管切断装置
【課題】長時間安定して円滑な切削ができ、迅速に効率良く管を切断することのできる管の切断装置を提供する。
【解決手段】管切断装置1は、管2に外挿可能な円環状の固定環10に、一対の刃物台30を備えた回転環20が駆動モーター40によって回転可能に装着され、管2に外挿状態で固定環10を介して固定され、駆動モーター40によって回転環20を回転させつつ刃物台30に保持された突っ切りバイト50を所定量づつ内側に突出移動させて管2に切り込み、切断するように構成されている。
【解決手段】管切断装置1は、管2に外挿可能な円環状の固定環10に、一対の刃物台30を備えた回転環20が駆動モーター40によって回転可能に装着され、管2に外挿状態で固定環10を介して固定され、駆動モーター40によって回転環20を回転させつつ刃物台30に保持された突っ切りバイト50を所定量づつ内側に突出移動させて管2に切り込み、切断するように構成されている。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、老朽化した既存の配管を交換する際等に、管を切断する管切断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】プラント施設等において老朽化した既存の配管の交換する場合には、老朽化した配管部位を切断して取り除き、新たな管を溶接によって接合することが行われる。
【0003】このよう際に配管を切断する切断装置としては、配管の切断部位に外挿状態で装着可能な固定環の軸受部に、切り込み刃物を保持した刃物台を備える回転環が摺動回転可能に装着されて構成され、固定環を介して管の切断対象部位に固定され、回転環を固定環に対して回転させつつ刃物台の保持した切り込み刃物で管の外周面に切り込んで切断するものが考えられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記のごとき構成の管切断装置では、固定環の軸受部に対して刃物台を備える回転環が摺動回転するものであるため、長時間使用するとその摺動部に焼き付きを生ずる、切り粉を噛み込んで回転不能となる、切削時に振動を生じ安定した切削ができない等の問題を有するものであった。
【0005】本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、長時間安定して円滑な切削ができ、迅速に効率良く管を切断することのできる管の切断装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決する為の手段】上記目的を達成する本発明の管の切断装置は、周方向に複数に分割され、組み合わせて結合することで管に外挿し得る円環状となる固定環部材と、前記固定環部材を前記管に同心状に固定し得る固定手段と、鎖状の保持器によってボールを支持して成るボール鎖列と、周方向に複数に分割され、組み合わせて結合することで円環状となり、前記ボール鎖列を介して前記固定環部材に回転自在に支持される回転環部材と、前記回転環部材を回転駆動する回転駆動手段と、前記回転環部材に装着され刃物を保持すると共に前記回転環部材の回転に伴って前記刃物を径方向に移動させる刃物保持送り機構と、を備えて構成されていることを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照して本願発明の実施の形態について説明する。
【0008】図1は、本願発明に係る管の切断装置の一構成例である管切断装置の全体斜視図,図2は正面図,図3(A)は図2のA部拡大図,図3(B)はそのB矢視図,図4は図2のC−C断面図,図5は図2のD−D断面図,図6は図2のE−E断面図である。
【0009】図示管切断装置1は、固定環部材としての固定環10に回転環部材としての回転環20が回転可能に装着され、その概略全体形状は切断対象とする管2に外挿可能な円環状を呈している。回転環20は、刃物保持送り機構としての一対の刃物台30を備えると共に、固定環10に設けられた回転駆動手段としての駆動モーター40によって回転駆動されるようになっている。
【0010】そして、管切断装置1は、管2に外挿状態で固定環10を介して固定され、駆動モーター40によって回転環20を回転させつつ刃物台30に装着された刃物としての突っ切りバイト50を所定量づつ内側に突出移動させて管2に切り込み、切断するものである。
【0011】以下、各部を順を追って詳細に説明する。
【0012】固定環10は、断面形状が略矩形であって、前面の内周縁部に回転環20を保持する軸受部10Aが突設されると共に、板状のモーターホルダー部10Cが外周側に突設されて形成されている。また、固定手段としての複数の固定ボルト51と、回転環20に備えられた後述する刃物台30の送り操作機構60を操作する操作ボルト52を備えている。
【0013】軸受部10Aの外周面には、周方向に連続するボール溝10Bが形成されており、このボール溝10Bに装着されたボール鎖列80を介して回転環20を回転自在且つ脱落不能に保持し得るようになっている。
【0014】モーターホルダー部10Cには、回転軸を回転環20側に突出させて駆動モーター40が固定されており、この駆動モーター40の回転軸には駆動ギア41が固定されている。駆動ギア41は、後述する回転環20の外周ギア20Aと噛合しており、駆動モーター40によって回転環20を回転駆動し得るようになっている。
【0015】固定ボルト51は、図4に示すように、固定環10を径方向に貫通して螺合装着されており、周方向に所定間隔で複数(8本)設けれている。その内周側に突出する先端部には押さえ金具51Aを備えており、外周側に突出する後端部はスパナで回転操作し得るように角頭51Bとなっている。
【0016】操作ボルト52は、固定環10を厚さ方向に貫通し、その先端部を前面側に所定高さに突出させてて所定位置に螺合装着されている。本構成例では、当該操作ボルト52は固定環10の周方向に等間隔(180゜間隔)で二カ所配設されている。
【0017】ここで、固定環10は、分解図である図7に示すように、周方向に二つの固定環部分ブロック11,12に分割されており、両固定環部分ブロック11,12を結合することで環を形成するようになっている。
【0018】各固定環部分ブロック11,12は、それぞれ一方の端縁部に結合板11A,12Aを備えると共に他方の端縁部に結合板11A,12Aの嵌合する結合溝11B,12Bが形成されており、一方の固定環部分ブロック(11又は12)の結合板(11A又は12A)が他方の固定環部分ブロック(12又は11)の嵌合溝(12A又は11A)に嵌合し、厚さ方向に結合ピン13が貫通装着されることで結合されるようになっているものである。
【0019】回転環20は、固定環10の軸受部10Aに所定の隙間を有して外挿可能な内径の環状であって、外周縁には前述のごとく駆動モーター40の駆動ギア41と噛合する外周ギア20Aが形成されると共に、内周には固定環10の軸受部10Aのボール溝10Bと対向するボール溝20Bが形成されており、当該回転環20はボール溝20Bと固定環10のボール溝10Bとの間に介装されたボール鎖列80によって係合状態となり、固定環10の軸受部10Aに回転自在且つ脱落不能に装着されている。
【0020】ボール鎖列80は、図8(A)に全体図,(B)に部分拡大図を示すように、開口部82Aを有する一対の保持器82,82でボール81を回転自在に包み込むように保持し、このようにボール81を保持した保持器82の端部同士を連結ピン83で枢着して鎖状に連続させて形成されている。ボール81は保持金具82の開口部82Aから突出し、自由に回転し得るようになっている。
【0021】ボール鎖列80の一方の端部にはスプリング80Aを介してフック80Bが、他端にはフックリング80Cが設けられており、フック80Bをフックリング80Cに係合することで無端状態となり、その長さは固定環10及び回転環20のボール溝10B,20Bの周長と対応する(嵌る)ように設定されている。
【0022】ここで、回転環20も固定環10と同様に、分解図である図9に示すように周方向に二つの回転環部分ブロック21,22に分割され、両回転環部分ブロック21,22を結合することで環状となるようになっている。即ち、各回転環部分ブロック21,22は、それぞれ一方の端縁部の外面側に結合板21A,22Aを備えており、一方の回転環部分ブロック(21又は22)の結合板(21A又は22A)が他方の回転環部分ブロック(22又は21)の端部と重合し、厚さ方向に結合ピン23を貫通装着することで両回転環部分ブロック21,22が結合されて環状となるようになっているものである。
【0023】回転環20の前面には、一対(二組)の刃物台30が対称位置に対向して設けられている。
【0024】刃物台30は、図2,図4及び概念斜視図である図10に示すように、回転環20の前面に固定されたその径方向に沿うガイド31に、バイトホルダ32が摺動移動可能に嵌合し、ガイド31に設けられた送りネジ33によって送り駆動され、この送りネジ33は送り操作機構60によって回転移動操作されるように構成されている。
【0025】バイトホルダ32は、突っ切りバイト50を、切り込み方向をその移動方向と一致させて(即ち回転環20の径方向)として保持している。尚、バイトホルダ32には、突っ切りバイト50に替えて後述する押し切り機構90を必要に応じて装着し得るようになっている。
【0026】尚、刃物台30は、二組を対向設置しなければならないものではなく、一組や三組以上であっても良く、配置も対向配置に限るものではない。また、対向する刃物台30の突っ切りバイト50の回転環20の前面からの位置(高さ)は、同一であっても良いが、所定量ずらすことによって切削幅を突っ切りバイト50の厚さより大きい任意の幅に設定することができる。
【0027】送り操作機構60は、回転環20にブラケット61を介して揺動可能に支持された操作アーム62の先端に備えられたラチェット爪63が、送りネジ33の外端部に固定された爪車64と係合し、操作アーム62の他端は回転環20を貫通して配設されたプッシュロッド65に連結されると共に、操作アーム62はスプリング66によってラチェット爪63を上側(回転環20と離間する側)とする方向に揺動付勢されて構成されている。
【0028】ラチェット爪63は、図11に示すように爪部63Aの基部に操作部63Bがから略直角に突設されており、その操作部63Bを操作アーム62に形成されたスリット内に位置させて爪部63Aの基部で操作アーム62の先端に揺動自在に枢着されている。操作部63Bは操作アーム62に直交状態で配設された操作レバー67の偏心ピン67Aの上側に位置し、図中反時計回りの揺動は偏心ピン67Aによって規制されるようになっている。
【0029】操作レバー67は、その回転中心から所定量偏心した偏心ピン67Aと、回転操作するレバー67Bとを備え、図11(A)に示すようにレバー67Bがラチェット爪63と反対側に位置した状態では偏心ピン67Aが回転中心より下側に位置し、図11(B)に示すようにレバー67Bがラチェット爪63と同じ側に位置した状態では偏心ピン67Aが回転中心より上側に位置する。これによって、レバー67Bがラチェット爪63と反対側に位置した状態ではラチェット爪63の爪部63Aが爪車63と噛合し(噛合状態)、レバー67Bがラチェット爪63と同じ側に位置した状態ではラチェット爪63の爪部63Aは爪車64から離間する(噛合解除状態)ようになっている。通常は、噛合状態とされ、噛合解除状態は当該管切断装置1を管2にセットする設置時に用いられるものである。
【0030】プッシュロッド65の先端にはその回転軸を回転環20の径方向に一致させてローラー68が装着されており、このローラー68は、スプリング66による操作アーム62の揺動付勢力によって固定環10の前面に当接し、回転環20の回転に伴って転動する。その固定環10の当接面上における転動軌跡は、前述した固定環10に設けられた操作ボルト52の上を通過するように設定されている。
【0031】上記構成の送り操作機構60は、駆動モーター40による回転環20の回転によって、プッシュロッド64(ローラー68)が操作ボルト52と対応する位置に至ると、この操作ボルト52に乗り上げることとなってスプリング64の付勢力に抗して操作アーム62が揺動操作され、操作レバー67が噛合側であってラチェット爪63が爪車63と噛合状態にあれば、爪車63を図中反時計回りに回転操作して送りネジ33を回転操作し、これによってバイトホルダ32(即ちその保持する突っ切りバイト50)が回転環20の内周側へ所定量送り移動駆動される。例えば、爪車63の一歯分の送りネジ33の回転によって、バイトホルダ32(突っ切りバイト33)が0.05mm移動するように設定される。この場合、操作ボルト52は180゜間隔で二カ所配設されているため、回転環20の一回転で突っ切りバイト33は0.1mmの切り込み量となる。尚、操作ボルト52の一本を外して一本のみとすれば、回転環20の一回転で突っ切りバイト33は0.05mmの切り込み量となし得るものである。
【0032】而して、上記のごとく構成された管切断装置1は、下記のごとくその中心を切断対象の管2の中心軸と一致させた状態で固定環10によって固定して回転環2を回転駆動することで、管2を切断することができる。
【0033】管切断装置1の管2への装着は、分解された固定環10(固定環部分ブロック11,12)を管2の周囲で環状に組み立て、各固定ボルト51を均等に締め込んで管2の外周に同心状に装着した後、固定環10の軸受部10Aにボール鎖列80を巻き付け、ボール溝10Bに嵌め込んで両端を係合させて装着し、次いで、回転環部分ブロック21,22を固定環10の軸受部10Aの周囲で環状に組み立てて回転環20を形成する。これにより、回転環20がボール鎖列80のボール81を介して固定環10に回転自在且つ脱落不能に係合する。その後、モーターホルダー部10Cに駆動モーター40を固定し、その回転軸に固定された駆動ギア41を回転環20の外周のギアに噛合させて、駆動モーター40によって回転環20を回転駆動可能とするものである。
【0034】このようにして管切断装置1を管2の任意の位置(切断位置)に装着した後、送り操作機構60の操作レバー67を揺動操作してラチェット爪63の爪車63との噛合を解除した状態として、送りネジ33を手動によって回転操作してバイトホルダ32の保持する突っ切りバイト50の刃先を管2の外面に近接させて設定した後、送り操作機構60の操作レバー67を戻してラチェット爪63を爪車63と噛合状態に戻す。
【0035】そして、駆動モーター40によって回転環20を回転駆動することにより、その回転によって刃物台30が固定環10に配設された操作ボルト52を通過する都度、定められた量づつバイトホルダ32を内周側に送り駆動し、突っ切りバイト50を管2の外周側から自動的に徐々に切り込んで、管2を切断することができるものである。
【0036】本構成の管切断装置1では、回転環20が固定環10の軸受部10Aにボール鎖列80(即ちボール81)を介して回転自在に装着されているため、突っ切りバイト50による管2の切削が長時間に及んでも(回転環20を長時間回転させても)焼き付きを生ずることが無く、また、固定環10(軸受部10A)と回転環20の間に切り粉が浸入しても容易に排除され、切り粉を噛み込んで回転不能となる虞が少なく、円滑に回転して迅速に管2を切断することができる。
【0037】ここで、切断する管2の内側に切り粉が入り込むのを避けたい場合には、刃物台30のバイトホルダ32に、突っ切りバイト50に替えて、図12に平面図,図13に図12のF矢視図,図14に図12のG−G断面図を示すような押し切り機構90を装着し、その切断リング92を突っ切りバイト50の切削によって薄肉化した部位(切断部位)に押し当てて切断させる。
【0038】押し切り機構90は、周縁が鋭利な刃物状に形成された切断リング92が、ブラケット91を介してバイトホルダ32に回転環20の中心軸と平行な回転軸で回転自在に装着されて構成されている。
【0039】このような切断リング92によって管2の切断の最終工程を行うことにより、切り粉の管2の内部への浸入を防ぐことができるものである。
【0040】
【発明の効果】以上述べたように、本願発明に係る管切断装置では、周方向に複数に分割され組み合わせて結合することで管に外挿し得る円環状となる固定環部材と、固定環部材を前記管に同心状に固定し得る固定手段と、鎖状の保持器によってボールを支持して成るボール鎖列と、周方向に複数に分割され、組み合わせて結合することで円環状となりボール鎖列を介して固定環部材に回転自在に支持される回転環部材と、回転環部材を回転駆動する回転駆動手段と、回転環部材に装着され刃物を保持すると共に回転環部材の回転に伴って刃物を径方向に移動させる刃物保持送り機構と、を備えて構成されていることにより、回転環部材が固定環部材にボール鎖列を介して回転自在に装着されているため、切削が長時間に及んでも焼き付きを生ずることが無く、また、固定環部材と回転環部材の間に切り粉が浸入しても容易に排除されて回転環部材が切り粉を噛み込んで回転不能となる虞が少なく、円滑に回転して迅速に管を切断することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明に係る管の切断装置の一構成例である管切断装置の全体斜視図である。
【図2】管切断装置の正面図である。
【図3】(A)は図2のA部拡大図,(B)はそのB矢視図である。
【図4】図2のC−C断面図である。
【図5】図2のD−D断面図である。
【図6】図2のE−E断面図である。
【図7】固定環の分解図である。
【図8】(A)はボール鎖列の全体図,(B)はその部分拡大断面図である。
【図9】回転環の分解図である。
【図10】刃物台の斜視図である。
【図11】ラチェット爪の概念図であり、(A)は噛合状態,(B)は噛合解除状態を示す。
【図12】押し切り機構の平面図である。
【図13】図12のF矢視図である。
【図14】図12のG−G断面図である。
【符号の説明】
1 管切断装置
10 固定環(固定環部材)
20 回転環(回転環部材)
30 刃物台(刃物保持送り機構)
40 駆動モーター(回転駆動手段)
50 突っ切りバイト(刃物)
80 ボール鎖列
81 ボール
82 保持器
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、老朽化した既存の配管を交換する際等に、管を切断する管切断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】プラント施設等において老朽化した既存の配管の交換する場合には、老朽化した配管部位を切断して取り除き、新たな管を溶接によって接合することが行われる。
【0003】このよう際に配管を切断する切断装置としては、配管の切断部位に外挿状態で装着可能な固定環の軸受部に、切り込み刃物を保持した刃物台を備える回転環が摺動回転可能に装着されて構成され、固定環を介して管の切断対象部位に固定され、回転環を固定環に対して回転させつつ刃物台の保持した切り込み刃物で管の外周面に切り込んで切断するものが考えられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記のごとき構成の管切断装置では、固定環の軸受部に対して刃物台を備える回転環が摺動回転するものであるため、長時間使用するとその摺動部に焼き付きを生ずる、切り粉を噛み込んで回転不能となる、切削時に振動を生じ安定した切削ができない等の問題を有するものであった。
【0005】本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、長時間安定して円滑な切削ができ、迅速に効率良く管を切断することのできる管の切断装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決する為の手段】上記目的を達成する本発明の管の切断装置は、周方向に複数に分割され、組み合わせて結合することで管に外挿し得る円環状となる固定環部材と、前記固定環部材を前記管に同心状に固定し得る固定手段と、鎖状の保持器によってボールを支持して成るボール鎖列と、周方向に複数に分割され、組み合わせて結合することで円環状となり、前記ボール鎖列を介して前記固定環部材に回転自在に支持される回転環部材と、前記回転環部材を回転駆動する回転駆動手段と、前記回転環部材に装着され刃物を保持すると共に前記回転環部材の回転に伴って前記刃物を径方向に移動させる刃物保持送り機構と、を備えて構成されていることを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照して本願発明の実施の形態について説明する。
【0008】図1は、本願発明に係る管の切断装置の一構成例である管切断装置の全体斜視図,図2は正面図,図3(A)は図2のA部拡大図,図3(B)はそのB矢視図,図4は図2のC−C断面図,図5は図2のD−D断面図,図6は図2のE−E断面図である。
【0009】図示管切断装置1は、固定環部材としての固定環10に回転環部材としての回転環20が回転可能に装着され、その概略全体形状は切断対象とする管2に外挿可能な円環状を呈している。回転環20は、刃物保持送り機構としての一対の刃物台30を備えると共に、固定環10に設けられた回転駆動手段としての駆動モーター40によって回転駆動されるようになっている。
【0010】そして、管切断装置1は、管2に外挿状態で固定環10を介して固定され、駆動モーター40によって回転環20を回転させつつ刃物台30に装着された刃物としての突っ切りバイト50を所定量づつ内側に突出移動させて管2に切り込み、切断するものである。
【0011】以下、各部を順を追って詳細に説明する。
【0012】固定環10は、断面形状が略矩形であって、前面の内周縁部に回転環20を保持する軸受部10Aが突設されると共に、板状のモーターホルダー部10Cが外周側に突設されて形成されている。また、固定手段としての複数の固定ボルト51と、回転環20に備えられた後述する刃物台30の送り操作機構60を操作する操作ボルト52を備えている。
【0013】軸受部10Aの外周面には、周方向に連続するボール溝10Bが形成されており、このボール溝10Bに装着されたボール鎖列80を介して回転環20を回転自在且つ脱落不能に保持し得るようになっている。
【0014】モーターホルダー部10Cには、回転軸を回転環20側に突出させて駆動モーター40が固定されており、この駆動モーター40の回転軸には駆動ギア41が固定されている。駆動ギア41は、後述する回転環20の外周ギア20Aと噛合しており、駆動モーター40によって回転環20を回転駆動し得るようになっている。
【0015】固定ボルト51は、図4に示すように、固定環10を径方向に貫通して螺合装着されており、周方向に所定間隔で複数(8本)設けれている。その内周側に突出する先端部には押さえ金具51Aを備えており、外周側に突出する後端部はスパナで回転操作し得るように角頭51Bとなっている。
【0016】操作ボルト52は、固定環10を厚さ方向に貫通し、その先端部を前面側に所定高さに突出させてて所定位置に螺合装着されている。本構成例では、当該操作ボルト52は固定環10の周方向に等間隔(180゜間隔)で二カ所配設されている。
【0017】ここで、固定環10は、分解図である図7に示すように、周方向に二つの固定環部分ブロック11,12に分割されており、両固定環部分ブロック11,12を結合することで環を形成するようになっている。
【0018】各固定環部分ブロック11,12は、それぞれ一方の端縁部に結合板11A,12Aを備えると共に他方の端縁部に結合板11A,12Aの嵌合する結合溝11B,12Bが形成されており、一方の固定環部分ブロック(11又は12)の結合板(11A又は12A)が他方の固定環部分ブロック(12又は11)の嵌合溝(12A又は11A)に嵌合し、厚さ方向に結合ピン13が貫通装着されることで結合されるようになっているものである。
【0019】回転環20は、固定環10の軸受部10Aに所定の隙間を有して外挿可能な内径の環状であって、外周縁には前述のごとく駆動モーター40の駆動ギア41と噛合する外周ギア20Aが形成されると共に、内周には固定環10の軸受部10Aのボール溝10Bと対向するボール溝20Bが形成されており、当該回転環20はボール溝20Bと固定環10のボール溝10Bとの間に介装されたボール鎖列80によって係合状態となり、固定環10の軸受部10Aに回転自在且つ脱落不能に装着されている。
【0020】ボール鎖列80は、図8(A)に全体図,(B)に部分拡大図を示すように、開口部82Aを有する一対の保持器82,82でボール81を回転自在に包み込むように保持し、このようにボール81を保持した保持器82の端部同士を連結ピン83で枢着して鎖状に連続させて形成されている。ボール81は保持金具82の開口部82Aから突出し、自由に回転し得るようになっている。
【0021】ボール鎖列80の一方の端部にはスプリング80Aを介してフック80Bが、他端にはフックリング80Cが設けられており、フック80Bをフックリング80Cに係合することで無端状態となり、その長さは固定環10及び回転環20のボール溝10B,20Bの周長と対応する(嵌る)ように設定されている。
【0022】ここで、回転環20も固定環10と同様に、分解図である図9に示すように周方向に二つの回転環部分ブロック21,22に分割され、両回転環部分ブロック21,22を結合することで環状となるようになっている。即ち、各回転環部分ブロック21,22は、それぞれ一方の端縁部の外面側に結合板21A,22Aを備えており、一方の回転環部分ブロック(21又は22)の結合板(21A又は22A)が他方の回転環部分ブロック(22又は21)の端部と重合し、厚さ方向に結合ピン23を貫通装着することで両回転環部分ブロック21,22が結合されて環状となるようになっているものである。
【0023】回転環20の前面には、一対(二組)の刃物台30が対称位置に対向して設けられている。
【0024】刃物台30は、図2,図4及び概念斜視図である図10に示すように、回転環20の前面に固定されたその径方向に沿うガイド31に、バイトホルダ32が摺動移動可能に嵌合し、ガイド31に設けられた送りネジ33によって送り駆動され、この送りネジ33は送り操作機構60によって回転移動操作されるように構成されている。
【0025】バイトホルダ32は、突っ切りバイト50を、切り込み方向をその移動方向と一致させて(即ち回転環20の径方向)として保持している。尚、バイトホルダ32には、突っ切りバイト50に替えて後述する押し切り機構90を必要に応じて装着し得るようになっている。
【0026】尚、刃物台30は、二組を対向設置しなければならないものではなく、一組や三組以上であっても良く、配置も対向配置に限るものではない。また、対向する刃物台30の突っ切りバイト50の回転環20の前面からの位置(高さ)は、同一であっても良いが、所定量ずらすことによって切削幅を突っ切りバイト50の厚さより大きい任意の幅に設定することができる。
【0027】送り操作機構60は、回転環20にブラケット61を介して揺動可能に支持された操作アーム62の先端に備えられたラチェット爪63が、送りネジ33の外端部に固定された爪車64と係合し、操作アーム62の他端は回転環20を貫通して配設されたプッシュロッド65に連結されると共に、操作アーム62はスプリング66によってラチェット爪63を上側(回転環20と離間する側)とする方向に揺動付勢されて構成されている。
【0028】ラチェット爪63は、図11に示すように爪部63Aの基部に操作部63Bがから略直角に突設されており、その操作部63Bを操作アーム62に形成されたスリット内に位置させて爪部63Aの基部で操作アーム62の先端に揺動自在に枢着されている。操作部63Bは操作アーム62に直交状態で配設された操作レバー67の偏心ピン67Aの上側に位置し、図中反時計回りの揺動は偏心ピン67Aによって規制されるようになっている。
【0029】操作レバー67は、その回転中心から所定量偏心した偏心ピン67Aと、回転操作するレバー67Bとを備え、図11(A)に示すようにレバー67Bがラチェット爪63と反対側に位置した状態では偏心ピン67Aが回転中心より下側に位置し、図11(B)に示すようにレバー67Bがラチェット爪63と同じ側に位置した状態では偏心ピン67Aが回転中心より上側に位置する。これによって、レバー67Bがラチェット爪63と反対側に位置した状態ではラチェット爪63の爪部63Aが爪車63と噛合し(噛合状態)、レバー67Bがラチェット爪63と同じ側に位置した状態ではラチェット爪63の爪部63Aは爪車64から離間する(噛合解除状態)ようになっている。通常は、噛合状態とされ、噛合解除状態は当該管切断装置1を管2にセットする設置時に用いられるものである。
【0030】プッシュロッド65の先端にはその回転軸を回転環20の径方向に一致させてローラー68が装着されており、このローラー68は、スプリング66による操作アーム62の揺動付勢力によって固定環10の前面に当接し、回転環20の回転に伴って転動する。その固定環10の当接面上における転動軌跡は、前述した固定環10に設けられた操作ボルト52の上を通過するように設定されている。
【0031】上記構成の送り操作機構60は、駆動モーター40による回転環20の回転によって、プッシュロッド64(ローラー68)が操作ボルト52と対応する位置に至ると、この操作ボルト52に乗り上げることとなってスプリング64の付勢力に抗して操作アーム62が揺動操作され、操作レバー67が噛合側であってラチェット爪63が爪車63と噛合状態にあれば、爪車63を図中反時計回りに回転操作して送りネジ33を回転操作し、これによってバイトホルダ32(即ちその保持する突っ切りバイト50)が回転環20の内周側へ所定量送り移動駆動される。例えば、爪車63の一歯分の送りネジ33の回転によって、バイトホルダ32(突っ切りバイト33)が0.05mm移動するように設定される。この場合、操作ボルト52は180゜間隔で二カ所配設されているため、回転環20の一回転で突っ切りバイト33は0.1mmの切り込み量となる。尚、操作ボルト52の一本を外して一本のみとすれば、回転環20の一回転で突っ切りバイト33は0.05mmの切り込み量となし得るものである。
【0032】而して、上記のごとく構成された管切断装置1は、下記のごとくその中心を切断対象の管2の中心軸と一致させた状態で固定環10によって固定して回転環2を回転駆動することで、管2を切断することができる。
【0033】管切断装置1の管2への装着は、分解された固定環10(固定環部分ブロック11,12)を管2の周囲で環状に組み立て、各固定ボルト51を均等に締め込んで管2の外周に同心状に装着した後、固定環10の軸受部10Aにボール鎖列80を巻き付け、ボール溝10Bに嵌め込んで両端を係合させて装着し、次いで、回転環部分ブロック21,22を固定環10の軸受部10Aの周囲で環状に組み立てて回転環20を形成する。これにより、回転環20がボール鎖列80のボール81を介して固定環10に回転自在且つ脱落不能に係合する。その後、モーターホルダー部10Cに駆動モーター40を固定し、その回転軸に固定された駆動ギア41を回転環20の外周のギアに噛合させて、駆動モーター40によって回転環20を回転駆動可能とするものである。
【0034】このようにして管切断装置1を管2の任意の位置(切断位置)に装着した後、送り操作機構60の操作レバー67を揺動操作してラチェット爪63の爪車63との噛合を解除した状態として、送りネジ33を手動によって回転操作してバイトホルダ32の保持する突っ切りバイト50の刃先を管2の外面に近接させて設定した後、送り操作機構60の操作レバー67を戻してラチェット爪63を爪車63と噛合状態に戻す。
【0035】そして、駆動モーター40によって回転環20を回転駆動することにより、その回転によって刃物台30が固定環10に配設された操作ボルト52を通過する都度、定められた量づつバイトホルダ32を内周側に送り駆動し、突っ切りバイト50を管2の外周側から自動的に徐々に切り込んで、管2を切断することができるものである。
【0036】本構成の管切断装置1では、回転環20が固定環10の軸受部10Aにボール鎖列80(即ちボール81)を介して回転自在に装着されているため、突っ切りバイト50による管2の切削が長時間に及んでも(回転環20を長時間回転させても)焼き付きを生ずることが無く、また、固定環10(軸受部10A)と回転環20の間に切り粉が浸入しても容易に排除され、切り粉を噛み込んで回転不能となる虞が少なく、円滑に回転して迅速に管2を切断することができる。
【0037】ここで、切断する管2の内側に切り粉が入り込むのを避けたい場合には、刃物台30のバイトホルダ32に、突っ切りバイト50に替えて、図12に平面図,図13に図12のF矢視図,図14に図12のG−G断面図を示すような押し切り機構90を装着し、その切断リング92を突っ切りバイト50の切削によって薄肉化した部位(切断部位)に押し当てて切断させる。
【0038】押し切り機構90は、周縁が鋭利な刃物状に形成された切断リング92が、ブラケット91を介してバイトホルダ32に回転環20の中心軸と平行な回転軸で回転自在に装着されて構成されている。
【0039】このような切断リング92によって管2の切断の最終工程を行うことにより、切り粉の管2の内部への浸入を防ぐことができるものである。
【0040】
【発明の効果】以上述べたように、本願発明に係る管切断装置では、周方向に複数に分割され組み合わせて結合することで管に外挿し得る円環状となる固定環部材と、固定環部材を前記管に同心状に固定し得る固定手段と、鎖状の保持器によってボールを支持して成るボール鎖列と、周方向に複数に分割され、組み合わせて結合することで円環状となりボール鎖列を介して固定環部材に回転自在に支持される回転環部材と、回転環部材を回転駆動する回転駆動手段と、回転環部材に装着され刃物を保持すると共に回転環部材の回転に伴って刃物を径方向に移動させる刃物保持送り機構と、を備えて構成されていることにより、回転環部材が固定環部材にボール鎖列を介して回転自在に装着されているため、切削が長時間に及んでも焼き付きを生ずることが無く、また、固定環部材と回転環部材の間に切り粉が浸入しても容易に排除されて回転環部材が切り粉を噛み込んで回転不能となる虞が少なく、円滑に回転して迅速に管を切断することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明に係る管の切断装置の一構成例である管切断装置の全体斜視図である。
【図2】管切断装置の正面図である。
【図3】(A)は図2のA部拡大図,(B)はそのB矢視図である。
【図4】図2のC−C断面図である。
【図5】図2のD−D断面図である。
【図6】図2のE−E断面図である。
【図7】固定環の分解図である。
【図8】(A)はボール鎖列の全体図,(B)はその部分拡大断面図である。
【図9】回転環の分解図である。
【図10】刃物台の斜視図である。
【図11】ラチェット爪の概念図であり、(A)は噛合状態,(B)は噛合解除状態を示す。
【図12】押し切り機構の平面図である。
【図13】図12のF矢視図である。
【図14】図12のG−G断面図である。
【符号の説明】
1 管切断装置
10 固定環(固定環部材)
20 回転環(回転環部材)
30 刃物台(刃物保持送り機構)
40 駆動モーター(回転駆動手段)
50 突っ切りバイト(刃物)
80 ボール鎖列
81 ボール
82 保持器
【特許請求の範囲】
【請求項1】周方向に複数に分割され、組み合わせて結合することで管に外挿し得る円環状となる固定環部材と、前記固定環部材を前記管に同心状に固定し得る固定手段と、鎖状の保持器によってボールを支持して成るボール鎖列と、周方向に複数に分割され、組み合わせて結合することで円環状となり、前記ボール鎖列を介して前記固定環部材に回転自在に支持される回転環部材と、前記回転環部材を回転駆動する回転駆動手段と、前記回転環部材に装着され、刃物を保持すると共に前記回転環部材の回転に伴って前記刃物を径方向に移動させる刃物保持送り機構と、を備えて構成されていることを特徴とする管切断装置。
【請求項1】周方向に複数に分割され、組み合わせて結合することで管に外挿し得る円環状となる固定環部材と、前記固定環部材を前記管に同心状に固定し得る固定手段と、鎖状の保持器によってボールを支持して成るボール鎖列と、周方向に複数に分割され、組み合わせて結合することで円環状となり、前記ボール鎖列を介して前記固定環部材に回転自在に支持される回転環部材と、前記回転環部材を回転駆動する回転駆動手段と、前記回転環部材に装着され、刃物を保持すると共に前記回転環部材の回転に伴って前記刃物を径方向に移動させる刃物保持送り機構と、を備えて構成されていることを特徴とする管切断装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図14】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図13】
【図10】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図14】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図13】
【図10】
【図12】
【公開番号】特開2001−162432(P2001−162432A)
【公開日】平成13年6月19日(2001.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−353926
【出願日】平成11年12月14日(1999.12.14)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【公開日】平成13年6月19日(2001.6.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成11年12月14日(1999.12.14)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
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