(SV1−5℃以下)であり、これは、通常の運転状態では起こりえない範囲となっている。このため、本実施形態では、このような状況では、加熱異常が生じる(機器の仕様運転温度範囲を超える)可能性があるため、すべての駆動要素を停止するように制御し、安全性を向上している。或いは、庫内温度が、(SV1−5℃以下)となる状況が一定時間経過した場合、加熱異常が発生する可能性があるとして、制御部41は、異常警報を外部に発信するようにしても良い。
【0047】
また、前記制御部41は、通常運転温度範囲R内において、電子冷却器30の吸熱ファン32を駆動状態に維持するように制御しても良い。このように構成することで、筐体1内では、吸熱ファン32が常時駆動されていることから、内気が常に循環される状態が保たれ、筐体内部の温度T1を安定化することが可能となる。
【0048】
また、前記制御部41は、通常運転温度範囲R内において、筐体内の温度T1が前記第1設定温度(SV2)に上昇したとき、電子冷却器30の排熱ファン34を駆動するように制御することが好ましい。これは、ペルチェ素子35を前記第2設定温度(SV3)で冷却駆動すると、ペルチェ素子の加熱側(排熱側ヒートシンク33)では、ペルチェ素子の放熱フィン部を含めて、ペルチェ素子運転停止後(庫内温度が第1設定温度SV2に低下しても)であっても、暫くは高い状態が継続すること、及び、ペルチェ素子35は、加熱側では速やかに放熱を行わないと、素子の性能及び寿命に影響があることから、ペルチェ素子35の冷却運転中(制御テーブル(オ)参照)、及び、その前後(制御テーブル(カ)参照)では、排熱ファン34を駆動状態に制御することで、加熱側では速やかに放熱されるようになり、筐体内の温度T1が上昇することを防止して冷却効果を維持することができると共に、ペルチェ素子35の性能を長期に亘って安定化することが可能となる。なお、排熱ファン34の駆動は、ペルチェ素子35の冷却駆動に連動させても良く、ペルチェ素子の冷却駆動が停止してから、遅延タイマ等によって、一定時間駆動するように制御をしても良い。
【0049】
さらに、上記した吸熱ファン32、及び排熱ファン34については、空気熱交換器20のファン22,23が駆動しているときに同期して駆動するように制御することで、熱伝導にて筐体内の温度を外部に逃がすことが可能となり、庫内温度を安定化させることが可能となる。
【0050】
また、本実施形態の冷却装置は、電子冷却器30を構成するペルチェ素子35が並列して複数系統設けられている。この場合、前記制御部41は、筐体内の温度T1に応じて1系統毎にON/OFF駆動するように制御しても良い。具体的には、例えば、図4に示すように、筐体内の温度T1が次第に下がり、第3設定温度(SV1)から下がったときにペルチェ素子35を加熱駆動するのであれば、制御部41は、第3設定温度(SV1)から2℃下がった時点でペルチェ素子35A系を駆動し、第3設定温度(SV1)から3℃下がった時点でペルチェ素子35B系を駆動し、第3設定温度(SV1)から4℃下がった時点でペルチェ素子35C系を駆動し、第3設定温度(SV1)から5℃下がった時点でペルチェ素子35D系を駆動して最大加熱状態となるように制御している。そして、このような制御運転によって筐体内の温度T1が上昇する場合、同様にして、加熱駆動を系統毎に順次、停止制御するようにしている。
【0051】
このように、ペルチェ素子を複数系統設け、1系統毎に、段階的に制御運転を行うことで、一度にペルチェ素子をON/OFF駆動する構成と比較して、筐体内の温度のハンチングの度合いを改善することが可能となる。また、このような構成では、筐体1内に収納された発熱体の負荷(温度負荷)に応じて、1系統毎に順次運転することも可能となり、負荷に適した最小の構成(負荷に合わせた最適な能力)で制御運転することができ、運転コストの低減、及び、省エネルギ化を図ることが可能となる。もちろん、このような段階的な制御運転は、筐体内の温度T1が上昇して行き、筐体内の温度が上記した第2設定温度(SV3)でペルチェ素子35を冷却駆動する際にも実施することが可能である。
【0052】
なお、本実施形態では、並列して複数系統設けられたペルチェ素子35A〜35Dは、それぞれ複数個が直列に接続されているため、冷却能力、及び加熱能力の向上を図ることが可能となる。
【0053】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。
【0054】
例えば、上記した電子冷却器30において、ペルチェ素子35を複数系統配設し、段階的に制御運転する構成については、空気熱交換器20が設置されていない冷却装置においても実施することが可能である。すなわち、このような構成では、発熱体の負荷に応じた冷却(加熱)駆動制御が実現でき、ハンチングの度合いを改善して、筐体内を効率的に冷却(加熱)することが可能となる。また、電子冷却器30は、ペルチェ素子を用いるもの以外にも、例えば一般的な冷媒循環による冷却構造を用いることも可能である。
【0055】
また、上記した空気熱交換器20は、内気22Aと外気23Aが直接触れることなく仕切られた壁面21Cを通して熱伝導により熱交換するよう構成されているが、熱交換する方式については種々変形することが可能である。例えば、ケーシング21内に各種の放熱フィン、例えば、積層構造の格子フィンを設置しておき、格子間の流路で熱交換するようにしても良い。
【0056】
さらに、上記した筐体1の気密性を高めることにより、筐体1内に吸湿剤を設置して湿度調整機能を有するように構成しても良い。
【符号の説明】
【0057】
1 筐体
10 冷却装置
20 空気熱交換器
22,23 ファン
30 電子冷却器
31 吸熱側ヒートシンク
32 吸熱ファン
33 排熱側ヒートシンク
34 排熱ファン
35 ペルチェ素子
40 制御ユニット
41 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体を収納した筐体に設置され、前記筐体外部との間で空気による熱交換が可能な空気熱交換器と、
前記筐体内側に吸熱ファンを具備する吸熱側ヒートシンクを、前記筐体外側に排熱ファンを具備する排熱側ヒートシンクをそれぞれ露出させ、前記吸熱側ヒートシンクと前記排熱側ヒートシンクとの間に冷却素子を配設した電子冷却器と、
前記筐体内部の温度T1、外気温度T2、前記冷却素子の冷気温度T3に基づいて、前記空気熱交換器のファン、前記吸熱ファン、前記排熱ファン、及び冷却素子の駆動を制御する制御部と、
を有する筐体用冷却装置であって、
前記制御部は、予め設定されている筐体内の通常運転温度範囲内において、第1設定温度に上昇したとき、(T2<T1)を条件として前記空気熱交換器のファンを駆動し、前記第1設定温度よりも高い第2設定温度に上昇したとき、前記空気熱交換器のファンの駆動を停止すると共に、(T3≧SVB;SVBは予め定めた結露判定値)を条件として、前記冷却素子を冷却駆動する、
ことを特徴とする筐体用冷却装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記通常運転温度範囲内において、前記第1設定温度よりも低い第3設定温度に低下したとき、前記冷却素子を加熱駆動することを特徴とする請求項1に記載の筐体用冷却装置。
【請求項3】
前記冷却素子は、並列して複数系統設けられており、
前記制御部は、前記筐体内部の温度T1に応じて、1系統毎にON/OFF駆動することを特徴とする請求項1又は2に記載の筐体用冷却装置。
【請求項4】
前記並列して複数系統設けられた冷却素子は、それぞれ複数個が直列に接続されていることを特徴とする請求項3に記載の筐体用冷却装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記通常運転温度範囲内において、前記吸熱ファンを駆動状態に維持することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の筐体用冷却装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記通常運転温度範囲内において、前記第1設定温度に上昇したとき、前記排熱ファンを駆動することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の筐体用冷却装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記通常運転温度範囲の上限値を超えたとき、前記空気熱交換器のファンの駆動、前記吸熱ファンの駆動、前記排熱ファンの駆動、及び冷却素子の冷却駆動を維持することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の筐体用冷却装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記通常運転温度範囲の下限値から下がったとき、前記空気熱交換器のファンの駆動、前記吸熱ファンの駆動、前記排熱ファンの駆動、及び冷却素子の加熱駆動を停止することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の筐体用冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−69890(P2013−69890A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207695(P2011−207695)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】