説明

筐体間の配線構造、及び携帯機器

【課題】二つの筐体間を接続する配線の引き出しに必要な距離を最小限にして、筐体の長さを短くできるようにする。
【解決手段】第1筐体1と第2筐体2とを結合し、両筐体1・2間を中空部材42でつなげるとともに、両筐体1・2内の基板にそれぞれ接続する配線5を中空部材42内に通す配線構造であって、中空部材42のすくなくとも一方の筐体2内に位置する端部に切欠部42aを形成し、中空部材42内から配線5を切欠部42aで曲げて前記一方の筐体2内に引き出す。具体的には、第1筐体1と第2筐体2とを重ねて折り畳んだ状態から相対的に回転させて開閉可能に連結する第1軸(41)を備え、その第1軸(41)を横切って中空部材42を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二つの筐体間の配線構造と、その筐体間の配線構造を備える携帯機器に関する。
【背景技術】
【0002】
二つの筐体を重ねた折り畳み状態から縦方向に開放した状態で、さらに、横方向に回転する2軸ヒンジを備える携帯端末が特許文献1に開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−303688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1によれば、二つの筐体間の電気的接続をフレキシブル基板で行っているが、同軸ケーブルで接続するものもある。その場合、2軸ヒンジの回転軸内を中空にして同軸ケーブルを通しているが、ケーブル径の影響で、筐体内の液晶表示パネルなどの電子部品の配置に制限が出てしまい、筐体の長さが長くなってしまう問題がある。
【0005】
本発明の課題は、二つの筐体間を接続する配線の引き出しに必要な距離を最小限にして、筐体の長さを短くできるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、第1筐体と第2筐体とを結合し、両筐体間を中空部材でつなげるとともに、両筐体内の基板にそれぞれ接続する配線を前記中空部材内に通す配線構造であって、前記中空部材のすくなくとも一方の筐体内に位置する端部に切欠部を形成し、前記中空部材内から前記配線を前記切欠部で曲げて前記一方の筐体内に引き出すことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の筐体間の配線構造であって、前記第1筐体と第2筐体とを重ねて折り畳んだ状態から相対的に回転させて開閉可能に連結する第1軸を備え、前記第1軸を横切って前記中空部材を設けることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の筐体間の配線構造であって、前記第1筐体と第2筐体とを前記折り畳んだ状態から前記第1軸と交差する軸線を中心に回転可能に連結する第2軸を備え、前記第2軸が前記中空部材により形成されることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の筐体間の配線構造であって、前記第2軸は、前記両筐体の中央部に配置されることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の筐体間の配線構造であって、前記第2軸は、前記両筐体の一側部に配置されることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載の筐体間の配線構造であって、前記配線は同軸ケーブルであることを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載の筐体間の配線構造を備える携帯機器を特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、二つの筐体間を接続する配線の引き出しに必要な距離を最小限にして、筐体の長さを短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明を適用した携帯機器の実施形態1の構成を示すもので、携帯電話の折り畳み状態を示した斜視図である。
【図2】図1の折り畳み状態の携帯電話の縦断側面図である。
【図3】図2のヒンジ部の拡大図である。
【図4】2軸ヒンジの構成を示した斜視図である。
【図5】図4の分解図である。
【図6】2軸ヒンジの構成の変形例を示した斜視図である。
【図7】実施形態2を示すもので、携帯電話の折り畳み状態を示した斜視図である。
【図8】図7の2軸ヒンジの構成を示した斜視図である。
【図9】従来の構造例を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
(実施形態1)
図1及び図2は本発明を適用した携帯機器の実施形態1の構成として携帯電話の折り畳み状態を示したもので、図3は図2のヒンジ部を拡大したものであり、図4は2軸ヒンジの構成を示したもので、図5はその分解したものである。図中、1は第1筐体、2は第2筐体、3はヒンジケース、4は2軸ヒンジ、5は配線である。
【0016】
図示のように、第1筐体1と第2筐体2はヒンジケース3で覆われた2軸ヒンジ4を介して結合されている。第1筐体1には図示しないキー入力部が設けられ、第2筐体2には図示しない表示部が設けられている。例えば図2及び図3に示すように、第2筐体2の内部には、前記表示部に対応する液晶表示パネル21が組み込まれ、この液晶表示パネル21は中ケース(シールドケース)を構成するマグネシウム製等の金属ケース22により覆われている。
【0017】
2軸ヒンジ4は、図4に示すように、第1軸である一対のヒンジ軸41と第2軸である回転軸42とで構成されている。一対のヒンジ軸41は、第1筐体1にネジ止め固定される左右のブラケット43にそれぞれ回転自在に組み付けられている。ヒンジケース3内において、一対のヒンジ軸41を左右端で一体に連結するブラケット44の中央に回転軸42が回転自在に組み付けられている。この回転軸42には、第2筐体2内の金属ケース22にネジ止め固定されるブラケット45が一体に組み付けられている。
【0018】
こうして第1筐体1と第2筐体2は、ヒンジ軸41を中心として縦方向に折り畳み可能(開閉可能)に組み付けられていて、第2筐体2は第1筐体1及びヒンジケース3に対し中央の回転軸42を中心として回転可能に組み付けられている。なお、図示例において、ヒンジ軸41と回転軸42は互いの軸線が直交しているが、軸線は直交に限らず交差していればよく、いわゆる立体交差も含まれる。
【0019】
そして、少なくとも一方のヒンジ軸41と回転軸42は中空部材により形成されていて、その中空部内には、第1筐体1及び第2筐体2内の図示しない基板にそれぞれ接続する配線である同軸細線ケーブル5が通されている。
【0020】
また、回転軸42の外周には、ブラケット44・45の間に二枚のリング46とその間のバネ47を覆うカバー48が設けられていて、ブラケット44に隣接して回転規制カム49が一体に組み付けられている。この回転規制カム49に対し回転軸42の端部がカシメ付けられている。なお、回転規制カム49によって、第1筐体1に対し第2筐体2が中央の回転軸42と一体に180度の範囲で回転が規制される。
【0021】
以上の中空部材による回転軸42において、金属ケース22側の端部で液晶表示パネル21と反対側に切欠部42aを形成するとともに、ブラケット45の中央の図示上部に、回転軸42の切欠部42aを囲む切欠部45aを形成する。そして、回転軸42内に通した同軸細線ケーブル5を、回転軸42端部の切欠部42aからブラケット45の切欠部45aへと外側(図示上側)に曲げて金属ケース22の背面に沿わせ基板(不図示)に接続する。
【0022】
これにより、第1筐体1及び第2筐体2間を接続する同軸細線ケーブル5の近傍の液晶表示パネル21の配置に制限が出ないように、同軸配線ケーブル5の引き出しに必要な距離を最小限にして、第2筐体2の長さを短くすることができる。
【0023】
すなわち、図9は従来の構造例を示したもので、従来は、例えば同軸細線ケーブル5を回転軸42から引き出してから外側(図示上側)に曲げて金属ケース22の背面に沿わせ基板(不図示)に接続する配線構造のため、図示のように、回転軸42と金属ケース22との間に、同軸細線ケーブル5を回転軸42から引き出してから外側に曲げるに必要な距離L0だけ確保する必要があった。
【0024】
これに対し、同軸細線ケーブル5を回転軸42端部の切欠部42aからブラケット45の切欠部45aへと外側に曲げて金属ケース22の背面に沿わせ基板に接続する構造のため、図3に示したように、回転軸42と金属ケース22との間の距離L1を極めて小さくすることができる。従って、第2筐体2の長さを短くすることができる。
【0025】
(変形例)
図6は変形例を示すもので、前記切欠部42aを形成したことによる回転軸42端部の周囲を、図示のように、ブラケット45に溶接wをして補強している。
【0026】
(実施形態2)
図7及び図8は実施形態2を示すもので、前述した実施形態1と同様、1は第1筐体、2は第2筐体、22は金属ケース、3はヒンジケース、4は2軸ヒンジ、41はヒンジ軸(第1軸)、42は回転軸(第2軸)、42aは切欠部、43はブラケット、44はブラケット、45はブラケット、45aは切欠部、5は同軸細線ケーブル(配線)である。
【0027】
実施形態2において、2軸ヒンジ4は、図示のように、第1筐体1及び第2筐体2の右側部において、第1軸であるヒンジ軸41と第2軸である回転軸42とで構成されている。ヒンジ軸41は、第1筐体1にネジ止め固定されるブラケット43に回転自在に組み付けられている。ヒンジケース3内において、ヒンジ軸41の右端を軸受するブラケット44に回転軸42の中央が回転自在に組み付けられている。この回転軸42には、第2筐体2内の金属ケース22にネジ止め固定されるブラケット45が一体に組み付けられている。
【0028】
こうして第1筐体1と第2筐体2は、ヒンジ軸41を中心として縦方向に折り畳み可能(開閉可能)に組み付けられていて、第2筐体2は第1筐体1及びヒンジケース3に対し右側部の回転軸42を中心として回転可能に組み付けられている。
【0029】
そして、ヒンジ軸41と回転軸42は中空部材により形成されていて、その中空部内には、第1筐体1及び第2筐体2内の図示しない基板にそれぞれ接続する同軸細線ケーブル5が通されている。
【0030】
以上の中空部材による回転軸42において、金属ケース22側の端部で前記液晶表示パネル21と反対側に切欠部42aを形成するとともに、ブラケット45の右端にも、回転軸42の切欠部42aを囲む切欠部45aを形成する。そして、回転軸42内に通した同軸細線ケーブル5を、回転軸42端部の切欠部42aからブラケット45の切欠部45aへと外側に曲げて金属ケース22の背面に沿わせ基板(不図示)に接続する。
【0031】
これにより、前述した実施形態1と同様、第1筐体1及び第2筐体2間を接続する同軸細線ケーブル5の近傍の液晶表示パネル21の配置に制限が出ないようにして、第2筐体2の長さを短くすることができる。
【0032】
(他の変形例)
なお、以上の実施形態においては、携帯電話としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、カメラ、PDA、ノートパソコン、ウェアラブルパソコン、電卓、電子辞書など、ヒンジ近傍に基板を配置するタイプの携帯機器の全てに適用できる。
また、折り畳みだけのヒンジを備えたものでも、同軸細線を管(ヒンジではないただの配管)で通したものでもよい。
さらに、第1筐体と第2筐体とを結合し、中空配管に配線を通すようにしたストレートタイプのものでもよい。
また、光ケーブルでもよい。
さらに、他の同軸ケーブルでもよい。
【0033】
また、2軸ヒンジの軸は、実施形態の回転軸に限らず、筐体を回転可能に支持する固定軸であってもよい。
さらに、切欠部の形状等も任意であり、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0034】
1 第1筐体
2 第2筐体
22 金属ケース
3 ヒンジケース
4 2軸ヒンジ
41 第1軸(中空部材)
42 第2軸(中空部材)
42a 切欠部
45 ブラケット
45a 切欠部
5 同軸ケーブル(配線)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1筐体と第2筐体とを結合し、両筐体間を中空部材でつなげるとともに、両筐体内の基板にそれぞれ接続する配線を前記中空部材内に通す配線構造であって、
前記中空部材のすくなくとも一方の筐体内に位置する端部に切欠部を形成し、
前記中空部材内から前記配線を前記切欠部で曲げて前記一方の筐体内に引き出すことを特徴とする筐体間の配線構造。
【請求項2】
前記第1筐体と第2筐体とを重ねて折り畳んだ状態から相対的に回転させて開閉可能に連結する第1軸を備え、
前記第1軸を横切って前記中空部材を設けることを特徴とする請求項1に記載の筐体間の配線構造。
【請求項3】
前記第1筐体と第2筐体とを前記折り畳んだ状態から前記第1軸と交差する軸線を中心に回転可能に連結する第2軸を備え、
前記第2軸が前記中空部材により形成されることを特徴とする請求項2に記載の筐体間の配線構造。
【請求項4】
前記第2軸は、前記両筐体の中央部に配置されることを特徴とする請求項3に記載の筐体間の配線構造。
【請求項5】
前記第2軸は、前記両筐体の一側部に配置されることを特徴とする請求項3に記載の筐体間の配線構造。
【請求項6】
前記配線は同軸ケーブルであることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の筐体間の配線構造。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の筐体間の配線構造を備えることを特徴とする携帯機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−220003(P2010−220003A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65886(P2009−65886)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(504149100)株式会社カシオ日立モバイルコミュニケーションズ (893)
【Fターム(参考)】