説明

筐体設置構造

【課題】 簡便な作業で筐体を床面に設置することができ、特に、狭所や壁際での設置作業を容易に行うことのできる筐体設置構造を提供すること。
【解決手段】 筐体の前面側から2つのナットもしくはネジを締結して筐体を床面に設置する構造とする。具体的には、筐体設置基礎9に設けた揺動式のステー部材16に取り付けたロッド部材17で筐体8下面の舌片11,12をクランプし、更に、左右各1のナット19で各ロッド部材17を舌片11,12に固定するか、もしくは、筐体23下面後方側の舌片27を凹凸嵌合で筐体設置基礎24に位置決め固定し、筐体23下面手前側の左右の舌片26を左右各1のネジ35で筐体設置基礎24に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信機器を始めとする電気部品等を内蔵した筐体を床面に設置するための筐体設置構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の筐体設置構造の一般例を図7〜図9に示す。図7は電気部品等を内蔵した筐体1を床面に設置した状態で示した斜視図、図8(a)は単体の筐体1を同方向から見た斜視図、図8(b)は同筐体1を背面側から見た斜視図、また、図8(c)は、床面に筐体1を設置するため利用されるコンクリート製の筐体設置基礎2の構成について示した斜視図である。
【0003】
筐体1は、その底面の左右両側に台座となるペデスタル3,3を備え、各ペデスタル3の下面にはボルト通し穴4,4が穿設されている。また、各筐体設置基礎2にはアンカーボルト5,5が先端を突出させて埋設されている。
【0004】
筐体1は、その設置時に各ペデスタル3のボルト通し穴4,4がアンカーボルト5,5の位置と一致するようにして筐体設置基礎2,2上に載置され、アンカーボルト5,5にナット6,6を螺合することで、筐体設置基礎2,2上に一体的に固定される。
【0005】
図9(a)は筐体1の設置が完了した状態を示した側断面図、また、図9(b)は筐体1の設置が完了した状態を示した正断面図である。
【0006】
しかしながら、従来の筐体設置構造には、次のような課題がある。
【0007】
それは、狭所で設置工事を行う場合、作業スペ−スが取れない為に作業効率が悪いということである。
【0008】
特に、壁を背にして筐体1を設置するような場合においては、後方側のアンカーボルト5へのナット6の締結作業がし辛く、工事性が非常に悪い。また、筐体1の底面の左右両側にペデスタル3,3が設けられている場合、筐体1の左右方向から工具を挿入してナット6を回すことができないため、工事性の悪化と共に作業の工数も増し、工事コストの増加にもつながっていた。
【0009】
この種の課題を改善するための技術としては、ボルトと固定用シャフトを併用した筐体設置構造が、例えば、特許文献1として提案されている。
【0010】
特許文献1で開示される技術は、筐体設置基礎の前後にL字型のステーを固設し、手前側に位置するステーに筐体下面手前側の舌片をボルトで固定する一方、後方側のステーと筐体下面後方側の舌片との固定には、手前側の舌片に形成された孔から固定用シャフトを差し込み、この固定用シャフトの先端を後方側のステーと筐体下面後方側の舌片に貫通させ、両者を固定しようというものである。
【0011】
このような構成を適用すれば筐体の正面側からの操作のみで設置工事を行うことは可能であるが、筐体の四隅を筐体設置基礎に固定するためには、依然として、筐体を載置する左右の筐体設置基礎の各々についてボルトの締結と固定用シャフトの挿入といった2回の操作を必要とし、左右両側を併せて全体として4回の操作が必要となることから、設置工事の作業の工数の削減の面で今ひとつの不満があった。
【0012】
また、設置工事の作業の工数の削減を目的とした他の技術として、金枠から成る下部架台部材の前後の両端部にL字型のステーを固設し、手前側に位置するステーにペデスタルの手前側の屈曲部を前記と同様にしてボルトで固定する一方、後方側に位置するステーとペデスタルの後方側の屈曲部との固定には、ペデスタルの後方側に設けたスリットとステーとの凹凸嵌合を利用するようにしたものが特許文献2として提案されている。
【0013】
しかし、このものは下部架台部材を床面に設置するために更に別の固定手段を必要とし、設置工事の作業全体についてみると工数の増大を招く可能性が高く、また、スリットを利用した嵌合には、位置ズレの発生が一方向に規制されるに過ぎず、これとは別に他方向への位置ズレを規制するための別の位置決め手段が必要となり、構造的に複雑なものとなってしまう可能性が高い。
これを解決するため、特許文献2では、下部架台部材とペデスタルを内外に嵌合してスリットによる規制と直交する方向の位置ズレを防止しているが、下部架台部材とペデスタルを内外に嵌合させる必要上、筐体を下部架台部材に載置する際の位置決め作業に精度を要し、作業工程が煩雑となる弊害がある。
【0014】
【特許文献1】実開平3−1565号公報
【特許文献2】特開2000−148288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そこで、本発明の目的は、前記従来技術の不都合を改善し、より簡便な作業で筐体を床面に設置することができ、特に、一方向からの設置作業が可能であって、狭所や壁際での設置作業を容易に行うことのできる筐体設置構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の筐体設置構造は前記目的を達成するため、筐体底面の左右両側の前後位置の各々に互いに平行な一対の舌片を固着して配備し、前記各舌片に左右の各組毎に共通する左右の同一方向から切り込みを形成する一方、
前記筐体の設置箇所となる床面に固設された左右の筐体設置基礎には、
前記筐体設置基礎によって揺動自在に軸支され、其の先端部を前記左右の各組の舌片の切り込みに沿って移動させ得るステー部材と、
前記ステー部材の先端部において軸方向移動可能に装着され、該ステー部材の揺動によって前記左右の各組の舌片の切り込みに係脱するロッド部材とが設けられ、
前記ロッド部材の後方側の端部には、後方側に位置する前記舌片に外側から当接する抜け止め片が固着される一方、
前記ロッド部材の手前側の端部には、手前側に位置する前記舌片に外側から当接するナットを螺合するための雄ネジ部が刻設されていることを特徴とした構成を有する。
【0017】
以上の構成によれば、筐体の設置箇所となる床面に固設された左右の筐体設置基礎の上に筐体を載置し、この筐体設置基礎によって揺動自在に軸支されたステー部材を揺動させ、該ステー部材の先端部に装着されているロッド部材を筐体底面の前後位置に配備された舌片の切り込みに係合させるといった簡単な操作で、筐体設置基礎に筐体を固定することができる。
そして、更に、ロッド部材の手前側の端部に刻設された雄ネジ部にナットを螺合して締結することにより、このナットとロッド部材の後方側の端部に固着された抜け止め片とが相対的に接近し、これらの抜け止め片およびナットが筐体底面の前後位置に配備された舌片に外側から当接し、筐体底面の前後位置に配備された舌片にロッド部材が固定される。
これによりステー部材の揺動は抑制され、ロッド部材が筐体底面の舌片から離脱することがなくなるので、筐体は、筐体底面の舌片とロッド部材およびステー部材と筐体設置基礎とを介して床面に強固に固定されることになる。
この際、筐体の設置に必要とされる作業は、左右各1のステー部材の揺動操作と左右各1のナットの締結操作のみであり、しかも、ナットの締結操作は筐体の正面側から行うことができるので、簡便な作業で筐体を床面に設置することができ、特に、一方向からの設置作業が可能であるため、狭所や壁際、特に、筐体の背面が壁に著しく接近しているような状況下においても、筐体の設置作業を簡単に行うことができる。
しかも、ステー部材とロッド部材を退避させた状態で筐体設置基礎上に筐体を載置することができるので、筐体設置基礎と筐体底面との干渉が回避され、筐体の載置作業を円滑に行うことができる。
【0018】
また、筐体底面の舌片は、筐体底面の左右両側に固着されたペデスタルの屈曲部によって形成されていることが望ましい。
【0019】
筐体の台座であるペデスタルと一体に固定用の舌片を形成することで、部品点数の削減および筐体製造時の加工および組立作業が簡略化され得る。
【0020】
また、左右の各組毎に共通する舌片の切り込みは、互いに対向して形成されていることが望ましい。
【0021】
このような構成を適用した場合、筐体を設置する前のステー部材の待機位置は左右の筐体設置基礎の内側の領域となり、ステー部材が筐体の設置面積の外側に食み出すことはなく、筐体設置前の床面積を有効に活用することができる。
また、ステー部材を内側から外側に揺動させて舌片の切り込みに係合させて筐体を固定するかたちとなるので、筐体の背面側のみならず、筐体の左右両側が壁に阻まれているような状況下にあっても、前記と同様の簡単な操作で筐体を設置することができる。
【0022】
そして、更には、前記ステー部材の前後の端部に筐体底面の舌片の内側に当接するサポート部材が一体に形成され、このサポート部材を貫通してロッド部材が軸方向移動可能に装着されていることが望ましい。
【0023】
このような構成を適用した場合、ロッド部材の手前側の端部に刻設された雄ネジ部にナットを螺合して締結すると、このナットとロッド部材の後方側の端部に固着された抜け止め片とが相対的に接近し、これらの抜け止め片およびナットと前述のサポート部材との間に挾持されるかたちで筐体底面の舌片が固定されることになるので、ロッド部材が筐体底面の舌片から離脱することは全くなく、筐体を床面に対して非常に強固に固定することができるようになる。
【0024】
あるいは、前記と同様の目的を達成するために、筐体底面の左右両側の前後位置の各々に一対の舌片を固着して配備し、手前側に位置する舌片にはネジ固定用の孔を穿設する一方、後方側に位置する舌片には筐体設置基礎側の位置決め部材と凹凸嵌合する係合部を形成し、
前記筐体の設置箇所となる床面に固設された左右の筐体設置基礎の各々に、
前記手前側に位置する舌片をネジ固定する筐体固定用舌片と、後方側に位置する舌片の係合部を外嵌または内嵌するかたちで凹凸嵌合して該舌片の上下左右方向の移動を阻止する位置決め部材とを設けた構成を適用することも可能である。
【0025】
このような構成を適用した場合には、筐体の設置箇所となる床面に固設された左右の筐体設置基礎の上に筐体を載置した後、まず、筐体設置基礎の位置決め部材に筐体底面の後方側に位置する舌片の係合部を凹凸嵌合させ、更に、筐体設置基礎の筐体固定用舌片に筐体底面の手前側に位置する舌片をネジ固定することによって筐体を固定する。
筐体設置基礎の位置決め部材と筐体底面の後方側の係合部との凹凸嵌合は一方が他方を内嵌するかたちでなされるので、この舌片の上下左右方向の位置ズレ、つまり、筐体の振れを確実に阻止することができる。
筐体の設置に必要とされる作業は、左右各1のネジの締結操作のみであり、しかも、ネジの締結操作は筐体の正面側から行うことができるので、簡便な作業で筐体を床面に設置することができ、特に、一方向からの設置作業が可能であるため、狭所や壁際、特に、筐体の背面が壁に著しく接近しているような状況下においても、筐体の設置作業を簡単に行うことができる。
【0026】
更には、筐体固定用舌片の下端部を、筐体設置基礎に揺動自在に枢着した構成とすることが望ましい。
【0027】
筐体固定用舌片を転倒させて筐体設置基礎上の待機位置に保持することができるため、筐体設置基礎の位置決め部材と筐体底面の後方側の係合部との凹凸嵌合に際して筐体を微小移動させる際に、筐体固定用舌片と筐体底面の手前側に位置する舌片との干渉を回避することができる。
このため、筐体設置基礎の位置決め部材と筐体底面の後方側の係合部との嵌合操作を円滑に行うことができ、筐体の設置の作業性が更に向上する。
【0028】
また、筐体底面の舌片は、筐体底面の左右両側に固着されたペデスタルの屈曲部によって形成されていることが望ましい。
【0029】
筐体の台座であるペデスタルと一体に固定用の舌片を形成することで、部品点数の削減および筐体製造時の加工および組立作業が簡略化され得る。
【発明の効果】
【0030】
本発明の筐体設置構造は、筐体の前面側から2つのナットもしくはネジを操作するだけの簡単な作業で筐体を床面に設置することができる。また、一方向からの設置作業が可能であるため、狭所や壁際での設置作業、特に、筐体の背面が壁に著しく接近していたり更には筐体の両側が壁に挟まれているような場合であっても、筐体の設置作業を支障なく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
次に、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について具体的に説明する。
【0032】
図1はステー部材とロッド部材を利用して筐体を床面に設置するようにした第一の実施形態の筐体設置構造7について示した斜視図、図2(a)は単体の筐体8を同方向から見た斜視図、図2(b)は同筐体8を背面側から見た斜視図、また、図8(c)は、床面に筐体8を設置するため利用される筐体設置基礎9の構成について示した斜視図である。
【0033】
筐体8の底面の左右両側には、図1に示されるように、台座となるペデスタル10,10が一体的に固着され、各ペデスタル10の前後には、図2(a)および図2(b)に示されるように、ペデスタル10の端部を略直角に屈曲して形成された舌片11,12が設けられている。
【0034】
各ペデスタル10において、舌片11と舌片12は互いに平行な位置関係にあり、舌片11と舌片12には、共に、左右の同一方向から切り込み13,14が形成されている。
より具体的には、図2(a)に示されるように、右側のペデスタル10に設けられた舌片11,12の切り込み13,14は、図2(a)を基準として、この舌片11,12の左端部から右側に向かう方向に形成され、また、左側のペデスタル10に設けられた舌片11,12の切り込み13,14は、図2(a)を基準として、この舌片11,12の右端部から左側に向かう方向に形成されており、左右のペデスタル10毎に、舌片11,12における切り込み13,14の方向性が共通化され、更に、左右のペデスタル10,10の相互的な位置関係からすると、左側のペデスタル10の切り込み13,14と右側のペデスタル10の切り込み13,14とが互いに対向する向きとなっている。
【0035】
一方、筐体設置基礎9,9は、図2(c)に示されるように、筐体8における左右のペデスタル10,10の間隔に合わせて筐体8の設置箇所となる床面に固設される。通常、筐体設置基礎9,9はコンクリート製であるが、別の材質であっても構わない。
【0036】
各筐体設置基礎9は、この筐体設置基礎9上に置かれる筐体8の底面に設けられた左右各組の舌片11,12の切り込み13,14に沿って其の先端部を移動させ得るようにヒンジ15を介して揺動自在に軸支されたステー部材16と、このステー部材16の先端部において軸方向移動可能に装着され、該ステー部材16の揺動によって前記各組の舌片11,12の切り込み13,14に係脱するロッド部材17とが設けられる。
より具体的には、ステー部材16の前後の端部が図2(c)に示されるようにして略直角に屈曲され、この屈曲部分によって、筐体8側の舌片11,12の内側に当接するサポート部材21が形成され、前後のサポート部材21,21を貫通するようにして、ロッド部材17が軸方向移動可能な状態で取り付けられている。
【0037】
そして、更に、ロッド部材17の後方側の端部には、筐体8の底面において後方側に位置する舌片12に外側から当接する抜け止め片18が固着される一方、ロッド部材17の手前側の端部には、筐体8の底面において手前側に位置する舌片11に外側から当接するナット19を螺合するための雄ネジ部20が刻設されている。
【0038】
次に、筐体8を床面に設置する際の作業について順を追って説明する。まず、ステー部材16が図2(c)に示されるような待機位置、つまり、左右の筐体設置基礎9,9の内側の領域に位置していることを確認し、もし、そのようになっていなければ、ステー部材16を揺動させて、図2(c)の待機位置に退避させる。
【0039】
また、この際に、ステー部材16の後方側のサポート部材21と抜け止め片18との間に筐体8の底面後方側に位置する舌片12が侵入し得る間隙が形成されているか否か、更には、ステー部材16の手前側のサポート部材21とナット19との間に筐体8の底面手前側に位置する舌片11が侵入し得る間隙が形成されているか否かを確認し、もし、十分な間隙がない場合には、サポート部材21に対するロッド部材17の軸方向位置やナット19の螺合状態を調整し、十分な間隙を形成するようにする。但し、この段階でロッド部材17にナット19を螺合しておく必要は必ずしもない。この点については後述する。
【0040】
そして、筐体8をリフトアップし、該筐体8の設置箇所となる床面に固設された左右の筐体設置基礎9,9の上に、図3(b)に示されるようにして、筐体8を載置する。ステー部材16とロッド部材17を退避させた状態で筐体設置基礎9,9上に筐体8を載置することができるので、筐体設置基礎9,9と筐体8底面との間に邪魔になる突起物はなく、筐体8の載置作業を円滑に行うことができる。
【0041】
次いで、ヒンジ15,15を介して揺動自在に軸支されたステー部材16,16を図2(c)に示されるような待機位置から共に外回りに揺動させ、該ステー部材16,16の先端部に装着されているロッド部材17,17を図3(a)および図3(b)に示されるようにして、筐体8の底面の前後位置に配備された舌片11,12の切り込み13,14に係合させる。
なお、図3(b)では待機位置からのステー部材16,16の揺動過程を実線で示し、係合の完了した状態を二点鎖線で示している。
【0042】
そして、更に、ロッド部材17,17の手前側の端部に刻設された雄ネジ部20,20に予め螺合しておいたナット19,19を増締めするか、あるいは、この段階でナット19,19を改めて螺合し、ナット19とロッド部材17の後方側の端部に固着された抜け止め片18とを相対的に接近させ、これらの抜け止め片18およびナット19で筐体8底面の前後位置に配備された舌片11,12を挟み込むようにして、舌片11,12にロッド部材17を固定する。
この際、手前側の舌片11はステー部材16における手前側のサポート部材21とナット19とによって挾持され、また、後方側の舌片12はステー部材16における後方側のサポート部材21と抜け止め片18とによって挾持されることになる。
【0043】
これによりステー部材16,16の揺動は確実に抑制され、ロッド部材17,17が筐体8底面の舌片11,12から離脱することがなくなるので、筐体8は、舌片11,12とロッド部材17およびステー部材16とヒンジ15を介して筐体設置基礎9,9に強固に固定されることになる。
また、ステー部材16の前後に設けられたサポート部材21,21によって舌片11,12が内側から支えられるので、ナット19を強く締め付けても舌片11,12および其の他の部材に不用意な歪が生じる心配はない。
【0044】
以上に述べた通り、筐体8の設置に必要とされる作業は、左右各1のステー部材16,16の揺動操作と左右各1のナット19,19の締結操作のみであり、しかも、ナット19,19の締結操作は筐体8の正面側から行うことができるので、簡便な作業で筐体8を床面に設置することができ、特に、一方向からの設置作業(ナット19,19の締結作業)が可能であるため、狭所や壁際、特に、筐体8の背面が壁に著しく接近しているような状況下においても、筐体8の設置作業を簡単に行うことができる。
【0045】
しかも、ステー部材16,16を内側から外側に揺動させて舌片11,12の切り込み13,14に係合させる構成であるため、筐体8の背面側のみならず、仮に、筐体8の背面および左右両側が壁に阻まれているような状況下であっても、筐体8の設置作業は容易である。
【0046】
また、筐体8を設置する前のステー部材16,16の待機位置は左右の筐体設置基礎9,9の内側の領域となり、ステー部材16,16が筐体8の設置面積の外側に食み出すことはないので、筐体8を設置するまでの間、筐体設置基礎9,9の周囲のスペースを有効に活用することが可能である。
【0047】
しかも、筐体8を設置するために必要とされる舌片11,12は、筐体8底面の左右両側に固着されたペデスタル10,10の屈曲部によって一体に形成されているので、部品点数の削減および筐体8の製造時における加工および組立作業の簡略化が達成され得る。
【0048】
次に、筐体設置基礎に設けた筐体固定用舌片と位置決め部材を利用して筐体を床面に設置するようにした他の実施形態ついて具体的に説明する。
【0049】
図4は筐体設置基礎に筐体固定用舌片と位置決め部材を設けて筐体を床面に設置するようにした第二の実施形態の筐体設置構造22について示した斜視図、図5(a)は同実施形態における筐体23を正面側から見た斜視図、図5(b)は同筐体23を背面側から見た斜視図、また、図5(c)は、床面に筐体23を設置するため利用される筐体設置基礎24の構成について示した斜視図である。
【0050】
筐体23の底面の左右両側には、図4に示されるように、台座となるペデスタル25,25が一体的に固着され、各ペデスタル25の前後には、図5(a)および図5(b)に示されるように、ペデスタル25の端部を略直角に屈曲して形成された舌片26,27が設けられている。
【0051】
各ペデスタル25において、舌片26と舌片27は互いに平行な位置関係にあり、手前側に位置する舌片26の側にはネジ固定用の孔であるタップ穴28が貫通して刻設され、後方側に位置する舌片27には、筐体設置基礎24側の位置決め部材30と凹凸嵌合する係合部として機能する矩形穴31が貫通して穿設されている。
【0052】
一方、筐体設置基礎24,24は、図5(c)に示されるように、筐体23における左右のペデスタル25,25の間隔に合わせ、筐体23の設置箇所となる床面に固設されている。通常、筐体設置基礎24,24はコンクリート製であるが、別の材質であっても構わない。
【0053】
各筐体設置基礎24には、この筐体設置基礎24上に置かれる筐体23の底面に設けられた手前側の舌片26を固定するための筐体固定用舌片32と、筐体23底面の後方側の舌片27に設けられた係合部である矩形穴31を外嵌するかたちで凹凸嵌合し、この舌片27の上下左右方向の移動を阻止する位置決め部材30とが設けられている。
より具体的には、位置決め部材30は、その先端部を手前に向けて略直角に屈曲させたL字型の舌片であり、その基部は筐体設置基礎24に一体的に埋設されている。
また、筐体固定用舌片32の下端部はヒンジ33を介して筐体設置基礎24に揺動自在に枢着されており、更に、筐体設置基礎24には、筐体固定用舌片32を手前に転倒させて待機状態とした際に筐体固定用舌片32を格納するための矩形状の凹部からなる格納部34が形成されている。
そして、筐体固定用舌片32の略中央部には舌片26を固定するためのネジ35を通すためのネジ通し穴36が穿設されている。なお、このネジ通し穴36に代えて、筐体固定用舌片32の上端部から中央部にまで延出するU字状の切り込み36を形成する場合もある。
【0054】
次に、筐体23を床面に設置する際の作業について順を追って説明する。まず、筐体固定用舌片32が図5(c)に示されるような格納位置、つまり、格納部34の内部に収まっていることを確認し、もし、そのようになっていなければ、筐体固定用舌片32を手前に転倒させて格納部34に格納する。
【0055】
そして、筐体23をリフトアップし、該筐体23の設置箇所となる床面に固設された左右の筐体設置基礎24,24の上に載置し、筐体設置基礎24,24の位置決め部材30,30の先端の屈曲部に筐体23底面の後方側に位置する舌片27,27の係合部である矩形穴31,31を外嵌させるかたちで凹凸嵌合させ、舌片27,27の上下左右方向の移動を阻止する。
【0056】
この際、筐体固定用舌片32は手前に転倒して待機位置にあり、特に、本実施形態では、筐体固定用舌片32が格納部34内に納められて筐体設置基礎24の上面側が完全に平坦な状態となっているので、位置決め部材30,30と筐体底面23の後方側の舌片27の矩形穴31との凹凸嵌合のために筐体23を微小移動させる際に、筐体固定用舌片31と筐体23底面の舌片26との干渉を回避して円滑な嵌合操作が可能となる。
【0057】
また、この実施形態では、位置決め部材30の先端部を手前に向けて屈曲させているので、筐体設置基礎24,24上に載置された筐体23を後方に押し込むといった極めて簡単な操作で、位置決め部材30と筐体底面23の後方側の舌片27の矩形穴31との凹凸嵌合を実現することが可能である。
あるいは、舌片27の背面側に突起を設け、位置決め部材30に当該突起を内嵌する孔または凹部を形成することによっても同等の効果が得られる。
【0058】
次いで、ヒンジ33,33を介して揺動自在に軸支された筐体固定用舌片32,32を揺動させて図6(b)のような状態に引き起こし、筐体固定用舌片32,32のネジ通し穴36,36に手前側からネジ35,35を差し込み、ネジ35,35の先端を舌片26,26におけるネジ固定用の孔であるタップ穴28,28に螺合して、筐体固定用舌片32,32に筐体23底面の手前側に位置する舌片26,26を固定する。
【0059】
この結果、筐体23は、図6(a)に示されるように、筐体23の手前側においては舌片26およびネジ35と筐体固定用舌片32を介して筐体設置基礎24に固定され、また、筐体23の後方側においては舌片27および位置決め部材30を介して筐体設置基礎24に固定されることになる。
【0060】
以上に述べた通り、筐体23の設置に必要とされる作業は、左右各1のネジ35,35の締結操作のみであり、しかも、ネジ35,35の締結操作は筐体23の正面側から行うことができるので、簡便な作業で筐体23を床面に設置することができ、特に、一方向からの設置作業(ネジ35,35の締結作業)が可能であるため、狭所や壁際、更には、筐体23の背面が壁に著しく接近しているような状況下においても、筐体23の設置作業を簡単に行うことができる。筐体23の背面および左右両側が壁に阻まれているような状況下であっても、筐体23の設置作業は容易である。
【0061】
しかも、筐体23を設置するために必要とされる舌片26,27は、筐体23底面の左右両側に固着されたペデスタル25,25の屈曲部によって一体に形成されているので、部品点数の削減および筐体23の製造時における加工および組立作業の簡略化が達成され得る。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】ステー部材とロッド部材を利用して床面に設置するようにした筐体設置構造の一例について示した斜視図である(第一の実施形態)。
【図2】図2(a)は同実施形態の筐体を正面側から示した斜視図、図2(b)は同筐体を背面側から示した斜視図、図3(c)は、床面に筐体を設置するため利用される筐体設置基礎の構成について示した斜視図である(第一の実施形態)。
【図3】図3(a)は同実施形態の筐体の設置が完了した状態を示した側断面図、また、図3(b)は同筐体の設置が完了した状態を示した正面図である(第一の実施形態)。
【図4】筐体設置基礎に筐体固定用舌片と位置決め部材を設けて筐体を床面に設置するようにした筐体設置構造の一例について示した斜視図である(第二の実施形態)。
【図5】図5(a)は同実施形態の筐体を正面側から示した斜視図、図5(b)は同筐体を背面側から示した斜視図、図5(c)は、床面に筐体を設置するため利用される筐体設置基礎の構成について示した斜視図である(第二の実施形態)。
【図6】図6(a)は同実施形態の筐体の設置が完了した状態を示した側断面図、また、図6(b)は同筐体の設置が完了した状態を示した正面図である(第二の実施形態)。
【図7】電気部品等を内蔵した筐体を床面に設置した状態で示した斜視図である(従来例)。
【図8】図8(a)は筐体を正面側から示した斜視図、図8(b)は同筐体を背面側から示した斜視図、図8(c)は、床面に筐体を設置するため利用される筐体設置基礎の構成について示した斜視図である(従来例)。
【図9】図9(a)は筐体の設置が完了した状態を示した側断面図、また、図9(b)は筐体の設置が完了した状態を示した正断面図である(従来例)。
【符号の説明】
【0063】
1 筐体
2 筐体設置基礎
3 ペデスタル
4 ボルト通し穴
5 アンカーボルト
6 ナット
7 筐体設置構造
8 筐体
9 筐体設置基礎
10 ペデスタル
11,12 舌片
13,14 切り込み
15 ヒンジ
16 ステー部材
17 ロッド部材
18 抜け止め片
19 ナット
20 雄ネジ部
21 サポート部材
22 筐体設置構造
23 筐体
24 筐体設置基礎
25 ペデスタル
26,27 舌片
28 タップ穴(ネジ固定用の孔)
30 位置決め部材
31 矩形穴(係合部)
32 筐体固定用舌片
33 ヒンジ
34 格納部
35 ネジ
36 ネジ通し穴またはU字状の切り込み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体を床面に設置するための筐体設置構造であって、
筐体底面の左右両側の前後位置の各々に互いに平行な一対の舌片を固着して配備し、前記各舌片に左右の各組毎に共通する左右の同一方向から切り込みを形成する一方、
前記筐体の設置箇所となる床面に固設された左右の筐体設置基礎には、
前記筐体設置基礎によって揺動自在に軸支され、其の先端部を前記左右の各組の舌片の切り込みに沿って移動させ得るステー部材と、
前記ステー部材の先端部において軸方向移動可能に装着され、該ステー部材の揺動によって前記左右の各組の舌片の切り込みに係脱するロッド部材とが設けられ、
前記ロッド部材の後方側の端部には、後方側に位置する前記舌片に外側から当接する抜け止め片が固着される一方、
前記ロッド部材の手前側の端部には、手前側に位置する前記舌片に外側から当接するナットを螺合するための雄ネジ部が刻設されていることを特徴とした筐体設置構造。
【請求項2】
前記各舌片が、筐体底面の左右両側に固着されたペデスタルの屈曲部によって形成されていることを特徴とした請求項1記載の筐体設置構造。
【請求項3】
左右の各組毎の舌片に共通する切り込みが互いに対向して形成されていることを特徴とした請求項1または請求項2記載の筐体設置構造。
【請求項4】
前記ステー部材の前後の端部には、前記筐体底面の舌片の内側に当接するサポート部材が一体に形成され、このサポート部材を貫通して前記ロッド部材が軸方向移動可能に装着されていることを特徴とした請求項1,請求項2または請求項3記載の筐体設置構造。
【請求項5】
筐体を床面に設置するための筐体設置構造であって、
筐体底面の左右両側の前後位置の各々に一対の舌片を固着して配備し、手前側に位置する舌片にはネジ固定用の孔を穿設する一方、後方側に位置する舌片には筐体設置基礎側の位置決め部材と凹凸嵌合する係合部を形成し、
前記筐体の設置箇所となる床面に固設された左右の筐体設置基礎の各々には、
前記手前側に位置する舌片をネジ固定する筐体固定用舌片と、後方側に位置する舌片の係合部を外嵌または内嵌するかたちで凹凸嵌合して該舌片の上下左右方向の移動を阻止する位置決め部材とが設けられていることを特徴とした筐体設置構造。
【請求項6】
前記筐体固定用舌片の下端部が、前記筐体設置基礎に揺動自在に枢着されていることを特徴とした請求項5記載の筐体設置構造。
【請求項7】
前記各舌片が、筐体底面の左右両側に固着されたペデスタルの屈曲部によって形成されていることを特徴とした請求項5または請求項6記載の筐体設置構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−303095(P2006−303095A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−121110(P2005−121110)
【出願日】平成17年4月19日(2005.4.19)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】