説明

筒状密封包装体及びその製造方法

【課題】製造工程中に封筒貼りの筒状密封包装体の製造歩留まりが低下するのを防ぐことができるとともに、直線部の耳部で裂けにくい構造形態を有する封筒貼りの筒状密封包装体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】フィルムの長手方向に直交する左右両側の縁部のうち一方の縁部と他方の縁部とが重ね合わされ且つシールされた封筒貼りの筒状本体部2と、筒状本体部2内に充填されている内容物3と、筒状本体部2の長手方向の両端部が結束されて内容物3を密封する結束部4と、を有し、一方の縁部のシールされない端部が耳部1となり、耳部及びシールされた部分のうち少なくとも耳部であって、筒状本体部の長手方向の両端部の湾曲部以外の部分に易開封手段が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソーセージやチーズ等の柔軟性のある食品が包装される封筒貼りの筒状密封包装体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ソーセージやチーズ等の柔軟性のある食品(以下、柔軟性食品ともいう。)を密封した筒状包装体(以下、筒状密封包装体という。)が知られている。この筒状密封包装体は、柔軟性食品を充填する又は充填したチューブの両端を金属製の結束部材で結束したり、ヒートシールにより結束したりして製造されている。筒状密封包装体の製造は、一例として熱収縮性フィルムを用い、皺等が生じないようにして包装体を形成し、その後の加熱殺菌時に包装体を熱収縮させて柔軟性食品を密封包装して行われている。
【0003】
こうした筒状密封包装体を開封するには、柔軟性食品を包装したフィルムにナイフや包丁等の刃をあてて切り裂くことが必要であり、手間と時間がかかって利便性に欠けるとともに危険性を伴うことが多かった。そのため、フィルムの重ね合わせ部に易開封手段を設けることが提案されている。
【0004】
易開封手段は今までに種々検討されている。例えば特許文献1には、開封用の耳部を形成し、この耳部に多数の微細な孔を形成した筒状密封包装体が提案されている。また、特許文献2には、フィルムの耳部を形成し、この耳部に多数の易開封手段を形成した封筒貼りの筒状密封包装体が提案されている。また、特許文献3には、外層フィルムと中間層フィルムとの間の剥離強度を、内層フィルムと中間層フィルムとの間の剥離強度よりも小さく設定し、さらに、フィルムの重ね合わせ部に開封手段として傷痕を設けた複合樹脂フィルムを用いて封筒貼りの筒状密封包装体を作製することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63−12471号公報
【特許文献2】特開平6−153773号公報
【特許文献3】特開2002−219777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜3等の筒状密封包装体の耳部には、易開封手段としてチューブ両端の結束部にまで多数の微細な孔が形成されている。そのため、柔軟性食品を充填した筒状密封包装体の製造工程中に加わる力(圧力や衝撃力等)や耳部を引っ掛けることにより、その結束部付近の湾曲部にある耳部ではフィルムが裂けやすく、柔軟性食品が外に飛び出す不具合が生じるおそれがあった。
【0007】
特に、特許文献2,3に記載の封筒貼りの筒状密封包装体では、切線や細孔を耳部に設けて、より容易に開封することを検討した。しかしながら、こうして構成した封筒貼りの筒状密封包装体は、耳部で開封しやすくなったものの、結束部付近の湾曲部にある耳部ではフィルムの強度が低下し、裂けやすくなる傾向があった。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、製造工程中に封筒貼りの筒状密封包装体の結束部付近の湾曲部が裂けて、製造歩留まりが低下するのを防ぐことができるとともに、湾曲部以外の直線部のシール部で裂けにくい構造形態を有する封筒貼りの筒状密封包装体及びその製造方法を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、封筒貼りの筒状密封包装体及びその製造方法で用いる包装用フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、易開封手段を有する封筒貼りの筒状密封包装体とその製造方法について鋭意研究する過程で、耳部のうち筒状の本体部(以下、筒状本体部という。)の長手方向の両端部にある結束部付近の湾曲部以外に易開封手段を設けた。これにより、製造工程中にその湾曲部に力が加わった場合や耳部を引っ掛けた場合でも、フィルムが裂けるのを防止できることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
上記課題を解決するための本発明に係る筒状密封包装体は、フィルムの長手方向に直交する左右両側の縁部のうち一方の縁部と他方の縁部とが重ね合わされ且つシールされた封筒貼りの筒状本体部と、該筒状本体部内に充填されている内容物と、前記筒状本体部の長手方向の両端部が結束されて前記内容物を密封する結束部と、を有し、前記一方の縁部のシールされない端部が耳部となり、該耳部及びシールされた部分の少なくとも該耳部側の部分であって、前記筒状本体部の長手方向の両端部の湾曲部以外の部分に易開封手段が設けられていることを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、封筒貼りの筒状本体部の耳部及びシールされた部分の少なくとも耳部側の部分であって、筒状本体部の長手方向の両端部の湾曲部以外の部分に易開封手段が設けられているので、その耳部から容易に開封することができる。一方、その湾曲部には易開封手段が設けられていないので、湾曲部に力が加わった場合であっても、湾曲部はシール部で裂けにくく、内容物が外に飛び出すことがない。その結果、こうした構造形態を有する封筒貼りの筒状密封包装体を製造する場合の歩留まりが高まり、製造コストの低下を実現することができる。
【0013】
本発明に係る筒状密封包装体において、前記易開封手段が、前記耳部及び前記シールされた部分の少なくとも該耳部側に形成された複数の切線又は細孔の少なくとも1種であり、該切線又は細孔が前記筒状本体部の長手方向と直交する方向に形成されていることが好ましい。
【0014】
この発明によれば、易開封手段が、耳部及びシールされた部分の少なくとも耳部側に形成された複数の切線又は細孔の少なくとも1種であり、切線又は細孔が筒状本体部の長手方向と直交する方向に形成されているので、耳部を容易に裂いて筒状密封包装体を容易且つ迅速に開封することができる。
【0015】
上記課題を解決するための本発明に係る筒状密封包装体の製造方法は、帯状フィルムの長手方向に直交する左右両側の縁部のうち一方の縁部に、易開封手段形成部及び易開封手段非形成部を設ける工程と、前記一方の縁部のうち端部以外のシールされる部分が他方の縁部の端部に重なるよう封筒貼りにより重ね合わせる工程と、重ね合わせた部分をシールして前記一方の縁部の端部を耳部とした筒状本体部を得る工程と、前記筒状本体部内に内容物を充填する工程と、前記筒状本体部の長手方向の一端部での結束を前記易開封手段非形成部で行う工程と、前記筒状本体部の長手方向の他の一端部での結束を前記易開封手段非形成部で行って前記内容物を前記筒状本体部内に密封する工程と、を有することを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、予め帯状フィルムの長手方向に直交する左右両側の縁部のうち一方の縁部に易開封手段形成部及び易開封手段非形成部を設ける工程を有し、さらに、その縁部を他方の縁部に封筒貼りにより重ね合わせ且つシールして筒状本体部を得、さらにその筒状本体部の長手方向での結束を、易開封手段非形成部で行って筒状包装体を製造する。こうして製造された筒状本体部の耳部のうち、該筒状本体部の長手方向の両端部の湾曲部以外の耳部には易開封手段が設けられているので、その耳部から容易に開封できる筒状密封包装体を製造することができる。一方、その湾曲部には易開封手段が設けられていないので、湾曲部に力が加わった場合であっても、湾曲部は裂けにくく、内容物が外に飛び出すことがない筒状密封包装体を製造することができる。その結果、こうした構造形態を有する封筒貼りの筒状密封包装体の製造時の歩留まりが高まり、製造コストの低下を実現することができる。さらに、製造された封筒貼りの筒状密封包装体を搬送中に振動や衝撃により湾曲部に力が加わった場合であっても、湾曲部は裂けにくく、内容物が外に飛び出すことを防止することができる。
【0017】
本発明に係る筒状密封包装体の製造方法において、前記易開封手段が、前記耳部及び前記シールされた部分の少なくとも該耳部側に形成された複数の切線又は細孔の少なくとも1種であり、該切線又は細孔が前記筒状本体部の長手方向と直交する方向に形成されていることが好ましい。
【0018】
この発明によれば、易開封手段が、耳部及びシールされた部分の少なくとも耳部側に形成された複数の切線又は細孔の少なくとも1種であり、切線又は細孔が筒状本体部の長手方向と直交する方向に形成されている易開封手段が、耳部の長手方向に直交する方向に形成された複数の切線又は細孔の少なくとも1種以上であるので、耳部を容易に裂いて筒状本体部を容易且つ迅速に開封できる筒状密封包装体を製造することができる。
【0019】
上記課題を解決するための本発明に係る包装用フィルムは、帯状フィルムの長手方向に直交する左右両側の縁部のうち一方の縁部に、易開封手段形成部及び易開封手段非形成部が設けられ、柔軟性食品用として用いられることを特徴とする。
【0020】
この発明によれば、帯状フィルムの長手方向に直交する左右両側の縁部のうち一方の縁部に、易開封手段形成部及び易開封手段非形成部が設けられ、柔軟性食品用として好ましく用いられる。こうした包装用フィルムは封筒貼りの筒状密封包装体を製造するためのフィルムとして利用することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る筒状密封包装体によれば、湾曲部には易開封手段が設けられていないので、湾曲部に力が加わった場合や耳部を引っ掛けた場合であっても、湾曲部は裂けにくく、内容物が外に飛び出すことがない。その結果、こうした構造形態を有する封筒貼りの筒状密封包装体を製造する場合の歩留まりが高まり、製造コストの低下を実現することができる。
【0022】
本発明に係る筒状密封包装体の製造方法によれば、湾曲部には易開封手段が設けられていないので、湾曲部に力が加わった場合や耳部を引っ掛けた場合であっても、湾曲部は裂けにくく、内容物が外に飛び出すことがない筒状密封包装体を製造することができる。その結果、こうした構造形態を有する封筒貼りの筒状密封包装体の製造時の歩留まりが高まり、製造コストの低下を実現することができる。さらに、製造した封筒貼りの筒状密封包装体を搬送中に振動や衝撃により湾曲部に力が加わった場合や耳部を引っ掛けた場合であっても、湾曲部は裂けにくく、内容物が外に飛び出すことを防止することができる。
【0023】
本発明に係る包装用フィルムによれば、封筒貼りの筒状密封包装体を製造するためのフィルムとして利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る筒状密封包装体の一例を示す斜視図である。
【図2】図1のX−Xの断面図である。
【図3】図1のY−Y矢視図である。
【図4】耳部を示す説明図である。
【図5】帯状フィルム(包装用フィルム)を示す説明図である。
【図6】易開封手段の種々の形態を示す説明図である。
【図7】本発明に係る筒状密封包装体の製造装置の一例を示す構成図である。
【図8】本実施の形態の筒状密封包装体の製造工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る筒状密封包装体及びその製造方法について、図面を参照して詳しく説明する。なお、本発明は、その技術的特徴を有すれば種々の変形が可能であり、以下に具体的に示す実施形態に限定されるものではない。
【0026】
[筒状密封包装体]
図1は、本発明に係る封筒貼りの筒状密封包装体100としての魚肉ソーセージの例である。本発明に係る筒状密封包装体100は、図1〜図5に示すように筒状密封包装体では、フィルムの長手方向に直交する左右両側の縁部20,21のうち一方の縁部20と他方の縁部21の端部22とが重ね合わされ且つシールされている。封筒貼りの筒状本体部2と、筒状本体2部内に充填されている内容物3と、筒状本体部2の長手方向の両端部が結束されて内容物3を密封する結束部4と、を有している。そして、一方の縁部21のシールされない端部8が耳部1となり、その耳部1及びシールされた部分9のうち少なくとも耳部であって、筒状本体部2の長手方向の両端部の湾曲部以外の部分に易開封手段が設けられている。
【0027】
以下、各構成について詳しく説明する。
【0028】
(筒状本体部)
筒状本体部2は、図4及び図5に示すように、フィルムの長手方向に直交する左右両側の縁部20,21のうち、一方の縁部20のシールされない端部8と他方の縁部21の端部22とが重ね合わされ且つシールされて形成されている。重ね合わせる方法は、フィルムの表面31と裏面30の異なる面を互いに接触させて重ね合わせる「封筒貼り」である。形成された筒状本体部2は、後述する結束工程前までは、上端部と下端部が開口した筒形状となっている。
【0029】
筒状本体部2を構成する樹脂は、熱収縮性を有する塩化ビニリデン系樹脂が好ましく用いられるがこれらに限定されない。樹脂としては、具体的には、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン−メチルメタクリレート共重合体、塩化ビニリデン−塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等を挙げることができる。樹脂には、必要に応じて添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、染料顔料等の着色剤、等を挙げることができる。
【0030】
筒状本体部2の厚さは、通常30μm〜50μmの範囲である。なお、「長手方向」とは、筒状本体部の縦長方向をいう。「直交」とは、長手方向に垂直する方向をいう。「左右両側」とは、フィルムの左側及び右側をいう。「縁部」とは、フィルムの左右の両端側をいう。「端部」とは、縁部のうち両端部をいう。「重ね合わせ」とは、フィルムの左右両側の縁部の表面又は裏面の異なる面を接触させることをいう。「シール」とは、重ね合わせた部分を貼り合わせることをいう「封筒貼り」とは、フィルムの表裏の異なる面を互いに接触させて重ね合わせるフィルムの貼り合せ方法をいう。
【0031】
シールされる部分9は、図3〜図5に示すように、筒状本体部2の左右両側の一方の縁部20のうちシールされない端部8以外の部分である。この部分を筒状本体部2の他方の縁部21の端部22に重ねあわせてシールすることによって、シールされない端部8が耳部1となる。シールする方法は、ヒートシールが好ましく適用されるが、それ以外の方法であってもよい。例えば、接着剤等が用いられる。ヒートシールとしては、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等を挙げることができる
【0032】
耳部1は、図4及び図5に示すように、筒状本体部2の長手方向に直交する左右両側の縁部20,21のうち一方の縁部20のシールされない端部8である。図1及び図2に示すように、耳部1は、湾曲部6以外の直線部7に設けられた易開封手段形成部1Aと、湾曲部6に設けられた易開封手段非形成部1Bとで構成されている。なお、易開封手段形成部1Aには易開封手段が設けられており、易開封手段非形成部1Bには易開封手段が設けられていない。耳部1の幅は、通常2mm〜20mmである。
【0033】
(易開封手段)
易開封手段は、図1、図2、図4及び図5に示すように、耳部1(シールされない端部8)及びシールされる部分9のうち少なくとも耳部であって、直線部7の易開封手段形成部1Aに設けられている。易開封手段は、図5に示すように、耳部1に形成されているとともに、シールされる部分9の耳部側にも形成されていてもよいが、必ずしもシールされる部分9に易開封手段を設ける必要はない。易開封手段が、シールされる部分9の耳部側に形成されていれば、その耳部側の一部に形成されていてもよいし、シールされる部分の全てに形成されていてもよい。このように易開封手段をシールされる部分9にも設けた場合、易開封手段を耳部1だけに設けるための精密な位置合わせを行う必要がなくなり、製造工程が簡易なものとなる。また、易開封手段をシールされる部分9にも設けると、この易開封手段により耳部1を容易に引き裂くことができ、筒状本体部2を容易に開封することができる。
【0034】
直線部7は、図1及び図2に示すように、筒状密封包装体の湾曲部6を除いた部分であり、その直線部7には易開封手段形成部1Aが形成されている。一方、湾曲部6は、図1及び図2に示すように、筒状本体部2の長手方向の両端部を結束させた場合に形成される筒状密封包装体の半球面等の曲面部であり、易開封手段非形成部1Bが形成されている。
【0035】
易開封手段は、図6に示すように、多数の切線(ハーフカットを含む)5A、細孔5B等のいずれであってもよく、これらの先端にさらにノッチ5C(Vノッチ、Iノッチ)が設けられていてもよい。
【0036】
図6(a)〜(c)は、易開封手段形成部1Aに設けられた易開封手段の例である。図6(a)は、耳部1の幅方向Wの全てと、シールされる部分9の耳部側との所定幅W1とに切線5Aが設けられた一例である。この切線5Aは、耳部1の幅方向Wに沿ってミシン目状の断続した形態で設けられ、長手方向Lに等間隔のピッチで設けられている。なお、切線5Aは、長手方向Lに等間隔のピッチで交互に同じ形態の切線又は異なる形態の切線で設けられる。
【0037】
図6(b)は、耳部1の幅方向Wの全てと、シールされる部分9の耳部側の所定幅W1とに細孔5Bが設けられた一例である。この細孔5Bは、耳部1の幅方向Wに沿ってミシン目状の断続した形態で設けられ、長手方向Lに等間隔のピッチで設けられている。なお、細孔5Bも、長手方向Lに等間隔のピッチで交互に同じ形態の細孔又は異なる形態の細孔で設けられる。図6(c)は、図6(a)の形態において、シールされない部分8のみに切線5Aが設けられ、耳部1の幅方向Wの端部(シールされる部分9側の反対側の端部のこと)にノッチ5Cが設けられた例である。このノッチ5Cは、長手方向Lに等間隔のピッチで設けられている。図6(c)は、シールされる部分9に易開封手段を設けていない例である。
なお、必ずしもシールされる部分9に易開封手段を設ける必要はない。
【0038】
図6(a)〜図6(c)において、個々の切線5Aの長さは特に限定されないが、通常0.5mm〜2mm程度であり、個々の細孔5Bの直径も特に限定されないが、通常1mm〜2mm程度であり、ノッチ5Cの切り込み深さW2も特に限定されないが、通常1mm〜3mm程度である。
【0039】
易開封手段の形成方法は、(ア)ダイヤモンドの粉末を付着させたローラーと受けローラーとの間に、帯状フィルム13の長手方向に直交する左右両側の縁部20,21のうち、一方の縁部20を通してその縁部20に細孔を多数設ける方法、(イ)切り込み用の小さな刃を円周上に設けた回転刃と受けローラーとの間、又は小さな刃を円周上に多数設けた加圧ローラーと位置決めローラーとの間に、帯状フィルム13の長手方向に直交する左右両側の縁部20,21のうち、一方の縁部20を通して切線5A又は細孔5B、又はこれらの先端にさらにノッチ5Cを設ける方法等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
(結束部)
結束部4は、図1〜図4に示すように、筒状本体部2の長手方向の両端部が結束されている部位である。この結束部4によって、筒状本体部2内に充填された内容物3を密封する。結束部4を形成するための手段は特に限定されるものではない。具体的には、筒状本体部2の長手方向の両端部に、筒状本体部2の周方向に金属カシメ具(金属性の結束部材)4を用いて結束する方法、筒状本体部2の両端部を合成樹脂のテープで束ねてヒートして結束する方法等が挙げられる。
【0041】
ここで用いる合成樹脂のテープとしては、帯状フィルムの材質と同様に、塩化ビニリデン系樹脂が好ましい。塩化ビニリデン系樹脂としては、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン−メチルメタクリレート共重合体、又は塩化ビニリデン−塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等を挙げることができる。なお、合成樹脂のテープを用いずに、筒状本体部2の両端部を束ねた部分に直接ヒートシールして結束してもよい。
【0042】
こうした結束部4を設けることにより、筒状本体部2の両端部に湾曲部6が形成される。内容物3が充填された筒状本体部2は、結束部4によって、筒状密封包装体100を内容物3が漏れない程度の密封性をもって結束される。
【0043】
(内容物)
内容物3は、筒状本体部2に密封状態で充填されたものであり、ここでは、そうした食品として、柔軟性を有する食品を挙げることができる。例えば、魚肉ソーセージや蒲鉾等の魚肉練製品、獣肉練製品、羊羹やういろう等の練菓子、チーズ等が挙げられるが、これらに特に限定されるものではない。
【0044】
以上、本発明に係る筒状密封包装体100によれば、封筒貼りの筒状本体部2の耳部1のうち、湾曲部6以外の耳部1とシール部の少なくとも耳部1には易開封手段が設けられ、湾曲部6の耳部1とシール部には易開封手段が設けられていない。そのため、易開封手段が設けられていない湾曲部6に力が加わった場合であっても、湾曲部6は裂けにくく、内容物3が外に飛び出すことがない。その結果、こうした構造形態を有する封筒貼りの筒状密封包装体100の製造時の歩留まりが高まり、製造コストの低下を実現することができる。さらに、封筒貼りの筒状密封包装体を搬送中に振動や衝撃により湾曲部6に力が加わった場合であっても、湾曲部6は裂けにくく、内容物3が外に飛び出すことを防止することができる。
【0045】
[包装用フィルム]
本発明に係る包装用フィルム(帯状フィルム)13は、図5及び図7に示すように、長手方向に直交する左右両側の縁部20,21のうち一方の縁部20に、易開封手段形成部1A及び易開封手段非形成部1Bが設けられた柔軟性食品に用いられるフィルムである。
【0046】
柔軟性食品としては、魚肉ソーセージや蒲鉾等の魚肉練製品、獣肉練製品、羊羹やういろう等の練菓子、チーズ等が挙げられるが、これらに特に限定されるものではない。
【0047】
包装用フィルム13を構成する樹脂及び必要に応じて加える添加剤は、上記した筒状本体部2を構成する樹脂及び添加剤と同様であるので、ここではその説明を省略する。また、包装用フィルム13の厚さも、上記した筒状本体部2を構成するフィルムと同様である。また、易開封手段形成部1A及び易開封手段非形成部1Bも、上記したものと同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0048】
[筒状密封包装体の製造方法]
本発明に係る筒状密封包装体の製造方法は、図7に示すように、帯状フィルム13の長手方向に直交する左右両側の縁部20,21のうち一方の縁部20に、易開封手段形成部1A及び易開封手段非形成部1Bを設ける工程と、一方の縁部20のうち端部以外のシールされる部分9が他方の縁部21の端部22に重なるよう封筒貼りにより重ね合わせる工程と、重ね合わせた部分をシールして一方の縁部20の端部8を耳部1とした筒状本体部14を得る工程と、筒状本体部14内に内容物3を充填する工程と、筒状本体部14の長手方向の一端部での結束を易開封手段非形成部1Bで行う工程と、筒状本体部14の長手方向の他の一端部での結束を易開封手段非形成部1Bで行って内容物3を筒状本体部14内に密封する工程と、を有する。
【0049】
以下、図8の製造工程図に基づき、図7を参照しつつ各工程を説明する。なお、図8の結束工程は充填工程の直前に行ってもよい。
【0050】
(易開封手段形成部及び易開封手段非形成部を設ける工程)
易開封手段形成部1A及び易開封手段非形成部1Bの形成工程は、帯状フィルム13の長手方向に直交する左右両側の縁部20,21のうち、一方の縁部20に、易開封手段形成部1A及び易開封手段非形成部1Bを設ける工程である。この易開封手段形成部1Aは、耳部1に易開封手段が設けられた部分であり、易開封手段非形成部1Bは、耳部1に易開封手段が設けられていない部分である。耳部1が有する易開封手段形成部1Aと易開封手段非形成部1Bは、帯状フィルム13の長手方向の所定の位置にそれぞれ設けられる。
【0051】
易開封手段形成部1A及び易開封手段非形成部1Bを設ける手段は、種々の手段を適用できる。具体的には、図7に示すように、巻ロール12として塩化ビニリデン樹脂フィルムロールを準備し、次いで、その巻ロール12から引き出した帯状フィルム13を易開封手段形成装置10に供給する。易開封手段形成装置10は、位置決めローラー16で帯状フィルム13を位置決めした後、帯状フィルム13を切線形成用の幅4mmの加工ローラー17と受けローラー18との間に通し、帯状フィルム13の左右縁部20,21のうちの一方の縁部20に切線5A又は細孔5Bを形成する。このとき、帯状フィルム13の長手方向に、例えば160mmの長さで切線5A又は細孔5Bを設けた部分(易開封手段形成部1A)を形成するとともに、70mmの長さで切線5A又は細孔5Bを設けない部分(易開封手段非形成部1B)を形成する。なお、この易開封手段非形成部1Bは、結束部材で結束され、筒状密封包装体100の湾曲部6が形成されることになる。
【0052】
(縁部の重ね合わせ工程)
重ね合わせ工程は、帯状フィルム13の一方の縁部20のうち端部8以外のシールされる部分9が他方の縁部21の端部22に重なるよう封筒貼りにより重ね合わせる工程である。重ね合わせる手段については、各種の方法を適用できる。一例としては、図7に示すように、一方の縁部20に易開封手段形成部1Aと易開封手段非形成部1Bが設けられた帯状フィルム13を円筒状のホッパー15に巻きつけるようにして筒状とし、その縁部20のうち端部8以外のシールされる部分9が他方の縁部21の端部22に重なるように封筒貼りにより重ね合わせる。このとき、重ね合わせシールする部分9は、通常1mm〜4mm程度であり、端部8は、幅2mm〜10mm程度である。重ね合わせる面は、帯状フィルム13の表面と裏面の互いに異なる面となる。
【0053】
(筒状本体部形成工程)
筒状本体部形成工程は、重ね合わせ工程で重ね合わせた部分をシールして一方の縁部20の端部8(シールされない部分)を耳部1とした筒状本体部14を得る工程である。筒状本体部2の形成は、具体的には、図7に示すように、左右両側の縁部20,21を重ね合わせた部分をシールして、ホッパー15の周囲に巻かれた円筒状の整形筒で整形し、筒状本体部14を形成する。シールによって耳部1が連続して形成され、その耳部1はシール手段によって順次上方から下方にかけて連続して形成される。
【0054】
シール手段としては、図7に示すように、重ね合わせた縁部20,21をバー状のシール部材で形成される融着装置11を用いたヒートシール、特に高周波シール又は超音波シールを好ましく挙げることができる。
【0055】
(充填工程)
充填工程は、筒状本体部14内に内容物3を充填する工程である。充填手段は、種々の方法を適用できる。一例としては、内容物3として例えば魚肉練り肉を予め混練し、定量移送ポンプ(図示せず)によってホッパー15から筒状本体部14内に充填する。筒状本体部14の内容物3の充填率は、フィルムの収縮の程度を考慮し決定される。
【0056】
(一端部結束工程)
この結束工程は、筒状本体部14の長手方向の一端部での結束を易開封手段非形成部1Bで行う工程である。結束手段は、種々の方法を適用できる。一例としては、筒状本体部14の下側の易開封手段非形成部1Bを、結束部材としての金属カシメ具4や合成樹脂テープで束ねて結束したり、直接ヒートシールして結束する。
【0057】
(密封工程)
密封工程は、筒状本体部14の長手方向の上側の一端部での結束を易開封手段非形成部1Bで行って内容物3を筒状本体部14内に密封する工程である。密封手段は、種々の方法を適用できる。一例としては、内容物3が充填された筒状本体部14の上側の易開封手段非形成部1Bを、結束部材としての金属カシメ具4や合成樹脂テープで束ねて密封したり、直接ヒートシールして密封する。
【0058】
(その他の工程)
密封された筒状本体部14は、その後、切断され、必要に応じて加熱殺菌等されて筒状密封包装体が製造される。
【0059】
切断工程は、密封工程で結束した部分付近の筒状本体部を切断し、個別分離する工程である。切断手段は、種々を適用できる。一例としては、すでに下側の結束部材4の下で切断された筒状本体部14について、その上側の結束部材4の上を切断する。こうして一つの封筒貼りの筒状密封包装体100を製造する。製造した封筒貼りの筒状密封包装体100は、例えば全長200mm、易開封手段形成部1Aの長さ160mmの筒状密封包装体(魚肉ソーセージ)である。
【0060】
加熱殺菌工程は、筒状密封包装体100を加熱殺菌する工程であり、必要に応じて設けられる。加熱殺菌手段及び条件は、種々の方法を適用できる。一例としては、製造された筒状密封包装体(魚肉ソーセージ)を、例えば80℃で45分間、又は120℃で4分間加熱殺菌する。このとき、筒状密封包装体を構成する熱収縮性塩化ビニリデン樹脂フィルムは熱収縮させることもできる。
【0061】
以上説明したように、本発明に係る製造方法で製造した封筒貼りの筒状密封包装体(魚肉ソーセージ)100は、充填工程、密封工程、加熱殺菌工程等の製造工程において、易開封手段が設けられていない湾曲部に力が加わった場合や耳部を引っ掛けた場合であっても、湾曲部が裂けることがなく、魚肉練り肉等の内容物が外に飛び出すことがなかった。その結果、魚肉ソーセージ等の製品を製造する場合の歩留まりが高まり、製造コストを低減することができた。また、魚肉ソーセージ等の筒状密封包装体を搬送中に振動や衝撃等により湾曲部に力が加わったり、耳部を引っ掛けた場合でも、湾曲部が裂けやすい状態になることなく封筒貼りの筒状密封包装体を流通させることができた。
【符号の説明】
【0062】
1 耳部
1A 易開封手段形成部
1B 易開封手段非形成部
2 筒状本体部
3 内容物
4 金属カシメ具(金属製結束部材)
5A,5A’ 切線
5B 細孔
5C ノッチ
6 湾曲部
7 直線部
8 端部
9 シールされる部分(シールされた部分)
10 易開封手段形成装置
11 融着装置
12 巻ロール
13 帯状フィルム(包装用フィルム)
14 筒状本体部
15 ホッパー
16 位置決めローラー
17 加工ローラー
18 受けローラー
19 ガイドローラー
20 一方の縁部
21 他方の縁部
22 端部
30 裏面
31 表面
100 筒状密封包装体
101 筒状密封包装体の製造装置
W 耳部の幅方向
L 耳部の長手方向
W1 シールされる部分に設けられた易開封手段の所定幅
W2 ノッチの切り込み深さ










【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムの長手方向に直交する左右両側の縁部のうち一方の縁部と他方の縁部とが重ね合わされ且つシールされた封筒貼りの筒状本体部と、該筒状本体部内に充填されている内容物と、前記筒状本体部の長手方向の両端部が結束されて前記内容物を密封する結束部と、を有し、
前記一方の縁部のシールされない端部が耳部となり、該耳部及びシールされた部分のうち少なくとも該耳部であって、前記筒状本体部の長手方向の両端部の湾曲部以外の部分に易開封手段が設けられていることを特徴とする筒状密封包装体。
【請求項2】
前記易開封手段が、前記耳部及び前記シールされた部分のうち少なくとも該耳部に形成された複数の切線又は細孔の少なくとも1種であり、該切線又は細孔が前記筒状本体部の長手方向と直交する方向に形成されている、請求項1に記載の筒状密封包装体。
【請求項3】
帯状フィルムの長手方向に直交する左右両側の縁部のうち一方の縁部に、易開封手段形成部及び易開封手段非形成部を設ける工程と、
前記一方の縁部のうち端部以外のシールされる部分が他方の縁部の端部に重なるよう封筒貼りにより重ね合わせる工程と、
重ね合わせた部分をシールして前記一方の縁部の端部を耳部とした筒状本体部を得る工程と、
前記筒状本体部内に内容物を充填する工程と、
前記筒状本体部の長手方向の一端部での結束を前記易開封手段非形成部で行う工程と、
前記筒状本体部の長手方向の他の一端部での結束を前記易開封手段非形成部で行って前記内容物を前記筒状本体部内に密封する工程と、を有することを特徴とする筒状密封包装体の製造方法。
【請求項4】
前記易開封手段が、前記耳部及び前記シールされた部分のうち少なくとも該耳部に形成された複数の切線又は細孔の少なくとも1種であり、該切線又は細孔が前記筒状本体部の長手方向と直交する方向に形成されている、請求項3に記載の筒状密封包装体の製造方法。
【請求項5】
帯状フィルムの長手方向に直交する左右両側の縁部のうち一方の縁部に、易開封手段形成部及び易開封手段非形成部が設けられ、柔軟性食品用として用いられることを特徴とする包装用フィルム。









【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−43656(P2013−43656A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180693(P2011−180693)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000224101)藤森工業株式会社 (292)
【Fターム(参考)】