説明

筒状部材又は有底筒状部材の製造方法

【課題】 筒状部材又は有底筒状部材を前後方鍛造で素材の表面にひび割れが発生することなく成形できるようにする。
【解決手段】 予備圧縮工程の次に、第1段鍛造工程として前後方押出鍛造を実施し、その次に第2段鍛造工程として後方押出鍛造を実施する。第1段鍛造工程では、段差部12cの領域における素材30の最小肉厚が、大径部12aの領域における素材の肉厚よりも薄くならない範囲内で押圧ポンチ22による素材30の押圧を行う。この工程では、押圧ポンチ22による押圧力が作用した状態で上方への素材流動と下方への素材流動とが生ずる。そして、下方への素材流動が支配的になる前にこの工程を終え、第2段鍛造工程へ移行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形型内に配置された円柱状素材を押圧ポンチで押圧し、筒状部材又は有底筒状部材を鍛造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車部品等として用いられる筒状部品や有底筒状部品は、歩留まりの向上や生産性の向上を図るべく、線材や棒鋼を切断した円柱状素材を用いた鍛造や圧造によって形成されることが多くなっている。特に、製品寸法精度の向上や製造コストの低減のために、素材を加熱せずに鍛造・圧造を行う冷間鍛造とすることが多い。
【0003】
例えば下記特許文献1には、スパークプラグ部品を対象とした冷間鍛造方法が開示されている。スパークプラグ部品のような段付き中空部品又は段付き有底部品の鍛造は、一般に前方押出鍛造、後方押出鍛造及び前後方押出鍛造を適宜組み合わせして行われる。前方押出鍛造は、素材の下面、即ち押圧ポンチによる圧下面とは反対側の面を押圧ポンチによる圧下方向と同じ方向に素材流動させる鍛造方法であり、また後方押出鍛造は、素材の圧下面を押圧ポンチによる圧下方向とは逆方向に素材流動させる鍛造方法であり、また前後方押出鍛造は、素材の下面を押圧ポンチによる圧下方向と同じ方向に素材流動させるとともに素材の圧下面を押圧ポンチによる圧下方向とは逆方向に素材流動させる鍛造方法である。
【0004】
後方押出鍛造の一例を図6を参照しながら具体的に説明する。図6に示すように、成形型60には、大径部62aと小径部62bとが段差部62cを介して軸方向に連続するように設けられた成形部62が形成されていて、この成形部62の大径部62aに円柱状素材80が挿入される(同図(a))。このとき素材80の下端部80bが段差部62cに沿うように予備圧縮用ポンチ65で押圧する予備圧縮を行ってもよい。そして、小径部62bに下ポンチ67を挿入し、この下ポンチ67に当接するまで円柱状素材80を予備圧縮用ポンチ65によって下方へ押圧する(同図(b))。次に、小径部62bの内径よりも小径の押圧ポンチ70に交換し、この小径の押圧ポンチ70によって円柱状素材80を下方へ押圧する(同図(c))。このとき、押圧ポンチ70によって素材80が下方へ押圧されると、素材80の下端部80bでは下ポンチ67によって素材流動が規制される一方、素材80の上端部80aでは上方へ素材流動する(同図(d))。これにより、素材80は押圧ポンチ70による押圧方向とは逆方向へ流動しつつ有底筒状に成形される。
【0005】
次に、前後方押出鍛造の一例を具体的に説明する。図7に示すように、成形部62の大径部62aに円柱状素材80を挿入し(同図(a))、予備圧縮用ポンチ65によって素材80を下方へ押圧する(同図(b))。次に、下ポンチ67を除去するとともに予備圧縮用ポンチ65を小径の押圧ポンチ70に交換し、この押圧ポンチ70によって下方へ押圧する(同図(c,d,e))。このとき、押圧ポンチ70によって素材80が下方へ押圧されると、素材80の下端部80bでは下方へ素材流動する一方、素材80の上端部80aでは、上方へ素材流動する。これにより、素材80は、段差が形成された有底筒状に成形される。
【0006】
前後方押出鍛造は、前方押出鍛造や後方押出鍛造に比べ、同じ形状に成形する場合においても素材の自由流動面が多くなることから低荷重での成形が可能であり、押圧ポンチなどの工具の寿命にも有利であることが知られている。
【特許文献1】特許第3431950号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前後方押出鍛造が行われる冷間鍛造において例えば延性の低い難加工材等を鍛造成形又は圧造成形する場合には、製品表面に割れが発生することがあるという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、筒状部材又は有底筒状部材を前後方押出鍛造により素材にひび割れが発生することなく成形できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、素材のひび割れ事例を分析した結果、前後方押出鍛造における押圧ポンチの圧入初期段階では素材に引張応力は発生しないが、その後の押圧によって押圧ポンチが成形部の段差部領域を通過すると素材に引張応力が生じ、以降、素材に引張応力が発生し続けることを見出した。詳細には、押圧ポンチによって素材を下方へ押圧する場合を考えると、押圧ポンチの圧入初期段階では、素材の上端部近傍では、押圧ポンチによる押圧力を受けて押圧方向と逆方向(上方)へ押出される一方、素材の下端部近傍では、押圧ポンチによる押圧力を受けて押圧方向と同じ方向(下方)へ押出される。そして、さらに押圧ポンチによる押圧が行われ、段差部領域における素材の最小肉厚が大径部領域における素材の肉厚よりも薄肉となると、押圧ポンチ直下の素材は、押圧ポンチによって横に押し退けられた後は押圧力がほとんど作用せず上方へ素材流動し難くなる。その一方、それよりも下方の小径部領域の素材は、押圧ポンチの押圧力を受けて押圧方向と同じ方向へ素材流動するため、下方への押出しが支配的となる。この結果、見かけ上素材流動が生じない押圧ポンチ直下の素材と、押圧方向の素材流動が支配的となる小径部領域の素材との間で引張応力が発生し、この引張応力によって素材表面及び素材内面での割れに至るものと推測される。
【0010】
本発明はこの分析結果が得られたことに基づいてなされたものであり、本発明は、大径部と小径部とが段差部を介して軸方向に並設される成形部が形成された成形型と、前記大径部の内径よりも小径の外径を有する押圧ポンチとを用い、前記大径部内に円柱状素材を保持してこの円柱状素材の端面を前記押圧ポンチで小径部方向へ押圧し、筒状部材又は有底筒状部材を鍛造する方法を前提として、前記押圧ポンチの押圧により、この押圧ポンチによって押圧される前記素材の押圧側端部が押圧ポンチによる押圧方向とは逆方向に流動可能な状態で、かつ前記押圧側端部と反対側に位置する反対側端部を前記押圧方向と同じ方向へ流動させる前後方押出鍛造を行う前後方押出工程が含まれ、前記前後方押出工程では、前記段差部の領域内での素材の最小肉厚が、前記大径部の領域内での素材の最小肉厚よりも薄くならない範囲で前記押圧ポンチによる素材の押圧を行う。
【0011】
本発明による筒状部材又は有底筒状部材の製造方法では、前後方押出工程において前記段差部の領域内での素材の最小肉厚が前記大径部の領域内での素材の最小肉厚よりも薄くならない範囲内で押圧ポンチによる素材の押圧を行うだけなので、押圧ポンチの押圧方向と同じ方向の素材流動(押出し)が支配的となる前にこの前後方押出工程が終了する。このため、押圧ポンチ近傍の素材と小径部内の素材との間で引張応力が発生しないようにできるか、または引張応力が発生するとしてもその大きさを低減することができる。それ故に、前後方押出鍛造を行うことで押圧ポンチによる押圧力を低減しつつ、引張応力の発生を抑止又は抑制することで素材の割れを効果的に防止することができる。
【0012】
前記前後方押出工程の後に、前記押圧ポンチの押圧によって前記素材の反対側端部の全部又はその一部が前記押圧方向と同じ方向へ流動するのを素材拘束部材によって制限するとともに、前記押圧ポンチの押圧によって前記素材の押圧側端部を前記押圧方向とは逆方向へ流動させる後方押出鍛造を行う後方押出工程が含まれているようにしてもよい。
【0013】
この製造方法では、前後方押出工程の後、さらに押圧ポンチによる押圧を行うときに、素材の反対側端部の全部又は一部を素材拘束部材によって拘束するので、小径部内の素材が押圧ポンチの押圧方向と同じ方向へ素材流動するのが抑止又は抑制される。この結果、前後方押出工程の後にさらに押圧ポンチによる押圧を行っても素材の割れを抑止できるので、さらなる鍛造加工を行うことができるようになり、加工の自由度を向上することができる。
【0014】
この場合において、前記前後方押出工程の後に、前記素材拘束部材が前記素材の反対側端部に当接するまで前記小径部側から成形部内に挿入されるようにすれば、素材の反対側端部における素材流動を確実に制限できるので、後方押出工程において確実に素材の割れを抑止することができる。
【0015】
また、前記段差部の領域内での素材の最小肉厚と前記大径部の領域内での素材の最小肉厚とが同じになるときの前記素材の反対側端部の位置を予め導出しておき、前記素材拘束部材は、前記素材と接触する端部が前記導出された位置又はそれよりも大径部寄りの位置になるように前記前後方押出鍛造が終了するまでに小径部側から成形部内に挿入されるようにしてもよい。そうすれば、前後方押出工程において素材拘束部材を素材に引張応力が発生しないような位置に確実に配置させることができるため、前後方押出工程及び次段押出工程を1回の押出しで行うようにしても、次段押出工程において確実に素材の割れを抑止することができ、筒状部材及び有底筒状部材の生産効率を向上することができる。
【0016】
前記素材拘束部材は、前記小径部の内径と略同じ外径を有するか、それよりも小さな外径を有しているのが好ましい。
【0017】
一方、前記前後方押出工程の後に、前記押圧ポンチの押圧によって前記素材の押圧側端部の全部又はその一部が前記押圧方向と逆方向へ素材流動するのを押圧側拘束部材によって制限するとともに、前記押圧ポンチの押圧によって前記素材の反対側端部を前記押圧方向と同じ方向へ流動させる次段押出工程が含まれているようにしてもよい。
【0018】
この製造方法では、前後方押出工程の後、さらに押圧ポンチによる押圧を行うときに、素材の押圧側端部の全部又はその一部を押圧側拘束部材によって拘束するので、大径部内の素材が押圧ポンチの押圧方向とは逆方向に素材流動するのが抑止又は抑制される。この結果、前後方押出工程の後にさらに押圧ポンチによる押圧を行っても素材の割れを抑止できるので、さらなる鍛造加工を行うことができるようになり、加工の自由度を向上することができる。
【0019】
この場合において、前記前後方押出工程の後に、前記押圧側拘束部材が前記素材の押圧側端部に当接するまで大径部側から成形部内に挿入されるようにすれば、素材の押圧側端部における素材流動を確実に制限できるので、前方押出工程において確実に素材の割れを抑止することができる。
【0020】
また、前記段差部の領域内での素材の最小肉厚と前記大径部の領域内での素材の最小肉厚とが同じになるときの前記素材の押圧側端部の位置を予め導出しておき、前記押圧側拘束部材は、前記素材と接触する端部が前記導出された位置又はそれよりも小径部寄りの位置になるように前記前後方押出鍛造が終了するまでに大径部側から成形部内に挿入されるようにしてもよい。そうすれば、前後方押出工程において押圧側拘束部材を素材に引張応力が発生しないような位置に確実に配置させることができるため、前後方押出工程及び次段押出工程を1回の押出しで行うようにしても、次段押出工程において確実に素材の割れを抑止することができ、筒状部材及び有底筒状部材の生産効率を向上することができる。
【0021】
そして、前記押圧側拘束部材は、前記押圧ポンチに外嵌されるとともにこの押圧ポンチと一体的に動くように構成され、前記押圧側拘束部材から突出した押圧ポンチの突出部は、前記段差部の領域内での素材の最小肉厚と前記大径部の領域内での素材の最小肉厚とが同じになるときに前記導出された位置で素材の押圧側端部と当接するような突出長さに構成されていれば、押圧側拘束部材と押圧ポンチとを別個に制御する必要がなくなるので、生産効率を向上しつつ素材の割れを有効に防止することができる。
【0022】
前記押圧側拘束部材は、前記大径部の内径と略同じ外径を有するか、それよりも小さな外径を有しているのが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明によれば、前後方押出工程において段差部の領域内における素材の最小肉厚が大径部の領域内における素材の最小肉厚よりも薄くならない範囲内で素材の押圧を行うようにしているので、前後方押出鍛造を行うことで押圧ポンチによる押圧力を低減しつつ、引張応力の発生を抑止又は抑制することで素材の割れを効果的に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0025】
《実施形態1》
本実施形態1は、例えば線材等の円柱状素材を有底の筒状部材に成形する有底筒状部材の製造方法に関するものである。本製造方法では、図1に示すように、素材30から有底筒状部材を成形するための成形部12が形成された成形型の一例としての金型10と、この金型10の成形部12に挿入される予備圧縮用ポンチ20と、押圧ポンチ22と、素材拘束部材24とが使用される。
【0026】
成形部12には、大径部12aと、小径部12bと、段差部12cとが設けられている。大径部12aは、金型10の上側に設けられるものであり、円柱状素材30の外径に対して所定のクリアランス分だけ大きな内径を有する内周面を有する。この大径部12aの内径は軸方向に一定となっている。小径部12bは、金型10の下側に設けられるものであり、円柱状素材30の外径よりも小径の内径を有する内周面を有する。この小径部12bの内径は軸方向に一定となっている。これら大径部12aと小径部12bとは、成形部12の軸方向、即ち押圧ポンチ22の移動方向に並んで設けられるものであり、これら大径部12aと小径部12bとの間がテーパ状に形成された段差部12cとなっている。
【0027】
予備圧縮用ポンチ20は、大径部12aの内径に対応した外径を有する。一方、押圧ポンチ22は、小径部12bの内径よりも小径、即ち予備圧縮用ポンチ20よりも小径の外径を有する。
【0028】
素材拘束部材24は、金型10の小径部12bにその下端部から挿入されるものであり、素材30の下端部30bにおいて素材流動が発生しないように、又は発生したとしても素材流動の発生を抑制するためのものである。この素材拘束部材24は、小径部12bの内径と略同じ寸法の外径を有する円柱状のものである。
【0029】
素材30としては、例えば、S10C,S25C,S45C等の炭素鋼、SCM,SCR等の合金鋼、アルミニウム合金等を好適に用いることができる。
【0030】
本製造方法においては、予備圧縮工程と、前後方押出鍛造が行われる前後方押出工程としての第1段鍛造工程と、次段押出工程としての第2段鍛造工程とが実施される。この第2段鍛造工程では、後述するように後方押出鍛造が行われる。
【0031】
まず、予備圧縮工程の前準備として、図1(a)に示すように、素材拘束部材24が成形部12の小径部12bに挿入されるとともに、円柱状素材30が成形部12の大径部12aに挿入される。このとき、素材拘束部材24の上端面が段差部12cの下端面とおよそ同じ高さになるように素材拘束部材24がセットされる。
【0032】
予備圧縮工程では、同図(b)に示すように、予備圧縮用ポンチ20により円柱状素材30の上端部30aが押圧され、円柱状素材30の下端部30bが成形部12の段差部12cに倣って成形される。これにより、例えば円柱状素材30の下端部30bがいびつな形状であったとしても、円柱状素材30が成形部12の軸方向に平行な状態にセットされる。このとき、円柱状素材30の下端面と素材拘束部材24の上端面とが当接する。
【0033】
第1段鍛造工程では、同図(c),(d)に示すように、予備圧縮用ポンチ20から押圧ポンチ22へと交換され、この押圧ポンチ22によって素材30の上端部30aが押圧される。この押圧ポンチ22による押圧は素材30の上端部30aにおける中央部に対して行われる。この工程の初期段階では、押圧ポンチ22の押圧により、素材30の下端部30bは、押圧ポンチ22の押圧方向(同図における下方)へ押下されて小径部12b内へ進入する一方、押圧ポンチ22直下の素材30が押圧ポンチ22の押圧力を受けて横方向に押し退けられ、この押し退けられた素材30は、押圧力が作用した状態で押圧ポンチ22と金型10との間を押圧方向とは逆方向(同図における上方)へ流動する。
【0034】
この第1段鍛造工程では、押圧ポンチ22の下端部(押圧部)22aが大径部12a内の所定範囲内に収まるように素材30の押圧が行われる。より詳しくは、押圧ポンチ22を大径部12a側から小径部12b側に向かって押圧するときに、図2に示すように、この押圧ポンチ22と段差部12cとの間隙幅S1が、押圧ポンチ22と大径部12aとの間隙幅S2とほぼ同じときに生ずる遷移領域に達するまで素材30の押圧が行われる。前記間隙幅S1は、押圧ポンチ22と段差部12cとの間隙が最も狭くなっているところの幅を意味している。したがって、段差部12cの領域における素材30の最小肉厚が大径部12aの領域における素材30の肉厚とほぼ同じ肉厚となるまで押圧ポンチ22が押下して第1段鍛造工程を終了することとなる。
【0035】
前記遷移領域の状態とは、押圧ポンチ22直下から大径部12a側への素材流動がほとんどなく、後方押出しが困難となる状態であり、これ以上押圧ポンチ22を押下させると、小径部12b内における下方への素材流動(前方押出し)が支配的となるような状態である。また、段差部12cの領域とは、およそ段差部12cによって囲まれる成形部12内の領域を差しており、段差部12cのテーパによっては段差部12c及びその近傍の大径部12aによって囲まれる領域までも含まれるものである。
【0036】
続いて、図1(e)に示すように、素材拘束部材24が素材30の下端部30bに当接するように小径部12b内にセットされ、小径部12bはこの素材拘束部材24によって塞がれる。そして、同図(f)に示すように、押圧ポンチ22が小径部12b内まで進入するように押圧ポンチ22による素材30の押圧が行われる。このとき素材30の下端部30bは、素材拘束部材24によって下方への素材流動が制限される一方、大径部12a内の素材30は押圧ポンチ22による押圧力を受けて押し退けられた素材30が押圧力の作用した状態で上方へ向かって流動する後方押出鍛造となる。これにより、下端部30bが底部として形成された有底筒状部材が成形される。
【0037】
本実施形態1による有底筒状部材の製造方法では、第1段鍛造工程において段差部12cの領域における素材30の最小肉厚が大径部12aの領域における素材30の肉厚よりも薄くならない範囲で押圧ポンチ22による素材30の押圧を行うので、小径部12b内の素材30が下方へ素材流動するのが支配的となる前に前後方押出鍛造が終了する。このため、大径部12a内の素材30と小径部12b内の素材30との間で引張応力が発生しないようにできるか、または引張応力が発生するとしてもその大きさを低減することができる。それ故に、前後方押出鍛造を行うことで押圧ポンチ22による押圧力を低減しつつ、引張応力の発生を抑止又は抑制することで素材30の割れを効果的に防止することができる。
【0038】
また、本実施形態1では、第1段鍛造工程の後で実施される第2段鍛造工程において、素材30の下端部30bを素材拘束部材24によって拘束するので、小径部12b内の素材30が下方へ素材流動するのが抑止又は抑制される。この結果、前後方押出鍛造の後にさらに押圧ポンチ22による押圧を行っても素材30の割れを抑止できるので、さらなる鍛造加工を行うことができるようになり、加工の自由度を向上することができる。
【0039】
尚、本実施形態1では、前後方押出鍛造が実施される第1段鍛造工程の後で、第2段鍛造工程として後方押出鍛造を実施するようにしているが、これに代え、素材30の種類、成形部12の形状によっては後方押出鍛造を省略した構成としてもよい。
【0040】
また、本実施形態1では、大径部12aの内径が軸方向に一定となっている金型10を使用しているが、大径部12の内径が軸方向に一定となっていない金型10を使用することも可能である。この場合には、第1段鍛造工程において、段差部12cの領域における素材30の最小肉厚が大径部12aの領域における素材30の最小肉厚とほぼ同じ肉厚になるところまで押圧ポンチ22を押下するようにすればよい。
【0041】
また、軸方向に間隔をおいて段差部が複数箇所存在する場合でも、本発明は最終的に大径部からそれよりも小径の小径部にポンチが圧入される段差部について適用をすればよく、その場合、適用対象となる段差部とその段差部よりも一つ手前の段差部との間で挟まれる領域を本発明にいう「大径部」とみなしてその「大径部」における素材の最小肉厚を考慮すればよい。
【0042】
また、本実施形態1では、有底筒状部材を製造する方法について説明したが、押圧ポンチ22によって素材30を貫通させるようにして底部のない筒状部材を製造する構成としてもよい。
【0043】
《実施形態2》
本発明の実施形態2は、図3に示すように、素材拘束部材24を小径部12b内の所定位置に予めセットするようにしたものである。尚、ここでは、実施形態1と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0044】
前記実施形態1では、第1段鍛造工程において素材30が遷移領域に達する前まで押圧ポンチ22による押圧が行われ、その後に素材30に当接するように素材拘束部材24をセットするようにしたが、本実施形態2では、第1段鍛造工程を実施する前に素材拘束部材24が小径部12b内の所定位置にセットされる(図3(a))。すなわち、第1段鍛造工程において段差部12cの領域における素材30の最小肉厚が、大径部12aの領域における素材30の肉厚とほぼ同じ肉厚になるときの素材下端部30bの位置が素材流動計算や実験によって導出されていて、この導出された素材下端部30bに素材拘束部材24の上端部30aが当接するような位置に素材拘束部材24がセットされる。
【0045】
そして、第1段鍛造工程において、同図(b)に示すように押圧ポンチ22による素材30の押圧が行われる。この工程では、段差部12cの領域における素材30の最小肉厚が、大径部12aの領域における素材30の肉厚とほぼ同じ肉厚になって素材30の下端部30bが素材拘束部材24と当接するまで、素材30の下端部30bが下方へ素材流動する一方、素材30の上端部30aが上方へ素材流動する前後方押出鍛造が行われる。そして、素材30の下端部30bが素材拘束部材24と当接すると、素材下端部30bにおける下方への素材流動が制限される。
【0046】
そして、同図(c)に示すように、押圧ポンチ22による押圧をさらに継続し、押圧ポンチ22が小径部12b内に進入したときには、素材30の下端部30bでは下方への素材流動が規制されたまま、素材30の上端部30aでは上方への素材流動が継続して行われる後方押出鍛造が行われる(第2段鍛造工程)。つまり、本実施形態2では、第1段鍛造工程及び第2段鍛造工程が途切れることのない1回の押圧によって実施される。
【0047】
したがって、本実施形態2によれば、前後方押出鍛造の後の後方押出鍛造において素材拘束部材24を素材30の割れに至る引張応力が発生しないような位置に確実に配置させることができるため、前後方押出鍛造及び後方押出鍛造を1回の押出しで行うようにしても、第2段鍛造工程において確実に素材30の割れを抑止することができ、有底筒状部材の生産効率を向上することができる。
【0048】
尚、本実施形態2では、素材拘束部材24を第1段鍛造工程の前に小径部12b内に挿入するようにしたが、これに限られるものではなく、前後方押出鍛造が終了するまでに素材拘束部材24を挿入するものであってもよい。
【0049】
また、図示省略するが、本実施形態2でも、実施形態1と同様の予備圧縮(図1(a)及び(b)参照)を行ってもよい。その他の構成、作用及び効果はその説明を省略しているが前記実施形態1と同様である。
【0050】
《実施形態3》
前記実施形態1では、次段押出工程としての第2段鍛造工程において後方押出鍛造を実施する構成としたが、本実施形態3では、図4に示すように、第2段鍛造工程において、素材30の下端部30bの一部が僅かに下方へ素材流動する前後方押出鍛造を実施するものである。尚、ここでは、実施形態1と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0051】
同図に示すように、本実施形態3で使用される素材拘束部材26は、金型10の小径部12bの内径よりも小さな寸法の外径を有している。図例では、この素材拘束部材26の外径は押圧ポンチ22の外径と同等としているが、これに限られるものではなく、例えば素材拘束部材26の外径が押圧ポンチ22の外径よりも大きくてもよい。
【0052】
本実施形態3に係る製造方法では、第1段鍛造工程として実施形態1同様の前後方押出鍛造を実施した後、図4(a)に示すように、素材拘束部材26を小径部12b内にセットする。このとき素材拘束部材26が素材30の下端部30bに当接するようにセットする。
【0053】
そして、第2段鍛造工程として、押圧ポンチ22によって素材30を下方へ押圧すると、押圧ポンチ22によって押し退けられた素材30は押圧力が作用した状態で大径部12a内を上方へ流動するが、このとき素材30の下端部30bでは、素材30の一部が押圧力の作用によって小径部12bと素材拘束部材26との間隙を下方へ流動し、前方へ押出される。この下方向への素材流動は一部の素材30のみの流動であるため、前方押出しは支配的なものではなく、素材30の下端部30bにおいては素材拘束部材26による流動規制が支配的なものとなっている。したがって、大径部12a内の素材30と小径部12b内の素材30との間で引張応力が発生しないようにできるか、または引張応力が発生するとしてもその大きさを低減することができる。本実施形態3における第2段鍛造工程は、素材30が前方にも押出されるので前後方押出鍛造といえるが、前方への押出しは支配的なものではないために実質的には後方押出鍛造に近い。
【0054】
尚、本実施形態3では、第1段鍛造工程の後で素材拘束部材26をセットするようにしているが、これに代え、素材拘束部材26のセット位置を素材流動計算等によって予め導出しておき、素材拘束部材26をその位置にセットした上で第1段鍛造工程及び第2段鍛造工程を連続して実施するようにしてもよい。その他の構成、作用及び効果はその説明を省略しているが前記実施形態1と同様である。
【0055】
《実施形態4》
本発明の実施形態4は、図5に示すように、次段押出工程としての第2段鍛造工程において前方押出鍛造を実施するものである。尚、ここでは、実施形態1と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0056】
本実施形態4では、押圧ポンチ22と一体となって動く押圧側拘束部材40が使用される。この押圧側拘束部材40は、大径部12aの内径と略同じ寸法の外径を有する円筒状に形成されている。そして、押圧側拘束部材40には押圧ポンチ22が嵌挿されていて、押圧側拘束部材40から突出している押圧ポンチ22の突出部22bは、所定の長さに調整されている。即ち、第1段鍛造工程において段差部12cの領域における素材30の最小肉厚が、大径部12aの領域における素材30の肉厚とほぼ同じ肉厚になるときの素材上端部30aの位置が素材流動計算や実験によって導出されていて、突出部22bは、この導出された素材上端部30aの位置と押圧ポンチ22の下端部22aとの距離に相当する突出長さとなっている。なお、突出部22bの突出長さをこれよりも短くしてもよい。
【0057】
第1段鍛造工程において、図5(a)に示すように、押圧ポンチ22と押圧側拘束部材40とが一体となって大径部12a側から金型10内に挿入され、押圧ポンチ22による素材30の押圧が行われると、素材30の下端部30bが下方へ素材流動する一方、素材30の上端部30aが上方へ素材流動する前後方押出鍛造が行われる。
【0058】
そして、同図(b)に示すように、押圧側拘束部材40の下端部40aが素材30の上端部30aと当接したところで、第1段鍛造工程から第2段鍛造工程へ移行する。すなわち、押圧側拘束部材40の下端部40aが素材30の上端部30aと当接したところからさらに押圧ポンチ22及び押圧側拘束部材40を下方へ押圧すると、素材30の上端部30aでは上方への素材流動が制限されるとともに、素材30全体として下方へ移動する、即ち下方への素材流動が支配的となる前方押出鍛造が実施される。この第2段鍛造工程では、同図(c)に示すように押圧ポンチ22が小径部12b内へ進入した後の所定位置になるまで押圧が継続される。
【0059】
したがって、本実施形態4によれば、第1段鍛造工程の後さらに押圧ポンチ22による押圧を行うときに、素材30の上端部30aを押圧側拘束部材40によって拘束するので、大径部12a内の素材30が上方へ素材流動するのが抑止される。この結果、前後方押出鍛造を実施した後にさらに押圧ポンチ22による押圧を継続して行っても素材30の割れを抑止できるので、さらなる鍛造加工を行うことができるようになり、加工の自由度を向上することができる。
【0060】
また、本実施形態4では、押圧ポンチ22の突出部22bを予め導出された所定長さだけ押圧側拘束部材40から突出させておいて、押圧ポンチ22と押圧側拘束部材40を一体的に移動させる構成としているので、前後方押出鍛造を実施した後、継続して前方押出鍛造を実施するときに、押圧側拘束部材40を素材30の割れに至る引張応力が発生しないような位置に確実に配置させることができる。したがって、前後方押出鍛造及び前方押出鍛造を1回の押出しで行うようにしても、前方押出鍛造において確実に素材30の割れを抑止することができ、有底筒状部材の生産効率を向上することができる。
【0061】
尚、本実施形態4では、押圧ポンチ22が押圧側拘束部材40から所定長さだけ突出した状態で両者が一体となって動くようにしたが、これに代え、押圧側拘束部材40が押圧ポンチ22と別個に動くようにしてもよい。この場合には、第1段鍛造工程において、押圧ポンチ22によって素材30を前記遷移領域に達しない範囲で押圧することにより前後方押出鍛造を行い、その後、押圧側拘束部材40を大径部12a側から成形部2内に挿入して第2段鍛造工程を実施するようにすることができる。また、前後方押出鍛造が終了するまでに押圧側拘束部材40を所定位置にセットするようにすれば、第1段鍛造工程及び第2段鍛造工程を続けて行うこともできる。
【0062】
また、押圧側拘束部材40として大径部12bの内径よりも小さな外径を有するものを使用してもよい。この場合には素材30の上端部30aの一部が上方へ素材流動するのを制限できるので、大径部12a内の素材30と小径部12b内の素材30との間で引張応力が発生しないようにできるか、または引張応力が発生するとしてもその大きさを低減することができる。
【0063】
また、図示省略するが、本実施形態4でも、実施形態1と同様の予備圧縮(図1(a)及び(b)参照)を行ってもよい。その他の構成、作用及び効果はその説明を省略しているが前記実施形態1と同様である。
【実施例】
【0064】
本発明者らは、本発明による割れ防止効果を確認するために、以下に示すような鍛造実験を行ったので、その結果について説明する。
【0065】
実施例及び比較例として用いた素材30は、直径12.0mm、高さ8.0mmの円柱状に形成された常温の炭素鋼S10Cからなる円柱状素材30である。一方、金型10及び押圧ポンチ22はそれぞれ工具鋼SKD61によって構成されたものを用いた。金型10に形成した大径部12aの内径は12.2mmとし、小径部12bの内径は9.1mmとした。また、押圧ポンチ22の外径は7.0mmとした。
【0066】
以下に示す実施例及び比較例では、何れも同じ形状となるまで予備圧縮を行っており、その後に、後述するように第1段鍛造工程等を実施した。
【0067】
実施例1では、表1に示すように、第1段鍛造工程として前後方押出鍛造を行い、その後、素材拘束部材24を小径部12b内にセットして第2段鍛造工程として後方押出鍛造を行った。第1段鍛造工程において、押圧ポンチ22が素材30に接触した位置から圧下する移動距離を5.0mmとした。この移動距離(5.0mm)では遷移領域に達しない範囲内で押圧ポンチ22による素材30の押圧が行われる。
【0068】
実施例2は、押圧ポンチ22の移動距離を6.0mmとした点で実施例1と異なるが、それ以外は実施例1と同様である。この移動距離6.0mmでも遷移領域に達しない範囲内で押圧ポンチ22による素材30の押圧が行われる。
【0069】
実施例3では、第1段鍛造工程の前に素材拘束部材24を予め小径部12b内にセットしておき、第1段鍛造工程としての前後方押出鍛造、第2段鍛造工程としての後方押出鍛造を連続して行った。第1段鍛造工程において、押圧ポンチ22が素材30に接触してから圧下する移動距離は5.0mmとした。
【0070】
実施例4では、第1段鍛造工程としての前後方押出鍛造、第2段鍛造工程としての前方押出鍛造を連続して行った。この実施例4では、押圧ポンチ22と一体的に動く押圧側拘束部材40を用い、この押圧側拘束部材40からの押圧ポンチ22の突出高さを6.0mmとした。つまり、実施例4では、第1段鍛造工程において、押圧ポンチ22が素材30に接触してから圧下する移動距離が6.0mmとなっている。
【0071】
比較例1は、第1段鍛造工程における押圧ポンチ22の移動距離を8.0mmとした点で実施例1と異なるが、それ以外は実施例1と同様である。この移動距離の8.0mmは、遷移領域に達した後も押圧ポンチ22による素材30の押圧が行われるような移動距離であり、押圧ポンチ22の下端部22aが小径部12b内まで進入する。
【0072】
比較例2は、第1段鍛造工程としての前後方押出鍛造のみを行った。この第1段鍛造工程における押圧ポンチ22の移動距離を12.0mmとした。この比較例2でも、押圧ポンチ22の下端部22aが小径部12b内に進入する。
【0073】
【表1】

【0074】
表1に示すように、実施例1〜4の何れにおいても素材30に割れは発生しなかった。一方、比較例1では、表面にしわ状の疵が確認された。このしわ状の疵は、第1段鍛造工程で表面に発生した微細な割れが、第2段鍛造工程の後方押出時に圧縮されたことでしわ状疵となったものと推測される。また、比較例2では、表面に割れが確認された。
【0075】
この実験結果より、前後方押出鍛造時に素材30が遷移領域に達しない範囲内で鍛造すれば、素材30に割れが発生するのを抑止することができると言える。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施形態1に係る有底筒状部材の製造方法における各工程を説明するための図を断面図で示したものである。
【図2】押圧ポンチと段差部との間隙幅S1と、押圧ポンチと大径部との間隙幅S2とを説明するための図である。
【図3】本発明の実施形態2に係る有底筒状部材の製造方法における第1段鍛造工程及び第2段鍛造工程を説明するための図を断面図で示したものである。
【図4】本発明の実施形態3に係る有底筒状部材の製造方法における第1段鍛造工程及び第2段鍛造工程を説明するための図を断面図で示したものである。
【図5】本発明の実施形態4に係る有底筒状部材の製造方法における第1段鍛造工程及び第2段鍛造工程を説明するための図を断面図で示したものである。
【図6】従来の後方押出鍛造における各工程を説明するための図を断面図で示したものである。
【図7】従来の前後方押出鍛造における各工程を説明するための図を断面図で示したものである。
【符号の説明】
【0077】
10 金型(成形型の一例)
12 成形部
12a 大径部
12b 小径部
12c 段差部
22 押圧ポンチ
22b 突出部
24 素材拘束部材
26 素材拘束部材
30 素材
30a 上端部(押圧側端部の一例)
30b 下端部(反対側端部の一例)
40 押圧側拘束部材
S1 間隙幅
S2 間隙幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大径部と小径部とが段差部を介して軸方向に並設される成形部が形成された成形型と、前記大径部の内径よりも小径の外径を有する押圧ポンチとを用い、前記大径部内に円柱状素材を保持してこの円柱状素材の端面を前記押圧ポンチで小径部方向へ押圧し、筒状部材又は有底筒状部材を鍛造により成形する方法であって、
前記押圧ポンチの押圧により、この押圧ポンチによって押圧される前記素材の押圧側端部が押圧ポンチによる押圧方向とは逆方向に流動可能な状態で、かつ前記押圧側端部と反対側に位置する反対側端部を前記押圧方向と同じ方向へ流動させる前後方押出鍛造を行う前後方押出工程が含まれ、
前記前後方押出工程では、前記段差部の領域における素材の最小肉厚が、前記大径部の領域における素材の最小肉厚よりも薄くならない範囲で前記押圧ポンチによる素材の押圧を行うことを特徴とする筒状部材又は有底筒状部材の製造方法。
【請求項2】
前記前後方押出工程の後に、前記押圧ポンチの押圧によって前記素材の反対側端部の全部又はその一部が前記押圧方向と同じ方向へ流動するのを素材拘束部材によって制限するとともに、前記押圧ポンチの押圧によって前記素材の押圧側端部を前記押圧方向とは逆方向へ流動させる次段押出工程が含まれていることを特徴とする請求項1に記載の筒状部材又は有底筒状部材の製造方法。
【請求項3】
前記素材拘束部材は、前記前後方押出工程の後に、前記素材の反対側端部に当接するまで前記小径部側から成形部内に挿入される請求項2に記載の筒状部材又は有底筒状部材の製造方法。
【請求項4】
前記段差部の領域内での素材の最小肉厚と前記大径部の領域内での素材の最小肉厚とが同じになるときの前記素材の反対側端部の位置が予め導出されていて、
前記素材拘束部材は、前記素材と接触する端部が前記導出された位置又はそれよりも大径部寄りの位置になるように前記前後方押出鍛造が終了するまでに小径部側から成形部内に挿入されることを特徴とする請求項2に記載の筒状部材又は有底筒状部材の製造方法。
【請求項5】
前記素材拘束部材は、前記小径部の内径と略同じ外径を有するか、それよりも小さな外径を有していることを特徴とする請求項2から4の何れか1項に記載の筒状部材又は有底筒状部材の製造方法。
【請求項6】
前記前後方押出工程の後に、前記押圧ポンチの押圧によって前記素材の押圧側端部の全部又はその一部が前記押圧方向と逆方向へ素材流動するのを押圧側拘束部材によって制限するとともに、前記押圧ポンチの押圧によって前記素材の反対側端部を前記押圧方向と同じ方向へ流動させる次段押出工程が含まれていることを特徴とする請求項1に記載の筒状部材又は有底筒状部材の製造方法。
【請求項7】
前記押圧側拘束部材は、前記前後方押出工程の後に、前記素材の押圧側端部に当接するまで大径部側から成形部内に挿入されることを特徴とする請求項6に記載の筒状部材又は有底筒状部材の製造方法。
【請求項8】
前記段差部の領域内での素材の最小肉厚と前記大径部の領域内での素材の最小肉厚とが同じになるときの前記素材の押圧側端部の位置が予め導出されていて、
前記押圧側拘束部材は、前記素材と接触する端部が前記導出された位置又はそれよりも小径部寄りの位置になるように前記前後方押出鍛造が終了するまでに大径部側から成形部内に挿入されることを特徴とする請求項6に記載の筒状部材又は有底筒状部材の製造方法。
【請求項9】
前記押圧側拘束部材は、前記押圧ポンチに外嵌されるとともにこの押圧ポンチと一体的に動くように構成され、
前記押圧側拘束部材から突出した押圧ポンチの突出部は、前記段差部の領域内での素材の最小肉厚と前記大径部の領域内での素材の最小肉厚とが同じになるときに前記導出された位置で素材の押圧側端部と当接するような突出長さに構成されていることを特徴とする請求項8に記載の筒状部材又は有底筒状部材の製造方法。
【請求項10】
前記押圧側拘束部材は、前記大径部の内径と略同じ外径を有するか、それよりも小さな外径を有していることを特徴とする請求項6から9の何れか1項に記載の筒状部材又は有底筒状部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−7260(P2006−7260A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−186330(P2004−186330)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】