説明

筒状部材の製造方法

【課題】フローフォーミングによる不等厚成形に比べて、(i)設備費を低減できること、(ii)生産性を向上させることができること、(iii) 外観品質を向上させることができること、の少なくとも1つを達成できる筒状部材の製造方法の提供。
【解決手段】(a)筒状素材4の軸方向一端部を折り曲げて折り曲げ部8を形成する工程と、(b)パンチ26と、側面が凹凸面24とされたダイ22と、押さえ部材23とを、備えたしごき装置20を用いて、筒状素材4を折り曲げ部8にてダイ22に掛止し、ついで、折り曲げ部8を押さえ部材23とダイ22とで挟圧し、ついで、筒状素材4の折り曲げ部8以外の部分をパンチ26とダイ22とでしごき加工し不等厚の筒状部材10を作製する工程と、を有する筒状部材の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状部材の製造方法に関し、特に、筒状素材から不等厚の筒状部材を製造する筒状部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1は、一定厚の板状素材から製造される不等厚の筒状部材の一例として、自動車用不等厚ホイールリムに用いられる円筒状部材を開示している。特許文献1の自動車用不等厚リムの製造方法では、一定厚の板状素材から一定厚の円筒状素材を作製し、該円筒状素材をフローフォーミング(フローターニング、スピニング等)によって不等厚の円筒状部材とし、該不等厚の円筒状部材をロール成形してリム形状を出し、自動車用不等厚リムが製造される。
【0003】
しかし、フローフォーミングを用いた不等厚の筒状部材の製造方法にはつぎの問題点がある。
(i)フローフォーミングは、それに用いる設備が高価となる。
フローフォーミングでは、マンドレルに対して筒状素材を押しつけるロールを、素材軸方向と素材厚さ方向との2つの方向に移動させなければならないので、パンチの送り方向が一方向でよいしごき装置などの設備に比べて、設備が、数倍、高価となる。
また、しごき装置を用いて筒状素材を不等厚化することは、つぎの理由により、考え難い。
(a)パンチが素材軸方向と直交方向に移動しないので、素材の板厚を不等厚にできない。パンチを素材軸方向と直交方向に移動できるようにした装置では、不等厚にする加工に大きな加圧力を必要とし、機構が複雑となり高価になる。
(b)また、ダイとパンチを備えたしごき装置に組み付けて素材をしごき加工により不等厚化することは、素材の材料がダイの凹部に入り込むため、成型後に素材をダイから外せなくなる。
(c)また、ダイとパンチを備えたしごき装置に組み付けて素材をしごき加工により不等厚化する成形では、円筒状素材のようにパンチがひっかかる底板が無い素材では、素材がパンチに引きずり込まれて成形中にダイに対して移動し高精度の成形が困難となるおそれがある。
(ii)フローフォーミングは、生産性が低い。
フローフォーミングは、しごき装置を用いた成形に比べて、生産性が約1/3となる。1つのリム製造ラインに分岐部を設けて該分岐部で3つのサブラインに分岐し、それぞれのサブラインに1つづつフローフォーミング設備を設けると、生産性の問題は解消されるが、フローフォーミング設備が3セットとなり、設備費用が3倍になる、かつ、フローフォーミング設備を設ける設置スペースが3倍必要になる、などの問題が生じるので、採用困難である。
(iii) フローフォーミングの成形ロールの成形痕が素材に残り、外観品質が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2004−512963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、従来のフローフォーミングによる不等厚成形に比べて、(i)設備費を低減できること、(ii)生産性を向上させることができること、(iii) 外観品質を向上させることができること、の少なくとも1つを達成できる筒状部材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明はつぎの通りである。
(1) パンチと該パンチに対向する側の側面が凹凸面とされたダイとを備えたしごき装置を用いて、筒状素材をしごき加工し、不等厚の筒状部材を作製するしごき加工工程を有する、筒状部材の製造方法。
(2) 前記しごき加工工程では、前記筒状素材を前記ダイにセットし、前記しごき装置を作動させて前記パンチを前記ダイに対して相対動させ、前記ダイの凹凸面と前記パンチとによる前記筒状素材の径と板厚の変化を伴いつつ、前記筒状素材をしごき加工して前記不等厚の筒状部材を作製する、(1)記載の筒状部材の製造方法。
(3) 前記凹凸面は、前記ダイの前記パンチに対向する側の側面の軸方向で、前記ダイと前記パンチの間隔を前記筒状素材の板厚より狭くする凸部が前記ダイに少なくとも1つ設けられることにより形成されている、(1)記載の筒状部材の製造方法。
(4) 前記しごき加工工程では、不等厚の筒状部材を作製した後、該筒状部材に軸方向に力を加え、該筒状部材を半径方向に変形させて、前記ダイから前記筒状部材を外す、(1)記載の筒状部材の製造方法。
(5) 前記凹凸面は、前記ダイの前記パンチに対向する側の側面の周方向で、前記ダイと前記パンチの間隔を前記筒状素材の板厚より狭くする凸部が前記ダイに少なくとも1つ設けられることにより形成されている、(1)記載の筒状部材の製造方法。
(6) 前記しごき加工工程の前に、前記筒状素材の軸方向一端部を該筒状素材の軸方向と交わる方向に折り曲げて前記筒状素材に折り曲げ部を形成する工程を有し、前記しごき加工工程で前記折り曲げ部を前記ダイに軸方向に掛止して前記しごき加工を行う、(1)記載の筒状部材の製造方法。
(7) 前記しごき加工工程では、前記筒状素材の前記折り曲げ部を、前記ダイに軸方向に掛止するとともに前記ダイと押さえ部材とで挟圧し、前記筒状素材の前記折り曲げ部以外の少なくとも一部を前記しごき加工を行なう、(6)記載の筒状部材の製造方法。
(8) 前記しごき加工工程の前に、一定厚の平板状素材から前記筒状素材を作製する筒状素材製作工程を有する、(1)記載の筒状部材の製造方法。
(9)前記しごき加工工程の後に、前記不等厚の筒状部材を自動車用ホイールリム形状にロール成形するロール成形工程を有する、(1)記載の筒状部材の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
上記(1)の筒状部材の製造方法によれば、筒状素材をしごき加工により不等厚の筒状部材に成形するため、従来のフローフォーミングのための設備と工程が不要となる。その結果、前述の(i)、(ii)、(iii) のフローフォーミングに付随する問題点が、それぞれ、つぎの(i)、(ii)、(iii) のように解決される。
(i)従来のフローフォーミング設備が、本発明では、しごきのダイ、パンチと、しごき装置にとって代わられ、フローフォーミング設備費用に比べてしごきのダイ、パンチと、しごき装置の合計費用が低価であるため、従来に比べて設備費用を低減できる。
(ii)素材の不等厚化において、従来のフローフォーミング工程が、本発明では、しごき装置によるしごき加工工程にとって代わられるため、筒状素材を不等厚化する時間をフローフォーミングに比べて約1/3に短縮でき、生産性を向上できる。1つのリム製造ラインに円筒状素材の板厚を不等厚化する工程を設ける場合に、従来のフローフォーミングに代えてしごき装置を用いたしごき成形を用いると、従来1つのリム製造ラインにつき3セットのフローフォーミング設備を設けなければならなかったところを、1セットのしごき装置を用いたしごき設備を設けるだけで済み、コスト上および設備設置スペース上の問題点を解決できる。
(iii) フローフォーミングがパンチとダイによるしごきにとって代わられるため、不等厚筒状部材に、フローフォーミングの成形ロールの成形痕が残らず、外観品質が維持される。
【0008】
上記(2)の筒状部材の製造方法によれば、パンチをダイに対して軸方向に相対動させ、筒状素材をしごき加工して不等厚の筒状部材を作製するので、パンチのダイに対する相対動は半径方向動は伴わず軸方向動のみであり、しごき装置をパンチのダイに対する一方向ストローク動に使用できる。その結果、成形時間の短縮化、成形設備のコストダウンをはかることができる。
【0009】
上記(3)の筒状部材の製造方法によれば、凹凸面が、ダイのパンチに対向する側の側面の軸方向で、ダイとパンチの間隔を筒状素材の板厚より狭くする凸部がダイに少なくとも1つ設けられることにより形成されているので、軸方向に厚さが変化する筒状部材を作製できる。
【0010】
上記(4)の筒状部材の製造方法によれば、不等厚の筒状部材を作製した後、該筒状部材に軸方向の力を加え、該筒状部材を半径方向に変形させて、ダイから筒状部材を外すので、ダイを、周方向に分割する必要がなく、一体のダイを用いることができる。その結果、周方向に分割されたダイを用いる場合に比べて、分割ダイを半径方向に移動させる機構が必要でなく、設備費用を低く維持できる。さらに、しごき加工後の筒状部材に分割ダイの合わせ部にくい込んだばりが残ることがなく、ばり取り加工が不必要である。
【0011】
上記(5)の筒状部材の製造方法によれば、凹凸面が、ダイのパンチに対向する側の側面の周方向で、ダイとパンチの間隔を筒状素材の板厚より狭くする凸部がダイに少なくとも1つ設けられることにより形成されているので、周方向に厚さが変化する筒状部材を作製できる。
【0012】
上記(6)の筒状部材の製造方法によれば、しごき加工工程で折り曲げ部をダイに軸方向に掛止してしごき加工を行うので、素材がパンチによって引きずり込まれて成形中にダイに対して移動することが抑制され、高精度の成形が可能となる。
【0013】
上記(7)の筒状部材の製造方法によれば、しごき加工を行なうときに折り曲げ部をダイと押さえ部材で挟圧するので、筒状素材全体がパンチが押す軸方向にずれることを抑制できる。
【0014】
上記(8)の筒状部材の製造方法によれば、しごき加工工程の前に、筒状素材を一定厚の平板状素材から作製する筒状素材製作工程を有するので、一定厚の筒状素材を製作できる。
【0015】
上記(9)の筒状部材の製造方法によれば、しごき加工工程の後に、不等厚の筒状部材を自動車用ホイールリム形状にロール成形するロール成形工程を有するので、不等厚の軽量な、自動車用ホイールリムを作製できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例1の筒状部材の製造方法の、折り曲げ部形成工程、しごき加工工程を示す工程図である。ただし、本図は、ダイとパンチの関係を変えることにより、本発明の実施例2にも適用可能である。図1(a)は筒状素材を示す。図1(b)は折り曲げ部を形成した筒状素材を示す。左半分は断面を示し、右半分は外観を示す。図1(c)はしごき加工工程を示す。左半分はしごき加工前を示し、右半分はしごき加工後を示す。図1(d)はしごき加工工程後の不等厚の筒状部材を示す。左半分は断面を示し、右半分は外観を示す。
【図2】本発明の実施例1の筒状部材の製造方法の、筒状素材製作工程を示す工程図である。ただし、本図は、本発明の実施例2にも適用可能である。図2(a)は一定厚の板状素材を筒状に巻き、巻きの端部を溶接した筒状素材の製作工程を示す。図2(b)はパイプ状素材を所定長さに切断した筒状素材の製作工程を示す。
【図3】本発明の実施例1の筒状部材の製造方法の、ロール成形工程を示す工程図である。ただし、本図は、本発明の実施例2にも適用可能である。図3(a)は上ロールと下ロールの間に筒状素材を挟み、ロール成形をしている状態の側面図を示す。図3(b)は上ロールと下ロールの間に筒状素材を挟み、ロール成形をしている状態の正面図を示す。図3(c)はロール成形後、リム形状になった筒状部材を示す。
【図4】本発明の実施例1の筒状部材の製造方法の、しごき装置を示す断面図である。本図は、ダイとパンチと押さえ部材の関係を変えることにより、本発明の実施例2にも適用可能である。図4の左半分はしごき加工前のダイに筒状素材を挿入した状態を示し、図4の右半分はしごき加工後を示す。
【図5】本発明の実施例1の筒状部材の製造方法の、パンチ、ダイ、筒状素材を示す部分断面図である。図5の左半分はしごき加工前を示し、図5の右半分はしごき加工後を示す。
【図6】本発明の実施例1の筒状部材の製造方法の、ダイ(アウターダイ)のみを軸方向から見た断面図である。
【図7】本発明の実施例2の筒状部材の製造方法の、パンチ、ダイ、筒状素材を示す部分断面図である。図7の左半分はしごき加工前を示し、図7の右半分はしごき加工後を示す。
【図8】本発明の実施例2の筒状部材の製造方法の、ダイ(インナーダイ)のみを軸方向から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の筒状部材の製造方法を、図面を参照して説明する。
図中、図1〜図6は、本発明の実施例1に適用可能であり、図7、図8は、本発明の実施例2に適用可能である。ただし、図1、図4は、ダイとパンチと押さえ部材の関係を変えることにより、本発明の実施例2にも適用可能であり、図2、図3は、本発明の実施例2にも適用可能である。
本発明の全実施例に共通な部分に対しては、本発明の全実施例にわたって同じ符号を付してある。
【0018】
まず、本発明の全実施例に共通な部分を、図1〜図8を参照して、説明する。
本発明の筒状部材10の製造方法は、図1に示すように、筒状素材4から不等厚の筒状部材10(10A、10B)を製造する方法である。筒状素材4の材料は金属であり、金属は、たとえば、鋼、非鉄金属(アルミニウム、マグネシウム、チタンおよびその合金を含む)などである。不等厚の筒状部材10は、内周面と外周面の一方が凹凸面とされ、他方の面が軸芯と平行なストレート状の壁を有する部材10Aであってもよいし、図3に示すように、不等厚の筒状部材10Aをさらにロール成形して軸直交方向に湾曲する壁を有する部材10Bであってもよい。不等厚の筒状部材10Aは、たとえばしごき加工後の折り曲げ部8を除く(内周面または外周面)部分が軸芯と平行な不等厚の筒状部材であり、不等厚の筒状部材10Bは、たとえば乗用車用、トラック・バス用、産業車両用のホイールリムである。ただし、不等厚の筒状部材10Bは、ホイールリムに限るものではない。また、不等厚の筒状部材10(10A、10B)は、断面円形の部材に限るものではなく、たとえば断面多角形の筒状部材、または断面楕円形状の筒状部材であってもよい。
【0019】
本発明の筒状部材10の製造方法は、図1に示すように、(a)筒状素材4の軸方向一端部を折り曲げて筒状素材4に折り曲げ部8を形成する折り曲げ部形成工程と、(b)パンチ26と、パンチ26に対向する側の側面が凹凸面24とされたダイ22と、押さえ部材23とを備えたしごき装置20を用いて、筒状素材4を折り曲げ部8にてダイ22に軸方向に掛止し(引っ掛けて)、ついで、押さえ部材23をダイ22に対して相対動させて筒状素材4の折り曲げ部8を押さえ部材23とダイ22とで挟圧し、ついで、筒状素材4の折り曲げ部8以外の部分の少なくとも一部をパンチ26をダイ22に対して相対動させてしごき加工し、不等厚の筒状部材10(10A)を作製するしごき加工工程と、を有する。
なお、図1におけるしごき加工工程を示す(c)において、左半分はしごき加工前の筒状素材4の折り曲げ部8を押さえ部材23とダイ22とで挟圧している状態を示し、右半分はパンチ26をダイ22に対して相対動させて筒状素材4をしごき加工し、筒状素材4が不等厚の筒状部材10(10A)となった状態を示している。
なお、筒状素材4が鋳造品である場合など、最初から筒状素材4に折り曲げ部8に相当するダイ22に係止可能な形状がある場合には、折り曲げ部形成工程は不要である。
【0020】
上記折り曲げ部8を形成する工程の前に、図2に示すような、一定厚の平板状素材2から一定厚の筒状素材4を作製する筒状素材製作工程を有していてもよい。筒状素材製作工程では、図2(a)に示すように、一定厚の平板状素材(矩形素材)2は、たとえばコイル状に巻かれた一定厚の帯状部材から、帯状部材を直線状に引き出して、所定寸法長さ毎に切断することにより、順次、作製される。ついで、平板状素材2は、筒状に巻かれ、巻きの両端部を互いに突き合わせてフラッシュバット溶接、バット溶接、アーク溶接等で溶接し、溶接部6の盛り上がりとバリをトリミングして、一定厚の筒状素材4を作製する。
なお、筒状素材製作工程では、図2(b)に示すように、パイプ状素材2´を所定寸法長さに切断して一定厚の筒状素材4を製作しても良い。
【0021】
図1(b)に示すように、折り曲げ部8を形成する場合は、しごき加工工程の前に、折り曲げ部8形成工程を挿入する。折り曲げ部8は、しごき加工工程で、一定厚の筒状素材4をダイ22に軸方向に掛止して位置決めし、しごき加工時に筒状素材4がダイ22に対して軸方向にずれないようにすることに役立つ。折り曲げ部8の角度は筒状素材4の軸方向から内側または外側へ0度から180度の範囲内で加工することができ、角度が大きくなるほどしごき加工時の筒状素材4のダイ22に対する軸方向のずれを防ぐことができる。ただし、折り曲げ部8を形成することなく、一定厚の筒状素材4を、直接、しごき加工工程に送ってもよい。
【0022】
しごき加工工程では、一定厚の筒状素材4(折り曲げ部8をもつ筒状素材4)を折り曲げ部8にてダイ22に軸方向に掛止しダイ22にセットする。その後、しごき装置20を作動させて押さえ部材23とパンチ26をダイ22に対して筒状素材4の軸方向にのみ相対動させ(接近させ)る。押さえ部材23とパンチ26をダイ22に対して相対動させると、押さえ部材23がダイ22にセットされた筒状素材4の折り曲げ部8に当たり、押さえ部材23とダイ22とで筒状素材4の折り曲げ部8を挟圧し(押さえ部材23で筒状素材4の折り曲げ部8をダイ22に押し付け)、押さえ部材23は止まる。パンチ26がさらにダイ22に対して筒状素材4の軸方向にのみ相対動し(接近し)、筒状素材4の折り曲げ部8以外の部分をダイ22の凹凸面24とパンチ26とによる筒状素材4の径と板厚の変化を伴いつつしごき加工する。
筒状素材4をしごき加工しているとき、パンチ26の移動方向に、筒状素材4の軸方向長さは徐々に長くなる(伸びる)。
なお、しごき加工に必要な力が小さい場合、押さえ部材23は無くてもよい。
【0023】
しごき装置20は、たとえば、図4に示すようなプレス機30で構成される。
プレス機30は、架台32、架台32に取り付けられたラム駆動手段34、ラム駆動手段34により上下動されるラム36、ボルスター38、素材保持排出板40、素材保持排出板40に連結され素材保持排出板40に素材排出荷重をかける素材保持排出板駆動手段42を有する。ダイ22はボルスター38またはボルスター38に対して固定される固定部材に固定され、パンチ26はラム36またはラム36に固定される固定部材に固定される。ラム駆動手段34を作動させて(プレス機30を作動させて)ラム36を下降させると、パンチ26がダイ22に対して筒状素材4の軸方向にのみ相対動(接近)する。
ここでプレス機30はラム駆動手段34が液圧シリンダの液圧式プレスのほか、ラム駆動手段34がモータとクランク軸、コネクティングロッド等からなる機械式プレスであってもよいし、ラム駆動手段34がサーボモータ、ボールスクリュー等からなるサーボ駆動プレスであってもよい。また素材保持排出板駆動手段42は、油圧シリンダであっても空圧シリンダであってもよく、また電動モータ等を用いた昇降機構であっても良い。
【0024】
固定側がダイ22で、可動側がパンチ26である。図1(c)に示すように、ダイ22の、パンチ26の突出部28に対向する側の側面が凹凸面24とされている。凹凸面24は、パンチ26の突出部28との間隔(一定厚の筒状素材4の板厚の方向の間隔)が一様でなく異なる部分がある面である。
ダイ22の凹凸面24は、パンチ26の突出部28に対向する側の側面とパンチ26の突出部28との間隔を一定厚の筒状素材4の板厚より狭くするために、(a)図5に示すように、ダイ22の側面の軸方向で、隣接する部分(凹部24b)に比べてパンチ26の突出部28側に凸となる凸部24aが少なくとも1つ設けられることにより形成されていてもよく、(b)図6に示すように、ダイ22の側面の周方向で、隣接する部分(凹部24b)に比べてパンチ26の突出部28側に凸となる凸部24aが少なくとも1つ設けられることにより形成されていてもよく、(c)上記(a)と上記(b)の複合にて形成されていてもよい。
凸部24aの突出量は、筒状部材10の各部分の目標板厚によって決定され、1つの凸部24aの中で、一定とされていてもよく異なっていてもよい。また、複数の凸部24aが設けられる場合、それぞれの凸部24aの突出量は筒状部材10の各部分の目標板厚によって決定され、それぞれの凸部24aの突出量は同一であってもよく異なっていてもよい。凸部24aは、ダイ22のパンチ26の突出部28に対向する側の側面の少なくとも一部に形成されていればよい。
図5に示すように、ダイ22の側面の軸方向で、1つの凸部24aと、その1つの凸部24aよりしごき加工時のパンチ26の移動方向の先側にありその1つの凸部24aに隣接する凹部24bとは、ダイ22の側面の軸芯と直交する面ではない傾斜面からなる第1の傾斜面24c1で接続されている。軸芯と直交する面の場合に比べて、素材保持排出板40から筒状部材10Aに素材排出荷重をかけたときに、筒状部材10Aが凸部24aに引っ掛かり難く筒状部材10Aがダイ22から外れやすいためである。また、ダイ22の側面の軸方向で、1つの凸部24aと、その1つの凸部24aより筒状部材10(10A)をダイ22から外すときに素材保持排出板40が移動する方向の先側にありその1つの凸部24aに隣接する凹部24bとは、ダイ22の側面の軸芯と直交する面ではない傾斜面からなる第2の傾斜面24c2で接続されている。第1の傾斜面24c1と第2の傾斜面24c2との、ダイ22の側面の軸方向に対する角度は、60度以下に緩やかにされていることが望ましく、さらには45度以下に緩やかにされていることが望ましい。各第1の傾斜面24c1の傾斜角度は、一定であってもよく、徐々に変化していてもよい。また、各第2の傾斜面24c2の傾斜角度は、一定であってもよく、徐々に変化していてもよい。
パンチ26は、ダイ22に向かって移動された時の先端部近傍に、ダイ22に向かって突出する突出部28を有し、突出部28で筒状素材4をしごく。
【0025】
素材保持排出板40は、一定厚の筒状素材4のしごき加工時に(しごき加工工程時に)、筒状素材4の折り曲げ部8と反対側の端面がダイ22に対してしごき加工による想定した伸び以上に軸方向にずれないようにするために、しごき加工時にパンチ26が移動する方向(筒状素材4を押す方向)と反対方向から(筒状素材4の軸方向に)筒状素材4を押し受ける(支える)。なお、筒状素材4をしごき加工しているときに筒状素材4の軸方向長さは徐々に長くなるが、素材保持排出板40の位置は素材保持排出板駆動手段42により制御されており、筒状素材4の軸方向長さの変化に伴って素材保持排出板40が後退し、素材保持排出板40は一定荷重でまたは略一定荷重で筒状素材4を軸方向にしごき加工中押し続けることができるようになっている。
また、素材保持排出板40に作用する荷重を制御してもよいし、軸方向に変位する量を制御してもよい。
【0026】
図1(c)に示すように、しごき加工工程では、パンチ26を下降させて不等厚の筒状部材10(10A)を作製した後、パンチ26をダイ22から抜いた後あるいは抜きながら該筒状部材10(10A)に素材保持排出板40からの軸方向の力を加え、該筒状部材10(10A)を半径方向に変形させて、ダイ22から筒状部材10(10A)を外す。 筒状部材10(10A)がホイールリム用の部材の場合、ダイ22から筒状部材10(10A)を外すときに必要な筒状部材10(10A)の径の変化率は最大でも1.2パーセント程度であり、弾性変形域内で十分対応でき、素材保持排出板40からの軸方向の力で筒状部材10(10A)を半径方向(筒状部材10(10A)の板厚方向)に弾性変形させてダイ22から外すことができる。また、筒状部材10(10A)がホイールリム用の部材の場合であっても、素材保持排出板40からの軸方向の力で筒状部材10(10A)を半径方向に塑性変形させてダイ22から外してもよい。
素材保持排出板40は筒状部材10(10A)をしごき加工時にパンチ26が移動する方向(筒状素材4を押す方向)と反対方向に押す。筒状部材10(10A)を外すときに素材保持排出板40が筒状部材10(10A)を押す軸方向の力は、筒状部材10(10A)を軸方向に押した時に筒状部材10(10A)を半径方向に変形させて筒状部材10(10A)を外すのに必要な力以上であり、この力は、パンチ26が筒状素材4を軸方向に押す(しごく)力に比べてはるかに小さい。筒状部材10(10A)を外すのに、ダイ22を周方向に分割する必要がないので、ダイ22は、非分割で、一体ダイとされている。
【0027】
不等厚の筒状部材10における厚肉部(板厚を薄くしない部分)は、最終製品の使用状態で、大きな力が働く部分(ホイールリムの場合、曲がり部、フランジ部)に対応しており、不等厚の筒状部材10における薄肉部(板厚を薄くした部分)は、最終製品の使用状態で、小さな力が働く部分(ホイールリムの場合、曲がり部やフランジ部以外の部分)に対応している。これによって、最終製品状態で、必要な強度、剛性を維持しつつ、軽量化、材料の節約、コストダウンがはかられている。
【0028】
本発明の筒状部材10の製造方法は、しごき加工工程の後に、図3に示すように、不等厚の筒状部材10(10A)を自動車用ホイールリム形状にロール成形するロール成形工程を有していてもよい。不等厚自動車用ホイールリムは、不等厚の筒状部材の一例10(10B)となる。
ロール成形工程は、不等厚の筒状部材10Aの軸方向両端部をフレア加工(図示略)して拡開した後に行なわれる。ロール成形工程では、下ロール31と上ロール32との間に筒状部材10Aを挟みロールを回転させ、筒状部材10Aを筒状部材10Bに成形し、リム形状を出す。その後、エキスパンダーおよび/またはシュリンカーを用いてサイジング加工(真円に近づける加工およびリム断面形状の整形加工)し、最終リム形状にする。
【0029】
成形後の筒状部材10(10B)からなるリムは、軸方向一端から他端に向かって順に、フランジ部10a、ビードシート部10b、サイドウオール部10c、ドロップ部10d、サイドウオール部10e、ビードシート部10f、フランジ部10gを有する。図示略のディスクがリムに嵌入され、溶接されて、溶接タイプのホイールとなる。各部の間には曲がり部がある。曲がり部とフランジ部10a、10gは、それ以外の部分に比べて、通常使用時に発生する応力が大きく、厚肉であることが望ましい。
【0030】
一定厚の筒状素材4がホイールリムに成形される場合、従来は、一定厚の直円筒状素材のしごき加工による不等厚化は行われず、一定厚の直円筒状素材のまま、ロール加工によるリム形状出し工程に送られるか、あるいは、たとえ一定厚の直円筒状素材を不等厚化するとしても、スピニング加工以外の方法の適用は、従来技術で説明したように、考えつかなかったし、実際にも使用されていない。本発明では、しごき加工を、筒状素材4の作製工程と、筒状部材10(10A)のロール加工工程との間に挿入して、筒状素材4をスピニング加工によらずに、不等厚化している。
【0031】
ここで、本発明全実施例に共通する部分の作用を説明する。
本発明実施例では、一定厚の筒状素材4をしごき加工により不等厚の筒状部材10(10A)に成形するため、従来のフローフォーミングのための設備と工程が不要となる。その結果、前述の(i)、(ii)、(iii) のフローフォーミングに付随する問題点が、それぞれ、つぎの(i)、(ii)、(iii) のように解決される。
(i)従来のフローフォーミング設備が、本発明では、しごきのダイ22、パンチ26と、しごき装置20(プレス機30)にとって代わられ、フローフォーミング設備費用に比べてしごきのダイ22、パンチ26と、しごき装置20(プレス機30)の合計費用が低価であるため、従来に比べて設備費用を低減できる。
(ii)筒状素材4の不等厚化において、従来のフローフォーミング工程が、本発明では、しごき装置20(プレス機30)によるしごき工程にとって代わられるため、筒状素材4を不等厚化する時間をフローフォーミングに比べて約1/3に短縮でき、生産性を向上できる。1つのリム製造ラインに円筒状素材の不等厚化工程を設ける場合に、従来のフローフォーミングに代えてしごき装置20(プレス機30)を用いたしごき成形を用いると、従来1つのリム製造ラインにつき3セットのフローフォーミング設備を設けなければならなかったところを、1セットのしごき装置20(プレス機30)を用いたしごき設備を設けるだけで済み、コスト上および設備設置スペース上の問題点を解決できる。
(iii) フローフォーミングがパンチ26とダイ22によるしごきにとって代わられるため、不等厚の筒状部材10(10A)に、フローフォーミングの成形ロールの成形痕が残らず、外観品質が維持される。
【0032】
パンチ26をダイ22に対して相対動させ、筒状素材4をしごき加工して不等厚の筒状部材10(10A)を作製するので、パンチ26のダイ22に対する相対動は半径方向動は伴わず軸方向動のみであり、プレス機30をパンチ26のダイ22に対する一方向ストローク動に使用できる。その結果、成形時間の短縮化、成形設備のコストダウンをはかることができる。
【0033】
不等厚の筒状部材10(10A)を作製した後、筒状部材10(10A)に軸方向の力を加え、筒状部材10(10A)を半径方向に変形させて、ダイ22から筒状部材10(10A)を外すので、ダイ22に、周方向に分割されていない、一体のダイを用いることができる。その結果、周方向に分割されたダイを用いる場合に比べて、分割ダイを半径方向に移動させる機構が必要でなく、設備費用を低く維持できる。さらに、しごき加工後の筒状部材10(10A)に分割ダイの合わせ部にくい込んだばりが残ることがなく、ばり取り加工が不必要である。
【0034】
しごき加工工程で折り曲げ部8をダイ22に軸方向に掛止してしごき加工を行うため、筒状素材4全体がパンチ26が押す軸方向にずれることが抑制され、高精度の成形が可能となる。
【0035】
また、しごき加工工程では、筒状素材4の折り曲げ部8を押さえ部材23とダイ22とで挟圧してから、筒状素材4の折り曲げ部8以外の部分の少なくとも一部をしごき加工するため、筒状素材4全体がパンチ26が押す軸方向にずれることが抑制され、高精度の成形が可能となる。
【0036】
筒状素材4が、筒状素材4の軸方向他端を素材保持排出板40で押し受けながらしごき加工されるため、しごき加工時に、よりいっそう筒状素材4全体がパンチ26が押す軸方向にずれることが抑制される。また、しごき加工による筒状素材4の伸び量の制御もしやすくなる。
【0037】
凹凸面24が、ダイ22の側面の軸方向で、ダイ22とパンチ26の間隔を一定厚の筒状素材4の板厚より狭くする凸部24aが少なくとも1つ設けられることにより形成されているので、軸方向に厚さが変化する筒状部材10Aを作製できる。
【0038】
凹凸面24が、ダイ22の側面の周方向で、ダイ22とパンチ26の間隔を一定厚の筒状素材4の板厚より狭くする凸部24aが少なくとも1つ設けられることにより形成されているので、周方向に厚さが変化する筒状部材10Aを作製できる。
【0039】
しごき加工工程の後に、不等厚の筒状部材10(10A)を自動車用ホイールリム形状にロール成形するロール成形工程を有するので、不等厚の軽量な、自動車用ホイールリムを作製できる。
【0040】
つぎに、本発明の各実施例に特有な構成を説明する。
[実施例1]
本発明の実施例1の筒状部材10の製造方法では、図1、図5に示すように、ダイ22が筒状孔22aと内周側面22bをもつアウターダイからなり、アウターダイの内周側面22bが凹凸面24とされている。また、パンチ26がアウターダイ22の筒状孔22aに軸方向に出入りするインナーパンチからなり、その外周側面26eに突出部28が形成されている。
【0041】
アウターダイ22の内周側面22bの上端部は、図5に示すように、筒状素材4の折り曲げ部8を掛止するフランジ受け部22cが形成されている。筒状素材4は、折り曲げ部8をフランジ受け部22cに接触させ、掛止して、アウターダイ22にセットされる。
【0042】
アウターダイ22の凸部24aが設けられている部分の内径は、しごき加工前の筒状素材4の折り曲げ部8以外の部分の外径より大きい。そのため、しごき加工前の筒状素材4を容易にアウターダイ22にセットすることができる。
インナーパンチ26の突出部28の外径は、しごき加工前の筒状素材4の折り曲げ部8以外の部分の内径より大きい。そのため、しごき加工によって筒状素材4をダイ22に押し付けて筒状素材4にダイ22の凹凸面24の凹凸形状を転写できる。
インナーパンチ26の突出部28の外半径とアウターダイ22の凸部24aが設けられている部分の内半径との差は、しごき加工前の筒状素材4の板厚より小さい。そのため、しごき加工によって凸部24a部分で筒状素材4の板厚を薄くできる。
パンチ26をしごき装置20(プレス機30)によりアウターダイ22の筒状孔22a内に突入させていくと、パンチ26の突出部28が筒状素材4をしごき、筒状素材4を拡径させ、さらにアウターダイ22の凸部24aが設けられている部分で筒状素材4の板厚を薄くさせる。
アウターダイ22の凸部24aが設けられていない部分の内半径と、インナーパンチ26の突出部28の外半径との差をしごき前の筒状素材4の板厚と等しいか該板厚より大きくした場合、しごき加工によって筒状素材4の板厚を薄くすることはない。筒状素材4の板厚より厚くすることも可能であり、素材保持排出板40の筒状素材4を押し受ける制御により、より厚くすることができる。
【0043】
筒状素材4をしごき加工するとき、筒状素材4はインナーパンチ26が押す軸方向に筒状部材4全体がずれようとするが、筒状素材4の折り曲げ部8をアウターダイ22のフランジ受け部22cに掛止していること、押さえ部材23とダイ22とで筒状素材4の折り曲げ部8を挟圧していること、素材保持排出板40が筒状素材4をインナーパンチ26の押し方向と反対方向から押し受けていること、により、筒状素材4がインナーパンチ26により軸方向にずれることが抑制される。その結果、筒状部材10に形成される厚肉部と薄肉部の軸方向位置は、アウターダイ22の凹凸面24の軸方向位置に対して互いにずれることが抑制される。この筒状部材10(10A)を用いて、ロール成形したホイールリム10(10B)は、厚さが必要な部分は厚く、厚さが必要ない部分は薄い軽量なホイールリム10(10B)となる。
【0044】
本発明の実施例1の筒状部材10の製造方法では、ダイ22が筒状孔22aと内周側面22bをもつアウターダイからなり、アウターダイ22の内周側面22bが凹凸面24とされており、パンチ26がアウターダイ22の筒状孔22aに軸方向に出入するインナーパンチからなるので、アウターダイ22をしごき装置20(プレス機30)の下側のボルスター38側に固定し、インナーパンチ26をしごき装置20(プレス機30)の上側のラム36側に固定して、インナーパンチ26をアウターダイ22に対して上下ストロークさせることにより、筒状部材10(10A)の製造にしごき装置20(プレス機30)を用いることができる。
【0045】
[実施例2]
本発明の実施例2の筒状部材10の製造方法では、図7,図8に示すように、ダイ22が外周側面22eをもつインナーダイからなり、インナーダイ22の外周側面22eが凹凸面24とされている。また、パンチ26が筒状孔26aと内周側面26bをもつアウターパンチからなり、その内周側面26bに突出部28が形成されている。
【0046】
インナーダイ22の外周側面22eの上端部には、筒状素材4の折り曲げ部8を掛止するフランジ受け部22dが形成されている。筒状素材4は、折り曲げ部8をフランジ受け部22dに接触させ、掛止して、インナーダイ22にセットされる。
【0047】
インナーダイ22の凸部24aが設けられている部分の外径は、しごき加工前の筒状素材4の折り曲げ部8以外の部分の内径より小さい。そのため、しごき加工前の筒状素材4を容易にインナーダイ22にセットすることができる。
アウターパンチ26の突出部28の内径は、しごき加工前の筒状素材4の折り曲げ部8以外の部分の外径より小さい。そのため、しごき加工によって筒状素材4をダイ22に押し付けて筒状素材4に凹凸を付けられる。
アウターパンチ26の突出部28の内半径とインナーダイ22の凸部24aが設けられている部分の外半径との差は、しごき前の筒状素材4の板厚より小さい。そのため、しごき加工によって凸部24a部分で筒状素材4の板厚を薄くできる。
アウターパンチ26をしごき装置20(プレス機30)によりインナーダイ22側に移動させインナーダイ22がアウターパンチ26の筒状孔26aに入り込んでくると、アウターパンチ26の突出部28が筒状素材4をしごき、筒状素材4を縮径させ、さらにインナーダイ22の凸部24aが設けられている部分で筒状素材4の板厚を薄くさせる。
インナーダイ22の凸部24aが設けられていない部分の外半径と、アウターパンチ26の突出部28の内半径との差をしごき前の筒状素材4の板厚と等しいか該板厚より大きくした場合、しごき加工によって筒状素材4の板厚を薄くすることはなく、筒状素材4の板厚より厚くすることができる場合もある。
【0048】
筒状素材4をしごき加工するとき、筒状素材4はアウターパンチ26が押す軸方向に筒状部材4全体がずれようとするが、筒状素材4の折り曲げ部8をインナーダイ22のフランジ受け部22dに掛止していること、押さえ部材23(図7では省略)とダイ22とで筒状素材4の折り曲げ部8を挟圧していること、素材保持排出板40が筒状素材4をアウターパンチ26の押し方向と反対方向から押し受けていること、により、筒状素材4全体がアウターパンチ26により軸方向にずれることが抑制される。その結果、筒状部材10に形成される厚肉部と薄肉部の軸方向位置は、インナーダイ22の凹凸面24の軸方向位置に対して互いにずれることが抑制される。この筒状部材10(10A)を用いて、ロール成形したホイールリム10(10B)は、厚さが必要な部分は厚く、厚さが必要ない部分は薄い軽量なホイールリム10(10B)となる。
【0049】
本発明の実施例2の筒状部材10の製造方法では、ダイ22が外周側面をもつインナーダイからなり、インナーダイ22の外周側面が凹凸面24とされており、パンチ26が筒状孔26aと内周側面をもつアウターパンチからなるので、インナーダイ22をしごき装置20(プレス機30)の下側のボルスター38側に固定し、アウターパンチ26をしごき装置20(プレス機30)の上側のラム36側に固定して、アウターパンチ26をインナーダイ22に対して上下ストロークさせることにより、筒状部材10(10A)の製造にしごき装置20(プレス機30)を用いることができる。
【符号の説明】
【0050】
2 一定厚の平板状素材
4 一定厚の筒状素材
6 溶接部
8 折り曲げ部
10(10A,10B) 不等厚の筒状部材
20 しごき装置
22 ダイ(アウターダイ、インナーダイ)
22a アウターダイの筒状孔
22b アウターダイの内周側面
22c アウターダイのフランジ受け部
22d インナーダイのフランジ受け部
22e インナーダイの外周側面
23 押さえ部材
24 凹凸面
24a 凸部
24b 凹部
26 パンチ(インナーパンチ、アウターパンチ)
26a アウターパンチの筒状孔
26b アウターパンチの内周側面
26e インナーパンチの外周側面
28 突出部
30 プレス機
32 架台
34 油圧シリンダ
36 ラム
38 ボルスター
40 素材保持排出板
42 油圧シリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンチと該パンチに対向する側の側面が凹凸面とされたダイとを備えたしごき装置を用いて、筒状素材をしごき加工し、不等厚の筒状部材を作製するしごき加工工程を有する、筒状部材の製造方法。
【請求項2】
前記しごき加工工程では、前記筒状素材を前記ダイにセットし、前記しごき装置を作動させて前記パンチを前記ダイに対して相対動させ、前記ダイの凹凸面と前記パンチとによる前記筒状素材の径と板厚の変化を伴いつつ、前記筒状素材をしごき加工して前記不等厚の筒状部材を作製する、請求項1記載の筒状部材の製造方法。
【請求項3】
前記凹凸面は、前記ダイの前記パンチに対向する側の側面の軸方向で、前記ダイと前記パンチの間隔を前記筒状素材の板厚より狭くする凸部が前記ダイに少なくとも1つ設けられることにより形成されている、請求項1記載の筒状部材の製造方法。
【請求項4】
前記しごき加工工程では、不等厚の筒状部材を作製した後、該筒状部材に軸方向に力を加え、該筒状部材を半径方向に変形させて、前記ダイから前記筒状部材を外す、請求項1記載の筒状部材の製造方法。
【請求項5】
前記凹凸面は、前記ダイの前記パンチに対向する側の側面の周方向で、前記ダイと前記パンチの間隔を前記筒状素材の板厚より狭くする凸部が前記ダイに少なくとも1つ設けられることにより形成されている、請求項1記載の筒状部材の製造方法。
【請求項6】
前記しごき加工工程の前に、前記筒状素材の軸方向一端部を該筒状素材の軸方向と交わる方向に折り曲げて前記筒状素材に折り曲げ部を形成する工程を有し、前記しごき加工工程で前記折り曲げ部を前記ダイに軸方向に掛止して前記しごき加工を行う、請求項1記載の筒状部材の製造方法。
【請求項7】
前記しごき加工工程では、前記筒状素材の前記折り曲げ部を、前記ダイに軸方向に掛止するとともに前記ダイと押さえ部材とで挟圧し、前記筒状素材の前記折り曲げ部以外の少なくとも一部を前記しごき加工を行なう、請求項6記載の筒状部材の製造方法。
【請求項8】
前記しごき加工工程の前に、一定厚の平板状素材から前記筒状素材を作製する筒状素材製作工程を有する、請求項1記載の筒状部材の製造方法。
【請求項9】
前記しごき加工工程の後に、前記不等厚の筒状部材を自動車用ホイールリム形状にロール成形するロール成形工程を有する、請求項1記載の筒状部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−149182(P2010−149182A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−262425(P2009−262425)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(000110251)トピー工業株式会社 (255)
【Fターム(参考)】