説明

筒型コンクリート構造物の構築工法と内側型枠装置および落下防止装置

【課題】クレーンで吊った内側型枠装置を筒型コンクリート構造物の底部から順次段階的に上昇させてコンクリート打設し構築を進める工法用の内側型枠装置、および落下防止装置を提供する。
【解決手段】内側型枠装置はクレーンで吊り、上部の型枠落下防止装置は落下防止バーを突き出させ、上下の型枠固定部材を抜き外し、脱型する。下部の型枠落下防止装置5は落下防止バー50を突き出し可能な状態とし、内側型枠装置を次上位の構築ステップ位置まで上昇させ、下部の型枠固定部材で内側型枠装置を支持させ、下部の型枠固定部材により内側型枠装置の型枠パネルを筒型コンクリート構造物の成形位置へ位置決め固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばケーソンのような大型の筒型コンクリート構造物の構築を、クレーンで吊った内側型枠装置と該内側型枠装置に対向して対をなす隣接の型枠装置との間にコンクリート打設して進める構築工法と、同工法に使用する内側型枠装置等の技術分野に属し、特に言えば、クレーンで吊った内側型枠装置を筒型コンクリート構造物の底部から順次段階的に上昇させてコンクリート打設し構築を進める工法の実施に使用される内側型枠装置、および同内側型枠装置に適用する落下防止装置の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
ケーソンのような大型の筒型コンクリート構造物を、クレーンで吊った内側型枠装置を使用して構築する工法、および同工法の実施に使用する内側型枠装置と落下防止装置に関する先行技術は、例えば下記の特許文献1〜4などに種々開示されている。
特許文献1、2には、ケーソンのコンクリート中に予め埋め込んだアンカーボルトに型枠支持用ブラケットを固定し、前記型枠支持用ブラケットに回動可能(折り畳み可能)に取り付けた型枠載せ台に、上昇させた内側型枠装置を載せて固定し、次上位ステップの段階で使用するアンカーボルトを埋設するべく設置してコンクリートを打設し、養生した後に内側型枠を脱型処理し、次上位の段階まで内側型枠装置を上昇させる工程を繰り返す構築工法が開示されている。
この構築工法は、内側型枠装置を上昇させるとき、および内側型枠装置を型枠支持用ブラケットへ載せて固定する際に、作業ステージに作業員が居なくとも良い利点が説明されている。しかし、内側型枠を脱型し次上位の構築ステップ位置まで上昇させることで用済みとなった型枠支持用ブラケットはそのまま残置され、ケーソンの完成後にはゴンドラに乗った作業員が型枠支持用ブラケットを取り外す必要がある(同公報2頁右欄の39行〜41行目)。よって、型枠支持用ブラケットを全部取り外す作業に多大な手間と労力を要するし、危険が伴う。のみならずケーソンを完成させるまでには極めて多数の型枠支持用ブラケットを用意して使用する必要がある。
【0003】
特許文献3に開示された構築工法は、内側型枠に予め取り付けた箱抜き材によって既設のケーソンの内壁面にほぞ穴を設け、一方、内側型枠装置の下端部には内外方向へ回転又は伸縮可能なストッパーを設置し、このストッパーを内側型枠装置の上昇過程で自動的に前記ほぞ穴へ嵌め合わせて同内側型枠装置を所望位置へ固定している。そのため前記ほぞ穴は事後に埋め戻す必要がある。また、クレーンで吊って上昇させる内側型枠装置の上昇過程で、ストッパーを、ケーソンの内壁面に形成したほぞ穴と一致させ自動的に嵌め合わせる作業は、実際には揺れ動く内側型枠装置のストッパーと、ケーソン側の単なる凹みでしかないほぞ穴との位置合わせせであり、左右、上下方向の位置合わせが必要であるし、目視確認も出来ないため非常に面倒で困難であり、危険でもある。
【0004】
特許文献4に開示された構築工法は、内側型枠装置の上端部に上部ストッパーを備え、同下端部に下部ストッパーを備え、前記上部ストッパー及び/又は下部ストッパーを、打設したコンクリートの天端へ支持させて落下防止を図り、型枠支持部材の着脱作業を安全に行う構成と記載されている。
更に具体的にいうと、上部ストッパーは、アングル材の底板中央を垂直なボルトにより水平回転が可能に取り付けられており、打設したコンクリートの天端と直交する向きに回転して落下防止状態とされる。下部ストッパーは、内側型枠装置を構成する縦方向支持部材の下部に、ストッパー本体の中央部を水平なボルトにより上下方向への回転が可能に取り付けられており、常時は前記ストッパー本体の先端側(係止用凸部側)の重量モーメントが優勢で垂れ下がった姿勢である。しかし、内側型枠装置の上昇時には、ストッパー本体の後部側へ錘を取り付けて後部側の重量モーメントが優勢な状態とし、内側型枠装置の上昇に伴い下部ストッパー本体の先端側(係止用凸部側)が打設コンクリートの天端より上方へ達した段階で、前記ストッパー本体は回転して係止用凸部側が打設コンクリートの天端上へ突き出し、同ストッパー本体のボルトより前側の上縁が型枠パネルへ突き当たった水平姿勢で回転が止められ落下防止状態となる。
したがって、内側型枠装置の上昇度合いが、ストッパー本体の回転を許容して係止用凸部側が突き出す高さに至れば、自動的にストッパー本体は係止用凸部側が打設コンクリートの天端と直交する水平姿勢となり、同天端に支持されて落下防止状態となるであろう。
ところが、ストッパー本体は、これを回転可能に支持する1本の水平なボルトと、型枠パネルの下端とで支持される構成で、そもそも型枠パネル構造要素ではないから、内側型枠装置の落下荷重を型枠パネルで支持させるには、型枠落下防止装置として構造的な危うさがある。また、ストッパ本体は、水平なボルトを中心に回転する構成であり、前記ボルトからストッパ本体の先端(係止用凸部側)までの長さが、打設コンクリートの天端と直交して支持される長さを決定する。つまり、ボルトからストッパ本体の先端(係止用凸部側)までの長さが短いと、打設コンクリートの天端と直交して支持される長さが不足し、内側型枠装置の偏倚量によっては打設コンクリートの天端に支持されないか、又は支持長さが実質不足する事態を招き危険である。かといって、前記水平ボルトからストッパ本体の先端(係止用凸部側)までの長さを必要十分に確保すると、回転半径がむやみに大きくなり、周辺構造との関係で回転に支障をきたして、支持作用の不確実性が懸念される。
【0005】
【特許文献1】特公平06−23504号公報
【特許文献2】特開2000−160834号公報
【特許文献3】特開平10−61177号公報
【特許文献4】特開2005−171755号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1〜4に開示された発明の内容では、内側型枠装置を脱型して次上位の構築ステップ位置まで上昇させて位置決め固定する作業の安全性を確保することは未だ十分とはいえない。
【0007】
本発明の目的は、内側型枠装置を段階的に上昇させる工程、および各構築ステップの位置で内側型枠装置を位置決め固定する工程における型枠落下防止の対策と措置、および高所作業の安全性を確保する対策と措置が必要十分に確保された筒型コンクリート構造物の構築工法と、同工法の実施に使用される内側型枠装置、および型枠落下防止装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係る筒型コンクリート構造物の構築工法は、
筒型コンクリート構造物1の内側面を形成する内側型枠装置2をクレーンで吊り、筒型コンクリート構造物1の底部から順次段階的に上昇させ、コンクリートを打設して筒型コンクリート構造物を構築する工法において、
内側型枠装置2は、筒型コンクリート構造物1の内側面を形成する型枠パネル21を、同筒型コンクリート構造物1の周方向に間隔を開けて複数配置した縦方向支持材22に支持させ、前記縦方向支持材22は隣接するもの同士を、上下方向に間隔を開けて複数配置した横方向の腹起こし材23により連結して組み立て、前記縦方向支持材22の下端に作業ステージ24を吊り、上端近傍に上部ステージ25を設置し、前記縦方向支持材22の下端部に下部の型枠固定部材7を備え、同縦方向支持材22の上端部近傍には上部の型枠固定部材6を設置した構成とし、前記下部の型枠固定部材7を既設コンクリート中に埋設したアンカーボルト70と連結し、前記上部の型枠固定部材6は打設コンクリート中に埋設するアンカーボルト60と連結すること、
更に、内側型枠装置2の前記縦方向支持材22の下方部位であって、前記下部の型枠固定部材7よりも一定の高さ上方の位置に、打設した筒型コンクリート構造物の天端上へ落下防止バー50を突き出して支持される下部の型枠落下防止装置5を設置し、また、前記縦方向支持材22の上方部位には新たに打設する筒型コンクリート構造物の天端上へ突き出る落下防止バー30を上部の型枠落下防止装置3として備えており、
前記下部の型枠落下防止装置5は、内側型枠装置2の縦方向支持材22へ固定した複数の取り付け板52と、前記取り付け板52に支持されて筒型コンクリート構造物1の内外方向へ水平に進退可能に設けられた落下防止バー50と、前記落下防止バー50を外向き方向へ押し出す作用力を働く駆動手段53と、前記駆動手段53の作用力に打ち勝って落下防止バー50を後退限度位置に止めるストッパ機構54とで構成し、
一つの構築ステップn+1のコンクリートを打設しその養生を行った後に、当該内側型枠装置2はクレーンで吊り、上部の型枠落下防止装置3は落下防止バー30を筒型コンクリート構造物1の天端上へ突き出させた状態で、上下の型枠固定部材6、7をアンカーボルト60、70から抜き外し、内側型枠装置2の型枠パネル21を脱型し、下部の型枠落下防止装置5は落下防止バー50を駆動手段53で突き出し可能な状態として、内側型枠装置2を次上位の構築ステップ位置まで上昇させ、
上昇した内側型枠装置2は、前記下部の型枠落下防止装置5の落下防止バー50が打設コンクリートの天端上へ突き出して支持された状態で、下部の型枠固定部材7の位置決め部材71を取り付けて内側型枠装置2を前記位置決め部材71で支持させ、
その後に下部の型枠落下防止装置5の落下防止バー50を筒型コンクリート構造物1の天端から引き外してストッパ機構54で後退位置へ拘束させ、下部の型枠固定部材7により内側型枠装置2の型枠パネル21を筒型コンクリート構造物1の成形位置へ位置決め固定し、上部の型枠固定部材6を設置して次上位の構築ステップのコンクリートを打設する工程を繰り返すことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した筒型コンクリート構造物の構築工法において、
内側型枠装置2を次上位の構築ステップ位置まで上昇させる工程の前に、下部の型枠落下防止装置5の落下防止バー50を後退位置へ拘束したストッパ機構54を解除して駆動手段53による突き出し力を働かせた状態とし、この落下防止バー50は、新たに打設し養生したコンクリートの天端上へ到達した時点で自動的に突き出させ同天端上に支持させて落下防止状態にすることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載した発明に係る筒型コンクリート構造物構築用の内側型枠装置は、
クレーンに吊られて筒型コンクリート構造物1の底部から順次段階的に上昇され、各構築ステップでコンクリート打設に供して筒型コンクリート構造物1の構築を可能にする内側型枠装置2において、
筒型コンクリート構造物1の内側面を形成する型枠パネル21は、同筒型コンクリート構造物1の周方向に間隔を開けて複数配置した縦方向支持材22に支持され、前記縦方向支持材22は隣接するもの同士を、上下方向に間隔を開けて複数配置した横方向の腹起こし材23により連結して組み立てられ、前記縦方向支持材22の下端に作業ステージ24が吊られ、上端近傍に上部ステージ25が設置され、前記縦方向支持材22の下端部に下部の型枠固定部材7を備え、同縦方向支持材22の上端部近傍には新たに打設するコンクリート中に埋設する上部の型枠固定部材6を備えており、
前記内側型枠装置2の縦方向支持材の下方部位であって、前記下部の型枠固定部材7よりも一定の高さ上方の位置に、新たに打設した筒型コンクリート構造物1の天端上へ落下防止バー50を突き出して支持される下部の型枠落下防止装置5が設置され、また、同縦方向支持部材22の上方部位には新たに打設する筒型コンクリート構造物1の天端上へ落下防止バー30を突き出す上部の型枠落下防止装置3が設置されており、
前記下部の型枠落下防止装置5は、内側型枠装置2の縦方向支持材22へ固定された複数の取り付け板52と、前記取り付け板52に支持され筒型コンクリート構造物1の内外方向へ水平に進退可能に設けられた落下防止バー50と、前記落下防止バー50を外向き方向へ押し出す作用力を働く駆動手段53と、前記駆動手段53の作用力に打ち勝って落下防止バー50を後退限度位置に止めるストッパ機構54とで構成されており、
上部の型枠落下防止装置3の落下防止バー30を筒型コンクリート構造物1の天端から退避させた状態で、筒型コンクリート構造物1の一つの構築ステップのコンクリート打設が行われ、同コンクリートが養生され、内側型枠装置2が次上部の構築ステップ位置まで上昇されると、下部の型枠落下防止装置5の落下防止バー50が新たに打設され養生したコンクリートの天端上へ駆動手段53により突き出され落下防止状態となることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載した発明に係る筒型コンクリート構造物構築用内側型枠装置の落下防止装置は、
内側型枠装置2の縦方向支持材22へ固定される複数の取り付け板52と、前記取り付け板52に支持されて筒型コンクリート構造物1の内外方向へ水平に進退可能に支持された落下防止バー50と、前記落下防止バー50を外向き方向へ押し出す作用力を働く駆動手段53と、前記駆動手段53の作用力に打ち勝って落下防止バー50を後退限度位置に止めるストッパ機構54とで構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1、2記載の発明に係る構築工法は、筒状コンクリート構造物1の一つの構築ステップのコンクリート打設を終了し、養生した後に、上部の型枠落下防止装置3の落下防止バー30を筒状コンクリート構造物1の天端へ突き出させて支持させ、落下防止状態にするので、内側型枠装置2の落下防止を確実に図ることができ、上下の作業ステージ25、24は揺れなくなる。よって、この段階で作業者は上下の作業ステージ25、24へ乗り込み各作業を安全に進めることができる。下部の各型枠固定部材7をアンカーボルト70と連結することで内側型枠装置2の固定状態は完全なものとなり、各種の関連作業を安全に進めることができる。
【0013】
請求項3記載の発明に係る内側型枠装置2は、その縦方向支持部材22の上下に型枠落下防止装置3、5を具備するので、内側型枠装置2の縦方向支持部材22の下端部に設置した型枠固定部材7をアンカー部材70から解除するときは、上部の型枠落下防止装置3の落下防止バー30が筒状コンクリート構造物1の天端へ突き出して支持された落下防止状態となり安全性を確保できる。
また、内側型枠装置2の上昇工程が打設コンクリート1’の天端よりも少し上方へ到達すると、下部の型枠落下防止装置5の落下防止バー50が一斉に水平に突き出して支持され、確実に完全な落下防止状態となる。よって、上下の作業ステージ25、24へ乗り込んだ作業員は、例えば下部の型枠固定部材7をアンカーボルト70と連結して、内側型枠装置2を既設のコンクリートへ位置決め固定する作業を、安定した足場状態で安全に行うことができる。
【0014】
請求項4記載の発明に係る型枠落下防止装置5は、複数の取り付け板52で内側型枠装置2の縦方向支持部材22へ簡易に取り付けて使用することができる。逆に不要になったときには簡単に取り外して転用することができる便利さがあり、経済的である。
落下防止バー50は、前記取り付け板52に支持されて筒形コンクリート構造物1の内外方向へ水平な直線運動で進退(出入り)する構成であるから、打設コンクリート1’の天端で支持されるために必要十分な長さを確保した安全設計で実施できる。しかも落下防止バー50が負担する落下防止荷重は、全部複数の取り付け板52を介して内側型枠装置2の縦方向支持部材22へ直接伝える構造であるから、構造上の荷重処理に無理、無駄のない設計で実施でき、安全性の確保に有利である。
また、落下防止バー50は外向き方向へ押し出す作用力を働く駆動手段53を備えているから、内側型枠装置2の上昇工程が、下部の落下防止バー50が打設コンクリート1’の天端を超えて自由になると、直ちに自動的に突き出されて支持される落下防止状態となる。しかも落下防止バー50の突き出し動作と状況は、作業場の上方から目視確認できるので、安全性の点検に極めて有益である。そして、前記落下防止バー50の突き出しを確認した後に内側型枠装置2を少し下降させると、下部の落下防止バー50が全て打設コンクリート1’の天端に乗って支持され、完全な落下防止状態となる。したがって、上下の作業ステージ25と24に乗った作業員は、例えば下部の型枠固定部材7を操作して、内側型枠装置2の位置決め固定の作業を安心して安全に行うことができる。
こうして内側型枠装置2を下部の型枠固定部材7による位置決め固定の支持に盛り替えた後には、内側型枠装置2の上昇工程の準備として、下部の型枠落下防止装置5の落下防止バー50はコンクリート天端から引き外して後退させ、落下防止状態を解除し、この解除状態は、ストッパ機構54により落下防止バー50を後退限度位置に止めて保持できる。従って、内側型枠装置2の上昇工程時には、作業員は全員、上下の作業ステージ25、24から退避して良く、安全性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
内側型枠装置2は、筒型コンクリート構造物1の内側面を形成する型枠パネル21を、同筒型コンクリート構造物1の周方向に間隔を開けて複数配置した縦方向支持材22に支持させ、前記縦方向支持材22は隣接するもの同士を、上下方向に間隔を開けて複数配置した横方向の腹起こし材23により連結して組み立てる。前記縦方向支持材22の下端に作業ステージ24を吊り、上端近傍に上部ステージ25を設置する。縦方向支持材22の下端部に下部の型枠固定部材7を備える。同縦方向支持材22の上端部近傍には上部の型枠固定部材6を設置し、前記下部の型枠固定部材7は既設コンクリート中に埋設したアンカーボルト70と連結し、上部の型枠固定部材6は打設コンクリート中に埋設するアンカーボルト60と連結する。
内側型枠装置2の前記縦方向支持材22の下方部位であって、前記下部の型枠固定部材7よりも一定の高さ上方の位置に、打設した筒型コンクリート構造物の天端上へ落下防止バー50を突き出して支持される下部の型枠落下防止装置5を設置する。また、前記縦方向支持材22の上方部位には、新たに打設する筒型コンクリート構造物の天端上へ突き出る落下防止バー30を上部の型枠落下防止装置3として備える。
前記下部の型枠落下防止装置5は、内側型枠装置2の縦方向支持材22へ固定した複数の取り付け板52と、前記取り付け板52に支持されて筒型コンクリート構造物1の内外方向へ水平に進退可能に設けられた落下防止バー50と、前記落下防止バー50を外向き方向へ押し出す作用力を働く駆動手段53と、前記駆動手段53の作用力に打ち勝って落下防止バー50を後退限度位置に止めるストッパ機構54とで構成する。
一つの構築ステップn+1のコンクリートを打設しその養生を行った後に、当該内側型枠装置2はクレーンで吊り、上部の型枠落下防止装置3は落下防止バー30を筒型コンクリート構造物1の天端上へ突き出させた落下防止状態として、上下の型枠固定部材6、7をアンカーボルト60、70から抜き外し、内側型枠装置2の型枠パネル21を脱型する。下部の型枠落下防止装置5は、落下防止バー50を駆動手段53で突き出し可能な状態として、内側型枠装置2を次上位の構築ステップ位置まで上昇させる。
上昇した内側型枠装置2は、前記下部の型枠落下防止装置5の落下防止バー50が打設コンクリートの天端上へ突き出して支持された落下防止状態で、下部の型枠固定部材7の位置決め部材71を取り付けて、内側型枠装置2を前記位置決め部材71で支持させる。
その後に下部の型枠落下防止装置5の落下防止バー50を筒型コンクリート構造物1の天端から引き外して、ストッパ機構54で後退位置へ拘束させ、下部の型枠固定部材7をアンカーボルト70と連結して内側型枠装置2の型枠パネル21を筒型コンクリート構造物1の成形位置へ位置決め固定する。更に上部の型枠固定部材6を設置して次上位の構築ステップのコンクリートを打設する工程を繰り返す。
【実施例1】
【0016】
次に、本発明を図面に示した実施例に基づいて説明する。
図1Aは、構築するべき筒型コンクリート構造物1が複数個、蜂の巣状に連接され集合した構成である場合の全景を、内側及び外側の型枠装置と共に示した平面図である。図1Cは、一つの筒型コンクリート構造物1の構築に使用する内側型枠装置2を拡大した平面配置を概念的に示した平面図である。
筒型コンクリート構造物1は、複数個(図1Aでは6個)が蜂の巣状に連接して集合した構成であるため、その構築は、最外周を共通に取り囲む配置および構成とした外側型枠装置10と、各個の筒型コンクリート構造物1の内周面に配置された内側型枠装置2との組み合わせ、及び隣接する筒型コンクリート構造物1、1同士の内周面に配置された内側型枠装置2、2同士の組み合わせを図1Bに見るように一対の関係とし、これら内側型枠装置2と外側型枠装置10とをおよそ同期する関係で上昇させて筒型コンクリート構造物1の構築を進めることは既往技術と変わらない。
【0017】
図2A〜図2Dは、図1Cの一つの筒型コンクリート構造物1の構築に使用する内側型枠装置2が、本発明の構築工法により上昇する枢要な工程を順に概念的に示している。
先ず図2Aは、筒型コンクリート構造物1の構築がn+1ステップの高さまでコンクリート打設が進んだ段階を示す。このとき内側型枠装置2は、図示を省略したクレーンの吊り具4で吊った状態に保たれ、同内側型枠装置2における上部の型枠落下防止装置3の落下防止バー30は構築ステップn+1の打設コンクリート1’の天端上に突き出され、落下防止状態が保持されている。上部の型枠固定部材6は、構築ステップn+1の打設コンクリート1’中に埋設されたアンカーボルトと連結され、内側型枠装置2を固定状態に支持している。一方、同じ内側型枠装置2における下部の型枠落下防止装置5の落下防止バー50は、後退して解除状態とされている。下部の型枠固定部材7は、未だ既設の筒型コンクリート構造物1に埋設されたアンカーボルトと連結して支持持反力をとり、内側型枠装置2を固定している。
【0018】
内側型枠装置2の構成は、例えば図2Cと図5A、Bを合わせて見ると分かり易いように、筒型コンクリート構造物1の内側面を形成する型枠パネル21は、同筒型コンクリート構造物1の周方向に間隔を開けて複数配置した縦方向支持材22で支持されている。各縦方向支持材22は、隣接するもの同士が、上下方向に間隔を開けて複数本横方向に配置した腹起こし材23により連結して組み立てられている(図2C参照)。前記縦方向支持材22の下端に作業ステージ24を吊り、上端近傍に上部ステージ25を設置(図2A)した構成である。筒型コンクリート構造物1の各構築ステップnとn+1及びn+2の位置毎に、既設の筒型コンクリート構造物1に支持反力をとる下部の型枠固定部材7を縦方向支持材22の下端部に備えている。同じ縦方向支持材22の上端部近傍には、新たに打設する筒型コンクリート構造物中へアンカーボルトを埋設するため、上部の型枠固定部材6を設置している(図2D)。
【0019】
本発明の内側型枠装置2は、前記縦方向支持材22の下方部位、特には図3A及び図5Aに見るとおり、縦方向支持材22の下端部に設置された下部の型枠固定部材7よりも一定の高さ上方の位置、より具体的にいえば、図3E、F及び図5Aに示すように、下部の型枠落下防止装置5の落下防止バー50が打設コンクリート1’の天端上に支持された落下防止状態において、内側型枠装置2の型枠パネル21の下端21aが、下部の型枠固定部材7を構成する位置決め部材71の上面よりも10mmないし20mm程度上方の位置に、下部の型枠落下防止装置7が設置されている。また、内側型枠装置2の上方部であって、縦方向支持材22の上端近傍の位置には、新たに打設するコンクリート1’の天端上へ落下防止バー30が突き出す上部の型枠落下防止装置3が設置されている。
【0020】
ここで下部の型枠落下防止装置5の構成を説明する。図4および図5A、Bに示したとおり、内側型枠装置2の縦方向支持材22を構成する内外のフランジ材22aへ当てがいボルト51で締結し固定した前後2枚の取り付け板52と、前記2枚の取り付け板52に支持され、縦方向支持材22のウエブに形成された空間を通って筒型コンクリート構造物1の内外方向へ水平に進退可能とした落下防止バー50と、前記落下防止バー50を外向き方向へ押し出す作用力を働く駆動手段としての引っ張り用スプリング53、並びに前記引っ張り用スプリング53の押し出し作用力に打ち勝って落下防止バー50を後退限度位置に止めておくストッパ機構としての固定ピン54とで構成されている。
固定ピン54は、落下防止バー50の後部と、後側の取り付け板52の後面側に設けた支持部55とに共通する配置で設けた横断方向の貫通孔へカンザシ状に突き通すことで、落下防止バー50を後退限度位置に止めておくことができる。なお、駆動手段53は、前記引っ張り用スプリングの限りではなく、ゴム或いは弾性なプラスチック材、又は空気圧応用のスプリング材などを採用して実施することができる。
【0021】
下部の型枠落下防止装置5は、前後2枚の取り付け板52を、縦方向支持材22を構成する内外のフランジ材22aへ当てがいボルト51で締結し固定することで至極簡単に設置できる。したがって、簡単に取り外して転用することができる。
本実施例の場合、落下防止バー50の突き出し長さは、図5A中に点線で図示したように、少なくとも筒型コンクリート構造物1の壁厚の約半分程度、具体的には10cm程度の長さとし、筒型コンクリート構造物1の天端上に載って支持される構成に設計し実施されている。
本発明による落下防止バー50は、筒型コンクリート構造物1の内外方向へ水平に進退可能に前後を複数の取り付け板52で支持されているから、筒型コンクリート構造物1の天端へ突き出す長さは、必要に応じていかようにも設計して実施できる自由度がある。また、落下防止バー50が筒型コンクリート構造物1の天端上に載って支持する落下防止荷重は、上記複数枚の取り付け板52、52で直接縦方向支持材22へ伝え負担させる構成であるから、耐荷重性能に何ら無理のない構造設計で実施することが可能である。
【0022】
なお、上部の型枠落下防止装置3の構成および縦方向支持材22への取り付け構造も、上述した下部の型枠落下防止装置5の構成と実質的に同じでよい。しかし、図7及び図8に示した型枠落下防止装置3を一層軽便に使用することができる。
図7と図8に示した上部の型枠落下防止装置3は、図7Bに示したコンクリート打設作業の際、およびバイブレータでコンクリートを締め固める際には、邪魔になる落下防止バー30を非使用状態にしておくため、落下防止バー30は、その上部を軸ボルト31により縦方向支持材22の側面へ回転可能に吊り下げた状態にしておく。コンクリート打設が終了し、養生期間が経過して、脱型作業等のため落下防止措置が必要となったときは、落下防止バー30を軸ボルト31を中心に図8Bのように回転し、予め落下防止バー30の所定位置に設けてあるボルト孔32へ止めボルト33を通して縦方向支持材22へ固定することで、落下防止バー30は筒型コンクリート構造物1の天端へ突き出した構成とするのである。
【0023】
次に、上記の構成を前提として、筒型コンクリート構造物の構築工法の枢要な手順および工程を説明する。
図1A又はCに示したように、筒型コンクリート構造物1の平面形状は、本実施例では正方形に近似した角筒形である場合を示す。よって内側型枠装置2は、筒型コンクリート構造物1の内面の四辺に沿って一連に組み立てられ、型枠パネル21が筒型コンクリート構造物1の内側面を成形する配置とされている。
図2A〜図2Dは、一つの筒型コンクリート構造物1の垂直断面内における内側型枠装置2の上昇工程の進捗に伴う変化を示している。図中の符号8は筒型コンクリート構造物1の補強鉄筋を示す。
次に、図3A〜図3Iは、上記内側型枠装置2における下部の型枠固定部材7および下部の型枠落下防止装置7の動作を工程順に示している。
【0024】
図2Aでは、構築ステップn+1のコンクリート打設と養生期間が経過した後に、内側型枠装置2を図示を省略したクレーンの吊り具4で吊った状態を保ち、内側型枠装置2における上部の型枠落下防止装置3の落下防止バー30は構築ステップn+1の打設コンクリート1’の天端上に突き出した落下防止状態であることを示している。
上部の型枠固定部材6を構成するアンカーボルト60(図1B)は、新たに打設した構築ステップn+1のコンクリート1’中に埋設され、このアンカーボルト60と連結した型枠固定部材6により、内側型枠装置2の上部は固定状態とされる。この上部の型枠固定部材6の具体的な構成、動作および作用は、後述する下部の型枠固定部材7の図示および構成の説明を援用するので参照されたい。
図2Aでは、内側型枠装置2における下部の型枠落下防止装置5の落下防止バー50は後退して解除状態である。下部の型枠固定部材7は、既設のコンクリート1に埋設されたアンカーボルトと連結して内側型枠装置2の下部を固定している。
【0025】
同じ図2Aの段階では、上記の構成を前提として、構築ステップn+1のコンクリート打設と養生期間が経過した後の脱型工程の作業を次のように進める。上部ステージ25上へ乗り込んだ作業員は、上部の型枠固定部材6をアンカーボルト60との連結から解き放す。下部ステージ24上へ乗り込んだ作業員も、下部の型枠固定部材7をアンカーボルト70との連結を解き放す。
その作業図を図3A〜図3Cに詳示したので、以下これを参照して説明する。
先ず図3Aでは、未だ下部の型枠固定部材7を構成する拘束ボルト72とアンカーボルト70とが連結されており、同拘束ボルト72を利用して内側型枠装置2の縦方向支持材22が強固に固定されている。下部の型枠落下防止装置5の落下防止バー50は後退限度位置に止められている。
次の図3Bでは、アンカーボルト70と拘束ボルト72の連結が解き放され、縦方向支持材22は自由になっている。但し、位置決め部材71は未だアンカーボルト70に固定されたままである。内側型枠装置2の型枠パネル21は、その下端21aが前記位置決め部材71の上に載って支持されている。しかし、内側型枠装置2の上昇工程が始まる以前に、位置決め部材71もアンカーボルト70から解き放して回収する。この点は位置決め部材71の果たす役割に若干の差異はあるが、上部の型枠固定部材6を構成するアンカーボルトと位置決め部材との関係も同様である。
【0026】
図3Cでは、いよいよ内側型枠装置2を内方へ偏倚させる操作により型枠パネル21を打設コンクリート1’から引き剥がす脱型が行われている。この段階で、下部の型枠落下防止装置5の落下防止バー50は、後退限度位置に止めていた固定ピン54(図6参照)を引き抜き、駆動手段である引っ張りコイルバネ53により外向きに押し出す作用力が働く状態(図6Bを参照)とされている。
【0027】
以上の準備作業が全て終了すると、作業員は上下の作業ステージ25、24から全員安全な場所へ退避し、図2Bに示す内側型枠装置2の上昇工程に移る。上昇工程は、内側型枠装置2を吊ったクレーンで行う。この上昇工程の際、下部の型枠落下防止装置5の落下防止バー50は、図3Dに示したように、駆動手段である引っ張りコイルバネ53により外向きに押し出す作用力が働いた状態で打設コンクリート1’の内面に突き当たり、同内面を滑って上昇する。そのため図3Eのように打設コンクリート1’の天端よりも少し高く上昇し拘束が解けると、直ちに突き出す体勢になっている。前記上昇行程において、打設コンクリート1’の内面に多少の凹凸があっても、引っ張りコイルバネ53の作用力が働いているので、落下防止バー50は凹凸に倣って出入りしつつ問題なく上昇する。
したがって、図2Cと図3Eに示すように、内側型枠装置2の上昇工程が、次上位の構築ステップn+2の高さに至り、下部の型枠落下防止装置5の落下防止バー50の先端が打設コンクリート1’の天端よりも上昇して拘束が解けると、同時に落下防止バー50は突き出してコンクリート1’の天端と直交する配置となる。よって、その後に内側型枠装置2を適度に下降させると、下部の型枠落下防止装置5の落下防止バー50は全て、打設コンクリート1’の天端上に乗って支持された落下防止状態となる。
【0028】
そこで当該構築ステップn+2のコンクリート打設工程の準備作業を開始する。そこで図1Dに示すように、先に退避していた作業員は、再び上下の作業ステージ25、24上へ乗り込み、内側型枠装置2の位置決め固定の作業を開始する。
その作業内容は、図3Fに示すように、先の構築ステップn+1で打設したコンクリート1’の天端付近へ上部の型枠固定部材6を利用して予め埋設したアンカーボルト60へ位置決め部材71が取り付けられる。この位置決め部材71が型枠パネル21の下端21aを支持する状態となった後に、図3Gに示すように、役割を終えた下部の型枠落下防止装置5の落下防止バー50を打設コンクリート1’の天端から引き外して後退させ、再び図6Aのように固定ピン54を差して後退限度位置に止めておく。
次に、図示省略のクレーンを操縦して、内側型枠装置2をゆっくり下降させて、型枠パネル21の下端21aを前記位置決め部材71の上に載せて支持させる(図3H)。続いて図3Iのように、アンカーボルト60へ拘束ボルト72を連結し、内側型枠装置2の型枠パネル21を筒型コンクリート構造物1の成形位置へ位置決めする。その位置は拘束ボルト72により縦方向支持部材22を介して強固に固定する。
以上の準備が全て整った段階で、上部ステージ25を作業足場に利用して当該構築ステップn+2のコンクリートを打設する工程を実行する。
以下、同様の工程を繰り返すことにより、筒型コンクリート構造物1を所望の高さまで段階的に効率よく安全に構築することができる。
【0029】
以上に本発明を図示した実施例に基いて説明したが、もちろん、本発明の技術的思想は上記実施例の限りではない。本発明の要旨、技術的思想および目的を逸脱しない範囲で、当業者が通常行う設計変更ないし応用変形を含めて、多様に実施できることをここに念のため付言する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1A】筒型コンクリート構造物の全景と型枠装置の配置を概念的に示す平面図である。
【図1B】図1AのI−I線矢視断面図である。
【図1C】一つの筒型コンクリート構造物の構築に使用する内側型枠装置の配置を概念的に示した平面図である。
【図2A】本発明による筒型コンクリート構造物の構築工法の枢要な工程図を順に概念的に示した垂直な断面図である。
【図2B】本発明による筒型コンクリート構造物の構築工法の枢要な工程図を順に概念的に示した垂直な断面図である。
【図2C】本発明による筒型コンクリート構造物の構築工法の枢要な工程図を順に概念的に示した垂直な断面図である。
【図2D】本発明による筒型コンクリート構造物の構築工法の枢要な工程図を順に概念的に示した垂直な断面図である。
【図3A−F】内側型枠装置部における下部の型枠落下防止装置および下部の型枠固定部材の使用態様を工程順に示した部分図である。
【図3G−I】内側型枠装置部における下部の型枠落下防止装置および下部の型枠固定部材の使用態様を工程順に示した部分図である。
【図4】下部の型枠落下防止装置を示した斜視図である。
【図5】A、Bは下部の型枠落下防止装置を拡大して示した側面図と背面図である。
【図6】A、Bは下部の型枠落下防止装置における落下防止バーの動作を示した説明図である。
【図7】A、Bは上部の型枠落下防止装置を非使用状態で示した平面図と垂直な断面図である。
【図8】A、Bは上部の型枠落下防止装置を落下防止状態で示した平面図と垂直な断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 筒型コンクリート構造物
2 内側型枠装置
21 型枠パネル
22 縦方向支持部材
23 腹起こし材
24 下部ステージ
25 上部ステージ
7 下部の型枠固定部材
6 上部の型枠固定部材
70、60 アンカーボルト
5 下部の型枠落下防止装置
50 落下防止バー
3 上部の型枠落下防止装置
30 落下防止バー
52 取り付け板
53 駆動手段
54 ストッパ機構
71 位置決め部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒型コンクリート構造物の内側面を形成する内側型枠装置をクレーンで吊り、筒型コンクリート構造物の底部から順次段階的に上昇させ、コンクリートを打設して筒型コンクリート構造物を構築する工法において、
内側型枠装置は、筒型コンクリート構造物の内側面を形成する型枠パネルを、同筒型コンクリート構造物の周方向に間隔を開けて複数配置した縦方向支持材に支持させ、前記縦方向支持材は隣接するもの同士を、上下方向に間隔を開けて複数配置した横方向の腹起こし材により連結して組み立て、前記縦方向支持材の下端に作業ステージを吊り、上端近傍に上部ステージを設置し、前記縦方向支持材の下端部に下部の型枠固定部材を備え、同縦方向支持材の上端部近傍には上部の型枠固定部材を設置した構成とし、前記下部の型枠固定部材を既設コンクリート中に埋設したアンカーボルトと連結し、前記上部の型枠固定部材は打設コンクリート中に埋設するアンカーボルトと連結すること、
更に、内側型枠装置の前記縦方向支持材の下方部位であって、前記下部の型枠固定部材よりも一定の高さ上方の位置に、打設した筒型コンクリート構造物の天端上へ落下防止バーを突き出して支持される下部の型枠落下防止装置を設置し、また、前記縦方向支持材の上方部位には新たに打設する筒型コンクリート構造物の天端上へ突き出る落下防止バーを上部の型枠落下防止装置として備えており、
前記下部の型枠落下防止装置は、内側型枠装置の縦方向支持材へ固定した複数の取り付け板と、前記取り付け板に支持されて筒型コンクリート構造物の内外方向へ水平に進退可能に設けられた落下防止バーと、前記落下防止バーを外向き方向へ押し出す作用力を働く駆動手段と、前記駆動手段の作用力に打ち勝って落下防止バーを後退限度位置に止めるストッパ機構とで構成し、
一つの構築ステップのコンクリートを打設しその養生を行った後に、当該内側型枠装置はクレーンで吊り、上部の型枠落下防止装置は落下防止バーを筒型コンクリート構造物の天端上へ突き出させた状態で、上下の型枠固定部材をアンカーボルトから抜き外し、内側型枠装置の型枠パネルを脱型し、下部の型枠落下防止装置は落下防止バーを駆動手段で突き出し可能な状態として、内側型枠装置を次上位の構築ステップ位置まで上昇させ、
上昇した内側型枠装置は、前記下部の型枠落下防止装置の落下防止バーが打設コンクリートの天端上へ突き出して支持された状態で、下部の型枠固定部材の位置決め部材を取り付けて内側型枠装置を前記位置決め部材で支持させ、
その後に下部の型枠落下防止装置の落下防止バーを筒型コンクリート構造物の天端から引き外してストッパ機構で後退位置に拘束させ、下部の型枠固定部材により内側型枠装置の型枠パネルを筒型コンクリート構造物の成形位置へ位置決め固定し、上部の型枠固定部材を設置して次上位の構築ステップのコンクリートを打設する工程を繰り返すことを特徴とする、筒型コンクリート構造物の構築工法。
【請求項2】
内側型枠装置を次上位の構築ステップ位置まで上昇させる工程の前に、下部の型枠落下防止装置の落下防止バーを後退位置へ拘束したストッパ機構を解除して駆動手段による突き出し力を働かせた状態とし、この落下防止バーは、新たに打設し養生したコンクリートの天端上へ到達した時点で自動的に突き出させ同天端上に支持させて落下防止状態にすることを特徴とする、請求項1に記載した筒型コンクリート構造物の構築工法。
【請求項3】
クレーンに吊られて筒型コンクリート構造物の底部から順次段階的に上昇され、各構築ステップでコンクリート打設に供して筒型コンクリート構造物の構築を可能にする内側型枠装置において、
筒型コンクリート構造物の内側面を形成する型枠パネルは、同筒型コンクリート構造物の周方向に間隔を開けて複数配置した縦方向支持材に支持され、前記縦方向支持材は隣接するもの同士を、上下方向に間隔を開けて複数配置した横方向の腹起こし材により連結して組み立てられ、前記縦方向支持材の下端に作業ステージが吊られ、上端近傍に上部ステージが設置され、前記縦方向支持材の下端部に下部の型枠固定部材を備え、同縦方向支持材の上端部近傍には新たに打設するコンクリート中に埋設する上部の型枠固定部材を備えており、
前記内側型枠装置の縦方向支持材の下方部位であって、前記下部の型枠固定部材よりも一定の高さ上方の位置に、新たに打設した筒型コンクリート構造物の天端上へ落下防止バーを突き出して支持される下部の型枠落下防止装置が設置され、また、同縦方向支持部材の上方部位には新たに打設する筒型コンクリート構造物の天端上へ落下防止バーを突き出す上部の型枠落下防止装置が設置されており、
前記下部の型枠落下防止装置は、内側型枠装置の縦方向支持材へ固定された複数の取り付け板と、前記取り付け板に支持され筒型コンクリート構造物の内外方向へ水平に進退可能に設けられた落下防止バーと、前記落下防止バーを外向き方向へ押し出す作用力を働く駆動手段と、前記駆動手段の作用力に打ち勝って落下防止バーを後退限度位置に止めるストッパ機構とで構成されており、
上部の型枠落下防止装置の落下防止バーを筒型コンクリート構造物の天端から退避させた状態で、筒型コンクリート構造物の一つの構築ステップのコンクリート打設が行われ、同コンクリートが養生され、内側型枠装置が次上部の構築ステップ位置まで上昇されると、下部の型枠落下防止装置の落下防止バーが新たに打設され養生したコンクリートの天端上へ駆動手段により突き出され落下防止状態となることを特徴とする、筒型コンクリート構造物構築用の内側型枠装置。
【請求項4】
内側型枠装置の縦方向支持材へ固定される複数の取り付け板と、前記取り付け板に支持されて筒型コンクリート構造物の内外方向へ水平に進退可能に支持された落下防止バーと、前記落下防止バーを外向き方向へ押し出す作用力を働く駆動手段と、前記駆動手段の作用力に打ち勝って落下防止バーを後退限度位置に止めるストッパ機構とで構成されていることを特徴とする、筒型コンクリート構造物構築用内側型枠装置の落下防止装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3A−F】
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【図3G−I】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−90646(P2010−90646A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−263415(P2008−263415)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(593211636)株式会社ニッケンフェンスアンドメタル (26)
【出願人】(508303586)永藏工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】