管切削治具、該管切削治具を用いた板材挿入工法及びエレメント挿入工法
【課題】長尺状の管を精度よく、内面側から切削することができる管切削治具、該管切削治具を用いた板材挿入工法及びエレメント挿入工法を提供することを目的とする。
【解決手段】長尺状の断面円形管40の内部を進行方向Xに移動する移動ローラ部30と、移動ローラ部30によって移動し、駆動部によって駆動する回転切削刃14を断面円形管40の内周面40bに押し当てるとともに、進行方向Xに内周面40bを切削する切削カッタ12とを備えた。
【解決手段】長尺状の断面円形管40の内部を進行方向Xに移動する移動ローラ部30と、移動ローラ部30によって移動し、駆動部によって駆動する回転切削刃14を断面円形管40の内周面40bに押し当てるとともに、進行方向Xに内周面40bを切削する切削カッタ12とを備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
例えば、断面円形の管を内側から切削する管切削治具、並びに当該管切削治具を用いた板材挿入工法及びエレメント挿入工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、断面円形の管を断面方向に切断することは多くあり、自動化するための様々な装置や施工方法が提案されている。
しかし、長尺状の管を長手方向に切断する装置や施工方法は少なく、さらには、工場外の現場で管を長手方向に切断する装置や施工方法はほとんどなく、これまではサンダー等の切断装置を用いた施工者の手作業によって行われていた。そのため、その精度は施工者の技能に左右されていた。
【0003】
また、管を長手方向に切断する場合、通常、管外面から施工するため、例えば、既に装置に装着された管を切断する場合等は施工できなかった。
例えば、特許文献1には、切断刃を強制的にけん引して埋設管を長手方向に切断する方法について提案されているが、この方法は、埋設管を断面方向に複数に分割して撤去することを目的としており、管外径を保ちながら、管の周方向における一部の肉厚部分を長手方向に薄くする加工などはできなかった。また、上記施工方法は、切断刃を強制的にけん引して埋設管を切断するため、厚肉の管には対応できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−083472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、この発明は、長尺状の管を精度よく、内面側から切削することができる管切削治具、該管切削治具を用いた板材挿入工法及びエレメント挿入工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、長尺状の管内部を長手方向に移動する移動手段と、該移動手段によって移動し、駆動部によって駆動する切削部を管内面に押し当てて、前記長手方向に前記管内面を切削する管内面切削手段とを備えた管切削治具であることを特徴とする。
【0007】
上記の長尺状の管は、管内面切削手段の通過を許容する内部空間を有し、普通人の腕の長さより長い管とすることができる。また上述の管は、円形、楕円形、略矩形等様々な断面形状の管を含むとともに、管内面切削手段で切削可能な素材で構成された管とすることができる。
【0008】
上記移動手段は、ローラ等の転動、キャタピラ等の走行手段、あるいは歩行手段等の管内面を長手方向に移動することのできる手段とすることができる。さらには、移動手段は、けん引や元押しを駆動源とし移動する手段、あるいはモータ等の駆動源を備えて自力で移動することのできる手段とすることができる。
上記切削は、内面側から管の肉厚の一部のみを切削すること、肉厚部分を貫通させて完全に切断することを含み、さらには幅を持って切削、切断してもよい。
【0009】
この発明により、長尺状の管を精度よく、内面側から切削することができる。
詳しくは、駆動部によって駆動する切削部を管内面に押し当てて、前記長手方向に前記管内面を切削する管内面切削手段を備えたことにより、例えば、切断刃を強制的にけん引して管内面から管を切断する場合と比較し、精度よく所望の切削態様で切削することができる。また、管内面切削手段が、長尺状の管内部を長手方向に移動する移動手段によって移動できるため、長尺状の管内面を長手方向に沿って切削することができる。なお、例えば、切削条件を設定する設定手段等を備えた場合、管外径を保ちながら、管の周方向における一部の肉厚部分を長手方向に薄くする加工をすることもできる。
【0010】
この発明の態様として、前記移動手段を、前記管内面を転動する転動手段と、移動方向前方からけん引するけん引手段とで構成することができる。
上記転動手段は、ローラや車輪で構成することができるが、例えば、円形断面の場合、円形断面の内周面に対して3以上の転動手段で転動する構成がより好ましい。
【0011】
この発明により、長尺状の管をより精度よく、内面側から切削することができる。
詳しくは、駆動部によって駆動する切削部を管内面に押し当てて、前記長手方向に前記管内面を切削する管内面切削手段を、長尺状の管内部に転動手段をセットし、けん引手段によって移動方向前方から転動手段をけん引するため、長尺状の管内部にセットした管内面切削手段の移動方向や移動速度をけん引状況によって調整できるため、長尺状の管を内面側から、より精度よく切削することができる。
【0012】
またこの発明の態様として、前記管を、地中に埋設した断面円形の円形埋設管で構成し、前記管内面切削手段に、前記円形埋設管の肉厚に対する前記切削部による切削深さを設定する切削深さ設定手段を備えることができる。
【0013】
上記切削深さ設定手段は、管内面に押し当てる管内面切削手段の押し当て量を規制するゲージや、切削部による切削深さをセンサで検出しながら管内面切削手段の管内面への押し当て量を制御する制御手段等で構成することができる。
【0014】
この発明により、埋設されているため管外部から長手方向に切削することができない円形埋設管に対して、管内部に配置した管内面切削手段で管の内側から管を切削することができる。
また、埋設されている円形埋設管に対して、管外径を保ちながら、管の周方向における一部の肉厚部分を長手方向に薄く加工したり、切断したりすることができる。したがって、完全に切削することによって土圧により管がつぶれたり、周辺の地山の土や水が管内部に侵入することを防止できる。
【0015】
またこの発明は、2本の前記円形埋設管の間の地山を、前記円形埋設管のそれぞれを通るワイヤーソーで、前記円形埋設管の対向部分とともに切断するとともに、前記長手方向に移動し、該ワイヤーソーで切断した切断箇所に板材を挿入する板材挿入工法において、前記ワイヤーソーに、前記円形埋設管の内部において長手方向に走行する走行手段を備え、前記ワイヤーソーの進行方向前方に、上述の管切削治具を配置し、該管切削治具で、前記ワイヤーソーによって切断する前記円形埋設管の切断予定箇所を切削することを特徴とする。
【0016】
この発明により、2本の前記円形埋設管の間の地山を、ワイヤーソーで切断し、ワイヤーソーで切断した切断箇所に板材を効率よく挿入することができる。
詳しくは、該管切削治具で、前記ワイヤーソーによって切断する前記円形埋設管の切断予定箇所を切削することにより、高価なワイヤーソーが不用意に破断するリスクや摩耗量を大幅に低減することができる。さらには、例えば、線路直下のアンダーパス構造の構築において、ワイヤーソーで切断した切断箇所にあらかじめ板材を挿入することで、下方での掘削等による地盤の応力解放による影響が直上の線路等の上部構造に及ぶことを防止できる。
【0017】
この発明の態様として、前記走行手段に対する前記管切削治具の前記長手方向の相対移動を許容するとともに、前記円形埋設管の管軸方向における相対回転を規制する回転規制手段を備えることができる。
【0018】
この発明により、走行手段によって走行するワイヤーソーに対する相対回転を規制しながら管切削治具で管内面を切削することができる。したがって、確実に、ワイヤーソーによって切断する前記円形埋設管の切断予定箇所を切削することができる。
【0019】
詳しくは、前記円形埋設管の円形断面において管切削治具がワイヤーソーに対して相対回転すると、ワイヤーソーによって切断する前記円形埋設管の切断予定箇所を切削することができなくなる。しかし、回転規制手段によってワイヤーソーに備えた走行手段に対して管軸方向における相対回転を規制することができるため、確実に、ワイヤーソーによって切断する前記円形埋設管の切断予定箇所を切削することができる。
【0020】
また、回転規制手段は、ワイヤーソーに備えた走行手段に対する管切削治具の前記長手方向の相対移動を許容するため、管切削治具による管の長手方向切削速度と、ワイヤーソーによる管の長手方向切断速度とが異なる場合であっても、一方の長手方向の移動に応じて他方の移動を容易に調整することができる。
【0021】
またこの発明の態様として、前記走行手段との前記管切削治具の前記長手方向の相対距離を計測する相対距離計測手段を備えることができる。
この発明により、ワイヤーソーと管切削治具とが相互に支障することなく、管を内側から管切削治具で切削し、管切削治具による切削跡をワイヤーソーで切断することができる。
【0022】
詳しくは、回転規制手段によって、ワイヤーソーに備えた走行手段に対する管切削治具の前記長手方向の相対移動を許容するが、前記走行手段との前記管切削治具の前記長手方向の相対距離を計測する相対距離計測手段を備えることにより、走行手段との管切削治具とが接触し、例えば、ワイヤーソーと管切削治具とが相互に支障し、損傷することを防止できる。
【0023】
またこの発明の態様として、前記ワイヤーソー及び前記管切削治具による前記円形埋設管の切削屑を、前記円形埋設管の外部に排出する切削屑排出手段を備えることができる。
この発明により、切削屑が切削部における切削箇所にたまって切削効率が低下することを防止できる。
【0024】
さらにまたこの発明は、上部に天板を有する閉断面形状のエレメントを地山に挿入し、エレメント内部を掘削するエレメント挿入工法であり、前記天板を、前記エレメント挿入方向前端より前方に突出する構成とし、前記天板を、上述の板材挿入工法における前記板材としたことを特徴とする。
【0025】
上記閉断面形状のエレメントは、矩形断面、台形断面などの様々な断面形状を含むものとする。
上記エレメント挿入方向前端より前方に突出する構成の天板は、エレメントの挿入方向前端のみならず、エレメントの挿入方向前側に装着した刃口の挿入方向前端を含むものとする。
【0026】
この発明により、例えば、線路直下において、エレメントを挿入する際に、エレメント挿入方向前端より前方に突出する天板を、ワイヤーソーで切断された地盤にあらかじめ挿入できるため、エレメント挿入のための掘削等による地盤の応力解放による影響が直上の線路等の上部構造に及ぶことなく、エレメントを挿入することができる。
【発明の効果】
【0027】
この発明によれば、長尺状の管を精度よく、内面側から切削できる管切削治具、該管切削治具を用いた板材挿入工法及びエレメント挿入工法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】管切削治具についての説明図。
【図2】管切削治具についての説明図。
【図3】軌道下に構築する地下横断構造物の概略斜視図。
【図4】同状態の概略正面図。
【図5】同状態の概略縦断面図。
【図6】刃口についての説明図。
【図7】刃口についての概略正面図。
【図8】図6における要部拡大図による説明図。
【図9】エレメント挿入工法について説明する概略正面図。
【図10】エレメント挿入工法について説明する概略説明図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
この発明の一実施形態を以下図面とともに説明する。
まず、管切削治具1の説明図を示す図1及び図2とともに、管切削治具1について説明する。なお、図1(a)は管切削治具1の平面図を示し、図1(b)は管切削治具1の側面図を示し、図1(c)は管切削治具1の正面図を示し、図1(d)は刃口用移動ローラ部30aの正面図を示している。
【0030】
また、図2(a),(b)は図1(a)のa部について回転切削刃14を透過状態の点線で表した拡大図を示し、図2(c)は図1(b)のb部の拡大図を示している。なお、図2(a)は断面円形管40の肉厚部分40aを貫通する切削状態の拡大図を示し、図2(b)は深さゲージ15で、断面円形管40の肉厚部分40aに対する切削深さを規制した切削状態の拡大図を示している。
【0031】
管切削治具1は、切削治具本体10と、該切削治具本体10の進行方向Xの前後に備えた移動ローラ部30と、進行方向Xの前方の移動ローラ部30に接続したけん引ワイヤ35とで構成している。
けん引ワイヤ35は、断面円形管40の進行方向Xの前方(以下において到達側という)に配置されたけん引用ウィンチ(図示省略)に接続され、けん引用ウィンチの巻取りによって、切削治具本体10を到達側にけん引する。
【0032】
移動ローラ部30は、進行方向Xの前後に配置した支持フレーム31と、前後の支持フレーム31の間で支持するローラ32とで構成している。
支持フレーム31は、図1(c)に示すように、回転切削刃14が断面円形管40の肉厚部分40aを切削する側を正面視円弧状とし、反対側において斜め上下方向にそれぞれ延びる部分を備え、正面視Xの位置において、断面円形管40の内周面40bを進行方向Xに転動するローラ32を備えている。
【0033】
切削治具本体10は、進行方向Xに長いベースプレート11と、ベースプレート11上に配置され、進行方向Xの後方に回転切削刃14を備えた切削カッタ12と、切削カッタ12の進行方向Xの前後のそれぞれを断面円形管40の内周面40bに押し当てる2台の押圧スライダ13と、押圧スライダ13によって断面円形管40の内周面40bに押し当てられる押し当て量を規制する深さゲージ15とを備えている。
【0034】
切削カッタ12は、空気圧によって、回転切削刃14をY方向(図2(a),(b)参照)に回転するエアーラチェットで構成しているが、電気で回転駆動するベビーサンダーや、油圧モータで回転駆動する油圧サンダー等を用いてもよい。なお、切削カッタ12は、ベースプレート11上において、断面円形管40の幅方向にスライド自在に固定されている。
【0035】
また、切削カッタ12によって回転する回転切削刃14は、所望の切削幅に応じた厚みを有するとともに、切削カッタ12の回転方向に回転することで断面円形管40の肉厚部分40aを切削できる刃で構成している。
【0036】
押圧スライダ13は、断面円形管40の幅方向にスライド自在に固定された切削カッタ12を断面円形管40の内周面40bに押し付けるスライダであり、空気圧によって伸縮するエアジャッキで構成しており、前後の押圧スライダ13は同調して切削カッタ12を断面円形管40の内周面40bに押し付ける構成である。
【0037】
深さゲージ15は、回転切削刃14の上方における断面円形管40の内周面40b側に向く態様で切削カッタ12に固定され、ベースプレート11に対する切削カッタ12のスライド方向に位置調整可能に構成している。なお、断面円形管40の内周面40bに当接する当接面15aは平面視円弧状に形成している。
【0038】
管切削治具1をこのように構成することにより、断面円形管40の内周面40bを精度よく切削し、精度のよい切削スリット40cを形成することができる。
詳しくは、内周面40bに押し当てるとともに、駆動部による回転切削刃14の駆動によって進行方向Xに内周面40bを切削する切削カッタ12を備えたことにより、例えば、切断刃を強制的にけん引して管内側から断面円形管40を切断する場合と比較し、精度よく所望の切削態様で切削し、精度のよい切削スリット40cを形成することができる。
【0039】
また、切削カッタ12が、長尺状の断面円形管40の内部を進行方向Xに移動し、内周面40bを転動するローラ32と、移動方向前方からけん引するけん引ワイヤ35とを備えた移動ローラ部30によって移動できるため、長尺状の内周面40bを進行方向Xに沿って切削し、切削スリット40cを形成することができる。
【0040】
詳しくは、内周面40bに押し当てるとともに、駆動部による回転切削刃14の駆動によって進行方向Xに内周面40bを切削する切削カッタ12を、長尺状の断面円形管40の内部にセットし、けん引ワイヤ35によって進行方向Xの前方からローラ32をけん引するため、長尺状の断面円形管40の内部に配置したローラ32とともに切削カッタ12の移動速度をけん引状況によって制御でき、より精度よく、断面円形管40の内周面40bから切削し、切削スリット40cを形成することができる。
【0041】
また切削カッタ12に、断面円形管40の内周面40bに対する回転切削刃14による切削深さを設定する深さゲージ15を備えたことにより、断面円形管40の外径を保ちながら、断面円形管40の周方向における一部の肉厚部分40aを進行方向Xに薄く加工し、切削スリット40cを形成することができる。
また、断面円形管40の外部から進行方向Xに切削することができない埋設された断面円形管40であっても、断面円形管40の内部に配置した切削カッタ12で断面円形管40の内側から断面円形管40を切削し、切削スリット40cを形成することができる。
【0042】
したがって、埋設されている断面円形管40に対して、管外径を保ちながら、管の周方向における一部の肉厚部分40aの厚みが薄くなった切削スリット40cを形成し、完全に切削することによって土圧により断面円形管40がつぶれたり、周辺の地山の土や水が管内部に侵入することを防止できる。
【0043】
なお、上述の説明では円形断面の断面円形管40について説明したが、円形のみならず、楕円形、略矩形等様々な断面形状の管についても、切削カッタ12で切削可能な素材であれば切削することができる。
【0044】
さらに、管切削治具1を移動するための手段としてローラ32を備えた移動ローラ部30について説明したが、駆動源を備えたキャタピラや歩行手段等の内周面40bを進行方向Xに移動することのできる手段とすることができる。さらには、移動ローラ部30は、けん引のみならず、元押しでもよく、さらには、ローラ32に駆動源を備えて自走させてもよい。
また、回転切削刃14によって、所定の幅の切削スリット40cを形成したが、断面円形管40の肉厚部分40aを完全に貫通するように線状に切断する構成であってもよい。
【0045】
また、上述の説明では、内周面40bに押し当てる回転切削刃14の押し当て量を規制する深さゲージ15によって切削スリット40cの切削深さを規制したが、回転切削刃14による切削深さをセンサで検出し、回転切削刃14の内周面40bへの押し当てを制御する構成であってもよい。
【0046】
次に、エレメント挿入用管切削治具1aを用いて軌道200の下方に角型鋼製エレメント50を挿入して地下横断構造物300を構築するエレメント挿入工法について、図3乃至図10とともに説明する。
図3は軌道200の下方に構築する地下横断構造物300についての概略斜視図を示し、図4は軌道200の下方に構築する地下横断構造物300についての概略正面図を示し、図5は軌道200の下方に構築する地下横断構造物300についての概略縦断面図を示している。なお、図5は、複線の軌道200の中間部分、つまり挿入方向Xの中間部分を省略して図示している。
【0047】
また、図6は刃口60についての説明図を示し、図7は刃口60についての概略正面図を示し、図8は図6における要部拡大図を示している。なお、図6(a)は刃口60の側方からの縦断面図を示し、図6(b)は刃口60の平面方向の縦断面図を示している。また、図8(a)は図6(a)におけるd部拡大図を示し、図8(b)は図6(b)におけるe部拡大図を示している。
【0048】
さらに、図9はエレメント挿入工法において地山400にガイドパイプ用断面円形管40’を挿入した状態の概略正面図を示し、図10はエレメント挿入工法において、エレメント挿入用管切削治具1aと刃口60の挿入方向Xへの移動についての概略説明図を示している。
【0049】
エレメント挿入用管切削治具1aを用いて角型鋼製エレメント50を挿入して、下方に地下横断構造物300を構築する軌道200は、図3〜図5に示すように、地山400の上部に、路床401aと路盤401bとを盛土して盛土部401を構成し、盛土部401の上にバラスト402を締め固め、枕木202を長さ方向に等間隔で載置し、枕木202の上に軌条201を固定して構成している。
【0050】
軌道200を横断する方向(図5において左右方向)に構築する地下横断構造物300は、上床部300aが所定の土被りとなる位置で、地山400に構築される矩形断面のボックスである。なお、図3乃至図5において、連結した角型鋼製エレメント50がむき出したままの地下横断構造物300を図示しているが、地下横断構造物300の用途に応じて、地下横断構造物300の内部空間300bや端部に舗装やコンクリートを構築して地下横断構造物300を完成させる。
【0051】
このように、地下横断構造物300は、軌道200の横断方向両側に予め建て込んだ土留め壁(図示省略)を用いて掘り下げて構築した立坑420(420a,420b)間の軌道200下の地山400を貫通する構造物である。
【0052】
そして、地下横断構造物300は、図3及び図4に示すように、正面視横長四角形状に配置した角型鋼製エレメント50を連結し、その内部を掘削して構築している。
【0053】
角型鋼製エレメント50は、図4に示すように、略四角形型に形成され、後述する連結継手51で連結方向Z1に連結可能に構成するとともに、所定の長さに形成している。そして、所定の長さに形成した角型鋼製エレメント50を複数、長さ方向(挿入方向)Xにおいて、接続部材(図示省略)で接続して、地下横断構造物300の長さを確保する構成である。
【0054】
なお、連結方向Z1は、地下横断構造物300の上床部300a及び下床部を構成する角型鋼製エレメント50の場合、地下横断構造物300の幅方向と一致し、地下横断構造物300の側壁を構成する角型鋼製エレメント50の場合、地下横断構造物300の高さ方向と一致する。したがって、連結方向Z1に対して直交する交差方向Z2は、地下横断構造物300の上床部300a及び下床部を構成する角型鋼製エレメント50の場合、地下横断構造物300の高さ方向と一致し、地下横断構造物300の側壁を構成する角型鋼製エレメント50の場合、地下横断構造物300の幅方向と一致する。
【0055】
詳しくは、図4に示すように、連結方向Z1に対して直交する交差方向Z2に所定の間隔を隔てて配置する2枚のフランジ板52と、フランジ板52における連結方向Z1の両側で交差方向Z2に向いたウェブ板53とで断面四角形に構成している。
【0056】
なお、上述の角型鋼製エレメント50の長さ方向Xは、角型鋼製エレメント50の挿入方向X、並びにエレメント挿入用管切削治具1aの進行方向Xと一致する方向であるため、本明細書において同じ符号Xで示している。
【0057】
フランジ板52の両端には、図4のc部拡大図に示すように、略C型断面の連結継手51を備えている。詳しくは、フランジ板52の連結方向Z1の基端側に配置した基端側連結継手51aは、フランジ板52より交差方向Z2の外側に突出態様で略逆C型に形成されている。これに対し、フランジ板52の連結方向Z1の先端側に配置した先端側連結継手51bは、フランジ板52より交差方向Z2の内側に突出態様で略C型に形成されている。したがって、隣接する角型鋼製エレメント50同士は、既に挿入された挿入済みエレメント10’の先端側連結継手51bと、後で挿入する角型鋼製エレメント50の基端側連結継手51aとを嵌合させて連結している。
【0058】
また、ウェブ板53は、フランジ板52の先端側及び基端側において、連結継手51より連結方向Z1の適宜の間隔を隔てて配置されている。したがって、隣接する角型鋼製エレメント50同士の間には、挿入済みエレメント10’のウェブ板53と、後で挿入する角型鋼製エレメント50のウェブ板53と、フランジ板52の連結継手51によって囲まれた連結空間56を構成している。
【0059】
このように構成した角型鋼製エレメント50は、仮設構造物ではなく、地下横断構造物300の本体の構造部材として本設利用される。したがって、フランジ板52の交差方向Z2の間隔、つまりウェブ板53の交差方向Z2の長さは、内部空間55及び連結空間56に充填するコンクリートとともに、地下横断構造物300の上床部、下床部あるいは側壁として、作用する荷重に耐える間隔で構成されている。また、角型鋼製エレメント50の幅、つまりフランジ板52の連結方向Z1の長さは、構築する地下横断構造物300の高さや幅寸法に応じて割り付けて決定する。
【0060】
なお、上述の角型鋼製エレメント50の説明では、地下横断構造物300を構成する一般部の角型鋼製エレメント50について説明したが、図4に示すように、最初に地山400に挿入する基準エレメント50a、地下横断構造物300の隅角部を構成する隅角部エレメント50b、最後に挿入し、環状に閉合する調整エレメント50cは、以下に説明するように、上述の一般部の角型鋼製エレメント50とわずかに構成が異なる。
【0061】
最初に、地山400に挿入する基準エレメント50aは、基準エレメント50aを基準として左右両側に角型鋼製エレメント50を連結するため、フランジ板52の両端に先端側連結継手51bを備えるとともに、ウェブ板53が連結方向Z1の両側に配置される(図示省略)。逆に、最後に挿入し、環状に閉合する調整エレメント50cは、左右両側に挿入されている挿入済みエレメント10’の間において、両方の挿入済みエレメント10’に連結するため、フランジ板52の両側に基端側連結継手51aを備えるとともに、ウェブ板53が連結方向Z1の両側に配置される(図示省略)。
【0062】
隅角部エレメント50bは、連結方向が基端側連結継手51aのある基端側に対して直交するため、先端側連結継手51bが、交差方向Z2であるウェブ板53の延長上に配置される。
【0063】
なお、上述の説明では、一般部の角型鋼製エレメント50、基準エレメント50a、隅角部エレメント50b及び調整エレメント50cで断面横長四角形状の地下横断構造物300を構築することについて説明しているが、基準エレメント50aと隅角部エレメント50bとで横一文字状配置、または縦一列配置、あるいは角型鋼製エレメント50、基準エレメント50a、及び隅角部エレメント50bでT字状配置、門型配置またはL型配置にして地下横断構造物300を構築してもよい。さらには、台形断面や帯状円弧型の角型鋼製エレメント50、基準エレメント50a及び調整エレメント50cを用いて、円形断面や円弧状断面の地下横断構造物300を構築してもよい。
【0064】
このような構成の角型鋼製エレメント50(以下において、角型鋼製エレメント50には、矛盾がない限り基準エレメント50a、隅角部エレメント50b及び調整エレメント50cを含むものとする)は、図6に示すような刃口60を、角型鋼製エレメント50の長さ方向Xの先端に装着し、刃口60内部で掘削作業員が掘削する人力掘削によって、刃口60の前方の地山400を掘削しながら、到達側立坑420bから1次けん引ワイヤー(図示省略)でけん引して地山400に挿入する。
【0065】
刃口60は、角型鋼製エレメント50と略同じ正面形状を有する刃口本体部61と、刃口本体部61の上面が前方(図6において左方向)に突出する板状の刃先板62と、刃先板62の前方において刃先板62に対して平行に循環するワイヤーソー63を駆動するワイヤーソー装置64とで構成する。そして、ワイヤーソー装置64は刃口本体部61内部に配置され、刃先板62の幅方向外側の少し前方には、ワイヤーソー装置64で回転駆動するワイヤーソー63の方向を変換する回転プーリー63aを備えている。
【0066】
なお、刃口60の構成や角型鋼製エレメント50との接続方法、並びにワイヤーソー63及びワイヤーソー装置64についての詳しい構成は、出願人らによって出願された発明(特開2010―174542号公報)に開示されているため、詳細な説明を省略する。
【0067】
このように刃口60を、到達側立坑420bから1次けん引ワイヤー(図示省略)でけん引すると、ワイヤーソー63で刃先板62の前方の地山400を切削し、ワイヤーソー63によって切削された地山の切削跡に刃先板62を挿入することができる。
【0068】
なお、刃口60における回転プーリー63aは、あらかじめ地山400に挿入方向Xに挿通されたガイドパイプとして機能するガイドパイプ用断面円形管40’内部に配置されている。詳しくは、図7に示すように、刃口60の刃先板62の挿入を許容する切削跡を形成するためのワイヤーソー63の方向を変換する回転プーリー63aは、上述したように、刃口60の刃先板62の幅方向外側かつ少し前方に配置され、回転プーリー63aと地山400との接触を防止するための左右のガイドパイプ用断面円形管40’内に配置される。
【0069】
さらに、それぞれの回転プーリー63aの前方には、管切削治具1の移動ローラ部30とほぼ同様の構成で構成した刃口用移動ローラ部30aが固定され、そのさらに前方には、エレメント挿入用管切削治具1aが配備されている。
【0070】
エレメント挿入用管切削治具1aは、図8に示すように、上述の管切削治具1の構成に加え、進行方向Xの後側の移動ローラ部30の支持フレーム31から、刃口用移動ローラ部30aに向かって突出する平板状のローリング防止バー36と、進行方向Xの後側の移動ローラ部30の支持フレーム31から、刃口用移動ローラ部30aの前側までの離間距離を検知する刃口離間検知器37を備えている。
【0071】
刃口離間検知器37は、さや管37aと伸縮棒37bとの二重構造となっており、伸縮棒37b先端に設けたマグネット37cによって、進行方向Xの後側の移動ローラ部30の支持フレーム31から、刃口用移動ローラ部30a前側までの離間距離を検知する構成である。
【0072】
ローリング防止バー36は、進行方向Xに長い板状であり、後端が先絞り形状となり、刃口用移動ローラ部30aの前面に備えた挿入口部38に挿通可能である(図1(d)参照)。
【0073】
なお、エレメント挿入用管切削治具1aにおける切削カッタ12の回転切削刃14は、後方で、地山400とともにガイドパイプ用断面円形管40’における幅方向内側の肉厚部分40aをワイヤーソー63の切断予定箇所を切削し、切削スリット40cを形成するよう位置調整し、ガイドパイプ用断面円形管40’の肉厚部分40aの厚さのうち3割程度を残して切削するように深さゲージ15で調整している。
【0074】
また、ガイドパイプ用断面円形管40’においてエレメント挿入用管切削治具1aは、ガイドパイプ用断面円形管40’内に挿通され、前方の支持フレーム31に接続されたけん引ワイヤ35によって到達側立坑420bにけん引されるが、回転プーリー63aは、上述したように、1次けん引ワイヤによって到達側立坑420bにけん引される刃口60に伴って到達側立坑420bに向かって移動する。
【0075】
このように、エレメント挿入用管切削治具1aと回転プーリー63aとは、それぞれ独立したけん引力によって到達側立坑420bに向かってけん引され移動するが、エレメント挿入用管切削治具1aの後ろ側の移動ローラ部30に備えたローリング防止バー36は、刃口用移動ローラ部30aの挿入口部38に進行方向Xに相対移動可能に挿通されているため、エレメント挿入用管切削治具1aは、回転プーリー63aに対して進行方向Xにおいて相対移動可能である。
【0076】
これに対し、ローリング防止バー36は挿入口部38に挿通されており、ローリング防止バー36は、挿入口部38によってガイドパイプ用断面円形管40’の管軸方向に対する回転方向を規制されている。
【0077】
したがって、刃口60の幅方向外側に配置され、回転しない回転プーリー63aの前方に固定された刃口用移動ローラ部30aにより、エレメント挿入用管切削治具1aは回転移動することなく、ワイヤーソー63による切断予定箇所を正確に回転切削刃14で切削し、切削スリット40cを形成することができる。
【0078】
また、エレメント挿入用管切削治具1aと回転プーリー63aとは、それぞれ独立したけん引力によって到達側立坑420bに向かってけん引され移動するとともに、後ろ側の移動ローラ部30に備えたローリング防止バー36は、刃口用移動ローラ部30aの挿入口部38に進行方向Xに相対移動可能に挿通されているため、例えば、摩耗した回転切削刃14を交換するために、エレメント挿入用管切削治具1aのみを到達側立坑420bに引っ張り出して回転切削刃14を交換し、再度、到達側立坑420bからエレメント挿入用管切削治具1aを挿入することができる。
【0079】
このように構成したエレメント挿入用管切削治具1aを用いた刃口60によるエレメント挿入工法の施工順序について図9及び図10とともに説明する。
まず、図9に示すように、地下横断構造物300を構築する構築予定断面300’における上床部300a’の回転プーリー63a通過部分にガイドパイプ用断面円形管40’をあらかじめ挿通する。
【0080】
なお、図9には、上床部300a’における全数のガイドパイプ用断面円形管40’を挿通しているが、最初に基準エレメント50aの両側2本のガイドパイプ用断面円形管40’を挿通し、基準エレメント50aを挿入完了してから順次ガイドパイプ用断面円形管40’を挿通する順序でもよく、また、角型鋼製エレメント50の挿入施工とともに、次やその次に挿入する角型鋼製エレメント50用のガイドパイプ用断面円形管40’を挿通してもよい。
【0081】
次に、2本のガイドパイプ用断面円形管40’に対してエレメント挿入用管切削治具1a及び、角型鋼製エレメント50に装着した刃口60をセットする(図10(a)参照)。
そして、図10(b)に示すように、まずガイドパイプ用断面円形管40’に挿通したけん引ワイヤ35を到達側立坑420b側からけん引し、エレメント挿入用管切削治具1aを進行方向Xに移動させる。このとき、エレメント挿入用管切削治具1aの回転切削刃14で、後方でガイドパイプ用断面円形管40’を切削するワイヤーソー63の切削箇所の内周面40bを切削し、切削スリット40cを形成する。なお、切削スリット40cの切削深さは、深さゲージ15(図2参照)によって、肉厚部分40aの厚みの3割程度を残すように調整している。
【0082】
また、エレメント挿入用管切削治具1aのローリング防止バー36が、刃口用移動ローラ部30aの挿入口部38に挿通しているため、エレメント挿入用管切削治具1aはガイドパイプ用断面円形管40’内で回転せずに移動し、回転切削刃14で所望の位置を切削し、精度のよい切削スリット40cを形成することができる。
【0083】
続いて、図10(c)に示すように、到達側立坑420b側から1次けん引ワイヤで刃口60をけん引し、回転切削刃14で切削した切削スリット40cを、ガイドパイプ用断面円形管40’同士の間の地山400とともに、ワイヤーソー63で切断しながら移動し、ワイヤーソー63で切削した地山400及びガイドパイプ用断面円形管40’の切削箇所に刃先板62を挿入するとともに、刃口60内部から地山400を掘削しながら角型鋼製エレメント50を挿入する。
【0084】
角型鋼製エレメント50の先端が到達側立坑420bに到達するまでこれを繰り返し、角型鋼製エレメント50の挿入を完了させる。また、既に挿入した角型鋼製エレメント50の基端側連結継手51aに連結継手51を嵌合させながら、次の角型鋼製エレメント50を上述の施工手順で施工し、地下横断構造物300を構築する全角型鋼製エレメント50の挿入を完了させ、角型鋼製エレメント50の内部空間55及び連結空間56にコンクリートを充填し、角型鋼製エレメント50で囲った内部空間300bを掘削し、地下横断構造物300を完成させる。
【0085】
このように、エレメント挿入用管切削治具1aを用いた刃口60によるエレメント挿入工法では、ワイヤーソー63で地山400とともに切削するガイドパイプ用断面円形管40’の肉厚部分40aをあらかじめエレメント挿入用管切削治具1aで切削し、切削スリット40cを形成しているため、肉厚部分40aの厚みが薄くなった切削スリット40cを切断する際のワイヤーソー63に作用する切削負荷が低減する。したがって、ワイヤーソー63の摩耗が低減するとともに、ワイヤーソー63の破断を防止できる。よって、ワイヤーソー63の摩耗やワイヤーソー63の破断による段取替えの手間を低減でき、効率よい施工を実現することができる。
【0086】
また、2本のガイドパイプ用断面円形管40’の間の地山400を、ワイヤーソー63で切断し、ワイヤーソー63で切断した切断箇所に刃先板62を効率よく挿入することができるため、軌道200直下の地下横断構造物300の構築において、下方での掘削等による地山400の応力解放による影響が直上の軌道200等の上部構造に及ぶことを防止できる。
【0087】
また、刃口用移動ローラ部30aに対するエレメント挿入用管切削治具1aの進行方向Xの相対移動を許容するとともに、ガイドパイプ用断面円形管40’の管軸方向における相対回転を規制するために、移動ローラ部30に固定されたローリング防止バー36の挿入を許容する挿入口部38を刃口用移動ローラ部30aに備えたことにより、刃口用移動ローラ部30aによって走行するワイヤーソー63に対する相対回転を規制しながらエレメント挿入用管切削治具1aでガイドパイプ用断面円形管40’の内周面40bを切削し、切削スリット40cを形成することができる。したがって、確実に、ワイヤーソー63によって切断するガイドパイプ用断面円形管40’の切断予定箇所を切削し、精度のよい切削スリット40cを形成することができる。
【0088】
また、刃口用移動ローラ部30aとのエレメント挿入用管切削治具1aの進行方向Xの相対距離を計測する刃口離間検知器37を備えたことにより、刃口用移動ローラ部30aとのエレメント挿入用管切削治具1aとが接触し、例えば、ワイヤーソー63とエレメント挿入用管切削治具1aとが相互に支障し、損傷することを防止できる。
なお、上述の説明では矩形断面の角型鋼製エレメント50について説明したが、台形断面などの様々な断面形状の鋼製エレメント50であってもよい。
【0089】
また、上述の説明では、角型鋼製エレメント50の挿入方向Xの全延長において、ワイヤーソー63で地山400を切断する施工方法で説明したが、例えば、軌道200の直下部分のみワイヤーソー63で地山400を切削し、それ以外の部分については、ワイヤーソー63を稼働させずに施工してもよい。これにより、ワイヤーソー63の切削延長を低減できるため、ワイヤーソー63の摩耗を低減できる。この場合であっても、ガイドパイプ用断面円形管40’をエレメント挿入用管切削治具1aで切削し、切削スリット40cを形成しているため、ワイヤーソー63が駆動しない区間においても刃口60が移動できる。
【0090】
また、上述の説明では、角型鋼製エレメント50を挿入するための刃口60の刃先板62を、ワイヤーソー63で切削した地山400の切削跡に挿入したが、例えば、出願人らによって出願された発明(特開2005―336865号公報)に開示しているワイヤーソーで地山を切削し、その切削部に防護プレートを挿入してから、その下方を、支持しながら掘削し、地下横断構造物300を構築する車両走行路下の地山防護工法を用いた地下横断構造物構築工法に適用してもよい。
【0091】
この場合であっても、防護プレートを挿入する切削部を切削するワイヤーソーの挿通を許容するガイドパイプを必要とするため、本発明の管切削治具1を用いることにより、ガイドパイプ用断面円形管におけるワイヤーソーの切断箇所を予め管切削治具1で切削できるため、ガイドパイプ用断面円形管を切断する際のワイヤーソーに作用する切削負荷が低減することができる。
【0092】
したがって、ワイヤーソーの摩耗が低減するとともに、ワイヤーソーの破断を防止できる。よって、ワイヤーソーの摩耗やワイヤーソーの破断による段取替えの手間を低減でき、効率よい施工を実現することができる。
【0093】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、この発明の管及び円形埋設管は、断面円形管40あるいはガイドパイプ用断面円形管40’に対応し、
以下同様に、
長手方向は、進行方向Xに対応し、
移動手段は、移動ローラ部30に対応し、
管内面は、内周面40bに対応し、
切削部は、回転切削刃14に対応し、
管内面切削手段は、切削カッタ12に対応し、
管切削治具は、管切削治具1あるいはエレメント挿入用管切削治具1aに対応し、
転動手段は、ローラ32に対応し、
けん引手段は、けん引ワイヤ35に対応し、
切削深さ設定手段は、深さゲージ15に対応し、
板材あるいは天板は、刃先板62に対応し、
走行手段は、刃口用移動ローラ部30aに対応し、
回転規制手段は、エレメント挿入用管切削治具1aの移動ローラ部30に備えたローリング防止バー36と、刃口用移動ローラ部30aに設けた挿入口部38に対応し、
相対距離計測手段は、刃口離間検知器37に対応し、
エレメントは、角型鋼製エレメント50、基準エレメント50a、隅角部エレメント50bあるいは調整エレメント50cに対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0094】
ワイヤーソー63及びエレメント挿入用管切削治具1aによるガイドパイプ用断面円形管40’の切削屑を、ガイドパイプ用断面円形管40’の外部に排出するバキュームを管切削治具1にセットしてもよい。バキュームにより、切削屑が回転切削刃14における切削箇所にたまって切削効率が低下することを防止できる。
【符号の説明】
【0095】
1…管切削治具
1a…エレメント挿入用管切削治具
12…切削カッタ
14…回転切削刃
15…深さゲージ
30…移動ローラ部
30a…刃口用移動ローラ部
32…ローラ
35…けん引ワイヤ
36…ローリング防止バー
37…刃口離間検知器
38…挿入口部
40…断面円形管
40’…ガイドパイプ用断面円形管
40b…内周面
50…角型鋼製エレメント
50a…基準エレメント
50b…隅角部エレメント
50c…調整エレメント
62…刃先板
63…ワイヤーソー
400…地山
X…進行方向,挿入方向
【技術分野】
【0001】
例えば、断面円形の管を内側から切削する管切削治具、並びに当該管切削治具を用いた板材挿入工法及びエレメント挿入工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、断面円形の管を断面方向に切断することは多くあり、自動化するための様々な装置や施工方法が提案されている。
しかし、長尺状の管を長手方向に切断する装置や施工方法は少なく、さらには、工場外の現場で管を長手方向に切断する装置や施工方法はほとんどなく、これまではサンダー等の切断装置を用いた施工者の手作業によって行われていた。そのため、その精度は施工者の技能に左右されていた。
【0003】
また、管を長手方向に切断する場合、通常、管外面から施工するため、例えば、既に装置に装着された管を切断する場合等は施工できなかった。
例えば、特許文献1には、切断刃を強制的にけん引して埋設管を長手方向に切断する方法について提案されているが、この方法は、埋設管を断面方向に複数に分割して撤去することを目的としており、管外径を保ちながら、管の周方向における一部の肉厚部分を長手方向に薄くする加工などはできなかった。また、上記施工方法は、切断刃を強制的にけん引して埋設管を切断するため、厚肉の管には対応できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−083472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、この発明は、長尺状の管を精度よく、内面側から切削することができる管切削治具、該管切削治具を用いた板材挿入工法及びエレメント挿入工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、長尺状の管内部を長手方向に移動する移動手段と、該移動手段によって移動し、駆動部によって駆動する切削部を管内面に押し当てて、前記長手方向に前記管内面を切削する管内面切削手段とを備えた管切削治具であることを特徴とする。
【0007】
上記の長尺状の管は、管内面切削手段の通過を許容する内部空間を有し、普通人の腕の長さより長い管とすることができる。また上述の管は、円形、楕円形、略矩形等様々な断面形状の管を含むとともに、管内面切削手段で切削可能な素材で構成された管とすることができる。
【0008】
上記移動手段は、ローラ等の転動、キャタピラ等の走行手段、あるいは歩行手段等の管内面を長手方向に移動することのできる手段とすることができる。さらには、移動手段は、けん引や元押しを駆動源とし移動する手段、あるいはモータ等の駆動源を備えて自力で移動することのできる手段とすることができる。
上記切削は、内面側から管の肉厚の一部のみを切削すること、肉厚部分を貫通させて完全に切断することを含み、さらには幅を持って切削、切断してもよい。
【0009】
この発明により、長尺状の管を精度よく、内面側から切削することができる。
詳しくは、駆動部によって駆動する切削部を管内面に押し当てて、前記長手方向に前記管内面を切削する管内面切削手段を備えたことにより、例えば、切断刃を強制的にけん引して管内面から管を切断する場合と比較し、精度よく所望の切削態様で切削することができる。また、管内面切削手段が、長尺状の管内部を長手方向に移動する移動手段によって移動できるため、長尺状の管内面を長手方向に沿って切削することができる。なお、例えば、切削条件を設定する設定手段等を備えた場合、管外径を保ちながら、管の周方向における一部の肉厚部分を長手方向に薄くする加工をすることもできる。
【0010】
この発明の態様として、前記移動手段を、前記管内面を転動する転動手段と、移動方向前方からけん引するけん引手段とで構成することができる。
上記転動手段は、ローラや車輪で構成することができるが、例えば、円形断面の場合、円形断面の内周面に対して3以上の転動手段で転動する構成がより好ましい。
【0011】
この発明により、長尺状の管をより精度よく、内面側から切削することができる。
詳しくは、駆動部によって駆動する切削部を管内面に押し当てて、前記長手方向に前記管内面を切削する管内面切削手段を、長尺状の管内部に転動手段をセットし、けん引手段によって移動方向前方から転動手段をけん引するため、長尺状の管内部にセットした管内面切削手段の移動方向や移動速度をけん引状況によって調整できるため、長尺状の管を内面側から、より精度よく切削することができる。
【0012】
またこの発明の態様として、前記管を、地中に埋設した断面円形の円形埋設管で構成し、前記管内面切削手段に、前記円形埋設管の肉厚に対する前記切削部による切削深さを設定する切削深さ設定手段を備えることができる。
【0013】
上記切削深さ設定手段は、管内面に押し当てる管内面切削手段の押し当て量を規制するゲージや、切削部による切削深さをセンサで検出しながら管内面切削手段の管内面への押し当て量を制御する制御手段等で構成することができる。
【0014】
この発明により、埋設されているため管外部から長手方向に切削することができない円形埋設管に対して、管内部に配置した管内面切削手段で管の内側から管を切削することができる。
また、埋設されている円形埋設管に対して、管外径を保ちながら、管の周方向における一部の肉厚部分を長手方向に薄く加工したり、切断したりすることができる。したがって、完全に切削することによって土圧により管がつぶれたり、周辺の地山の土や水が管内部に侵入することを防止できる。
【0015】
またこの発明は、2本の前記円形埋設管の間の地山を、前記円形埋設管のそれぞれを通るワイヤーソーで、前記円形埋設管の対向部分とともに切断するとともに、前記長手方向に移動し、該ワイヤーソーで切断した切断箇所に板材を挿入する板材挿入工法において、前記ワイヤーソーに、前記円形埋設管の内部において長手方向に走行する走行手段を備え、前記ワイヤーソーの進行方向前方に、上述の管切削治具を配置し、該管切削治具で、前記ワイヤーソーによって切断する前記円形埋設管の切断予定箇所を切削することを特徴とする。
【0016】
この発明により、2本の前記円形埋設管の間の地山を、ワイヤーソーで切断し、ワイヤーソーで切断した切断箇所に板材を効率よく挿入することができる。
詳しくは、該管切削治具で、前記ワイヤーソーによって切断する前記円形埋設管の切断予定箇所を切削することにより、高価なワイヤーソーが不用意に破断するリスクや摩耗量を大幅に低減することができる。さらには、例えば、線路直下のアンダーパス構造の構築において、ワイヤーソーで切断した切断箇所にあらかじめ板材を挿入することで、下方での掘削等による地盤の応力解放による影響が直上の線路等の上部構造に及ぶことを防止できる。
【0017】
この発明の態様として、前記走行手段に対する前記管切削治具の前記長手方向の相対移動を許容するとともに、前記円形埋設管の管軸方向における相対回転を規制する回転規制手段を備えることができる。
【0018】
この発明により、走行手段によって走行するワイヤーソーに対する相対回転を規制しながら管切削治具で管内面を切削することができる。したがって、確実に、ワイヤーソーによって切断する前記円形埋設管の切断予定箇所を切削することができる。
【0019】
詳しくは、前記円形埋設管の円形断面において管切削治具がワイヤーソーに対して相対回転すると、ワイヤーソーによって切断する前記円形埋設管の切断予定箇所を切削することができなくなる。しかし、回転規制手段によってワイヤーソーに備えた走行手段に対して管軸方向における相対回転を規制することができるため、確実に、ワイヤーソーによって切断する前記円形埋設管の切断予定箇所を切削することができる。
【0020】
また、回転規制手段は、ワイヤーソーに備えた走行手段に対する管切削治具の前記長手方向の相対移動を許容するため、管切削治具による管の長手方向切削速度と、ワイヤーソーによる管の長手方向切断速度とが異なる場合であっても、一方の長手方向の移動に応じて他方の移動を容易に調整することができる。
【0021】
またこの発明の態様として、前記走行手段との前記管切削治具の前記長手方向の相対距離を計測する相対距離計測手段を備えることができる。
この発明により、ワイヤーソーと管切削治具とが相互に支障することなく、管を内側から管切削治具で切削し、管切削治具による切削跡をワイヤーソーで切断することができる。
【0022】
詳しくは、回転規制手段によって、ワイヤーソーに備えた走行手段に対する管切削治具の前記長手方向の相対移動を許容するが、前記走行手段との前記管切削治具の前記長手方向の相対距離を計測する相対距離計測手段を備えることにより、走行手段との管切削治具とが接触し、例えば、ワイヤーソーと管切削治具とが相互に支障し、損傷することを防止できる。
【0023】
またこの発明の態様として、前記ワイヤーソー及び前記管切削治具による前記円形埋設管の切削屑を、前記円形埋設管の外部に排出する切削屑排出手段を備えることができる。
この発明により、切削屑が切削部における切削箇所にたまって切削効率が低下することを防止できる。
【0024】
さらにまたこの発明は、上部に天板を有する閉断面形状のエレメントを地山に挿入し、エレメント内部を掘削するエレメント挿入工法であり、前記天板を、前記エレメント挿入方向前端より前方に突出する構成とし、前記天板を、上述の板材挿入工法における前記板材としたことを特徴とする。
【0025】
上記閉断面形状のエレメントは、矩形断面、台形断面などの様々な断面形状を含むものとする。
上記エレメント挿入方向前端より前方に突出する構成の天板は、エレメントの挿入方向前端のみならず、エレメントの挿入方向前側に装着した刃口の挿入方向前端を含むものとする。
【0026】
この発明により、例えば、線路直下において、エレメントを挿入する際に、エレメント挿入方向前端より前方に突出する天板を、ワイヤーソーで切断された地盤にあらかじめ挿入できるため、エレメント挿入のための掘削等による地盤の応力解放による影響が直上の線路等の上部構造に及ぶことなく、エレメントを挿入することができる。
【発明の効果】
【0027】
この発明によれば、長尺状の管を精度よく、内面側から切削できる管切削治具、該管切削治具を用いた板材挿入工法及びエレメント挿入工法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】管切削治具についての説明図。
【図2】管切削治具についての説明図。
【図3】軌道下に構築する地下横断構造物の概略斜視図。
【図4】同状態の概略正面図。
【図5】同状態の概略縦断面図。
【図6】刃口についての説明図。
【図7】刃口についての概略正面図。
【図8】図6における要部拡大図による説明図。
【図9】エレメント挿入工法について説明する概略正面図。
【図10】エレメント挿入工法について説明する概略説明図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
この発明の一実施形態を以下図面とともに説明する。
まず、管切削治具1の説明図を示す図1及び図2とともに、管切削治具1について説明する。なお、図1(a)は管切削治具1の平面図を示し、図1(b)は管切削治具1の側面図を示し、図1(c)は管切削治具1の正面図を示し、図1(d)は刃口用移動ローラ部30aの正面図を示している。
【0030】
また、図2(a),(b)は図1(a)のa部について回転切削刃14を透過状態の点線で表した拡大図を示し、図2(c)は図1(b)のb部の拡大図を示している。なお、図2(a)は断面円形管40の肉厚部分40aを貫通する切削状態の拡大図を示し、図2(b)は深さゲージ15で、断面円形管40の肉厚部分40aに対する切削深さを規制した切削状態の拡大図を示している。
【0031】
管切削治具1は、切削治具本体10と、該切削治具本体10の進行方向Xの前後に備えた移動ローラ部30と、進行方向Xの前方の移動ローラ部30に接続したけん引ワイヤ35とで構成している。
けん引ワイヤ35は、断面円形管40の進行方向Xの前方(以下において到達側という)に配置されたけん引用ウィンチ(図示省略)に接続され、けん引用ウィンチの巻取りによって、切削治具本体10を到達側にけん引する。
【0032】
移動ローラ部30は、進行方向Xの前後に配置した支持フレーム31と、前後の支持フレーム31の間で支持するローラ32とで構成している。
支持フレーム31は、図1(c)に示すように、回転切削刃14が断面円形管40の肉厚部分40aを切削する側を正面視円弧状とし、反対側において斜め上下方向にそれぞれ延びる部分を備え、正面視Xの位置において、断面円形管40の内周面40bを進行方向Xに転動するローラ32を備えている。
【0033】
切削治具本体10は、進行方向Xに長いベースプレート11と、ベースプレート11上に配置され、進行方向Xの後方に回転切削刃14を備えた切削カッタ12と、切削カッタ12の進行方向Xの前後のそれぞれを断面円形管40の内周面40bに押し当てる2台の押圧スライダ13と、押圧スライダ13によって断面円形管40の内周面40bに押し当てられる押し当て量を規制する深さゲージ15とを備えている。
【0034】
切削カッタ12は、空気圧によって、回転切削刃14をY方向(図2(a),(b)参照)に回転するエアーラチェットで構成しているが、電気で回転駆動するベビーサンダーや、油圧モータで回転駆動する油圧サンダー等を用いてもよい。なお、切削カッタ12は、ベースプレート11上において、断面円形管40の幅方向にスライド自在に固定されている。
【0035】
また、切削カッタ12によって回転する回転切削刃14は、所望の切削幅に応じた厚みを有するとともに、切削カッタ12の回転方向に回転することで断面円形管40の肉厚部分40aを切削できる刃で構成している。
【0036】
押圧スライダ13は、断面円形管40の幅方向にスライド自在に固定された切削カッタ12を断面円形管40の内周面40bに押し付けるスライダであり、空気圧によって伸縮するエアジャッキで構成しており、前後の押圧スライダ13は同調して切削カッタ12を断面円形管40の内周面40bに押し付ける構成である。
【0037】
深さゲージ15は、回転切削刃14の上方における断面円形管40の内周面40b側に向く態様で切削カッタ12に固定され、ベースプレート11に対する切削カッタ12のスライド方向に位置調整可能に構成している。なお、断面円形管40の内周面40bに当接する当接面15aは平面視円弧状に形成している。
【0038】
管切削治具1をこのように構成することにより、断面円形管40の内周面40bを精度よく切削し、精度のよい切削スリット40cを形成することができる。
詳しくは、内周面40bに押し当てるとともに、駆動部による回転切削刃14の駆動によって進行方向Xに内周面40bを切削する切削カッタ12を備えたことにより、例えば、切断刃を強制的にけん引して管内側から断面円形管40を切断する場合と比較し、精度よく所望の切削態様で切削し、精度のよい切削スリット40cを形成することができる。
【0039】
また、切削カッタ12が、長尺状の断面円形管40の内部を進行方向Xに移動し、内周面40bを転動するローラ32と、移動方向前方からけん引するけん引ワイヤ35とを備えた移動ローラ部30によって移動できるため、長尺状の内周面40bを進行方向Xに沿って切削し、切削スリット40cを形成することができる。
【0040】
詳しくは、内周面40bに押し当てるとともに、駆動部による回転切削刃14の駆動によって進行方向Xに内周面40bを切削する切削カッタ12を、長尺状の断面円形管40の内部にセットし、けん引ワイヤ35によって進行方向Xの前方からローラ32をけん引するため、長尺状の断面円形管40の内部に配置したローラ32とともに切削カッタ12の移動速度をけん引状況によって制御でき、より精度よく、断面円形管40の内周面40bから切削し、切削スリット40cを形成することができる。
【0041】
また切削カッタ12に、断面円形管40の内周面40bに対する回転切削刃14による切削深さを設定する深さゲージ15を備えたことにより、断面円形管40の外径を保ちながら、断面円形管40の周方向における一部の肉厚部分40aを進行方向Xに薄く加工し、切削スリット40cを形成することができる。
また、断面円形管40の外部から進行方向Xに切削することができない埋設された断面円形管40であっても、断面円形管40の内部に配置した切削カッタ12で断面円形管40の内側から断面円形管40を切削し、切削スリット40cを形成することができる。
【0042】
したがって、埋設されている断面円形管40に対して、管外径を保ちながら、管の周方向における一部の肉厚部分40aの厚みが薄くなった切削スリット40cを形成し、完全に切削することによって土圧により断面円形管40がつぶれたり、周辺の地山の土や水が管内部に侵入することを防止できる。
【0043】
なお、上述の説明では円形断面の断面円形管40について説明したが、円形のみならず、楕円形、略矩形等様々な断面形状の管についても、切削カッタ12で切削可能な素材であれば切削することができる。
【0044】
さらに、管切削治具1を移動するための手段としてローラ32を備えた移動ローラ部30について説明したが、駆動源を備えたキャタピラや歩行手段等の内周面40bを進行方向Xに移動することのできる手段とすることができる。さらには、移動ローラ部30は、けん引のみならず、元押しでもよく、さらには、ローラ32に駆動源を備えて自走させてもよい。
また、回転切削刃14によって、所定の幅の切削スリット40cを形成したが、断面円形管40の肉厚部分40aを完全に貫通するように線状に切断する構成であってもよい。
【0045】
また、上述の説明では、内周面40bに押し当てる回転切削刃14の押し当て量を規制する深さゲージ15によって切削スリット40cの切削深さを規制したが、回転切削刃14による切削深さをセンサで検出し、回転切削刃14の内周面40bへの押し当てを制御する構成であってもよい。
【0046】
次に、エレメント挿入用管切削治具1aを用いて軌道200の下方に角型鋼製エレメント50を挿入して地下横断構造物300を構築するエレメント挿入工法について、図3乃至図10とともに説明する。
図3は軌道200の下方に構築する地下横断構造物300についての概略斜視図を示し、図4は軌道200の下方に構築する地下横断構造物300についての概略正面図を示し、図5は軌道200の下方に構築する地下横断構造物300についての概略縦断面図を示している。なお、図5は、複線の軌道200の中間部分、つまり挿入方向Xの中間部分を省略して図示している。
【0047】
また、図6は刃口60についての説明図を示し、図7は刃口60についての概略正面図を示し、図8は図6における要部拡大図を示している。なお、図6(a)は刃口60の側方からの縦断面図を示し、図6(b)は刃口60の平面方向の縦断面図を示している。また、図8(a)は図6(a)におけるd部拡大図を示し、図8(b)は図6(b)におけるe部拡大図を示している。
【0048】
さらに、図9はエレメント挿入工法において地山400にガイドパイプ用断面円形管40’を挿入した状態の概略正面図を示し、図10はエレメント挿入工法において、エレメント挿入用管切削治具1aと刃口60の挿入方向Xへの移動についての概略説明図を示している。
【0049】
エレメント挿入用管切削治具1aを用いて角型鋼製エレメント50を挿入して、下方に地下横断構造物300を構築する軌道200は、図3〜図5に示すように、地山400の上部に、路床401aと路盤401bとを盛土して盛土部401を構成し、盛土部401の上にバラスト402を締め固め、枕木202を長さ方向に等間隔で載置し、枕木202の上に軌条201を固定して構成している。
【0050】
軌道200を横断する方向(図5において左右方向)に構築する地下横断構造物300は、上床部300aが所定の土被りとなる位置で、地山400に構築される矩形断面のボックスである。なお、図3乃至図5において、連結した角型鋼製エレメント50がむき出したままの地下横断構造物300を図示しているが、地下横断構造物300の用途に応じて、地下横断構造物300の内部空間300bや端部に舗装やコンクリートを構築して地下横断構造物300を完成させる。
【0051】
このように、地下横断構造物300は、軌道200の横断方向両側に予め建て込んだ土留め壁(図示省略)を用いて掘り下げて構築した立坑420(420a,420b)間の軌道200下の地山400を貫通する構造物である。
【0052】
そして、地下横断構造物300は、図3及び図4に示すように、正面視横長四角形状に配置した角型鋼製エレメント50を連結し、その内部を掘削して構築している。
【0053】
角型鋼製エレメント50は、図4に示すように、略四角形型に形成され、後述する連結継手51で連結方向Z1に連結可能に構成するとともに、所定の長さに形成している。そして、所定の長さに形成した角型鋼製エレメント50を複数、長さ方向(挿入方向)Xにおいて、接続部材(図示省略)で接続して、地下横断構造物300の長さを確保する構成である。
【0054】
なお、連結方向Z1は、地下横断構造物300の上床部300a及び下床部を構成する角型鋼製エレメント50の場合、地下横断構造物300の幅方向と一致し、地下横断構造物300の側壁を構成する角型鋼製エレメント50の場合、地下横断構造物300の高さ方向と一致する。したがって、連結方向Z1に対して直交する交差方向Z2は、地下横断構造物300の上床部300a及び下床部を構成する角型鋼製エレメント50の場合、地下横断構造物300の高さ方向と一致し、地下横断構造物300の側壁を構成する角型鋼製エレメント50の場合、地下横断構造物300の幅方向と一致する。
【0055】
詳しくは、図4に示すように、連結方向Z1に対して直交する交差方向Z2に所定の間隔を隔てて配置する2枚のフランジ板52と、フランジ板52における連結方向Z1の両側で交差方向Z2に向いたウェブ板53とで断面四角形に構成している。
【0056】
なお、上述の角型鋼製エレメント50の長さ方向Xは、角型鋼製エレメント50の挿入方向X、並びにエレメント挿入用管切削治具1aの進行方向Xと一致する方向であるため、本明細書において同じ符号Xで示している。
【0057】
フランジ板52の両端には、図4のc部拡大図に示すように、略C型断面の連結継手51を備えている。詳しくは、フランジ板52の連結方向Z1の基端側に配置した基端側連結継手51aは、フランジ板52より交差方向Z2の外側に突出態様で略逆C型に形成されている。これに対し、フランジ板52の連結方向Z1の先端側に配置した先端側連結継手51bは、フランジ板52より交差方向Z2の内側に突出態様で略C型に形成されている。したがって、隣接する角型鋼製エレメント50同士は、既に挿入された挿入済みエレメント10’の先端側連結継手51bと、後で挿入する角型鋼製エレメント50の基端側連結継手51aとを嵌合させて連結している。
【0058】
また、ウェブ板53は、フランジ板52の先端側及び基端側において、連結継手51より連結方向Z1の適宜の間隔を隔てて配置されている。したがって、隣接する角型鋼製エレメント50同士の間には、挿入済みエレメント10’のウェブ板53と、後で挿入する角型鋼製エレメント50のウェブ板53と、フランジ板52の連結継手51によって囲まれた連結空間56を構成している。
【0059】
このように構成した角型鋼製エレメント50は、仮設構造物ではなく、地下横断構造物300の本体の構造部材として本設利用される。したがって、フランジ板52の交差方向Z2の間隔、つまりウェブ板53の交差方向Z2の長さは、内部空間55及び連結空間56に充填するコンクリートとともに、地下横断構造物300の上床部、下床部あるいは側壁として、作用する荷重に耐える間隔で構成されている。また、角型鋼製エレメント50の幅、つまりフランジ板52の連結方向Z1の長さは、構築する地下横断構造物300の高さや幅寸法に応じて割り付けて決定する。
【0060】
なお、上述の角型鋼製エレメント50の説明では、地下横断構造物300を構成する一般部の角型鋼製エレメント50について説明したが、図4に示すように、最初に地山400に挿入する基準エレメント50a、地下横断構造物300の隅角部を構成する隅角部エレメント50b、最後に挿入し、環状に閉合する調整エレメント50cは、以下に説明するように、上述の一般部の角型鋼製エレメント50とわずかに構成が異なる。
【0061】
最初に、地山400に挿入する基準エレメント50aは、基準エレメント50aを基準として左右両側に角型鋼製エレメント50を連結するため、フランジ板52の両端に先端側連結継手51bを備えるとともに、ウェブ板53が連結方向Z1の両側に配置される(図示省略)。逆に、最後に挿入し、環状に閉合する調整エレメント50cは、左右両側に挿入されている挿入済みエレメント10’の間において、両方の挿入済みエレメント10’に連結するため、フランジ板52の両側に基端側連結継手51aを備えるとともに、ウェブ板53が連結方向Z1の両側に配置される(図示省略)。
【0062】
隅角部エレメント50bは、連結方向が基端側連結継手51aのある基端側に対して直交するため、先端側連結継手51bが、交差方向Z2であるウェブ板53の延長上に配置される。
【0063】
なお、上述の説明では、一般部の角型鋼製エレメント50、基準エレメント50a、隅角部エレメント50b及び調整エレメント50cで断面横長四角形状の地下横断構造物300を構築することについて説明しているが、基準エレメント50aと隅角部エレメント50bとで横一文字状配置、または縦一列配置、あるいは角型鋼製エレメント50、基準エレメント50a、及び隅角部エレメント50bでT字状配置、門型配置またはL型配置にして地下横断構造物300を構築してもよい。さらには、台形断面や帯状円弧型の角型鋼製エレメント50、基準エレメント50a及び調整エレメント50cを用いて、円形断面や円弧状断面の地下横断構造物300を構築してもよい。
【0064】
このような構成の角型鋼製エレメント50(以下において、角型鋼製エレメント50には、矛盾がない限り基準エレメント50a、隅角部エレメント50b及び調整エレメント50cを含むものとする)は、図6に示すような刃口60を、角型鋼製エレメント50の長さ方向Xの先端に装着し、刃口60内部で掘削作業員が掘削する人力掘削によって、刃口60の前方の地山400を掘削しながら、到達側立坑420bから1次けん引ワイヤー(図示省略)でけん引して地山400に挿入する。
【0065】
刃口60は、角型鋼製エレメント50と略同じ正面形状を有する刃口本体部61と、刃口本体部61の上面が前方(図6において左方向)に突出する板状の刃先板62と、刃先板62の前方において刃先板62に対して平行に循環するワイヤーソー63を駆動するワイヤーソー装置64とで構成する。そして、ワイヤーソー装置64は刃口本体部61内部に配置され、刃先板62の幅方向外側の少し前方には、ワイヤーソー装置64で回転駆動するワイヤーソー63の方向を変換する回転プーリー63aを備えている。
【0066】
なお、刃口60の構成や角型鋼製エレメント50との接続方法、並びにワイヤーソー63及びワイヤーソー装置64についての詳しい構成は、出願人らによって出願された発明(特開2010―174542号公報)に開示されているため、詳細な説明を省略する。
【0067】
このように刃口60を、到達側立坑420bから1次けん引ワイヤー(図示省略)でけん引すると、ワイヤーソー63で刃先板62の前方の地山400を切削し、ワイヤーソー63によって切削された地山の切削跡に刃先板62を挿入することができる。
【0068】
なお、刃口60における回転プーリー63aは、あらかじめ地山400に挿入方向Xに挿通されたガイドパイプとして機能するガイドパイプ用断面円形管40’内部に配置されている。詳しくは、図7に示すように、刃口60の刃先板62の挿入を許容する切削跡を形成するためのワイヤーソー63の方向を変換する回転プーリー63aは、上述したように、刃口60の刃先板62の幅方向外側かつ少し前方に配置され、回転プーリー63aと地山400との接触を防止するための左右のガイドパイプ用断面円形管40’内に配置される。
【0069】
さらに、それぞれの回転プーリー63aの前方には、管切削治具1の移動ローラ部30とほぼ同様の構成で構成した刃口用移動ローラ部30aが固定され、そのさらに前方には、エレメント挿入用管切削治具1aが配備されている。
【0070】
エレメント挿入用管切削治具1aは、図8に示すように、上述の管切削治具1の構成に加え、進行方向Xの後側の移動ローラ部30の支持フレーム31から、刃口用移動ローラ部30aに向かって突出する平板状のローリング防止バー36と、進行方向Xの後側の移動ローラ部30の支持フレーム31から、刃口用移動ローラ部30aの前側までの離間距離を検知する刃口離間検知器37を備えている。
【0071】
刃口離間検知器37は、さや管37aと伸縮棒37bとの二重構造となっており、伸縮棒37b先端に設けたマグネット37cによって、進行方向Xの後側の移動ローラ部30の支持フレーム31から、刃口用移動ローラ部30a前側までの離間距離を検知する構成である。
【0072】
ローリング防止バー36は、進行方向Xに長い板状であり、後端が先絞り形状となり、刃口用移動ローラ部30aの前面に備えた挿入口部38に挿通可能である(図1(d)参照)。
【0073】
なお、エレメント挿入用管切削治具1aにおける切削カッタ12の回転切削刃14は、後方で、地山400とともにガイドパイプ用断面円形管40’における幅方向内側の肉厚部分40aをワイヤーソー63の切断予定箇所を切削し、切削スリット40cを形成するよう位置調整し、ガイドパイプ用断面円形管40’の肉厚部分40aの厚さのうち3割程度を残して切削するように深さゲージ15で調整している。
【0074】
また、ガイドパイプ用断面円形管40’においてエレメント挿入用管切削治具1aは、ガイドパイプ用断面円形管40’内に挿通され、前方の支持フレーム31に接続されたけん引ワイヤ35によって到達側立坑420bにけん引されるが、回転プーリー63aは、上述したように、1次けん引ワイヤによって到達側立坑420bにけん引される刃口60に伴って到達側立坑420bに向かって移動する。
【0075】
このように、エレメント挿入用管切削治具1aと回転プーリー63aとは、それぞれ独立したけん引力によって到達側立坑420bに向かってけん引され移動するが、エレメント挿入用管切削治具1aの後ろ側の移動ローラ部30に備えたローリング防止バー36は、刃口用移動ローラ部30aの挿入口部38に進行方向Xに相対移動可能に挿通されているため、エレメント挿入用管切削治具1aは、回転プーリー63aに対して進行方向Xにおいて相対移動可能である。
【0076】
これに対し、ローリング防止バー36は挿入口部38に挿通されており、ローリング防止バー36は、挿入口部38によってガイドパイプ用断面円形管40’の管軸方向に対する回転方向を規制されている。
【0077】
したがって、刃口60の幅方向外側に配置され、回転しない回転プーリー63aの前方に固定された刃口用移動ローラ部30aにより、エレメント挿入用管切削治具1aは回転移動することなく、ワイヤーソー63による切断予定箇所を正確に回転切削刃14で切削し、切削スリット40cを形成することができる。
【0078】
また、エレメント挿入用管切削治具1aと回転プーリー63aとは、それぞれ独立したけん引力によって到達側立坑420bに向かってけん引され移動するとともに、後ろ側の移動ローラ部30に備えたローリング防止バー36は、刃口用移動ローラ部30aの挿入口部38に進行方向Xに相対移動可能に挿通されているため、例えば、摩耗した回転切削刃14を交換するために、エレメント挿入用管切削治具1aのみを到達側立坑420bに引っ張り出して回転切削刃14を交換し、再度、到達側立坑420bからエレメント挿入用管切削治具1aを挿入することができる。
【0079】
このように構成したエレメント挿入用管切削治具1aを用いた刃口60によるエレメント挿入工法の施工順序について図9及び図10とともに説明する。
まず、図9に示すように、地下横断構造物300を構築する構築予定断面300’における上床部300a’の回転プーリー63a通過部分にガイドパイプ用断面円形管40’をあらかじめ挿通する。
【0080】
なお、図9には、上床部300a’における全数のガイドパイプ用断面円形管40’を挿通しているが、最初に基準エレメント50aの両側2本のガイドパイプ用断面円形管40’を挿通し、基準エレメント50aを挿入完了してから順次ガイドパイプ用断面円形管40’を挿通する順序でもよく、また、角型鋼製エレメント50の挿入施工とともに、次やその次に挿入する角型鋼製エレメント50用のガイドパイプ用断面円形管40’を挿通してもよい。
【0081】
次に、2本のガイドパイプ用断面円形管40’に対してエレメント挿入用管切削治具1a及び、角型鋼製エレメント50に装着した刃口60をセットする(図10(a)参照)。
そして、図10(b)に示すように、まずガイドパイプ用断面円形管40’に挿通したけん引ワイヤ35を到達側立坑420b側からけん引し、エレメント挿入用管切削治具1aを進行方向Xに移動させる。このとき、エレメント挿入用管切削治具1aの回転切削刃14で、後方でガイドパイプ用断面円形管40’を切削するワイヤーソー63の切削箇所の内周面40bを切削し、切削スリット40cを形成する。なお、切削スリット40cの切削深さは、深さゲージ15(図2参照)によって、肉厚部分40aの厚みの3割程度を残すように調整している。
【0082】
また、エレメント挿入用管切削治具1aのローリング防止バー36が、刃口用移動ローラ部30aの挿入口部38に挿通しているため、エレメント挿入用管切削治具1aはガイドパイプ用断面円形管40’内で回転せずに移動し、回転切削刃14で所望の位置を切削し、精度のよい切削スリット40cを形成することができる。
【0083】
続いて、図10(c)に示すように、到達側立坑420b側から1次けん引ワイヤで刃口60をけん引し、回転切削刃14で切削した切削スリット40cを、ガイドパイプ用断面円形管40’同士の間の地山400とともに、ワイヤーソー63で切断しながら移動し、ワイヤーソー63で切削した地山400及びガイドパイプ用断面円形管40’の切削箇所に刃先板62を挿入するとともに、刃口60内部から地山400を掘削しながら角型鋼製エレメント50を挿入する。
【0084】
角型鋼製エレメント50の先端が到達側立坑420bに到達するまでこれを繰り返し、角型鋼製エレメント50の挿入を完了させる。また、既に挿入した角型鋼製エレメント50の基端側連結継手51aに連結継手51を嵌合させながら、次の角型鋼製エレメント50を上述の施工手順で施工し、地下横断構造物300を構築する全角型鋼製エレメント50の挿入を完了させ、角型鋼製エレメント50の内部空間55及び連結空間56にコンクリートを充填し、角型鋼製エレメント50で囲った内部空間300bを掘削し、地下横断構造物300を完成させる。
【0085】
このように、エレメント挿入用管切削治具1aを用いた刃口60によるエレメント挿入工法では、ワイヤーソー63で地山400とともに切削するガイドパイプ用断面円形管40’の肉厚部分40aをあらかじめエレメント挿入用管切削治具1aで切削し、切削スリット40cを形成しているため、肉厚部分40aの厚みが薄くなった切削スリット40cを切断する際のワイヤーソー63に作用する切削負荷が低減する。したがって、ワイヤーソー63の摩耗が低減するとともに、ワイヤーソー63の破断を防止できる。よって、ワイヤーソー63の摩耗やワイヤーソー63の破断による段取替えの手間を低減でき、効率よい施工を実現することができる。
【0086】
また、2本のガイドパイプ用断面円形管40’の間の地山400を、ワイヤーソー63で切断し、ワイヤーソー63で切断した切断箇所に刃先板62を効率よく挿入することができるため、軌道200直下の地下横断構造物300の構築において、下方での掘削等による地山400の応力解放による影響が直上の軌道200等の上部構造に及ぶことを防止できる。
【0087】
また、刃口用移動ローラ部30aに対するエレメント挿入用管切削治具1aの進行方向Xの相対移動を許容するとともに、ガイドパイプ用断面円形管40’の管軸方向における相対回転を規制するために、移動ローラ部30に固定されたローリング防止バー36の挿入を許容する挿入口部38を刃口用移動ローラ部30aに備えたことにより、刃口用移動ローラ部30aによって走行するワイヤーソー63に対する相対回転を規制しながらエレメント挿入用管切削治具1aでガイドパイプ用断面円形管40’の内周面40bを切削し、切削スリット40cを形成することができる。したがって、確実に、ワイヤーソー63によって切断するガイドパイプ用断面円形管40’の切断予定箇所を切削し、精度のよい切削スリット40cを形成することができる。
【0088】
また、刃口用移動ローラ部30aとのエレメント挿入用管切削治具1aの進行方向Xの相対距離を計測する刃口離間検知器37を備えたことにより、刃口用移動ローラ部30aとのエレメント挿入用管切削治具1aとが接触し、例えば、ワイヤーソー63とエレメント挿入用管切削治具1aとが相互に支障し、損傷することを防止できる。
なお、上述の説明では矩形断面の角型鋼製エレメント50について説明したが、台形断面などの様々な断面形状の鋼製エレメント50であってもよい。
【0089】
また、上述の説明では、角型鋼製エレメント50の挿入方向Xの全延長において、ワイヤーソー63で地山400を切断する施工方法で説明したが、例えば、軌道200の直下部分のみワイヤーソー63で地山400を切削し、それ以外の部分については、ワイヤーソー63を稼働させずに施工してもよい。これにより、ワイヤーソー63の切削延長を低減できるため、ワイヤーソー63の摩耗を低減できる。この場合であっても、ガイドパイプ用断面円形管40’をエレメント挿入用管切削治具1aで切削し、切削スリット40cを形成しているため、ワイヤーソー63が駆動しない区間においても刃口60が移動できる。
【0090】
また、上述の説明では、角型鋼製エレメント50を挿入するための刃口60の刃先板62を、ワイヤーソー63で切削した地山400の切削跡に挿入したが、例えば、出願人らによって出願された発明(特開2005―336865号公報)に開示しているワイヤーソーで地山を切削し、その切削部に防護プレートを挿入してから、その下方を、支持しながら掘削し、地下横断構造物300を構築する車両走行路下の地山防護工法を用いた地下横断構造物構築工法に適用してもよい。
【0091】
この場合であっても、防護プレートを挿入する切削部を切削するワイヤーソーの挿通を許容するガイドパイプを必要とするため、本発明の管切削治具1を用いることにより、ガイドパイプ用断面円形管におけるワイヤーソーの切断箇所を予め管切削治具1で切削できるため、ガイドパイプ用断面円形管を切断する際のワイヤーソーに作用する切削負荷が低減することができる。
【0092】
したがって、ワイヤーソーの摩耗が低減するとともに、ワイヤーソーの破断を防止できる。よって、ワイヤーソーの摩耗やワイヤーソーの破断による段取替えの手間を低減でき、効率よい施工を実現することができる。
【0093】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、この発明の管及び円形埋設管は、断面円形管40あるいはガイドパイプ用断面円形管40’に対応し、
以下同様に、
長手方向は、進行方向Xに対応し、
移動手段は、移動ローラ部30に対応し、
管内面は、内周面40bに対応し、
切削部は、回転切削刃14に対応し、
管内面切削手段は、切削カッタ12に対応し、
管切削治具は、管切削治具1あるいはエレメント挿入用管切削治具1aに対応し、
転動手段は、ローラ32に対応し、
けん引手段は、けん引ワイヤ35に対応し、
切削深さ設定手段は、深さゲージ15に対応し、
板材あるいは天板は、刃先板62に対応し、
走行手段は、刃口用移動ローラ部30aに対応し、
回転規制手段は、エレメント挿入用管切削治具1aの移動ローラ部30に備えたローリング防止バー36と、刃口用移動ローラ部30aに設けた挿入口部38に対応し、
相対距離計測手段は、刃口離間検知器37に対応し、
エレメントは、角型鋼製エレメント50、基準エレメント50a、隅角部エレメント50bあるいは調整エレメント50cに対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0094】
ワイヤーソー63及びエレメント挿入用管切削治具1aによるガイドパイプ用断面円形管40’の切削屑を、ガイドパイプ用断面円形管40’の外部に排出するバキュームを管切削治具1にセットしてもよい。バキュームにより、切削屑が回転切削刃14における切削箇所にたまって切削効率が低下することを防止できる。
【符号の説明】
【0095】
1…管切削治具
1a…エレメント挿入用管切削治具
12…切削カッタ
14…回転切削刃
15…深さゲージ
30…移動ローラ部
30a…刃口用移動ローラ部
32…ローラ
35…けん引ワイヤ
36…ローリング防止バー
37…刃口離間検知器
38…挿入口部
40…断面円形管
40’…ガイドパイプ用断面円形管
40b…内周面
50…角型鋼製エレメント
50a…基準エレメント
50b…隅角部エレメント
50c…調整エレメント
62…刃先板
63…ワイヤーソー
400…地山
X…進行方向,挿入方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の管内部を長手方向に移動する移動手段と、
該移動手段によって移動し、駆動部によって駆動する切削部を管内面に押し当てて、前記長手方向に前記管内面を切削する管内面切削手段とを備えた
管切削治具。
【請求項2】
前記移動手段を、
前記管内面を転動する転動手段と、
移動方向前方からけん引するけん引手段とで構成した
請求項1に記載の管切削治具。
【請求項3】
前記管を、地中に埋設した断面円形の円形埋設管で構成し、
前記管内面切削手段に、前記円形埋設管の肉厚に対する前記切削部による切削深さを設定する切削深さ設定手段を備えた
請求項1又は2に記載の管切削治具。
【請求項4】
2本の前記円形埋設管の間の地山を、前記円形埋設管のそれぞれを通るワイヤーソーで、前記円形埋設管の対向部分とともに切断するとともに、前記長手方向に進行し、該ワイヤーソーで切断した切断箇所に板材を挿入する板材挿入工法において、
前記ワイヤーソーに、前記円形埋設管の内部において長手方向に走行する走行手段を備え、
前記ワイヤーソーの進行方向前方に、請求項3に記載の管切削治具を配置し、
該管切削治具で、前記ワイヤーソーによって切断する前記円形埋設管の切断予定箇所を切削する
板材挿入工法。
【請求項5】
前記走行手段に対する前記管切削治具の前記長手方向の相対移動を許容するとともに、前記円形埋設管の管軸方向における相対回転を規制する回転規制手段を備えた
請求項4に記載の板材挿入工法。
【請求項6】
前記走行手段との前記管切削治具の前記長手方向の相対距離を計測する相対距離計測手段を備えた
請求項4または5に記載の板材挿入工法。
【請求項7】
前記ワイヤーソー及び前記管切削治具による前記円形埋設管の切削屑を、前記円形埋設管の外部に排出する切削屑排出手段を備えた
請求項4乃至6のうちいずれかに記載の板材挿入工法。
【請求項8】
上部に天板を有する閉断面形状のエレメントを地山に挿入し、エレメント内部を掘削するエレメント挿入工法であり、
前記天板を、前記エレメント挿入方向前端より前方に突出する構成とし、
前記天板を、請求項4乃至7のうちいずれかに記載の板材挿入工法における前記板材とした
エレメント挿入工法。
【請求項1】
長尺状の管内部を長手方向に移動する移動手段と、
該移動手段によって移動し、駆動部によって駆動する切削部を管内面に押し当てて、前記長手方向に前記管内面を切削する管内面切削手段とを備えた
管切削治具。
【請求項2】
前記移動手段を、
前記管内面を転動する転動手段と、
移動方向前方からけん引するけん引手段とで構成した
請求項1に記載の管切削治具。
【請求項3】
前記管を、地中に埋設した断面円形の円形埋設管で構成し、
前記管内面切削手段に、前記円形埋設管の肉厚に対する前記切削部による切削深さを設定する切削深さ設定手段を備えた
請求項1又は2に記載の管切削治具。
【請求項4】
2本の前記円形埋設管の間の地山を、前記円形埋設管のそれぞれを通るワイヤーソーで、前記円形埋設管の対向部分とともに切断するとともに、前記長手方向に進行し、該ワイヤーソーで切断した切断箇所に板材を挿入する板材挿入工法において、
前記ワイヤーソーに、前記円形埋設管の内部において長手方向に走行する走行手段を備え、
前記ワイヤーソーの進行方向前方に、請求項3に記載の管切削治具を配置し、
該管切削治具で、前記ワイヤーソーによって切断する前記円形埋設管の切断予定箇所を切削する
板材挿入工法。
【請求項5】
前記走行手段に対する前記管切削治具の前記長手方向の相対移動を許容するとともに、前記円形埋設管の管軸方向における相対回転を規制する回転規制手段を備えた
請求項4に記載の板材挿入工法。
【請求項6】
前記走行手段との前記管切削治具の前記長手方向の相対距離を計測する相対距離計測手段を備えた
請求項4または5に記載の板材挿入工法。
【請求項7】
前記ワイヤーソー及び前記管切削治具による前記円形埋設管の切削屑を、前記円形埋設管の外部に排出する切削屑排出手段を備えた
請求項4乃至6のうちいずれかに記載の板材挿入工法。
【請求項8】
上部に天板を有する閉断面形状のエレメントを地山に挿入し、エレメント内部を掘削するエレメント挿入工法であり、
前記天板を、前記エレメント挿入方向前端より前方に突出する構成とし、
前記天板を、請求項4乃至7のうちいずれかに記載の板材挿入工法における前記板材とした
エレメント挿入工法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2013−7224(P2013−7224A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141325(P2011−141325)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(000216025)鉄建建設株式会社 (109)
【出願人】(399101337)株式会社ジェイテック (20)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(000216025)鉄建建設株式会社 (109)
【出願人】(399101337)株式会社ジェイテック (20)
【Fターム(参考)】
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