説明

管口フィルター

【課題】雨水貯留浸透施設の貯留浸透槽などに設置される管口フィルターの通水部の詰まりを防止し、さらにフィルター部がへこんでしまうのを可及的に防止することのできる管口フィルターを提供する。
【解決手段】フィルター部24の外周縁部に、流入管9への取り付け部材26が設置されるとともに、フィルター部24の機械的強度を向上させるための骨部材23が具備され、フィルター部24が取り付け部材26を介して流入管9に取り付けられた場合に、フィルター部24の下方部に、通水部を構成する孔に比べて大きな開口30が形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は管口フィルターに関し、詳しくは、公共施設、マンション、ショッピングセンター、飲食店、宅地造成地などの敷地において大量に降った雨水が一気に河川に流れ込むのを防止する雨水貯留浸透施設の貯留浸透槽などに好適に設置される管口フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、都市の急激な発展により開発が進み、地表は建物・舗装などに覆われ、自然な地形であったはずの山林、畑、草地などが著しく減少している。そのため、従来は、地中に浸透していたはずの雨水が下水道などを経由して一気に河川に流れ込み、都市型災害と呼ばれる洪水を引き起こす原因となっている。
【0003】
その対策として、浸透トレンチ工法が採用されている。この工法は、砕石間の隙間を利用して、雨水を土壌に浸透させる工法である。ところが、砕石を利用した場合、工事延長に際し重労働であるため、これに代わるものとして合成樹脂製の貯留浸透槽が使われるようになっている。
【0004】
この貯留浸透槽は、大雨のとき雨水が一気に流れ出てしまうのを防止し、雨水を土中に浸透させたり、貯留した雨水をオリフィスなどで徐々に放流させたりすることを目的としたものである。このような貯留浸透槽は、敷地内の周辺に複数個設置され、雨水配管により接続されている。
【0005】
ところで、貯留浸透槽内部へ雨水を流入させる管には、ゴミなどによる槽内部の詰まりを防止するための管口フィルターが設置されている。図3は、このような従来の管口フィルター2を示したもので、図4は貯留浸透槽5に対する管口フィルター2の設置状態を示したものである。
【0006】
この管口フィルター2は、ステンレスなどの金属から形成されている。管口フィルター2は、リング部4を有し、このリング部4に半球状に膨出して形成されたフィルター部6が設置されるとともに、複数の弾性脚部8が所定間隔置きに設置されている。また、リング4には、操作用のハンドル10が設けられている。
【0007】
このような管口フィルター2は、図4に示した貯水浸透槽5の桝7内に取り付けられる。すなわち、管口フィルター2のリング部4は、貯水浸透槽5の流入管9の内径と略同径に形成され、リング部4の弾性脚部8が流入管9の開口部に差し込まれることにより、桝7内に設置されている。そして、管口フィルター2が桝7内に設置された状態からハンドル10を引き上げれば、管口フィルター2を自由に取り外すことができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、このような構成の管口フィルター2では、ゴミなどを除去するためのフィルター部6は金属細線を格子状に編み込んだものから構成されている。
ここで、例えば、雨天の日、図4に示したように、桝7のグレーチング蓋11から取り込まれた雨水は、先ず桝7の底部に落下し、雨量が多くなるに伴って次第に水位を上げて管口フィルター2に接近してくる。このとき、上昇してくる水には様々なごみが混入している。仮にこのごみがフィルター部6の周面に付着すると、フィルター部6における水の通路を塞いでしまい、結果として流入管9への通水が阻害される。
【0009】
また、水の勢いが強かったり、ごみ量が多かったりすると、フィルター部6が水の流れる方向に潰れてしまうという問題もあった。
本発明はこのような従来の問題に鑑み、雨水貯留浸透施設の貯留浸透槽などに設置される管口フィルターの通水部の詰まりを防止し、さらにフィルター部が雨水の圧力でへこんでしまうのを可及的に防止することのできる管口フィルターを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係る管口フィルターは、
フィルター部の外周縁部に、流入管への取り付け部材が設置されるとともに、前記フィルター部の機械的強度を向上させるための骨部材が具備され、前記フィルター部が前記取り付け部材を介して前記流入管に取り付けられた場合に、前記フィルター部の下方部に、通水部を構成する孔に比べて大きな開口が形成されていることを特徴としている。
【0011】
このような構成の管口フィルターによれば、降雨時に貯留浸透槽へ流入させるための桝に集水された雨水は桝の底部より徐々に水位を上昇させる。
その際、雨水に混入したゴミは、その軽重により分離する。すなわち、軽いゴミは水面近くに浮き、重いゴミは底部に溜まる。水面近くの軽いゴミは水位の上昇に伴って上昇する。
【0012】
水位が管口フィルターの取り付け位置に達すると、雨水はフィルター部を通して貯留浸透槽に流入する。この時フィルター部の網目により貯留浸透槽の内部を詰まらすような大きなゴミは網目にかかり、流入を阻止される。その状態に至ると、網目部分の水の流入は阻害されるが、フィルター部下部の大きな開口部は閉塞されず常に雨水の流入が確保される。なお、ゴミは上昇した水位の水面近くにあり、ほとんど流入しない。また、閉塞したフィルター網目部分が水圧により押されても、フィルター部に骨部材が配置されているのでフィルター部の変形は防止される。
【0013】
ここで、前記骨部材は、前記フィルター部を横断するように一体的に具備された線状部材であることが好ましい。
このような構成であれば、容易な構造でフィルター部の強度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る管口フィルターによれば、水の上昇に伴ってゴミが浮上してきたとしても、フィルター部下方の大きな開口部からは水が常に貯留浸透槽に流入するので桝からの溢水を防ぐことができる。また、ゴミが混じった水の流れにより、フィルター部の周面に大きな力が作用するとしても、フィルター部に設けられた骨部材によりその変形を防止することができる。
【0015】
さらに、骨部材がフィルター部に一体的に具備された線状部材であれば、その骨部材は邪魔になることもなく、容易に設置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面に示した本発明の好ましい実施例について説明する。
図1は本発明の一実施例に係る管口フィルター20の斜視図である。図2(A)、(B)は本発明の一実施例に係る管口フィルター20の正面図及びその側面図である。この管口フィルター20は、図3および図4に示した管口フィルター2の場合と同様に、雨水貯留浸透施設の流入管9の開口部に着脱自在に設置される。
【0017】
本実施例の管口フィルター20は、流入管9の通水部の径と略同径のリング部22を有している。また、このリング部22には、略十字状に骨部材23が一体的に具備されることにより、全体の強度が向上されている。そして、このリング部22および骨部材23の外面側に、メッシュ状のフィルター部24が半球状に膨出して構成されている。この骨部材23は、外周のリング部22を構成するやや太い金属線と同様のものが使用されている。
【0018】
一方、骨部材23から外方に延長するように、流入管9に対する取り付け部材として止め具26が4本突出されている。管口フィルター20は、この止め具26を介して図4に示した流入管9の開口部に着脱自在に設置される。なお、管口フィルター20は、設置された状態において、ハンドル28が上方に配置されることが好ましい。そして、このハンドル28を介して管口フィルター20の取り付け及び取り外しが行なわれる。
【0019】
さらに、本実施例による管口フィルター20では、フィルター部24の下方部に、上下方向より水平方向に長い開口30が設けられている。この開口30は通水部を構成するメッシュ状の孔に比べてかなり大きい。
【0020】
このような幅広の開口30が形成されることにより、図4に示した桝7内において下方から水位が上昇して水と一緒に浮遊ゴミが上昇してきても、その開口30から水は貯留浸透槽5に積極的に排出することができる。なお、貯留浸透槽5の内部を詰まらすような大きなゴミは、網目にかかり流入が阻止される。また、降雨時に多量のゴミが上昇してくる場合に、水による上昇速度が早いので、直ぐにフィルター部24を乗り越える。よって、この大きな開口30の付近にゴミが溜まってしまうことはなく、下方からの水の排出が促進される。また下方周辺には、ゴミの少ない状態が観察され、ゴミによる詰まりが生じることはない。
【0021】
また、フィルター部24に浮遊してきたゴミが、このフィルター部24の周面に衝突するとしても、骨部材23が十字状に配置されているため、フィルター部24が変形してしまうのを防止することができる。よって、例えば、雨水貯留浸透施設の貯留浸透槽5などの流入管9用のフィルターとして設置された場合に、ゴミで詰まったり凹んでしまうのを防止することができる。
【0022】
以上本発明の一実施例について説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されない。
例えば、上記実施例では、流入管9への取り付け部材としての止め具26が金属細線で形成されているが、これらは、弾性変形可能な板状の金属部材で形成しても良い。また、フィルター部24の通水用の小さい孔は矩形に限定されず、ひし形などであっても良い。また、通水用の孔の大きさは、限定されるものではないが、概ね5mm角〜20mm角程度である。そして、開口30の高さSは、リング部22の直径の1/10〜1/5程度である。さらに、上記管口フィルター20は金属でなくても合成樹脂により形成されていても良い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は本発明の一実施例による管口フィルターの斜視図である。
【図2】図2(A),(B)は、図1に示した管口フィルターの正面図、および側面図である。
【図3】図3は従来の管口フィルターの斜視図である。
【図4】図4は従来の雨水貯留浸透施設に設置された貯留浸透槽と管口フィルターとの設置状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0024】
2 管口フィルター
9 流入管
5 貯留浸透槽
6 フィルター部
7 桝
20 管口フィルター
22 リング部
23 骨部材
24 フィルター部
26 止め具(取り付け部材)
28 ハンドル
30 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルター部の外周縁部に、流入管への取り付け部材が設置されるとともに、前記フィルター部の機械的強度を向上させるための骨部材が具備され、前記フィルター部が前記取り付け部材を介して前記流入管に取り付けられた場合に、前記フィルター部の下方部に、通水部を構成する孔に比べて大きな開口が形成されていることを特徴とする雨水貯留浸透施設における管口フィルター。
【請求項2】
前記骨部材は、前記フィルター部を横断するように一体的に具備された線状部材であることを特徴とする請求項1に記載の管口フィルター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−74288(P2009−74288A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−243797(P2007−243797)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(596140874)社団法人 雨水貯留浸透技術協会 (4)
【出願人】(502436163)秩父ケミカル株式会社 (2)
【Fターム(参考)】