筒状部分を有するダブルラッシェル経編地及びそれを用いた衣料
【課題】交互にZ撚りないしZ巻回の糸とS撚りないしS巻回の糸をセットしなくても、筒状部分を有する捩れが防止されたダブルラッシェル経編地及びそれを用いた衣料を提供する。
【解決手段】コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸が(A)左撚の片撚糸、又は、非弾性糸の巻回方向が左回りの弾性糸カバードヤーンの場合に、ループが左回りの閉じ目を有する鎖編組織で更に糸が編み込まれているか、又は、(B)前記ルーピング組織で編みこまれている糸が右撚の片撚糸、又は、非弾性糸の巻回方向が右回りの弾性糸カバードヤーンの場合に、ループが右回りの閉じ目を有する鎖編組織で更に糸が編み込まれている筒状部分を有する捩れが防止されたダブルラッシェル経編地。
【解決手段】コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸が(A)左撚の片撚糸、又は、非弾性糸の巻回方向が左回りの弾性糸カバードヤーンの場合に、ループが左回りの閉じ目を有する鎖編組織で更に糸が編み込まれているか、又は、(B)前記ルーピング組織で編みこまれている糸が右撚の片撚糸、又は、非弾性糸の巻回方向が右回りの弾性糸カバードヤーンの場合に、ループが右回りの閉じ目を有する鎖編組織で更に糸が編み込まれている筒状部分を有する捩れが防止されたダブルラッシェル経編地。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状部分を有するダブルラッシェル経編地及びそれを用いた衣料に関するものであり、特に本発明は、筒状部分を有する捩れが防止されたダブルラッシェル経編地及びそれを用いた衣料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ダブルラッシェル経編機を用い、筒状部分を有するダブルラッシェル経編地及びそれを用いて衣料を形成する経編地からなる衣料は、ソックス、ストッキング、パンティストッキング、ガードル、ショーツ、ブリーフ、股引、ステテコなどのボトム類のインナー衣料、各種肌着用シャツなどのトップス類のインナー衣料、T−シャツ、ポロシャツなどのトップス類のアウター衣料、スパッツ、トレーニングパンツ、スポーツ用衣料、ジャケットその他の外衣、ネックウォーマー、レッグウォーマー、サポーターなどの補助的衣料、などの筒状部分を有する各種衣料に適用されている(下記特許文献1〜4参照)。
【0003】
通常、これらの衣料を形成するために使用される糸は、繊維を撚り合せた撚り糸や、弾性糸の場合はカバリング糸が用いられることが多い。撚糸は、通常、非弾性糸からなり、撚方向の定義を説明するための説明図である図1を引用して説明するなら図1(a1)及び図1(b1)の糸の断面方向の概略図(矢印の方向が撚り方向)、及び図1(a2)及び図1(b2)が、それぞれ(a1)及び(b1)の糸の側面模式図に示したように、通常、撚りの方向に応じ、Z撚り(左撚り)(糸の長さ方向下側を固定したと仮定して、撚り方向が左回り撚り:糸側面に表れる撚りの傾斜方向がZの文字の中間部分の傾斜方向と同方向の傾斜をしている)の糸が図1(a1)、(a2)で説明される糸であり、S撚り(右撚り)(糸の長さ方向下側を固定したと仮定して、撚り方向が右回り撚り:糸側面に表れる撚りの傾斜方向がSの文字の中間部分の傾斜方向と同方向の傾斜をしている)の糸が図1(b1)、(b2)で説明される糸とされている。このような撚糸で、片撚糸は、糸1本又は2本以上を引きそろえてZ方向(左撚り)又はS方向(右撚り)のいずれか一方の方向に撚りをかけた糸で、衣料形成用に広く用いられている糸である。このような片撚糸は通常非弾性繊維からなる非弾性糸である。
【0004】
また、弾性糸を衣料用に用いる場合には、ベーアー糸を用いる場合もあるが、弾性糸のゴムライクな肌触りを改善し、染色性の点からも、弾性糸を芯にして、その外側に各種非弾性糸を巻回したカバーリング糸(カバードヤーン)が、通常、よく使用されている。
【0005】
このようなカバードヤーンにも、前記非弾性糸の巻回方向が左回りのカバードヤーン(左回りの定義は、上記Z撚りと同方向を意味する。以下、これをZ巻回と略称する)と前記非弾性糸の巻回方向が右回りのカバードヤーン(右回りの定義は、上記S撚りと同方向を意味する。以下、これをS巻回と略称する)がある。
【0006】
このような、Z又はS撚りのいずれか一方の片撚糸を用いたり、弾性糸としてカバリング糸の巻回方向がZ巻回(左回り)またはS巻回(右回り)のいずれか一方のカバーリング糸を用いた場合に、その原因は定かではないが、片撚糸で、Z撚り(撚り方向が左回り撚り)の糸の場合には、その糸を用いて編み上げた場合に、撚り方向と反対方向、即ち右回り(S撚り)方向の解撚トルクが発生すると予想され、また、S撚り(撚り方向が右回り撚り)の糸の場合には、編み上げた場合に、撚り方向と反対方向、即ち左回り(Z撚り)方向の解撚トルクが発生するためではないかと推定され、また、弾性糸の場合はカバリング糸の巻回方向がZ巻回(左回り)か、S巻回(右回り)かで、コアーの弾性糸が撚られていない場合には、カバリング糸の巻回方向と反対方向の解撚トルクが発生するためではないかと推定され、これらの糸を用いて、筒状部分を有するダブルラッシェル経編地及びそれを用いた衣料を形成すると、歪が生じて得られた編地や衣料に捩れが発生してしまうという問題がある。編地や衣料には捩れに基づく比較的大きな皺が観測されることになる。
【0007】
そこで、下記特許文献5の[0009]に記載されているように交互にS撚り糸とZ撚り糸を配列して用いることも考えられる。
【0008】
しかし、ダブルラッシェルなどの経編の場合には、例えば、ダブルラッシェル経編機のガイドバーなどの幅は、130インチ(330.2cm)24ゲージ(2.54cm当り24本の編み針)即ち片面最高約3100本の糸を用いて、複数セット並列に目的の編地を編むので、表裏両面では、例えば最高6200本の糸を供給して、編むことになる。
【0009】
この場合、1本1本交互にZ撚り糸又はZ巻回の糸とS撚り糸又はS巻回の糸を配列してセットすることは非常に手間がかかると共に、例えば、編地製造中に、まとめて50本程度の糸切れが発生した場合には、目で糸を見ただけでは、どの糸がZ撚りないしZ巻回の糸で、どの糸がS撚りないしS巻回の糸かを見極めることは容易でなく、糸の供給先のビームのところまで1本1本さかのぼって確認して、再セットする必要があるため、修復に極めて多大の手間がかかるという問題がある。また、糸製造メーカーによっては、Z撚りないしZ巻回の糸しか製造していなかったり、S撚りないしS巻回の糸しか製造しておらず、同じ品質、性能を有するZ撚りないしZ巻回の糸とS撚りないしS巻回の糸とをペアーで入手出来ないこともしばしば生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−77544号公報
【特許文献2】特開2007−31879号公報
【特許文献3】実用新案登録第3117780号公報
【特許文献4】特開2005−54347号公報
【特許文献5】特開平5−125601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、1本1本交互にZ撚りないしZ巻回の糸とS撚りないしS巻回の糸をセットしなくても、筒状部分を有する捩れが防止されたダブルラッシェル経編地及びそれを用いた衣料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、本発明の筒状部分を有する捩れが防止されたダブルラッシェル経編地及びそれを用いた衣料は、次のものである。
【0013】
(1)コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で糸が編みこまれている筒状部分を有するダブルラッシェル経編地であって、
(A)前記ルーピング組織で編みこまれている糸が、左撚の片撚糸、又は、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が左回りのカバードヤーンの場合には、ループが左回りの閉じ目を有する鎖編であって、閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織で更に糸が編み込まれているか、
又は、
(B)前記ルーピング組織で編みこまれている糸が、右撚の片撚糸、又は、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が右回りのカバードヤーンの場合には、ループが右回りの閉じ目を有する鎖編であって、閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織で更に糸が編み込まれていることを特徴とする筒状部分を有する捩れが防止されたダブルラッシェル経編地。
【0014】
(2)前記(1)項に記載のダブルラッセル経編地においては、コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸のルーピング組織が、デンビー組織、コード組織、アトラス組織から選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
【0015】
(3)前記(1)又は(2)項に記載のダブルラッセル経編地においては、コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸のルーピング組織が、デンビー組織であるであることが好ましい。
【0016】
(4)前記(1)〜(3)項のいずれか1項に記載のダブルラッセル経編地においては、閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織を構成する糸が、無撚りフィラメント糸、左撚りの片撚糸、右撚りの片撚糸、諸撚り糸、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が右回りのカバードヤーンないし左回りのカバードヤーンから選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
【0017】
(5)前記(1)〜(3)項のいずれか1項に記載のダブルラッセル経編地においては、前記ルーピング組織で編みこまれている糸が、前記(A)の左撚の片撚糸、又は、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が左回りのカバードヤーンの場合には、用いるループが左回りで閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織を構成する糸が、無撚りフィラメント糸、右撚りの片撚糸、又は、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が右回りのカバードヤーンから選ばれた少なくとも1種の糸であり、
前記ルーピング組織で編みこまれている糸が、前記(B)の右撚の片撚糸、又は、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が右回りのカバードヤーンの場合には、用いるループが右回りで閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織を構成する糸が、無撚りフィラメント糸、左撚の片撚糸、又は、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が左回りのカバードヤーンから選ばれた少なくとも1種の糸であるであることが好ましい。
【0018】
(6)また、前記(1)〜(5)項のいずれか1項に記載のダブルラッセル経編地において、閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織の閉じ目の割合が80%以上であることが好ましい。
【0019】
(7)前記(1)〜(5)項のいずれか1項に記載のダブルラッセル経編地においては、閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織の閉じ目の割合が100%であることが好ましい。
【0020】
(8)前記(1)〜(7)項のいずれか1項に記載のダブルラッセル経編地においては、前記閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織を構成する糸が、非弾性糸からなることが好ましい。
【0021】
(9)前記(1)〜(8)項のいずれか1項に記載のダブルラッセル経編地においては、前記コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸が、弾性糸を芯糸とする非弾性繊維によりカバーされたカバードヤーンを含むことが好ましい。
【0022】
(10)前記(1)〜(9)項のいずれか1項に記載のダブルラッセル経編地においては、前記コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸が、全ウェールフルセットで編みこまれ、全ウェールの50%以上に前記閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織を構成する糸が編みこまれていることが好ましい。
【0023】
(11)前記(1)〜(10)項のいずれか1項に記載のダブルラッセル経編地においては、前記コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸が、全ウェールフルセットで編みこまれ、前記閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織を構成する糸が、全ウェールフルセットで編みこまれていることが好ましい。
【0024】
(12)前記(1)〜(11)項のいずれか1項に記載のダブルラッセル経編地においては、前記片撚糸が単糸及び双糸から選ばれた少なくとも1種の片撚糸であることが好ましい。
【0025】
(13)また、本発明の衣料は、前記(1)〜(12)項のいずれか1項に記載のダブルラッセル経編地を用いて形成された筒状部分を有する捩れが防止された衣料である。
【0026】
(14)前記(13)項に記載の衣料においては、衣料が、ネックウォーマー、レッグウォーマー、サポーター、ソックス、ストッキング、パンティストッキング、ガードル、ショーツ、ブリーフ、股引、ステテコ、肌着用シャツ、T−シャツ、ポロシャツ、スパッツ、トレーニングパンツ、スポーツ用衣料、外衣類のいずれかであることが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
(1)本発明の前記(1)〜(11)項に記載の筒状部分を有するダブルラッシェル経編地は、編地に捩れの発生しやすい前記コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸として(A)左撚の片撚糸とかカバリング糸が左巻回のカバードヤーン、或いは、(B)右撚の片撚糸とかカバリング糸が右巻回のカバードヤーンを用いる場合に、それぞれ(A)の糸を用いた場合には、ループが左回りの閉じ目を有する鎖編であって、閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織で更に糸が編み込まれている編組織とし、(B)の糸を用いた場合には、ループが右回りの閉じ目を有する鎖編であって、閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織で更に糸が編み込まれている編組織とすることにより、筒状部分を有する捩れのないダブルラッシェル経編地を提供できる。従って、前記コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸として、Z撚り糸とS撚り糸、或いは、Z巻回カバードヤーン(カバリングされた弾性糸)、S巻回カバードヤーンを1本1本交互に編込む必要がなく、容易に筒状部分を有する捩れのないダブルラッシェル経編地を提供できる。従って、編成中に複数本の糸切れが発生した場合でも、1本1本、Z撚り糸かS撚り糸か、或いは、Z巻回カバードヤーンか、S巻回カバードヤーンなのかを確認する作業や、それを交互にどの編み針に供給するのかを検討する手間が解消され、容易に筒状部分を有する捩れのないダブルラッシェル経編地を提供できる。
【0028】
(2)前記(1)項に記載のダブルラッセル経編地においては、コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸のルーピング組織が、デンビー組織、コード組織、アトラス組織から選ばれた少なくとも1種である本発明の好ましい態様とすることにより、よく採用される比較的ポピュラーな編組織で筒状部分を有する捩れのないダブルラッシェル経編地を提供でき好ましい。
【0029】
(3)また、前記(1)〜(2)項のいずれか1項に記載のダブルラッシェル経編地において、コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸のルーピング組織が、デンビー組織である本発明の好ましい態様とすることにより、極めてよく採用される最もポピュラーな編組織で筒状部分を有する捩れのないダブルラッシェル経編地を提供でき好ましい。
【0030】
(4)また、前記(1)〜(3)項のいずれか1項に記載のダブルラッシェル経編地において、閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織を構成する糸が、無撚りフィラメント糸、左撚り(Z撚り)糸、右撚り(S撚り)糸、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が左巻回(Z巻回)のカバードヤーン或いは右巻回(S巻回)のカバードヤーンから選ばれた少なくとも1種である本発明の好ましい態様とすることにより、閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織を構成する糸として、無撚りフィラメント糸、左撚りの片撚糸、右撚りの片撚糸、諸撚り糸、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が右回りのカバードヤーンないし左回りのカバードヤーンから選ばれた少なくとも1種いずれの糸を使用しても、筒状部分を有する捩れのないダブルラッシェル経編地を提供でき好ましい。
【0031】
(5)また、前記(1)〜(3)項のいずれか1項に記載のダブルラッセル経編地において、前記コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸が、前記(A)の左撚の片撚糸、又は、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が左回りのカバードヤーンの場合には、用いるループが左回りで閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織を構成する糸が、無撚りフィラメント糸、右撚りの片撚糸、又は、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が右回りのカバードヤーンから選ばれた少なくとも1種の糸であり、
前記コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸が、前記(B)の右撚の片撚糸、又は、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が右回りのカバードヤーンの場合には、用いるループが右回りで閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織を構成する糸が、無撚りフィラメント糸、左撚の片撚糸、又は、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が左回りのカバードヤーンから選ばれた少なくとも1種の糸であるである本発明の好ましい態様とすることにより、前記ルーピング組織で編みこまれている糸による捩れの発生が比較的大きい場合でも、筒状部分を有するダブルラッシェル経編地の捩れを十分防止でき好ましい。
【0032】
(6)また、前記(1)〜(5)項のいずれか1項に記載のダブルラッシェル経編地において、閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織の閉じ目の割合が80%以上である本発明の好ましい態様とすることにより、筒状部分を有するダブルラッシェル経編地の捩れをより確実に防止でき好ましい。
【0033】
(7)また、前記(1)〜(5)項のいずれか1項に記載のダブルラッセル経編地においては、閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織の閉じ目の割合が100%である本発明の好ましい態様とすることにより、筒状部分を有するダブルラッシェル経編地の捩れを更に一層確実に防止でき好ましい。
【0034】
(8)また、前記(1)〜(7)項のいずれか1項に記載のダブルラッセル経編地において、前記閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織を構成する糸が、非弾性糸からなる本発明の好ましい態様とすることにより、この糸を弾性糸とする場合に比べて、比較的しっかりした地合いの筒状部分を有する捩れのないダブルラッシェル経編地を提供でき好ましい。
【0035】
(9)また、前記(1)〜(8)項のいずれか1項に記載のダブルラッセル経編地において、前記コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸が、弾性糸を芯糸とする非弾性繊維によりカバーされたカバードヤーンを含む本発明の好ましい態様とすることにより、伸縮性を有する安定な組織の捩れのないダブルラッシェル経編地を提供でき好ましい。
【0036】
(10)また、前記(1)〜(9)項のいずれか1項に記載のダブルラッセル経編地においては、前記コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸が、全ウェールフルセットで編みこまれ、全ウェールの50%以上に前記閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織を構成する糸が編みこまれている本発明の好ましい態様とすることにより、全ウェールの50%以上に編地の捩れの発生を抑制する前記特定の鎖編組織の糸が編みこまれているので、捩れのないダブルラッシェル経編地を提供でき好ましい。
【0037】
(11)また、前記(1)〜(10)項のいずれか1項に記載のダブルラッセル経編地において、前記コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸が、全ウェールフルセットで編みこまれ、前記閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織を構成する糸が、全ウェールフルセットで編みこまれている本発明の好ましい態様とすることにより、より一層捩れが防止され、且つ、しっかりした地合いの筒状部分を有する捩れのないダブルラッシェル経編地を提供でき好ましい。
【0038】
(12)また、前記(1)〜(11)項のいずれか1項に記載のダブルラッセル経編地において、前記片撚糸が単糸及び双糸から選ばれた少なくとも1種の片撚糸である本発明の好ましい態様とすることにより、片撚糸が単糸及び双糸から選ばれた少なくとも1種の片撚糸という比較的安価な糸を使用しても、筒状部分を有する捩れのないダブルラッシェル経編地をより安価に提供でき好ましい。
【0039】
(13)また、本発明の衣料は、前記(1)〜(12)項のいずれか1項に記載のダブルラッセル経編地を用いて形成されているので、筒状部分を有する捩れが防止された衣料を提供できる。
【0040】
(14)また、前記(13)項に記載の衣料において、衣料が、ネックウォーマー、レッグウォーマー、サポーター、ソックス、ストッキング、パンティストッキング、ガードル、ショーツ、ブリーフ、股引、ステテコ、肌着用シャツ、T−シャツ、ポロシャツ、スパッツ、トレーニングパンツ、スポーツ用衣料、外衣類のいずれかである本発明の好ましい態様とすることにより、全く縫製部分がないか、縫製部分が少ない、衣料を提供でき、製造コストが低減された、捩れの発生が防止された筒状部分を有する衣料を提供でき好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】撚方向の定義を説明するための説明図。
【図2】本発明で用いる編み組織のいくつかの例を示した編組織図。
【図3】本発明で用いるデンビー組織とループが左回りの閉じ目を有する鎖編組織の組み合わせからなる一例の編組織図。
【図4】本発明で用いるデンビー組織とループが左回りの閉じ目を有する鎖編組織の組み合わせからなる別の一例の編組織図。
【図5】本発明で用いるデンビー組織とループが右回りの閉じ目を有する鎖編組織の組み合わせからなる一例の編組織図。
【図6】本発明で用いるデンビー組織とループが右回りの閉じ目を有する鎖編組織の組み合わせからなる別の一例の編組織図。
【図7】閉じ目を有する鎖編組織の実体組織図。
【図8】本発明の経編地で袖なしの下着シャツを形成している状態を示す編地のフロント側から見た部分平面図。
【図9】フロント側とバック側を連結している連結編の一例を示す組織図。
【図10】開き目の鎖編組織図。
【図11】開き目の鎖編組織の実体組織図。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の理解を容易にするため具体的実施形態例を用いて、その図面を参照しながら本発明を詳細に説明するが、以下に取り上げる具体的実施形態例は、本発明の理解を容易にするために例示した具体的実施形態例であり、本発明は、これらの具体的実施形態例のみに限定されるものではない。原則としてダブルラッセル経編地において縦方向は、コース方向、すなわち編方向(糸が供給されて、編地が編まれて編機から出て来る方向)を示し、緯方向は、ウェール方向を示している。
【0043】
ダブルラッシェル経編機を用い、筒状部分を有するダブルラッシェル経編地及びそれを用いて衣料を形成する場合においては、例えば、シャツにおける胴の部分や袖の部分、スパッツのような場合には腰回りの部分や脚部など筒状部分を有する衣料などは、ダブルラッシェル経編機を用い筒状部分を形成しながら編地を形成できるので、衣料にする場合に縫合部分を少なくでき、場合によっては、縫合部分をほとんど皆無にできるので、コストの削減した衣料が製造できることで、近年、広く採用されている。これらの筒状部分を有するダブルラッシェル経編地の形成方法は、例えば、特開2007−77544号公報、特開2007−182638号公報、特開2010−222743号公報、特開2004−91971号公報、特開2008−284856号公報その他などでよく知られているので、ここでの詳細説明は筒状部分の形成の仕方などは、従来公知の方法で形成できるので、この部分の詳細説明は省略して以下説明する。
【0044】
図2に本発明で用いる編み組織のいくつかの例を示した編組織図を示した。ダブルラッシェル経編地は、フロント側の編地とバック側の編地を筒状にする部分のみ連結編で連結して筒状にしているが、図2に示した組織図はフロント側の編地ないしはバック側の編地のみを示す片面側の編組織で示している。通常、フロント側の編地の編組織とバック側の編地の編組織は実質同一である。後述する図9に示したフロント側基布とバック側基布を連結し筒状に形成するための連結編は、フロント側基布とバック側基布を連結しているので、編組織図は、組織図の左側にFとBの符合をつけて、Fがフロント側、Bがバック側を示すようにした編組織図であり図2に示した組織図とは表示の仕方が異なっている。
【0045】
本発明において、編組織を形成するための糸並びにそれを用いた編組織として、コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で糸が編みこまれている組織と、閉じ目を有する鎖編組織を少なくとも併用して編物を形成する。
【0046】
ここで、コース方向において左右のウェールにまたがって形成されているルーピング組織とは、編目がコース方向において鎖編のように1つの同じウェールにしか編目が形成されているものではなく、コース方向に進む場合に左右のウェールにまたがって左右に折り返しながら編目が形成されている編目組織であり(編目が形成されない挿入組織を除く意味でルーピング組織としている)、例えば、図2の(a)に示したデンビー組織、図2の(d)に示したコード組織、図2の(e)に示したアトラス組織又はこれらの組み合わせ(組み合わせとは、例えば、デンビー組織とコード組織とが重なって形成されたものなどのように2種以上の組織が重なって形成されている組織やダブルコード組織、ダブルアトラス組織などのように、シンカーループの傾斜方向が反対のいわゆる同じ組織が逆行している組み合わせなどを言う)などが挙げられる。コース方向に進む場合に左右のウェールにまたがって編目が形成されているルーピング組織であれば、これらのみに限定されるものではない。
【0047】
本発明では、このコース方向に進む場合に左右のウェールにまたがって編目が形成されているルーピング組織を形成している糸の撚り方向が問題になる。
【0048】
このような、コース方向に進む場合に左右のウェールにまたがって編目が形成されているルーピング組織を形成している糸として、Z撚り又はS撚りのいずれか一方の片撚糸を用いたり、弾性糸としてカバリング糸の巻回方向がZ巻回(左回り)またはS巻回(右回り)のいずれか一方のカバーリング糸を用いた場合に、本発明においては、ループが左回り又は右回りのいすれかの特定の閉じ目の鎖編組織であって、閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織で糸を更に編込むことにより筒状部分を有する捩れが防止されたダブルラッシェル経編地を形成することができる。
【0049】
この場合、(A)コース方向に進む場合に左右のウェールにまたがって編目が形成されている前記ルーピング組織で編みこまれている糸が、左撚(Z撚り)の片撚糸、又は、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が左回り(Z巻回)のカバードヤーンの場合には、ループが左回りの閉じ目を有する鎖編であって、閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織で更に糸が編み込まれているか、
又は、
(B)コース方向に進む場合に左右のウェールにまたがって編目が形成されている前記ルーピング組織で編みこまれている糸が、右撚(S撚り)の片撚糸、又は、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が右回り(S巻回)のカバードヤーンの場合には、ループが右回りの閉じ目を有する鎖編であって、閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織で更に糸が編み込まれる。
【0050】
ここで本発明で用いる編目が閉じ目の鎖編組織であってループが左回りの閉じ目を有する鎖編組織を図2の(b)(但し、図2の(b)は閉じ目の割合が100%の場合)に、同じくループが右回りの閉じ目を有する鎖編組織を図2の(c)(但し、図2の(c)は閉じ目の割合が100%の場合)に示した。ここで、「ループが左回りの閉じ目を有する」の「ループが左回り」とは、図2の(b)に示した糸を図の下から上に見た(辿った)場合にループが左回りになっていることを基準としている(糸を図の上から下に見た場合にループが右回りになるので、本発明では、図の下から上に見た場合にループが左回りになっていることを基準としている。)。同様に、「ループが右回りの閉じ目を有する」の「ループが右回り」とは、図2の(c)に示した糸を図の下から上に見た場合にループが右回りになっていることを基準としている(糸を図の上から下に見た場合にループが左回りになるので、本発明では、図の下から上に見た場合にループが右回りになっていることを基準としている。)。
【0051】
ここで、編目が閉じ目の鎖編組織であってループが左回りの閉じ目を有する鎖編組織の実体組織図を図7の(b)(但し、図7の(b)では閉じ目の割合が100%の場合)に示し、同様に編目が閉じ目の鎖編組織であってループが右回りの閉じ目を有する鎖編組織の実体組織図を図7の(c)(但し、図7の(c)では閉じ目の割合が100%の場合)に示した。
【0052】
比較の参考までに、一般的に最もよく用いられる鎖編みは、通常、編目が全て開き目(開き目の割合が100%)の鎖編組織であることが多く、その編組織図を比較の参考までに図10に示し、その実体組織図を図11に示した。
【0053】
本発明においては、前記鎖編組織は、上述したように閉じ目の割合が50%以上(従って開き目は50%以下)である鎖編組織とすることが必要であり、好ましくは、閉じ目の割合が80%以上、最も好ましくは閉じ目の割合が100%であるものを用いることが好ましく、閉じ目の割合が多い方が編地の捩れをより確実に防止できるという点で好ましい。開き目の割合が50%を超えると捩れ防止作用が低下し好ましくない。
【0054】
前記鎖編組織に用いる糸の撚り方向は捩れ防止作用にあまり大きな影響を及ぼさず、従って、(A)前記コース方向に進む場合に左右のウェールにまたがって編目が形成されているルーピング組織で編みこまれている糸が、左撚(Z撚り)の片撚糸、又は、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が左回り(Z巻回)のカバードヤーンの場合でも、(B)前記コース方向に進む場合に左右のウェールにまたがって編目が形成されているルーピング組織で編みこまれている糸が、右撚(S撚り)の片撚糸、又は、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が右回り(S巻回)のカバードヤーンの場合のいずれの場合にも、ループが左回りの閉じ目を有する鎖編組織を用いるか、右回りの閉じ目を有する鎖編組織を用いるかは区別されるが、当該、閉じ目を有する鎖編組織に用いる糸は、無撚りフィラメント糸、左撚の片撚糸、右撚の片撚糸、又は、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が左巻回のカバードヤーン或いは右巻回のカバードヤーン、その他の糸のいずれを用いても差支えない。
【0055】
しかし、前記ルーピング組織で編みこまれている糸が、前記(A)の左撚の片撚糸、又は、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が左巻回のカバードヤーンの場合には、用いるループが左回りで閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織を構成する糸が、無撚りフィラメント糸、右撚りの片撚糸、又は、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が右巻回のカバードヤーンから選ばれた少なくとも1種の糸を用い、前記ルーピング組織で編みこまれている糸が、前記(B)の右撚の片撚糸、又は、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が右巻回のカバードヤーンの場合には、用いるループが右回りで閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織を構成する糸が、無撚りフィラメント糸、左撚の片撚糸、又は、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が左巻回のカバードヤーンから選ばれた少なくとも1種の糸を用いることが筒状部分を有するダブルラッシェル経編地の捩れを十分防止できより好ましい。
【0056】
コース方向に進む場合に左右のウェールにまたがって編目が形成されている前記ルーピング組織を形成する糸としては、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンや非弾性糸のいずれを用いることもできる。非弾性糸としては、コストの安い片撚糸を用いることができ、捩れの発生しやすい片撚糸を用いても、得られる編地の捩れを防止でき、片撚糸の中でも単糸や双糸が複雑な糸に比べてコストが安く、特に単糸がコストが安いのでその意味ではコスト削減に有用である。このルーピング組織を形成する場合には、少なくとも弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンを用いて形成したルーピング組織を含むものが好ましい。この意味は、コース方向に進む場合に左右のウェールにまたがって編目が形成されている前記ルーピング組織で編みこまれている組織が1種類の場合にはその組織を構成する糸が上記の如く弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンを用いることが好ましく、コース方向に進む場合に左右のウェールにまたがって編目が形成されている前記ルーピング組織で編みこまれている組織が1種類ではなく2種類以上の場合、例えばデンビー組織とコード組織の2種類からなる場合とか、例えばダブルデンビー組織などにおいて、逆行又は同行の場合など、2種類以上を重ねてルーピング組織を形成する場合においてに、どれか少なくとも1種類が弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンを用いたものからなることが好ましいと言う意味である。
【0057】
一方、前記のループが左回り又は右回りのいすれかの特定の閉じ目の鎖編組織に用いる糸も、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンや非弾性糸のいずれを用いることもできるが、通常、非弾性糸を用いることが好ましく、特に、コース方向に進む場合に左右のウェールにまたがって編目が形成されている前記ルーピング組織の全てが、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンからなる場合には、前記のループが左回り又は右回りのいすれかの特定の閉じ目の鎖編組織に用いる糸としては非弾性糸を用いることが好ましい。
【0058】
特に限定するものではないが、コース方向に進む場合に左右のウェールにまたがって編目が形成されている前記ルーピング組織を、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンからなるデンビー組織とし、前記のループが左回り又は右回りのいすれかの特定の閉じ目の鎖編組織に用いる糸が非弾性糸からなる組み合わせが好適である。
【0059】
図3〜6に示した編組織は、コース方向に進む場合に左右のウェールにまたがって編目が形成されている前記ルーピング組織をデンビー組織とし、前記のループが左回り又は右回りのいすれかの特定の閉じ目の鎖編組織との組み合わせの組織図(但し、フロント側、又は、バック側の一方側の組織図。他方側は、実質同一である。)を示している。
【0060】
図3は、デンビー組織を形成する糸1として、(A)前記ルーピング組織(この場合デンビー組織)で編みこまれている糸が、左撚(Z撚り)の片撚糸、又は、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が左回り(Z巻回)のカバードヤーンの場合であり、この場合には、ループが左回りの閉じ目を有する鎖編であって、閉じ目の割合が50%以上(この図では閉じ目の割合が100%)である鎖編組織を形成する糸2が更に編み込まれている組織図を示した。
【0061】
図4は、デンビー組織を形成する糸1も鎖編組織を形成する糸2も図3で説明したと同様のものであるが、鎖編組織を形成する糸2が全ウェール総詰(フルセット)で編みこまれているのではなく、一つおきのウェールに供給されている態様で、つまり、前記コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸(ここではデンビー組織を構成する糸1)が、全ウェールフルセットで編みこまれ、全ウェールの50%に前記閉じ目の割合が50%以上である(この図の場合には閉じ目の割合が100%)鎖編組織を構成する糸2が編みこまれている態様である。
【0062】
一方図5は、デンビー組織を形成する糸1´として、(B)前記ルーピング組織(この場合デンビー組織)で編みこまれている糸が、右撚(S撚り)の片撚糸、又は、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が右回り(S巻回)のカバードヤーンの場合であり、この場合には、ループが右回りの閉じ目を有する鎖編であって、閉じ目の割合が50%以上(この図では閉じ目の割合が100%)である鎖編組織を形成する糸2´が更に編み込まれている組織図を示した。
【0063】
図6は、デンビー組織を形成する糸1´も鎖編組織を形成する糸2´も図5で説明したと同様のものであるが、鎖編組織を形成する糸2´が全ウェール総詰(フルセット)で編みこまれているのではなく、一つおきのウェールに供給されている態様で、つまり、前記コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸(ここではデンビー組織を構成する糸1´)が、全ウェールフルセットで編みこまれ、全ウェールの50%に前記閉じ目の割合が50%以上である(この図の場合には閉じ目の割合が100%)鎖編組織を構成する糸2´が編みこまれている態様である。
【0064】
ここで、例えば、どの部分にどのようにかかる編組織が適用されるかを、ジャカード機構付きのダブルラッシェル経編機を用いて、袖なしの下着シャツである衣料を形成する場合を例にとって説明する。図8に本発明の経編地で袖なしの下着シャツを形成している状態を示す編地のフロント側から見た部分平面図を示した。この袖なしの下着シャツのほとんど主要な部分5は、フロント側の部分もバック側の部分も、例えば、上述した本発明の編組織で編まれる。但し、編模様を形成したい場合には、例えば前記コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸(ここではデンビー組織を構成する糸でジャカード機構を有するガイドバーから糸を供給している)を模様を形成するために、模様を形成したい部分のみジャカード機構により模様を編むように本発明の目的を阻害しない範囲で適宜編組織を変更することは任意である。そして例えばシャツの主要な部分5を、上記図3に示した編み組織で形成する場合に、例えば、ガイドバーが6個でジャカード機構付きのダブルラッシェル経編機(フロント側用のガイドバーをL1、L2、L3、バック側用のガイドバーをL4、L5、L6とする。ここでは、フロント側用のガイドバーL2、L3バック側用のガイドバーをL4、L5を用いることにする。ガイドバーは必要なら6個より多く増設することも可能である。)L3とL4にデンビー組織を構成する糸、ここでは弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が左回り(Z巻回)のカバードヤーン又は前記非弾性糸の巻回方向が右回り(S巻回)のカバードヤーンの場合のいずれかを用い、また用いたカバードヤーンに応じて選定されるループが左回りの閉じ目を有する鎖編組織を用いるか、右回りの閉じ目を有する鎖編組織用の非弾性糸をL2とL5から供給し、シャツの主要な部分5のフロント側はL2(鎖編み組織)、L3(デンビー組織)、シャツの主要な部分5のバック側はL5(鎖編み組織)、L4(デンビー組織)でフロント側とバック側のシャツの主要な部分5を編む。かくして、フロント側とバック側を編みながら、同時にこれらフロント側編地とバック側編地を連結して筒状とするために縁6b、6dの部分は、フロント側とバック側を連結する連結編みで連結して編むことにより、筒状とする。
【0065】
筒状とするための縁6b、6dの部分において、フロント側とバック側を連結する連結編みの編み組織の一例を図9の(f)と(g)に示した。図9の(f)が左右の縁6b、6dのうち図8の肌着シャツの図に向かって左側(着用者基準では右側)の方の縁6bのフロント側とバック側の脇部を連結する連結編みの編み組織であり、図9の(g)が左右の両外縁のうち図8の肌着シャツの図に向かって右側(着用者基準では左側)の方の縁6dのフロント側とバック側の脇部を連結する連結編みの編み組織である。ガイドバー(筬)はL3、L4で用いたと同じガイドバー(筬)に通糸している糸が用いられるが、連結編み組織に変えるには、ジャカード制御機構を作動させ、連結編みをする部分のみ図9の(f)と(g)に示した組織とすればよい。
【0066】
尚、図9においてFはフロント側の編目位置を示し、Bはバック側の編目位置を示している。図9の(f)、(g)に示したフロント側とバック側を連結する連結編みの編み組織は、表裏同じウェールに通っており(言い換えれば、図2の(a)、(d)、(e)のように左右ウェール方向に振れていない編み方)、したがって、フロント側とバック側を連結するだけであり、通常、そのつなぎ目が目視ではわからない程度にフロント側とバック側を縁6b、6dでそれぞれ連結し筒状とすることができる。
【0067】
そして、フロント側の肩の部分7c、7eとバック側基布の肩の部分(図示せず)を編んで連結する場合には、衣料本体を編んでいる糸が、肩の部分7c、7eを編む位置に到達してこの部分を編む時のみ、この連結すべき部分を、それぞれ前記ジャカード制御機構を使用し、例えば図9の(h)と(i)に示した連結編み組織とすればよい。
【0068】
即ち、仮に編方向が図8の矢印Pで示される方向だとした場合、例えば矢印6のコース(6の部分に供給する糸)を編む場合、シャツのパターンの範囲外の下側部分6aを編む場合には、いかなる編組織でもよいが例えばシャツの主要な部分5と同じ図2(a)に示したようなデンビー組織で編み、6bの部分を編む場合には、ジャカード機構を用いて上述したような連結編みに変更し、それを過ぎて、シャツのパターンの範囲外の上側部分6cの部分を編む場合には、いかなる編組織でもよいが例えばシャツの主要な部分5と同じ図2(a)に示したようなデンビー組織で編むというような方法である。また、例えば矢印7のコース(7の部分に供給する糸)を編む場合、ガイドバー(筬)はL3、L4で用いたと同じガイドバー(筬)に通糸している糸が用いられるが、シャツのパターンの範囲外の下側部分7aを編む場合には、いかなる編組織でもよいが例えばシャツの主要な部分5と同じ図2(a)に示したようなデンビー組織で編み(できれば、シャツの主要な部分5と異なる組織で編むと編み模様の変化により裾ラインが目視可能になる)、シャツの主要な部分7bの部分を編む場合もデンビー組織で編み、7cの部分を編む場合には、ジャカード機構を用いて上述したような連結編みに変更し、それを過ぎて、シャツのパターンの範囲外の上側部分7dの部分を編む場合には、いかなる編組織でもよいが例えばシャツの主要な部分5と同じ図2(a)に示したようなデンビー組織(できれば、シャツの主要な部分5と異なる組織で編むと編み模様の変化により肩の外縁ラインが目視可能になる)で編むというような方法である。
【0069】
上述したコース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸の太さは特に制限するものではないが、片撚糸(非弾性糸)を用いる場合は、22dtex〜155dtexのものが好ましく、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンとしては33dtex〜200dtexのものが好ましく用いられる。また、ループが左回りないし右回りの閉じ目を有する鎖編組織に用いられる糸の太さも特に制限するものではないが、無撚りフィラメント糸、片撚糸、諸撚り糸などの非弾性糸を用いる場合は、33dtex〜155dtexのものが好ましく、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンとしては33dtex〜200dtexのものが好ましく用いられる(非弾性糸で、天然繊維などで「番手」など太さの単位が異なるものは、上記dtex単位に換算して、上記範囲のものが好ましい)。
【0070】
いずれの場合も、非弾性糸としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどのポリエステル繊維糸、ナイロン6やナイロン66などのポリアミド繊維糸、アクリル繊維糸、ポリプロピレン繊維糸、ビニロン繊維糸、木綿、麻、羊毛、絹などの天然繊維糸、レーヨン、キュプラなどの再生繊維糸、アセテートなどの半合成繊維糸などで、紡績糸(混紡糸も含む)、マルチフィラメント糸(混繊糸も含む。嵩高加工糸などの加工糸も含む)などがあげられ、弾性糸としては、ポリウレタン弾性糸、ポリエーテルエステル弾性糸などを芯糸とし、上記非弾性糸や非弾性繊維でカバリングされたカバードヤーンがあげられる。
【0071】
かくして、本発明の筒状部分を有するダブルラッセル経編地を用いて形成された衣料は、捩れが防止された衣料を提供でき、ソックス、ストッキング、パンティストッキング、ガードル、ショーツ、ブリーフ、股引、ステテコなどのボトム類のインナー衣料、各種肌着用シャツなどのトップス類のインナー衣料、T−シャツ、ポロシャツなどのトップス類のアウター衣料、スパッツ、トレーニングパンツ、スポーツ用衣料、ジャケットその他の外衣、ネックウォーマー、レッグウォーマー、サポーターなどの補助的衣料、など、胴部、脚部、腰周り、又は、袖などの筒状部分を有する捩れが防止された衣料を提供できる。これらの衣料は、ダブルラッシェル編みであるので、全く縫製部分がないか、縫製部分が少ない、衣料を提供でき、製造コストが低減された、捩れの発生が防止された筒状部分を有する衣料を提供できる。
【0072】
具体的実施形態例1として、上述した図8に示した肌着シャツを、その主要部分5の編み組織として、図3に示した組織を採用し、ジャカード制御機構つきのダブルラッシェル経編機(マイヤー製“RDPJ6/2”)を用い作成した。ジャカード機構付きガイドバーL3(フロント側)、L4(バック側)から供給するデンビー組織を構成する糸1として、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が左回り(Z巻回)のカバードヤーンとして、22dtexのポリウレタン糸が56dtexのウーリーナイロン糸でZ巻回されたカバードヤーン(古市株式会社製“S2256”)を用い、図3のループが左回りの閉じ目を有する鎖編組織を構成する糸2として、ガイドバーL2(フロント側)、L5(バック側)に、56dtexの無撚りのナイロンマルチフィラメント糸(48フィラメント:東洋紡績株式会社製)を総詰(フルセット)で用い、デンビー組織を構成する糸1の図8の6b、6dの部分をそれぞれ図9の(f)、(g)、図8の7c、7eの部分をそれぞれ図9の(h)、(i)のような連結編みにして肌着シャツを形成した。
【0073】
得られた編地、並びに肌着シャツには捩れによる皺の発生はなかった。
【0074】
一方、実施形態例1において、鎖編組織を構成する糸2として、56dtexの無撚りのナイロンマルチフィラメント糸(48フィラメント:東洋紡績株式会社製)を図10に示した開き目の鎖編み組織に変更した点を除いて、実施例1と同様にシャツを製造した。得られた編地、並びに肌着シャツには捩れによる大きな皺が発生した。
【0075】
また、具体的実施形態例2として、上述した図8に示した肌着シャツを、その主要部分5の編み組織として、図5に示した組織を採用し、ジャカード制御機構つきのダブルラッシェル経編機(マイヤー製“RDPJ6/2”)を用い作成した。ジャカード機構付きガイドバーL3(フロント側)、L4(バック側)から供給するデンビー組織を構成する糸1´として、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が右回り(S巻回)のカバードヤーンとして、22dtexのポリウレタン糸が56dtexのウーリーナイロン糸でS巻回されたカバードヤーンを作成して用い、図5のループが右回りの閉じ目を有する鎖編組織を構成する糸2´として、ガイドバーL2(フロント側)、L5(バック側)に、56dtexの無撚りのナイロンマルチフィラメント糸(48フィラメント:東洋紡績株式会社製)を総詰(フルセット)で用い、デンビー組織を構成する糸1´の図8の6b、6dの部分をそれぞれ図9の(f)、(g)、図8の7c、7eの部分をそれぞれ図9の(h)、(i)のような連結編みにして肌着シャツを形成した。
【0076】
得られた編地、並びに肌着シャツには捩れによる皺の発生はなかった。
【0077】
一方、実施形態例2において、鎖編組織を構成する糸2´として、56dtexの無撚りのナイロンマルチフィラメント糸(48フィラメント:東洋紡績株式会社製)を図10に示した開き目の鎖編み組織に変更した点を除いて、実施形態例2と同様にシャツを製造した。得られた編地、並びに肌着シャツには捩れによる大きな皺が発生した。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明によれば1本1本交互にZ撚りないしZ巻回の糸とS撚りないしS巻回の糸をセットしなくても、筒状部分を有する捩れが防止されたダブルラッシェル経編地及びそれを用いた衣料を提供することができ、製造の手間が解消され、筒状部分を有する捩れのないダブルラッシェル経編地並びにそれを用いた衣料の製造に有効に利用できる。
【符号の説明】
【0079】
1 デンビー組織を形成する糸
1´ デンビー組織を形成する糸
2 ループが左回りの閉じ目を有する鎖編組織を形成する糸
2´ ループが右回りの閉じ目を有する鎖編組織を形成する糸
5 シャツの主要な部分
6a シャツのパターンの範囲外の下側部分
6c シャツのパターンの範囲外の上側部分
6b、6d 肌着シャツの縁の部分
7a シャツのパターンの範囲外の下側部分
7b シャツの主要な部分
7c、7e 肩の部分
7d シャツのパターンの範囲外の上側部分
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状部分を有するダブルラッシェル経編地及びそれを用いた衣料に関するものであり、特に本発明は、筒状部分を有する捩れが防止されたダブルラッシェル経編地及びそれを用いた衣料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ダブルラッシェル経編機を用い、筒状部分を有するダブルラッシェル経編地及びそれを用いて衣料を形成する経編地からなる衣料は、ソックス、ストッキング、パンティストッキング、ガードル、ショーツ、ブリーフ、股引、ステテコなどのボトム類のインナー衣料、各種肌着用シャツなどのトップス類のインナー衣料、T−シャツ、ポロシャツなどのトップス類のアウター衣料、スパッツ、トレーニングパンツ、スポーツ用衣料、ジャケットその他の外衣、ネックウォーマー、レッグウォーマー、サポーターなどの補助的衣料、などの筒状部分を有する各種衣料に適用されている(下記特許文献1〜4参照)。
【0003】
通常、これらの衣料を形成するために使用される糸は、繊維を撚り合せた撚り糸や、弾性糸の場合はカバリング糸が用いられることが多い。撚糸は、通常、非弾性糸からなり、撚方向の定義を説明するための説明図である図1を引用して説明するなら図1(a1)及び図1(b1)の糸の断面方向の概略図(矢印の方向が撚り方向)、及び図1(a2)及び図1(b2)が、それぞれ(a1)及び(b1)の糸の側面模式図に示したように、通常、撚りの方向に応じ、Z撚り(左撚り)(糸の長さ方向下側を固定したと仮定して、撚り方向が左回り撚り:糸側面に表れる撚りの傾斜方向がZの文字の中間部分の傾斜方向と同方向の傾斜をしている)の糸が図1(a1)、(a2)で説明される糸であり、S撚り(右撚り)(糸の長さ方向下側を固定したと仮定して、撚り方向が右回り撚り:糸側面に表れる撚りの傾斜方向がSの文字の中間部分の傾斜方向と同方向の傾斜をしている)の糸が図1(b1)、(b2)で説明される糸とされている。このような撚糸で、片撚糸は、糸1本又は2本以上を引きそろえてZ方向(左撚り)又はS方向(右撚り)のいずれか一方の方向に撚りをかけた糸で、衣料形成用に広く用いられている糸である。このような片撚糸は通常非弾性繊維からなる非弾性糸である。
【0004】
また、弾性糸を衣料用に用いる場合には、ベーアー糸を用いる場合もあるが、弾性糸のゴムライクな肌触りを改善し、染色性の点からも、弾性糸を芯にして、その外側に各種非弾性糸を巻回したカバーリング糸(カバードヤーン)が、通常、よく使用されている。
【0005】
このようなカバードヤーンにも、前記非弾性糸の巻回方向が左回りのカバードヤーン(左回りの定義は、上記Z撚りと同方向を意味する。以下、これをZ巻回と略称する)と前記非弾性糸の巻回方向が右回りのカバードヤーン(右回りの定義は、上記S撚りと同方向を意味する。以下、これをS巻回と略称する)がある。
【0006】
このような、Z又はS撚りのいずれか一方の片撚糸を用いたり、弾性糸としてカバリング糸の巻回方向がZ巻回(左回り)またはS巻回(右回り)のいずれか一方のカバーリング糸を用いた場合に、その原因は定かではないが、片撚糸で、Z撚り(撚り方向が左回り撚り)の糸の場合には、その糸を用いて編み上げた場合に、撚り方向と反対方向、即ち右回り(S撚り)方向の解撚トルクが発生すると予想され、また、S撚り(撚り方向が右回り撚り)の糸の場合には、編み上げた場合に、撚り方向と反対方向、即ち左回り(Z撚り)方向の解撚トルクが発生するためではないかと推定され、また、弾性糸の場合はカバリング糸の巻回方向がZ巻回(左回り)か、S巻回(右回り)かで、コアーの弾性糸が撚られていない場合には、カバリング糸の巻回方向と反対方向の解撚トルクが発生するためではないかと推定され、これらの糸を用いて、筒状部分を有するダブルラッシェル経編地及びそれを用いた衣料を形成すると、歪が生じて得られた編地や衣料に捩れが発生してしまうという問題がある。編地や衣料には捩れに基づく比較的大きな皺が観測されることになる。
【0007】
そこで、下記特許文献5の[0009]に記載されているように交互にS撚り糸とZ撚り糸を配列して用いることも考えられる。
【0008】
しかし、ダブルラッシェルなどの経編の場合には、例えば、ダブルラッシェル経編機のガイドバーなどの幅は、130インチ(330.2cm)24ゲージ(2.54cm当り24本の編み針)即ち片面最高約3100本の糸を用いて、複数セット並列に目的の編地を編むので、表裏両面では、例えば最高6200本の糸を供給して、編むことになる。
【0009】
この場合、1本1本交互にZ撚り糸又はZ巻回の糸とS撚り糸又はS巻回の糸を配列してセットすることは非常に手間がかかると共に、例えば、編地製造中に、まとめて50本程度の糸切れが発生した場合には、目で糸を見ただけでは、どの糸がZ撚りないしZ巻回の糸で、どの糸がS撚りないしS巻回の糸かを見極めることは容易でなく、糸の供給先のビームのところまで1本1本さかのぼって確認して、再セットする必要があるため、修復に極めて多大の手間がかかるという問題がある。また、糸製造メーカーによっては、Z撚りないしZ巻回の糸しか製造していなかったり、S撚りないしS巻回の糸しか製造しておらず、同じ品質、性能を有するZ撚りないしZ巻回の糸とS撚りないしS巻回の糸とをペアーで入手出来ないこともしばしば生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−77544号公報
【特許文献2】特開2007−31879号公報
【特許文献3】実用新案登録第3117780号公報
【特許文献4】特開2005−54347号公報
【特許文献5】特開平5−125601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、1本1本交互にZ撚りないしZ巻回の糸とS撚りないしS巻回の糸をセットしなくても、筒状部分を有する捩れが防止されたダブルラッシェル経編地及びそれを用いた衣料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、本発明の筒状部分を有する捩れが防止されたダブルラッシェル経編地及びそれを用いた衣料は、次のものである。
【0013】
(1)コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で糸が編みこまれている筒状部分を有するダブルラッシェル経編地であって、
(A)前記ルーピング組織で編みこまれている糸が、左撚の片撚糸、又は、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が左回りのカバードヤーンの場合には、ループが左回りの閉じ目を有する鎖編であって、閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織で更に糸が編み込まれているか、
又は、
(B)前記ルーピング組織で編みこまれている糸が、右撚の片撚糸、又は、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が右回りのカバードヤーンの場合には、ループが右回りの閉じ目を有する鎖編であって、閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織で更に糸が編み込まれていることを特徴とする筒状部分を有する捩れが防止されたダブルラッシェル経編地。
【0014】
(2)前記(1)項に記載のダブルラッセル経編地においては、コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸のルーピング組織が、デンビー組織、コード組織、アトラス組織から選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
【0015】
(3)前記(1)又は(2)項に記載のダブルラッセル経編地においては、コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸のルーピング組織が、デンビー組織であるであることが好ましい。
【0016】
(4)前記(1)〜(3)項のいずれか1項に記載のダブルラッセル経編地においては、閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織を構成する糸が、無撚りフィラメント糸、左撚りの片撚糸、右撚りの片撚糸、諸撚り糸、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が右回りのカバードヤーンないし左回りのカバードヤーンから選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
【0017】
(5)前記(1)〜(3)項のいずれか1項に記載のダブルラッセル経編地においては、前記ルーピング組織で編みこまれている糸が、前記(A)の左撚の片撚糸、又は、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が左回りのカバードヤーンの場合には、用いるループが左回りで閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織を構成する糸が、無撚りフィラメント糸、右撚りの片撚糸、又は、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が右回りのカバードヤーンから選ばれた少なくとも1種の糸であり、
前記ルーピング組織で編みこまれている糸が、前記(B)の右撚の片撚糸、又は、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が右回りのカバードヤーンの場合には、用いるループが右回りで閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織を構成する糸が、無撚りフィラメント糸、左撚の片撚糸、又は、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が左回りのカバードヤーンから選ばれた少なくとも1種の糸であるであることが好ましい。
【0018】
(6)また、前記(1)〜(5)項のいずれか1項に記載のダブルラッセル経編地において、閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織の閉じ目の割合が80%以上であることが好ましい。
【0019】
(7)前記(1)〜(5)項のいずれか1項に記載のダブルラッセル経編地においては、閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織の閉じ目の割合が100%であることが好ましい。
【0020】
(8)前記(1)〜(7)項のいずれか1項に記載のダブルラッセル経編地においては、前記閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織を構成する糸が、非弾性糸からなることが好ましい。
【0021】
(9)前記(1)〜(8)項のいずれか1項に記載のダブルラッセル経編地においては、前記コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸が、弾性糸を芯糸とする非弾性繊維によりカバーされたカバードヤーンを含むことが好ましい。
【0022】
(10)前記(1)〜(9)項のいずれか1項に記載のダブルラッセル経編地においては、前記コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸が、全ウェールフルセットで編みこまれ、全ウェールの50%以上に前記閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織を構成する糸が編みこまれていることが好ましい。
【0023】
(11)前記(1)〜(10)項のいずれか1項に記載のダブルラッセル経編地においては、前記コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸が、全ウェールフルセットで編みこまれ、前記閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織を構成する糸が、全ウェールフルセットで編みこまれていることが好ましい。
【0024】
(12)前記(1)〜(11)項のいずれか1項に記載のダブルラッセル経編地においては、前記片撚糸が単糸及び双糸から選ばれた少なくとも1種の片撚糸であることが好ましい。
【0025】
(13)また、本発明の衣料は、前記(1)〜(12)項のいずれか1項に記載のダブルラッセル経編地を用いて形成された筒状部分を有する捩れが防止された衣料である。
【0026】
(14)前記(13)項に記載の衣料においては、衣料が、ネックウォーマー、レッグウォーマー、サポーター、ソックス、ストッキング、パンティストッキング、ガードル、ショーツ、ブリーフ、股引、ステテコ、肌着用シャツ、T−シャツ、ポロシャツ、スパッツ、トレーニングパンツ、スポーツ用衣料、外衣類のいずれかであることが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
(1)本発明の前記(1)〜(11)項に記載の筒状部分を有するダブルラッシェル経編地は、編地に捩れの発生しやすい前記コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸として(A)左撚の片撚糸とかカバリング糸が左巻回のカバードヤーン、或いは、(B)右撚の片撚糸とかカバリング糸が右巻回のカバードヤーンを用いる場合に、それぞれ(A)の糸を用いた場合には、ループが左回りの閉じ目を有する鎖編であって、閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織で更に糸が編み込まれている編組織とし、(B)の糸を用いた場合には、ループが右回りの閉じ目を有する鎖編であって、閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織で更に糸が編み込まれている編組織とすることにより、筒状部分を有する捩れのないダブルラッシェル経編地を提供できる。従って、前記コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸として、Z撚り糸とS撚り糸、或いは、Z巻回カバードヤーン(カバリングされた弾性糸)、S巻回カバードヤーンを1本1本交互に編込む必要がなく、容易に筒状部分を有する捩れのないダブルラッシェル経編地を提供できる。従って、編成中に複数本の糸切れが発生した場合でも、1本1本、Z撚り糸かS撚り糸か、或いは、Z巻回カバードヤーンか、S巻回カバードヤーンなのかを確認する作業や、それを交互にどの編み針に供給するのかを検討する手間が解消され、容易に筒状部分を有する捩れのないダブルラッシェル経編地を提供できる。
【0028】
(2)前記(1)項に記載のダブルラッセル経編地においては、コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸のルーピング組織が、デンビー組織、コード組織、アトラス組織から選ばれた少なくとも1種である本発明の好ましい態様とすることにより、よく採用される比較的ポピュラーな編組織で筒状部分を有する捩れのないダブルラッシェル経編地を提供でき好ましい。
【0029】
(3)また、前記(1)〜(2)項のいずれか1項に記載のダブルラッシェル経編地において、コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸のルーピング組織が、デンビー組織である本発明の好ましい態様とすることにより、極めてよく採用される最もポピュラーな編組織で筒状部分を有する捩れのないダブルラッシェル経編地を提供でき好ましい。
【0030】
(4)また、前記(1)〜(3)項のいずれか1項に記載のダブルラッシェル経編地において、閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織を構成する糸が、無撚りフィラメント糸、左撚り(Z撚り)糸、右撚り(S撚り)糸、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が左巻回(Z巻回)のカバードヤーン或いは右巻回(S巻回)のカバードヤーンから選ばれた少なくとも1種である本発明の好ましい態様とすることにより、閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織を構成する糸として、無撚りフィラメント糸、左撚りの片撚糸、右撚りの片撚糸、諸撚り糸、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が右回りのカバードヤーンないし左回りのカバードヤーンから選ばれた少なくとも1種いずれの糸を使用しても、筒状部分を有する捩れのないダブルラッシェル経編地を提供でき好ましい。
【0031】
(5)また、前記(1)〜(3)項のいずれか1項に記載のダブルラッセル経編地において、前記コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸が、前記(A)の左撚の片撚糸、又は、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が左回りのカバードヤーンの場合には、用いるループが左回りで閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織を構成する糸が、無撚りフィラメント糸、右撚りの片撚糸、又は、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が右回りのカバードヤーンから選ばれた少なくとも1種の糸であり、
前記コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸が、前記(B)の右撚の片撚糸、又は、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が右回りのカバードヤーンの場合には、用いるループが右回りで閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織を構成する糸が、無撚りフィラメント糸、左撚の片撚糸、又は、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が左回りのカバードヤーンから選ばれた少なくとも1種の糸であるである本発明の好ましい態様とすることにより、前記ルーピング組織で編みこまれている糸による捩れの発生が比較的大きい場合でも、筒状部分を有するダブルラッシェル経編地の捩れを十分防止でき好ましい。
【0032】
(6)また、前記(1)〜(5)項のいずれか1項に記載のダブルラッシェル経編地において、閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織の閉じ目の割合が80%以上である本発明の好ましい態様とすることにより、筒状部分を有するダブルラッシェル経編地の捩れをより確実に防止でき好ましい。
【0033】
(7)また、前記(1)〜(5)項のいずれか1項に記載のダブルラッセル経編地においては、閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織の閉じ目の割合が100%である本発明の好ましい態様とすることにより、筒状部分を有するダブルラッシェル経編地の捩れを更に一層確実に防止でき好ましい。
【0034】
(8)また、前記(1)〜(7)項のいずれか1項に記載のダブルラッセル経編地において、前記閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織を構成する糸が、非弾性糸からなる本発明の好ましい態様とすることにより、この糸を弾性糸とする場合に比べて、比較的しっかりした地合いの筒状部分を有する捩れのないダブルラッシェル経編地を提供でき好ましい。
【0035】
(9)また、前記(1)〜(8)項のいずれか1項に記載のダブルラッセル経編地において、前記コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸が、弾性糸を芯糸とする非弾性繊維によりカバーされたカバードヤーンを含む本発明の好ましい態様とすることにより、伸縮性を有する安定な組織の捩れのないダブルラッシェル経編地を提供でき好ましい。
【0036】
(10)また、前記(1)〜(9)項のいずれか1項に記載のダブルラッセル経編地においては、前記コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸が、全ウェールフルセットで編みこまれ、全ウェールの50%以上に前記閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織を構成する糸が編みこまれている本発明の好ましい態様とすることにより、全ウェールの50%以上に編地の捩れの発生を抑制する前記特定の鎖編組織の糸が編みこまれているので、捩れのないダブルラッシェル経編地を提供でき好ましい。
【0037】
(11)また、前記(1)〜(10)項のいずれか1項に記載のダブルラッセル経編地において、前記コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸が、全ウェールフルセットで編みこまれ、前記閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織を構成する糸が、全ウェールフルセットで編みこまれている本発明の好ましい態様とすることにより、より一層捩れが防止され、且つ、しっかりした地合いの筒状部分を有する捩れのないダブルラッシェル経編地を提供でき好ましい。
【0038】
(12)また、前記(1)〜(11)項のいずれか1項に記載のダブルラッセル経編地において、前記片撚糸が単糸及び双糸から選ばれた少なくとも1種の片撚糸である本発明の好ましい態様とすることにより、片撚糸が単糸及び双糸から選ばれた少なくとも1種の片撚糸という比較的安価な糸を使用しても、筒状部分を有する捩れのないダブルラッシェル経編地をより安価に提供でき好ましい。
【0039】
(13)また、本発明の衣料は、前記(1)〜(12)項のいずれか1項に記載のダブルラッセル経編地を用いて形成されているので、筒状部分を有する捩れが防止された衣料を提供できる。
【0040】
(14)また、前記(13)項に記載の衣料において、衣料が、ネックウォーマー、レッグウォーマー、サポーター、ソックス、ストッキング、パンティストッキング、ガードル、ショーツ、ブリーフ、股引、ステテコ、肌着用シャツ、T−シャツ、ポロシャツ、スパッツ、トレーニングパンツ、スポーツ用衣料、外衣類のいずれかである本発明の好ましい態様とすることにより、全く縫製部分がないか、縫製部分が少ない、衣料を提供でき、製造コストが低減された、捩れの発生が防止された筒状部分を有する衣料を提供でき好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】撚方向の定義を説明するための説明図。
【図2】本発明で用いる編み組織のいくつかの例を示した編組織図。
【図3】本発明で用いるデンビー組織とループが左回りの閉じ目を有する鎖編組織の組み合わせからなる一例の編組織図。
【図4】本発明で用いるデンビー組織とループが左回りの閉じ目を有する鎖編組織の組み合わせからなる別の一例の編組織図。
【図5】本発明で用いるデンビー組織とループが右回りの閉じ目を有する鎖編組織の組み合わせからなる一例の編組織図。
【図6】本発明で用いるデンビー組織とループが右回りの閉じ目を有する鎖編組織の組み合わせからなる別の一例の編組織図。
【図7】閉じ目を有する鎖編組織の実体組織図。
【図8】本発明の経編地で袖なしの下着シャツを形成している状態を示す編地のフロント側から見た部分平面図。
【図9】フロント側とバック側を連結している連結編の一例を示す組織図。
【図10】開き目の鎖編組織図。
【図11】開き目の鎖編組織の実体組織図。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の理解を容易にするため具体的実施形態例を用いて、その図面を参照しながら本発明を詳細に説明するが、以下に取り上げる具体的実施形態例は、本発明の理解を容易にするために例示した具体的実施形態例であり、本発明は、これらの具体的実施形態例のみに限定されるものではない。原則としてダブルラッセル経編地において縦方向は、コース方向、すなわち編方向(糸が供給されて、編地が編まれて編機から出て来る方向)を示し、緯方向は、ウェール方向を示している。
【0043】
ダブルラッシェル経編機を用い、筒状部分を有するダブルラッシェル経編地及びそれを用いて衣料を形成する場合においては、例えば、シャツにおける胴の部分や袖の部分、スパッツのような場合には腰回りの部分や脚部など筒状部分を有する衣料などは、ダブルラッシェル経編機を用い筒状部分を形成しながら編地を形成できるので、衣料にする場合に縫合部分を少なくでき、場合によっては、縫合部分をほとんど皆無にできるので、コストの削減した衣料が製造できることで、近年、広く採用されている。これらの筒状部分を有するダブルラッシェル経編地の形成方法は、例えば、特開2007−77544号公報、特開2007−182638号公報、特開2010−222743号公報、特開2004−91971号公報、特開2008−284856号公報その他などでよく知られているので、ここでの詳細説明は筒状部分の形成の仕方などは、従来公知の方法で形成できるので、この部分の詳細説明は省略して以下説明する。
【0044】
図2に本発明で用いる編み組織のいくつかの例を示した編組織図を示した。ダブルラッシェル経編地は、フロント側の編地とバック側の編地を筒状にする部分のみ連結編で連結して筒状にしているが、図2に示した組織図はフロント側の編地ないしはバック側の編地のみを示す片面側の編組織で示している。通常、フロント側の編地の編組織とバック側の編地の編組織は実質同一である。後述する図9に示したフロント側基布とバック側基布を連結し筒状に形成するための連結編は、フロント側基布とバック側基布を連結しているので、編組織図は、組織図の左側にFとBの符合をつけて、Fがフロント側、Bがバック側を示すようにした編組織図であり図2に示した組織図とは表示の仕方が異なっている。
【0045】
本発明において、編組織を形成するための糸並びにそれを用いた編組織として、コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で糸が編みこまれている組織と、閉じ目を有する鎖編組織を少なくとも併用して編物を形成する。
【0046】
ここで、コース方向において左右のウェールにまたがって形成されているルーピング組織とは、編目がコース方向において鎖編のように1つの同じウェールにしか編目が形成されているものではなく、コース方向に進む場合に左右のウェールにまたがって左右に折り返しながら編目が形成されている編目組織であり(編目が形成されない挿入組織を除く意味でルーピング組織としている)、例えば、図2の(a)に示したデンビー組織、図2の(d)に示したコード組織、図2の(e)に示したアトラス組織又はこれらの組み合わせ(組み合わせとは、例えば、デンビー組織とコード組織とが重なって形成されたものなどのように2種以上の組織が重なって形成されている組織やダブルコード組織、ダブルアトラス組織などのように、シンカーループの傾斜方向が反対のいわゆる同じ組織が逆行している組み合わせなどを言う)などが挙げられる。コース方向に進む場合に左右のウェールにまたがって編目が形成されているルーピング組織であれば、これらのみに限定されるものではない。
【0047】
本発明では、このコース方向に進む場合に左右のウェールにまたがって編目が形成されているルーピング組織を形成している糸の撚り方向が問題になる。
【0048】
このような、コース方向に進む場合に左右のウェールにまたがって編目が形成されているルーピング組織を形成している糸として、Z撚り又はS撚りのいずれか一方の片撚糸を用いたり、弾性糸としてカバリング糸の巻回方向がZ巻回(左回り)またはS巻回(右回り)のいずれか一方のカバーリング糸を用いた場合に、本発明においては、ループが左回り又は右回りのいすれかの特定の閉じ目の鎖編組織であって、閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織で糸を更に編込むことにより筒状部分を有する捩れが防止されたダブルラッシェル経編地を形成することができる。
【0049】
この場合、(A)コース方向に進む場合に左右のウェールにまたがって編目が形成されている前記ルーピング組織で編みこまれている糸が、左撚(Z撚り)の片撚糸、又は、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が左回り(Z巻回)のカバードヤーンの場合には、ループが左回りの閉じ目を有する鎖編であって、閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織で更に糸が編み込まれているか、
又は、
(B)コース方向に進む場合に左右のウェールにまたがって編目が形成されている前記ルーピング組織で編みこまれている糸が、右撚(S撚り)の片撚糸、又は、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が右回り(S巻回)のカバードヤーンの場合には、ループが右回りの閉じ目を有する鎖編であって、閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織で更に糸が編み込まれる。
【0050】
ここで本発明で用いる編目が閉じ目の鎖編組織であってループが左回りの閉じ目を有する鎖編組織を図2の(b)(但し、図2の(b)は閉じ目の割合が100%の場合)に、同じくループが右回りの閉じ目を有する鎖編組織を図2の(c)(但し、図2の(c)は閉じ目の割合が100%の場合)に示した。ここで、「ループが左回りの閉じ目を有する」の「ループが左回り」とは、図2の(b)に示した糸を図の下から上に見た(辿った)場合にループが左回りになっていることを基準としている(糸を図の上から下に見た場合にループが右回りになるので、本発明では、図の下から上に見た場合にループが左回りになっていることを基準としている。)。同様に、「ループが右回りの閉じ目を有する」の「ループが右回り」とは、図2の(c)に示した糸を図の下から上に見た場合にループが右回りになっていることを基準としている(糸を図の上から下に見た場合にループが左回りになるので、本発明では、図の下から上に見た場合にループが右回りになっていることを基準としている。)。
【0051】
ここで、編目が閉じ目の鎖編組織であってループが左回りの閉じ目を有する鎖編組織の実体組織図を図7の(b)(但し、図7の(b)では閉じ目の割合が100%の場合)に示し、同様に編目が閉じ目の鎖編組織であってループが右回りの閉じ目を有する鎖編組織の実体組織図を図7の(c)(但し、図7の(c)では閉じ目の割合が100%の場合)に示した。
【0052】
比較の参考までに、一般的に最もよく用いられる鎖編みは、通常、編目が全て開き目(開き目の割合が100%)の鎖編組織であることが多く、その編組織図を比較の参考までに図10に示し、その実体組織図を図11に示した。
【0053】
本発明においては、前記鎖編組織は、上述したように閉じ目の割合が50%以上(従って開き目は50%以下)である鎖編組織とすることが必要であり、好ましくは、閉じ目の割合が80%以上、最も好ましくは閉じ目の割合が100%であるものを用いることが好ましく、閉じ目の割合が多い方が編地の捩れをより確実に防止できるという点で好ましい。開き目の割合が50%を超えると捩れ防止作用が低下し好ましくない。
【0054】
前記鎖編組織に用いる糸の撚り方向は捩れ防止作用にあまり大きな影響を及ぼさず、従って、(A)前記コース方向に進む場合に左右のウェールにまたがって編目が形成されているルーピング組織で編みこまれている糸が、左撚(Z撚り)の片撚糸、又は、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が左回り(Z巻回)のカバードヤーンの場合でも、(B)前記コース方向に進む場合に左右のウェールにまたがって編目が形成されているルーピング組織で編みこまれている糸が、右撚(S撚り)の片撚糸、又は、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が右回り(S巻回)のカバードヤーンの場合のいずれの場合にも、ループが左回りの閉じ目を有する鎖編組織を用いるか、右回りの閉じ目を有する鎖編組織を用いるかは区別されるが、当該、閉じ目を有する鎖編組織に用いる糸は、無撚りフィラメント糸、左撚の片撚糸、右撚の片撚糸、又は、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が左巻回のカバードヤーン或いは右巻回のカバードヤーン、その他の糸のいずれを用いても差支えない。
【0055】
しかし、前記ルーピング組織で編みこまれている糸が、前記(A)の左撚の片撚糸、又は、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が左巻回のカバードヤーンの場合には、用いるループが左回りで閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織を構成する糸が、無撚りフィラメント糸、右撚りの片撚糸、又は、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が右巻回のカバードヤーンから選ばれた少なくとも1種の糸を用い、前記ルーピング組織で編みこまれている糸が、前記(B)の右撚の片撚糸、又は、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が右巻回のカバードヤーンの場合には、用いるループが右回りで閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織を構成する糸が、無撚りフィラメント糸、左撚の片撚糸、又は、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が左巻回のカバードヤーンから選ばれた少なくとも1種の糸を用いることが筒状部分を有するダブルラッシェル経編地の捩れを十分防止できより好ましい。
【0056】
コース方向に進む場合に左右のウェールにまたがって編目が形成されている前記ルーピング組織を形成する糸としては、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンや非弾性糸のいずれを用いることもできる。非弾性糸としては、コストの安い片撚糸を用いることができ、捩れの発生しやすい片撚糸を用いても、得られる編地の捩れを防止でき、片撚糸の中でも単糸や双糸が複雑な糸に比べてコストが安く、特に単糸がコストが安いのでその意味ではコスト削減に有用である。このルーピング組織を形成する場合には、少なくとも弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンを用いて形成したルーピング組織を含むものが好ましい。この意味は、コース方向に進む場合に左右のウェールにまたがって編目が形成されている前記ルーピング組織で編みこまれている組織が1種類の場合にはその組織を構成する糸が上記の如く弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンを用いることが好ましく、コース方向に進む場合に左右のウェールにまたがって編目が形成されている前記ルーピング組織で編みこまれている組織が1種類ではなく2種類以上の場合、例えばデンビー組織とコード組織の2種類からなる場合とか、例えばダブルデンビー組織などにおいて、逆行又は同行の場合など、2種類以上を重ねてルーピング組織を形成する場合においてに、どれか少なくとも1種類が弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンを用いたものからなることが好ましいと言う意味である。
【0057】
一方、前記のループが左回り又は右回りのいすれかの特定の閉じ目の鎖編組織に用いる糸も、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンや非弾性糸のいずれを用いることもできるが、通常、非弾性糸を用いることが好ましく、特に、コース方向に進む場合に左右のウェールにまたがって編目が形成されている前記ルーピング組織の全てが、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンからなる場合には、前記のループが左回り又は右回りのいすれかの特定の閉じ目の鎖編組織に用いる糸としては非弾性糸を用いることが好ましい。
【0058】
特に限定するものではないが、コース方向に進む場合に左右のウェールにまたがって編目が形成されている前記ルーピング組織を、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンからなるデンビー組織とし、前記のループが左回り又は右回りのいすれかの特定の閉じ目の鎖編組織に用いる糸が非弾性糸からなる組み合わせが好適である。
【0059】
図3〜6に示した編組織は、コース方向に進む場合に左右のウェールにまたがって編目が形成されている前記ルーピング組織をデンビー組織とし、前記のループが左回り又は右回りのいすれかの特定の閉じ目の鎖編組織との組み合わせの組織図(但し、フロント側、又は、バック側の一方側の組織図。他方側は、実質同一である。)を示している。
【0060】
図3は、デンビー組織を形成する糸1として、(A)前記ルーピング組織(この場合デンビー組織)で編みこまれている糸が、左撚(Z撚り)の片撚糸、又は、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が左回り(Z巻回)のカバードヤーンの場合であり、この場合には、ループが左回りの閉じ目を有する鎖編であって、閉じ目の割合が50%以上(この図では閉じ目の割合が100%)である鎖編組織を形成する糸2が更に編み込まれている組織図を示した。
【0061】
図4は、デンビー組織を形成する糸1も鎖編組織を形成する糸2も図3で説明したと同様のものであるが、鎖編組織を形成する糸2が全ウェール総詰(フルセット)で編みこまれているのではなく、一つおきのウェールに供給されている態様で、つまり、前記コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸(ここではデンビー組織を構成する糸1)が、全ウェールフルセットで編みこまれ、全ウェールの50%に前記閉じ目の割合が50%以上である(この図の場合には閉じ目の割合が100%)鎖編組織を構成する糸2が編みこまれている態様である。
【0062】
一方図5は、デンビー組織を形成する糸1´として、(B)前記ルーピング組織(この場合デンビー組織)で編みこまれている糸が、右撚(S撚り)の片撚糸、又は、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が右回り(S巻回)のカバードヤーンの場合であり、この場合には、ループが右回りの閉じ目を有する鎖編であって、閉じ目の割合が50%以上(この図では閉じ目の割合が100%)である鎖編組織を形成する糸2´が更に編み込まれている組織図を示した。
【0063】
図6は、デンビー組織を形成する糸1´も鎖編組織を形成する糸2´も図5で説明したと同様のものであるが、鎖編組織を形成する糸2´が全ウェール総詰(フルセット)で編みこまれているのではなく、一つおきのウェールに供給されている態様で、つまり、前記コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸(ここではデンビー組織を構成する糸1´)が、全ウェールフルセットで編みこまれ、全ウェールの50%に前記閉じ目の割合が50%以上である(この図の場合には閉じ目の割合が100%)鎖編組織を構成する糸2´が編みこまれている態様である。
【0064】
ここで、例えば、どの部分にどのようにかかる編組織が適用されるかを、ジャカード機構付きのダブルラッシェル経編機を用いて、袖なしの下着シャツである衣料を形成する場合を例にとって説明する。図8に本発明の経編地で袖なしの下着シャツを形成している状態を示す編地のフロント側から見た部分平面図を示した。この袖なしの下着シャツのほとんど主要な部分5は、フロント側の部分もバック側の部分も、例えば、上述した本発明の編組織で編まれる。但し、編模様を形成したい場合には、例えば前記コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸(ここではデンビー組織を構成する糸でジャカード機構を有するガイドバーから糸を供給している)を模様を形成するために、模様を形成したい部分のみジャカード機構により模様を編むように本発明の目的を阻害しない範囲で適宜編組織を変更することは任意である。そして例えばシャツの主要な部分5を、上記図3に示した編み組織で形成する場合に、例えば、ガイドバーが6個でジャカード機構付きのダブルラッシェル経編機(フロント側用のガイドバーをL1、L2、L3、バック側用のガイドバーをL4、L5、L6とする。ここでは、フロント側用のガイドバーL2、L3バック側用のガイドバーをL4、L5を用いることにする。ガイドバーは必要なら6個より多く増設することも可能である。)L3とL4にデンビー組織を構成する糸、ここでは弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が左回り(Z巻回)のカバードヤーン又は前記非弾性糸の巻回方向が右回り(S巻回)のカバードヤーンの場合のいずれかを用い、また用いたカバードヤーンに応じて選定されるループが左回りの閉じ目を有する鎖編組織を用いるか、右回りの閉じ目を有する鎖編組織用の非弾性糸をL2とL5から供給し、シャツの主要な部分5のフロント側はL2(鎖編み組織)、L3(デンビー組織)、シャツの主要な部分5のバック側はL5(鎖編み組織)、L4(デンビー組織)でフロント側とバック側のシャツの主要な部分5を編む。かくして、フロント側とバック側を編みながら、同時にこれらフロント側編地とバック側編地を連結して筒状とするために縁6b、6dの部分は、フロント側とバック側を連結する連結編みで連結して編むことにより、筒状とする。
【0065】
筒状とするための縁6b、6dの部分において、フロント側とバック側を連結する連結編みの編み組織の一例を図9の(f)と(g)に示した。図9の(f)が左右の縁6b、6dのうち図8の肌着シャツの図に向かって左側(着用者基準では右側)の方の縁6bのフロント側とバック側の脇部を連結する連結編みの編み組織であり、図9の(g)が左右の両外縁のうち図8の肌着シャツの図に向かって右側(着用者基準では左側)の方の縁6dのフロント側とバック側の脇部を連結する連結編みの編み組織である。ガイドバー(筬)はL3、L4で用いたと同じガイドバー(筬)に通糸している糸が用いられるが、連結編み組織に変えるには、ジャカード制御機構を作動させ、連結編みをする部分のみ図9の(f)と(g)に示した組織とすればよい。
【0066】
尚、図9においてFはフロント側の編目位置を示し、Bはバック側の編目位置を示している。図9の(f)、(g)に示したフロント側とバック側を連結する連結編みの編み組織は、表裏同じウェールに通っており(言い換えれば、図2の(a)、(d)、(e)のように左右ウェール方向に振れていない編み方)、したがって、フロント側とバック側を連結するだけであり、通常、そのつなぎ目が目視ではわからない程度にフロント側とバック側を縁6b、6dでそれぞれ連結し筒状とすることができる。
【0067】
そして、フロント側の肩の部分7c、7eとバック側基布の肩の部分(図示せず)を編んで連結する場合には、衣料本体を編んでいる糸が、肩の部分7c、7eを編む位置に到達してこの部分を編む時のみ、この連結すべき部分を、それぞれ前記ジャカード制御機構を使用し、例えば図9の(h)と(i)に示した連結編み組織とすればよい。
【0068】
即ち、仮に編方向が図8の矢印Pで示される方向だとした場合、例えば矢印6のコース(6の部分に供給する糸)を編む場合、シャツのパターンの範囲外の下側部分6aを編む場合には、いかなる編組織でもよいが例えばシャツの主要な部分5と同じ図2(a)に示したようなデンビー組織で編み、6bの部分を編む場合には、ジャカード機構を用いて上述したような連結編みに変更し、それを過ぎて、シャツのパターンの範囲外の上側部分6cの部分を編む場合には、いかなる編組織でもよいが例えばシャツの主要な部分5と同じ図2(a)に示したようなデンビー組織で編むというような方法である。また、例えば矢印7のコース(7の部分に供給する糸)を編む場合、ガイドバー(筬)はL3、L4で用いたと同じガイドバー(筬)に通糸している糸が用いられるが、シャツのパターンの範囲外の下側部分7aを編む場合には、いかなる編組織でもよいが例えばシャツの主要な部分5と同じ図2(a)に示したようなデンビー組織で編み(できれば、シャツの主要な部分5と異なる組織で編むと編み模様の変化により裾ラインが目視可能になる)、シャツの主要な部分7bの部分を編む場合もデンビー組織で編み、7cの部分を編む場合には、ジャカード機構を用いて上述したような連結編みに変更し、それを過ぎて、シャツのパターンの範囲外の上側部分7dの部分を編む場合には、いかなる編組織でもよいが例えばシャツの主要な部分5と同じ図2(a)に示したようなデンビー組織(できれば、シャツの主要な部分5と異なる組織で編むと編み模様の変化により肩の外縁ラインが目視可能になる)で編むというような方法である。
【0069】
上述したコース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸の太さは特に制限するものではないが、片撚糸(非弾性糸)を用いる場合は、22dtex〜155dtexのものが好ましく、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンとしては33dtex〜200dtexのものが好ましく用いられる。また、ループが左回りないし右回りの閉じ目を有する鎖編組織に用いられる糸の太さも特に制限するものではないが、無撚りフィラメント糸、片撚糸、諸撚り糸などの非弾性糸を用いる場合は、33dtex〜155dtexのものが好ましく、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンとしては33dtex〜200dtexのものが好ましく用いられる(非弾性糸で、天然繊維などで「番手」など太さの単位が異なるものは、上記dtex単位に換算して、上記範囲のものが好ましい)。
【0070】
いずれの場合も、非弾性糸としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどのポリエステル繊維糸、ナイロン6やナイロン66などのポリアミド繊維糸、アクリル繊維糸、ポリプロピレン繊維糸、ビニロン繊維糸、木綿、麻、羊毛、絹などの天然繊維糸、レーヨン、キュプラなどの再生繊維糸、アセテートなどの半合成繊維糸などで、紡績糸(混紡糸も含む)、マルチフィラメント糸(混繊糸も含む。嵩高加工糸などの加工糸も含む)などがあげられ、弾性糸としては、ポリウレタン弾性糸、ポリエーテルエステル弾性糸などを芯糸とし、上記非弾性糸や非弾性繊維でカバリングされたカバードヤーンがあげられる。
【0071】
かくして、本発明の筒状部分を有するダブルラッセル経編地を用いて形成された衣料は、捩れが防止された衣料を提供でき、ソックス、ストッキング、パンティストッキング、ガードル、ショーツ、ブリーフ、股引、ステテコなどのボトム類のインナー衣料、各種肌着用シャツなどのトップス類のインナー衣料、T−シャツ、ポロシャツなどのトップス類のアウター衣料、スパッツ、トレーニングパンツ、スポーツ用衣料、ジャケットその他の外衣、ネックウォーマー、レッグウォーマー、サポーターなどの補助的衣料、など、胴部、脚部、腰周り、又は、袖などの筒状部分を有する捩れが防止された衣料を提供できる。これらの衣料は、ダブルラッシェル編みであるので、全く縫製部分がないか、縫製部分が少ない、衣料を提供でき、製造コストが低減された、捩れの発生が防止された筒状部分を有する衣料を提供できる。
【0072】
具体的実施形態例1として、上述した図8に示した肌着シャツを、その主要部分5の編み組織として、図3に示した組織を採用し、ジャカード制御機構つきのダブルラッシェル経編機(マイヤー製“RDPJ6/2”)を用い作成した。ジャカード機構付きガイドバーL3(フロント側)、L4(バック側)から供給するデンビー組織を構成する糸1として、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が左回り(Z巻回)のカバードヤーンとして、22dtexのポリウレタン糸が56dtexのウーリーナイロン糸でZ巻回されたカバードヤーン(古市株式会社製“S2256”)を用い、図3のループが左回りの閉じ目を有する鎖編組織を構成する糸2として、ガイドバーL2(フロント側)、L5(バック側)に、56dtexの無撚りのナイロンマルチフィラメント糸(48フィラメント:東洋紡績株式会社製)を総詰(フルセット)で用い、デンビー組織を構成する糸1の図8の6b、6dの部分をそれぞれ図9の(f)、(g)、図8の7c、7eの部分をそれぞれ図9の(h)、(i)のような連結編みにして肌着シャツを形成した。
【0073】
得られた編地、並びに肌着シャツには捩れによる皺の発生はなかった。
【0074】
一方、実施形態例1において、鎖編組織を構成する糸2として、56dtexの無撚りのナイロンマルチフィラメント糸(48フィラメント:東洋紡績株式会社製)を図10に示した開き目の鎖編み組織に変更した点を除いて、実施例1と同様にシャツを製造した。得られた編地、並びに肌着シャツには捩れによる大きな皺が発生した。
【0075】
また、具体的実施形態例2として、上述した図8に示した肌着シャツを、その主要部分5の編み組織として、図5に示した組織を採用し、ジャカード制御機構つきのダブルラッシェル経編機(マイヤー製“RDPJ6/2”)を用い作成した。ジャカード機構付きガイドバーL3(フロント側)、L4(バック側)から供給するデンビー組織を構成する糸1´として、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が右回り(S巻回)のカバードヤーンとして、22dtexのポリウレタン糸が56dtexのウーリーナイロン糸でS巻回されたカバードヤーンを作成して用い、図5のループが右回りの閉じ目を有する鎖編組織を構成する糸2´として、ガイドバーL2(フロント側)、L5(バック側)に、56dtexの無撚りのナイロンマルチフィラメント糸(48フィラメント:東洋紡績株式会社製)を総詰(フルセット)で用い、デンビー組織を構成する糸1´の図8の6b、6dの部分をそれぞれ図9の(f)、(g)、図8の7c、7eの部分をそれぞれ図9の(h)、(i)のような連結編みにして肌着シャツを形成した。
【0076】
得られた編地、並びに肌着シャツには捩れによる皺の発生はなかった。
【0077】
一方、実施形態例2において、鎖編組織を構成する糸2´として、56dtexの無撚りのナイロンマルチフィラメント糸(48フィラメント:東洋紡績株式会社製)を図10に示した開き目の鎖編み組織に変更した点を除いて、実施形態例2と同様にシャツを製造した。得られた編地、並びに肌着シャツには捩れによる大きな皺が発生した。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明によれば1本1本交互にZ撚りないしZ巻回の糸とS撚りないしS巻回の糸をセットしなくても、筒状部分を有する捩れが防止されたダブルラッシェル経編地及びそれを用いた衣料を提供することができ、製造の手間が解消され、筒状部分を有する捩れのないダブルラッシェル経編地並びにそれを用いた衣料の製造に有効に利用できる。
【符号の説明】
【0079】
1 デンビー組織を形成する糸
1´ デンビー組織を形成する糸
2 ループが左回りの閉じ目を有する鎖編組織を形成する糸
2´ ループが右回りの閉じ目を有する鎖編組織を形成する糸
5 シャツの主要な部分
6a シャツのパターンの範囲外の下側部分
6c シャツのパターンの範囲外の上側部分
6b、6d 肌着シャツの縁の部分
7a シャツのパターンの範囲外の下側部分
7b シャツの主要な部分
7c、7e 肩の部分
7d シャツのパターンの範囲外の上側部分
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で糸が編みこまれている筒状部分を有するダブルラッシェル経編地であって、
(A)前記コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸が、左撚の片撚糸、又は、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が左回りのカバードヤーンの場合には、ループが左回りの閉じ目を有する鎖編であって、閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織で更に糸が編み込まれているか、
又は、
(B)前記コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸が、右撚の片撚糸、又は、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が右回りのカバードヤーンの場合には、ループが右回りの閉じ目を有する鎖編であって、閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織で更に糸が編み込まれていることを特徴とする筒状部分を有する捩れが防止されたダブルラッシェル経編地。
【請求項2】
前記コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸のルーピング組織が、デンビー組織、コード組織、アトラス組織から選ばれた少なくとも1種である請求項1に記載のダブルラッシェル経編地。
【請求項3】
前記コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸のルーピング組織が、デンビー組織である請求項1〜2のいずれか1項に記載のダブルラッシェル経編地。
【請求項4】
閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織を構成する糸が、無撚りフィラメント糸、左撚りの片撚糸、右撚りの片撚糸、諸撚り糸、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が右回りのカバードヤーンないし左回りのカバードヤーンから選ばれた少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか1項に記載のダブルラッシェル経編地。
【請求項5】
前記コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸が、前記(A)の左撚の片撚糸、又は、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が左回りのカバードヤーンの場合には、用いるループが左回りの閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織を構成する糸が、無撚りフィラメント糸、右撚りの片撚糸、又は、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が右回りのカバードヤーンから選ばれた少なくとも1種の糸であり、
前記コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸が、前記(B)の右撚の片撚糸、又は、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が右回りのカバードヤーンの場合には、用いるループが右回りの閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織を構成する糸が、無撚りフィラメント糸、左撚の片撚糸、又は、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が左回りのカバードヤーンから選ばれた少なくとも1種の糸である請求項1〜3のいずれか1項に記載のダブルラッシェル経編地。
【請求項6】
閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織の閉じ目の割合が80%以上である請求項1〜5のいずれか1項に記載のダブルラッシェル経編地。
【請求項7】
閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織の閉じ目の割合が100%である請求項1〜5のいずれか1項に記載のダブルラッシェル経編地。
【請求項8】
前記閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織を構成する糸が、非弾性糸からなる請求項1〜7のいずれか1項に記載のダブルラッシェル経編地。
【請求項9】
前記コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸が、弾性糸を芯糸とする非弾性繊維によりカバーされたカバードヤーンを含む請求項1〜8のいずれか1項に記載のダブルラッシェル経編地。
【請求項10】
前記コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸が、全ウェールフルセットで編みこまれ、全ウェールの50%以上に前記閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織を構成する糸が編みこまれている請求項1〜9のいずれか1項に記載のダブルラッシェル経編地。
【請求項11】
前記コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸が、全ウェールフルセットで編みこまれ、前記閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織を構成する糸が、全ウェールフルセットで編みこまれている請求項1〜10のいずれか1項に記載のダブルラッシェル経編地。
【請求項12】
前記片撚糸が単糸及び双糸から選ばれた少なくとも1種の片撚糸である請求項1〜11のいずれか1項に記載のダブルラッシェル経編地。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のダブルラッシェル経編地を用いて形成された筒状部分を有する捩れが防止された衣料。
【請求項14】
衣料が、ネックウォーマー、レッグウォーマー、サポーター、ソックス、ストッキング、パンティストッキング、ガードル、ショーツ、ブリーフ、股引、ステテコ、肌着用シャツ、T−シャツ、ポロシャツ、スパッツ、トレーニングパンツ、スポーツ用衣料、外衣類のいずれかである請求項13に記載の衣料。
【請求項1】
コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で糸が編みこまれている筒状部分を有するダブルラッシェル経編地であって、
(A)前記コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸が、左撚の片撚糸、又は、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が左回りのカバードヤーンの場合には、ループが左回りの閉じ目を有する鎖編であって、閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織で更に糸が編み込まれているか、
又は、
(B)前記コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸が、右撚の片撚糸、又は、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が右回りのカバードヤーンの場合には、ループが右回りの閉じ目を有する鎖編であって、閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織で更に糸が編み込まれていることを特徴とする筒状部分を有する捩れが防止されたダブルラッシェル経編地。
【請求項2】
前記コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸のルーピング組織が、デンビー組織、コード組織、アトラス組織から選ばれた少なくとも1種である請求項1に記載のダブルラッシェル経編地。
【請求項3】
前記コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸のルーピング組織が、デンビー組織である請求項1〜2のいずれか1項に記載のダブルラッシェル経編地。
【請求項4】
閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織を構成する糸が、無撚りフィラメント糸、左撚りの片撚糸、右撚りの片撚糸、諸撚り糸、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が右回りのカバードヤーンないし左回りのカバードヤーンから選ばれた少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか1項に記載のダブルラッシェル経編地。
【請求項5】
前記コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸が、前記(A)の左撚の片撚糸、又は、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が左回りのカバードヤーンの場合には、用いるループが左回りの閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織を構成する糸が、無撚りフィラメント糸、右撚りの片撚糸、又は、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が右回りのカバードヤーンから選ばれた少なくとも1種の糸であり、
前記コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸が、前記(B)の右撚の片撚糸、又は、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が右回りのカバードヤーンの場合には、用いるループが右回りの閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織を構成する糸が、無撚りフィラメント糸、左撚の片撚糸、又は、弾性糸を非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンであって前記非弾性糸の巻回方向が左回りのカバードヤーンから選ばれた少なくとも1種の糸である請求項1〜3のいずれか1項に記載のダブルラッシェル経編地。
【請求項6】
閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織の閉じ目の割合が80%以上である請求項1〜5のいずれか1項に記載のダブルラッシェル経編地。
【請求項7】
閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織の閉じ目の割合が100%である請求項1〜5のいずれか1項に記載のダブルラッシェル経編地。
【請求項8】
前記閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織を構成する糸が、非弾性糸からなる請求項1〜7のいずれか1項に記載のダブルラッシェル経編地。
【請求項9】
前記コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸が、弾性糸を芯糸とする非弾性繊維によりカバーされたカバードヤーンを含む請求項1〜8のいずれか1項に記載のダブルラッシェル経編地。
【請求項10】
前記コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸が、全ウェールフルセットで編みこまれ、全ウェールの50%以上に前記閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織を構成する糸が編みこまれている請求項1〜9のいずれか1項に記載のダブルラッシェル経編地。
【請求項11】
前記コース方向において左右のウェールにまたがってルーピング組織で編みこまれている糸が、全ウェールフルセットで編みこまれ、前記閉じ目の割合が50%以上である鎖編組織を構成する糸が、全ウェールフルセットで編みこまれている請求項1〜10のいずれか1項に記載のダブルラッシェル経編地。
【請求項12】
前記片撚糸が単糸及び双糸から選ばれた少なくとも1種の片撚糸である請求項1〜11のいずれか1項に記載のダブルラッシェル経編地。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のダブルラッシェル経編地を用いて形成された筒状部分を有する捩れが防止された衣料。
【請求項14】
衣料が、ネックウォーマー、レッグウォーマー、サポーター、ソックス、ストッキング、パンティストッキング、ガードル、ショーツ、ブリーフ、股引、ステテコ、肌着用シャツ、T−シャツ、ポロシャツ、スパッツ、トレーニングパンツ、スポーツ用衣料、外衣類のいずれかである請求項13に記載の衣料。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−23773(P2013−23773A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156914(P2011−156914)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(396021645)吉田産業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(396021645)吉田産業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】
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