説明

管内塗装装置及び管内塗装方法

【課題】管の内部全体を確実に移動でき、かつ管の内部を効率的かつ均一に塗装することができる管内塗装装置及び管内塗装方法を提供する。
【解決手段】細長形状の本体10に設けられ、塗料を噴霧可能、かつ本体10の長手方向軸線10cを中心に回転可能なノズル12,13を備え、鉄塔100高さに沿った管101内部に挿通された状態で、ノズル12,13を回転させてノズル12,13から塗料を噴霧することにより管101内部を塗装する管内塗装装置2において、2つのノズル12,13が長手方向に離間して配置され、かつ本体10外周より内側の領域内に収容され、2つのノズル12,13の一方が管101内部の塗装時に塗料を本体10の軸線10cに垂直な基準面10dに対して斜め下方向に噴霧し、2つのノズル12,13のもう一方が管101内部の塗装時に塗料を基準面10dに対して斜め上方向に噴霧する、管内塗装装置2。このような管内塗装装置2を用いた管内塗装方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄塔の高さ方向に沿って配置された管の内部を塗装する管内塗装装置及び管内塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通信用等の鉄塔には、多くの場合、鉄塔を支持する支柱管が地上から鉄塔の高さ方向に沿って配置されている。この支柱管にはメッキ等の防錆処理が施されているが、支柱管が風雨に晒されること等によって、支柱管の防錆性能が低下することがある。そのため、支柱管には定期的に防錆塗装が施されている。しかしながら、支柱管の内部の空間は非常に狭くなっているので、支柱管の内部全体を効率的かつ均一に塗装することは非常に難しくなっている。そのため、このような支柱管の内部を移動して支柱管の内部を効率的かつ均一に塗装するために、様々な手法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1の塗装装置は、棒状本体と、該棒状本体の長手方向に沿って延びる軸線を中心として回転可能に棒状本体の先端に取付けられた塗料噴霧器とを有しており、塗料噴霧器の先端部に周方向に間隔を空けて配置された複数の噴霧ノズルから、棒状本体の長手軸線方向に対して垂直な方向に塗料を噴射する構成となっている。このような塗装装置を、その長手方向を支柱管の長手方向に沿わせて支柱管の内部に挿通するとともに、支柱管の内周面の塗装対象領域に向かって支柱管の長手方向に沿って移動させ、塗装対象領域に移動した塗装装置の塗料噴霧器を回転させながら塗料噴霧器の噴霧ノズルから支柱管の内周面に対して垂直に塗料を噴き付けて、支柱管の内部を塗装している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006− 82051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
鉄塔の支柱管には、その内周面に凸部及び凹部が形成されている場合があり、典型的には、鉄塔の支柱管には、その内周面からその中心に向かって突出するフランジが形成され、かつフランジに支柱管の長手方向に沿って貫通する孔が形成されている場合がある。しかしながら、特許文献1の塗装装置では、塗料が支柱管の内周面の塗装対象領域に対して垂直に噴霧されるので、塗装装置が、支柱管の内周面の凸部及び凹部と、及び支柱管の内周面から突出するフランジの上部及び下部とを効率的かつ均一に塗装することが難しくなっている。
【0006】
また、塗装装置は、支柱管の内部、特に、小さく形成されたフランジの孔を通過する必要がある。しかしながら、特許文献1の塗装装置では、複数の噴霧ノズルが塗料噴霧器の先端で周方向に間隔を空けて配置されており、塗装装置における噴霧ノズル取付部分の横断面が大きくなっている。そのため、支柱管の横断面、特に、フランジの孔が小さい場合には、塗装装置の噴霧ノズル取付部分が、支柱管の内部、特に、フランジの孔を通過できないおそれがある。その結果、塗装装置が、支柱管全体に渡って移動できず、管の内部全体を効率的かつ均一に塗装することができなくなるので、問題である。
【0007】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、管の内部全体を確実に移動でき、かつ管の内部を効率的かつ均一に塗装することができる管内塗装装置及び管内塗装方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
課題を解決するために、本発明の一態様における管内塗装装置は、
細長形状に形成された本体と、
該本体に設けられ、塗料を噴霧可能に構成され、かつ前記本体の長手方向に沿って延びる軸線を中心に回転可能に構成されるノズルと
を備え、
鉄塔の高さ方向に沿って配置された管の内部に該管の長手方向に沿って挿通された状態で、前記ノズルを回転させるとともに前記ノズルから前記塗料を噴霧することによって、前記管の内部を塗装するように構成されている管内塗装装置において、
前記ノズルが2つ設けられ、
前記2つのノズルが、前記本体の長手方向に互いに間隔を空けて配置され、かつ前記本体の外周より内側の領域内に収容されており、
前記2つのノズルの一方が、前記管の内部の塗装時に前記塗料を前記本体の軸線に垂直な基準面に対して斜め下方向に噴霧するように配向され、
前記第2のノズルのもう一方が、前記管の内部の塗装時に前記塗料を前記基準面に対して斜め上方向に噴霧するように配向されている。
【0009】
また、本発明の一態様における管内塗装装置では、前記2つのノズル間を接続し、かつ前記塗料を前記2つのノズルに供給するノズル接続管が設けられ、
前記ノズル接続管が、前記2つのノズルの接続区間で略クランク形状に形成され、かつ前記本体の外周より内側の領域内に収容され、
前記ノズル接続管の凹形状部分に前記ノズルの基端部が取付けられていると好ましい。
【0010】
課題を解決するために、本発明の一態様における管内塗装方法は、
上述した本発明の一態様における管内塗装装置を用いて、前記管の内周から前記管の中心に向かって延びるフランジと、前記管の長手方向に貫通するように前記フランジに形成されたフランジ孔とを有する前記管の内部を塗装する管内塗装方法であって、
前記管内塗装装置を、前記管のフランジ孔に通して前記管の内部を長手方向に移動させるステップと、
前記管内塗装装置の前記2つのノズルの一方を前記フランジより上方に配置した状態で前記2つのノズルの一方から前記塗料を噴霧することによって、前記フランジの上部を塗装し、前記管内塗装装置の前記2つのノズルのもう一方を前記フランジより下方に配置した状態で前記2つのノズルのもう一方から前記塗料を噴霧することによって、前記フランジの下部を塗装するステップと
を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、以下の効果を得ることができる。
本発明の一態様における管内塗装装置は、
細長形状に形成された本体と、
該本体に設けられ、塗料を噴霧可能に構成され、かつ前記本体の長手方向に沿って延びる軸線を中心に回転可能に構成されるノズルと
を備え、
鉄塔の高さ方向に沿って配置された管の内部に該管の長手方向に沿って挿通された状態で、前記ノズルを回転させるとともに前記ノズルから前記塗料を噴霧することによって、前記管の内部を塗装するように構成されている管内塗装装置において、
前記ノズルが2つ設けられ、
前記2つのノズルが、前記本体の長手方向に互いに間隔を空けて配置され、かつ前記本体の外周より内側の領域内に収容されており、
前記2つのノズルの一方が、前記管の内部の塗装時に前記塗料を前記本体の軸線に垂直な基準面に対して斜め下方向に噴霧するように配向され、
前記第2のノズルのもう一方が、前記管の内部の塗装時に前記塗料を前記基準面に対して斜め上方向に噴霧するように配向されている。
そのため、2つのノズル全体が本体の外周より内側の限られた領域内に配置されることとなり、このような本体の横断面を鉄塔の管の横断面より小さくすることができる。よって、管内塗装装置が管全体に渡って確実に移動することができる。また、鉄塔の管の内周面に凸部又は凹部が形成されている場合であっても、塗料を斜め下方向に噴霧する2つのノズルの一方によって、凸部の上側領域又は凹部の下側領域が効率的かつ均一に塗装され、かつ塗料を斜め上方向に噴霧する2つのノズルのもう一方によって、凸部の下側領域又は凹部の上側領域が効率的かつ均一に塗装されることとなる。よって、様々な形態の管の内部を効率的かつ均一に塗装することができる。
【0012】
本発明の一態様における管内塗装装置では、前記2つのノズル間を接続し、かつ前記塗料を前記2つのノズルに供給するノズル接続管が設けられ、
前記ノズル接続管が、前記2つのノズルの接続区間で略クランク形状に形成され、かつ前記本体の外周より内側の領域内に収容され、
前記ノズル接続管の凹形状部分に前記ノズルの基端部が取付けられているので、
ノズル接続管全体もまた、2つのノズルと共に本体の外周より内側の限られた領域内に配置されることとなり、このような本体の横断面を鉄塔の管の横断面より小さくすることができる。よって、管内塗装装置が管全体に渡って確実に移動することができる。
【0013】
本発明の一態様における管内塗装方法は、上述した本発明の一態様における管内塗装装置を用いて、前記管の内周から前記管の中心に向かって延びるフランジと、前記管の長手方向に貫通するように前記フランジに形成されたフランジ孔とを有する前記管の内部を塗装する管内塗装方法であって、
前記管内塗装装置を、前記管のフランジ孔に通して前記管の内部を長手方向に移動させるステップと、
前記管内塗装装置の前記2つのノズルの一方を前記フランジより上方に配置した状態で前記2つのノズルの一方から前記塗料を噴霧することによって、前記フランジの上部を塗装し、前記管内塗装装置の前記2つのノズルのもう一方を前記フランジより下方に配置した状態で前記2つのノズルのもう一方から前記塗料を噴霧することによって、前記フランジの下部を塗装するステップと
を含む。
そのため、本体の横断面をフランジ孔より小さくすることができるので、管内塗装装置がフランジの孔を確実に通過できる。よって、管内塗装装置が管全体に渡って確実に移動することができる。また、塗料を斜め下方向に噴霧する2つのノズルの一方によって、フランジの上部が効率的かつ均一に塗装され、かつ塗料を斜め上方向に噴霧する2つのノズルのもう一方によって、フランジの下部が効率的かつ均一に塗装されることとなる。よって、管の内部のフランジを効率的かつ均一に塗装することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る管内塗装装置を備えた管内補修システムを鉄塔に用いた状態を模式的に示す説明図である。
【図2】本発明の実施形態に係る管内塗装装置を概略的に示す斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る管内塗装装置を概略的に示す一部縦断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る管内塗装装置のノズルユニット及びその周辺を概略的に示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態に係る管内塗装装置(以下、「塗装装置」という)を備えた管内塗装システム(以下、「塗装システム」という)、及び管内塗装方法を説明する。
最初に、図1を参照して、本発明の実施形態にて塗装対象となる鉄塔100について説明する。図1に示されるように、鉄塔100は、地上Gから高さ方向に沿って配置された支柱管101と、鉄塔100の頂部に設けられたステージ102とを有している。支柱管101の上端部はステージ102から突出し、支柱管101の上端には開口101aが形成されている。また、図3に示されるように、支柱管101には、支柱管101の内周面101bから支柱管101の横断面中心に向かって延びるフランジ103が形成されている。フランジ103には、支柱管101の長手方向に延びる軸線101cに沿って貫通するフランジ孔104が形成されている。なお、軸線101cは支柱管101の横断面中心を通過している。
【0016】
次に、図1を参照して、塗装システム1の主な構成について説明する。図1に示されるように、塗装システム1は塗装装置2を備えており、この塗装装置2が、支柱管101の内部に挿通され、かつ吊下げられた状態で、支柱管101の内部を塗装する構成となっている。さらに、塗装システム1はガイド装置3を備え、ガイド装置3は、塗装装置2を支柱管101の軸線101cに沿って案内するように構成されている。塗装システム1はワイヤ昇降装置4を備え、ワイヤ昇降装置4は、塗装装置2を吊下げるワイヤ5を巻取りかつ巻出し可能とするように構成されており、ワイヤ昇降装置4から延びるワイヤ5の先端部が塗装装置2に取付けられている。塗装システム1はホース昇降装置6を備え、ホース昇降装置6は、塗装装置2に塗装用の塗料を供給する塗料用ホース7と、塗装装置2にエアを供給するエア用ホース8とを巻取りかつ巻出し可能に構成されている。塗装システム1は制御装置9を備え、制御装置9は、塗装システム1の各装置を制御可能とするように構成されている。このようなガイド装置3、ワイヤ昇降装置4、ホース昇降装置6、及び制御装置9は、鉄塔100頂部のステージ102上に設置可能となっている。
【0017】
ここで、図2〜図4を参照して、塗装装置2の詳細を説明する。図2及び図3に示されるように、塗装装置2は、細長形状に形成された中空の本体10を有しており、本実施形態では、本体10は略円筒形状に形成されている。図3及び図4に示されるように、本体10の先端部10aは、本体10の基端から先端に向かって細くなるように略円錐形状に形成されており、また、本体10の基端部10bは、本体10の先端から基端に向かって細くなるように略円錐形状に形成されている。本体10の先端部10aに対して基端側には、本体10の長手方向に沿ってノズルユニット11が配設されており、このノズルユニット11は、塗料を噴霧可能とする第1のノズル12及び第2のノズル13と、第1のノズル12及び第2のノズル13を接続するノズル接続管14とを備えている。さらに、ノズルユニット11は、その長手方向の先端に配置された先端側支持部15と、ノズルユニット11の長手方向の基端に配置された基端側支持部16とを備えている。ノズル接続管14の先端部は先端側支持部15によって支持されており、ノズル接続管14の基端部は、本体10の軸線10c上に位置する基端支持部16の中心16aに接続されている。さらに、ノズルユニット11は、先端側支持部15及び基端側支持部16の間で延びる複数の柱状部材17を備えており、第1のノズル12と第2のノズル13とノズル接続管14とは、複数の柱状部材17に囲まれている。特に図示はしないが、本実施形態では、一例として、4つの柱状部材17が設けられているものとする。ノズルユニット11のさらなる詳細な構造については後述する。
【0018】
図3に示されるように、本体10には、ノズルユニット11に対して本体10の基端側に接続機構18が設けられており、接続機構18の内部には、塗料を本体10の長手方向に沿って通過可能とするように接続機構部塗料用経路18aが形成されている。接続機構18の先端部は、ノズルユニット11の基端側支持部16の中心16aに着脱可能に取付けられ、接続機構18の接続機構部塗料用経路18aがノズルユニット11のノズル接続管14と連通可能となっている。また、接続機構18の内部には、接続機構部塗料用経路18aに接続される接続機構部エア用経路18bが形成されており、この接続機構部エア用経路18bは接続機構部塗料用経路18aに接続されている。
【0019】
本体10には、接続機構18に対して本体10の基端側にモータ19が配置されており、モータ19の内部には、塗料を本体10の長手方向に沿って通過可能とするようにモータ部塗料用経路(図示せず)が形成されている。モータ19の先端部は、接続機構18の基端部に取付けられ、モータ部塗料用経路は接続機構18の接続機構部塗料用経路18aと連通している。このモータ19によって、接続機構18が、ズルユニット11と共に本体10の軸線10cを中心として回転して、その結果、第1のノズル12と第2のノズル13とが、本体10の軸線10cを中心として回転することとなる。
【0020】
本体10には、塗料を供給する塗料供給管20が設けられている。塗料供給管20はモータ19の基端部から本体10の基端部10bに延びるとともに本体10の基端部10bから突出している。この塗料供給管20の突出した部分に、塗料用ホース7の先端部が着脱可能に取付けられている。このような塗料供給管20が、塗料用ホース7とモータ19のモータ部塗料用経路とを連通している。また、本体10には、エアを供給するエア供給管21が設けられている。エア供給管21は、接続機構18から本体10の基端部10bに延びるとともに、本体10の基端部10bから突出している。このエア供給管21の突出した部分に、エア用ホース8の先端部が着脱可能に取付けられている。このようなエア供給管21が、エア用ホース8と接続機構18の接続機構部エア用経路18bとを連通している。
【0021】
本体10には、複数の細長形状のアーム22が設けられている。アーム22の基端部が本体10に旋回可能に取付けられており、アーム22がその基端部を中心として本体10の長手方向に旋回可能に構成されている。アーム22の基本姿勢では、アーム22の長手方向が本体10の軸線10cに対して垂直な方向に沿った状態となっており、アーム22は、旋回後に基本姿勢に復帰できるように付勢されている。さらに、本体10には、アーム22の基端部から上下方向にそれぞれ延びる収納溝23が形成されている。アーム22が旋回して本体10に沿った姿勢となった場合には、アーム22が本体10の収納溝23内に収容されるように構成されている(図3にて、仮想線により示す)。
【0022】
ここで、図3及び図4を参照して、ノズルユニット11の詳細について説明する。図3及び図4に示されるように、第1のノズル12は、第2のノズル13に対して本体10の先端側で長手方向に距離Dの間隔を空けて配置されており、第1のノズル12と第2のノズル13とは、本体10の外周より内側の領域内に収容されている。図3に示されるように、第1のノズル12には、その先端部12aとその基端部12bとの間で連通する第1の噴出路12cが設けられている。第1の噴出路12cは、本体10の長手方向に延びる軸線10cに垂直な基準面10dに対して本体10の基端側に角度w1傾けて配置されており、第1のノズル12は、塗料を基準面10dに対して本体10の基端側に角度w1傾けて、第1のノズル12の先端部12aから噴霧可能となっている。第2のノズル13には、その先端部13aとその基端部13bとの間で連通する第2の噴出路13cが設けられている。第2の噴出路13cは、本体10の基準面10dに対して本体10の先端側に角度w2傾けて配置されており、第2のノズル13は、塗料を基準面10dに対して本体10の先端側に角度w2傾けて、第2のノズル13の先端部13aから噴霧可能となっている。なお、第1のノズル12及び第2のノズル13間の距離Dと、第1のノズル12の角度w1と、第2のノズル13の角度w2とは調節可能となっていると好ましい。
【0023】
図3及び図4に示されるように、ノズル接続管14は本体10の外周より内側の領域内に収容されている。このようなノズル接続管14は、第1のノズル12と第2のノズル13との先端側接続区間14aで略クランク形状に形成されており、かつ第2のノズル13と基端支持部16との基端側接続区間14bで略クランク形状に形成されている。このようなノズル接続管14の凹形状部分に、第1のノズル12の基端部12bと第2のノズル13の基端部13bとが接続されており、第1の噴出路12cと第2の噴出路13cとがノズル接続管14に連通している。4つの柱状部材17は、互いに本体10の周方向に間隔を空けて本体10の外周に沿って配置されている。
【0024】
再び図1を参照して、鉄塔100に設置された状態のガイド装置3、ワイヤ昇降装置4、ホース昇降装置6、及び制御装置9について説明する。ガイド装置3はガイド部3aを有しており、このガイド部3aは、塗装装置2、ワイヤ5、塗料用ホース7、及びエア用ホース8を、これらの長手方向を支柱管101の軸線101cに沿わせて支柱管101の内部に挿通ガイドするように構成されている。ガイド装置3は、ワイヤ用シーブ3bと、ホース用シーブ3cとを備えており、ワイヤ用シーブ3bにワイヤ5の中間部が掛けられ、ホース用シーブ3cに塗料用ホース7の中間部とエア用ホース8の中間部とが掛けられている。ワイヤ昇降装置4はワイヤ用ドラム4aを備えており、ワイヤ用ドラム4aはワイヤ5を巻取りかつ巻出し可能に構成されている。ホース昇降装置6はホース用ドラム6aを備えており、ホース用ドラム6aは、塗料用ホース7とエア用ホース8とを巻取りかつ巻出し可能に構成されている。制御装置9は、塗装装置2とワイヤ昇降装置4とホース昇降装置6とに電気的に接続されて、塗装装置2とワイヤ昇降装置4とホース昇降装置6とを制御可能としている。
【0025】
本発明の実施形態に係る管内塗装方法について説明する。
塗装システム1の設置方法について説明する。支柱管101の上端部にガイド装置3を設置し、ステージ102上にワイヤ昇降装置4とホース昇降装置6と制御装置9とを設置する。ワイヤ5の中間部をガイド装置3のワイヤ用シーブ3bに掛け、かつ塗料用ホース7の中間部とエア用ホース8の中間部とをガイド装置3のホース用シーブ3cに掛ける。ワイヤ5の先端部を塗装装置2の本体10の基端部10bに取付け、塗料用ホース7の先端部を塗装装置2の塗料供給管20に取付け、エア用ホース8の先端部を塗装装置2のエア供給管21に取付ける。塗装装置2の本体10の先端を下方に向けた状態で、塗装装置2を、ガイド装置3のガイド部3aによってガイドしながら支持柱101の開口101aから内部に挿通し、昇降装置2を支持柱101の内部に吊り下げる。このとき、ワイヤ5、塗料用ホース7、及びエア用ホース8もまた、ガイド装置3のガイド部3aによって挿通ガイドされる。
【0026】
塗装装置2の移動方法について説明する。ワイヤ昇降装置4のドラム4aからワイヤ5を巻出して、支柱管101の内部に吊下げられた昇降装置2を支柱管101の内部で下降させる。このとき、制御装置9の制御によって、ワイヤ昇降装置4から巻出されたワイヤ5の長さに対応して、塗料用ホース7及びエア用ホース8がホース昇降装置6のドラム6aから巻出される。また、ワイヤ昇降装置4のドラム4aからワイヤ5を巻取って、昇降装置2を支柱管101の内部で上昇させる。このとき、制御装置9の制御によって、ワイヤ昇降装置4に巻取されたワイヤ5の長さに対応して、塗料用ホース7及びエア用ホース8がホース昇降装置6のドラム6aに巻取られる。
【0027】
塗装装置2のフランジ孔104の通過について説明する。昇降装置2の本体10の軸線10cが支柱管101の軸線101cに沿っている場合、アーム22の先端と支柱管101の内周面101bとの間には隙間が形成されている。この状態では、昇降装置2は支柱管101のフランジ孔104をスムーズに通過できる。昇降装置2の本体10の軸線10cが支柱管101の軸線101cに対して水平方向に振れた場合には、アーム22の先端が支柱管101の内周面101bと接触することによって、昇降装置2が支柱管101のフランジ孔104から僅かにずれるのみとなる。フランジ孔104から僅かにずれた昇降装置2は、下降時には本体10の略円錐形状の先端部10aによってフランジ孔104に呼び込まれ、かつ上昇時には本体10の略円錐形状の基端部10bによってフランジ孔104に呼び込まれる。昇降装置2がフランジ孔104を通過するとき、アーム22は回動して倒れるとともに本体10の収納溝23内に収容され、昇降装置2がフランジ孔104を通過した後に、アーム22が基本姿勢に復帰する。
【0028】
塗装装置2による塗装方法について説明する。塗装対象領域全体が支柱管101の内周面101bに位置する場合、昇降装置2を上昇又は下降させて、昇降装置2の第1のノズル12及び第2のノズル13の間の中間部分を塗装対象領域の高さ方向中間部分と同等の高さに配置する。この配置状態で、モータ19によりノズルユニット11を回転させ、接続機構部塗料用経路18aからノズル接続管14を経由して第1のノズル12及び第2のノズル13に塗料を供給し、接続機構18の接続機構部エア用経路18bから接続機構部塗料用経路18aにエアを供給して、回転した第1のノズル12及び第2のノズル13から塗料を発射する。第1のノズル12及び第2のノズル13から発射される塗料は、支柱管101の内周面101bの塗装対象領域に噴付けられる。また、塗装対象領域に支柱管101のフランジ103が含まれる場合、昇降装置2を上昇又は下降させて、昇降装置2の第1のノズル12及び第2のノズル13の間の中間部分をフランジ103と同等の高さに配置する。この配置状態で、回転した第1のノズル12及び第2のノズル13から塗料を発射する。このとき、上方に向かって傾斜した第1のノズル12から発射される塗料は、支柱管101のフランジ103の下面に噴付けられ、かつ下方に向かって傾斜した第2のノズル13から発射される塗料は、フランジ103の上面に噴付けられる。なお、支柱管101の内周面101bに、凸部及び凹部が形成されている場合、上方に向かって傾斜した第1のノズル12から発射される塗料は、凸部の下側領域及び凹部の上側領域に噴付けられ、かつ下方に向かって傾斜した第2のノズル13から発射される塗料は、凸部の上側領域及び凹部の下側領域に噴付けられる。
【0029】
以上のように本発明の実施形態によれば、第1のノズル12及び第2のノズル13の全体が本体10の外周より内側の限られた領域内に配置されることとなり、このような本体10の横断面を鉄塔100の支柱管101の横断面より小さくすることができる。よって、塗装装置2が支柱管101全体に渡って確実に移動することができる。また、鉄塔100の支柱管101の内周面101bに凸部又は凹部が形成されている場合であっても、塗料を斜め上方向に噴霧する第1のノズル12によって、凸部の下側領域又は凹部の上側領域が効率的かつ均一に塗装され、かつ塗料を斜め下方向に噴霧する第2のノズル13によって、凸部の上側領域又は凹部の下側領域が効率的かつ均一に塗装されることとなる。よって、様々な形態における鉄塔100の支柱管101の内部を効率的かつ均一に塗装することができる。
【0030】
本発明の実施形態によれば、ノズル接続管14全体もまた、第1のノズル12及び第2のノズル13と共に本体10の外周より内側の限られた領域内に配置されることとなり、このような本体10の横断面を鉄塔100の支柱管101の横断面より小さくすることができる。よって、塗装装置2が支柱管101全体に渡って確実に移動することができる。
【0031】
本発明の実施形態によれば、本体10の横断面をフランジ孔104より小さくすることができるので、塗装装置2がフランジ孔104を確実に通過できる。よって、塗装装置2が支柱管101全体に渡って確実に移動することができる。また、塗料を斜め上方向に噴霧する第1のノズル12によって、フランジ103の下面が効率的かつ均一に塗装され、かつ塗料を斜め下方向に噴霧する第2のノズル13によって、フランジ103の上面が効率的かつ均一に塗装されることとなる。よって、鉄塔100の支柱管101の内部を効率的かつ均一に塗装することができる。
【0032】
ここまで本発明の実施形態について述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
【0033】
例えば、本発明の変形例として、第1のノズル12における第1の噴出路12cが、本体10の長手方向に延びる軸線10cに垂直な基準面10dに対して本体10の先端側に角度w1傾けて配置されており、第1のノズル12が、塗料を基準面10dに対して本体10の先端側に角度w1傾けて、第1のノズル12の先端部12aから噴霧可能となっており、さらに、第2のノズル13における第2の噴出路13cが、本体10の基準面10dに対して本体10の基端側に角度w2傾けて配置されており、第2のノズル13は、塗料を基準面10dに対して本体10の基端側に角度w2傾けて、第2のノズル13の先端部13aから噴霧可能となっていてもよい。本発明の実施形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0034】
2 管内塗装装置(塗装装置)
10 本体
10c 軸線
10d 基準面
12 第1のノズル
13 第2のノズル
14 ノズル接続管
14a 先端側接続区間
100 鉄塔
101 支柱管
101b 内周面
101c 軸線
103 フランジ
104 フランジ孔
w1,w2 角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長形状に形成された本体と、
該本体に設けられ、塗料を噴霧可能に構成され、かつ前記本体の長手方向に沿って延びる軸線を中心に回転可能に構成されるノズルと
を備え、
鉄塔の高さ方向に沿って配置された管の内部に該管の長手方向に沿って挿通された状態で、前記ノズルを回転させるとともに前記ノズルから前記塗料を噴霧することによって、前記管の内部を塗装するように構成されている管内塗装装置において、
前記ノズルが2つ設けられ、
前記2つのノズルが、前記本体の長手方向に互いに間隔を空けて配置され、かつ前記本体の外周より内側の領域内に収容されており、
前記2つのノズルの一方が、前記管の内部の塗装時に前記塗料を前記本体の軸線に垂直な基準面に対して斜め下方向に噴霧するように配向され、
前記第2のノズルのもう一方が、前記管の内部の塗装時に前記塗料を前記基準面に対して斜め上方向に噴霧するように配向されている、管内塗装装置。
【請求項2】
前記2つのノズル間を接続し、かつ前記塗料を前記2つのノズルに供給するノズル接続管が設けられ、
前記ノズル接続管が、前記2つのノズルの接続区間で略クランク形状に形成され、かつ前記本体の外周より内側の領域内に収容され、
前記ノズル接続管の凹形状部分に前記ノズルの基端部が取付けられている、請求項1に記載の管内塗装装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の管内塗装装置を用いて、前記管の内周から前記管の中心に向かって延びるフランジと、前記管の長手方向に貫通するように前記フランジに形成されたフランジ孔とを有する前記管の内部を塗装する管内塗装方法であって、
前記管内塗装装置を、前記管のフランジ孔に通して前記管の内部を長手方向に移動させるステップと、
前記管内塗装装置の前記2つのノズルの一方を前記フランジより上方に配置した状態で前記2つのノズルの一方から前記塗料を噴霧することによって、前記フランジの上部を塗装し、前記管内塗装装置の前記2つのノズルのもう一方を前記フランジより下方に配置した状態で前記2つのノズルのもう一方から前記塗料を噴霧することによって、前記フランジの下部を塗装するステップと
を含む管内塗装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−111532(P2013−111532A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260352(P2011−260352)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000217653)電気興業株式会社 (105)
【出願人】(000117009)旭サナック株式会社 (194)
【Fターム(参考)】