説明

筒体の連結装置

【課題】筒体の連結装置を簡単な構造で、高い係合力を得られるようにする。
【解決手段】上杭a1に取り付けるソケット部材10にキー孔14を設ける。一方、下杭a2に取り付けるプラグ部材11にキー孔14を設ける。そして、上杭a1と下杭a2を連結する際に、上杭a1のソケット部材10に下杭a2のプラグ部材11を嵌入し、キー孔14を合わせてキー15を挿入する。このようにキー15を用いて連結しているので、杭a1とa2を逆回転させても連結が緩んでしまうことがなく、簡単な構造で高い係合力が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、筒体(例えば、鋼管杭、コンクリートパイル、ヒューム管、ポールなど)の連結装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
筒体、例えば鋼管杭、コンクリートパイルなどの沈設の際の連結方法として、溶接による方法が一般に行われていた。
【0003】
この方法では、沈設過程の下杭に対して上杭をクレーンで吊り下げて突き合わせたのち現場で溶接により縦継ぎする。そのため、溶接に多くの時間を要するとともに、熟練した溶接工が必要になるという問題があった。また、溶接部の品質が天候に左右されるという問題もあった。
【0004】
この問題を解決する一つの方法として、ネジ式の継ぎ手により連結する方法が提案されている。この方法では、上杭と下杭をネジ式継ぎ手の螺合により連結するので、現場での溶接を必要としない。そのため、天候にも左右されにくいという特長がある。
【0005】
しかし、ネジ式の継ぎ手は、コスト高で杭を継ぐ際には、下杭に上杭を釣り下ろしながら、螺合のために回転させなければならず、この作業が困難である。しかも、鋼管杭を回転圧入により沈設する場合は杭を逆回転させることがあり、そのような場合にはネジが緩んでしまう問題があった。
【0006】
そのため、このような施工時の回転にも対応できるものとして、例えば、特許文献1には、図6に示すような連結構造が記載されている。
【0007】
この連結構造は、杭(上杭と下杭)aの端部に、図6のような互いに凹凸の補完形状をもった係合部材1、1’を使用するもので、前記係合部材1、1’を予め工場などで上杭と下杭の端部に溶接により取付けておき、現場でそれらを組み合わせる。さらに、その組み合わせた接合部分に円弧状の帯部材2を取り付けて、ボルト3で固定するというものである。
【特許文献1】特開2004−52333号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記(特許文献1)のものでは、凹凸の補完形状を持った係合部を組み合わせて、杭に掛かる力を受けるようにしている。そのため、係合部は複雑な形状となっており、コスト高になるという問題がある。しかも、補完形状が複雑であるため十分な接合強度を得るには高い加工精度を必要とし、これが高コストの一面でもあった。
【0009】
そこで、この発明の課題は、簡単な構造(精度を必要としない)で、高い係合力を得られるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、この発明では、連結する一方の筒体の端部に取り付けるソケット部材と他方の筒体の端部に取り付けるプラグ部材とからなり、
前記ソケット部材は、一方に筒体への取付け部を有し、他方にプラグ部材を嵌入する筒状の嵌合部を有して、その嵌合部にはキー孔が設けられており、
前記プラグ部材は、一方に筒体への取付け部を有し、他方にソケット部材の嵌合部へ嵌入する筒状の接続部を有して、その筒状の接続部にキー孔が設けられており、
上記ソケット部材の嵌合部にプラグ部材の接続部を嵌入し、両部材のキー孔を合わせて、その合わせたキー孔へキーを挿入して連結する構成を採用したのである。
【0011】
このような構成を採用することにより、上筒体にソケット部材を取付け、下筒体にプラグ部材を取り付けて(逆でも可)、下筒体のプラグ部材に上筒体のソケット部材を嵌め、プラグ部材とソケット部材のキー孔を合わせてキーを挿入するだけで、簡単に上筒体と下筒体を連結することができる。このとき、両者はキーによって連結しているので、筒体は回転力、引っ張り力、圧縮力にも十分な抗力を有する。
【0012】
このとき、上記プラグ部材の取付け部と接続部の間に、接続部より大径で、ソケット部材の嵌合部の先端が当接するストッパーを設けた構成を採用することができる。
【0013】
このような構成を採用することにより、ソケット部材の嵌合部にプラグ部材を嵌入すると、ソケット部材の嵌合部の先端がプラグ部材のストッパーに当接して、プラグ部材を(プラグ部材を取り付けた筒体も)支持するので、ソケット部材とプラグ部材のキー孔の位置(軸方向の)が合うようにすれば、両部材のいずれかを少し回転させるだけで、キー孔を合わせられ、現場での施工が簡単にできる。
【0014】
また、このとき、上記キーに、軸方向にボルトあるいはピンを挿通する貫通孔を有し、一方、上記プラグ部材の接続部のキー孔を設けた内側に係止部材を設けて、その係止部材に、ソケット部材にプラグ部材を嵌入してキー孔を合わせて挿入したキーの前記貫通孔へ挿通したボルトあるいはピンを螺合させて係止する構成を採用することができる。
【0015】
このような構成を採用することにより、キー孔に挿入したキーの抜け落ちを防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明は、上記のように構成したことにより、簡単な構造で筒体を連結できる。また、簡単な構造とした為に、連結装置の製作においても、また、連結作業上においてもローコスト化を図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
この形態の連結装置は、図1乃至図3に示すように、ソケット部材10とプラグ部材11とからなっている。
【0018】
ソケット部材10は、一方に杭への取付け部12を有し、他方にプラグ部材11との嵌合部13を有している、また、その嵌合部13には、キー孔14が設けられており、そのキー孔14へキー15を嵌める構成となっている。
【0019】
前記取付け部12は、ここでは段差を設けて上杭a1の内側へ嵌るようにした筒状のもので、図3に示すように、上杭a1に溶接で取り付けるようになっている。
【0020】
前記嵌合部13は、プラグ部材11が嵌る大きさの筒状のもので、その筒状の周方向に沿って複数個のキー孔14が設けてある。
【0021】
キー孔14は、嵌合部13を貫通するもので、ここでは、キー孔14の形状は楕円形としている。なお、キー孔14の形状は、楕円に限定されるものではなく、キー孔14の形状は、例えば、丸円、四角、三角形など所定の強度が得られるのであればどのような形状のものでも構わない。
【0022】
プラグ部材11は、下杭a2への取付け部18を一方に有し、他方にソケット部材10への接続部19を有するもので、ソケット部材10のキー孔14とプラグ部材11のキー孔12は、接触面(ストッパー)20で軸方向の孔位置が限定される。
【0023】
前記プラグ部材11の取付け部18は、ソケット部材10と同様に段差を設けて下杭a2の内側へ嵌るようにした筒状のもので、図3に示すように、溶接で下杭a2に取り付ける。
【0024】
同部材11の接続部19は、筒状でソケット部材の嵌合部よりも小径に形成して、前記嵌合部3に嵌るようにしたもので、その筒状の接続部19の周方向に沿って複数個(ソケット部材と同数)のキー孔14が設けてある。
【0025】
また、このキー孔14は、プラグ部材11の接続部19を貫通するもので、ここではキー孔14の形状をソケット部材10と同じ楕円形としているが、丸円、四角、三角形など、所定の強度が得られるのであればどのような形状のものでも構わない。
【0026】
前記面(ストッパー)20は、接続部19より大径にして、プラグ部材11の接続部19をソケット部材10の嵌合部13へ嵌めた際に嵌合部13の先端が当接するようにしたもので、前記嵌合部13の先端を当接させることにより、両部材(ソケット部材10とプラグ部材11)の嵌合13と接続部19に設けたキー孔14が軸方向に対して同じ位置になるようにしてある。
【0027】
キー15は、図2に示すように、キー孔14に嵌合する断面が楕円形の筒体で、軸方向に貫通孔21を形成し、その貫通孔21にボルト22(ここでは、ボルト22を用いたが、これに限定されるものではなく、ボルト22に代えてピンのようなものでも可)を挿通するようにしてある。そして、図2及び図3に示すように、挿通したボルト22に螺合する係止部材23をプラグ部材11の嵌合部13の内側に配置する構成としている。
【0028】
すなわち、前記係止部材23は、この形態では、リング状をしたものでプラグ部材(ソケット部材)11の嵌合部13に設けたキー孔14と対応する位置にネジ孔24を設けたものである。ここでは、溶接でプラグ部材11の嵌合部13の内側に止めている。なお、ここでは係止部材23としてリング状をしたものを使用したがこれに限定されるものではなく、リングを分割した扇形のものや、ナット等を使用することもできる。
【0029】
この形態は、上記のように構成されており、下杭a2の後端にプラグ部材11を取り付け、その下杭a2の後端に連結する上杭a1の先端にソケット部材10を取り付ける(逆に、下杭a2の後端にソケット部材10を取り付け、上杭a1の先端にプラグ部材11を取り付けてもよい)。この取り付けは、図3のように、ソケット部材10あるいはプラグ部材11の取付け部12、18に、それぞれの杭a1、a2の端部を嵌入して溶接する(ここでは鋼管杭を使用するが、コンクリート杭でも使用可能である。因みに、コンクリート杭の場合は、取付け部12、18の形状を変える)。このため、現場で溶接することもできる。
【0030】
係止部材23は、プラグ部材11の内側に取り付けておく、その際、係止部材23の取り付けは、図2のように、係止部材23のネジ孔24とプラグ部材11のキー孔14とを一致させるようにして溶接する。
【0031】
次に、沈設過程の下杭a2に対して上杭a1をクレーンで吊り下げて下杭a2のプラグ部材11と上杭a1のソケット部材とを突き合わせ、プラグ部材11の接続部19をソケット部材10の嵌入部13へ嵌入する。その際、両部材10、11のキー孔14を揃えて、ソケット部材10の嵌合部13の先端がプラグ部材11の前記面(ストッパー)20に当接するまで嵌入すると、両部材10、11のキー孔14を簡単に合致させることができる。また、このようにキー孔14を合致させると、合致させたキー孔14へキー15を挿入するのであるが、その際、前記面(ストッパー)20が上杭a1を支持することになり、上杭a1をクレーンで吊り下げて保持するよりも安定するので、キー孔14へのキー15の挿入が容易にできる。
【0032】
このように、この発明では、ソケット部材10にプラグ部材11を嵌入し、キー孔14を合わせてキー15を嵌めるだけなので、簡単に連結作業が完了できる。
【0033】
さらに、連結された上杭a1と下杭a2は、ソケット部材10とプラグ部材11をキー15で連結した構造であるので、回転圧入工法にも使用でき、上杭a1と下杭a2に逆回転力を受けても接合力は保持される。
【0034】
また、キー15を均等に設けると各々のキー15が力を均一に分散することができるので、力が偏らず所要の強度を呈することができる。このように簡単な構造で筒体を連結できる。また、簡単な構造なので、ローコスト化できる。
【実施例1】
【0035】
次に、実施例1を図4及び図5に示す。
【0036】
この実施例1では、キー15とキー孔14に工夫を加えてボルト22のヘッドがソケット部材10の嵌合部13から突出しないようにし、かつ、係止部材23を板状としてローコスト化を図ったものである。
【0037】
すなわち、この実施例では、図4に示すように、キー15は底部に孔を形成し、その孔にボルト22のネジ軸を貫通させるようにした円筒形のカップ様のものとしたもので、図5のように、前記カップ中にボルト22のヘッドが嵌まるようにしたものである。そのため、ソケット部材10とプラグ部材11のキー孔14は円形としてある。このようにすることにより、先にも述べたようにボルト22のヘッドがソケット部材10の嵌合部13から突出しないようにできるので、杭の沈設の際に地盤との抵抗を最小限にすることができる。
【0038】
また、係止部材23は、四角形の金属板の中央にネジ孔24を設けたもので、四隅を溶接により溶接でプラグ部材11の嵌合部13の内側に止めている。そのため、係止部材23のネジ孔24は、プラグ部材(ソケット部材)11の嵌合部13に設けたキー孔14の真ん中に対応する位置にくるように取り付けている。このように係止部材23を板状にしたことにより、リング状よりも鋼材が少なくで済むのでローコスト化が図れる。また、鋼材が少なくで済むので軽量化が図れ、施工が簡単になり、しかも、接合部が軽くなるので耐久性を増すことも期待できる。
【0039】
他の構成及び作用効果については実施形態と同じなので、図4及び図5に図1乃至図3と同一符号を付して説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0040】
この接続装置は、円柱構造の接続に採用するものであり、パイプの連結やポールの連結あるいはヒューム管の連結にも使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施形態の斜視図
【図2】実施形態の分解斜視図
【図3】実施形態の断面図
【図4】実施例1の分解斜視図
【図5】実施例1の断面図
【図6】従来例の作用説明図
【符号の説明】
【0042】
10 ソケット部材
11 プラグ部材
12 取付け部
13 嵌合部
14 キー孔
15 キー
18 取付け部
19 接続部
20 接触面
21 貫通孔
22 ボルト
23 係止部材
24 ネジ孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結する一方の筒体の端部に取り付けるソケット部材と他方の筒体の端部に取り付けるプラグ部材とからなり、
前記ソケット部材は、一方に筒体への取付け部を有し、他方にプラグ部材を嵌入する筒状の嵌合部を有して、その嵌合部にはキー孔が設けられており、
前記プラグ部材は、一方に筒体への取付け部を有し、他方にソケット部材の嵌合部へ嵌入する筒状の接続部を有して、その筒状の接続部にキー孔が設けられており、
上記ソケット部材の嵌合部にプラグ部材の接続部を嵌入し、両部材のキー孔を合わせて、その合わせたキー孔へキーを挿入して連結する筒体の連結装置。
【請求項2】
上記プラグ部材の取付け部と接続部の間に、接続部より大径で、ソケット部材の嵌合部の先端が当接するストッパーを設けた請求項1に記載の筒体の連結装置。
【請求項3】
上記キーに、軸方向にボルトあるいはピンを挿通する貫通孔を有し、
一方、上記プラグ部材の接続部のキー孔を設けた内側に係止部材を設けて、
その係止部材に、ソケット部材にプラグ部材を嵌入してキー孔を合わせて挿入したキーの前記貫通孔へ挿通したボルトあるいはピンを螺合させて係止する請求項1または2に記載の筒体の連結装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−37619(P2006−37619A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−221806(P2004−221806)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(597096172)有限会社田中商会 (1)
【出願人】(390018717)旭化成建材株式会社 (249)
【Fターム(参考)】