説明

箔画像形成方法

【課題】少量多品種の箔画像を容易に低コストで作製でき、プリント物の箔転写面に転写箔層を良好に転写でき、高品質の箔画像が得られ、且つ、使用中に支持体から転写箔層が剥離したりすることが無い優れた箔画像を得ることができる箔画像形成方法を提供することにある。
【解決手段】少なくとも電子写真画像形成装置にトナーを装填して支持体上にトナー像の箔転写面を有するプリント物を形成する工程、プリント物の箔転写面と転写箔の転写箔層とを重ね合わせて加熱加圧する工程、加熱加圧されたプリント物と転写箔を冷却した後、転写箔のベースフィルムを剥がす工程を経て箔画像を形成する箔画像形成方法において、前記トナーは少なくとも結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂とを有することを特徴とする箔画像形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真画像形成方法で作製したプリント物のトナー像の箔転写面と転写箔の転写箔層とを重ね合わせて加熱加圧し、加熱されたプリント物と転写箔を冷却した後、転写箔のベースフィルムを剥がして箔画像を形成する箔画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像支持体上に、金・銀・アルミ或いはホログラム等の転写箔を用いて箔転写により箔画像を形成する技術が知られている。箔転写は、通常、転写させる画像が凸部に浮き上がる金属金型を加熱し、この凸部をベースフィルム、離型層、着色層、接着層からなる転写箔を押し当てることで、転写箔の接着層を溶融して画像支持体に接着させ、冷却後に離型層よりベースフィルムをはがすことで画像支持体状に箔画像を形成するホットスタンピング法で行われる。しかし、このホットスタンピング法は、金属金型の作製に時間とコストがかかり、多品種小ロットの箔画像の製造には不向きであった。
【0003】
この金属金型作製の時間とコストを削減する目的で、油相または油相と水相に微粒子状のホットメルト接着剤を分散させてなるホットメルト含有W/O型エマルジョンインクを用いて被転写基材にインク層を形成した後、該インク層と転写箔を重ね合わせて加熱圧着する箔画像形成方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
しかしながら、ホットメルト含有W/O型エマルジョンインクを用いて支持体上にインク層を形成した後、該インク層と転写箔を重ね合わせて加熱圧着する方法は、金属金型を使用しない点でホットスタンピング法の時間とコストを削減する効果があるが、原稿毎に孔版原紙を作製する必要があり、効果は不十分であった。
【0005】
又、支持体上に電子写真画像形成装置を用いてトナー像を形成した後、該トナー像上に転写箔を重ね、さらに該転写箔の上に上記支持体よりも薄い可とう性シートをかさね合わせた後、これらの可とう性シート、転写箔及び支持体を1対のローラ間を通して加圧加熱した後、前記トナー像が冷えてから、上記支持体から可とう性シート、転写用シートの順に剥離することを特徴とする箔画像形成方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
又、被記録媒体および箔のいずれか一方に活性エネルギー線重合性化合物と重合開始剤とを含む液体を像様に吐出するオンデマンド式液滴送出トヘッドと、前記液体に活性エネルギー線を照射し、被記録媒体および箔のいずれか一方に粘着性を持つ感圧性接着剤の画像を形成する手段と、形成した接着剤の画像に被記録媒体および箔のいずれか一方を転写して、被記録媒体に箔の画像を形成する箔画像形成手段と、前記被記録媒体の搬送方向において、前記箔画像形成手段の下流に配置され、少なくとも色材を含んだインクを吐出して前記箔画像が形成された被記録媒体に画像を形成するインクジェットヘッドを有する画像形成手段を有するインクジェット記録装置が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−279608号公報
【特許文献2】特開昭61−252190号公報
【特許文献3】特開2009−226863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、公知の電子写真画像形成装置を用いて作製したプリント物のトナー像の箔転写面に上記の方法で箔画像を作製すると、箔転写面に転写箔層が完全に転写されず良好な箔画像が得られないという問題があった。
【0009】
又、トナーと転写箔層との接着性が弱いため箔画像を使用中に転写箔層が剥離したりして実用上問題があった。
【0010】
本発明の目的は、少量多品種の箔画像を容易に低コストで作製でき、プリント物の箔転写面に転写箔層を良好に転写でき、高品質の箔画像が得られ、且つ、使用中に転写箔層が剥離したりすることが無い優れた箔画像を得ることができる箔画像形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、下記構成により達成される。
【0012】
1.少なくとも電子写真画像形成装置にトナーを装填して支持体上にトナー像の箔転写面を有するプリント物を形成する工程、
プリント物の箔転写面と転写箔の転写箔層とを重ね合わせて加熱加圧する工程、
加熱加圧されたプリント物と転写箔を冷却した後、転写箔のベースフィルムを剥がす工程を経て箔画像を形成する箔画像形成方法において、
前記トナーは少なくとも結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂とを有することを特徴とする箔画像形成方法。
【0013】
2.前記結晶性ポリエステル樹脂が脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとを反応させて得られるものであり、非晶性ポリエステル樹脂が芳香族ジカルボン酸と多価アルコールとを反応させて得られるものであることを特徴とする前記1に記載の箔画像形成方法。
【0014】
3.前記トナーの中に占める結晶性ポリエステル樹脂の量は、トナー全質量に対し1質量%以上40質量%以下であることを特徴とする前記1または2に記載の箔画像形成方法。
【0015】
4.前記結晶性ポリエステル樹脂は、前記非晶性ポリエステル樹脂の量に対し、2質量%以上40質量%以下であることを特徴とする前記1〜3の何れかに記載の箔画像形成方法。
【0016】
5.前記結晶性ポリエステル樹脂の融点は、52℃以上102℃以下であることを特徴とする前記1〜4の何れかに記載の箔画像形成方法。
【0017】
6.前記非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移は、51℃以上65℃以下であることを特徴とする前記1〜5の何れかに記載の箔画像形成方法。
【0018】
7.前記トナーは、その粒子中に離型剤を含有し、該離型剤の融点が前記結晶性ポリエステル樹脂の融点より高いことを特徴とする前記1〜6の何れかに記載の箔画像形成方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明の箔画像形成方法は、少量多品種の箔画像を容易に低コストで作製でき、プリント物の箔転写面に転写箔層を良好に転写でき、高品質の箔画像が得られ、且つ、使用中に転写箔層が剥離したりすることが無い優れた箔画像を得ることができる優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】箔画像形成方法の一例を示す模式図である。
【図2】支持体上にトナー像の箔転写面を有するプリント物を形成する工程で用いる電子写真画像形成装置の一例を示す模式図である。
【図3】プリント物の箔転写面と転写箔の転写箔層とを重ね合わせて加熱加圧する工程で用いる転写箔層転写装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明者らは、少量多品種の箔画像を容易に低コストで作製することができ、転写箔層の転写性が良好で、使用中に箔画像からトナー層及び転写箔層が剥がれない箔画像形成方法について検討を行った。
【0022】
種々検討の結果、少なくとも非晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂とを有するトナーを用いて作製したプリント物のトナー像の箔転写面に転写箔の転写箔層を転写すると、本発明の目的を達成できることを見出した。
【0023】
本発明の箔画像形成方法は、電子写真画像形成方法によりプリント物を作製し、プリント物のトナー像の箔転写面に転写箔の転写箔層を転写することを特徴とする方法である。
【0024】
本発明で用いられる電子写真画像形成方法によれば、少量多品種のプリント物を形成することは、容易である。
【0025】
本発明で用いられる転写箔は、転写物に加熱加圧により転写箔層を転写する目的で作製されたものである。
【0026】
先ず、本発明に係るトナーを用いると目的が達成できることについて説明する。
【0027】
プリント物のトナー像の箔転写面と転写箔の転写箔層面とを重ね合わせ、加熱加圧すると、トナー像のトナーと転写箔層の接着層が溶融もしくは軟化し、転写箔層の接着層とトナーとが相溶する。その後、冷却することにより接着層とトナーとの間に接着力が生じる。
【0028】
冷却した後にプリント物と転写箔のベースフィルムを剥離すると、トナー像の箔転写面にのみ転写箔層が転写され、箔画像が得られる。
【0029】
転写箔の接着層とプリント物の箔転写面との接着力を上げるためには、転写箔の接着層とプリント物の箔転写面のトナーとの化学的親和力を高めることが必要であると推察した。
【0030】
化学的親和力を高める方法としては、
(1)転写箔側に、支持体上のトナーと相溶性のよい接着補助層をもたせることや、プライマー処理などの特別な処理をする
(2)転写箔の接着層と相溶性の良いトナーを用いることで接着性を向上させる
ことなどが考えられる。
【0031】
(1)の方法は、専用の転写箔を作製することになるため、コストが高くなってしまう。また使用できる転写箔が限定されてしまい、本来転写箔を用いる目的である表現力付与の選択幅を狭めてしまうことになる。
【0032】
(2)の方法は、汎用的な転写箔を使用でき、かつ充分な接着性を持った箔画像を得られ望ましい。
【0033】
一般に、転写箔の接着層には、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、酢酸ビニル樹脂や塩化ビニル樹脂の様な極性の高いホットメルト樹脂が使用されている。この接着層とトナーとの接着性を持たせるには、ポリエステル樹脂のようなエステル結合を多く含有するトナーを使用すると、化学的親和力を高めることができると考えられる。
【0034】
しかしながら、結晶性ポリエステルを含有したトナーを実際に電子写真画像形成装置に装填して用いると、トナーが感光体や中間転写体に付着し、トナーフィルミングが発生し、実用上問題があった。
【0035】
本発明者等は、電子写真画像形成装置に装填して用いてもトナーフィルミングが発生せず、且つ、転写箔の転写箔層の転写性が良好で、支持体及び転写箔層との接着性が良好な箔画像が得られるトナーについて検討を行った。
【0036】
本発明では、結晶性ポリエステルと非晶性ポリエステルを含むトナーを用いることで、トナー層の箔転写面と転写箔層の接着力を向上させることを可能にするとともに、感光体や中間転写体に付着してトナーフィルミングが発生するのを防止できることを見出した。
【0037】
さらに、ポリエステル樹脂の中でも結晶性ポリエステルと非晶性ポリエステルを併用したトナーは特に接着性向上効果が大きい。これは箔転写時の加熱に際して結晶性ポリエステルが融解し著しく粘度が下がるために、トナー像から転写箔の接着層へトナーの浸透が容易に進み、両者の相溶化が促進され、転写箔の転写箔層の転写性が良好で、転写箔層との接着性が良好な箔画像が得られるようになったと推察している。
【0038】
トナーの中に占める結晶性ポリエステル樹脂の量は、トナー全質量に対し1質量%以上40質量%以下であることが好ましい。
【0039】
結晶性ポリエステル樹脂は、非晶性ポリエステル樹脂の量に対し、2質量%以上40質量%以下であることが好ましい。
【0040】
結晶性ポリエステル樹脂の融点は、52℃以上102℃以下であることが好ましい。
【0041】
非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移点は、51℃以上65℃以下であることが好ましい。
【0042】
また、トナーの粒子中に離型剤を含有することが好ましい。尚、離型剤の融点は結晶性ポリエステル樹脂の融点より高いことが好ましい。離型剤を含有させることにより低速領域から高速領域のいかなるプロセススピードでもオフセット発生を防止でき、クリーニングブレードをクリーニング手段とする電子写真画像形成装置では良好なブレードクリーニング性能を発現することができる。
【0043】
以下、本発明について説明する。
【0044】
《箔画像形成方法》
本発明の箔画像形成方法は、本発明に係るトナーを電子写真画像形成装置に装填してプリント物を形成する工程、該プリント物のトナー像の箔転写面と転写箔の転写箔層とを重ね合わせて加熱加圧する工程、加熱されたプリント物と転写箔を冷却した後転写箔のベースフィルムを剥がし箔画像を形成する工程を経て箔画像を形成する方法である。
【0045】
図1は、箔画像形成方法の一例を示す模式図である。
【0046】
図1において、Aはプリント物を形成する工程、Bは加熱加圧する工程、Cは箔画像を形成する工程、1はプリント物、2は支持体、3はトナー像、4は箔転写面、10は転写箔、11はベースフィルム、12は離型層、13は着色層、14は接着層、15は転写箔層、20は箔画像を示す。
【0047】
図1に示すプリント物1は支持体2の表面にトナー像3を形成したものである。転写箔10はベースフィルム11の上に、離型層12、着色層13、接着層14の順で設けた転写箔層15を有するものである。箔画像20はプリント物1のトナー像3(箔転写面4)の上に転写箔層15が転写されて形成されたものである。
【0048】
図1のAの工程は、電子写真画像形成方法を採用した電子写真画像形成装置を用い、支持体2上にトナーからなるトナー像3を有するプリント物1を形成する工程である。
【0049】
図1のBの工程は、加圧加熱ロールを有する転写箔層転写装置を用い、プリント物の転写箔面4と転写箔10の転写箔層15とを重ね合わせ加熱加圧する工程である。この工程で、プリント物の箔転写面4のトナーと転写箔層15の接着層14とが接着する。
【0050】
図1のCの工程は、加熱加圧したプリント物と転写箔を冷却し、支持体からベースフィルム11を剥がし、トナー像3(箔転写面4)上に転写箔層15を有する箔画像20を形成する工程である。
【0051】
次に、本発明で用いられる部材について説明する。
【0052】
《転写箔》
転写箔としては、市販のホットメルトタイプの転写箔を用いることができる。中でも軟式ビニルまたはプラスチックに転写することを目的とした転写箔が好適に用いられる。
【0053】
転写箔の層構成としては、ベースフィルムの上に少なくとも離型層、着色層、接着層を順次積層した層構成のものを挙げることができる。
【0054】
プリント物側へは、離型層、着色層及び接着層で構成される転写箔層が転写される。
【0055】
〈ベースフィルム〉
ベースフィルムとしては、転写箔層転写装置の加熱加圧に耐え、ベースフィルムの上に転写箔層を設けることができるものが用いられる。例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂等の樹脂シートが用いられる。ベースフィルムの厚みは10〜75μmが好ましく、強度と転写箔層の転写性との兼ね合いから、10〜20μmがより好ましい。
【0056】
〈転写箔層〉
転写箔層は、少なくとも離型層、着色層及び接着層で構成される。
【0057】
(離型層)
離型層は、箔転写時にベースフィルムから転写箔層が離れやすくするために設けるものである。離型層としては、例えば、シリコーン樹脂やオレフィン系樹脂、ワックス等が使用される。
【0058】
(着色層)
着色層は、トナー像の上に形成されたときに着色或いは反射像を形成する層である。
【0059】
本発明において、着色層とは、着色剤を含有する着色剤層、金属等を蒸着した反射層、或いは着色剤層と反射層の両方からなる層の総称を云う。
【0060】
(着色剤層)
着色剤層は、少なくとも着色剤とバインダー樹脂から構成される。着色剤は有機顔料、無機顔料、染料等特に限定されない。バインダー樹脂は特に限定されないが、耐熱性の観点からユリア樹脂、メラミン系樹脂等のアミノ系硬化樹脂、セルロース樹脂、アクリル系樹脂等が好ましく用いられる。
【0061】
(反射層)
反射層は、メタリックな光沢を有する仕上がりの箔画像を形成するために用いるもので、金属等を用いて公知の方法で反射層を設けることにより形成されたものである。反射層を形成する金属材料としては、例えばアルミニウム、スズ、銀、クロム、ニッケル、金等の単体のほかに、ニッケルークロムー鉄合金や青銅、アルミ青銅等の合金をしようすることも可能である。反射層を形成する手段としては、例えば蒸着方やスパッタリング法、イオンプレーティング法等の公知の方法が挙げられる。また、反射層には、例えば水洗シーライト加工、エッチング加工、レーザ加工等の公知の加工方法を利用して規則的な模様を付与するパターニング処理を施すことも可能である。
【0062】
(接着層)
接着層は、加熱加圧後、冷却されたときトナー像のトナーと接着する特性を有する主に樹脂を構成材料とする層である。
【0063】
接着層を構成する樹脂としては、加熱により軟化し、トナー像のトナーと相溶した状態で冷却することにより固化して接着力が生じるホットメルト型のものが用いられる。ホットメルト型の樹脂としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル樹脂系樹脂など、任意の熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0064】
《プリント物》
プリント物は、支持体とトナーで構成される。
【0065】
本発明に用いられるトナーはカラートナー、黒トナー等着色剤を含有した有色トナーでも良いが、箔転写においてはトナーが色を有している必要は無く、コストを考えると着色剤を含有しないクリアトナーを用いることが望ましい。
【0066】
〈支持体〉
支持体としては、電子写真画像形成方法に用いることができるものであれば特に制限はなく、例えば紙、プラスチック、金属、木材、布、天然または合成の皮革等が用いられる。
【0067】
《トナー》
本発明で用いられるトナーは、少なくとも結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂を含有するものであり、転写箔の転写箔層を良好に転写させる観点から転写箔層の接着層と接着性に優れ、且つトナーフィルミングにも優れるコア・シェル構造のトナーとすることが好ましい。
【0068】
本発明で用いられるトナーをコア・シェル構造のものとする場合、コアに少なくとも結晶性ポリエステル樹脂、非晶性ポリエステル樹脂を含有させ、シェルに非晶性ポリエステル樹脂を含有させた構造のものにすることが好ましい。
【0069】
尚、本発明においてトナーとは、トナー粒子の集合体のことである。
【0070】
本発明に使用可能な結晶性ポリエステル樹脂は、トナー全質量に対して1質量%以上40質量%以下の範囲で含有されていることが好ましく、5質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。結晶性ポリエステル樹脂の含有量が上記範囲であることにより、低温定着性が確保でき、また、転写箔の接着層との接着性がより強固になり好ましい。また、結晶性ポリエステル樹脂に起因するトナー破砕を防止できるので破砕粉によるトナーフィルミングの発生を懸念することは無くなり好ましい。
【0071】
結晶性ポリエステル樹脂の量は、非晶性ポリエステル樹脂の量に対し、2質量%以上40質量%以下の範囲であることが好ましい。
【0072】
非晶性ポリエステル樹脂の含有量が上記範囲であることにより、転写箔の接着層との接着性が良く、且つ感光体上へのトナーフィルミングの発生が防止でき好ましい。
【0073】
本発明において、離型剤を用いる場合には、離型剤の融点がトナーを構成する結晶性ポリエステル樹脂の融点より高いものを用いることが好ましい。
【0074】
トナー中の離型剤は、電子写真画像形成装置では有効な働きをするが、箔転写時には接着層との接着性を阻害するので、加熱加圧してトナー像に転写箔層を転写するときには離型剤を溶融させないことが好ましい。
【0075】
結晶性ポリエステル樹脂より高い融点の離型剤を使用することで、トナー像形成時の定着離型性と箔転写時の接着性を両立することができる。すなわち、プリント物形成時の定着工程では、低表面エネルギーの離型剤が樹脂との界面へ染み出し、離型効果を発揮する。一方、箔転写時には、結晶性ポリエステル樹脂の融解が離型剤の融解に優先して起こるので結晶性ポリエステル樹脂と接着層の相溶が容易となり、トナーと接着層との接着強度を上げることが可能となる。
【0076】
次に、本発明に係るトナーが含有する結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂、必要に応じ添加する離型剤について説明する。
【0077】
(結晶性ポリエステル樹脂)
本発明で用いられるトナーは、結晶性ポリエステル樹脂を含有するものであり、結晶性ポリエステル樹脂により低温定着性を実現させることができる。そして、トナーをコア・シェル構造にしたとき、結晶性ポリエステル樹脂をコアに含有させることが好ましい。尚、本発明で「結晶性ポリエステル樹脂」とは、示差走査熱量測定法(DSC)において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピークを有するポリエステル樹脂のことをいうものである。前記結晶性ポリエステル樹脂としては、上述した様に、吸熱ピークを有するポリエステル樹脂であれば特に限定されるものではない。例えば、結晶性ポリエステル主鎖に対して他成分を共重合させた構造のポリマーが存在する場合、このポリマーよりなる樹脂が吸熱ピークを示すものであれば、本発明でいう結晶性ポリエステルに該当する。
【0078】
本発明で使用される結晶性ポリエステル樹脂は、その融点が52℃以上102℃以下の範囲であることが好ましく、65℃以上90℃以下の範囲であることがより好ましい。結晶性ポリエステル樹脂の融点を52℃以上102℃以下とすることにより、結晶性ポリエステル樹脂の融点に起因してのフィルミング発生や定着画像の保存性低下といった問題は懸念されない。また、融点が高すぎることに起因する転写箔の接着層との接着不良も無くなり好ましい。
【0079】
融点は、示差熱量分析装置(DSC)による測定でき、パーキンエルマー社製の「DSC−7」で測定することができる。本発明では、測定して得られたカーブのピーク温度値を融点とする。
【0080】
本発明で用いられる結晶性ポリエステル樹脂の製造方法としては、特に制限はなく、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとを反応させる一般的なポリエステル重合法で製造することができ、例えば、直接重縮合、エステル交換法等を、モノマーの種類によって使い分けて製造する。
【0081】
結晶性ポリエステル樹脂の融点は、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとを反応させる際のモル比(脂肪族ジカルボン酸成分/脂肪族ジオール成分)、或いは製造に用いる脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールの種類により適宜変えることができる。
【0082】
結晶性ポリエステル樹脂を構成する酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸が好ましく、直鎖型の脂肪族ジカルボン酸がより好ましい。また、酸成分として使用される脂肪族ジカルボン酸は1種類のものに限定されるものではなく、2種類以上の脂肪族ジカルボン酸を酸成分として含有するものでもよい。
【0083】
脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼリン酸、1,8−セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸等が挙げられる。これらの中では、アジピン酸、1,8−セバシン酸、ピメリン酸、1,10−デカンジカルボン酸が好ましい。
【0084】
結晶性ポリエステル樹脂を構成するアルコール成分としては、脂肪族ジオールが好ましく、その中でも主鎖を構成する炭素原子の数が2〜22の範囲にある直鎖型の脂肪族ジオールがより好ましい。
【0085】
脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−ドデカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオール等が挙げられる。これらの中では、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールが好ましい。
【0086】
また、前記脂肪族ジカルボン酸に芳香族ジカルボン酸を添加して結晶性ポリエステルを作製することも可能である。
【0087】
(非晶性ポリエステル樹脂)
本発明に使用可能な非晶性ポリエステル樹脂は、非晶性を有するものであれば特に限定されるものではなく、公知の非晶性ポリエステル樹脂を使用することもできる。ここで「非晶性ポリエステル樹脂」とは、示差走査熱量測定法(DSC)において、その吸熱量変化で吸熱ピークを有さないポリエステル樹脂のことをいうものである。
【0088】
非晶性ポリエステル樹脂は、そのガラス転移点が、51℃以上65℃以下のものが好ましい。
【0089】
非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移点を上記範囲とすることにより、保存性の確保と箔接着強度の両立を図ることができ好ましい。ガラス転移点が51.0℃未満ではトナー保存中にブロッキングが起きるおそれがあり、65.0℃を越えると接着時のトナーの軟化が不十分で、結晶性ポリエステル樹脂を併用しても転写箔層との接着強度向上効果が小さい。
【0090】
非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移点は、共重合体を形成する重合性単量体の種類とその比率でコントロールすることが可能である。
【0091】
ガラス転移点は、示差熱量分析装置(DSC)による測定が代表的であり、測定装置としてパーキンエルマー社製の「DSC−7」等が挙げられる。
【0092】
ガラス転移点の測定方法は、昇温・冷却条件として、−30℃で1分間放置後、10℃/minの条件で100℃まで昇温し(第1の昇温過程)、次いで100℃で1分間放置後、10℃/minの条件で0℃まで冷却する(第1の冷却過程)。この操作により前履歴を消去する。次いで、0℃で1分間放置後、10℃/minの条件で100℃まで昇温する(第2の昇温過程)。そして、セカンドヒート(第2の昇温)の吸熱ピーク温度を求め、ガラス転移点とする方法が挙げられる。
【0093】
本発明で用いられる非晶性ポリエステル樹脂の製造方法としては、特に制限はなく、芳香肪族ジカルボン酸と多価アルコールとを反応させる一般的なポリエステルの重合法で製造することができる。
【0094】
非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移点は、芳香族ジカルボン酸と多価アルコールとを反応させる際のモル比(芳香族ジカルボン酸成分/多価アルコール成分)、或いは製造に用いる芳香族ジカルボン酸と多価アルコールの種類により適宜変えることができる。
【0095】
又、非晶性ポリエステル樹脂は、1種の非晶性ポリエステル樹脂でもよいが、2種以上の非晶性ポリエステル樹脂の混合であってもよい。
【0096】
非晶性ポリエステル樹脂を構成する酸成分としては、芳香族ジカルボン酸が好ましく、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、マロン酸、メサコニン酸、イソフタル酸ジメチル、フマル酸、ドデセニルコハク酸等を挙げることができる。これらの中では、イソフタル酸ジメチル、テレフタル酸、ドデセニルコハク酸、トリメリット酸が好ましい。
【0097】
非晶性ポリエステル樹脂を構成するアルコール成分としては、多価アルコールが好ましく、例えば、2価又は3価のアルコールとして、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチレグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、グリセリン、ソルビトール、1,4−ソルビタン、トリメチロールプロパン等を挙げることができる。これらの中ではビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物が好ましい。
【0098】
(離型剤)
本発明で使用される離型剤は特に限定されるものではなく公知のものを使用することができる。詳細には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類、合成エステルワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス、モンタンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物、石油系ワックス等、及び、これらの変性物を挙げることができる。
【0099】
上記離型剤の中でも、融点が70℃以上95℃以下の合成エステルワックスはフィルミング防止の観点から特に好ましく用いられ、上記合成エステルワックスの例としては、ベヘン酸ベヘニル、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、クエン酸トリベエニル等がある。また、ベヘン酸ベヘニル、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、クエン酸トリベへニル等の合成エステルワックスと融点が75〜100℃のパラフィンワックスを併用することにより、耐フィルミング性を向上することができる。
【0100】
尚、トナーを作製に用いる離型剤は、結晶性ポリエステルの融点より高いものを選択して用いることが好ましい。
【0101】
トナー中の離型剤の量は、5質量%以上20質量%以下が好ましく、7質量%以上13質量%以下がより好ましい。5質量%未満の場合は、高温領域でオフセット発生することがあり、また、20質量%を超える場合は、トナー粒子内部に離型剤が取り込まれにくくなる傾向がある。したがって、トナーより離型剤が浮遊したり、取り込まれなかった離型剤がトナー表面に付着し易くなったりするので、これら浮遊離型剤や付着離型剤の影響でフィルミングが発生するおそれがある。
【0102】
次に本発明に係るトナーの製造方法について説明する。
【0103】
《トナーの製造方法》
本発明に係るトナーを製造する方法としては、乳化凝集法によるトナー製造方法が好ましい。乳化凝集法は、その製造工程で形成粒子の形状分布を制御できることや保管特性やクリーニング性に優れるコア・シェル構造のトナー作製を効率よく行えること、他の製造法に比べて製造時の環境負荷を抑えられる観点から好ましい。以下、乳化凝集法により本発明に係るトナーを作製する方法について説明する。
【0104】
本発明に係るトナーを乳化凝集法により作製する方法は、例えば以下の工程から構成される。すなわち、
(1)凝集工程
少なくとも、非晶性ポリエステル樹脂粒子(好ましくは体積基準メディアン径が1μm以下の粒子)を分散させた非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液、離型剤を分散させた離型剤分散液、結晶性ポリエステル樹脂粒子を分散した結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液、必要に応じ着色剤を分散させた着色剤分散液を混合した混合分散液中に凝集剤を添加して加熱を行って凝集粒子を形成する工程
(2)融合工程
非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移点以上に加熱することにより、凝集粒子中の非晶性ポリエステル樹脂を融合させる工程
(3)冷却工程
融合工程で強固になった凝集粒子を例えば20℃/分以上の冷却速度で急冷させる工程 (4)洗浄/乾燥工程
冷却処理した凝集粒子をろ過等で固液分離するとともに洗浄処理を行った後、乾燥処理する工程
(5)外添処理工程
乾燥処理した凝集粒子表面に酸化セリウム粒子等をはじめとする外添剤を添加する工程 なお、本発明では上述した外添剤を添加する前の段階にある「凝集粒子」のことを「母体粒子」あるいは「トナー母体粒子」ともいう。
【0105】
また、上記手順で特にコア・シェル構造のトナーを形成する場合には、コアとなる凝集粒子を形成後、凝集粒子混合分散液中に非晶性ポリエステル樹脂粒子を添加して、前記凝集粒子表面に非晶性ポリエステル樹脂粒子を付着させる付着工程が加わる。付着工程は例えば凝集工程の後に加えることができ、付着工程で非晶性ポリエステル樹脂粒子を表面に付着させた後、前述した融合工程と冷却工程を経てコア・シェル構造のトナーを作製することができる。
【0106】
上記手順によりトナーを製造することにより、コア・シェル構造のトナーを容易に作製することが可能となる。コア・シェル構造のトナーとすることにより、離型剤や必要に応じ混合した着色剤及び結晶性ポリエステル樹脂のトナー表面への露出が抑制されて耐フィルミング性を向上させることができる。
【0107】
また、本発明に係るトナーは体積基準におけるメディアン径(D50)が4.0μm以上9.0μm以下であるものが好ましい。4.0μm以上9.0μm以下とすることにより、高精細な画像が確実に得られ、また、背景部にカブリやトナー飛散による汚染を発生することもない。
【0108】
体積基準におけるメディアン径(D50)は、「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)にデータ処理用のコンピューターシステムを接続した装置を用いて測定、算出することができる。
【0109】
「マルチサイザー3」を用いた体積基準におけるメディアン径(D50)の測定は以下の手順で行う。
(1)トナーを界面活性剤入り水溶液にてなじませ、測定試料を調製する
(2)測定試料0.02gを界面活性剤溶液20mlで十分なじませた後、超音波分散処理を1分間行って測定試料の分散液を作製する
(3)この測定試料の分散液を、サンプルスタンド内の「ISOTONII」(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカに、測定濃度5〜10%になるまでピペットで注入する
(4)測定機カウントを2500個に設定して測定を開始する。尚、「マルチサイザー3」のアパーチャー径は20μmのものを使用する。
【0110】
《現像剤》
本発明に係るトナーを現像剤として用いる場合、本発明に係るトナーを単独で用いる一成分系現像剤でも、また、トナーとキャリアからなる二成分系現像剤であっても、いずれも本発明の効果を発現する良好な画像形成を実現することができる。なお、一成分系現像剤として用いる場合、トナー中に磁性金属粒子を含有する磁性一成分現像剤としても、また、トナー中に磁性金属粒子を含有しない非磁性一成分現像剤としても使用することができる。
【0111】
また、二成分現像剤として用いる場合に使用されるキャリアは、特に制限されるものではなく、公知のキャリアを使用することができる。
【0112】
ここで、樹脂被覆キャリアについて説明する。キャリアの体積基準におけるメディアン径(D50)は20μm以上80μm以下のものが好ましく、良好な画質が得られることと耐フィルミング性を向上させる視点から25μm以上60μm以下がより好ましい。また、樹脂被覆キャリアを構成する核体粒子にはフェライトやマグネタイト造粒物等を用いることができ、その中でもフェライトが好ましい。フェライト組成は、キャリア付着防止の観点より、公知のものの中でもマンガン−マグネシウム−ストロンチウムフェライトが好ましい。
【0113】
次に、プリント物の形成について説明する。
【0114】
図1に、プリント物の構成が記載されている。
【0115】
図1のプリント物の構成において、1はプリント物、2は支持体、3はトナー像、4は箔転写面を示す。
【0116】
尚、本発明において、箔転写面とはトナー像の表面のことで、この箔転写面に転写箔の転写箔層が転写される。
【0117】
《プリント物の形成》
プリント物は、電子写真画像形成装置にトナーを装填し、支持体上にトナー像を形成することで得ることができる。
【0118】
詳細には、下記工程を経てプリント物は得ることができる。
(1)感光体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程
(2)トナーを装填して、静電潜像を現像して感光体上にトナー像を形成する現像工程
(3)感光体上に形成されたトナー像を支持体上に転写する転写工程
(4)支持体上に転写されたトナー像を加熱定着する定着工程。
【0119】
なお、上記4つの工程の他の工程を有していてもよい。例えば、トナー像を転写した後、感光体表面に残留するトナーを除去するクリーニング工程を有するものが好ましい。また、転写工程では、感光体より支持体上へのトナー像の転写を、中間転写体を介して行うものでもよい。
【0120】
図2は、支持体上にトナー像の箔転写面を有するプリント物を形成する工程で用いる電子写真画像形成装置の一例を示す模式図である。
【0121】
図2において、AAは電子写真画像形成装置、50は像担持体である感光体で、有機感光層をドラム上に塗布し、その上に樹脂層を塗設した感光体で、接地されて時計方向に駆動回転される。52はスコロトロンの帯電器(帯電手段)で、感光体50周面に対し一様な帯電をコロナ放電によって与えられる。この帯電器52による帯電に先だって、前画像形成での感光体の履歴をなくすために発光ダイオード等を用いた帯電前露光部51による露光を行って感光体周面の除電をしてもよい。
【0122】
感光体への一様帯電の後、像露光手段としての像露光器53により画像信号に基づいた像露光が行われる。この図の像露光器53は図示しないレーザーダイオードを露光光源とする。回転するポリゴンミラー531、fθレンズ等を経て反射ミラー532により光路を曲げられた光により感光体上に走査がなされ、静電潜像が形成される。
【0123】
帯電器52により感光体表面を一様に帯電し、像露光が行われた領域、即ち感光体の露光部電位(露光部領域)を現像工程(手段)により顕像化する。一方、未露光部電位は現像スリーブ541に印加される現像バイアス電位により現像されない。
【0124】
次に、静電潜像は現像手段としての現像器54で現像される。感光体50周縁にはトナーとキャリアとから成る現像剤を内蔵した現像器54が設けられ、マグネットを内蔵し現像剤を保持して回転する現像スリーブ541により現像が行われる。現像器54内部は現像剤攪拌搬送部材544、543等から構成され、現像剤は攪拌、搬送されて現像スリーブに供給されるが、その供給量は該搬送量規制部材により制御される。該現像剤の搬送量は適用される有機電子写真感光体の線速及び現像剤比重によっても異なるが、一般的には20〜200mg/cmの範囲である。
【0125】
本発明に係るトナーは、二成分系現像剤あるいは一成分系現像剤のいずれの現像剤として使用可能である。現像スリーブ(現像ローラ)径は20〜5mm、好ましくは18〜7mmがよく、現像スリーブの線速は200〜1800mm/secが好ましい。
【0126】
なお、図中の70は感光体、帯電器、転写器、分離器及びクリーニング器が一体化されている着脱可能なプロセスカートリッジである。本発明に係るトナーは、前述した範囲の径を有する小型の現像器で高速現像を行うことが可能なので、プロセスカートリッジ仕様の電子写真画像形成装置には特に好ましく使用される。
【0127】
また、本発明に係るトナーを用いる画像形成方法で実施可能な定着方法は、特に限定されるものではなく、公知の定着方式により対応が可能である。公知の定着方式としては、加熱ローラと加圧ローラからなるローラ定着方式、加熱ローラと加圧ベルトからなる定着方式、加熱ベルトと加圧ローラで構成される定着方式、加熱ベルトと加圧ベルトからなるベルト定着方式等がありいずれの方式でもよい。また加熱方式としてはハロゲンランプによる方式、IH定着方式など、公知のいずれの加熱方式を採用することができる。
【0128】
《箔画像の形成》
図3は、プリント物の箔転写面と転写箔の転写箔層とを重ね合わせて加熱加圧する工程で用いる転写箔層転写装置の一例を示す模式図である。
【0129】
図3において、BBは転写箔層転写装置、1はプリント物、10は転写箔、100は加熱ロール、101はアルミニウム製基体上に配置したシリコーンゴム層、102は熱源、200は加圧ロール、201はアルミニウム製基体上に配置したシリコーンゴム層、202は加圧スプリング、300はプリント物の搬送方向を示す。
【0130】
箔画像は、以下の様にして形成することができる。
(1)プリント物の箔転写面と転写箔の転写箔層とを重ね合わせる
(2)重ね合わせたプリント物と転写箔を転写箔層転写装置の加熱ロールと加圧ロールの間に挿入し、加熱加圧する
(3)挿入されたプリント物と転写箔は、加熱された状態で排出される
(4)排出されたプリント物と転写箔は冷却された後、プリント物から転写箔のベースフィルムが剥がされ、箔画像が形成される。
【0131】
転写箔層転写装置の仕様を以下に示す。
【0132】
(加熱加圧ロールの仕様)
加熱ロール:外径100mm、厚さ10mmのアルミニウム製基体上に厚さ3mmのシリコーンゴム層を配置したもの
加圧ロール:外径80mm、厚さ10mmのアルミニウム製基体上厚さ3mmのシリコーンゴム層を配置したもの
熱源:加熱ロールの内部にハロゲンランプを配置(サーミスタにより温度制御)
加熱ロールと加圧ロールのニップ幅:7mm
(加熱加圧ロールの温度設定)
加熱ロールの表面温度:130℃に設定
(搬送速度)
23mm/sec
尚、転写箔層転写装置としては、電子写真画像形成装置の定着装置の温度、圧力条件等を変えることで用いることができる。
【0133】
プリント物に転写箔の転写箔層を転写して作製した箔画像は、画像の装飾性が要求される用途の他に、偽造防止、セキュリティ用途としても用いることができる。
【実施例】
【0134】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の様態はこれに限定されない。
【0135】
先ず、プリント物の作製に用いるトナーを以下の方法で作製した。
【0136】
《トナーの作製》
〈各種分散液の作製〉
(結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液1の作製)
重合単量体として、下記組成の化合物よりなる混合物Dを加熱乾燥した反応容器に、セバシン酸に対して0.014質量%となる量のテトラブトキシチタン(Ti(OBu))を触媒として投入した。減圧操作により容器内の空気を減圧し、さらに窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械撹拌により180℃で5時間還流処理を行った。その後、減圧蒸留下にて200℃まで昇温を徐々に行いながら3時間撹拌処理し、粘稠状態になったところでGPCにて分子量測定を行い、重量平均分子量が15,000になったところで、減圧蒸留を停止して空冷し、「結晶性ポリエステル樹脂1」を作製した。
【0137】
混合物D
セバシン酸 200質量部
1,6−ヘキサンジオール 120質量部
上記手順で作製した「結晶性ポリエステル樹脂1」の融点は90℃であった。
【0138】
次に、前記「結晶性ポリエステル樹脂1」を溶融状態のまま、「キャビトロンCD1010(ユーロテック(株)製)」に移送した。また、別途準備した水性媒体タンクに試薬アンモニア水をイオン交換水で希釈して濃度0.37質量%に調製した希アンモニア水を投入し、熱交換器で120℃に加熱して前記結晶性ポリエステル樹脂溶融体と同時に前記キャビトロンに移送した。この状態で回転子の回転周波数を60Hz、圧力を4.9×10Paの条件に設定してキャビトロンを運転することにより、体積基準メディアン径が0.26μmの「結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液1」を作製した。さらに樹脂粒子濃度が20質量%となる様に水分量を調整した。
【0139】
(結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液2の作製)
重合単量体として、下記組成の化合物よりなる混合物Eを加熱乾燥した反応容器に、1,10−デカンジカルボン酸に対して0.014質量%となる量のテトラブトキシチタン(Ti(OBu))を触媒として投入した。減圧操作により容器内の空気を減圧し、さらに窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械撹拌により180℃で5時間還流処理を行った。その後、減圧蒸留下にて200℃まで昇温を徐々に行いながら3時間撹拌処理し、粘稠状態になったところでGPCにて分子量測定を行い、重量平均分子量が15,000になったところで、減圧蒸留を停止して空冷し、「結晶性ポリエステル樹脂2」を作製した。
【0140】
混合物E
1,10−デカンジカルボン酸 200質量部
ノナンジオール 140質量部
上記手順で作製した「結晶性ポリエステル樹脂2」の融点は65℃であった。
【0141】
次に、前記「結晶性ポリエステル樹脂2」を溶融状態のまま、「キャビトロンCD1010(ユーロテック(株)製)」に毎分100gの速度で移送した。また、別途準備した水性媒体タンクに試薬アンモニア水をイオン交換水で希釈して濃度0.37質量%に調製した希アンモニア水を投入し、熱交換器で120℃に加熱して毎分0.1リットルの速度で前記結晶性ポリエステル樹脂溶融体と同時に前記キャビトロンに移送した。この状態で回転子の回転周波数を60Hz、圧力を4.9×10Paの条件に設定してキャビトロンを運転することにより、体積基準メディアン径が0.23μmの結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液を作製し、さらに樹脂粒子濃度が20質量%となる様に水分量を調整して「結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液2」を作製した。
【0142】
(結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液3の作製)
重合単量体として、下記組成の化合物よりなる混合物Fを加熱乾燥した反応容器に、ピメリン酸に対して0.014質量%となる量のテトラブトキシチタン(Ti(OBu))を触媒として投入した。減圧操作により容器内の空気を減圧し、さらに窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械撹拌により180℃で5時間還流処理を行った。その後、減圧蒸留下にて200℃まで昇温を徐々に行いながら3時間撹拌処理し、粘稠状態になったところでGPCにて分子量測定を行い、重量平均分子量が15,000になったところで、減圧蒸留を停止して空冷し、「結晶性ポリエステル樹脂3」を作製した。
【0143】
混合物F
ピメリン酸 200質量部
1,6−ヘキサンジオール 160質量部
上記手順で作製した「結晶性ポリエステル樹脂3」の融点は52℃であった。
【0144】
次に、前記「結晶性ポリエステル樹脂3」を溶融状態のまま、「キャビトロンCD1010(ユーロテック(株)製)」に毎分100gの速度で移送した。また、別途準備した水性媒体タンクに試薬アンモニア水をイオン交換水で希釈して濃度0.37質量%に調製した希アンモニア水を投入し、熱交換器で120℃に加熱して毎分0.1リットルの速度で前記結晶性ポリエステル樹脂溶融体と同時に前記キャビトロンに移送した。この状態で回転子の回転周波数を60Hz、圧力を4.9×10Paの条件に設定してキャビトロンを運転することにより、体積基準メディアン径が0.23μmの結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液を作製し、さらに樹脂粒子濃度が20質量%となる様に水分量を調整して「結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液3」を作製した。
【0145】
(結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液4の作製)
重合単量体として、下記組成の化合物よりなる混合物Gを加熱乾燥した反応容器に、コハク酸に対して0.014質量%となる量のテトラブトキシチタン(Ti(OBu))を触媒として投入した。減圧操作により容器内の空気を減圧し、さらに窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械撹拌により180℃で5時間還流処理を行った。その後、減圧蒸留下にて200℃まで昇温を徐々に行いながら3時間撹拌処理し、粘稠状態になったところでGPCにて分子量測定を行い、重量平均分子量が15,000になったところで、減圧蒸留を停止して空冷し、「結晶性ポリエステル樹脂4」を作製した。
【0146】
混合物G
コハク酸 200質量部
エチレングリコール 110質量部
上記手順で作製した「結晶性ポリエステル樹脂4」の融点は102℃であった。
【0147】
次に、前記「結晶性ポリエステル樹脂1」を溶融状態のまま、「キャビトロンCD1010(ユーロテック(株)製)」に毎分100gの速度で移送した。また、別途準備した水性媒体タンクに試薬アンモニア水をイオン交換水で希釈して濃度0.37質量%に調製した希アンモニア水を投入し、熱交換器で120℃に加熱して毎分0.1リットルの速度で前記結晶性ポリエステル樹脂溶融体と同時に前記キャビトロンに移送した。この状態で回転子の回転周波数を60Hz、圧力を4.9×10Paの条件に設定してキャビトロンを運転することにより、体積基準メディアン径が0.26μmの結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液を作製し、さらに樹脂粒子濃度が20質量%となる様に水分量を調整して「結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液4」を作製した。
【0148】
表1に、結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液の融点、作製に用いた部材(脂肪族ジオール、脂肪族ジカルボン酸)とそれら質量部を示す。
【0149】
【表1】

【0150】
(非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液1の作製)
下記組成の化合物よりなる化合物群を化合物A群とし、加熱乾燥した反応容器に、前記化合物A群及び触媒としてジブチルスズオキシド0.12質量部を投入した。その後、減圧操作により容器内の空気を減圧し、さらに窒素ガスにより不活性雰囲気下にして、この雰囲気下で機械撹拌により180℃で6時間還流処理を行った。その後、減圧蒸留にて200℃まで昇温を徐々に行いながら5時間撹拌処理し、粘稠状態になったところでGPCにて分子量測定を行い、重量平均分子量が13,700になったところで、減圧蒸留を停止して空冷し、「非晶性ポリエステル樹脂1」を作製した。「非晶性ポリエステル樹脂1」のガラス転移点は63.0℃であった。
【0151】
化合物A群
ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(平均付加モル数2)(BPA−PO) 140質量部
ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物(平均付加モル数2)(BPA−E0)
60質量部
イソフタル酸ジメチル 40質量部
テレフタル酸 70質量部
次に、「非晶性ポリエステル樹脂1」を溶融状態のまま、「キャビトロンCD1010(ユーロテック(株)製)」に移送した。また、別途準備した水性媒体タンクに試薬アンモニア水をイオン交換水で希釈して濃度0.37質量%に調製した希アンモニア水を投入し、熱交換器で120℃に加熱して前記非晶性ポリエステル樹脂と同時に前記キャビトロンに移送した。この状態で回転子の回転周波数を60Hz、圧力を4.9×10Paの条件に設定してキャビトロンを運転することにより、体積基準メディアン径が0.28μmの非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液を作製した。さらに、樹脂粒子濃度が20質量%となる様に水分量を調整し「非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液1」を作製した。
【0152】
尚、体積基準メディアン径はレーザ回折式粒度分布測定器(LA−750 堀場製作所)で測定した値である。
【0153】
(非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液2の作製)
前記「非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液1」の作製で用いた化合物A群を下記化合物よりなる化合物B群に変更した他は同様の条件で重量平均分子量が18,100、ガラス転移点が59.6℃の「非晶性ポリエステル樹脂2」を作製した。
【0154】
化合物B群
ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(平均付加モル数2.2)
140質量部
ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物(平均付加モル数2) 70質量部
イソフタル酸ジメチル 30質量部
テレフタル酸 50質量部
ドデセニルコハク酸 50質量部
次に、作製した「非晶性ポリエステル樹脂2」を前記「非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液1」の作製と同様の条件で、キャビトロンで乳化分散処理することにより、体積基準メディアン径が0.14μmの非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液を作製した。さらに、樹脂粒子濃度が20質量%となる様に水分量を調整して「非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液2」を作製した。
【0155】
(非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液3の作製)
前記「非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液1」の作製で用いた化合物A群を下記化合物よりなる化合物C群に変更した他は同様の条件で重量平均分子量が18,100、ガラス転移点が53.0℃の「非晶性ポリエステル樹脂3」を作製した。すなわち、
化合物C群
ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(平均付加モル数2.2)
180質量部
ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物(平均付加モル数2) 20質量部
テレフタル酸 60質量部
フマル酸 10質量部
ドデセニルコハク酸 60質量部
トリメリット酸 5質量部
次に、作製した「非晶性ポリエステル樹脂3」を前記「非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液1」の作製と同様の条件で、キャビトロンで乳化分散処理することにより、体積基準メディアン径が0.14μmの非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液を作製し、さらに、樹脂粒子濃度が20質量%となる様に水分量を調整して「非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液3」を作製した。
【0156】
表2に、非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液のガラス転移点、作製に用いた部材(多価アルコール、芳香族ジカルボン酸)とそれらの質量部を示す。
【0157】
【表2】

【0158】
(離型剤分散液の調製)
ベヘン酸ベヘニル(融点71.2℃) 60質量部
イオン性界面活性剤(i−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム) 5質量部
イオン交換水 200質量部
上記成分を混合溶解させた溶液を95℃に加熱し、ホモジナイザ「ウルトラタラックスT50」にて10分間分散処理した後、圧力吐出型「ゴーリンホモジナイザ」で分散処理して離型剤粒子の体積基準メディアン径が210nmの離型剤分散液を調製した。さらに離型剤濃度が20質量%となる様に水分量を調整して「離型剤分散液」を作製した。
【0159】
〈母体粒子1の作製〉
非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液1 560質量部
結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液1 240質量部
離型剤分散液 100質量部
上記成分を丸型ステンレス製容器内に投入し、300質量部のイオン交換水とともに撹拌しながら20℃に調整した後、ホモジナイザ「ウルトラタラックスT50」で十分に混合、分散処理して分散液を調製した。次に、前記分散液中にポリ塩化アルミニウム0.1質量部を添加し「ウルトラタラックスT50」により分散処理を継続した。分散処理を行った後、前記容器を加熱用オイルバスに投入し、撹拌を行いながら容器を45℃まで加熱した。容器を45℃で60分間保持した後、前記分散液中に「非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液1」200質量部を緩やかに添加した。
【0160】
さらに、エチレンジアミンテトラ酢酸4Na塩4水和物を分散液固形分の1質量%に該当する量添加し、その後、0.5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液で系内のpHを8に調整した。その後、ステンレス製容器を密閉して磁力シールにより撹拌を継続しながら90℃まで加熱し、さらに0.5モル/Lの硝酸を用いて系内のpHを7に調整し、その後、30分保持して反応を継続させた。
【0161】
反応終了後、多管式熱交換機を使用(冷媒は5℃の冷水)し、−25℃/分の冷却速度となる様に冷水の流量を調整して30℃まで急冷却した。急冷却後、ろ過処理を行ってイオン交換水で十分に洗浄した後、ヌッチェ式吸引ろ過により固液分離を施した。さらに、分離した粒子を更に43℃のイオン交換水中に再分散させ、300rpmの条件で15分間撹拌して洗浄処理した。
【0162】
この操作をさらに5回繰り返し、ろ液のpHが6.6、電気伝導度12μS/cmとなったところで、ヌッチェ式吸引ろ過により「No5Aろ紙」を用いて固液分離を行った。次に真空乾燥を12時間継続して「母体粒子1」を作製した。乾燥処理して得られた母体粒子1の体積基準におけるメディアン径(D50)は6.5μmであった。
【0163】
〈母体粒子2〜10の作製〉
母体粒子1の作製で用いた、非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液1、結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液1、離型剤分散液を、表3のように変更した以外は母体粒子1の作製と同様にして「母体粒子2〜10」を作製した。
【0164】
〈トナー1〜10の作製〉
上記の「母体粒子1〜10」の各々に、疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm)1質量%および疎水性チタニア(数平均一次粒子径=20nm)0.3質量%を添加し、ヘンシェルミキサーにより混合して、「トナー1〜10」を作製した。
【0165】
表3に、トナーの作製で用いた非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液と結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液、トナー全質量中の結晶性ポリエステル樹脂含有量(質量%)を示す。
【0166】
【表3】

【0167】
(現像剤の調製)
フェライトコア粒子100質量部とシクロヘキシルメタクリレート/メチルメタクリレート(共重合比5/5)の共重合体樹脂粒子5質量部を攪拌羽根付き高速混合機に投入し、120℃で30分間攪拌混合して機械的衝撃力の作用でフェライトコア粒子の表面に樹脂コート層を形成し、体積基準のメディアン径(D50)が60μmのフェライトキャリアを得た。
【0168】
上記で作製した「トナー1〜10」の各々に対し、上記キャリアをトナー濃度が4質量%になるようにV型混合機にて混合し、「現像剤1〜10」を調製した。
【0169】
(転写箔の準備)
村田金箔社製の「メタリックホイルBLタイプ」を準備した。
【0170】
《電子写真特性の評価》
トナーの電子写真特性の評価は、市販の電子写真画像形成装置「Bizhub500(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)」に上記で作製したトナーを順次装填し、30℃、80%RH環境下で50万枚連続プリントを実施し、感光体上のトナーフィルミング発生の程度を目視確認するとともに、トナーフィルミングに起因する画像欠陥発生の程度で評価した。尚、○、△を合格とする。
【0171】
評価基準
○:50万枚のプリントまで、感光体上にトナーフィルミングが確認されず、画像欠陥発生も無い
△:50万枚のプリントまでに、感光体上にトナーフィルミングは確認されたが、50万枚のプリントまで画像欠陥発生は無い
×:50万枚のプリントまでに、感光体上にトナーフィルミングが観察され、50万枚のプリントまでに画像欠陥発生も有り。
【0172】
《箔画像の評価》
〈プリント物の作製〉
プリント物の作製は、市販の電子写真画像形成装置「Bizhub500」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)」を用いた。
【0173】
プリント物は、上記で作製した各トナーを上記電子写真画像形成装置に装填し、「OKトップコート紙(坪量157g/m)」(王子製紙社製)へのトナー付着量を4g/mに調整して、縦5cm、横15cmの範囲に画像面積率80%の格子画像を出力して作製した。
【0174】
〈箔画像の作製〉
箔画像は、上記で作製したプリント物のトナー像の箔転写面と「メタリックホイルBLタイプ」の接着層面が接するように重ね合わせ、図3に示す転写箔層転写装置の加熱加圧ロール間を通し、室温まで冷却した後、プリント物から転写箔のベースフィルムを剥離し、トナー像の箔転写面へ転写箔層の転写を行い、箔画像を作製した。
【0175】
〈転写性の評価〉
転写箔層の転写性は、上記で作製した箔画像の表面を目視で観察し評価した。尚、○、△を合格とする。
【0176】
評価基準
○:トナー像の箔転写面に転写箔層が忠実に転写されている
△:トナー像の箔転写面に転写箔層が転写されていない部分が10%未満ある
×:トナー像の箔転写面に転写箔層が転写されていない部分が10%以上ある。
【0177】
〈転写箔層の接着性の評価〉
転写箔層の接着性は、テープ剥離試験で評価した。
【0178】
転写箔層上に「メンディングテープ」(住友3M製)を貼りつけた後、メンディングテープを剥がし、剥した部分の箔画像を目視にて観察し評価した。尚、○、△を合格とする。
【0179】
テープ剥離法
(1)「メンディングテープ」(住友3M社製:No.810−3−12相当)を軽く張り付ける
(2)1kPaの圧力でテープを3.5回往復擦り付ける
(3)180°の角度、200gの力でテープを剥がす
(4)剥離後の箔画像を目視で観察する
評価基準
○:箔画像に剥離された部分が無く良好
△:箔画像に剥離された部分が見られるが、実用上問題なし
×:箔画像に剥離された部分が多く、実用上問題有り。
【0180】
表4に評価結果を示す。
【0181】
【表4】

【0182】
表4に示す様に、本発明の構成を満たすトナーは良好な電子写真特性を示し、更に、本発明の構成を満たすトナーを用いて作製したプリント物上に転写箔の転写箔層を転写する箔画像形成方法は、良好な転写箔層の転写性と、良好な転写箔層の接着性を有する箔画像が得られることが確認された。
【0183】
一方、本発明の構成を有さないトナーでは、上記評価項目中のいずれかで評価基準を満たしていないことが確認された。
【符号の説明】
【0184】
A プリント物を形成する工程
B 加熱加圧する工程
C 箔画像を形成する工程
1 プリント物
2 支持体
3 トナー像
4 箔転写面
10 転写箔
11 ベースフィルム
12 離型層
13 着色層
14 接着層
15 転写箔層
20 箔画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも電子写真画像形成装置にトナーを装填して支持体上にトナー像の箔転写面を有するプリント物を形成する工程、
プリント物の箔転写面と転写箔の転写箔層とを重ね合わせて加熱加圧する工程、
加熱加圧されたプリント物と転写箔を冷却した後、転写箔のベースフィルムを剥がす工程を経て箔画像を形成する箔画像形成方法において、
前記トナーは少なくとも結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂とを有することを特徴とする箔画像形成方法。
【請求項2】
前記結晶性ポリエステル樹脂が脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとを反応させて得られるものであり、非晶性ポリエステル樹脂が芳香族ジカルボン酸と多価アルコールとを反応させて得られるものであることを特徴とする請求項1に記載の箔画像形成方法。
【請求項3】
前記トナーの中に占める結晶性ポリエステル樹脂の量は、トナー全質量に対し1質量%以上40質量%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の箔画像形成方法。
【請求項4】
前記結晶性ポリエステル樹脂は、前記非晶性ポリエステル樹脂の量に対し、2質量%以上40質量%以下であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の箔画像形成方法。
【請求項5】
前記結晶性ポリエステル樹脂の融点は、52℃以上102℃以下であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の箔画像形成方法。
【請求項6】
前記非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移は、51℃以上65℃以下であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の箔画像形成方法。
【請求項7】
前記トナーは、その粒子中に離型剤を含有し、該離型剤の融点が前記結晶性ポリエステル樹脂の融点より高いことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の箔画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−141534(P2012−141534A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1020(P2011−1020)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】