説明

算出装置、算出プログラムおよび算出方法

【課題】制御計画を考慮した上で精度の良い類似度を算出すること。
【解決手段】算出装置10は、複数の時系列データのそれぞれについて、第一の制御計画を作成するとともに、複数の時系列データの組み合わせについて、第二の制御計画を作成する。算出装置10は、複数の時系列データのそれぞれに対して、作成された第一の制御計画が実行された場合の第一の評価値を算出する。算出装置10は、複数の時系列データのそれぞれに対して、作成された第二の制御計画が実行された場合の第二の評価値を算出する。算出装置10は、算出された第一の評価値と、算出された第二の評価値との差が小さいほど、複数の時系列データの類似度が大きくなるように類似度を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、算出装置、算出プログラムおよび算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在までの様々な事象を観測し、その観測結果に基づいて、一定期間の予測を行い、予測結果に対して最適な制御計画を作成し、作成した制御計画を実行することで、企業の利益を最大化する技術がある。
【0003】
例えば、工場の生産計画では、過去の売上データから今後1ヶ月分の各商品の売上を予測し、その予測結果に基づいて、原材料の調達や工場の生産計画を最適化し、余分な在庫を最小限に抑えて、利益を増大させる技術がある。
【0004】
また、企業や家庭などで蓄電池を使用し、夕方から朝にかけて蓄電池を充電し、昼間の消費電力のピークとなる時間帯で蓄電池を放電することで、ピークとなる時間帯における企業や家庭などでの蓄電池以外の消費電力量を抑えるために、同様の技術が用いられる。すなわち、過去の消費電力の実績値から、消費電力を予測する日の消費電力の推移を予測し、その予測結果に基づいて、蓄電池の充電/放電、換言すると、蓄電池の制御計画を作成する。なお、以下の説明では、各種データの予測を行う日を「予測対象日」と表記する。
【0005】
ここで、予測対象日の8時台から10時台までの時間帯の消費電力の実績値を用いて、11時台から15時台までの消費電力の推移を予測し、蓄電池の放電/充電の制御計画を作成する場合について説明する。なお、1時間あたりの蓄電池の最大放電量は500Wh、1時間あたりの最大充電量は、200Whである。この制御計画では、11時台から15時台までの蓄電池の放電/充電が計画される。また、11時の段階で、蓄電池は、500Whに充電されている。
【0006】
図12〜図15は、従来の技術の一例を説明するための図である。図12の例は、予測対象日の8時台から10時台までの消費電力の実績値を示す。また、図12の例は、予測対象日の11時台から15時台までの消費電力の予測値を示す。図13は、図12の例における各時間帯の消費電力の実績値および予測値を示す図である。図13の例は、13時台の消費電力が1000Whである場合を示す。また、図13の例では、13時台が消費電力のピークの時間帯であることを示す。
【0007】
図14は、図12および図13の場合において、蓄電池の放電/充電の制御計画を作成し、作成した制御計画を実行する場合の一例を示す。また、図15は、図14の例において、作成した制御計画が示す各時刻の蓄電池の放電量、および、制御計画を実行した場合における各時刻の実効消費電力の予測値を示す。なお、実効消費電力は、消費電力の予測値から、蓄電池の放電量を減じた値である。図14および図15の例では、消費電力のピークが来ると予測した13時台に、蓄電池を500Wh分放電させることを示す。これにより、図14および図15の例では、13時台の実効消費電力が500Wh(1000Wh−500Wh)となる。そのため、図14および図15の例では、消費電力のピークとなる時間の実効消費電力が削減される。
【0008】
また、過去の観測(上記の例では、売上データや、消費電力量の実績値)から将来を予測するための技術として、最小近傍法がある。なお、最小近傍法は、最近傍法とも称される。最近傍法を用いて、消費電力の推移を予測する場合の一例について説明する。この場合では、例えば、予測対象日の11時台から15時台までの消費電力の推移を予測するときには、次のような手法を採用する。すなわち、まず、予測対象日の8時台から10時台までの時間帯における消費電力の実績値の推移と、過去の消費電力の8時台から10時台までの時間帯における実績値のパターンのそれぞれとの類似度を算出する。そして、算出した類似度を用いて、予測対象日の8時台から10時台までの時間帯における消費電力の実績値の推移に類似する、8時台から10時台までの時間帯における過去の消費電力の実績値のパターンを複数選択する。そして、選択した複数のパターンについて、11時台から15時台までの消費電力の複数の実績値を予測結果として出力するか、または、実績値の平均値を算出し、算出した結果を予測結果として出力する。なお、以下の説明では、予測対象日の実績値との比較が行われる過去の実績値の時間帯、例えば、上述した例では、8時台から10時台までの時間帯を、「比較対象時間帯」と表記する。また、予測対象日のデータを予測する時間帯、例えば、上述した例では、11時台から15時台までの時間帯を、「予測対象時間帯」と表記する。
【0009】
ここで、複数のパターンの予測対象時間帯における類似度を算出し、複数のパターンについて算出した類似度を、比較対象時間帯における複数のパターンの類似性を判断する際に加味する技術がある。
【0010】
なお、ある時系列データと時系列データとの類似性を判断する技術として、種々の技術がある。例えば、一方の時系列データのある時点のデータの値と、他方の時系列データの中の対応する時点のデータとの値との差分を時点ごとに算出し、算出した差分の総和を類似度として用いることで類似性を判断する技術がある。なお、かかる差分の総和は、マンハッタン距離と称される。マンハッタン距離を用いて類似性を判断する技術では、差の大きさが同じであれば、その差がどの時点で発生していても類似度は同一となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】D. Randall Wilson and Tony R. Martinez, Value Difference Metrics for Continuously Valued Attributes, Proceedings of the International Conference On Artificial Intelligence, Experts Systems and Neural Networks (AIE’96), pp.11-14, 1996
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記の複数のパターンの予測対象時間帯における類似度を算出し、複数のパターンについて算出した類似度を、比較対象時間帯における複数のパターンの類似性を比較する際に加味する技術では、次のような問題がある。すなわち、制御計画を考慮した上で精度の良い類似度を算出できないという問題がある。
【0013】
具体例について説明する。図16〜図21は、従来の技術の問題点を説明するための図である。図16〜図18は、予測対象日の11時台から15時台までの消費電力の予測値のパターンの一例を示す図である。また、図19〜図21は、それぞれ、図16〜図18の例に示す各パターンの各時刻の消費電力の予測値を示す。図16の例に示すパターン95は、11時台に消費電力のピークを有し、図19に示すように、11時台の消費電力が1000Whである場合を示す。また、パターン95は、図19に示すように、12時台から15時台までの各時間帯の消費電力が500Whである場合を示す。また、図17の例に示すパターン96は、12時台に消費電力のピークを有し、図20に示すように、12時台の消費電力が1000Whである場合を示す。また、パターン96は、図20に示すように、11時台、および13時台から15時台までの各時間帯の消費電力が500Whである場合を示す。また、図18の例に示すパターン97は、15時台に消費電力のピークを有し、図21に示すように、15時台の消費電力が1000Whである場合を示す。また、パターン97は、図21に示すように、11時台から14時台までの各時間帯の消費電力が500Whである場合を示す。
【0014】
図16〜図18に示すように、予測対象日の11時台から15時台までの消費電力の推移を示す予測パターンとして、3つのパターン95〜97の候補が得られる場合がある。ここで、パターン95を消費電力の推移を示すパターンと予測した場合を説明する。パターン95を予測した場合には、パターン95が示す消費電力のピークの時刻は、11時台であるため、11時台の実効消費電力が小さくなるように蓄電池の制御計画が、作成される。なお、蓄電池の最大放電量は1時間あたり500Wh、充電量は、200Whである。また、制御計画では、11時台から15時台までの蓄電池の放電/充電が計画される。また、11時の段階で、蓄電池は、500Whに充電されている。
【0015】
図22は、消費電力のピークの時間帯を11時台と予測した場合に作成され、そして、11時台に消費電力のピークが来なかった場合に、再度予測を行い、その結果15時に消費電力のピークが来ると予測して再作成された制御計画の一例を示す図である。図22の例は、各時間帯の消費電力、蓄電池の放電量/充電量、蓄電池の残量である蓄電池残量、実効消費電力を示す。なお、蓄電池の放電量の値が負の値である場合には、この値は、充電量であることを示す。図22の例では、11時台に蓄電池が500Whの放電を行い、12時台から14時台にかけて、1時間に125Whずつ充電を行い、15時台に、375Whの放電を行う場合が示されている。すなわち、パターン95を予測し、実際は、消費電力のピークの時間帯が15時台となるパターン97が発生しても、図22の例に示すように、実際に消費電力のピークが来ないことを認識した12時以降に制御計画を再作成することで、次の結果が得られる。すなわち、図22の例に示すように、12時以降に蓄電池を充電し、15時台に蓄電池の放電を行うことで、実効消費電力を抑制することができる。この場合、図22の例に示すように、実効消費電力の最大値は、625Whである。
【0016】
図23は、制御計画が、消費電力のピークの時間帯を11時台と予測した場合に作成され、そして、11時台ではなく、12時台に消費電力のピークが来た場合の一例を示す図である。図23の例は、各時間帯の消費電力、蓄電池の放電量、蓄電池の残量である蓄電池残量、実効消費電力を示す。図23の例では、11時台に蓄電池から500Whの放電を行う。また、図23の例は、11時台に消費電力のピークが来なかったため、制御計画を再作成しても、12時台の消費電力のピークに蓄電池の放電を行うための蓄電池の充電が間に合わない場合を示す。この場合、図23の例に示すように、実効消費電力の最大値は、1000Whである。
【0017】
すなわち、図22および図23の例に示すように、パターン95に対応するように蓄電池の制御計画を作成した場合において、実際は、パターン97が出現したときには、制御計画を再作成することで、パターン97が示す消費電力のピークに対応できる。このため、パターン95と予測し、実際は、パターン97が出現しても、制御計画を再作成することで消費電力のピークを抑制して、実効消費電力を抑制させることができる。
【0018】
しかしながら、パターン95に対応するように蓄電池の制御計画を作成した場合において、実際は、パターン96が出現したときには、ピークの12時台までに、蓄電池の放電を行うための蓄電池の充電が間に合わない。この場合には、パターン96の消費電力のピークを抑制することが困難である。
【0019】
このような場合に、上記の複数のパターンの予測対象時間帯における類似度を算出し、算出した類似度を、比較対象時間帯における複数のパターンの類似性を比較する際に加味する技術において、算出される類似度の値は、次のようになることが好ましい。すなわち、予測対象時間帯におけるパターン95とパターン96との類似度より、パターン95とパターン97との類似度が高くなることが好ましい。これは、制御計画を見直すことで、消費電力のピークを抑制することが可能なパターン同士の類似度が高くなることが好ましいからである。しかしながら、上記のマンハッタン距離などを用いた技術によって、パターン95とパターン96との類似度、および、パターン95とパターン97との類似度を算出すると、算出した2つの類似度の値が、同一となってしまう。そのため、算出した類似度の値は、上記で説明したような好ましい類似度の値とならない。
【0020】
また、予測された消費電力量ではなく、そこから算出される制御計画の類似性を使うことも考えられる。ここで、パターンごとに作成された予測対象時間帯における制御計画の類似度についても、同様の理由により、パターン95とパターン96との間で算出された類似度より、パターン95とパターン97との間で算出された類似度が高くなることが好ましい。図24は、各パターンに対応して作成された制御計画の一例を示す図である。図24の例は、各時間帯の消費電力、蓄電池の放電量、蓄電池の残量である蓄電池残量、実効消費電力を示す。しかしながら、予測対象時間帯における制御計画について、マンハッタン距離などを用いた技術により算出されたパターン95とパターン96との間で算出された類似度、および、パターン95とパターン97との間で算出された類似度の値は、同一となってしまう。そのため、算出した類似度の値は、上記で説明したような好ましい類似度の値とならない。
【0021】
以上、説明したように、従来の技術では、制御計画を考慮した上で精度の良い類似度を算出できないという問題がある。
【0022】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、制御計画を考慮した上で精度の良い類似度を算出することができる算出装置、算出プログラムおよび算出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本願の開示する算出装置は、作成部と、第一の算出部と、第二の算出部と、第三の算出部とを有する。作成部は、複数の時系列データのそれぞれについて、第一の制御計画を作成するとともに、複数の時系列データの組み合わせについて、第二の制御計画を作成する。第一の算出部は、複数の時系列データのそれぞれに対して、作成部により作成された第一の制御計画が実行された場合の第一の評価値を算出する。第二の算出部は、複数の時系列データのそれぞれに対して、作成部により作成された第二の制御計画が実行された場合の第二の評価値を算出する。第三の算出部は、第一の算出部により算出された第一の評価値と、第二の算出部により算出された第二の評価値との差が小さいほど、複数の時系列データの類似度が大きくなるように類似度を算出する。
【発明の効果】
【0024】
本願の開示する算出装置の一つの態様によれば、制御計画を考慮した上で精度の良い類似度を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、実施例に係る算出装置の機能構成の一例を示す図である。
【図2】図2は、第一のテーブルのデータ構造の一例を示す図である。
【図3】図3は、作成部により生成される問題の一例を示す図である。
【図4】図4は、作成部により算出された最適解が登録された第二のテーブルのデータ構造の一例を示す図である。
【図5】図5は、作成部により生成される問題の一例を示す図である。
【図6】図6は、作成部により生成される問題の一例を示す図である。
【図7】図7は、作成部により算出された最適解が登録された第三のテーブルのデータ構造の一例を示す図である。
【図8】図8は、作成部により算出された他の最適解が登録された第三のテーブルのデータ構造の一例を示す図である。
【図9】図9は、実施例に係る算出処理の手順を示すフローチャートである。
【図10】図10は、他の算出処理の手順を示すフローチャートである。
【図11】図11は、算出プログラムを実行するコンピュータを示す図である。
【図12】図12は、従来の技術の一例を説明するための図である。
【図13】図13は、従来の技術の一例を説明するための図である。
【図14】図14は、従来の技術の一例を説明するための図である。
【図15】図15は、従来の技術の一例を説明するための図である。
【図16】図16は、従来の技術の問題点を説明するための図である。
【図17】図17は、従来の技術の問題点を説明するための図である。
【図18】図18は、従来の技術の問題点を説明するための図である。
【図19】図19は、従来の技術の問題点を説明するための図である。
【図20】図20は、従来の技術の問題点を説明するための図である。
【図21】図21は、従来の技術の問題点を説明するための図である。
【図22】図22は、消費電力のピークの時間帯を11時台と予測した場合に作成され、そして、11時台に消費電力のピークが来なかった場合に、再度予測を行い、その結果15時に消費電力のピークが来ると予測して再作成された制御計画の一例を示す図である。
【図23】図23は、制御計画が、消費電力のピークの時間帯を11時台と予測した場合に作成され、そして、11時台ではなく、12時台に消費電力のピークが来た場合の一例を示す図である。
【図24】図24は、各パターンに対応して作成された制御計画の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本願の開示する算出装置、算出プログラムおよび算出方法の各実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施例は開示の技術を限定するものではない。
【実施例】
【0027】
[算出装置の機能構成]
実施例に係る算出装置について説明する。図1は、実施例に係る算出装置の機能構成の一例を示す図である。
【0028】
本実施例に係る算出装置10は、消費電力を予測する外部の装置から取得した2つの消費電力の予測パターンのそれぞれについて、蓄電池の放電/充電についての制御計画を作成する。ここで、以下の説明において、この制御計画を第一の制御計画と表記する場合がある。また、算出装置10は、2つの消費電力の予測パターンの組み合わせに対応する制御計画を作成する。ここで、以下の説明において、この制御計画を第二の制御計画と表記する場合がある。そして、算出装置10は、2つの消費電力の予測パターンのそれぞれに対して、第一の制御計画が実行された場合の消費電力のピークにおける電力の削減量を第一の評価値として算出する。また、算出装置10は、2つの消費電力の予測パターンのそれぞれに対して、第二の制御計画が実行された場合の消費電力の2つのピークにおける電力の削減量を第二の評価値として算出する。そして、算出装置10は、第一の評価値と、第二の評価値との差が小さいほど、2つの消費電力の予測パターンについての類似度が大きくなるように類似度を算出する。このように、算出装置10は、2つの消費電力の予測パターンのそれぞれに対して、次のような処理を行う。すなわち、算出装置10は、第一の制御計画が実行された場合の消費電力のピークにおける電力の削減量と、第二の制御計画が実行された場合の消費電力の2つのピークにおける電力の削減量との差が小さいほど、大きくなるように類似度を算出する。よって、算出装置10は、第二の制御計画を実行した場合の消費電力のピークにおける電力の削減量が、第一の制御計画を実行した場合の消費電力のピークにおける電力の削減量に近いほど、大きくなるように類似度を算出する。したがって、算出装置10によれば、制御計画を考慮した上で精度の良い類似度を算出することができる。
【0029】
図1に示すように、算出装置10は、入力部11と、出力部12と、通信部13と、記憶部14と、制御部15とを有する。
【0030】
入力部11は、各種情報を制御部15に入力する。例えば、入力部11は、ユーザから、後述の算出処理の処理対象である2つの消費電力の予測パターンの指定を受け付けて、受け付けた指定を制御部15に入力する。入力部11のデバイスの一例としては、マウスやキーボードなどのユーザの操作を受け付けるデバイスなどが挙げられる。
【0031】
出力部12は、各種の情報を出力する。例えば、出力部12は、後述の出力制御部15fの制御により、ユーザが指定した2つの消費電力の予測パターンの類似度を表示する。出力部12のデバイスの一例としては、液晶ディスプレイなどが挙げられる。
【0032】
通信部13は、通信を行うためのインターフェースである。例えば、通信部13は、消費電力を予測する外部の装置に接続される。これにより、算出装置10と、外部の装置とが通信を行うことができる。例えば、通信部13は、制御部15から、指定された2つの消費電力の予測パターンを送信する旨の指示を受信すると、受信した指示を外部の装置へ送信する。また、通信部13は、外部の装置から、2つの消費電力の予測パターンを受信すると、受信した2つの消費電力の予測パターンを制御部15へ送信する。
【0033】
記憶部14は、各種情報を記憶する。例えば、記憶部14は、第一のテーブル14a、複数の第二のテーブル14b、第三のテーブル14c、複数の問題14dを記憶する。
【0034】
第一のテーブル14aには、後述の算出処理の処理対象となる複数の消費電力の予測パターンが登録される。なお、以下の説明では、消費電力の予測パターンを、単に、パターンと略記する場合がある。ここで、パターンは、各時間帯の消費電力の予測値を含む時系列データである。図2は、第一のテーブルのデータ構造の一例を示す図である。第一のテーブル14aは、パターンごとに、各時間帯の消費電力の予測値が登録される項目を有する。図2の例は、第一のテーブル14aには、パターン1について、11時台の消費電力の予測値「1000Wh」、12時台から15時台までの消費電力の予測値「500Wh」が登録された場合を示す。なお、パターン1および後述するパターン2、3のそれぞれは、上述したパターン95、96、97のそれぞれに対応する。また、図2の例は、第一のテーブル14aには、パターン3について、11時台から14時台までの消費電力の予測値「500Wh」、15時台の消費電力の予測値「1000Wh」が登録された場合を示す。第一のテーブル14aには、後述の取得部15aにより複数の消費電力の予測パターンが登録される。
【0035】
複数の第二のテーブル14bのそれぞれには、後述の作成部15bにより算出された、パターンごとの最適解が登録される。第二のテーブル14bに登録される最適解については、後述する。
【0036】
第三のテーブル14cには、後述の作成部15bにより算出された、2つのパターンの組み合わせに対応する最適解が登録される。第三のテーブル14cに登録される最適解については、後述する。
【0037】
複数の問題14dのそれぞれは、制御計画を作成するための問題である。かかる問題14dには、後述の作成部15bにより各時間帯の消費電力の予測値が登録される。問題14dについては、後述する。
【0038】
記憶部14は、例えば、フラッシュメモリなどの半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスクなどの記憶装置である。なお、記憶部14は、上記の種類の記憶装置に限定されるものではなく、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)であってもよい。
【0039】
制御部15は、各種の処理手順を規定したプログラムや制御データを格納するための内部メモリを有し、これらによって種々の処理を実行する。図1に示すように、制御部15は、取得部15aと、作成部15bと、第一の算出部15cと、第二の算出部15dと、第三の算出部15eと、出力制御部15fとを有する。
【0040】
取得部15aは、処理対象であるパターンを取得する。例えば、取得部15aは、入力部11から送信された、後述の算出処理の処理対象である2つのパターンの指定を受信した場合には、指定された2つのパターンを送信する旨の指示を通信部13に送信する。これにより、外部の装置へ指示が送信され、そして、外部の装置から、2つのパターンが、算出装置10へ送信される。そして、取得部15aは、通信部13により受信された2つのパターンを取得する。続いて、取得部15aは、取得した2つのパターンを第一のテーブル14aに登録する。例えば、取得部15aは、パターン1とパターン3とを取得した場合には、図2に示すように、第一のテーブル14aにパターン1とパターン3とを登録する。
【0041】
作成部15bは、処理対象の2つのパターンのそれぞれについて、制御計画を作成するとともに、2つのパターンの組み合わせに対応する制御計画を作成する。
【0042】
例えば、作成部15bは、まず、2つのパターンのうち、下記で説明する評価値を算出する処理が未処理のパターンを選択する。そして、作成部15bは、選択したパターンに対する制御計画を作成するための問題14dを生成する。
【0043】
図3は、作成部により生成される問題の一例を示す図である。図3の例の問題14dは、パターン1に対する制御計画を作成するための問題である。図3の例では、Pは、t(=11、12、13、14、15)が示す時間帯、すなわちt時台の消費電力の予測値を示す。すなわち、図3の例では、パターンP11は、11時台の消費電力の予測値が「1000Wh」であることを示す。また、図3の例では、パターンP12〜P15のそれぞれは、12時台から15時台のそれぞれの消費電力の予測値が「500Wh」であることを示す。また、図3の例では、xは、tが示す時間帯の蓄電池の放電量を示す。すなわち、図3の例では、11時台から15時台までの各時間帯における蓄電池の放電量の最大値が500Whであることを示す。また、xが負の値である場合には、その値の絶対値は、各時間帯における蓄電池の充電量を示す。すなわち、図3の例では、11時台から15時台までの各時間帯における蓄電池の充電量の最大値が200Whであることを示す。
【0044】
また、図3の例では、zは、tが示す時間帯における蓄電池の残量を示す。すなわち、図3の例では、10時台に、蓄電池は、500Whの残量を有することを示す。また、図3の例では、t時台の蓄電池の残量zは、(t−1)時台の蓄電池の残量zt−1から、t時台の蓄電池の放電量xを減じた値であることを示す。また、図3の例では、11時台から15時台までの各時間帯において、蓄電池の残量zは、0以上、かつ、500Wh以下であることを示す。また、図3の例では、wは、t時台の消費電力の予測値Pから、t時台の蓄電池の放電量xを減じた値であることを示す。ここで、wは、実質的な消費電力であるといえる。なお、実質的な消費電力は、実効消費電力とも称される。すなわち、図3の例では、11時台から15時台の各時間帯において、各時間帯における消費電力の予測値から、各時間帯における蓄電池の放電量を減じた値が、実質的な消費電力であることを示す。
【0045】
また、図3の例では、問題14dは、t時台の消費電力の予測値のうち、最大値となる予測値max(P)から、蓄電池の充放電を考慮した実行消費電力の最大値max(w)を減じた値yが最大となるように、制御計画を作成することを示す。なお、ここでいう制御計画とは、蓄電池の放電/充電の計画を指す。
【0046】
ここで、問題14dには、t時台の消費電力の予測値Pについては、予め登録されておらず、上述した、その他の各種内容については、予め登録されている。そこで、作成部15bは、下記のようにして、予測値Pを問題14dに登録することで、問題14dを生成する。すなわち、作成部15bは、パターン1に対する制御計画を作成するための問題を生成する場合には、記憶部14に記憶された第一のテーブル14aを参照し、パターン1を取得する。そして、作成部15bは、パターン1が示す各時間帯の消費電力の予測値を問題14dに登録して、問題14dを生成する。続いて、作成部15bは、生成した問題14dを記憶部14に格納する。
【0047】
そして、作成部15bは、公知の内点法などを用いて、選択したパターンに対応する問題14dの最適解、すなわち、値yが最大となる場合の最適解を算出して、蓄電池の放電/充電の制御計画を作成する。また、作成部15bは、算出した最適解を第二のテーブル14bに登録する。
【0048】
図4は、作成部により算出された最適解が登録された第二のテーブルのデータ構造の一例を示す図である。図4の例では、第二のテーブル14bは、時間帯ごとに、消費電力の予測値P、蓄電池の放電量x、蓄電池の残量z、実効消費電力wが登録される項目を有する。ここで、作成部15bは、公知の内点法などを用いて、問題14dに登録された内容が示す各種の制約条件に従って、値yが最大となる場合の時間帯ごとの放電量x、蓄電池の残量z、実効消費電力wを算出する。続いて、作成部15bは、時間帯ごとに、消費電力の予測値P、蓄電池の放電量x、蓄電池の残量z、実効消費電力wを第二のテーブル14bに登録する。図4の例では、第二のテーブル14bに、11時台の蓄電池の放電量「500Wh」が登録された場合が示されている。また、図4の例では、第二のテーブル14bに、12時台〜15時台までの各時間帯において、蓄電池の放電量「0Wh」が登録された場合が示されている。すなわち、図4の例では、作成部15bは、11時台の消費電力の予測値のピークを抑制するために、11時台に、蓄電池を最大値500Wh分放電し、その後、蓄電池を充電しないような制御計画を作成した場合が示されている。この結果、図4の例では、11時台が消費電力の予測値のピークであるにも関わらず、11時台の実効消費電力が500Whに抑えられている。
【0049】
なお、他のパターンについても同様にして、作成部15bは、問題14dを生成し、生成した問題14dを記憶部14に格納し、問題14dの登録内容が示す制約条件に基づいて、最適解を算出して、制御計画を作成する。そして、作成部15bは、算出した最適解を第二のテーブル14bに登録する。図5は、作成部により生成される問題の一例を示す図である。図5の例は、上述したパターン1以外のパターン3に対する制御計画を作成するための問題14dを示す。図5の例に示す問題14dの登録内容は、図3の例に示す問題14dの登録内容と比較して、11時台および15時台の消費電力の予測値が異なる。すなわち、図5の例では、15時台の消費電力の予測値が「1000Wh」であることを示す。また、図5の例では、11時台の消費電力の予測値が「500Wh」であることを示す。図5の例に示す問題14dのその他の登録内容については、図3の例に示す問題14dの登録内容と同様である。
【0050】
次に、作成部15bは、2つのパターンのそれぞれについて、それぞれのパターンに対応する制御計画を作成した後に、2つのパターンの組み合わせについての制御計画、すなわち、2つのパターンに対応する制御計画を作成するための問題14dを生成する。ここでは、2つのパターンが、パターン1およびパターン3である場合を例に挙げて説明する。図6は、作成部により生成される問題の一例を示す図である。図6の例は、パターン1およびパターン3の両方のパターンに対応する制御計画を作成するための問題14dを示す。作成部15bは、まず、パターン1に対応する制御計画を作成するための問題14dを記憶部14から取得する。そして、作成部15bは、取得した問題14dに登録された各変数y、P、x、z、wのそれぞれに対して、パターン1に対応する変数であることを示すために、パターン1の識別子「1」を付す。同様に、作成部15bは、パターン3に対応する制御計画を作成するための問題14dを記憶部14から取得する。そして、作成部15bは、取得した問題14dに登録された各変数y、P、x、z、wのそれぞれに対して、パターン3に対応する変数であることを示すために、パターン3の識別子「3」を付す。
【0051】
続いて、作成部15bは、図6の例に示すように、それぞれ識別子「1」、「3」が変数に付された2つの問題14dを1つの問題14dにまとめる。また、図6の例に示すように、作成部15bは、新たな制約条件として、全ての時間帯について、放電量xと放電量xとが同一である条件を問題14dに設ける。また、図6の例に示すように、作成部15bは、新たな条件として、値yと値yとの和yが最大となるように、制御計画を作成する条件を問題14dに設ける。なお、ここでいう制御計画とは、蓄電池の放電/充電の計画を指す。このようにして、作成部15bは、2つのパターンの組み合わせに対する制御計画を作成するための問題14dを生成する。そして、作成部15bは、生成した問題14dを記憶部14に格納する。なお、作成部15bは、他の2つのパターンの組み合わせについても同様にして、問題14dを生成し、生成した問題14dを記憶部14に格納する。
【0052】
そして、作成部15bは、公知の内点法などを用いて、2つのパターンに対応する問題14dの最適解、すなわち、和yが最大となる場合の最適解を算出して、蓄電池の放電/充電の制御計画を作成する。また、作成部15bは、算出した最適解を第三のテーブル14cに登録する。
【0053】
図7は、作成部により算出された最適解が登録された第三のテーブルのデータ構造の一例を示す図である。図7の例では、第三のテーブル14cは、パターン1の場合について、時間帯ごとに、消費電力の予測値P、蓄電池の放電量x、蓄電池の残量z、実効消費電力wが登録される項目を有する。また、図7の例では、第三のテーブル14cは、パターン3の場合について、時間帯ごとに、消費電力の予測値P、蓄電池の放電量x、蓄電池の残量z、実効消費電力wが登録される項目を有する。ここで、作成部15bは、公知の内点法などを用いて、問題14dに登録された内容が示す各種の制約条件に従って、和yが最大となる場合の時間帯ごとの放電量x(=x)を算出する。
【0054】
また、作成部15bは、放電量xとともに、パターン1の場合について、時間帯ごとに、蓄電池の残量z、実効消費電力wを算出する。また、作成部15bは、放電量xとともに、パターン3の場合について、時間帯ごとに、蓄電池の残量z、実効消費電力wを算出する。続いて、作成部15bは、パターン1の場合について、時間帯ごとに、消費電力の予測値P、蓄電池の放電量x、蓄電池の残量z、実効消費電力wを第三のテーブル14cに登録する。また、作成部15bは、パターン3の場合について、時間帯ごとに、消費電力の予測値P、蓄電池の放電量x、蓄電池の残量z、実効消費電力wを第三のテーブル14cに登録する。
【0055】
図7の例では、第三のテーブル14cに、11時台の蓄電池の放電量「400Wh」が登録された場合が示されている。また、図7の例では、第三のテーブル14cに、12時台〜14時台までの各時間帯の蓄電池の充電量「100Wh」が登録された場合が示されている。また、図7の例では、第三のテーブル14cに、15時台の蓄電池の放電量「400Wh」が登録された場合が示されている。すなわち、図7の例は、作成部15bが、11時台、15時台のピークを抑制するために、11時台に、蓄電池を400Wh分放電し、その後、蓄電池を100Whで充電し、15時台に、蓄電池を400Wh分放電するような制御計画を作成した場合を示す。この結果、図7の例では、11時台および15時台が消費電力の予測値のピークであるにも関わらず、11時台および15時台の実効消費電力が600Whに抑えられている。
【0056】
なお、他のパターンの組み合わせについても同様にして、作成部15bは、問題14dの登録内容が示す制約条件に基づいて、最適解を算出して、制御計画を作成し、算出した最適解を第三のテーブル14cに登録する。
【0057】
図8は、作成部により算出された他の最適解が登録された第三のテーブルのデータ構造の一例を示す図である。図8の例では、第三のテーブル14cは、パターン1の場合について、時間帯ごとに、消費電力の予測値P、蓄電池の放電量x、蓄電池の残量z、実効消費電力wが登録される項目を有する。また、図8の例では、第三のテーブル14cは、パターン2の場合について、時間帯ごとに、消費電力の予測値P、蓄電池の放電量x、蓄電池の残量z、実効消費電力wが登録される項目を有する。ここで、作成部15bは、公知の内点法などを用いて、問題14dに登録された内容が示す各種の制約条件に従って、和yが最大となる場合の時間帯ごとの放電量x(=x)を算出する。
【0058】
また、作成部15bは、放電量xとともに、パターン1の場合について、時間帯ごとに、蓄電池の残量z、実効消費電力wを算出する。また、作成部15bは、放電量xとともに、パターン2の場合について、時間帯ごとに、蓄電池の残量z、実効消費電力wを算出する。続いて、作成部15bは、パターン1の場合について、時間帯ごとに、消費電力の予測値P、蓄電池の放電量x、蓄電池の残量z、実効消費電力wを第三のテーブル14cに登録する。また、作成部15bは、パターン2の場合について、時間帯ごとに、消費電力の予測値P、蓄電池の放電量x、蓄電池の残量z、実効消費電力wを第三のテーブル14cに登録する。
【0059】
図8の例では、第三のテーブル14cに、11時台および12時台の蓄電池の放電量「250Wh」が登録された場合が示されている。また、図8の例では、第三のテーブル14cに、13時台〜15時台までの各時間帯の蓄電池の放電量「0Wh」が登録された場合が示されている。すなわち、図8の例は、作成部15bが、11時台、12時台のピークを抑制するために、11時台に、蓄電池を250Wh分放電し、その後、12時台に、蓄電池を250Wh分放電するような制御計画を作成した場合を示す。この結果、図8の例では、11時台および12時台の消費電力の予測値のピークを、図7の例ほど削減することができず、11時台および12時台の実効消費電力が750Whとなる。
【0060】
第一の算出部15cは、2つのパターンのそれぞれに対して、2つのパターンのそれぞれに対応する制御計画が実行された場合の消費電力のピークにおける時間帯の電力の削減量を評価値として算出する。
【0061】
例えば、第一の算出部15cは、作成部15bにより、選択したパターンに対応する問題14dの最適解、すなわち、値yが最大となる場合の最適解が算出されて、蓄電池の放電/充電の制御計画が作成されるたびに、次のような処理を行う。すなわち、第一の算出部15cは、最適解が算出された場合の値yを評価値として算出する。図4の例に示す第二のテーブル14bの登録内容が作成部15bにより登録される場合には、第一の算出部15cは、評価値500(1000−500)を算出する。
【0062】
第二の算出部15dは、2つのパターンのそれぞれに対して、2つのパターンに対応する制御計画が実行された場合の消費電力の2つのピークにおける時間帯の電力の削減量を評価値として算出する。
【0063】
例えば、第二の算出部15dは、作成部15bにより、2つのパターンに対応する問題14dの最適解、すなわち、和yが最大となる場合の最適解が算出されて、蓄電池の放電/充電の制御計画が作成された場合に、次のような処理を行う。すなわち、2つのパターンの識別子をそれぞれ、「ID1」「ID2」とすると、第二の算出部15dは、最適解が算出された場合の値yID1、yID2を、各パターンに対する評価値として算出する。図7の例に示す第三のテーブル14cの登録内容が作成部15bにより登録される場合には、第二の算出部15dは、パターン1について評価値400(1000−600)を算出し、パターン3について評価値400(1000−600)を算出する。また、図8の例に示す第三のテーブル14cの登録内容が作成部15bにより登録される場合には、第二の算出部15dは、パターン1について評価値250(1000−750)を算出し、パターン2について評価値250(1000−750)を算出する。
【0064】
第三の算出部15eは、2つのパターンについて、第一の算出部15cにより算出された評価値と、第二の算出部15dにより算出された評価値との差が小さいほど、2つのパターンの類似度が大きくなるように類似度を算出する。
【0065】
ここで、2つのパターン1、3のうち、パターン1について、第一の算出部15cにより評価値500が算出され、第二の算出部15dにより評価値400が算出された場合を説明する。また、この場合において、パターン3について、第一の算出部15cにより評価値500が算出され、第二の算出部15dにより評価値400が算出されたものとする。この場合、第三の算出部15eは、パターン1に対してパターン1に対応する制御計画を実行した場合の評価値、換言すると、パターン1に対して第一の算出部15cにより算出された評価値500を用いて、次のような値Qを算出する。すなわち、第三の算出部15eは、パターン1に対して第一の算出部15cにより算出された評価値500から、パターン1に対して第二の算出部15dにより算出された評価値400を減じた値Q100(500−400)を算出する。ここで、パターン1に対して第二の算出部15dにより算出された評価値400は、パターン1に対してパターン1および3に対応する制御計画を実行した場合の評価値である。
【0066】
また、第三の算出部15eは、パターン3に対してパターン3に対応する制御計画を実行した場合の評価値、換言すると、パターン3に対して第一の算出部15cにより算出された評価値500を用いて、次のような値Lを算出する。すなわち、第三の算出部15eは、パターン3に対して第一の算出部15cにより算出された評価値500から、パターン3に対して第二の算出部15dにより算出された評価値400を減じた値L100(500−400)を算出する。ここで、パターン3に対して第二の算出部15dにより算出された評価値400は、パターン3に対してパターン1および3に対応する制御計画を実行した場合の評価値である。
【0067】
ここで、値Q100は、パターン1に対してパターン1に対応する制御計画を実行した場合のピークの削減量に対する、パターン1に対して2つのパターン1、3に対応する制御計画を実行した場合のピークの削減量の悪化を示す数値と考えられる。同様に、値L100は、パターン3に対してパターン3に対応する制御計画を実行した場合のピークの削減量に対する、パターン3に対して2つのパターン1、3に対応する制御計画を実行した場合のピークの削減量の悪化を示す数値と考えられる。そこで、第三の算出部15eは、所定の類似度の最大値、例えば、1000から、値Q100および値L100の和200を減じた値800(1000−200)を類似度として算出する。また、第三の算出部15eは、他の2つのパターンについても、同様にして、類似度を算出する。
【0068】
例えば、2つのパターン1、2のうち、パターン1について、第一の算出部15cにより評価値500が算出され、第二の算出部15dにより評価値250が算出された場合を説明する。また、この場合において、パターン2について、第一の算出部15cにより評価値500が算出され、第二の算出部15dにより評価値250が算出されたものとする。この場合、第三の算出部15eは、パターン1に対してパターン1に対応する制御計画を実行した場合の評価値、換言すると、パターン1に対して第一の算出部15cにより算出された評価値500を用いて、次のような値Qを算出する。すなわち、第三の算出部15eは、パターン1に対して第一の算出部15cにより算出された評価値500から、パターン1に対して第二の算出部15dにより算出された評価値250を減じた値Q250(500−250)を算出する。ここで、パターン1に対して第二の算出部15dにより算出された評価値250は、パターン1に対してパターン1および2に対応する制御計画を実行した場合の評価値である。
【0069】
また、第三の算出部15eは、パターン2に対してパターン2に対応する制御計画を実行した場合の評価値、換言すると、パターン2に対して第一の算出部15cにより算出された評価値500を用いて、次のような値Lを算出する。すなわち、第三の算出部15eは、パターン2に対して第一の算出部15cにより算出された評価値500から、パターン2に対して第二の算出部15dにより算出された評価値250を減じた値L250(500−250)を算出する。ここで、パターン2に対して第二の算出部15dにより算出された評価値250は、パターン2に対してパターン1および2に対応する制御計画を実行した場合の評価値である。
【0070】
ここで、値Q250は、パターン1に対してパターン1に対応する制御計画を実行した場合のピークの削減量に対する、パターン1に対して2つのパターン1、2に対応する制御計画を実行した場合のピークの削減量の悪化を示す数値と考えられる。同様に、値L250は、パターン2に対してパターン2に対応する制御計画を実行した場合のピークの削減量に対する、パターン2に対して2つのパターン1、2に対応する制御計画を実行した場合のピークの削減量の悪化を示す数値と考えられる。そこで、第三の算出部15eは、所定の類似度の最大値、例えば、1000から、値Q250および値L250の和500を減じた値500(1000−500)を類似度として算出する。
【0071】
出力制御部15fは、出力部12による出力を制御する。例えば、出力制御部15fは、第三の算出部15eにより算出された類似度を表示するように、出力部12の表示を制御する。
【0072】
制御部15は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路またはCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)などの電子回路である。
【0073】
[処理の流れ]
次に、本実施例に係る算出装置10の処理の流れについて説明する。図9は、実施例に係る算出処理の手順を示すフローチャートである。算出処理は、例えば、入力部11から、算出処理の処理対象である2つのパターンの指定を制御部15が受け付けたタイミングで、実行される。
【0074】
図9に示すように、取得部15aは、指定された2つのパターンを送信する旨の指示を通信部13に送信する(S101)。続いて、取得部15aは、外部の装置から、2つのパターンを受信したか否かを判定する(S102)。受信していない場合(S102否定)には、取得部15aは、再び、S102の判定を行う。一方、受信した場合(S102肯定)には、取得部15aは、受信した2つのパターンを第一のテーブル14aに登録する(S103)。
【0075】
そして、作成部15bは、第一のテーブル14aを参照し、2つのパターンのうち、下記のS108において評価値を算出する処理が未処理のパターンがあるか否かを判定する(S104)。未処理のパターンがある場合(S104肯定)には、作成部15bは、2つのパターンのうち、未処理のパターンを1つ選択し、選択したパターンを第一のテーブル14aから取得する(S105)。
【0076】
そして、作成部15bは、選択したパターンに対する制御計画を作成するための問題14dを生成する(S106)。続いて、作成部15bは、公知の内点法などを用いて、選択したパターンに対応する問題14dの最適解を算出して、蓄電池の放電/充電の制御計画を作成し、算出した最適解を第二のテーブル14bに登録する(S107)。続いて、第一の算出部15cは、S107において最適解が算出された場合の値yを評価値として算出し(S108)、S104に戻る。
【0077】
一方、未処理のパターンがない場合(S104否定)には、作成部15bは、2つのパターンに対する制御計画を作成するための問題14dを生成する(S109)。そして、作成部15bは、2つのパターンに対応する問題14dの最適解を算出して、蓄電池の放電/充電の制御計画を作成し、算出した最適解を第三のテーブル14cに登録する(S110)。続いて、第二の算出部15dは、S110で最適解が算出された場合の値yID1、yID2を、各パターンに対する評価値として算出する(S111)。
【0078】
そして、第三の算出部15eは、類似度を算出する(S112)。その後、出力制御部15fは、第三の算出部15eにより算出された類似度を表示するように、出力部12の表示を制御し(S113)、処理を終了する。
【0079】
上述してきたように、本実施例に係る算出装置10は、消費電力を予測する外部の装置から取得した2つの消費電力の予測パターンのそれぞれについて、蓄電池の放電/充電についての第一の制御計画を作成する。また、算出装置10は、2つの消費電力の予測パターンの組み合わせに対応する第二の制御計画を作成する。そして、算出装置10は、2つの消費電力の予測パターンのそれぞれに対して、第一の制御計画が実行された場合の消費電力のピークにおける電力の削減量を評価値として算出する。なお、この評価値を以下の説明では、第一の評価値と表記する。また、算出装置10は、2つの消費電力の予測パターンのそれぞれに対して、第二の制御計画が実行された場合の消費電力の2つのピークにおける電力の削減量を評価値として算出する。なお、この評価値を以下の説明では、第二の評価値と表記する。そして、算出装置10は、第一の評価値と、第二の評価値との差が小さいほど、2つの消費電力の予測パターンについての類似度が大きくなるように類似度を算出する。よって、算出装置10は、第二の制御計画を実行した場合の消費電力のピークにおける電力の削減量が、第一の制御計画を実行した場合の消費電力のピークにおける電力の削減量に近いほど、大きくなるように類似度を算出する。したがって、算出装置10によれば、制御計画を考慮した上で精度の良い類似度を算出することができる。
【0080】
さて、これまで開示の装置に関する実施例について説明したが、本発明は上述した実施例以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。そこで、以下では、本発明に含まれる他の実施例を説明する。
【0081】
例えば、作成部15bは、第一の時間、例えば、12時台まで、2つのパターンに対応するとともに、第一の時間以降では、2つのパターンのそれぞれに対応する放電量xを最適解として算出して、第二の制御計画を作成することもできる。
【0082】
この場合における他の算出処理の手順について説明する。図10は、他の算出処理の手順を示すフローチャートである。算出処理は、例えば、入力部11から、算出処理の処理対象である2つのパターンの指定を制御部15が受け付けたタイミングで、実行される。なお、図10に示すS101〜S109、S111〜S113の各処理は、図9に示すS101〜S109、S111〜S113の各処理と同様であるので、説明を省略する。
【0083】
図10に示すように、作成部15bは、第一の時間、例えば、12時台まで、2つのパターンに対応するとともに、第一の時間以降では、2つのパターンのそれぞれに対応する放電量xを最適解として算出して、第二の制御計画を作成する(S110´)。
【0084】
また、上記の実施例では、第一の算出部15cおよび第二の算出部15dのそれぞれは、消費電力の予測値がピークとなる時間帯ごとに、第一の評価値および第二の評価値のそれぞれを算出する。そこで、上記の実施例の場合では、作成部15bは、次のような処理を行って類似度を算出することもできる。すなわち、作成部15bは、まず、11時台から15時台までの時間帯ごとに、第一の評価値と第二の評価値との差分を算出し、算出した差分を11時台から15時台までの時間帯の順番で加算する。そして、作成部15bは、加算値が閾値を超えた場合の時間帯を特定する。続いて、作成部15bは、11時台から、特定した時間帯までの期間を算出する。例えば、作成部15bは、特定した時間帯が13時台である場合には、11時台から13時台までの期間2時間を算出する。そして、作成部15bは、類似度の最大値、例えば、10から、算出した期間が示す値「2」を減じた値8(10−2)を類似度として算出する。
【0085】
また、実施例において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともできる。また、本実施例において説明した各処理のうち、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。
【0086】
また、各種の負荷や使用状況などに応じて、各実施例において説明した各処理の各ステップでの処理を任意に細かくわけたり、あるいはまとめたりすることができる。また、ステップを省略することもできる。
【0087】
また、各種の負荷や使用状況などに応じて、各実施例において説明した各処理の各ステップでの処理の順番を変更できる。例えば、開示の装置は、S104〜S108の処理を行う前に、S109〜S111の処理を行うこともできる。
【0088】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的状態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。
【0089】
[算出プログラム]
また、上記の実施例で説明した算出装置10の各種の処理は、あらかじめ用意されたプログラムをパーソナルコンピュータやワークステーションなどのコンピュータシステムで実行することによって実現することもできる。そこで、以下では、図11を用いて、上記の実施例で説明した算出装置10と同様の機能を有する算出プログラムを実行するコンピュータの一例を説明する。図11は、算出プログラムを実行するコンピュータを示す図である。
【0090】
図11に示すように、コンピュータ300は、CPU(Central Processing Unit)310、ROM(Read Only Memory)320、HDD(Hard Disk Drive)330、RAM(Random Access Memory)340を有する。各部310〜340は、バス350を介して接続されている。
【0091】
ROM320には、OSなどの基本プログラムが記憶されている。また、HDD330には、上記の実施例で示す取得部15aと、作成部15bと、第一の算出部15cと、第二の算出部15dと、第三の算出部15eと、出力制御部15fと同様の機能を発揮する算出プログラム330aが予め記憶される。なお、算出プログラム330aについては、適宜分離しても良い。また、HDD330には、第一のテーブル、第二のテーブル、第三のテーブル、問題が設けられる。これらの第一のテーブル、第二のテーブル、第三のテーブル、問題は、上述した第一のテーブル14a、第二のテーブル14b、第三のテーブル14c、問題14dに対応する。
【0092】
そして、CPU310が、算出プログラム330aをHDD330から読み出して実行する。
【0093】
そして、CPU310は、第一のテーブル、第二のテーブル、第三のテーブル、問題を読み出してRAM340に格納する。さらに、CPU310は、RAM340に格納された第一のテーブル、第二のテーブル、第三のテーブル、問題を用いて、算出プログラム330aを実行する。なお、RAM340に格納される各データは、常に全てのデータがRAM340に格納されなくともよい。処理に用いられるデータがRAM340に格納されれば良い。
【0094】
なお、上記した算出プログラム330aについては、必ずしも最初からHDD330に記憶させておく必要はない。
【0095】
例えば、コンピュータ300に挿入されるフレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、DVDディスク、光磁気ディスク、ICカードなどの「可搬用の物理媒体」にプログラムを記憶させておく。そして、コンピュータ300がこれらからプログラムを読み出して実行するようにしてもよい。
【0096】
さらには、公衆回線、インターネット、LAN、WANなどを介してコンピュータ300に接続される「他のコンピュータ(またはサーバ)」などにプログラムを記憶させておく。そして、コンピュータ300がこれらからプログラムを読み出して実行するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0097】
10 算出装置
14 記憶部
14a 第一のテーブル
14b 第二のテーブル
14c 第三のテーブル
14d 問題
15 制御部
15b 作成部
15c 第一の算出部
15d 第二の算出部
15e 第三の算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の時系列データのそれぞれについて、第一の制御計画を作成するとともに、複数の時系列データの組み合わせについて、第二の制御計画を作成する作成部と、
前記複数の時系列データのそれぞれに対して、前記作成部により作成された第一の制御計画が実行された場合の第一の評価値を算出する第一の算出部と、
前記複数の時系列データのそれぞれに対して、前記作成部により作成された第二の制御計画が実行された場合の第二の評価値を算出する第二の算出部と、
前記第一の算出部により算出された第一の評価値と、前記第二の算出部により算出された第二の評価値との差が小さいほど、前記複数の時系列データの類似度が大きくなるように該類似度を算出する第三の算出部と、
を有することを特徴とする算出装置。
【請求項2】
前記作成部は、前記複数の時系列データにおいて第一の時間まで共通の制御計画を作成するとともに、該第一の時間以降では前記複数の時系列データのそれぞれに対応する制御計画を作成することで、前記第二の制御計画を作成する
ことを特徴とする請求項1に記載の算出装置。
【請求項3】
前記第一の算出部は、前記複数の時系列データのそれぞれに対して、時間帯ごとに、前記第一の評価値を算出し、
前記第二の算出部は、前記複数の時系列データのそれぞれに対して、時間帯ごとに、前記第二の評価値を算出し、
前記第三の算出部は、前記第一の評価値と、前記第二の評価値との差の和が閾値以上となる場合の第一の時間から第二の時間までの期間が長いほど、前記類似度が大きくなるように該類似度を算出する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の算出装置。
【請求項4】
コンピュータに、
複数の時系列データのそれぞれについて、第一の制御計画を作成し、
前記複数の時系列データのそれぞれに対して、作成された前記第一の制御計画が実行された場合の第一の評価値を算出し、
前記複数の時系列データの組み合わせについて、第二の制御計画を作成し、
前記複数の時系列データのそれぞれに対して、作成された前記第二の制御計画が実行された場合の第二の評価値を算出し、
算出された前記第一の評価値と、算出された前記第二の評価値との差が小さいほど、前記複数の時系列データの類似度が大きくなるように該類似度を算出する
各処理を実行させるための算出プログラム。
【請求項5】
コンピュータが実行する算出方法であって、
複数の時系列データのそれぞれについて、第一の制御計画を作成し、
前記複数の時系列データのそれぞれに対して、作成された前記第一の制御計画が実行された場合の第一の評価値を算出し、
前記複数の時系列データの組み合わせについて、第二の制御計画を作成し、
前記複数の時系列データのそれぞれに対して、作成された前記第二の制御計画が実行された場合の第二の評価値を算出し、
算出された前記第一の評価値と、算出された前記第二の評価値との差が小さいほど、前記複数の時系列データの類似度が大きくなるように該類似度を算出する
各処理を実行することを特徴とする算出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2013−114630(P2013−114630A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263066(P2011−263066)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】