説明

筐体

【課題】小型化が可能で、部品の搭載、及び部品間の電気的な接続を容易に行うことができる筐体を提供する。
【解決手段】筐体1は、電子部品が搭載される搭載領域27の周囲の高さが搭載領域27の高さ以下であり、配置されたリードフレーム4a及びリードフレーム4bの表面が露出する基部2a、及びリードフレーム4a及びリードフレーム4bの表面の一部が覆われる被覆部2b、を有する第1の筐体2と、第1の筐体2の形状に応じて形成され、第1の筐体2と溶着される溶着部36を有する第2の筐体3と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、上面が開口形成されて電気回路を収容する電気機器の樹脂筐体が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この電気機器の樹脂筐体は、樹脂筐体と一体にされたコネクタターミナルが、電気回路と電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−238751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の電気機器の樹脂筐体は、コネクタターミナルと電気回路の電気的な接続を行う場合、サイズが小さくなればなるほど、部品の配置、及びはんだ付け等による部品間の接続が、開口の壁が邪魔となって困難になるという問題があった。
【0006】
従って、本発明の目的は、小型化が可能で、部品の搭載、及び部品間の電気的な接続を容易に行うことができる筐体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、電子部品が搭載される搭載領域の周囲の高さが搭載領域の高さ以下であり、配置された少なくとも1つの導体の表面が露出する基部、及び少なくとも1つの導体の表面の一部が覆われる被覆部、を有する第1の筐体と、第1の筐体の形状に応じて形成され、第1の筐体と溶着される溶着部を有する第2の筐体と、を備えた筐体を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、小型化が可能で、部品の搭載、及び部品間の電気的な接続を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、実施の形態に係る筐体の斜視図である。
【図2】図2(a)は、実施の形態に係る筐体の前面図、(b)は、右側面図、(c)は、左側面図、(d)は、底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施の形態の要約)
実施の形態に係る筐体は、電子部品が搭載される搭載領域の周囲の高さが搭載領域の高さ以下であり、配置された少なくとも1つの導体の表面が露出する基部、及び少なくとも1つの導体の表面の一部が覆われる被覆部、を有する第1の筐体と、第1の筐体の形状に応じて形成され、第1の筐体と溶着される溶着部を有する第2の筐体と、を備える。
【0011】
[実施の形態]
(筐体1の構成)
図1は、実施の形態に係る筐体の斜視図である。図2(a)は、実施の形態に係る筐体の前面図、(b)は、右側面図、(c)は、左側面図、(d)は、底面図である。以下に記載する前後左右は、図1に示す第1の筐体2の前面20、後面21、右側面22及び左側面23を基準としている。なお、実施の形態に係る各図において、部品と部品との比率は、実際の比率とは異なる場合がある。
【0012】
本実施の形態に係る筐体1は、一例として、後述するセンサを搭載し、このセンサにより、車両に搭載されるシートベルトの装着を検出するものである。
【0013】
筐体1は、例えば、図1に示すように、電子部品が搭載される搭載領域27の周囲の高さが搭載領域27の高さ以下であり、配置された少なくとも1つの導体としてのリードフレーム4a及びリードフレーム4bの表面が露出する基部2a、及びリードフレーム4a及びリードフレーム4bの表面の一部が覆われる被覆部2b、を有する第1の筐体2と、第1の筐体2の形状に応じて形成され、第1の筐体2と溶着される溶着部36を有する第2の筐体3と、を備える。
【0014】
なお、リードフレーム4a及びリードフレーム4bは、第1の筐体2と一体に成形されても良いし、第1の筐体2が形成された後に、取り付けられても良い。第1の筐体2が形成された後に取り付けられる場合、一例として、リードフレーム4a及びリードフレーム4bに応じた溝を基部2aに形成すると共に開口を被覆部2bに形成し、被覆部2bの後面21側から挿入することにより、リードフレーム4a及びリードフレーム4bを第1の筐体2に取り付ける。本実施の形態では、リードフレーム4a及びリードフレーム4bは、第1の筐体2と一体に成形されているものとする。
【0015】
第1の筐体2及び第2の筐体3は、例えば、レーザ溶着法を用いて溶着される。このレーザ溶着法とは、例えば、熱可塑性樹脂からなる透過側と吸収側の樹脂を合わせた界面に透過側からレーザを照射し、吸収側の樹脂がレーザを吸収することで高温となり、両者が溶融して溶融池(溶融プール)を形成し、両者を溶着させる方法である。
【0016】
この透過側の樹脂は、例えば、レーザをほとんど吸収せずに透過させる樹脂を用いることが好ましい。また、吸収側の樹脂は、例えば、レーザを吸収して効率よく熱に変換する樹脂を用いることが好ましい。
【0017】
従って、透過側となる第2の筐体3は、例えば、ポリスチレン(PS)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等の非晶性樹脂、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等の結晶性樹脂が用いられる。また、色材は、例えば、レーザを透過させる染料が用いられる。
【0018】
吸収側となる第1の筐体2は、例えば、上記の非晶性樹脂及び結晶性樹脂が用いられる。また、色材は、顔料及び染料の組み合わせが好ましい。これは、顔料は、レーザを吸収及び散乱させるので、吸収しすぎて局所的に異常な発熱が起こる可能性があり、染料は、レーザの吸収が弱く十分に発熱しない可能性があるからである。従って、両者を組み合わせることにより、発熱量が制御され、第1の筐体2と第2の筐体3を効率よく溶着することが可能となる。
【0019】
・第1の筐体2の構成
第1の筐体2は、例えば、図1に点線で示すように、基部2aの表面25aの点線から縁までの領域、斜面25bの点線から縁までの領域、及び上面25cの領域を有する溶着領域26が形成される。つまり、溶着領域26は、第2の筐体3の溶着部36が接触する領域である。第1の筐体2及び第2の筐体3は、主に、この溶着領域26において互いに溶着する。
【0020】
また、第1の筐体2の基部2aの表面25aは、例えば、平坦となっている。つまり、表面25aは、例えば、リードフレーム4a及びリードフレーム4bの表面と段差がほとんどない状態とされる。
【0021】
搭載領域27は、例えば、この表面25aの前面20側に設けられる。図1において、搭載領域27は、点線で囲まれた領域である。
【0022】
また、搭載領域27の周囲は、例えば、搭載領域27以下の高さとなるように基部2aは構成されている。つまり、搭載領域27の周囲が搭載領域27の高さよりも高い場合、搭載領域27に電子部品を配置するための治具が、周囲に干渉する可能性があるからである。従って、治具を干渉させないためには、搭載領域27を大きくする、つまり、基部2aを大きくすることが必要となり、筐体1が大きくなって小型化が困難となる。
【0023】
この搭載領域27には、例えば、図1に示すように、電子部品としてのMR(Magneto Resistive)センサ5及び制御IC(integrated circuit)5が配置されている。MRセンサ5は、例えば、磁気抵抗を利用して磁場の変化に応じたアナログ信号を出力する磁気センサである。制御IC6は、例えば、MRセンサ5から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換してリードフレーム4a及びリードフレーム4bを介して出力するように構成されている。なお、電子部品は、ベアチップであっても良い。
【0024】
このMRセンサ5は、例えば、4つのパッド50〜パッド53を備えている。また、制御IC6は、例えば、6つのパッド60〜パッド65を備えている。
【0025】
MRセンサ5のパッド50は、ワイヤ7cを介して制御IC6のパッド60と電気的に接続している。MRセンサ5のパッド51は、ワイヤ7dを介して制御IC6のパッド61と電気的に接続している。MRセンサ5のパッド52は、ワイヤ7eを介して制御IC6のパッド62と電気的に接続している。MRセンサ5のパッド53は、ワイヤ7fを介して制御IC6のパッド63と電気的に接続している。
【0026】
また、制御IC6のパッド64は、ワイヤ7aを介してリードフレーム4aと電気的に接続されている。制御IC6のパッド65は、ワイヤ7bを介してリードフレーム4bと電気的に接続されている。
【0027】
このワイヤ7a〜ワイヤ7fは、例えば、金、銅等の導電性を有する金属材料を用いて形成される。
【0028】
リードフレーム4a及びリードフレーム4bは、例えば、細長い板形状に形成されている。また、リードフレーム4a及びリードフレーム4bは、例えば、アルミニウム、銅等の導電性を有する金属材料、又は、真鍮等の合金材料を用いて形成される。なお、リードフレーム4a及びリードフレーム4bは、例えば、その表面に、錫、ニッケル、金、銀等の金属材料を用いたメッキ処理が施されていても良い。
【0029】
リードフレーム4aは、例えば、被覆部2b側において、電線8aと電気的に接続されている。また、リードフレーム4bは、例えば、被覆部2b側において、電線8bと電気的に接続されている。
【0030】
このリードフレーム4a及びリードフレーム4bの表面の一部は、例えば、被覆部2bにより覆われている。これは、第1の筐体2及び第2の筐体3を溶着する際、リードフレームが露出していると、溶着できない箇所ができるためである。つまり、樹脂とリードフレームは、溶着させることができないため、溶着する箇所に対応するリードフレーム上に樹脂を形成する必要がある。従って、リードフレーム4a及びリードフレーム4bは、第2の筐体3と溶着される部分にかかる表面が樹脂により覆われている。
【0031】
第1の筐体2は、例えば、図1に示すように、基部2aと被覆部2bとの境界に斜面25bが形成されている。この斜面25bは、基部2aの表面25aと、被覆部2bの上面25cと、を接続するものである。斜面25bは、例えば、図1に示す右側面22側から見て右肩上がりとなる一定の傾斜となっている。
【0032】
被覆部2bは、例えば、図1に示すように、基部2aよりも厚みが厚くなり、リードフレーム4a及びリードフレーム4bの端部を覆うように形成されている。
【0033】
ここで、斜面25bが形成されていない場合、例えば、基部2aと被覆部2bの境界面は、基部2aの表面25aと被覆部2bの上面25cとに垂直となる。従って、第1の筐体2と第2の筐体3を重ね合わせてレーザ溶着を行う場合、境界面にレーザを照射するため、筐体1又はレーザ装置を傾けなければならない。しかし、斜面25bが形成されているので、筐体1又はレーザ装置を傾けることなく、レーザ溶着が可能となる。
【0034】
・第2の筐体3の構成
第2の筐体3は、例えば、図2(a)〜(d)に示すように、四角柱形状を有する本体3aの周囲に溶着部36が形成されている。
【0035】
この溶着部36は、例えば、本体3aの右側面32、前面30及び左側面33に渡って各側面から法線方向に突出する部分と、第1の筐体2の上面25cと接触する本体3aの表面35の後面31側の部分と、から構成されている。
【0036】
また、溶着部36は、例えば、図2(d)に示すように、表面35の反対側の面である裏面37に開口38が形成されている。この開口38は、第1の筐体2の搭載領域27に対応して形成されている。つまり、開口38は、第1の筐体2と第2の筐体3とを重ね合わせた際、MRセンサ5、制御IC6及びワイヤ7a〜ワイヤ7fが、開口38に収まり、裏面37に接触しない形状となるように形成されている。
【0037】
・レーザ溶着について
まず、第1の筐体2と第2の筐体3を重ね合わせる。この重ね合わせにより、第1の筐体2の右側面22側の溶着領域26は、第2の筐体3の右側面32側の溶着部36の底面34aと接触し、前面20側は、第2の筐体3の前面30側の底面34aと接触し、左側面23側は、第2の筐体3の左側面33側の底面34aと接触する。
【0038】
また、第1の筐体2の右側面22の斜面25b側の溶着領域26は、第2の筐体3の右側面32側の溶着部36の斜面34bと接触し、左側面23の斜面25b側は、左側面33側の斜面34dと接触する。
【0039】
さらに、第1の筐体2の被覆部2bの上面25cは、第2の筐体3の後面31側の底面34cと接触する。
【0040】
次に、第2の筐体3の溶着部36に沿ってレーザを照射する。このレーザは、第2の筐体3を透過して第1の筐体2及び第2の筐体3の界面において第1の筐体2の温度を上昇させて第1の筐体2と第2の筐体3が溶融する溶融池を形成して両者を溶着させ、レーザの照射が終了した後、第1の筐体2と第2の筐体3が一体となった筐体1が形成される。
【0041】
(実施の形態の効果)
本実施の形態に係る筐体1は、搭載領域27の周囲の高さが搭載領域27の高さ以下であるので、周囲の高さが搭載領域27の高さより高い場合と比べて、小型化が可能で、さらに、部品の搭載、及び部品間の電気的な接続を容易に行うことができる。つまり、第1の筐体2の搭載領域27に部品を配置する際、部品を把持する治具に干渉するものがないので、部品の搭載、及び部品間の電気的な接続等が容易となる。また、第1の筐体2は、搭載領域27を大きくすることなく、部品の搭載等ができるので、筐体1を小型化することができる。
【0042】
また、第1の筐体2の基部2aは、搭載領域27の周囲の高さが搭載領域27の高さ以下であるので、搭載領域27にベアチップを搭載し、リードフレーム4a及びリードフレーム4bとワイヤボンディングにより電気的に接続することが可能となり、筐体1の薄型化や小型化が容易となる。
【0043】
第1の筐体2及び第2の筐体3は、斜面25b及び斜面34bが形成されているので、レーザを照射する際、筐体1及びレーザ装置を傾ける必要がなく、製造工程が簡単となり、製造コストを抑制することができる。
【0044】
第1の筐体2は、被覆部2bにより、リードフレーム4a及びリードフレーム4bを支持しているので、基部のみでリードフレームが支持されている場合と比べて、電線8a及び電線8bにかかる引っ張り荷重に対して耐性を有する。
【0045】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、この実施の形態は、一例に過ぎず、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。この新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更等を行うことができる。また、この実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない。さらに、この実施の形態は、発明の範囲及び要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
1…筐体、2…第1の筐体、2a…基部、2b…被覆部、3…第2の筐体、3a…本体、4a、4b…リードフレーム、5…MRセンサ、6…制御IC、7a〜7f…ワイヤ、8a、8b…電線、20…前面、21…後面、22…右側面、23…左側面、25a…表面、25b…斜面、25c…上面、26…溶着領域、27…搭載領域、30…前面、31…後面、32…右側面、33…左側面、34a…底面、34b…斜面、34c…底面、34d…斜面、35…表面、36…溶着部、37…裏面、38…開口、50〜53…パッド、60〜65…パッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が搭載される搭載領域の周囲の高さが前記搭載領域の高さ以下であり、配置された少なくとも1つの導体の表面が露出する基部、及び前記少なくとも1つの導体の表面の一部が覆われる被覆部、を有する第1の筐体と、
前記第1の筐体の形状に応じて形成され、前記第1の筐体と溶着される溶着部を有する第2の筐体と、
を備えた筐体。
【請求項2】
前記基部及び前記被覆部の境界には、斜面が形成される請求項1に記載の筐体。
【請求項3】
前記電子部品は、前記少なくとも1つの導体とワイヤにより電気的に接続される請求項1又は請求項2に記載の筐体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−45883(P2013−45883A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182503(P2011−182503)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】