説明

筐体

【課題】 電源供給用ケーブルを増やすことなく、内部の電子機器を冷却することができる筐体を提供する。
【解決手段】 内部に電子機器を有する筐体本体と、前記筐体本体の外部に位置し、回転によって前記筐体本体を冷却するためのファンを有する外部接続体と、を有する筐体であって、前記筐体本体は、その壁部内部に複数のコイルを有し、前記外部接続体は、前記ファンの回転軸と接続し、前記複数のコイルと対向する回転子を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に電子機器を収容してなる筐体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機の電波を中継する基地局を形成する筐体は、その内部に通信に必要な電子回路や電源を収容して構成され、屋外に設置される。
【0003】
筐体は、一般的に、下ケース部材と上ケース部材とを互いに接合して構成される。
【0004】
近年、筐体の小型化に伴い、筐体内部にある送受信モジュールや基板等の間隔が狭くなっている。この間隔が十分でないと内部の空気が対流しにくくなり、その結果、動作中に高温となる送受信モジュールや基板上に実装されているデバイス周辺の空気の流れが悪くなり、うまく放熱できない状態になる。
【0005】
この課題を改善するために、通信機器内部に冷却ファンを備え付けて内部に強制対流を起こさせる対策を用いる事があるが、小型化に伴い、放熱に必要な機器筐体の表面積が十分とれないため、通信機器外部へ内部の熱が十分伝わらず、内部温度を適正な温度に下げる事ができない。
【0006】
また、この課題を解決するために、例えば、特許文献1には、内部ファンと外部ファンとを有する熱交換器を筐体に取り付けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−19256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1においては、筐体の電源供給用ケーブルだけでなく、外部ファンにも電源供給用のケーブルが必要であり、多くのケーブルを使用するため、ハーネス処理をする必要があった。また、内部ファンと外部ファンと連結させる手段は、外部ファンが何らかの問題(埃など)で回転が静止してしまうと内部ファンも同時に回転が停止してしまい、内部温度が上昇してしまう問題が発生し、機能停止になる場合があった。
【0009】
そこで、本発明は、電源供給用ケーブルを増やすことなく、内部の電子機器を冷却することができる筐体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明における筐体は、内部に電子機器を有する筐体本体と、前記筐体本体の外部に位置し、回転によって前記筐体本体を冷却するためのファンを有する外部接続体と、を有する筐体であって、前記筐体本体は、その壁部内部に複数のコイルを有し、前記外部接続体は、前記ファンの回転軸と接続するとともに前記複数のコイルと対向する回転子を有する。
【0011】
前記筐体本体の少なくとも一面には、複数の放熱フィンが突設されており、前記外部接続体は、その周囲を前記複数の放熱フィンに囲繞されてもよい。
【0012】
前記電子機器および前記複数のコイルはいずれも、前記筐体本体内の同じ電源から供給されてもよい。
【0013】
前記外部接続体は、前記回転軸と前記回転子を保持する保持体をさらに具備し、前記保持体と前記回転軸との間に防水剤を封止するためのオイルシールをさらに具備してもよい。
【発明の効果】
【0014】
上記の構成により、電源供給用ケーブルを増やすことなく、内部の電子機器を冷却することができる。また、ファンを筐体本体とは独立して設けているため、前述した先行技術文献の課題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】基地局を構成する筐体1の断面図である。
【図2】外部接続体1bの拡大断面図である。
【図3】筐体本体1aに外部接続体1bを接続する際の様子を示す拡大断面図である。
【図4】筐体本体1aの壁部12内のコイル13の透視平面図である。
【図5】図1におけるB枠内の外部接続体1bおよび筐体本体1aをA方向から見たときの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明における筐体1を、携帯電話機の基地局に実施した形態につき、図面に沿って具体的に説明する。
【0017】
本発明の一実施形態である筐体1は、図1に示す如く、筐体本体1aと外部接続体1bとから構成される。
【0018】
筐体本体1aはそれぞれアルミニウム製の下ケース部材2と上ケース部材3とを互いに接合してなり、筐体本体1aの内部には、携帯電話機に用いられる電波の中継や割り当てに必要な電子回路や電源(それぞれ図示省略)が収容されている。
【0019】
下ケース部材2及び上ケース部材3の表面にはそれぞれ、複数の放熱フィン4が突設されている。この放熱フィン4は、筐体本体1a内の電子回路や電源から発生した熱を外部へ放出する役割を果たす。
【0020】
下ケース部材2と上ケース部材3の外周部にはそれぞれ、複数のフランジ5および6が突設され、下ケース部材2のフランジ6と上ケース部材3のフランジ5とを互いにビス(
図示省略)により締結して、下ケース部材2と上ケース部材3とを互いに強固に接合して
いる。
【0021】
下ケース部材2と上ケース部材3との間には、筐体1の内部空間Sを包囲して、ループ状の防水パッキン7が介在しており、前述の如く下ケース部材2のフランジ6と上ケース部材3のフランジ5とを互いにビス(図示省略)により締結することによって、下ケース部材2と上ケース部材3の間に防水パッキン7を挟圧して、筐体本体1の密閉構造を形成し、防水性を確保している。
【0022】
防水パッキン7は、例えばシリコンゴム製のパッキンで形成されている。
【0023】
筐体本体1aの内部には、前述した電源とともに、該電源の通電を制御する制御装置(
不図示)も収容されている。
【0024】
筐体本体1aに接続される外部接続体1bは、図1に示す様に、下ケース部材2に互いに隣接して突設されている複数の放熱フィン4の間に設けられている。外部接続体1bの高さは、筐体本体1a、それを囲む放熱フィン4の高さと同じか、放熱フィンの高さより低いほうが好ましい。このような高さを採用することにより、ファン8からの風が放熱フィン4に十分に当てることができるため、優れた放熱効果を得ることができる。
【0025】
図2に外部接続体1bの拡大断面図を示す。
【0026】
外部接続体1bは、ファン8、回転子9、回転軸10、およびそれらを保持する保持体11から構成される。
【0027】
外部接続体1bは、図3に示すように、筐体本体1aとは別体であり、筐体本体1aに対して接続方向Cに取り付けることができる。この際、筐体本体1aと外部接続体1bとを隙間無く接続させるために、Oリング19を設けてもよい。
【0028】
ここで、ファン8を回転させる原理について以下に説明する。
【0029】
まず、外部接続体1bを、その回転子9が筐体本体1aの壁部12内部に設けられた複数のコイル13と対向するように筐体本体1aに接続する。複数のコイル13は、図4に示すように、1つ1つが中空構造を有しており、コイル13の回りに電線を何重にも巻きつけている。そして、それらのコイル13を円上に並べている。
【0030】
筐体本体1aの内部の電源から複数のコイル13に電気を供給した際、複数のコイル13にはそれぞれ、回転子に向かうように磁束が発生し、それらのコイル13はそれぞれNとSの磁極を有している。そして、前記電源を制御部によりコントロールして、それぞれのコイルの磁束が一定時間毎にNとSに切り替えることにより、金属性の回転子9を回転させることができる。
【0031】
上記のように、複数のコイル13を筐体本体1a側に設けることによって、外部接続体1bに別途電源を設ける必要はない。よって、外部接続体1bのために電源供給用ケーブルを増やすことないため、従来、外部ファンを設けていた場合に、手間であったハーネス処理をしなくてもすむようになる。
【0032】
また、筐体本体1a内の電子機器と複数のコイル13とを、同じ電源から電気を供給してもよく、余分な電源を設置しなくてすむようになる。
【0033】
図5は、図1の矢印Aの方向から、枠B内に囲まれた筐体本体1aおよび外部接続体1bを示した平面図である。
【0034】
図5に示すように、外部接続体1bのファン8は、周囲を放熱フィン4に囲まれていることが好ましい。ファン8を回転させることで、複数の放熱フィン4の間に空気が通して放熱フィン4を十分に冷却することができ、結果として筐体本体1a全体を冷却することになるため、筐体本体1aの内部の電子機器の冷却が可能となる。
【0035】
外部接続体1bとしては、外部から進入する水、ゴミ等を内部に浸入しない様に、封止部14として2つのオイルシールを対向させ、その対向したオイルシールの間に、封止に不可欠な防水剤15としてオイルを封入させる。また、その他に回転に必要なベアリング18、オイル抜けを防止する蓋体16を備えてもよい。
【0036】
一方、筐体本体1aについても、外部から進入する水、ゴミ等が、壁部12の内部のコイル13に浸入しない様に、コイル13を覆うように蓋体17を備えてもよい。蓋体17は、コイル13と回転子9との間の磁束を遮断しないような材料からなることが好ましい。
【0037】
その他、ファン8の周囲に更に防塵・防水を向上させるためにフードや対流方向を決めるガイド等を取り付ける事も可能である。
【0038】
以上、実施形態に基づいて筐体1について説明してきたが、この実施形態の構成には様々な変形を加えることが可能である。
【0039】
例えば、筐体1は基地局用として説明したが、これに限定されない。
【符号の説明】
【0040】
1 筐体
1a 筐体本体
1b 外部接続体
2 下ケース部材
3 上ケース部材
4 放熱フィン
5、6 フランジ
7 防水パッキン
8 ファン
9 回転子
10 回転軸
11 保持体
12 筐体本体1aの壁部
13 コイル
14 封止部
15 防水剤
16 蓋体(外部接続体1b側)
17 蓋体(筐体本体1a側)
18 ベアリング
19 Oリング
S 内部空間
C 接続方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に電子機器を有する筐体本体と、
前記筐体本体の外部に位置し、回転によって前記筐体本体を冷却するためのファンを有する外部接続体と、
を有する筐体であって、
前記筐体本体は、その壁部内部に複数のコイルを有し、
前記外部接続体は、前記ファンの回転軸と接続するとともに前記複数のコイルと対向する回転子を有する筐体。
【請求項2】
前記筐体本体の少なくとも一面には、複数の放熱フィンが突設されており、
前記外部接続体は、その周囲を前記複数の放熱フィンに囲繞されている請求項1記載の筐体。
【請求項3】
前記電子機器および前記複数のコイルはいずれも、前記筐体本体内の同じ電源から供給される請求項1または2記載の筐体。
【請求項4】
前記外部接続体は、前記回転軸と前記回転子を保持する保持体をさらに具備し、
前記保持体と前記回転軸との間に防水剤を封止するための封止部をさらに具備する請求項1乃至3のいずれか記載の筐体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−248603(P2012−248603A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117781(P2011−117781)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】