説明

筐体

【課題】簡便にベースとカバーとの間における接続ケーブルの挟み込みを防止することができる筐体を提供する。
【解決手段】
本発明の筐体には、1対の部材で形成されており、内部に、一方の部材2の内部の部品32と他方の部材1の内部の部品31とを接続する連結部材33が配置される。一方の部材2は、ツメ部と、ツメ部の両側面にそれぞれ設けられた2つのガイドと、を有する嵌合い部4を有する。他方の部材1は、一方の部材2の嵌合い部4に対応する位置に、平行な2つの平板の先端部が支持部を介して互いに接続されており、2つの平板と支持部とで開口部が形成されたツメ受け部を有する嵌合い部3を有する。一方の部材2の嵌合い部4と他方の部材1の嵌合い部4との嵌合い状態で、ツメ部と2つのガイドは開口部からツメ受け部に挿入されており、連結部材33の一部が、2つのガイドによって挟まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報通信機器などに使用される筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータ、携帯電話機、またはモデムなどの情報通信機器は、近年、性能の向上、そして情報処理量の増大化により、内部に配置された電子部品同士を電気的に接続するのに使用される接続ケーブルを内部に多数有する場合がある。情報通信機器は、一般的にベースとカバーとからなる中空の筐体を有する。そのため、多数の接続ケーブルを有する情報通信機器の場合、筐体を構成するベースとカバーとを係止する際に、筐体の内部から接続ケーブルの一部がはみ出した状態で係止してしまう可能性が高くなる。したがって、ベースとカバーとの間に接続ケーブルを挟み込まないように注意しながらベースとカバーとを係止しなければならない。また接続ケーブルのフォーミングにはクランプなどの特殊な部品を用いなければならず、製造工数の増大やコストの増大につながっていた。
【0003】
そこで、ベースとカバーとを係止するときに、筐体内部に位置する接続ケーブルが挟み込まれにくくなっている筐体の構造の一例が、特許文献1に示されている。カバー(上側キャビネット)の互いに対向する側壁間を連結するようにたるみ吸収板が設けられている。このたるみ吸収板とカバーの底部との間には間隔を有している。また、たるみ吸収板は、底部と反対方向に突出、つまり、カバーの開口から突出している。そして、例えば、ベースに設けられたコネクタと、カバーに設けられた基板との間を繋ぐ接続ケーブルは、カバーの底部とたるみ吸収板の間を介して配置される。一般的に、接続ケーブルは、ベースとカバーとが係止していない状態でコネクタと基板とに接続されるため、作業性を考慮して長めになっている。ベースとカバーとを係止すると、たるみ吸収板が、たるみ吸収板と対向し、ベース内に位置する接続ケーブルをベースの底部方向に押し込むため、接続ケーブルのたるみが少なくなる。そのため、ベースとカバーとを係止するときにベースとカバーとの間から接続ケーブルがはみ出しにくくなり、接続ケーブルがベースとカバーとの間に挟み込まれにくくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−209170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1に記載の構成の場合、カバーの底部とたるみ吸収板との間を介して接続ケーブルを配置するため、接続ケーブルの配線作業に時間を要することになる。
【0006】
本発明の目的は、簡便な手段で、内部に接続ケーブルを有する筐体を製造することは困難である、といった課題を解決する筐体とその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は中空の筐体であって、1対の部材で形成されており、内部に空間を有し、空間内に、一方の部材の内部の部品と他方の部材の内部の部品とを接続する連結部材が配置される。一方の部材には、一方の部材の壁部の内側から一方の部材の壁部の先端を越えて突出したツメ部と、ツメ部の両側面にそれぞれ設けられ、一方の部材の壁部の内面に接続され一方の部材の壁部の先端を超えて突出した2つのガイドと、を有する嵌合い部が設けられている。他方の部材には、一方の部材の嵌合い部に対応する位置に、他方の部材の壁部の内面に接続され他方の部材の壁部の先端を越えて突出した平行な2つの平板の先端部が支持部を介して互いに接続されており、2つの平板と支持部とで開口部が形成されたツメ受け部を有する嵌合い部が設けられている。そして、一方の部材の嵌合い部と他方の部材の嵌合い部との嵌合い状態で、ツメ部と2つのガイドは開口部からツメ受け部に挿入されており、連結部材の一部が、2つのガイドによって挟まれる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、特別な作業をすることなく、簡便にベースとカバーとの間における接続ケーブルの挟み込みを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る筐体の一実施形態の概略斜視図である。
【図2】カバーの概略構成図である。
【図3】回路基板同士が接続ケーブルで接続された状態の概略図である。
【図4】カバー嵌合い部をベース嵌合い部に挿入する様子を示す概略図である。
【図5】図1に示す筐体のベース嵌合い部とカバー嵌合い部とが嵌合いした状態の筐体の断面図である。
【図6】図5のAA断面の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、添付の図面に基づき、本発明の実施の形態の詳細について説明する。なお、同一の機能を有する構成には添付図面中、同一の番号を付与し、その説明を省略することがある。
【0011】
図1は、本発明に係る筐体の一実施形態の概略構成図であり、図2は、カバーの嵌合い部の構成を説明するための概略図である。なお、図1および図2では、筐体の内部の構成については図示していない。
【0012】
ここで説明する筐体の用途は、パーソナルコンピュータ、携帯電話機、モデムなどの情報通信機器などに限定されず、筐体の製造時に、接続ケーブルの挟み込みが生じる可能性のあるものであるならば何れであっても構わない。また、接続ケーブルは、電子部品を電気的に接続するものに限定されない。
【0013】
内部空間を有する中空の筐体20が、互いに固定される1対の部材、すなわち一方の部材であるカバー2と他方の部材であるベース1とで構成されている。ベース1の外壁(壁部)10には、1つ以上のベース嵌合い部3が設けられており、カバー2の外壁(壁部)5の、ベース嵌合い部3に対応する位置には、カバー嵌合い部4が設けられている。
【0014】
ベース嵌合い部3について詳細に説明する。ベース嵌合い部3は、ベース1の外壁10の内側から外壁10の先端11よりも突出したツメ受け部12を有している。ツメ受け部12は、外壁10に側面が接続され、外壁10の先端11よりも突出した平行な2つの平板14、15と、この2つの平板14、15の先端部を接続する支持部13とで構成されている。このような構成にすることで、ツメ受け部12には、外壁10の先端11と支持部13と平板14、15とで囲まれた開口部17が形成される。この開口部17には、後述するカバー嵌合い部4のツメ部7とガイド25、26が挿入可能である。
【0015】
次にカバー嵌合い部4について詳細に説明する。カバー嵌合い部4は、カバー2の外壁5の先端付近の内側から外壁5の先端6よりも突出したツメ部7を有している。ツメ部7の側面には、外壁5に側面が接続され、外壁5の先端6よりも突出した2つのガイド25、26がそれぞれ設けられている。このガイド25、26は、筐体20の内部に位置する接続ケーブル33(図3参照)がカバー嵌合い部4の幅方向に移動しないようにするためのものである。
【0016】
次に、ベース1とカバー2のそれぞれに、接続ケーブル33に接続するコネクタ34、35が実装された回路基板31、32が設けられており、それらの回路基板31、32同士が接続ケーブル33で電気的に接続されている、筐体20の製造方法を図3〜図5を用いて説明する。図3は、回路基板31、32同士が連結部材である接続ケーブル33で接続された状態の概略図であり、図4は、カバー嵌合い部4をベース嵌合い部3に挿入する様子を示す概略図であり、図5は、カバー嵌合い部4とベース嵌合い部3とが嵌合いしている様子を示す概略図である。
【0017】
ベース1とカバー2の内部には、部品、例えば電子部品である回路基板31、32がネジなどでそれぞれ固定される。なお、回路基板31、32のコネクタ34、35は、ベース嵌合い部3およびカバー嵌合い部4に対して、ベース1の、ベース嵌合い部3が設けられた外壁10の幅方向、およびカバー2の、カバー嵌合い部4が設けられた外壁5の幅方向で同じ位置に配置することが好ましい。回路基板31、32のコネクタ34、35をこのように配置することで、回路基板31、32のコネクタ34、35同士を、接続ケーブル33で接続すると、接続ケーブル33は、ベース嵌合い部3とカバー嵌合い部4とに対向し、かつ平行に位置する。
【0018】
なお、接続ケーブル33は、ベース1とカバー2とが係止されていない状態で接続するため、ベース1の外壁10とカバー2の外壁5の高さの合計よりも長くなっている。
【0019】
次に、図4に示すように、カバー嵌合い部4を、ベース嵌合い部3に近づけていく。このとき、ベース嵌合い部3の外面方向にカバー嵌合い部4が位置する。接続ケーブル33は、カバー嵌合い部4とベース嵌合い部3とに覆われるように位置するため、接続ケーブル33が、ベース1とカバー2の隙間から外部に露出しない。
【0020】
図4、図5に示すように、ベース嵌合い部3の開口部17からカバー嵌合い部4のツメ部7とガイド25、26(図2参照)を挿入することで、ベース嵌合い部3とカバー嵌合い部4とが嵌合いをし、筐体20が完成する。本発明では、接続ケーブル33の、ベース嵌合い部3やカバー嵌合い部4と対向する面が、常にベース嵌合い部3あるいはカバー嵌合い部4によって覆われたり、筐体20の内部方向に押し込まれたりするため、接続ケーブル33がベース1とカバー2とに挟まれることが防止される。また、ベース嵌合い部3とカバー嵌合い部4とを嵌合いしようとすると、特別な作業をしなくても、ベース1とカバー2との間に接続ケーブル33が挟み込まれることが防止される。
【0021】
図6に、図5のAA断面の概略図を示す。上述したようにカバー嵌合い部4にはガイド25、26が設けられている(図2参照)。カバー嵌合い部4とベース嵌合い部3とを嵌合いさせると、このガイド25、26同士の間に接続ケーブル33が位置するようになるため、接続ケーブル33の、カバー嵌合い部4の幅方向への変形を防止し、接続ケーブル33のフォーミングを行うことができる。
【0022】
以上のように、本発明の筐体20は、特別な作業を行うことなく、製造の際に接続ケーブル33の挟み込みを防止することができる。また、フォーミング用の部品を用いなくても接続ケーブル33のフォーミングを行うことができる。
【0023】
なお、ベース1やカバー2の一例として、ABS(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン共重合合成)樹脂やPC(ポリカーボネート)に代表されるプラスチック樹脂の成形品が挙げされる。
【符号の説明】
【0024】
1 ベース
2 カバー
3 ベース嵌合い部
4 カバー嵌合い部
5 カバーの外壁(壁部)
7 ツメ部
10ベースの外壁(壁部)
12ツメ受け部
13支持部
14、15平板
17開口部
20筐体
25、26ガイド
31、32回路基板
33接続ケーブル
34、35コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対の部材で形成されており、内部に空間を有し、前記空間内に、一方の部材の内部の部品と他方の部材の内部の部品とを接続する連結部材が配置される中空の筐体であって、
前記一方の部材には、前記一方の部材の壁部の内側から前記一方の部材の壁部の先端を越えて突出したツメ部と、前記ツメ部の両側面にそれぞれ設けられ、前記一方の部材の壁部の内面に接続され前記一方の部材の壁部の先端を超えて突出した2つのガイドと、を有する嵌合い部が設けられており、
前記他方の部材には、前記一方の部材の前記嵌合い部に対応する位置に、前記他方の部材の壁部の内面に接続され前記他方の部材の壁部の先端を越えて突出した平行な2つの平板の先端部が支持部を介して互いに接続されており、前記2つの平板と前記支持部とで開口部が形成されたツメ受け部を有する嵌合い部が設けられており、
前記一方の部材の前記嵌合い部と前記他方の部材の前記嵌合い部との嵌合い状態で、前記ツメ部と2つの前記ガイドは前記開口部から前記ツメ受け部に挿入されており、前記連結部材の一部が、2つの前記ガイドによって挟まれる、筐体。
【請求項2】
前記連結部材が、前記一方の部材の嵌合い部と前記他方の部材の嵌合い部に対して対向しかつ平行に配置され、かつ、前記一方の部材の前記ガイド同士の間に配置されている、請求項1に記載の筐体。
【請求項3】
前記連結部材は、電気的に接続可能な接続ケーブルであり、前記部品は電子部品である、請求項1または2に記載の筐体。
【請求項4】
請求項3に記載の筐体を有する、情報通信機器。
【請求項5】
1対の部材で形成され、一方の部材の内部の部品と他方の部材の内部の部品とが連結部材で連結されている筐体の製造方法であって、
前記一方の部材に嵌合い部を形成し、前記他方の部材の、前記一方の部材の前記嵌合い部に対応する位置に、嵌合い部を形成し、
前記一方の部材の内部に設けられた部品と前記他方の部材の内部に設けられた部品とを前記連結部材で連結し、
前記連結部材を、前記一方の部材の前記嵌合い部と前記他方の部材の前記嵌合い部と対向し、かつ平行になるように配置し、
前記一方の部材で前記連結部材の一部を挟みながら、前記一方の部材の前記嵌合い部と前記他方の部材の前記嵌合い部とを嵌合いする、筐体の製造方法。
【請求項6】
前記一方の部材の前記嵌合い部として、前記一方の部材の壁部の内側から前記一方の部材の壁部の先端を越えて突出させたツメ部と、前記ツメ部の両側面に設けられ、前記一方の部材の壁部の内面に接続され前記一方の部材の壁部の先端を超えて突出させた2つのガイドと、を形成し、
前記他方の部材の前記嵌合い部として、前記他方の部材の壁部の内面に接続され前記他方の壁部の先端を越えて突出させた平行な2つの平板と、2つの前記平板の先端部同士を接続する支持部とで形成され、かつ前記2つの平板と前記支持部とで開口部が形成されたたツメ受け部を形成し、
前記嵌合いをする工程では、前記ツメ部と2つの前記ガイドを前記開口部から前記ツメ受け部に挿入し、2つの前記ガイドで前記連結部材を固定する、請求項5に記載の筐体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−26282(P2013−26282A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156901(P2011−156901)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000227205)NECインフロンティア株式会社 (1,047)
【Fターム(参考)】