説明

管体、ケーブル等の固定具等の取付用クリップ

【課題】各種骨組部材の縁部に簡単に取り付けて、管体やケーブル等の固定具等を取り付けることのできるクリップ(固定具)の提供を図る。
【解決手段】金属製の板バネ素材からなる板状体の両端側を下方に折曲して両脚部12、12を形成し、正面視略コ字形状の本体部とする。両脚部の先端側はその根元部側よりも巾狭に形成する。両脚部のそれぞれには、内側方向に突出する押圧部13、13を2個設ける。これらの押圧部がアングル材、H型鋼材等の骨組部材の縁部を押圧することにより、両脚部がその縁部を挟持してかかる骨組部材に本体部が取り付けられる。本体部の両脚部12、12及び両脚部を接続する中間接続部15のそれぞれに螺子穴を設け、これら螺子穴に管体、ケーブル等の固定具等を取り付けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築構築物の骨組、橋梁の骨組、或いはクレーン等の腕木の骨組等を構成するアングル材、チャンネル材、H型鋼材、或いはフラットバー等の骨組部材の縁部にワンタッチで取り付けられる金属製板バネ素材からなるクリップ(固定具)に関し、かかるクリップには、管体やケーブル、或いはレール、蛍光灯などの固定具や、吊りボルト等を取り付けることができるものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の管体やケーブル等の固定具等を取り付けるための取付金具としては、図5の斜視図に示したものがある。かかる取付金具50は、正面視略U字形状の本体部51を有し、本体部51の両側縁部の全体には内側方向に略直角に起立する起立部52、52が設けられ、下方に位置する起立部52,52には鋸歯状の凸部52t、52tが形成され、本体部51の上面には上方から下方に向かって螺入することのできる固定用螺子53が設けられている。
更に、この取付金具50の本体部51の下面部及び側面部には貫通孔55、56が設けられており、これらの貫通孔55、56には、各種のケーブルや管体等を固定することのできる種々の固定具を取り付けることができる。
【0003】
図6は、この取付金具50の使用状態を示す正面説明図であり、その(A)が取付金具50の下面部に設けられた貫通孔55に電線管等の管体61を固定する管体固定具60が取り付けられた状態を示し、その(B)が取付金具50の側面部に設けられた貫通孔56に前記管体固定具60を取り付けた状態を示している。
65は、アングル材を示し、このアングル材65の水平面部66を取付金具50の固定用螺子53の先端と本体部51の下方に位置する起立部52とが挟持するように、固定用螺子53の締め付けにより、取付金具50がアングル材65の水平面部66に固定される。
【0004】
管体固定具60は、対称形の2つの構成部材60k,60kからなり、図6(A)においては、上方先端の湾曲係合部62、62を本体部51の下面部の貫通孔55に引っ掛けるように係合させ、両構成部材60k、60kの下方部を開いた状態で管体61をその間に配置させて、その後両構成部材60k、60kの下方部を閉じて、下方延長部60e、60eを固定ネジ64によって締め付け、管体61を固定することができる。
同様に、図6(B)においては、管体固定具60を取付金具50の側面部に設けられた貫通孔56に取り付けたものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の取付金具においては、固定用螺子53の締め付けによって各種の骨組部材等に取り付け固定されるのであるが、螺子の締め付けによるためにワンタッチで取り付けることができず、高所での螺着作業に手間を要していた。
また、取り付け固定のために固定用螺子を使用するため、この固定用螺子は、取付金具の一側面部を使用するために、その固定用螺子が設けられた面には、管体やケーブル等の各種の固定具を取り付けることができない。
【0006】
そこで、本発明においては、先ず、この取付金具をワンタッチで、例えばハンマー等の簡単な打撃によって各種の骨組部材等に取り付けることができるものを提供することをその課題とする。
また、取付金具の側面のすべてにおいて、管体やケーブル等の固定具等を取り付けることのできるものを提供すること。具体的には、3方向のすべての側面部の何れかに各種の固定具等を取り付けることができるようにすることをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の第1のものは、金属製板バネ素材からなる板状体の両端側を下方に折曲して両脚部(12)(12)を形成し、正面視略コ字形状の本体部とし、両脚部(12, 12)のそれぞれには、内側方向に突出する押圧部(13)を少なくとも2個設け、これらの両脚部(12, 12)の押圧部(13,13,13,13)がアングル材、チャンネル材、H型鋼材、或いはフラットバー等の骨組部材(20)の縁部(20t) を押圧することにより、両脚部(12, 12)がその縁部(20t) を挟持してかかる骨組部材(20)に本体部が取り付けられることができ、本体部の両脚部(12, 12)又は両脚部を接続する中間接続部(15)の少なくとも何れか1つに螺子穴(16, 17)又は貫通孔等の取付部を設け、この取付部に管体、ケーブル等の固定具等を取り付けることができる管体、ケーブル等の固定具等の取付用クリップである。
【0008】
本発明の第2のものは、上記第1の発明において、両脚部(12, 12)の先端部側を根元部側よりも巾狭に形成したことを特徴とする管体、ケーブル等の固定具等の取付用クリップである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1のものにおいては、両脚部が各種の骨組部材等の縁部を挟持し、両脚部に設けられた押圧部がその縁部を押圧し、例えばハンマー等によって両脚部を接続する中間接続部を脚部方向に打撃することによって簡単にワンタッチで取り付けられる。しかも片側2箇所で、それ故両脚部において少なくとも4点で押圧挟持されるために取り付け後にがたつくこともなく、確実に取り付けられる。
【0010】
本発明の第2のものにおいては、両脚部の先端部側が根元部側よりも巾狭に形成されており、板バネ素材を使用している関係上、先端部側の弾性力が根元部側の弾性力よりもやや弱くなるために、骨組部材の縁部に取り付ける際に、取り付けやすいという効果がある。換言すると、両脚部の先端部側が開きやすく、根元部側が開きにくくなっており、取り付けやすい反面、根元部側で強固に骨組部材の縁部を挟持することが可能となるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付の図面と共に本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るクリップの全体斜視図であり、図2は、その側面図であり、図3は、その正面図である。
このクリップ10は、金属製の板バネ素材からなる板状体の両端側を略90度折曲して、図1及び図3から判る通り、正面視略コ字形状に形成する。従って、クリップ10の両端部側には脚部12、12が位置し、両脚部12、12は中間接続部15によって接続される。
中間接続部と両脚部との成す角度は、略90度であるが、クリップを取り付けた後は両脚部の間隔が少し広がって、確実に被固定部材を挟持できるために、90度以下の鋭角に形成しておくことが好ましい。
【0012】
両脚部12,12のそれぞれには、内側方向に突出する押圧部13、13を2箇所ずつ形成する。この実施形態では、これら押圧部13同士は、それぞれ対向する位置関係にあり、対称位置に存在している。
また、両脚部12、12に設けられている押圧部13は、それぞれ正面視略V字形状に形成されているが、これが略U字形状、或いは略コ字形状に形成されたものであってもよい。要は、挟持される骨組部材の縁部を押圧できる形状を有していればよい。
【0013】
両脚部12、12のそれぞれの押圧部13、13間の略中央部と、中間接続部15の略中央部のそれぞれには、螺子穴16,17を形成する。これらの螺子穴16、17に管体やケーブル等の固定具を螺着して、固定することができる。これらの螺子穴が各種の固定具を取り付けるための取付部となる。この取付部としては、上記の螺子穴でなく、単なる貫通孔から形成されたものであってもよい。
この螺子穴16、17は、図示はしていないが、固定用螺子との螺合をより強固にするために、バーリング加工を施し、螺子穴のネジ山をより長く形成する(螺子穴の深さ方向に長く形成する)ことがより好ましい。
【0014】
更に、図2から判る通り、それぞれの脚部12は、その先端部側12sがその根元部側12nよりも巾(図2においては上下の巾)が狭く形成され、上下対称にテーパー状に先細に(巾狭に)形成されている。これにより先端部側の弾性力が根元部側の弾性力よりも若干弱くなり、骨組部材の縁部に取り付ける際に、先端部分が容易に開くこととなり、取り付けが容易となる。
この実施形態では、両脚部を上下対称にテーパー状に形成しているが、形状は上下対称でなくともよく、先端部側が巾狭に形成されていればよい。
【0015】
また、図3から判る通り、クリップの10の中間接続部15が外側(図3において右側)に膨出するように湾曲して形成されている。このように湾曲に形成したのは、クリップ10を骨組部材20の縁部20tに取り付ける際、縁部20tの板厚により根元部側の押圧部13nの間隔が広がった場合に、先端部側の押圧部13s間の間隔が大きく開き過ぎることを防止するためである。換言すると、根元部側の押圧部13n、13nの間隔が多少大きく広がっても、中間接続部15が湾曲に形成されているために、この湾曲部が直線状に伸びることにより、先端側の押圧部13s、13sの間隔が開き過ぎてしまうことが防止されるのである。
【0016】
両脚部12、12の長さ、及び中間接続部15の長さは、取り付けるべき骨組部材の縁部の厚みを考慮して適宜決定する。また、対向する押圧部13の間隔も、取り付けるべき骨組部材の縁部の板厚を考慮して適宜決定することができる。更には、取り付けるべき各種の骨組部材の縁部板厚を考慮して、対向する押圧部の間隔及び中間接続部の長さの種々のものを作成し、その縁部板厚の各種のものに対応できるようにすることが望ましい。
【0017】
図4は、本発明の実施形態に係るクリップをアングル材に取り付け、電線管を固定具により取り付けた状態の正面図である。
アングル材20の縁部20tに、クリップ10を例えばハンマー等によって、中間接続部15を矢印方向Dに打撃を加えて、取り付ける。両脚部12の押圧部13が縁部20tを押圧し、クリップ10は、確実にアングル材20の縁部20tに固定される。クリップ10は、アングル材20の縁部20tに適宜一定間隔を開けて複数並べて取り付けることとなる。
【0018】
電線管61の固定具は、ベース部材71とサドル部材72とからなる従来のものであり、クリップ10をアングル材20の縁部20tに取り付けた後、下方の脚部12の螺子穴16に固定ネジ30により固定具のベース部材71を螺着する。次にサドル部材72によって電線管61を抱持するようにして、そのサドル部材72の両端部をベース部材に螺着して、電線管61を固定具に固定することができる。
以上のようにして、本発明に係るクリップを用いて、電線管等を固定することができるものである。
【0019】
以上、一実施形態について説明したが、本発明に係るクリップにおいては、このクリップに固定されるものは、特に限定されず、上記のような電線管であってもよく、或いは、ケーブル、レール、蛍光灯等各種のものを固定することが可能である。
このような管体やケーブル等を固定するための固定具にも各種のものがあり、固定用螺子によって取り付けるものや、上記従来例の管体固定具のような湾曲係合部の係合によるものなど各種のものが存在する。この後者の固定具をクリップに取り付ける場合には、両脚部や中間接続部に形成される螺子穴は、単なる貫通孔であればよい。従って、取付部としては、螺子穴や貫通孔以外のものであってもよく、要は各種固定具を取り付けることのできる構造であれば、どのような形式のものであってもよい。
各種固定具を取り付ける取付部となる螺子穴や貫通孔等は、両脚部又は中間接続部のいずれか1箇所に設けられていればよい。しかし、クリップの各種骨組部材への取り付け向きを考慮すれば、その取付部は、両脚部及び中間接続部の全てに設けておくことが好ましい。これにより、それら取付部のいずれかを選択して自由に使用することが出来るからである。
【0020】
クリップの全体形状及び大きさは、全く自由に設計することができるが、弾力性のある板バネ素材からなる板状体の両端側を略直角に折り曲げ、正面視略コ字形状に形成すればよい。
押圧部も両脚部のそれぞれに2個ずつ設けたが、それぞれ3個以上形成したものであってもよく、最低それぞれに2個あればよい。またその形状も自由に設計することができる。
また、押圧部は、両脚部においてそれぞれ対向する位置に設けることが望ましいが、正確に対向位置(対称位置)にある必要はなく、多少ずれた位置関係にあっても効果の点では同様である。
両脚部と中間接続部に設けられた取付部の位置も、それぞれの部分の略中央位置に設けたが、その位置はそれぞれ適宜自由に選択することができる。
【0021】
図3において、中間接続部15から根元部側の押圧部13n、13nまでの脚部の長さdをより長く形成し、この部分に取付部を設けることも可能である。
側面視(図2において)両脚部の根本側から先端側に向かってその巾が徐々に狭くなるように形成しているが、その狭くなる度合いも適宜自由に設計することができる。また、その巾を徐々に狭くするのではなく、階段状に段階的に先端側を巾狭に形成することも可能である。
最後に、本発明に係るクリップは、建築構築物、橋梁、又はクレーン等の腕木、テント骨組等の各種の骨組を構成するアングル材、チャンネル材、H型鋼材、或いはフラットバー等の各種の骨組部材の縁部にワンタッチで取り付けることが出来るものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係るクリップの全体斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るクリップの側面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るクリップの正面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るクリップをアングル材に取り付け、電線管を固定具によって取り付けた状態の正面図である。
【図5】従来の取付金具の斜視図である。
【図6】従来の取付金具の使用状態を示す正面説明図であって、その(A)が取付金具の下面部に管体固定具を取り付けた状態を示し、その(B)が取付金具の側面部に管体固定具を取り付けた状態を示す。
【符号の説明】
【0023】
10 クリップ
12 脚部
13、13s、13n 押圧部
15 中間接続部
16、17 螺子穴(取付部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製板バネ素材からなる板状体の両端側を下方に折曲して両脚部(12, 12)を形成し、正面視略コ字形状の本体部とし、
両脚部(12, 12)のそれぞれには、内側方向に突出する押圧部(13)を少なくとも2個設け、これらの両脚部(12, 12)の押圧部(13, 13, 13, 13)がアングル材、チャンネル材、H型鋼材、或いはフラットバー等の骨組部材(20)の縁部(20t) を押圧することにより、両脚部(12, 12)がその縁部(20t) を挟持してかかる骨組部材(20)に本体部が取り付けられることができ、
本体部の両脚部(12, 12)又は両脚部を接続する中間接続部(15)の少なくとも何れか1つに螺子穴(16, 17)又は貫通孔等の取付部を設け、この取付部に管体、ケーブル等の固定具等を取り付けることができる管体、ケーブル等の固定具等の取付用クリップ。
【請求項2】
請求項1において、両脚部(12, 12)の先端部側を根元部側よりも巾狭に形成したことを特徴とする管体、ケーブル等の固定具等の取付用クリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−275181(P2006−275181A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−96128(P2005−96128)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(504145537)有限会社三神製作所 (9)
【Fターム(参考)】