筒状部分を有する分割可能なダブルラッシェル編地
【課題】衣料パターン部の境界部分(筒状部分の外脇側の縁同士間)で引き離すことにより簡単に横方向に隣り合う衣料パターン間が分割可能なダブルラッシェル経編地及び当該編地から形成された筒状部分を有する衣料を提供する。
【解決手段】筒状部分の外縁が衣料の横側の境界ラインの最外境界ラインとなっている衣料パターン部が編地の幅方向に前記筒状部分の最外境界ラインを介して隣り合って並列に複数個並行して形成されているダブルラッシェル経編地の隣接する前記筒状部分の縁同士のフロント側同士及び/又はバック側同士を44〜110dtexのベアーのポリウレタン糸の繋ぎ糸がルーピング組織で編みこんで連結し、衣料パターン部は、少なくとも非弾性糸を含む糸で形成されている、衣料パターン部の境界部分で左右に引き離すことにより分割可能なダブルラッシェル経編地。
【解決手段】筒状部分の外縁が衣料の横側の境界ラインの最外境界ラインとなっている衣料パターン部が編地の幅方向に前記筒状部分の最外境界ラインを介して隣り合って並列に複数個並行して形成されているダブルラッシェル経編地の隣接する前記筒状部分の縁同士のフロント側同士及び/又はバック側同士を44〜110dtexのベアーのポリウレタン糸の繋ぎ糸がルーピング組織で編みこんで連結し、衣料パターン部は、少なくとも非弾性糸を含む糸で形成されている、衣料パターン部の境界部分で左右に引き離すことにより分割可能なダブルラッシェル経編地。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣料を構成するための筒状部分を有する分割可能なダブルラッシェル編地に関するものであり、特に本発明は、筒状部分を有する複数の並列に編まれた衣料パターン部を形成している経編地の衣料パターン部間をカッターなどで切らずに、相互の衣料パターン間を左右に離間するように引っ張ることで容易に衣料パターン部間を分離できる分割可能なダブルラッシェル編地並びに前記ダブルラッシェル経編地から形成された筒状部分を有する衣料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ダブルラッシェル経編機を用い、円筒状部分を有するダブルラッシェル経編地及びそれを用いて形成された経編地からなる衣料は、ソックス、ストッキング、パンティストッキング、ガードル、ショーツ、ブリーフ、股引、ステテコ、スパッツなどのボトム衣料、下着用シャツなどのインナートップス類、スポーツ用衣料、外着用シャツ、チョッキ、ジャッケット、その他のアウター衣料、その他、腹巻、ネックウォーマー、レッグウォーマー、サポーターなど、筒状部分を有する各種衣料に適用されている(下記特許文献1〜3参照)。これらは、通常、生産効率を上げるため、衣料パターンが横方向に隣り合って並列に複数個並行して形成されたものが、縦方向に複数個連続して編まれて生産されている。
【0003】
これらの横方向に隣り合う衣料パターン部間を離間させるのに、通常、ハサミやカッターで切断して分離させているのが最も一般的な方法として採用されてきている。下記特許文献4には、若干目的は異なるが、衣類製品本体部を切り出すためのカットラインとして緩衝部を形成することも提案されている(下記特許文献4の請求項7参照)。ただ、この場合もカットするには、ハサミやカッターなどを使用する必要がある。下記特許文献5にも、衣類製品間を連結する連結部を設けてその部分をカットして分割することが示されている(下記特許文献5の[0023],[0045]参照)。しかし、この場合もカットするには、ハサミやカッターなどを使用する必要がある。
【0004】
筒状部分を持たない、シングルラッシェル経編地において、編地を分割するのに、分割用の抜き糸を編み込んでおいて、左右に隣接する編地片を結合しておき、抜き糸を抜き去ることにより各編地片に分割する手法も知られている(下記特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−222743号公報
【特許文献2】特開2004−91971号公報
【特許文献3】特開2007−182638号公報
【特許文献4】特開2008−214798号公報
【特許文献5】特開2008−248456号公報
【特許文献6】特開平11−200207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、これらの特許文献1〜5に示された技術においては、ハサミやカッターなどを使用する必要があり、カットする部分を見極めてハサミやカッターで正確にカットする必要があり、かなりの手間がかかる。しかも、通常、左右に隣接する衣料と衣料の間は、カットのためのカットしろ(捨て部)を設ける必要があり、その分だけ余分に編地が無駄になる。一方、特許文献6に示された抜き糸による手法も、いちいち糸を抜くのにかなりの手間がかかる。しかも、ダブルラッシェル経編地の筒状部分を抜き糸で連結し、当該糸を抜く手法が、ダブルラッシェル経編地の筒状部分に適用可能かどうか、どのようにするかの具体的提案はなされていない。
【0007】
本発明は、筒状部分を有し、横方向に隣り合う衣料パターンが複数個少なくとも横方向(編地幅方向)に並列して形成されているダブルラッシェル経編地において前記衣料パターン部間を衣料パターン部の境界部分(最外に位置する筒状部分の外脇側の縁同士間)で左右に引き離すことにより簡単に横方向に隣り合う衣料パターン間が分割可能なダブルラッシェル経編地並びに前記経編地から形成された筒状部分を有する衣料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明の筒状部分を有する分割可能なダブルラッシェル編地並びに前記経編地から形成された筒状部分を有する衣料は次のものである。
【0009】
(1)少なくとも1つの筒状部分を有する衣料パターンが編地の幅方向に並列に複数個並行して形成されているダブルラッシェル経編地であって、
前記衣料パターンは、いずれかの筒状部分の外縁が当該衣料パターンの横側の境界ラインの最外境界ラインとなっている衣料パターンであり、
前記衣料パターンは、筒状部分の前記最外境界ラインを介して隣り合って並列に複数個並行して形成されており、
前記隣り合って並列に形成されている衣料パターン同士の隣接する前記最外境界ライン部分同士は繋ぎ糸が編みこまれて連結されており、
前記繋ぎ糸は、一の衣料パターンの最外境界ライン部である前記筒状部分の縁とそれに隣接する他の衣料パターンの最外境界ライン部である前記筒状部分の縁とを交互に適宜のコース毎に渡りを繰り返す繋ぎ糸がルーピング組織で編みこまれて連結されており、
且つ、前記繋ぎ糸は、前記一つの衣料パターン部の筒状部分の縁とそれに隣接する他の衣料パターン部の筒状部分の縁のフロント側同士又はバック側同士又はフロント側同士及びバック側同士をつなぐように編みこまれており、
前記繋ぎ糸が44〜110dtexのベアーのポリウレタン糸であり、前記衣料パターン部分は、少なくとも非弾性糸を含む糸で形成されていること特徴とする前記隣り合って並列に形成されている衣料パターンの境界部分で左右に引き離すことにより分割可能なダブルラッシェル経編地。
【0010】
(2)前記(1)項に記載のダブルラッシェル経編地においては、繋ぎ糸のルーピング組織が、デンビー組織であることが好ましい。
【0011】
(3)前記(1)項に記載のダブルラッシェル経編地においては、繋ぎ糸のルーピング組織が、一方のウェールから隣のウェールに交互にジグザグにコース方向に複数コース間をあけて編みこまれる部分を含むルーピング組織であることが好ましい。
【0012】
(4)前記(1)〜(3)項のいずれか1項に記載のダブルラッシェル経編地においては、衣料パターン部がデンビー組織を含有する編組織で形成されていることが好ましい。
【0013】
(5)前記(1)〜(4)項のいずれか1項に記載のダブルラッシェル経編地においては、衣料パターン部が弾性糸と非弾性糸とが編みこまれて形成されていることが好ましい。
【0014】
(6)前記(5)項に記載のダブルラッシェル経編地においては、衣料パターン部を構成する弾性糸と非弾性糸がともにデンビー組織で編みこまれていることが好ましい。
【0015】
(7)前記(5)項に記載のダブルラッシェル経編地においては、衣料パターン部を構成する弾性糸がデンビー組織、非弾性糸が鎖編組織で編みこまれていることが好ましい。
【0016】
(8)前記(1)〜(4)項のいずれか1項に記載のダブルラッシェル経編地においては、衣料パターン部が弾性糸と非弾性糸とから構成されていて、前記非弾性糸がルーピング組織で、前記弾性糸が、挿入組織で挿入されていることが好ましい。
【0017】
(9)前記(1)〜(8)項のいずれか1項に記載のダブルラッシェル経編地においては、衣料パターンの最外境界ライン部である前記筒状部分の縁を形成する衣料パターンのフロント側とバック側を連結する連結糸が、非弾性糸でカバリングされた弾性糸、又は、非弾性糸と弾性糸の引き揃え糸、を含む糸からなることが好ましい。
【0018】
(10)本発明の衣料は、前記前記(1)〜(9)項のいずれか1項に記載のダブルラッシェル経編地から形成された筒状部分を有する衣料である。
【0019】
(11)前記(10)項に記載の衣料においては、前記筒状部分を有する衣料が、ソックス、ストッキング、パンティストッキング、ガードル、ショーツ、股引、ステテコ、スパッツ、下着用シャツ、スポーツ用衣料、外着用シャツ、チョッキ、ジャッケット、外着衣料、腹巻、ネックウォーマー、レッグウォーマー、サポーターから選ばれた筒状部分を有する衣料であることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
(1)本発明の前記(1)〜(9)項に記載の分割可能なダブルラッシェル経編地は、横方向に隣り合って並列に形成されている衣料パターンの境界部分で左右に引き離すことにより、繋ぎ糸が44〜110dtexのベアーのポリウレタン糸からなるので、繋ぎ糸が切れて、容易に横方向に隣り合う衣料パターン間の境界部分で分割可能であり、左右方向への分割に手間がかからず、しかも、分割前には分割工程前までに受ける加工に必要な強度を有し分離しない経編地を提供できる。しかも、切れた繋ぎ糸は、ベアーのポリウレタン糸からなるので、容易に弾性収縮し、衣料パターン部の編組織中に隠れてしまうので、外部から繋ぎ糸の端部が多数見えて、見栄えが低下してしまうようなことがなく、切れた繋ぎ糸の除去作業を必要としない、隣り合って並列に形成されている衣料パターン部の境界部分で左右に引き離すことにより分割可能なダブルラッシェル経編地を提供できる。
【0021】
(2)また、本発明の衣料は、前記前記(1)〜(9)項のいずれか1項に記載のダブルラッシェル経編地から形成された筒状部分を有する衣料であるので、縫合部分が少なく、したがって、縫合部分や縫合しろの肌への当接による不快感が軽減され、切れた繋ぎ糸は、ベアーのポリウレタン糸からなるので、容易に弾性収縮し、衣料の編組織中に隠れてしまうので、外部から繋ぎ糸の端部が多数見えて、見栄えが低下してしまうようなことがなく切れた繋ぎ糸の除去作業を必要としないので、縫合部分が少なくできることと相俟って、余分な生産工程を極力少なくでき、その結果、コストが削減された衣料を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(a)が本発明の分割可能なダブルラッシェル経編地から形成された衣料の一実施形態例の袖なし肌着シャツのフロント側から見た正面図、(b)がバック側の背面図。
【図2】(a)が本発明の分割可能なダブルラッシェル経編地から形成された衣料の一実施形態例のスパッツのフロント側から見た正面図、(b)がバック側の背面図。
【図3】(a)が本発明の分割可能なダブルラッシェル経編地から形成された衣料の一実施形態例の長袖シャツのフロント側から見た正面図、(b)がバック側の背面図。
【図4】本発明の図1に示した肌着シャツの衣料パターンが隣り合って並列に複数個並行して形成されているダブルラッシェル経編地のフロント側から見た平面図(部分図)。
【図5】本発明の図2に示したスパッツの衣料パターンが隣り合って並列に複数個並行して形成されているダブルラッシェル経編地のフロント側から見た平面図(部分図)。
【図6】本発明の図3に示した長袖シャツの衣料パターンが隣り合って並列に複数個並行して形成されているダブルラッシェル経編地のフロント側から見た平面図(部分図)。
【図7】隣り合う衣料パターン同士の隣接する最外境界ライン部分に繋ぎ糸が編みこまれていない状態を示す連結部近傍(図4〜6の点線で囲んだ部分10)の編組織の一例を示す参考図。
【図8】隣り合う衣料パターン同士の隣接する最外境界ライン部分に繋ぎ糸が編みこまれている状態を示す連結部近傍(図4〜6の点線で囲んだ部分10)の編組織の一例を示す編組織図。
【図9】隣り合う衣料パターン同士の隣接する最外境界ライン部分に繋ぎ糸が編みこまれている状態を示す連結部近傍(図4〜6の点線で囲んだ部分10)の編組織の別の一例を示す編組織図。
【図10】本発明で用いる繋ぎ糸の編組織を示す図。
【図11】本発明の経編地における衣料パターン部を編む場合に用いる糸の組織を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の理解を容易にするため具体的実施形態例を用いて、その図面を参照しながら本発明を詳細に説明するが、以下に取り上げる具体的実施形態例は、本発明の理解を容易にするために例示した実施形態例であり、本発明は、これらの具体的実施形態例のみに限定されるものではない。尚、図面においては、原則として全ての図において矢印Pの方向が、経編地の縦方向(コース方向、編方向、上下方向)を示している。左右方向や横方向、或いは経編地の幅方向、ウェール方向は、経編地の前記縦方向と略直角方向の方向を指す。
【0024】
図1が本発明の分割可能なダブルラッシェル経編地から形成された衣料の一実施形態例の袖なし肌着シャツのフロント側から見た正面図(図1(a))とバック側の背面図(図1(b))であり、図4が、この肌着シャツ1の衣料パターン5(5a,5a)が隣り合って並列に複数個並行して形成されているダブルラッシェル経編地のフロント側から見た平面図(部分図)である。尚、生産効率の点から、通常、編地縦方向にも連続して同様の衣料パターン5(5a、5b、5c)が形成されて編地が製造されるのが一般的であり、この点は、後述する他の実施形態例についても同様である。
【0025】
例えば、ジャカード機構つきのダブルラッシェル経編機を用いて、この肌着シャツの衣料パターン5の部分についての編み方は、通常の筒状部分を有するダブルラッシェル経編の衣料パターン部分の形成に通常用いられている各種の編組織が採用できる。繋ぎ糸を除いて、衣料パターン5の外側の捨て部8についても同様である。
【0026】
本実施形態例の肌着シャツ1の衣料パターン5の筒状部分4は、シャツの胴部が筒状に編まれている。従って、図4において、本実施形態例の肌着シャツ1においては、筒状部分は1つである。従って、衣料パターンの横側の境界ラインの最外境界ラインは、本例のシャツでは筒状部分4の外縁6a、6bである。
【0027】
本実施形態例の肌着シャツ1の編組織の具体例としては、衣料パターン5の本体部分の編組織は、フロント側もバック側も(それぞれのガイドバー使用)例えば、それぞれ図11の(a)、(b)に示したようなデンビー組織で非弾性繊維糸とカバリングされた弾性繊維糸を引きそろえて各ウェール総詰め(フルセット)で編み、かくして、フロント側とバック側を編みながら、同時にこれら筒状部分の外縁6a、6bの部分は、フロント側とバック側を連結する連結編みで連結して編むことにより、筒状とする。
【0028】
筒状部分の外縁6a、6bにおいて、フロント側とバック側を連結する連結編みの編み組織の一例を図11の(e)と(f)に示した。図11の(e)が左右の外縁6a、6bのうち図1の肌着シャツの図に向かって左側(着用者基準では右側)の方の外縁6aのフロント側とバック側の脇部を連結する連結編みの編み組織であり、図11の(f)が左右の両外縁のうち図1の肌着シャツの図に向かって右側(着用者基準では左側)の方の外縁6bのフロント側とバック側の脇部を連結する連結編みの編み組織である。ガイドバー(筬)は(a)、(b)で用いたと同じガイドバー(筬)に通糸している糸が用いられるが、連結編み組織に変えるには、ジャカード制御機構を作動させ、連結編みをする部分のみ図11の(e)と(f)に示した組織(連結編み組織)とすればよい。
【0029】
尚、図11においてFはフロント側の編目位置を示し、Bはバック側の編目位置を示している。他の編組織図においても符号FとBは同様の意味を示している。図11の(e)、(f)に示したフロント側とバック側を連結する連結編みの編み組織は、表裏同じウェールに通っており(言い換えれば、図11の(a)、(b)のように左右方向に振れていない編み方)、したがって、フロント側とバック側を連結するだけであり、通常、そのつなぎ目が目視ではわからない程度にフロント側とバック側を外縁6a、6bでそれぞれ連結し筒状とすることができる。
【0030】
そして、フロント側の肩の部分7a、7bとバック側基布の肩の部分7a、7bは、連結せずに、編み終わった後、それぞれ7a同士と7b同士を縫製で連結してもよいし、この部分を編んで連結する場合には、衣料本体を編んでいる糸が、肩の部分7a、7bを編む位置に到達してこの部分を編む時のみ、この連結すべき部分を、それぞれ前記ジャカード制御機構を使用し、例えば図11の(g)と(h)に示した連結編み組織とすればよい。
【0031】
そして、図4において、左右方向に隣接する衣料パターン5(5a、5a)同士の前記隣接する最外境界ライン部分(筒状部分の外縁)6a、6bはこれらをつなぐように、繋ぎ糸が編みこまれて連結されている。この、連結部近傍(図4の点線で囲んだ部分10)の編組織の一例を、図7〜9を用いて説明する。
【0032】
図7は、理解を容易にするために、この肌着シャツの衣料パターン5(5a、5a)同士が、連結されていない状態の編組織の一例を参考までに示した編組織図であり、衣料パターン5(5a、5a)の本体部分の編組織は、フロント側もバック側も、特に限定するものではないが、例えば図7に示したようなデンビー組織で編まれており、筒状部分の外縁6a、6bは、図11の(e)、(f)に示したフロント側とバック側を連結する連結編みの編み組織で編まれることにより筒状としている。
【0033】
そして、図8は、一つの衣料パターン5(5a)の筒状部分の外縁6bとそれに隣接する他の衣料パターン5(5a)の筒状部分の外縁6aのフロント側同士を繋ぎ糸2の編み込みで連結した状態を示す部分組織図であり、図9は、一つの衣料パターン5(5a)の筒状部分の外縁6bとそれに隣接する他の衣料パターン5(5a)の筒状部分の縁6aのバック側同士を繋ぎ糸2の編み込みで連結した状態を示す部分組織図である。繋ぎ糸では、前記一つの衣料パターン部の筒状部分の縁とそれに隣接する他の衣料パターン部の筒状部分の縁のフロント側同士又はバック側同士、又は図示していないがフロント側同士及びバック側同士をつなぐように編み込むことが必要であり、一方の衣料パターンのフロント側の縁と他方の衣料パターンのバック側の縁をつなぐつなぎ方にすると、複雑になり、技術的にかなり困難で好ましくない。従って、前記一つの衣料パターン部の筒状部分の縁とそれに隣接する他の衣料パターン部の筒状部分の縁のフロント側同士又はバック側同士又はフロント側同士及びバック側同士をつなぐように編み込むことが必要である。
【0034】
いずれの場合もこの例では繋ぎ糸2の編組織がデンビー組織の場合の例を示したが、繋ぎ糸2の編組織は、デンビー組織に限られるものではなく、最外境界ライン部である前記筒状部分の外縁6a、6bとを交互に適宜のコース毎に渡りを繰り返すルーピング組織で編みこまれて連結されていればよい。ここでルーピング組織とは、挿入組織ではないことを意味し、編目を形成する組織であることを意味している。繋ぎ糸2を挿入組織で挿入した場合には、仮に横方向に隣り合って並列に形成されている衣料パターン間の境界部分で分割させるために、左右方向へ引き離した場合、挿入組織の繋ぎ糸がどこか1箇所ないし2箇所で切れると、他の部分は切れずに衣料パターン間の境界部分から引き出されてはみ出た状態で残ってしまうので、後で、残った挿入組織の繋ぎ糸をいちいち抜き取らないと、繋ぎ糸の引き出されてはみ出た部分が残ってしまうことになり、いちいち抜き取るのに非常に手間がかかることになる。したがって、繋ぎ糸は、ルーピング組織で編みこまれていることが必要である。
【0035】
図10に繋ぎ糸の編組織のいくつかの例を示した(この図はフロント側ないしバック側のみの組織図で示している)。図10の(a)が図8や図9の繋ぎ糸の編組織として採用したデンビー組織であり、図10の(b)〜(e)が一方のウェールから隣のウェールに交互にジグザグにコース方向に1コース以上の間をあけて編みこまれる部分を含むルーピング組織の少数の例を示している。図10の(b)が一方のウェールから隣のウェールに交互にジグザグにコース方向に1コースの間をあけて編みこまれるルーピング組織(チェーン番号で表示すると1-0/1-1/1-2/1-1/1-0)、図10の(c)が一方のウェールから隣のウェールに交互にジグザグにコース方向に2コースの間をあけて編みこまれるルーピング組織(チェーン番号で表示すると1-0/1-1/1-1/1-2/1-1/1-1/1-0)、図10の(d)が一方のウェールから隣のウェールに交互にジグザグにコース方向に4コースの間をあけて編み込まれるルーピング組織(チェーン番号で表示すると1-0/1-1/1-1/1-1/1-1/1-2/1-1/1-1/1-1/1-1/1-0)、図10の(e)が一方のウェールから隣のウェールに2コースの間をあけて編み次いで反対側のウェールにコースの間を空けずに編みこむパターンの繰り返しで交互にコース方向にジグザグに編みこまれるルーピング組織(チェーン番号で表示すると1-0/1-2/1-1/1-1/1-2)の例を示した。これは少数の例であり、コース方向に何コースの間をあけて編み込む場合には、どの程度の力で隣り合って並列に形成されている衣料パターンの境界部分で左右に引き離すことにより分割可能としたいかにより、用いる糸の太さも勘案して任意に選択すればよい。通常、衣料パターンの境界部分で左右に引き離す工程は、編み上がった原反を、精錬工程、プレヒートセット工程、染色工程、ファイナルヒートセット工程などの後に左右に引き離すことが一般的なので、左右に引き離す以前の工程で、衣料パターンの境界部分で左右に分割されてしまわない程度の間隔でコースの間をあけて編み込めばよい。
【0036】
繋ぎ糸としては、44〜110dtexのベアーのポリウレタン糸を用いる必要があり、これより細い糸を用いると、精錬工程、プレヒートセット工程、染色工程、ファイナルヒートセット工程などの衣料パターンの境界部分で左右に引き離すことを意図していない工程を通す場合に、このような前加工工程で衣料パターンの境界部分で左右に分割されてしまう恐れがあるので好ましくない。また、110dtexより太い糸を用いると、衣料パターンの境界部分で左右に引き離すことが容易でなくなり好ましくなく、最悪の場合には、左右に引き離す際に、衣料パターン本体部の糸を切断してしまう恐れもあるので、44〜110dtexのベアーのポリウレタン糸を用いる必要があり、この範囲で、適宜、目的に応じて好ましい範囲の太さの糸を用いればよい。繋ぎ糸はベアーのポリウレタン糸を用いる必要があり、他の非弾性糸などでカバリングされたカバードポリウレタンヤーンは、左右に引き離すのみでは切断しにくかったり(カバリング糸が残るなど)、切断されても、切断された繋ぎ糸の非弾性糸からなるカバリングは、弾性収縮しないので、外部から繋ぎ糸の端部が多数見えて、見栄えが低下してしまうので、ベアーのポリウレタン糸を用いる必要がある。ポリウレタン糸と非弾性糸の引き揃え糸を用いても、左右に引き離すのみでは切断しにくかったり、切断されても、切断された繋ぎ糸の非弾性糸は、弾性収縮しないので、外部から繋ぎ糸の端部が多数見えて、見栄えが低下してしまうので、好ましくない。従って、繋ぎ糸としてはベアーのポリウレタン糸を用いる必要がある。
【0037】
尚、衣料パターン本体部分の編組織や糸は、上述したように、図11の(a)や(b)、図7〜9に示したデンビー組織[この場合、弾性糸と非弾性糸の引き揃えとか、フロント側並びのバック側それぞれ1つのガイドバー(筬)で非弾性糸を全ウェールフルセットでデンビー組織で編み、全く同じデンビー組織で別のガイドバー(筬)で全ウェールフルセットで弾性糸を重ねて編んだ場合(これを弾性糸と非弾性糸が同行するデンビー組織とも称する)もこの図に含めている。]のみに限定されるものではなく、フロント側並びのバック側それぞれ1つのガイドバー(筬)で全ウェールフルセットで編まれるデンビー組織と別のガイドバー(筬)から編まれる図11の(c)、(d)に示すような全ウェールフルセットで編まれる鎖編との重ね合わせ(特に限定するものではないが、通常鎖編の糸が非弾性糸、デンビー組織の糸が弾性糸)とか、フロント側並びのバック側それぞれ1つのガイドバー(筬)で全ウェールフルセットの非弾性糸のデンビー組織と別のガイドバー(筬)から供給される弾性糸の挿入組織(図示せず)との組合せとか、フロント側並びのバック側それぞれ1つのガイドバー(筬)で全ウェールフルセットの非弾性糸から成るデンビー組織(例えば図11のフロント側が(a)、バック側が(b))と当該デンビー組織の編目と編目をつなぐシンカーループの傾斜方向が反対向きの別のガイドバー(筬)から供給される弾性糸のデンビー組織(図11のフロント側が(i)、バック側が(j))の組合せ(これを弾性糸と非弾性糸が逆行するデンビー組織とも称する)とか、前記の組合せにおいて、弾性糸ないし非弾性糸のデンビー組織のいずれか又は両方を図11の(k)や(m)に示されるコード組織に変えたものなど衣料の要求特性に応じ適宜変更してよい。更には図11の(a)や(b)のデンビー組織と別のガイドバーでの図11の(k)や(m)に示されるコード組織との重ね合わせ(全ウェールフルセット。デンビー組織又はコード組織を形成する糸のいずれかが弾性糸、他方が非弾性糸。)など、その他ダブルラッッシェル経編において衣料パターンの形成に使用される編組織が適用できる。非弾性糸と弾性糸を併用する場合、例えば、弾性糸は必ずしも全ウェールフルセット(総詰)で供給されていなくてもよく、伸縮性の要求に応じて、1ウェールおきとか、複数ウェールおきの供給にしてもよい。尚、従来と同様、編模様(柄)を付与する場合は、ジャカード制御機構により図11の(a)、(b)、(c)、(d)、(i)、(j)、(k)又は(m)などの編組織を変えて、編模様(柄)を付与してもよい。
【0038】
但し、前記衣料パターン部分は、少なくとも非弾性糸を含む糸(非弾性糸のみで形成される場合も含む)で形成されていることが必要である。衣料パターン部分に非弾性糸が使用されていることにより、隣り合って並列に形成されている衣料パターンの境界部分で左右に引き離すことにより容易に分割が可能となる。また、衣料パターン部が少なくとも非弾性糸を含む糸で形成されていればかまわないが、より好ましくは、繋ぎ糸が編み込まれる連結糸は非弾性糸が含まれている糸で構成されることが好ましい。「非弾性糸が含まれている糸」と言う表現の中には非弾性糸単独の場合、非弾性糸と弾性糸を引きそろえて使用する場合、弾性糸を芯糸とし、その回りを非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンも含まれる意味である。また、特に限定するものではないが、繋ぎ糸が編み込まれる連結糸の太さ(dtex)>繋ぎ糸の太さ(dtex)であることが、衣料パターンの境界部分で左右に引き離すことにより、より容易に分割が可能となると言う観点では好ましい。
【0039】
前記衣料パターン部分に使用される糸の太さは、目的とする衣料の種類や、目的とする機能に応じて適宜の太さの糸を使用すればよく、特に制限するものではないが、通常、非弾性糸の場合には、44〜154dtex(40〜140d)、弾性糸としては、22〜154dtex(20〜140d)の範囲のものが好ましく用いられる。
【0040】
衣料パターン部に用いる非弾性糸としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどのポリエステル繊維糸、ナイロン6やナイロン66などのポリアミド繊維糸、アクリル繊維糸、ポリプロピレン繊維糸、ビニロン繊維糸、木綿、麻、羊毛、絹などの天然繊維糸、レーヨン、キュプラなどの再生繊維糸、アセテートなどの半合成繊維糸などで、紡績糸(混紡糸も含む)、マルチフィラメント糸(混繊糸も含む。嵩高加工糸などの加工糸も含む)などがあげられ、弾性糸としては、ポリウレタン弾性糸、ポリエーテルエステル弾性糸などがあげられ、他の繊維で弾性糸をカバリングしたカバードヤーンが好ましい。上記で説明した事項は、他の態様の本発明の経編地及び当該編地から形成された衣料においてもほぼ同様である。
【0041】
かくして編まれた編地は、必要に応じて上述したようなプレセットその他の加工処理工程を経た後、図4に示す衣料パターン5の衣料裾部のライン9に沿って、並びに衣料パターン5の上側の外形ライン12に沿ってハサミやカッターでカットされ、捨て部8を介してつながっている上下の衣料パターン(5a)と(5b)、(5c)・・・を切り離し、更に編地幅方向に並列に形成されている複数の衣料パターンの境界部分で左右に引き離すことにより個々の衣料パターンに分割される。尚、必要に応じて衣料パターンの衣料裾部のライン9のすぐ外側近傍、ならびに衣料パターンの上側の外形ラインのすぐ外側近傍の編組織を変えて、衣料パターンの衣料裾部のライン9や衣料パターンの上側の外形ラインが容易に目視可能にしてハサミやカッターでカットする場合のカットラインが判別しやすいようにしておくことも好ましい。この点も、他の実施形態例についても同様である。
【0042】
かくして得られた衣料(本実施形態例では肌着シャツ)は、フロント側の肩の部分7a、7bとバック側基布の肩の部分7a、7bが連結編みで編まれて連結されている場合には、特に更に縫製する部分もなく、完成品の肌着シャツが得られる。即ち、衣料パターンが形成された本発明のダブルラッシェル経編地は、左右方向へ引き離すことで、容易に横方向に隣り合う衣料パターン間の境界部分で分割可能なダブルラッシェル経編地が提供され、左右方向への分割に手間がかからず、しかも、左右方向への分割のための捨て部を必要とせず、編地の捨てる部分の割合を減少させることが出来る。得られた衣料は、切れた繋ぎ糸が、ベアーのポリウレタン糸からなるので、容易に弾性収縮し、衣料パターン部の編組織中に隠れてしまうので、外部から繋ぎ糸の端部が多数見えて、見栄えが低下してしまうようなことがなく、切れた繋ぎ糸の除去作業を必要としないし、縫合部分が少なくできることと相俟って、余分な生産工程を極力少なくすることができ、その結果、コストが削減された衣料を提供できる。
【0043】
尚、本実施形態例の肌着シャツでは、編地から個々の衣料パターンに分割された後、特に縫製する部分はないが、フロント側の肩の部分7a、7bとバック側の肩の部分7a、7bは、連結せずに、編み終わった後、それぞれ7a同士と7b同士を縫製で連結してもよい。また、図4の編地における筒状部分4の外縁6a、6bの縦方向の延長ライン(1点鎖線で示した)3は、捨て部分になるので特に限定するものではないが、通常、筒状部分4の外縁6a、6bと同一の編組織で編まれ、同様にベアーのポリウレタン糸からなる繋ぎ糸で同様につながれていることが好ましい。
【0044】
本肌着シャツの実施例において衣料パターン5の部分の編み組織は、筒状部分4の外縁6a、6bの連結糸の部分は除いて、非弾性糸として44dtexのナイロン生糸(捲縮加工などが施されていない糸)と弾性糸として44dtexのベアーポリウレタン糸の引き揃えとし全ウェールフルセット(総詰)で図8に示したデンビー組織(図11の(a)と(b))で形成し、筒状部分4の外縁6a、6bの連結糸も44dtexのナイロン生糸と44dtexのベアーポリウレタン糸の引き揃えとし、繋ぎ糸は44dtexのベアーポリウレタン糸を用い図8に示した衣料パターン部の筒状部分の縁6a,6bのフロント側同士をつなぐ符合2で示したデンビー組織(図10の(a)参照)とした。尚、フロント側の肩の部分7a、7bとバック側の肩の部分7a、7bは、この実施例では図11の(g)と(h)に示した連結編み組織で連結した。
【0045】
この袖なし肌着シャツの衣料パターンが形成された本発明のダブルラッシェル経編地は、上述したような精錬工程、プレヒートセット工程、染色工程、ファイナルヒートセット工程を経た後、図4に示す袖なし肌着シャツの衣料パターン5の衣料裾部のライン9に沿って、並びに袖なし肌着シャツの衣料パターン5の上側の外形ライン12に沿ってハサミやカッターでカットされ、捨て部8を介してつながっている上下の衣料パターン(5a)と(5b)を切り離し、更に編地幅方向に並列に形成されている複数の衣料パターンの境界部分で左右方向へ引き離すことで、容易に横方向に隣り合う衣料パターン間の境界部分で分割可能なダブルラッシェル経編地が提供され、左右方向への分割に手間がかからず、しかも、左右方向への分割のための捨て部を必要とせず、編地の捨てる部分の割合を減少させることが出来た。尚、先に上下の衣料パターンを切り離さずに、まず、左右方向に並列する複数の衣料パターンの境界部分で左右方向へ引き離してから、上下の衣料パターンを切り離してもよい。
【0046】
得られた衣料は、切れた繋ぎ糸が、ベアーのポリウレタン糸からなるので、容易に弾性収縮し、衣料パターン部の編組織中に隠れてしまうので、外部から繋ぎ糸の端部が多数見えて、見栄えが低下してしまうようなことがなく、切れた繋ぎ糸の除去作業を必要としないし、縫合部分が少なくできることと相俟って、余分な生産工程を必要とせず、その結果、コストが削減された衣料を提供できる。
【0047】
次に図2は、本発明の分割可能なダブルラッシェル経編地から形成された本発明の衣料の別の一実施形態例のスパッツ11を示している。図2(a)が当該スパッツのフロント側から見た正面図、(b)がバック側の背面図である。このスパッツは6部丈のスパッツ11である。図5が、このスパッツ11の衣料パターン5(5a、5a)が隣り合って並列に複数個並行して形成されているダブルラッシェル経編地のフロント側から見た平面図(部分図)である。尚、生産効率の点から、前記実施の形態例の編地と同様、通常、編地縦方向にも連続して同様の衣料パターン5(5a、5b、5c)が形成されて編地が製造されるのが一般的である。
【0048】
前述の袖なし肌着と主として異なる点は、本実施形態例のスパッツ11の衣料パターン5の筒状部分4a、4b、4cが、ウェストラインから左右の脚部が分かれる股下直前までが、1つの筒状部分4aが形成され、股下から下部が左右の脚部の筒状部分4b、4cが形成されている点である。そして、筒状部分の縁としては、最外縁の6a、6bと左右の脚部の筒状部分4b、4cを形成する内側の縁6c、6dが存在する点である。8は衣料パターン5の外側の捨て部、9が衣料パターン5の衣料裾部のライン、12が衣料パターン5の上側の外形ライン、3が図5の編地における筒状部分4aの外縁6a、6bの縦方向の延長ライン(1点鎖線で示した)であり、これらの機能や編み組織は、前述の袖なし肌着と同じ符合を付しているものは、前述の袖なし肌着で説明したと同様のものが採用できるので、重複説明を省略している。
【0049】
左右の脚部の筒状部分4b、4cを形成する筒状部分の内側の縁6c、6dの編み組織は、それぞれ、図11の(f)と(e)に示したフロント側とバック側を連結する連結編みの編み組織とすればよい。また、図5の編地における筒状部分4(4a、4b、4c)の外縁6a、6bの縦方向の延長ライン(1点鎖線で示した)3は、捨て部分になるので特に限定するものではないが、通常、筒状部分4(4a、4b、4c)の外縁6a、6bと同一の編組織で編まれ、同様にベアーのポリウレタン糸からなる繋ぎ糸で同様につながれていることが好ましい。
【0050】
そして、このスパッツの態様では、衣料パターンの横側の境界ラインの最外境界ラインとなっているのが、最外境界ライン部分(筒状部分の外縁)6a、6bであり、ここに繋ぎ糸が編みこまれて連結されている。この、連結部近傍(図5の点線で囲んだ部分10)の編組織の一例は、前記実施形態例において図8〜9を用いて説明したと同様である。尚、必要に応じて、左右の脚部の筒状部分4b、4cを形成する内側の外縁6c、6d間にも同様の繋ぎ糸を編み込んで筒状部分の外縁6c、6d間を連結しておき、後に、左右方向に引っ張って、個々の衣料パターンに分割する際に筒状部分の縁6c、6d間を分離すようにしてもよい。但し、この部分は衣料裾部のライン9で上下の衣料パターンを切り離さない限り、捨て部8で一体性が確保されているので、繋ぎ糸で相互につないでおかなくても、かまわない。
【0051】
尚、衣料パターン5の部分の編み組織は、前述の袖なし肌着のところで説明した各種の編組織とすることができる。衣料パターン5の部分の編み組織は、本実施例としては具体的には、筒状部分4の外縁6a、6b及び内側の縁6c、6dの連結糸の部分は除いて、弾性糸として44dtexのナイロンフィラメントでカバリングされた44dtexのポリウレタン糸を図11の(a)、(b)に示したデンビー組織(フルセット)にし、非弾性糸として44dtexのナイロン生糸を図11の(c)、(d)に示した鎖編み組織(フルセット)とした。筒状部分4の外縁6a、6b及び内側の縁6c、6dの連結糸は44dtexのナイロンフィラメントでカバリングされた44dtexのポリウレタン糸で、繋ぎ糸は44dtexのベアーポリウレタン糸を用い図8に示した衣料パターン部の筒状部分の縁6a,6bのフロント側同士をつなぐ符合2で示したデンビー組織(図10の(a)参照)とした。
【0052】
スパッツの衣料パターンが形成された本発明のダブルラッシェル経編地は、上述したような精錬工程、プレヒートセット工程、染色工程、ファイナルヒートセット工程を経た後、図5に示すスパッツの衣料パターン5の衣料裾部のライン9に沿って、並びにスパッツの衣料パターン5の上側の外形ライン12に沿ってハサミやカッターでカットされ、捨て部8を介してつながっている上下の衣料パターン(5a)と(5b)を切り離し、更に編地幅方向に並列に形成されている複数の衣料パターンの境界部分で左右方向へ引き離すことで、容易に横方向に隣り合う衣料パターン間の境界部分で分割可能なダブルラッシェル経編地が提供され、左右方向への分割に手間がかからず、しかも、左右方向への分割のための捨て部を必要とせず、編地の捨てる部分の割合を減少させることが出来た。尚、先に上下の衣料パターンを切り離さずに、まず、左右方向に並列する複数の衣料パターンの境界部分で左右方向へ引き離してから、上下の衣料パターンを切り離してもよい。
【0053】
得られた衣料は、切れた繋ぎ糸が、ベアーのポリウレタン糸からなるので、容易に弾性収縮し、衣料パターン部の編組織中に隠れてしまうので、外部から繋ぎ糸の端部が多数見えて、見栄えが低下してしまうようなことがなく、切れた繋ぎ糸の除去作業を必要としないし、縫合部分が少なくできることと相俟って、余分な生産工程を必要とせず、その結果、コストが削減された衣料を提供できる。尚、本実施形態例のスパッツでは、編地から個々の衣料パターンに分割された後、特に縫製する部分はないが、必要に応じて、ウェスト周りにゴムテーープを縫合したり、ウェスト周りを折り返して縫合して紐通し部を形成し、そこにウェストバンド用の紐を通してもよい。
【0054】
次に図3は、本発明の分割可能なダブルラッシェル経編地から形成された本発明の衣料の別の一実施形態例の長袖シャツ21を示している。図3(a)が当該長袖シャツのフロント側から見た正面図、(b)がバック側の背面図である。図6が、この長袖シャツ21の衣料パターン5(5a、5a)が隣り合って並列に複数個並行して形成されているダブルラッシェル経編地のフロント側から見た平面図(部分図)である。尚、生産効率の点から、前記実施の形態例の編地と同様、通常、編地縦方向にも連続して同様の衣料パターン5(5a、5b、5c)が形成されて編地が製造されるのが一般的である。
【0055】
前述の袖なし肌着と主として異なる点は、本実施形態例の長袖シャツ21の衣料パターン5の筒状部分4e、4d、4fが、左右の袖部を形成している筒状部分4e、4fと、中央の胴部分を形成している筒状部分4dが形成されている点である。そして、筒状部分の縁としては、左右の袖部を形成している筒状部分4e、4fの外縁の6a、6bとその内側の縁6e、6f並びに胴部分を形成している筒状部分4dの左右の外縁6g、6hが存在する点である。8は衣料パターン5の外側の捨て部、9が衣料パターン5の衣料裾部のライン、12が衣料パターン5の上側の外形ライン、3が図5の編地における筒状部分4e、4f の外縁6a、6bの縦方向の延長ライン(1点鎖線で示した)であり、これらの機能や編み組織は、前述の袖なし肌着と同じ符合を付しているものは、前述の袖なし肌着で説明したと同様のものが採用できるので、重複説明を省略している。尚、フロント側の肩の部分7a、7bとバック側基布の肩の部分7a、7bは、連結せずに、編み終わった後、それぞれ7a同士と7b同士を縫製で連結してもよいし、この部分を編んで連結する場合には、衣料本体を編んでいる糸が、肩の部分7a、7bを編む位置に到達してこの部分を編む時のみ、この連結すべき部分を、それぞれ前記ジャカード制御機構を使用し、例えば図11の(g)と(h)に示した連結編み組織とすればよい。
【0056】
左右の袖部を形成している筒状部分4e、4fの外縁の6a、6bの編み組織は、それぞれ、図11の(e)と(f)に示したフロント側とバック側を連結する連結編みの編み組織とし、その内側の縁6e、6fの編み組織は、それぞれ、図11の(f)と(e)に示したフロント側とバック側を連結する連結編みの編み組織とし、胴部分を形成している筒状部分4dの左右の外縁6g、6hの編み組織は、それぞれ、図11の(e)と(f)に示したフロント側とバック側を連結する連結編みの編み組織とすればよい。そして、この長袖シャツの態様では、衣料パターンの横側の境界ラインの最外境界ラインとなっているのが、最外境界ライン部分(筒状部分の外縁)6a、6bであり、ここに繋ぎ糸が編みこまれて連結されている。この、連結部近傍(図6の点線で囲んだ部分10)の編組織の一例は、前記実施形態例において図8〜9を用いて説明したと同様である。尚、必要に応じて、左右の袖部の筒状部分4e、4fを形成する内側の縁6e、6fと胴部分を形成している筒状部分4fの左右の外縁6g、6hそれぞれ間にも同様の繋ぎ糸を編み込んで筒状部分の縁6e、6g 間並びに縁6f、6h 間を連結しておき、後に、左右方向に引っ張って、個々の衣料パターンに分割する際に筒状部分の縁6e、6g 間並びに縁6f、6h 間を分離すようにしてもよい。但し、この部分は、衣料裾部のライン9で上下の衣料パターンを切り離さない限り、捨て部8で一体性が確保されているので、繋ぎ糸で相互のつないでおかなくても、かまわない。
【0057】
尚、衣料パターン5の部分の編み組織は、前述の袖なし肌着のところで説明した各種の編組織とすることができる。衣料パターン5の部分の編み組織は、本実施例としては具体的には、筒状部分4の外縁6a、6b及びその内側の縁6e、6f並びに胴部分を形成している筒状部分4dの左右の外縁6g、6hの連結糸の部分は除いて、弾性糸として44dtexのナイロンフィラメントでカバリングされた44dtexのポリウレタン糸を図11の(a)、(b)に示したデンビー組織(フルセット)にし、非弾性糸として、44dtexのナイロン生糸を編目と編目をつなぐシンカーループの傾斜方向が図11の(a)、(b)とは反対向きの図11の(i)、(J)に示したデンビー組織(フルセット)とした。筒状部分4の外縁6a、6b及びその内側の縁6e、6f並びに胴部分を形成している筒状部分4dの左右の外縁6g、6hの連結糸は44dtexのナイロンフィラメントでカバリングされた44dtexのポリウレタン糸で、繋ぎ糸は44dtexのベアーポリウレタン糸を用い図8に示した衣料パターン部の筒状部分の縁6a,6bのフロント側同士をつなぐ符合2で示したデンビー組織(図10の(a)参照)とした。
【0058】
長袖シャツの衣料パターンが形成された本発明のダブルラッシェル経編地は、上述したような精錬工程、プレヒートセット工程、染色工程、ファイナルヒートセット工程を経た後、図5に示す長袖シャツの衣料パターン5の衣料裾部のライン9に沿って、並びに長袖シャツの衣料パターン5の上側の外形ライン12に沿ってハサミやカッターでカットされ、捨て部8を介してつながっている上下の衣料パターン(5a)と(5b)を切り離し、更に編地幅方向に並列に形成されている複数の衣料パターンの境界部分で左右方向へ引き離すことで、容易に横方向に隣り合う衣料パターン間の境界部分で分割可能なダブルラッシェル経編地が提供され、左右方向への分割に手間がかからず、しかも、左右方向への分割のための捨て部を必要とせず、編地の捨てる部分の割合を減少させることが出来た。尚、先に上下の衣料パターンを切り離さずに、まず、左右方向に並列する複数の衣料パターンの境界部分で左右方向へ引き離してから、上下の衣料パターンを切り離してもよい。
【0059】
得られた衣料は、切れた繋ぎ糸が、ベアーのポリウレタン糸からなるので、容易に弾性収縮し、衣料パターン部の編組織中に隠れてしまうので、外部から繋ぎ糸の端部が多数見えて、見栄えが低下してしまうようなことがなく、切れた繋ぎ糸の除去作業を必要としないし、縫合部分が少なくできることと相俟って、余分な生産工程を必要とせず、その結果、コストが削減された衣料を提供できる。尚、本実施例の長袖シャツでは、フロント側の肩の部分7a、7bとバック側基布の肩の部分7a、7bが連結編みで編まれて連結しているので、得られた編地から個々の衣料パターンに分割された後、特に縫製する部分はないが、フロント側の肩の部分7a、7bとバック側の肩の部分7a、7bは、連結せずに、編み終わった後、それぞれ7a同士と7b同士を縫製で連結してもよい。また、図6の編地における筒状部分4e、4fの外縁6a、6bの縦方向の延長ライン(1点鎖線で示した)3は、捨て部分になるので特に限定するものではないが、通常、筒状部分4e、4f の外縁6a、6bと同一の編組織で編まれ、同様にベアーのポリウレタン糸からなる繋ぎ糸で同様につながれていることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明によれば横方向に隣り合って並列に形成されている衣料パターンの境界部分で左右に引き離すことにより、繋ぎ糸が切れて、容易に横方向に隣り合う衣料パターン間の境界部分で分割可能なダブルラッシェル経編地を提供でき、またそれから製造された衣料は、縫合部分が少なく、余分な生産工程を極力少なくでき、その結果、コストが削減されたダブルラッシェル編みによる経編衣料を提供できるので、ソックス、ストッキング、パンティストッキング、ガードル、ショーツ、ブリーフ、股引、ステテコ、スパッツなどのボトム衣料、下着用シャツなどのインナートップス類、スポーツ用衣料、外着用シャツ、チョッキ、ジャッケット、その他のアウター衣料、その他、腹巻、ウェストニッパー、ネックウォーマー、レッグウォーマー、サポーターなど、筒状部分を有する各種衣類、筒状部分を有する各種インナーウェアー、筒状部分を有する各種アウターウェアーなどとして好適に用いられる。
【符号の説明】
【0061】
1 肌着シャツ
2 繋ぎ糸
3 筒状部分の外縁6a、6bの縦方向の延長ライン
4、4a、4b、4c、4d、4e、4f 筒状部分
5、5a、5b 衣料パターン
6a、6b 筒状部分4の外縁
6c、6d、6e、6f 筒状部分の内側の縁
6g、6h 筒状部分4dの外縁
7a、7b 肩の部分
8 捨て部
9 衣料パターン5の衣料裾部のライン
10 連結部近傍
11 スパッツ
12 衣料パターン5の上側の外形ライン
21 長袖シャツ
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣料を構成するための筒状部分を有する分割可能なダブルラッシェル編地に関するものであり、特に本発明は、筒状部分を有する複数の並列に編まれた衣料パターン部を形成している経編地の衣料パターン部間をカッターなどで切らずに、相互の衣料パターン間を左右に離間するように引っ張ることで容易に衣料パターン部間を分離できる分割可能なダブルラッシェル編地並びに前記ダブルラッシェル経編地から形成された筒状部分を有する衣料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ダブルラッシェル経編機を用い、円筒状部分を有するダブルラッシェル経編地及びそれを用いて形成された経編地からなる衣料は、ソックス、ストッキング、パンティストッキング、ガードル、ショーツ、ブリーフ、股引、ステテコ、スパッツなどのボトム衣料、下着用シャツなどのインナートップス類、スポーツ用衣料、外着用シャツ、チョッキ、ジャッケット、その他のアウター衣料、その他、腹巻、ネックウォーマー、レッグウォーマー、サポーターなど、筒状部分を有する各種衣料に適用されている(下記特許文献1〜3参照)。これらは、通常、生産効率を上げるため、衣料パターンが横方向に隣り合って並列に複数個並行して形成されたものが、縦方向に複数個連続して編まれて生産されている。
【0003】
これらの横方向に隣り合う衣料パターン部間を離間させるのに、通常、ハサミやカッターで切断して分離させているのが最も一般的な方法として採用されてきている。下記特許文献4には、若干目的は異なるが、衣類製品本体部を切り出すためのカットラインとして緩衝部を形成することも提案されている(下記特許文献4の請求項7参照)。ただ、この場合もカットするには、ハサミやカッターなどを使用する必要がある。下記特許文献5にも、衣類製品間を連結する連結部を設けてその部分をカットして分割することが示されている(下記特許文献5の[0023],[0045]参照)。しかし、この場合もカットするには、ハサミやカッターなどを使用する必要がある。
【0004】
筒状部分を持たない、シングルラッシェル経編地において、編地を分割するのに、分割用の抜き糸を編み込んでおいて、左右に隣接する編地片を結合しておき、抜き糸を抜き去ることにより各編地片に分割する手法も知られている(下記特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−222743号公報
【特許文献2】特開2004−91971号公報
【特許文献3】特開2007−182638号公報
【特許文献4】特開2008−214798号公報
【特許文献5】特開2008−248456号公報
【特許文献6】特開平11−200207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、これらの特許文献1〜5に示された技術においては、ハサミやカッターなどを使用する必要があり、カットする部分を見極めてハサミやカッターで正確にカットする必要があり、かなりの手間がかかる。しかも、通常、左右に隣接する衣料と衣料の間は、カットのためのカットしろ(捨て部)を設ける必要があり、その分だけ余分に編地が無駄になる。一方、特許文献6に示された抜き糸による手法も、いちいち糸を抜くのにかなりの手間がかかる。しかも、ダブルラッシェル経編地の筒状部分を抜き糸で連結し、当該糸を抜く手法が、ダブルラッシェル経編地の筒状部分に適用可能かどうか、どのようにするかの具体的提案はなされていない。
【0007】
本発明は、筒状部分を有し、横方向に隣り合う衣料パターンが複数個少なくとも横方向(編地幅方向)に並列して形成されているダブルラッシェル経編地において前記衣料パターン部間を衣料パターン部の境界部分(最外に位置する筒状部分の外脇側の縁同士間)で左右に引き離すことにより簡単に横方向に隣り合う衣料パターン間が分割可能なダブルラッシェル経編地並びに前記経編地から形成された筒状部分を有する衣料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明の筒状部分を有する分割可能なダブルラッシェル編地並びに前記経編地から形成された筒状部分を有する衣料は次のものである。
【0009】
(1)少なくとも1つの筒状部分を有する衣料パターンが編地の幅方向に並列に複数個並行して形成されているダブルラッシェル経編地であって、
前記衣料パターンは、いずれかの筒状部分の外縁が当該衣料パターンの横側の境界ラインの最外境界ラインとなっている衣料パターンであり、
前記衣料パターンは、筒状部分の前記最外境界ラインを介して隣り合って並列に複数個並行して形成されており、
前記隣り合って並列に形成されている衣料パターン同士の隣接する前記最外境界ライン部分同士は繋ぎ糸が編みこまれて連結されており、
前記繋ぎ糸は、一の衣料パターンの最外境界ライン部である前記筒状部分の縁とそれに隣接する他の衣料パターンの最外境界ライン部である前記筒状部分の縁とを交互に適宜のコース毎に渡りを繰り返す繋ぎ糸がルーピング組織で編みこまれて連結されており、
且つ、前記繋ぎ糸は、前記一つの衣料パターン部の筒状部分の縁とそれに隣接する他の衣料パターン部の筒状部分の縁のフロント側同士又はバック側同士又はフロント側同士及びバック側同士をつなぐように編みこまれており、
前記繋ぎ糸が44〜110dtexのベアーのポリウレタン糸であり、前記衣料パターン部分は、少なくとも非弾性糸を含む糸で形成されていること特徴とする前記隣り合って並列に形成されている衣料パターンの境界部分で左右に引き離すことにより分割可能なダブルラッシェル経編地。
【0010】
(2)前記(1)項に記載のダブルラッシェル経編地においては、繋ぎ糸のルーピング組織が、デンビー組織であることが好ましい。
【0011】
(3)前記(1)項に記載のダブルラッシェル経編地においては、繋ぎ糸のルーピング組織が、一方のウェールから隣のウェールに交互にジグザグにコース方向に複数コース間をあけて編みこまれる部分を含むルーピング組織であることが好ましい。
【0012】
(4)前記(1)〜(3)項のいずれか1項に記載のダブルラッシェル経編地においては、衣料パターン部がデンビー組織を含有する編組織で形成されていることが好ましい。
【0013】
(5)前記(1)〜(4)項のいずれか1項に記載のダブルラッシェル経編地においては、衣料パターン部が弾性糸と非弾性糸とが編みこまれて形成されていることが好ましい。
【0014】
(6)前記(5)項に記載のダブルラッシェル経編地においては、衣料パターン部を構成する弾性糸と非弾性糸がともにデンビー組織で編みこまれていることが好ましい。
【0015】
(7)前記(5)項に記載のダブルラッシェル経編地においては、衣料パターン部を構成する弾性糸がデンビー組織、非弾性糸が鎖編組織で編みこまれていることが好ましい。
【0016】
(8)前記(1)〜(4)項のいずれか1項に記載のダブルラッシェル経編地においては、衣料パターン部が弾性糸と非弾性糸とから構成されていて、前記非弾性糸がルーピング組織で、前記弾性糸が、挿入組織で挿入されていることが好ましい。
【0017】
(9)前記(1)〜(8)項のいずれか1項に記載のダブルラッシェル経編地においては、衣料パターンの最外境界ライン部である前記筒状部分の縁を形成する衣料パターンのフロント側とバック側を連結する連結糸が、非弾性糸でカバリングされた弾性糸、又は、非弾性糸と弾性糸の引き揃え糸、を含む糸からなることが好ましい。
【0018】
(10)本発明の衣料は、前記前記(1)〜(9)項のいずれか1項に記載のダブルラッシェル経編地から形成された筒状部分を有する衣料である。
【0019】
(11)前記(10)項に記載の衣料においては、前記筒状部分を有する衣料が、ソックス、ストッキング、パンティストッキング、ガードル、ショーツ、股引、ステテコ、スパッツ、下着用シャツ、スポーツ用衣料、外着用シャツ、チョッキ、ジャッケット、外着衣料、腹巻、ネックウォーマー、レッグウォーマー、サポーターから選ばれた筒状部分を有する衣料であることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
(1)本発明の前記(1)〜(9)項に記載の分割可能なダブルラッシェル経編地は、横方向に隣り合って並列に形成されている衣料パターンの境界部分で左右に引き離すことにより、繋ぎ糸が44〜110dtexのベアーのポリウレタン糸からなるので、繋ぎ糸が切れて、容易に横方向に隣り合う衣料パターン間の境界部分で分割可能であり、左右方向への分割に手間がかからず、しかも、分割前には分割工程前までに受ける加工に必要な強度を有し分離しない経編地を提供できる。しかも、切れた繋ぎ糸は、ベアーのポリウレタン糸からなるので、容易に弾性収縮し、衣料パターン部の編組織中に隠れてしまうので、外部から繋ぎ糸の端部が多数見えて、見栄えが低下してしまうようなことがなく、切れた繋ぎ糸の除去作業を必要としない、隣り合って並列に形成されている衣料パターン部の境界部分で左右に引き離すことにより分割可能なダブルラッシェル経編地を提供できる。
【0021】
(2)また、本発明の衣料は、前記前記(1)〜(9)項のいずれか1項に記載のダブルラッシェル経編地から形成された筒状部分を有する衣料であるので、縫合部分が少なく、したがって、縫合部分や縫合しろの肌への当接による不快感が軽減され、切れた繋ぎ糸は、ベアーのポリウレタン糸からなるので、容易に弾性収縮し、衣料の編組織中に隠れてしまうので、外部から繋ぎ糸の端部が多数見えて、見栄えが低下してしまうようなことがなく切れた繋ぎ糸の除去作業を必要としないので、縫合部分が少なくできることと相俟って、余分な生産工程を極力少なくでき、その結果、コストが削減された衣料を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(a)が本発明の分割可能なダブルラッシェル経編地から形成された衣料の一実施形態例の袖なし肌着シャツのフロント側から見た正面図、(b)がバック側の背面図。
【図2】(a)が本発明の分割可能なダブルラッシェル経編地から形成された衣料の一実施形態例のスパッツのフロント側から見た正面図、(b)がバック側の背面図。
【図3】(a)が本発明の分割可能なダブルラッシェル経編地から形成された衣料の一実施形態例の長袖シャツのフロント側から見た正面図、(b)がバック側の背面図。
【図4】本発明の図1に示した肌着シャツの衣料パターンが隣り合って並列に複数個並行して形成されているダブルラッシェル経編地のフロント側から見た平面図(部分図)。
【図5】本発明の図2に示したスパッツの衣料パターンが隣り合って並列に複数個並行して形成されているダブルラッシェル経編地のフロント側から見た平面図(部分図)。
【図6】本発明の図3に示した長袖シャツの衣料パターンが隣り合って並列に複数個並行して形成されているダブルラッシェル経編地のフロント側から見た平面図(部分図)。
【図7】隣り合う衣料パターン同士の隣接する最外境界ライン部分に繋ぎ糸が編みこまれていない状態を示す連結部近傍(図4〜6の点線で囲んだ部分10)の編組織の一例を示す参考図。
【図8】隣り合う衣料パターン同士の隣接する最外境界ライン部分に繋ぎ糸が編みこまれている状態を示す連結部近傍(図4〜6の点線で囲んだ部分10)の編組織の一例を示す編組織図。
【図9】隣り合う衣料パターン同士の隣接する最外境界ライン部分に繋ぎ糸が編みこまれている状態を示す連結部近傍(図4〜6の点線で囲んだ部分10)の編組織の別の一例を示す編組織図。
【図10】本発明で用いる繋ぎ糸の編組織を示す図。
【図11】本発明の経編地における衣料パターン部を編む場合に用いる糸の組織を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の理解を容易にするため具体的実施形態例を用いて、その図面を参照しながら本発明を詳細に説明するが、以下に取り上げる具体的実施形態例は、本発明の理解を容易にするために例示した実施形態例であり、本発明は、これらの具体的実施形態例のみに限定されるものではない。尚、図面においては、原則として全ての図において矢印Pの方向が、経編地の縦方向(コース方向、編方向、上下方向)を示している。左右方向や横方向、或いは経編地の幅方向、ウェール方向は、経編地の前記縦方向と略直角方向の方向を指す。
【0024】
図1が本発明の分割可能なダブルラッシェル経編地から形成された衣料の一実施形態例の袖なし肌着シャツのフロント側から見た正面図(図1(a))とバック側の背面図(図1(b))であり、図4が、この肌着シャツ1の衣料パターン5(5a,5a)が隣り合って並列に複数個並行して形成されているダブルラッシェル経編地のフロント側から見た平面図(部分図)である。尚、生産効率の点から、通常、編地縦方向にも連続して同様の衣料パターン5(5a、5b、5c)が形成されて編地が製造されるのが一般的であり、この点は、後述する他の実施形態例についても同様である。
【0025】
例えば、ジャカード機構つきのダブルラッシェル経編機を用いて、この肌着シャツの衣料パターン5の部分についての編み方は、通常の筒状部分を有するダブルラッシェル経編の衣料パターン部分の形成に通常用いられている各種の編組織が採用できる。繋ぎ糸を除いて、衣料パターン5の外側の捨て部8についても同様である。
【0026】
本実施形態例の肌着シャツ1の衣料パターン5の筒状部分4は、シャツの胴部が筒状に編まれている。従って、図4において、本実施形態例の肌着シャツ1においては、筒状部分は1つである。従って、衣料パターンの横側の境界ラインの最外境界ラインは、本例のシャツでは筒状部分4の外縁6a、6bである。
【0027】
本実施形態例の肌着シャツ1の編組織の具体例としては、衣料パターン5の本体部分の編組織は、フロント側もバック側も(それぞれのガイドバー使用)例えば、それぞれ図11の(a)、(b)に示したようなデンビー組織で非弾性繊維糸とカバリングされた弾性繊維糸を引きそろえて各ウェール総詰め(フルセット)で編み、かくして、フロント側とバック側を編みながら、同時にこれら筒状部分の外縁6a、6bの部分は、フロント側とバック側を連結する連結編みで連結して編むことにより、筒状とする。
【0028】
筒状部分の外縁6a、6bにおいて、フロント側とバック側を連結する連結編みの編み組織の一例を図11の(e)と(f)に示した。図11の(e)が左右の外縁6a、6bのうち図1の肌着シャツの図に向かって左側(着用者基準では右側)の方の外縁6aのフロント側とバック側の脇部を連結する連結編みの編み組織であり、図11の(f)が左右の両外縁のうち図1の肌着シャツの図に向かって右側(着用者基準では左側)の方の外縁6bのフロント側とバック側の脇部を連結する連結編みの編み組織である。ガイドバー(筬)は(a)、(b)で用いたと同じガイドバー(筬)に通糸している糸が用いられるが、連結編み組織に変えるには、ジャカード制御機構を作動させ、連結編みをする部分のみ図11の(e)と(f)に示した組織(連結編み組織)とすればよい。
【0029】
尚、図11においてFはフロント側の編目位置を示し、Bはバック側の編目位置を示している。他の編組織図においても符号FとBは同様の意味を示している。図11の(e)、(f)に示したフロント側とバック側を連結する連結編みの編み組織は、表裏同じウェールに通っており(言い換えれば、図11の(a)、(b)のように左右方向に振れていない編み方)、したがって、フロント側とバック側を連結するだけであり、通常、そのつなぎ目が目視ではわからない程度にフロント側とバック側を外縁6a、6bでそれぞれ連結し筒状とすることができる。
【0030】
そして、フロント側の肩の部分7a、7bとバック側基布の肩の部分7a、7bは、連結せずに、編み終わった後、それぞれ7a同士と7b同士を縫製で連結してもよいし、この部分を編んで連結する場合には、衣料本体を編んでいる糸が、肩の部分7a、7bを編む位置に到達してこの部分を編む時のみ、この連結すべき部分を、それぞれ前記ジャカード制御機構を使用し、例えば図11の(g)と(h)に示した連結編み組織とすればよい。
【0031】
そして、図4において、左右方向に隣接する衣料パターン5(5a、5a)同士の前記隣接する最外境界ライン部分(筒状部分の外縁)6a、6bはこれらをつなぐように、繋ぎ糸が編みこまれて連結されている。この、連結部近傍(図4の点線で囲んだ部分10)の編組織の一例を、図7〜9を用いて説明する。
【0032】
図7は、理解を容易にするために、この肌着シャツの衣料パターン5(5a、5a)同士が、連結されていない状態の編組織の一例を参考までに示した編組織図であり、衣料パターン5(5a、5a)の本体部分の編組織は、フロント側もバック側も、特に限定するものではないが、例えば図7に示したようなデンビー組織で編まれており、筒状部分の外縁6a、6bは、図11の(e)、(f)に示したフロント側とバック側を連結する連結編みの編み組織で編まれることにより筒状としている。
【0033】
そして、図8は、一つの衣料パターン5(5a)の筒状部分の外縁6bとそれに隣接する他の衣料パターン5(5a)の筒状部分の外縁6aのフロント側同士を繋ぎ糸2の編み込みで連結した状態を示す部分組織図であり、図9は、一つの衣料パターン5(5a)の筒状部分の外縁6bとそれに隣接する他の衣料パターン5(5a)の筒状部分の縁6aのバック側同士を繋ぎ糸2の編み込みで連結した状態を示す部分組織図である。繋ぎ糸では、前記一つの衣料パターン部の筒状部分の縁とそれに隣接する他の衣料パターン部の筒状部分の縁のフロント側同士又はバック側同士、又は図示していないがフロント側同士及びバック側同士をつなぐように編み込むことが必要であり、一方の衣料パターンのフロント側の縁と他方の衣料パターンのバック側の縁をつなぐつなぎ方にすると、複雑になり、技術的にかなり困難で好ましくない。従って、前記一つの衣料パターン部の筒状部分の縁とそれに隣接する他の衣料パターン部の筒状部分の縁のフロント側同士又はバック側同士又はフロント側同士及びバック側同士をつなぐように編み込むことが必要である。
【0034】
いずれの場合もこの例では繋ぎ糸2の編組織がデンビー組織の場合の例を示したが、繋ぎ糸2の編組織は、デンビー組織に限られるものではなく、最外境界ライン部である前記筒状部分の外縁6a、6bとを交互に適宜のコース毎に渡りを繰り返すルーピング組織で編みこまれて連結されていればよい。ここでルーピング組織とは、挿入組織ではないことを意味し、編目を形成する組織であることを意味している。繋ぎ糸2を挿入組織で挿入した場合には、仮に横方向に隣り合って並列に形成されている衣料パターン間の境界部分で分割させるために、左右方向へ引き離した場合、挿入組織の繋ぎ糸がどこか1箇所ないし2箇所で切れると、他の部分は切れずに衣料パターン間の境界部分から引き出されてはみ出た状態で残ってしまうので、後で、残った挿入組織の繋ぎ糸をいちいち抜き取らないと、繋ぎ糸の引き出されてはみ出た部分が残ってしまうことになり、いちいち抜き取るのに非常に手間がかかることになる。したがって、繋ぎ糸は、ルーピング組織で編みこまれていることが必要である。
【0035】
図10に繋ぎ糸の編組織のいくつかの例を示した(この図はフロント側ないしバック側のみの組織図で示している)。図10の(a)が図8や図9の繋ぎ糸の編組織として採用したデンビー組織であり、図10の(b)〜(e)が一方のウェールから隣のウェールに交互にジグザグにコース方向に1コース以上の間をあけて編みこまれる部分を含むルーピング組織の少数の例を示している。図10の(b)が一方のウェールから隣のウェールに交互にジグザグにコース方向に1コースの間をあけて編みこまれるルーピング組織(チェーン番号で表示すると1-0/1-1/1-2/1-1/1-0)、図10の(c)が一方のウェールから隣のウェールに交互にジグザグにコース方向に2コースの間をあけて編みこまれるルーピング組織(チェーン番号で表示すると1-0/1-1/1-1/1-2/1-1/1-1/1-0)、図10の(d)が一方のウェールから隣のウェールに交互にジグザグにコース方向に4コースの間をあけて編み込まれるルーピング組織(チェーン番号で表示すると1-0/1-1/1-1/1-1/1-1/1-2/1-1/1-1/1-1/1-1/1-0)、図10の(e)が一方のウェールから隣のウェールに2コースの間をあけて編み次いで反対側のウェールにコースの間を空けずに編みこむパターンの繰り返しで交互にコース方向にジグザグに編みこまれるルーピング組織(チェーン番号で表示すると1-0/1-2/1-1/1-1/1-2)の例を示した。これは少数の例であり、コース方向に何コースの間をあけて編み込む場合には、どの程度の力で隣り合って並列に形成されている衣料パターンの境界部分で左右に引き離すことにより分割可能としたいかにより、用いる糸の太さも勘案して任意に選択すればよい。通常、衣料パターンの境界部分で左右に引き離す工程は、編み上がった原反を、精錬工程、プレヒートセット工程、染色工程、ファイナルヒートセット工程などの後に左右に引き離すことが一般的なので、左右に引き離す以前の工程で、衣料パターンの境界部分で左右に分割されてしまわない程度の間隔でコースの間をあけて編み込めばよい。
【0036】
繋ぎ糸としては、44〜110dtexのベアーのポリウレタン糸を用いる必要があり、これより細い糸を用いると、精錬工程、プレヒートセット工程、染色工程、ファイナルヒートセット工程などの衣料パターンの境界部分で左右に引き離すことを意図していない工程を通す場合に、このような前加工工程で衣料パターンの境界部分で左右に分割されてしまう恐れがあるので好ましくない。また、110dtexより太い糸を用いると、衣料パターンの境界部分で左右に引き離すことが容易でなくなり好ましくなく、最悪の場合には、左右に引き離す際に、衣料パターン本体部の糸を切断してしまう恐れもあるので、44〜110dtexのベアーのポリウレタン糸を用いる必要があり、この範囲で、適宜、目的に応じて好ましい範囲の太さの糸を用いればよい。繋ぎ糸はベアーのポリウレタン糸を用いる必要があり、他の非弾性糸などでカバリングされたカバードポリウレタンヤーンは、左右に引き離すのみでは切断しにくかったり(カバリング糸が残るなど)、切断されても、切断された繋ぎ糸の非弾性糸からなるカバリングは、弾性収縮しないので、外部から繋ぎ糸の端部が多数見えて、見栄えが低下してしまうので、ベアーのポリウレタン糸を用いる必要がある。ポリウレタン糸と非弾性糸の引き揃え糸を用いても、左右に引き離すのみでは切断しにくかったり、切断されても、切断された繋ぎ糸の非弾性糸は、弾性収縮しないので、外部から繋ぎ糸の端部が多数見えて、見栄えが低下してしまうので、好ましくない。従って、繋ぎ糸としてはベアーのポリウレタン糸を用いる必要がある。
【0037】
尚、衣料パターン本体部分の編組織や糸は、上述したように、図11の(a)や(b)、図7〜9に示したデンビー組織[この場合、弾性糸と非弾性糸の引き揃えとか、フロント側並びのバック側それぞれ1つのガイドバー(筬)で非弾性糸を全ウェールフルセットでデンビー組織で編み、全く同じデンビー組織で別のガイドバー(筬)で全ウェールフルセットで弾性糸を重ねて編んだ場合(これを弾性糸と非弾性糸が同行するデンビー組織とも称する)もこの図に含めている。]のみに限定されるものではなく、フロント側並びのバック側それぞれ1つのガイドバー(筬)で全ウェールフルセットで編まれるデンビー組織と別のガイドバー(筬)から編まれる図11の(c)、(d)に示すような全ウェールフルセットで編まれる鎖編との重ね合わせ(特に限定するものではないが、通常鎖編の糸が非弾性糸、デンビー組織の糸が弾性糸)とか、フロント側並びのバック側それぞれ1つのガイドバー(筬)で全ウェールフルセットの非弾性糸のデンビー組織と別のガイドバー(筬)から供給される弾性糸の挿入組織(図示せず)との組合せとか、フロント側並びのバック側それぞれ1つのガイドバー(筬)で全ウェールフルセットの非弾性糸から成るデンビー組織(例えば図11のフロント側が(a)、バック側が(b))と当該デンビー組織の編目と編目をつなぐシンカーループの傾斜方向が反対向きの別のガイドバー(筬)から供給される弾性糸のデンビー組織(図11のフロント側が(i)、バック側が(j))の組合せ(これを弾性糸と非弾性糸が逆行するデンビー組織とも称する)とか、前記の組合せにおいて、弾性糸ないし非弾性糸のデンビー組織のいずれか又は両方を図11の(k)や(m)に示されるコード組織に変えたものなど衣料の要求特性に応じ適宜変更してよい。更には図11の(a)や(b)のデンビー組織と別のガイドバーでの図11の(k)や(m)に示されるコード組織との重ね合わせ(全ウェールフルセット。デンビー組織又はコード組織を形成する糸のいずれかが弾性糸、他方が非弾性糸。)など、その他ダブルラッッシェル経編において衣料パターンの形成に使用される編組織が適用できる。非弾性糸と弾性糸を併用する場合、例えば、弾性糸は必ずしも全ウェールフルセット(総詰)で供給されていなくてもよく、伸縮性の要求に応じて、1ウェールおきとか、複数ウェールおきの供給にしてもよい。尚、従来と同様、編模様(柄)を付与する場合は、ジャカード制御機構により図11の(a)、(b)、(c)、(d)、(i)、(j)、(k)又は(m)などの編組織を変えて、編模様(柄)を付与してもよい。
【0038】
但し、前記衣料パターン部分は、少なくとも非弾性糸を含む糸(非弾性糸のみで形成される場合も含む)で形成されていることが必要である。衣料パターン部分に非弾性糸が使用されていることにより、隣り合って並列に形成されている衣料パターンの境界部分で左右に引き離すことにより容易に分割が可能となる。また、衣料パターン部が少なくとも非弾性糸を含む糸で形成されていればかまわないが、より好ましくは、繋ぎ糸が編み込まれる連結糸は非弾性糸が含まれている糸で構成されることが好ましい。「非弾性糸が含まれている糸」と言う表現の中には非弾性糸単独の場合、非弾性糸と弾性糸を引きそろえて使用する場合、弾性糸を芯糸とし、その回りを非弾性糸でカバリングしたカバードヤーンも含まれる意味である。また、特に限定するものではないが、繋ぎ糸が編み込まれる連結糸の太さ(dtex)>繋ぎ糸の太さ(dtex)であることが、衣料パターンの境界部分で左右に引き離すことにより、より容易に分割が可能となると言う観点では好ましい。
【0039】
前記衣料パターン部分に使用される糸の太さは、目的とする衣料の種類や、目的とする機能に応じて適宜の太さの糸を使用すればよく、特に制限するものではないが、通常、非弾性糸の場合には、44〜154dtex(40〜140d)、弾性糸としては、22〜154dtex(20〜140d)の範囲のものが好ましく用いられる。
【0040】
衣料パターン部に用いる非弾性糸としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどのポリエステル繊維糸、ナイロン6やナイロン66などのポリアミド繊維糸、アクリル繊維糸、ポリプロピレン繊維糸、ビニロン繊維糸、木綿、麻、羊毛、絹などの天然繊維糸、レーヨン、キュプラなどの再生繊維糸、アセテートなどの半合成繊維糸などで、紡績糸(混紡糸も含む)、マルチフィラメント糸(混繊糸も含む。嵩高加工糸などの加工糸も含む)などがあげられ、弾性糸としては、ポリウレタン弾性糸、ポリエーテルエステル弾性糸などがあげられ、他の繊維で弾性糸をカバリングしたカバードヤーンが好ましい。上記で説明した事項は、他の態様の本発明の経編地及び当該編地から形成された衣料においてもほぼ同様である。
【0041】
かくして編まれた編地は、必要に応じて上述したようなプレセットその他の加工処理工程を経た後、図4に示す衣料パターン5の衣料裾部のライン9に沿って、並びに衣料パターン5の上側の外形ライン12に沿ってハサミやカッターでカットされ、捨て部8を介してつながっている上下の衣料パターン(5a)と(5b)、(5c)・・・を切り離し、更に編地幅方向に並列に形成されている複数の衣料パターンの境界部分で左右に引き離すことにより個々の衣料パターンに分割される。尚、必要に応じて衣料パターンの衣料裾部のライン9のすぐ外側近傍、ならびに衣料パターンの上側の外形ラインのすぐ外側近傍の編組織を変えて、衣料パターンの衣料裾部のライン9や衣料パターンの上側の外形ラインが容易に目視可能にしてハサミやカッターでカットする場合のカットラインが判別しやすいようにしておくことも好ましい。この点も、他の実施形態例についても同様である。
【0042】
かくして得られた衣料(本実施形態例では肌着シャツ)は、フロント側の肩の部分7a、7bとバック側基布の肩の部分7a、7bが連結編みで編まれて連結されている場合には、特に更に縫製する部分もなく、完成品の肌着シャツが得られる。即ち、衣料パターンが形成された本発明のダブルラッシェル経編地は、左右方向へ引き離すことで、容易に横方向に隣り合う衣料パターン間の境界部分で分割可能なダブルラッシェル経編地が提供され、左右方向への分割に手間がかからず、しかも、左右方向への分割のための捨て部を必要とせず、編地の捨てる部分の割合を減少させることが出来る。得られた衣料は、切れた繋ぎ糸が、ベアーのポリウレタン糸からなるので、容易に弾性収縮し、衣料パターン部の編組織中に隠れてしまうので、外部から繋ぎ糸の端部が多数見えて、見栄えが低下してしまうようなことがなく、切れた繋ぎ糸の除去作業を必要としないし、縫合部分が少なくできることと相俟って、余分な生産工程を極力少なくすることができ、その結果、コストが削減された衣料を提供できる。
【0043】
尚、本実施形態例の肌着シャツでは、編地から個々の衣料パターンに分割された後、特に縫製する部分はないが、フロント側の肩の部分7a、7bとバック側の肩の部分7a、7bは、連結せずに、編み終わった後、それぞれ7a同士と7b同士を縫製で連結してもよい。また、図4の編地における筒状部分4の外縁6a、6bの縦方向の延長ライン(1点鎖線で示した)3は、捨て部分になるので特に限定するものではないが、通常、筒状部分4の外縁6a、6bと同一の編組織で編まれ、同様にベアーのポリウレタン糸からなる繋ぎ糸で同様につながれていることが好ましい。
【0044】
本肌着シャツの実施例において衣料パターン5の部分の編み組織は、筒状部分4の外縁6a、6bの連結糸の部分は除いて、非弾性糸として44dtexのナイロン生糸(捲縮加工などが施されていない糸)と弾性糸として44dtexのベアーポリウレタン糸の引き揃えとし全ウェールフルセット(総詰)で図8に示したデンビー組織(図11の(a)と(b))で形成し、筒状部分4の外縁6a、6bの連結糸も44dtexのナイロン生糸と44dtexのベアーポリウレタン糸の引き揃えとし、繋ぎ糸は44dtexのベアーポリウレタン糸を用い図8に示した衣料パターン部の筒状部分の縁6a,6bのフロント側同士をつなぐ符合2で示したデンビー組織(図10の(a)参照)とした。尚、フロント側の肩の部分7a、7bとバック側の肩の部分7a、7bは、この実施例では図11の(g)と(h)に示した連結編み組織で連結した。
【0045】
この袖なし肌着シャツの衣料パターンが形成された本発明のダブルラッシェル経編地は、上述したような精錬工程、プレヒートセット工程、染色工程、ファイナルヒートセット工程を経た後、図4に示す袖なし肌着シャツの衣料パターン5の衣料裾部のライン9に沿って、並びに袖なし肌着シャツの衣料パターン5の上側の外形ライン12に沿ってハサミやカッターでカットされ、捨て部8を介してつながっている上下の衣料パターン(5a)と(5b)を切り離し、更に編地幅方向に並列に形成されている複数の衣料パターンの境界部分で左右方向へ引き離すことで、容易に横方向に隣り合う衣料パターン間の境界部分で分割可能なダブルラッシェル経編地が提供され、左右方向への分割に手間がかからず、しかも、左右方向への分割のための捨て部を必要とせず、編地の捨てる部分の割合を減少させることが出来た。尚、先に上下の衣料パターンを切り離さずに、まず、左右方向に並列する複数の衣料パターンの境界部分で左右方向へ引き離してから、上下の衣料パターンを切り離してもよい。
【0046】
得られた衣料は、切れた繋ぎ糸が、ベアーのポリウレタン糸からなるので、容易に弾性収縮し、衣料パターン部の編組織中に隠れてしまうので、外部から繋ぎ糸の端部が多数見えて、見栄えが低下してしまうようなことがなく、切れた繋ぎ糸の除去作業を必要としないし、縫合部分が少なくできることと相俟って、余分な生産工程を必要とせず、その結果、コストが削減された衣料を提供できる。
【0047】
次に図2は、本発明の分割可能なダブルラッシェル経編地から形成された本発明の衣料の別の一実施形態例のスパッツ11を示している。図2(a)が当該スパッツのフロント側から見た正面図、(b)がバック側の背面図である。このスパッツは6部丈のスパッツ11である。図5が、このスパッツ11の衣料パターン5(5a、5a)が隣り合って並列に複数個並行して形成されているダブルラッシェル経編地のフロント側から見た平面図(部分図)である。尚、生産効率の点から、前記実施の形態例の編地と同様、通常、編地縦方向にも連続して同様の衣料パターン5(5a、5b、5c)が形成されて編地が製造されるのが一般的である。
【0048】
前述の袖なし肌着と主として異なる点は、本実施形態例のスパッツ11の衣料パターン5の筒状部分4a、4b、4cが、ウェストラインから左右の脚部が分かれる股下直前までが、1つの筒状部分4aが形成され、股下から下部が左右の脚部の筒状部分4b、4cが形成されている点である。そして、筒状部分の縁としては、最外縁の6a、6bと左右の脚部の筒状部分4b、4cを形成する内側の縁6c、6dが存在する点である。8は衣料パターン5の外側の捨て部、9が衣料パターン5の衣料裾部のライン、12が衣料パターン5の上側の外形ライン、3が図5の編地における筒状部分4aの外縁6a、6bの縦方向の延長ライン(1点鎖線で示した)であり、これらの機能や編み組織は、前述の袖なし肌着と同じ符合を付しているものは、前述の袖なし肌着で説明したと同様のものが採用できるので、重複説明を省略している。
【0049】
左右の脚部の筒状部分4b、4cを形成する筒状部分の内側の縁6c、6dの編み組織は、それぞれ、図11の(f)と(e)に示したフロント側とバック側を連結する連結編みの編み組織とすればよい。また、図5の編地における筒状部分4(4a、4b、4c)の外縁6a、6bの縦方向の延長ライン(1点鎖線で示した)3は、捨て部分になるので特に限定するものではないが、通常、筒状部分4(4a、4b、4c)の外縁6a、6bと同一の編組織で編まれ、同様にベアーのポリウレタン糸からなる繋ぎ糸で同様につながれていることが好ましい。
【0050】
そして、このスパッツの態様では、衣料パターンの横側の境界ラインの最外境界ラインとなっているのが、最外境界ライン部分(筒状部分の外縁)6a、6bであり、ここに繋ぎ糸が編みこまれて連結されている。この、連結部近傍(図5の点線で囲んだ部分10)の編組織の一例は、前記実施形態例において図8〜9を用いて説明したと同様である。尚、必要に応じて、左右の脚部の筒状部分4b、4cを形成する内側の外縁6c、6d間にも同様の繋ぎ糸を編み込んで筒状部分の外縁6c、6d間を連結しておき、後に、左右方向に引っ張って、個々の衣料パターンに分割する際に筒状部分の縁6c、6d間を分離すようにしてもよい。但し、この部分は衣料裾部のライン9で上下の衣料パターンを切り離さない限り、捨て部8で一体性が確保されているので、繋ぎ糸で相互につないでおかなくても、かまわない。
【0051】
尚、衣料パターン5の部分の編み組織は、前述の袖なし肌着のところで説明した各種の編組織とすることができる。衣料パターン5の部分の編み組織は、本実施例としては具体的には、筒状部分4の外縁6a、6b及び内側の縁6c、6dの連結糸の部分は除いて、弾性糸として44dtexのナイロンフィラメントでカバリングされた44dtexのポリウレタン糸を図11の(a)、(b)に示したデンビー組織(フルセット)にし、非弾性糸として44dtexのナイロン生糸を図11の(c)、(d)に示した鎖編み組織(フルセット)とした。筒状部分4の外縁6a、6b及び内側の縁6c、6dの連結糸は44dtexのナイロンフィラメントでカバリングされた44dtexのポリウレタン糸で、繋ぎ糸は44dtexのベアーポリウレタン糸を用い図8に示した衣料パターン部の筒状部分の縁6a,6bのフロント側同士をつなぐ符合2で示したデンビー組織(図10の(a)参照)とした。
【0052】
スパッツの衣料パターンが形成された本発明のダブルラッシェル経編地は、上述したような精錬工程、プレヒートセット工程、染色工程、ファイナルヒートセット工程を経た後、図5に示すスパッツの衣料パターン5の衣料裾部のライン9に沿って、並びにスパッツの衣料パターン5の上側の外形ライン12に沿ってハサミやカッターでカットされ、捨て部8を介してつながっている上下の衣料パターン(5a)と(5b)を切り離し、更に編地幅方向に並列に形成されている複数の衣料パターンの境界部分で左右方向へ引き離すことで、容易に横方向に隣り合う衣料パターン間の境界部分で分割可能なダブルラッシェル経編地が提供され、左右方向への分割に手間がかからず、しかも、左右方向への分割のための捨て部を必要とせず、編地の捨てる部分の割合を減少させることが出来た。尚、先に上下の衣料パターンを切り離さずに、まず、左右方向に並列する複数の衣料パターンの境界部分で左右方向へ引き離してから、上下の衣料パターンを切り離してもよい。
【0053】
得られた衣料は、切れた繋ぎ糸が、ベアーのポリウレタン糸からなるので、容易に弾性収縮し、衣料パターン部の編組織中に隠れてしまうので、外部から繋ぎ糸の端部が多数見えて、見栄えが低下してしまうようなことがなく、切れた繋ぎ糸の除去作業を必要としないし、縫合部分が少なくできることと相俟って、余分な生産工程を必要とせず、その結果、コストが削減された衣料を提供できる。尚、本実施形態例のスパッツでは、編地から個々の衣料パターンに分割された後、特に縫製する部分はないが、必要に応じて、ウェスト周りにゴムテーープを縫合したり、ウェスト周りを折り返して縫合して紐通し部を形成し、そこにウェストバンド用の紐を通してもよい。
【0054】
次に図3は、本発明の分割可能なダブルラッシェル経編地から形成された本発明の衣料の別の一実施形態例の長袖シャツ21を示している。図3(a)が当該長袖シャツのフロント側から見た正面図、(b)がバック側の背面図である。図6が、この長袖シャツ21の衣料パターン5(5a、5a)が隣り合って並列に複数個並行して形成されているダブルラッシェル経編地のフロント側から見た平面図(部分図)である。尚、生産効率の点から、前記実施の形態例の編地と同様、通常、編地縦方向にも連続して同様の衣料パターン5(5a、5b、5c)が形成されて編地が製造されるのが一般的である。
【0055】
前述の袖なし肌着と主として異なる点は、本実施形態例の長袖シャツ21の衣料パターン5の筒状部分4e、4d、4fが、左右の袖部を形成している筒状部分4e、4fと、中央の胴部分を形成している筒状部分4dが形成されている点である。そして、筒状部分の縁としては、左右の袖部を形成している筒状部分4e、4fの外縁の6a、6bとその内側の縁6e、6f並びに胴部分を形成している筒状部分4dの左右の外縁6g、6hが存在する点である。8は衣料パターン5の外側の捨て部、9が衣料パターン5の衣料裾部のライン、12が衣料パターン5の上側の外形ライン、3が図5の編地における筒状部分4e、4f の外縁6a、6bの縦方向の延長ライン(1点鎖線で示した)であり、これらの機能や編み組織は、前述の袖なし肌着と同じ符合を付しているものは、前述の袖なし肌着で説明したと同様のものが採用できるので、重複説明を省略している。尚、フロント側の肩の部分7a、7bとバック側基布の肩の部分7a、7bは、連結せずに、編み終わった後、それぞれ7a同士と7b同士を縫製で連結してもよいし、この部分を編んで連結する場合には、衣料本体を編んでいる糸が、肩の部分7a、7bを編む位置に到達してこの部分を編む時のみ、この連結すべき部分を、それぞれ前記ジャカード制御機構を使用し、例えば図11の(g)と(h)に示した連結編み組織とすればよい。
【0056】
左右の袖部を形成している筒状部分4e、4fの外縁の6a、6bの編み組織は、それぞれ、図11の(e)と(f)に示したフロント側とバック側を連結する連結編みの編み組織とし、その内側の縁6e、6fの編み組織は、それぞれ、図11の(f)と(e)に示したフロント側とバック側を連結する連結編みの編み組織とし、胴部分を形成している筒状部分4dの左右の外縁6g、6hの編み組織は、それぞれ、図11の(e)と(f)に示したフロント側とバック側を連結する連結編みの編み組織とすればよい。そして、この長袖シャツの態様では、衣料パターンの横側の境界ラインの最外境界ラインとなっているのが、最外境界ライン部分(筒状部分の外縁)6a、6bであり、ここに繋ぎ糸が編みこまれて連結されている。この、連結部近傍(図6の点線で囲んだ部分10)の編組織の一例は、前記実施形態例において図8〜9を用いて説明したと同様である。尚、必要に応じて、左右の袖部の筒状部分4e、4fを形成する内側の縁6e、6fと胴部分を形成している筒状部分4fの左右の外縁6g、6hそれぞれ間にも同様の繋ぎ糸を編み込んで筒状部分の縁6e、6g 間並びに縁6f、6h 間を連結しておき、後に、左右方向に引っ張って、個々の衣料パターンに分割する際に筒状部分の縁6e、6g 間並びに縁6f、6h 間を分離すようにしてもよい。但し、この部分は、衣料裾部のライン9で上下の衣料パターンを切り離さない限り、捨て部8で一体性が確保されているので、繋ぎ糸で相互のつないでおかなくても、かまわない。
【0057】
尚、衣料パターン5の部分の編み組織は、前述の袖なし肌着のところで説明した各種の編組織とすることができる。衣料パターン5の部分の編み組織は、本実施例としては具体的には、筒状部分4の外縁6a、6b及びその内側の縁6e、6f並びに胴部分を形成している筒状部分4dの左右の外縁6g、6hの連結糸の部分は除いて、弾性糸として44dtexのナイロンフィラメントでカバリングされた44dtexのポリウレタン糸を図11の(a)、(b)に示したデンビー組織(フルセット)にし、非弾性糸として、44dtexのナイロン生糸を編目と編目をつなぐシンカーループの傾斜方向が図11の(a)、(b)とは反対向きの図11の(i)、(J)に示したデンビー組織(フルセット)とした。筒状部分4の外縁6a、6b及びその内側の縁6e、6f並びに胴部分を形成している筒状部分4dの左右の外縁6g、6hの連結糸は44dtexのナイロンフィラメントでカバリングされた44dtexのポリウレタン糸で、繋ぎ糸は44dtexのベアーポリウレタン糸を用い図8に示した衣料パターン部の筒状部分の縁6a,6bのフロント側同士をつなぐ符合2で示したデンビー組織(図10の(a)参照)とした。
【0058】
長袖シャツの衣料パターンが形成された本発明のダブルラッシェル経編地は、上述したような精錬工程、プレヒートセット工程、染色工程、ファイナルヒートセット工程を経た後、図5に示す長袖シャツの衣料パターン5の衣料裾部のライン9に沿って、並びに長袖シャツの衣料パターン5の上側の外形ライン12に沿ってハサミやカッターでカットされ、捨て部8を介してつながっている上下の衣料パターン(5a)と(5b)を切り離し、更に編地幅方向に並列に形成されている複数の衣料パターンの境界部分で左右方向へ引き離すことで、容易に横方向に隣り合う衣料パターン間の境界部分で分割可能なダブルラッシェル経編地が提供され、左右方向への分割に手間がかからず、しかも、左右方向への分割のための捨て部を必要とせず、編地の捨てる部分の割合を減少させることが出来た。尚、先に上下の衣料パターンを切り離さずに、まず、左右方向に並列する複数の衣料パターンの境界部分で左右方向へ引き離してから、上下の衣料パターンを切り離してもよい。
【0059】
得られた衣料は、切れた繋ぎ糸が、ベアーのポリウレタン糸からなるので、容易に弾性収縮し、衣料パターン部の編組織中に隠れてしまうので、外部から繋ぎ糸の端部が多数見えて、見栄えが低下してしまうようなことがなく、切れた繋ぎ糸の除去作業を必要としないし、縫合部分が少なくできることと相俟って、余分な生産工程を必要とせず、その結果、コストが削減された衣料を提供できる。尚、本実施例の長袖シャツでは、フロント側の肩の部分7a、7bとバック側基布の肩の部分7a、7bが連結編みで編まれて連結しているので、得られた編地から個々の衣料パターンに分割された後、特に縫製する部分はないが、フロント側の肩の部分7a、7bとバック側の肩の部分7a、7bは、連結せずに、編み終わった後、それぞれ7a同士と7b同士を縫製で連結してもよい。また、図6の編地における筒状部分4e、4fの外縁6a、6bの縦方向の延長ライン(1点鎖線で示した)3は、捨て部分になるので特に限定するものではないが、通常、筒状部分4e、4f の外縁6a、6bと同一の編組織で編まれ、同様にベアーのポリウレタン糸からなる繋ぎ糸で同様につながれていることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明によれば横方向に隣り合って並列に形成されている衣料パターンの境界部分で左右に引き離すことにより、繋ぎ糸が切れて、容易に横方向に隣り合う衣料パターン間の境界部分で分割可能なダブルラッシェル経編地を提供でき、またそれから製造された衣料は、縫合部分が少なく、余分な生産工程を極力少なくでき、その結果、コストが削減されたダブルラッシェル編みによる経編衣料を提供できるので、ソックス、ストッキング、パンティストッキング、ガードル、ショーツ、ブリーフ、股引、ステテコ、スパッツなどのボトム衣料、下着用シャツなどのインナートップス類、スポーツ用衣料、外着用シャツ、チョッキ、ジャッケット、その他のアウター衣料、その他、腹巻、ウェストニッパー、ネックウォーマー、レッグウォーマー、サポーターなど、筒状部分を有する各種衣類、筒状部分を有する各種インナーウェアー、筒状部分を有する各種アウターウェアーなどとして好適に用いられる。
【符号の説明】
【0061】
1 肌着シャツ
2 繋ぎ糸
3 筒状部分の外縁6a、6bの縦方向の延長ライン
4、4a、4b、4c、4d、4e、4f 筒状部分
5、5a、5b 衣料パターン
6a、6b 筒状部分4の外縁
6c、6d、6e、6f 筒状部分の内側の縁
6g、6h 筒状部分4dの外縁
7a、7b 肩の部分
8 捨て部
9 衣料パターン5の衣料裾部のライン
10 連結部近傍
11 スパッツ
12 衣料パターン5の上側の外形ライン
21 長袖シャツ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの筒状部分を有する衣料パターンが編地の幅方向に並列に複数個並行して形成されているダブルラッシェル経編地であって、
前記衣料パターンは、いずれかの筒状部分の外縁が当該衣料パターンの横側の境界ラインの最外境界ラインとなっている衣料パターンであり、
前記衣料パターンは、筒状部分の前記最外境界ラインを介して隣り合って並列に複数個並行して形成されており、
前記隣り合って並列に形成されている衣料パターン同士の隣接する前記最外境界ライン部分同士は繋ぎ糸が編みこまれて連結されており、
前記繋ぎ糸は、一の衣料パターンの最外境界ライン部である前記筒状部分の縁とそれに隣接する他の衣料パターンの最外境界ライン部である前記筒状部分の縁とを交互に適宜のコース毎に渡りを繰り返す繋ぎ糸がルーピング組織で編みこまれて連結されており、
且つ、前記繋ぎ糸は、前記一つの衣料パターン部の筒状部分の縁とそれに隣接する他の衣料パターン部の筒状部分の縁のフロント側同士又はバック側同士又はフロント側同士及びバック側同士をつなぐように編みこまれており、
前記繋ぎ糸が44〜110dtexのベアーのポリウレタン糸であり、前記衣料パターン部分は、少なくとも非弾性糸を含む糸で形成されていること特徴とする前記隣り合って並列に形成されている衣料パターンの境界部分で左右に引き離すことにより分割可能なダブルラッシェル経編地。
【請求項2】
繋ぎ糸のルーピング組織が、デンビー組織である請求項1に記載のダブルラッシェル経編地。
【請求項3】
繋ぎ糸のルーピング組織が、一方のウェールから隣のウェールに交互にジグザグにコース方向に1コース以上の間をあけて編みこまれる部分を含むルーピング組織である請求項1に記載のダブルラッシェル経編地。
【請求項4】
衣料パターン部がデンビー組織を含有する編組織で形成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載のダブルラッシェル経編地。
【請求項5】
衣料パターン部が弾性糸と非弾性糸とが編みこまれて形成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載のダブルラッシェル経編地。
【請求項6】
衣料パターン部を構成する弾性糸と非弾性糸がともにデンビー組織で編みこまれている請求項5に記載のダブルラッシェル経編地。
【請求項7】
衣料パターン部を構成する弾性糸がデンビー組織、非弾性糸が鎖編組織で編みこまれている請求項5に記載のダブルラッシェル経編地。
【請求項8】
衣料パターン部が弾性糸と非弾性糸とから構成されていて、前記非弾性糸がルーピング組織で、前記弾性糸が、挿入組織で挿入されている請求項1〜4のいずれか1項に記載のダブルラッシェル経編地。
【請求項9】
衣料パターンの最外境界ライン部である前記筒状部分の縁を形成する衣料パターンのフロント側とバック側を連結する連結糸が、非弾性糸でカバリングされた弾性糸、又は、非弾性糸と弾性糸の引き揃え糸、を含む糸からなる請求項1〜8のいずれか1項に記載のダブルラッシェル経編地。
【請求項10】
前記請求項1〜9のいずれか1項に記載のダブルラッシェル経編地から形成された筒状部分を有する衣料。
【請求項11】
前記筒状部分を有する衣料が、ソックス、ストッキング、パンティストッキング、ガードル、ショーツ、股引、ステテコ、スパッツ、下着用シャツ、スポーツ用衣料、外着用シャツ、チョッキ、ジャッケット、外着衣料、腹巻、ネックウォーマー、レッグウォーマー、サポーターから選ばれた筒状部分を有する衣料である請求項10記載の衣料。
【請求項1】
少なくとも1つの筒状部分を有する衣料パターンが編地の幅方向に並列に複数個並行して形成されているダブルラッシェル経編地であって、
前記衣料パターンは、いずれかの筒状部分の外縁が当該衣料パターンの横側の境界ラインの最外境界ラインとなっている衣料パターンであり、
前記衣料パターンは、筒状部分の前記最外境界ラインを介して隣り合って並列に複数個並行して形成されており、
前記隣り合って並列に形成されている衣料パターン同士の隣接する前記最外境界ライン部分同士は繋ぎ糸が編みこまれて連結されており、
前記繋ぎ糸は、一の衣料パターンの最外境界ライン部である前記筒状部分の縁とそれに隣接する他の衣料パターンの最外境界ライン部である前記筒状部分の縁とを交互に適宜のコース毎に渡りを繰り返す繋ぎ糸がルーピング組織で編みこまれて連結されており、
且つ、前記繋ぎ糸は、前記一つの衣料パターン部の筒状部分の縁とそれに隣接する他の衣料パターン部の筒状部分の縁のフロント側同士又はバック側同士又はフロント側同士及びバック側同士をつなぐように編みこまれており、
前記繋ぎ糸が44〜110dtexのベアーのポリウレタン糸であり、前記衣料パターン部分は、少なくとも非弾性糸を含む糸で形成されていること特徴とする前記隣り合って並列に形成されている衣料パターンの境界部分で左右に引き離すことにより分割可能なダブルラッシェル経編地。
【請求項2】
繋ぎ糸のルーピング組織が、デンビー組織である請求項1に記載のダブルラッシェル経編地。
【請求項3】
繋ぎ糸のルーピング組織が、一方のウェールから隣のウェールに交互にジグザグにコース方向に1コース以上の間をあけて編みこまれる部分を含むルーピング組織である請求項1に記載のダブルラッシェル経編地。
【請求項4】
衣料パターン部がデンビー組織を含有する編組織で形成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載のダブルラッシェル経編地。
【請求項5】
衣料パターン部が弾性糸と非弾性糸とが編みこまれて形成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載のダブルラッシェル経編地。
【請求項6】
衣料パターン部を構成する弾性糸と非弾性糸がともにデンビー組織で編みこまれている請求項5に記載のダブルラッシェル経編地。
【請求項7】
衣料パターン部を構成する弾性糸がデンビー組織、非弾性糸が鎖編組織で編みこまれている請求項5に記載のダブルラッシェル経編地。
【請求項8】
衣料パターン部が弾性糸と非弾性糸とから構成されていて、前記非弾性糸がルーピング組織で、前記弾性糸が、挿入組織で挿入されている請求項1〜4のいずれか1項に記載のダブルラッシェル経編地。
【請求項9】
衣料パターンの最外境界ライン部である前記筒状部分の縁を形成する衣料パターンのフロント側とバック側を連結する連結糸が、非弾性糸でカバリングされた弾性糸、又は、非弾性糸と弾性糸の引き揃え糸、を含む糸からなる請求項1〜8のいずれか1項に記載のダブルラッシェル経編地。
【請求項10】
前記請求項1〜9のいずれか1項に記載のダブルラッシェル経編地から形成された筒状部分を有する衣料。
【請求項11】
前記筒状部分を有する衣料が、ソックス、ストッキング、パンティストッキング、ガードル、ショーツ、股引、ステテコ、スパッツ、下着用シャツ、スポーツ用衣料、外着用シャツ、チョッキ、ジャッケット、外着衣料、腹巻、ネックウォーマー、レッグウォーマー、サポーターから選ばれた筒状部分を有する衣料である請求項10記載の衣料。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−180620(P2012−180620A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45155(P2011−45155)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(396021645)吉田産業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(396021645)吉田産業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】
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