説明

筒状容器立て

【課題】試験管等の筒状容器を保持すると共に前記筒状容器を取り扱う作業者が把持することができる筒状容器立てを提供する。
【解決手段】液体を収納する筒状容器50を保持すると共に前記筒状容器50を取り扱う作業者が把持することができる筒状容器立て1であって、前記筒状容器50の側壁に当接して前記筒状容器50を保持する保持穴3を有する保持部2と、この保持部2の一端側に設けられた把持部5と、この把持部5に立上部4を介し離間して当該把持部5の上方に設けられた指保護部6と、を備えることを特徴とする筒状容器立て

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験管、スピッツ管、採血管等の筒状容器を立てた状態で保持する筒状容器立てに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、医療現場で実施されている臨床検査のうち血液検査では、生化学・免疫・末梢血・凝固検査など数多くの種類があり、それらの作業が同時並行して実施されることもある。病棟のベッドサイドでは、看護師がシリンジ採血後に、注射針を取り付けたままのシリンジから複数の採血管へと分注する操作を行うことが多い。このような作業は、血液と、採血管に予め添加されている抗凝固剤等の薬品類等との混和が十分でなかったり、採血管に移すまでに時間がかかったりすると、血液が凝固してしまい、検査ができないかあるいは検査値が異常値になってしまうことがあるため、迅速な採血・分注・混和作業が求められている。
【0003】
しかし、採血管への血液分注作業において、一方の手に採血管を持ち、他方の手に採取した血液の入ったシリンジを持ち、次いで採血管のゴム製蓋に注射針を刺し込んで分注を実施する際、慣れていなかったり、あわてたりすると、針先で採血管を保持している手や指を誤って刺してしまうことがある。このような針刺し事故は、医療従事者のエイズ、肝炎等の感染につながる危険性があることから、針刺し防止対策が強く求められている。また、試験管に液状物等を移すとき、作業者の手に液状物が飛散することがある。前記液状物が血液、排泄物、分泌物等の感染のおそれがある物質の場合、作業者の手などに傷があるとその傷に液状物質が付着しただけで、感染につながる危険性がある。
そこで、現在では、作業者が採血管を持つ代わりに、筒状容器立てに採血管を固定してから分注作業を行っている。そして、筒状容器立てとしては、特許文献1に記載されている発明のように、金属線等を格子状に組み立てた筒状容器立てが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平04−50134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の発明のような従来の試験管立ては、針金等で格子状に組み立てられているため、作業者が作業中に採血管を密着固定することができない。また、採血管が試験管立てに密着固定されていないため、ぐらついて不安定であり、作業者が注射針を採血管のゴム製蓋へ刺したり、抜いたりする操作が容易ではなく、分注量の正確性に欠け、分注と同時並行して行われる採血管内の血液と抗凝固剤等の薬品類等との混和操作が困難であるという問題があった。そのため、作業効率が低いことが指摘されている。
【0006】
また、作業者の手を保護する部材が設けられていないので、作業者が分注操作をする際に、針刺し事故による感染の危険性を依然として防ぐことができない。また、作業者が試験管内の感染物質を移す際、作業者の手への感染物質の飛散による感染症の危険性を防ぐことができない。
【0007】
そこで、本発明は、前記した問題点に鑑み創案されたものであり、本発明に係る筒状容器立ては、作業者の分注作業中に採血管を筒状容器立てに密着固定させることができ、また、作業者の手への針刺し事故による感染を防止することができ、さらに、作業者の手などへの感染物質の飛散などによる感染を防止することのできる筒状容器立てを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明に係る請求項1の筒状容器立ては、臨床検査や実験等で筒状容器を取り扱う際に、筒状容器を保持する機能と、作業者が筒状容器を筒状容器立てに保持した状態のまま筒状容器立てを握って把持することのできる機能とを併せ持つ筒状容器立てであって、保持部の保持穴に筒状容器を挿通し、筒状容器の筒状側壁に外側から保持穴の穴内壁面に当接して筒状容器を保持することができる保持穴を有する保持部と、この保持部の一端側に設けられ、指保護部と把持部との間に作業者が手を入れ筒状容器立てを手指で把持することのできる把持部と、この把持部に立上部を介して作業者が指保護部と把持部との間に手をさし込める程度に離間して把持部の上方に設けられた指保護部と、を備える構成とした。
【0009】
このような構成により、筒状容器立ては、保持部の保持穴に、例えば、試験管やスピッツ管や採血管等の筒状容器を挿通し、保持部で筒状容器を保持した状態とし、作業者が把持部を手指で把持したとき、この把持部においた手指が立上部を介して上部にある指保護部で保護された状態となる。そのため、作業者がシリンジ等の針先を筒状容器の中に入れ、シリンジ等の内容物を分注したりするような場合でも、把持部を把持する手指が指保護部で保護される。
【0010】
また、本発明に係る請求項2の筒状容器立てにおいて、保持部と把持部との底面が同一平面上に形成され、把持部が、作業者が把持しやすいように立上部に隣接して設けられ、立上部の上端に作業者が指保護部と把持部との間に手を入れられる程度に離間して設けられた指保護部が設けられていると共に、立上部の下端に把持部と反対の側面に突出するように保持部が設けられている構成とした。
このような構成により、筒状容器立ては、筒状容器を保持したときに把持部と保持部の底面が同一平面上にあるのでテーブル表面等の平坦な場所に載置できる。
【0011】
さらに、本発明に係る請求項3の筒状容器立てにおいて、保持部が保持穴の穴内壁面から中心部に向かって、前記筒状容器に当接する弾性部材で形成された凸部が設けられている構成としてもよい。
【0012】
このような構成により、筒状容器立ては、保持部の保持穴に挿通された筒状容器が、凸部の弾性力に抗して押込まれることで保持部に強固に密着保持される。そのため、例えば、保持している筒状容器を作業者が把持部を把持した状態で上下左右に振っても保持部から筒状容器が抜け落ちるおそれは少ない。
【0013】
また、本発明に係る請求項4の筒状容器立てにおいて、全体がプラスチック製発泡体で形成されている構成であってもよい。
このような構成により、筒状容器立ては、例えば、作業者が把持部を把持して作業を行う際、軽量で、取り扱いが容易である。また、作業者が誤って作業者の手の方へ、針を刺し込みそうになっても、筒状容器立ての方に針先が先に刺さることにより、針先から手を保護し、手の損傷を防止できる。
【0014】
そして、本発明に係る請求項5の筒状容器立てにおいて、保持部が、上層部と中間層部と下層部に分かれており、各々の保持穴は一致するように配置され、上層部と下層部に挟み込まれた中間層部には、保持穴の穴内壁面から中心部に向かって、凸部が設けられている構成とした。
このような構成により、筒状容器立ては、中間層部を上層部および下層部とは別に形成し、あるいは三層を別々に形成し、その後積層して接着ないし熔着させる構成とすれば、製造が容易である。また、使用により中間層部の特に凸部が切断ないし磨耗等の原因によって破損したときには、中間層部のみ新しい部材に換える方法をとってもよい。
【0015】
さらに、本発明に係る請求項6の筒状容器立てにおいて、保持部に筒状容器が保持された状態で、保持部と把持部の底面の一方または両方に、支持脚が突出して形成されてもよい。
このような構成により、筒状容器立ては、例えば、保持穴に筒状容器を挿通し貫通させた状態で、筒状容器の底部と支持脚とにより、テーブル上に直立させることができるので、筒状容器内の液体を目視することができる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の本発明に係る筒状容器立ては、把持部の上方に指保護部が設けられているので、作業者の手への針刺し事故による感染を防止することができ、また、作業者の手などへの感染物質の飛散などによる感染を防止することができる。
【0017】
請求項2の本発明に係る筒状容器立ては、作業者の手への針刺し事故や感染物質の飛散などを予防することができる。例えば、扱う液体を混合する必要があれば、テーブル上に筒状容器立てを置いて、下面をテーブル上で滑らせるように動かして静かに混和させたり、把持部を持って空中で振れば、短時間でより強力に混和させることもできる。
【0018】
請求項3の本発明に係る筒状容器立ては、筒状容器を筒状容器立てに凸部により密着固定させるため、筒状容器へ他の容器から液状物をこぼすことなく安定して容易に移すことができる。また、分注作業において、採取した血液の入ったシリンジの注射針を作業者が、注射針を採血管のゴム製蓋部へ刺したり、抜いたりする作業が容易になり、分注量の正確性が増し、分注と同時並行して行われる採血管内の血液と抗凝固剤等の薬品類等との混和作業が容易になる。
【0019】
請求項4の本発明に係る筒状容器立ては、軽量であり、作業性がよく、また、作業者の手への針刺し事故による感染を防止することもでき、さらに、針先の損傷を防止することもできる。
【0020】
請求項5の本発明に係る筒状容器立ては、製造が容易であるため、製造コストを低く抑えることができ、また、長期間の使用に耐えられるので、使用コストも低く抑えることができる。血液や薬剤の洗浄に耐える材料を選べば繰り返し使用ができる。
【0021】
請求項6の本発明に係る筒状容器立ては、テーブル等の平坦な場所に支持脚により支持させて筒状容器を保持部から下方に貫通して露出する。そのため、分注量の決められた採血管でも筒状容器の内部の状態を観察することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態における筒状容器立ての斜視図で、その一部を切り欠いて示す。
【図2】本発明の実施形態における筒状容器立ての把持部を作業者が把持した状態を示す斜視図である。
【図3】(a)は、筒状容器立ての上方からみた平面図である。 (b)は、本発明に係る(a)の筒状容器立てのA−A断面で切った筒状容器立ての断面図である。
【図4】筒状容器立てに保持された状態の筒状容器に対してそのゴム製蓋部にシリンジを挿入している状況を示す図である。
【図5】筒状容器立てに筒状容器を保持した状態で、その全体を空中で転倒混和している状況を示す図である。
【図6】本発明の他の実施形態における筒状容器立ての斜視図である。
【図7】(a)〜(h)は、本発明の他の実施形態における筒状容器立ての立上部、把持部、指保護部の変形例をそれぞれ示す側面図あるいは斜視図である。
【図8】(a)〜(d)は、本発明の他の実施形態における筒状容器立ての支持脚の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る筒状容器立てについて、図面を参照して説明する。
図1および図2に示すように、筒状容器立て1は、血液や薬剤等を洗い流し易いプラスチック製発泡体、例えば、発泡ポリエチレンで形成され、試験管、スピッツ管、採血管等の筒状容器50を保持してテーブル等の上に載置されて各種作業に使用される。この筒状容器立て1は、筒状容器50を保持する保持部2と、手指で把持する把持部5と、指保護部6とを備えている。
【0024】
保持部2は、筒状容器50を保持穴3で保持する部分である。また、保持部2は、筒状容器50を保持穴3に挿入して保持したときに、筒状容器50を直立させて保持できる厚みを備え、後記する立上部4にその一端を接続して設けられている。この保持部2は、直方体形状に形成された保持本体2Aと、この保持本体2Aの上面から下面に貫通して設けた保持穴3を備えている。
【0025】
保持穴3は、穴内壁面に当接して筒状容器50を保持することができる箇所である。この保持穴3は、各々互いに均等の間隔で、配列するように設けられている。保持穴3の内径は、筒状容器50の外径とほぼ同じか、あるいはわずかに小さい程度の内径であればよく、それによって筒状容器50が保持部2と密着して直立するように構成されている。保持穴3の内径が、筒状容器50の外径よりもわずかに小さな内径であっても、プラスチック製ないしプラスチック製発泡体で形成されているとその内径が拡がり、筒状容器50が円滑に挿入して、筒状容器50壁と保持穴3の穴内壁面との摩擦を大きくさせることができる。
【0026】
図1および図3(b)に示すように、保持本体2Aは、上層部2a、中間層部2b、下層部2cから構成され、積層している。それぞれに上層部保持穴3a、中間層部保持穴3b、下層部保持穴3cが形成され、上下に連通して一致して配置され、保持穴3を形成している。上層部2a、中間層部2b、下層部2cは、保持本体2Aを約三等分する程度の厚みを有している。上層部2a、中間層部2b及び下層部2cを別々に成形し、穴の位置を調整しながら積層してから、接着ないし熔着してもよい。また、一例として、中間層部2bを着脱自在に挟み込み、その他の構成となる立上部4、把持部5、指防護部6、上層部2a、下層部2cを一体に形成してもよい。上層部2aと下層部2cとの間隔は、中間層部2bが挟持できるように設定されている。そのため、中間層部2bを容易にさし込んで取り付けられている。また、中間層部保持穴3bには、凸部7が設けられている。
【0027】
凸部7は、筒状容器50を保持部2により強固に保持する目的で形成されている。図1および図3(a)に示すように、凸部7は、中間層部保持穴3bに、穴内壁面から中心部に向かって、筒状容器50に当接するように設けられている。この凸部7は、ここでは、中間層部保持穴3b形成予定部に十字状の切り込みを入れ、結果的に三角形の頂点を保持穴の中心に向けた三角柱が残され、その保持穴の円周上に4箇所の凸部が形成されている。なお、凸部7は、筒状容器50を保持することができるものであれば、その形状、大きさ、数等は任意である。中間層部2bがプラスチック製発泡体で形成されていれば、それは弾性部材としても機能を発揮するので、凸部7も弾性を示し、筒状容器を密着して強固に保持することができる。
【0028】
図1および図2に示すように、把持部5は、作業者が筒状容器50を筒状容器立て1に保持した状態のまま筒状容器立て1を握って把持することのできる部分である。把持部5は、作業者が立上部4を介して、保持部2の一端側に設けられ、かつ当該把持部5と保持部2との底面が同一平面上に形成されている。把持部5と指保護部6との間隔は、作業者が立上部4を介して手を出し入れでき、筒状容器立て1をさし込んだ手指で把持することができる程度離間させて設けられている。
把持部5は、立上部4の下端に位置する基部5aとその基部5aの先端に形成されている把手部5bにより構成されている。また、基部5aは、立上部4の下端に一体に形成され、保持部2と立上部4の底面と同一平面上に形成されている。
把手部5bは作業者が手指で把持する箇所である。把手部5bは、当該保持部2と立上部4側面との底面が同一平面上に形成され、基部5aの先端方向へ延び一体に形成されている。把手部5bは、一端側が基部5aに対して肉厚で丸みを帯び、作業者の手のひらの曲線に沿う形状で構成されている。
【0029】
指保護部6は、作業者の手への針刺し事故による感染の防止と、作業者の手などへの感染物質の飛散などによる感染を防止する役割をになう部分である。指保護部6は、把持部5の上方で把持部5を覆う位置に配置され、立上部4の上端にその立上部4に一体に形成されている。指保護部6は、ここでは、立上部4に対して直交する方向に形成されている。図3(a)および(b)に示すように、指保護部6は、ここでは、立上部4から直交する方向に把持部5と同じ突出長さとなるように、形成されている。
【0030】
立上部4は、指保護部6と把持部5との間隔を開けて作業者が手を出し入れできるように、把持部5と指保護部6との間に介在させる部分である。図3(b)に示すように、立上部4は、ある程度の強度を有する程度に厚みを備える板状に形成され、一方の側面に保持部2を取り付け、他方の側面の上端と下端にそれぞれ把持部5、指保護部6の各構成部分を一体的に配置している。つまり、図1〜3に於いて、立上部4を中心にして、その右側に把持部5及び指保護部6を設け、左側に保持部2を設けている。このような構造体は、金型を用いて一工程で一体に成形してもよいし、上層部2a、中間層部2b及び下層部2cとからなる保持部2と、把持部5、立上部4及び指保護部6とからなるU字状部とを別々に形成してから、その後接着一体化して製造してもよい。
【0031】
次に、この筒状容器立て1の使用方法について図4および図5を参照して説明する。なお、筒状容器50を採血管51として説明する。この採血管51の上端には開口をシールするゴム蓋部52が取り付けられている。
一例として、病棟のベッドサイド等で、看護師、臨床検査技師などの医療従事者が患者からのシリンジ採血後に、引き続き、注射針61を取り付けたままのシリンジ60から複数の採血管51へと血液を分注し、並行して抗凝固剤等の薬剤と混和する作業を行う。
【0032】
作業者は、あらかじめ採血前に筒状容器立て1に採血管51を複数本準備させておく。採血管51の下部においては分注された量を確認できる程度に保持部2の下面から突出させて、採血管51を保持穴3に挿入して固定させておく。採血管51は、保持穴3内に設けた凸部7の弾性力に抗して、その凸部7を変形させて、保持部5に挿入される。そのため、採血管51は、保持穴3内において凸部7の弾性力により、押圧された状態で密着保持されている。
【0033】
図4に示すように、作業者は、一方の手で採血管51が保持された筒状容器立て1を持ち、他方の手で採取した血液が入ったシリンジ60を持ち、各種作業を行う。採血管51が保持穴3内の凸部7により、筒状容器立て1にぐらつくことなく直立するように保持されているため、作業者は、採血管51のゴム製蓋部52の位置が安定している状態で、シリンジ60の注射針61をゴム製蓋部52に突き刺すことができる。
【0034】
採血管51の中へ各種検査に規定された量の血液を分注後も、注射針61を採血管51のゴム製蓋部52からぐらつくことなく引き抜くことができる。図5に示すように、作業者は、この作業に並行して、筒状容器立て1に採血管51をしっかり保持した状態で、筒状容器立て1をゆっくりと通常数回上下逆にしたり戻したりして混和させたり(以下、転倒混和という)、あるいはテーブル上で静かに滑らせるように動かして混和させたりして、血液と採血管51に予め添加されている抗凝固剤等の薬品類等との混和を行う。このように筒状容器立て1は、分注作業と分注作業の間、および全ての採血管51への分注終了後に引き続いて転倒混和作業を行っても、採血管51が安定した状態で保持部2の保持穴3に保持されている。
【0035】
以上説明した筒状容器立て1によれば、作業を行うときは常に、把持部5を把持する手指が指保護部6で保護される状態になるので、作業者の手への針刺し事故による、また、作業者の手などへの感染物質の飛散等による、感染を防止することができる。また、採血管51へ採取した血液の入ったシリンジ60を用いて分注する作業において、作業者が、注射針61を採血管51のゴム製蓋部52へ刺したり、抜いたりする作業が容易になり、分注量の正確性が増し、分注と同時並行して行われる採血管51内の血液と抗凝固剤等の薬品類等との混和作業が容易になる。
【0036】
筒状容器立て1は、テーブル上の平坦な場所に載置できるので、テーブル上に筒状容器立て1を直立させて置き、下面をテーブル上で静かに滑らせるように動かして混和させたり、把持部5を持って空中で振れば、短時間でより強力に混和させることもできる。
【0037】
また、この筒状容器立て1は、凸部により筒状容器50を密着固定させるため、筒状容器50へ他の容器から液状物をこぼすことなく安定して容易に移すことができる。保持している筒状容器50を作業者が把持部5を把持した状態で上下に振っても保持部2から筒状容器50が抜け落ちる懸念は小さい。作業者の手などに傷があり、筒状容器50の内容物が血液、排泄物、分泌物等の感染物質の場合でも、その傷に感染物質が飛散し感染することを防止することができる。あるいは、化学実験の場合も、作業者の手などに強酸、強アルカリ等の薬品が飛散し、皮膚、粘膜等が損傷することを防ぐことができる。
【0038】
さらに、筒状容器立て1は、中間層部2bを上層部2aおよび下層部2cとは別体に形成し、間に挟持させて着脱自在な構成とし、必要に応じて接着させれば、製造が容易であるため、製造コストを低く抑えることができ、また、使用により中間層部2bの特に凸部7が磨耗や切断により破損したときには、中間層部2bのみ新しい部材に換えることができるため、長期間使用することができ、使用コストも低く抑えることができる。
【0039】
次に図6を参照して、本発明の他の実施形態に係る筒状容器立て100について説明する。なお、すでに説明した構成について同じ符号を付して説明を省略する。
【0040】
支持脚8は、保持部2または把持部5の少なくとも一方の底面に突出して設けられている。この支持脚8の役割は、保持部2に筒状容器50を挿入し貫通した状態で、テーブル等の平坦な場所に筒状容器立て100を静置させるためのものである。ここでは、支持脚8は、立上部4の底面と把持部5の底面の一部にわたって突設されている。そして、保持部2の底面から筒状容器50を突出した状態とし、支持脚8は、その筒状容器50の底を他方の脚部として利用して、筒状容器立て100をテーブル上に静置させるように構成している。このような構成とした筒状容器立て100では、テーブル等の平坦な場所に支持脚8を用いて保持部2から下方に貫通して露出した筒状容器50の部分を観察することができる。また、支持脚8は、把持部5をテーブル面から上方に位置させるので、作業者が把持部5を持ち易い状態とする。
なお、支持脚8の大きさを、当該支持脚8のみで筒状容器立て100に筒状容器50を保持した状態でテーブルに静置できる面積に形成させても構わない。
【0041】
また、筒状容器立て100は、図6では、保持した筒状容器50がテーブル上に安置する一方の脚部として機能しているので、支持脚8が保持部2または把持部5の一方のみに設けられている場合でも、筒状容器立て1を安定して直立させることができる。もちろん、保持部2または把持部5の両方に、支持脚8が形成されていても構わないし、立上部4を下方へ延長して形成してもよい。
【0042】
さらに、筒状容器立て1、100は、その把持部5、指保護部6および支持脚8の各構成について、例えば、図7(a)〜(h)および図8(a)〜(d)に示すように構成しても構わない。すなわち、図7(a)に示すように、指保護部6Aが把持部5より幅広となるように構成することや、あるいは、図7(b)に示すように、把持部5Aが指保護部6より幅広となるようにしても構わない。また、把持部5は、例えば、図7(c)に示すように、作業者が持ちやすいように立上部4の側面から手指で握ることができる円柱を突設した取っ手状あるいはドアノブ状に形成する構成としてもよく、作業者が手指で把持できる形状であればその形状、取付位置等が限定されるものではない。
【0043】
また、図1では、保持部2の底面と把持部5の底面とを同一平面になるように構成して説明したが、図7(d),(f)に示すように、把持部5を保持部2の底面より高くなる位置に配置する構成としてもよい。さらに、指保護部6は、立上部4の上端に当該立上部4と直交する方向に設けた構成として説明したが、図7(e),(f)に示すように、作業者が把持部5を把持できる間隔であれば、立上部4の中段位置等に設ける構成としても構わない。そして、指保護部6の形状は、平坦な板形状として図示しているが、図7(g)に示すように、湾曲した形状に形成する等、また、図7(h)に示すように、把持部5を把持した手指の上方を覆い保護することができる形状、広さ、あるいは、長さを有していれば限定されるものではない。
【0044】
さらに、支持脚8として、保持部2を正面から見たときに、図8(a)に示すように、その保持部2の底面または、保持部2から把持部5の底面に亘って、左右端に直方体形状に形成することや、図8(b)に示すように、柱状に保持部2および把持部5の底面における四隅あるいは、図8(c)に示すように、底面の二隅と底面の他の一箇所に突設して4点支持あるいは、図8(d)に示すように、3点支持の支持脚として設ける構成としても構わない。
また、筒状容器立て1,100は、機械加工により、あるいは、金型により全体を一体に形成することや、また、部分的に形成したパーツを接続して形成すること等であっても構わない。筒状容器立て1,100は、接続して全体を形成する場合には、接着剤あるいは接着シートを介して接続することや、熱により溶着することで接続しても構わない。
【符号の説明】
【0045】
1,100 筒状容器立て
2 保持部
2A 保持本体
2a 上層部
2b 中間層部
2c 下層部
3 保持穴
3a 上層部保持穴
3b 中間層部保持穴
3c 下層部保持穴
4 立上部
5 把持部
5a 基部
5b 把手部
6 指保護部
7 凸部
8 支持脚
50 筒状容器
51 採血管
52 ゴム製蓋部
60 シリンジ
61 注射針

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収納する筒状容器を保持すると共に前記筒状容器を取り扱う作業者が把持することができる筒状容器立てであって、
前記筒状容器の側壁に当接して前記筒状容器を保持する保持穴を有する保持部と、
この保持部の一端側に設けられた把持部と、
この把持部に立上部を介し離間して当該把持部の上方に設けられた指保護部と、
を備えることを特徴とする筒状容器立て。
【請求項2】
前記保持部と前記把持部との底面が同一平面上に形成され、かつ前記保持部が前記立上部に隣接して設けられ、
前記立上部の上端に前記指保護部が設けられていると共に、前記立上部の下端に前記保持部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の筒状容器立て。
【請求項3】
前記保持部は、前記保持穴の穴内壁面から中心部に向かって、前記筒状容器に当接する弾性部材で形成された凸部が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の筒状容器立て。
【請求項4】
前記保持部、前記把持部、前記立上部および前記指保護部は、プラスチック製発泡体で形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の筒状容器立て。
【請求項5】
前記保持部は、上層部と下層部と、前記上層部と前記下層部の間にはさみこまれた中間層部とからなり、前記上層部の保持穴と前記下層部の保持穴と前記中間層部の保持穴とが一致するように配置され、前記中間層部の保持穴の穴内壁面から中心部に向かって前記筒状容器に当接する弾性部材で形成された凸部が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の筒状容器立て。
【請求項6】
前記保持部の下面および前記把持部の下面の一方または両方に、平坦面に支持するための支持脚を突出して形成し、かつ前記保持部の保持穴は、貫通して形成されたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の筒状容器立て。




















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−202271(P2010−202271A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−52599(P2009−52599)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(000125369)学校法人東海大学 (352)
【Fターム(参考)】