説明

管台接合方法、蒸気発生器の製造方法、管台用部材及び蒸気発生器

【課題】管台用部材が容易に基材に対して位置決め可能であって溶接後にあっても管台用部材と基材とを高精度に接合できる管台接合方法、蒸気発生器の製造方法、管台用部材及び蒸気発生器を提供すること。
【解決手段】管台となる管台用部材は基材に固定可能な固定部を有する。また、固定部により基材に管台用部材を仮固定する仮固定工程と、仮固定された管台用部材と基材との隙間の少なくとも一部を溶接により接合させる接合工程と、溶接後の管台用部材から基材にかけて開口する開口工程と、を有する管台接合方法とする。この本発明は、予熱を加えずに簡単に位置決めすることができるので、管台用部材と基材とを高精度に接合できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体の基材に設置する管台の管台接合方法、蒸気発生器の製造方法、管台用部材及び蒸気発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)は、軽水を原子炉冷却材及び中性子減速材として使用する。軽水は炉心全体にわたって沸騰しない高温高圧水となる。加圧水型原子炉は、この高温高圧水を蒸気発生器に送って熱交換により蒸気を発生させ、この蒸気をタービン発電機へ送って発電するものである。そして、加圧水型原子炉は、蒸気発生器を介して高温高圧の一次冷却水の熱を二次冷却水に伝え、二次冷却水の水蒸気を発生させるものである。蒸気発生器は、多数の細い伝熱管の内側を一次冷却水が流れ、外側を流れる二次冷却水に熱を伝えて水蒸気を生成する。加圧水型原子炉は、この水蒸気によりタービンを回して発電している。
【0003】
蒸気発生器は、中空密閉形状をなす胴部内に、その内壁面と所定間隔をもって管群外筒を配設する。この管群外筒内にU字形状をなす複数の伝熱管を配設し、各伝熱管の端部を管板に支持する。また、伝熱管以外にも、ドレイン用や検査用等のため、管板、管群外筒や胴部に管を支持することがある。管を支持するためには、管台が用いられる。管台は管板や胴部等に溶接されて支持される。
【0004】
管台は管板や胴部等に溶接される前に正確に位置決めをしておく必要がある。特許文献1及び2には、従来の管台接合方法が開示されている。従来の管台接合方法は、管板の貫通孔に管の端部を挿入し、その端部の貫通孔の内面との間に円周溶接継手を形成して接合している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭58−108395号公報
【特許文献2】特開2008−214746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、円周溶接継手は先ず管台用部材に予熱を加えた上で仮溶接し位置決めする必要がある。予熱は、蒸気発生器を構成する高強度部材である低合金鋼等の溶接においては、溶接欠陥の発生を防止するために必要である。仮溶接により、管台用部材が予熱の熱膨張による変形・傾きや位置ずれの影響を受けることがある。そこで、管台用部材の変形の状態又は管板の所定位置に管台用部材が位置決めされている状態を検査する工程が必要となる。変形や位置ずれが生じている場合には手直しの再仮溶接が必要となることがあった。あるいは位置ずれや傾きが生じたまま本溶接を行うと本溶接後に所定の寸法内に収まらないことがあり、管台の外周上を本溶接するには本溶接の熱歪の影響を考慮しながら溶接作業を行う必要があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、管台用部材が容易に基材に対して位置決め可能であって溶接後にあっても管台用部材と基材とを高精度に接合できる管台接合方法、蒸気発生器の製造方法、管台用部材及び蒸気発生器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の管台接合方法は、基材と、管台とを接合する管台接合方法であって、前記管台となる管台用部材は前記基材に固定可能な固定部を有し、前記固定部により前記基材に前記管台用部材を仮固定する仮固定工程と、仮固定された前記管台用部材と前記基材との隙間の少なくとも一部を溶接させる接合工程と、溶接後の前記管台用部材から前記基材にかけて通路を開口する開口工程とを有することを特徴とする。
【0009】
この本発明の管台接合方法は、管台用部材に予熱を加えずに簡単に位置決めすることができる。また、予熱による変形がないので、接合工程で管台用部材と基材とを高精度に接合できる。
【0010】
また、この発明に係る管台接合方法は、前記開口工程において、前記固定部を除去することを特徴とする。
【0011】
開口と共に固定部が除去されるため、不要な固定部の除去を別工程とすることなく製造時間を短縮することができる。また、固定部を除去することに伴い、開口される通路内側にあった溶接部の溶接止端を除去する。従って、溶接止端に伴う不具合を排除することができる。さらに、溶接止端の除去により、管台用部材と基材との接合が完全溶け込みの状態となり接合の信頼性が向上する。
【0012】
また、この発明に係る管台接合方法は、前記固定部は前記基材からの前記管台用部材の抜けを規制する構造となっていることが好ましい。
【0013】
接合工程により、引張応力等の力が仮固定された管台用部材にかかり浮き上がりの力を受けることがあっても基材からの管台用部材の抜けが規制されているため接合精度を高くできる。
【0014】
また、この発明に係る管台接合方法は、前記固定部は前記基材に対して締結可能な締結構造となっていることが好ましい。前記固定部は雄螺子であって、基材には雌螺子が形成されていることが好ましい。雄螺子と雌螺子との噛み合わせにより、管台用部材が基材に対して浮き上がらないように、基材からの管台用部材の抜けが規制される。
【0015】
また、この発明に係る管台接合方法は、前記固定部と前記基材とのいずれか一方に凸形状を形成し、他方に前記凸形状が嵌め合わされる凹形状を有していることが好ましい。凹凸の嵌め合わせにより、管台用部材が基材に対して浮き上がらないように、基材からの管台用部材の抜けが規制される。
【0016】
また、この発明に係る管台接合方法は、前記管台用部材は前記固定部の周囲に前記基材表面に突き当て可能な突き当て面を有して基材表面と当接可能とする当接部を有していることが好ましい。
【0017】
当接部により、基材に対する管台用部材の姿勢が安定する。また、接合工程により、引張応力等の力が仮固定された管台用部材にかかり管台用部材を傾斜させる力を受けることがあっても当接部で力を受けることができる。基材に対する管台用部材の姿勢を保ったまま溶接できるため、基材と管台用部材との接合精度を高くできる。
【0018】
また、この発明に係る管台接合方法は、前記開口工程において、前記当接部を除去することが好ましい。
【0019】
開口と共に固定部と当接部が除去されるため、不要な固定部及び当接部の除去を別工程とすることなく製造時間を短縮することができる。また、固定部及び当接部を除去することに伴い、開口される通路内側にあった溶接部の溶接止端を除去する。従って、溶接止端に伴う不具合が仮に存在しても排除することができる。さらに、溶接止端の除去により、管台用部材と基材との接合が完全溶け込みの状態となり接合の信頼性が向上する。
【0020】
また、この発明に係る管台接合方法は、前記管台用部材は、固定部に近づく程外径が小さくなるテーパー形状を有することが好ましい。テーパー形状により、作業者が管台用部材と基材との隙間へトーチ等の溶接工具を届かせ易くなる。また、テーパー形状により、作業者が管台用部材と基材との隙間の奥を認識し易くなる。
【0021】
また、この発明に係る管台接合方法は、前記管台用部材は、平面視において前記固定部の外径より大きい外径を有する開口用工具で加工されることを特徴とする。
【0022】
固定部の外径よりも開口用工具の外径が大きいと、開口工程を行うことにより固定部は開口用工具により除去される。管台用部材の加工穴の内径を固定部の外径より大きくしておくことが好ましい。開口用工具の外径が加工穴の内径に倣うように選ばれることで、加工穴が開口工程のガイドとなる。そうすると、開口工程を行うことにより、固定部は確実に開口用工具により除去されることになる。
【0023】
また、この発明に係る管台接合方法は、平面視において前記開口用工具の加工中心と、前記固定部の外径中心とが重なりあうことを特徴とする。従って、固定部は確実に開口用工具により除去されることになる。
【0024】
また、この発明に係る管台接合方法を用いて製造される蒸気発生器の製造方法は、前記基材は、蒸気発生器の胴又は管板であることが好ましい。本発明は、原子力プラントの設備において管台接合の完全溶け込みの状態が実現できるため信頼性が確保できる。
【0025】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の管台用部材は、基材に管台として接合するための管台用部材であって、前記管台用部材は前記基材に固定可能な固定部を有することを特徴とする。
【0026】
本発明の管台用部材は、管台用部材に予熱を加えずに、簡単に基材に対する管台用部材の位置決めをすることができる。また、予熱による変形がないので、基材と管台用部材との接合精度を高くする利点がある。
【0027】
また、この発明に係る管台用部材は、開口用工具の挿入可能な加工穴を有し、平面視において前記加工穴の直径が前記固定部の外径より大きいことを特徴とする。
【0028】
固定部の外径よりも工具の外径が大きいと、開口工程を行うことにより固定部は開口用工具により除去される。管台用部材の加工穴の内径を固定部の外径より大きくしておくことが好ましい。工具の外径が加工穴の内径に倣うように選ばれることで、加工穴が開口工程のガイドとなる。そうすると、開口工程を行うことにより、固定部は確実に開口用工具により除去されることになる。
【0029】
また、この発明に係る管台用部材は、平面視において前記加工穴の内径中心と、前記固定部の外径中心とが重なりあうことを特徴とする。従って、固定部は確実に開口用工具により除去されることになる。
【0030】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の蒸気発生器は、蒸気発生器の基材と、前記基材の表面上に溶接部を介して溶接接合された管台と、少なくとも前記溶接部を貫通する通路とを有し、前記溶接部が前記通路に露出すると共に前記溶接部の前記通路の中心軸方向の厚みは前記通路に近づく程小さくなることを特徴とする。
【0031】
この発明に係る蒸気発生器は、溶接止端の除去により溶接部が通路に露出するので、管台用部材と基材との接合が完全溶け込みの状態となり接合の信頼性が向上する。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係る管台接合方法、蒸気発生器の製造方法、管台用部材及び蒸気発生器は、容易に位置決めが可能であって溶接後にあっても管台用部材と基材とを高精度に接合できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、原子力プラントの構成を示す説明図である。
【図2】図2は、図1に記載した原子力プラントの蒸気発生器の構成を示す説明図である。
【図3】図3は、実施例1に係る管台を示す断面図である。
【図4】図4は、実施例1に係る管台用部材と基材を示す断面図である。
【図5】図5は、実施例1に係る管台用部材と基材との仮固定を示す断面図である。
【図6】図6は、実施例1に係る管台用部材と基材との接合工程及び開口工程を説明する説明図である。
【図7】図7は、実施例1に係る管台用部材と基材との開口工程を説明する説明図である。
【図8】図8は、実施例2に係る管を示す断面図である。
【図9】図9は、実施例2に係る管台用部材と基材を説明する説明図である。
【図10】図10は、実施例3に係る管台用部材と基材を説明する説明図である。
【図11】図11は、実施例4に係る管台用部材と基材を説明する説明図である。
【図12】図12は、実施例4の変形例に係る管台用部材と基材を説明する説明図である。
【図13−1】図13−1は、実施例4の他の変形例に係る管台用部材と基材を説明する説明図である。
【図13−2】図13−2は、図13−1の要部平面図である。
【図13−3】図13−3は、図13−1の要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施例の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。また、この実施例に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【実施例1】
【0035】
図1は、原子力プラントの構成を示す説明図である。図2は、図1に記載した原子力プラントの蒸気発生器の構成を示す説明図である。図3は、実施例1に係る管台を示す断面図である。図4〜図7は、実施例1に係る管台用部材の接合方法を説明するための説明図である。
【0036】
[原子力プラント]
原子力プラント100には、例えば、加圧水型軽水炉原子力発電設備がある(図1参照)。この原子力プラント100は、原子炉格納容器110、原子炉120、加圧器130、蒸気発生器140及びポンプ150が一次冷却材管160により順次連結されて、一次冷却材の循環経路(一次系循環経路)が構成される。また、蒸気発生器140とタービン210との間に二次冷却材の循環経路(二次系循環経路)が構成される。
【0037】
この原子力プラント100は、先ず、一次冷却材が原子炉120にて加熱されて高温・高圧となり、加圧器130で加圧されて圧力を一定に維持されつつ蒸気発生器140に供給される。次に、蒸気発生器140にて一次冷却材と二次冷却材との熱交換が行われることにより、二次冷却材が蒸発して蒸気となる。そして、この蒸気となった二次冷却材がタービン210に供給されることにより、タービン210が駆動されて発電機220に動力が供給される。なお、蒸気発生器140を通過した一次冷却材は、一次冷却材管160を介して回収されて原子炉120側に供給される。また、タービン210を通過した二次冷却水は、復水器230で冷却された後に、二次冷却材管240を介して回収されて蒸気発生器140に供給される。原子力プラント100は、高温・高圧の流体や放射性物質を含む可能性のある流体を扱っている。このために製作時において厳しい管理が求められている。これらの配管は溶接構造物で構成されるため、溶接の健全性は必須の条件である。
【0038】
[蒸気発生器]
蒸気発生器140は、胴部141と、複数の伝熱管142と、気水分離器143と、湿分分離器144とを有する(図2参照)。胴部141は、略円筒形状かつ中空密閉構造を有し、長手方向を鉛直方向に向けて配置される。また、胴部141は、管板1411及び仕切板1412により区画されてなる一対の水室1413、1414を底部に有する。この水室1413(1414)は、入口側ノズル1415(出口側ノズル1416)を介して一次冷却材管160に接続される。伝熱管142は、略U字形状を有し、両端部を鉛直下方に向けて胴部141内に配置される。伝熱管142の両端部は管板1411に挿入されて支持される。また、伝熱管142の両端部は、入口側水室1413及び出口側水室1414に対してそれぞれ開口する。また、円筒形状を有する管群外筒145が胴部141内に配置され、この管群外筒145内に複数の伝熱管142が配置される。また、管群外筒145内には、複数の管支持板146が所定間隔を隔てて配列される。これらの管支持板146により各伝熱管142が支持される。また、管群外筒145は、胴部141の内壁に対して隙間を開けて配置される。気水分離器143は、給水を蒸気と熱水とに分離する装置である。湿分分離器144は、分離された蒸気の湿分を除去して乾き蒸気に近い状態とする装置である。
【0039】
この蒸気発生器140は、一次冷却材が入口側ノズル1415から入口側水室1413に流入し、伝熱管142を通って出口側水室1414に入り、出口側ノズル1416から外部に排出される。また、二次冷却材が給水管1417から胴部141内に導入されて管群外筒145内を通る。このとき、一次冷却材と二次冷却材との熱交換が行われて、二次冷却材が加熱される。そして、この二次冷却材が気水分離器143及び湿分分離器144を通過することにより、二次冷却水の蒸気成分が取り出されてタービン210側に供給される。
【0040】
また、蒸気発生器140は、伝熱管以外にも、ドレイン用や検査用等のため、管板、管群外筒や胴部に管を支持される。管を支持するためには、管台10、20が用いられる。管台は管板や胴部等に溶接されて支持される。蒸気発生器140は、溶接の健全性を保つため、完全溶け込みの状態で、管板、管群外筒や胴部に管台10、20を溶接する必要がある。ここで、完全溶け込みとは、二部材を接合する溶接継手において、少なくとも一方の継手の板厚全ての領域にわたって溶接されている溶け込みの状態をいう。蒸気発生器140等原子力プラント100の設備においては、管台の溶接に完全溶け込みの状態が実現されていることが必須の要件となる。
【0041】
[管台]
実施例1に係る管台10について、図面を参照して説明する。図3は、実施例1に係る管台の断面図である。
【0042】
先ず、図3に示すように、管台10は、基材である蒸気発生器140の胴部141に管状の継ぎ手である管台部11が溶接接合されている。管台部11は、略円筒形の外径をしている。管台部11は、例えば、低合金鋼あるいは炭素鋼で形成される。また、管台部11の外径はφ50mm〜150mm程度で高さが100mm〜150mm程度である。内部には胴部141の外表面141bと垂直な方向へ中心軸をもつ管台孔11xが開口されており、管台孔壁21を有している。管台孔11xの内径は、例えば、φ10mm〜50mm程度である。また、管台部11は、基材である胴部141と溶接される溶接面となるテーパー部17と、継管するための継手端部12と、継手端部12から管台孔壁21へ径が順次小さくなるすり鉢状のすり鉢壁22とを有している。
【0043】
また、胴部141には、外表面141bと内表面141cとを貫通する基材孔141xが開口されており、基材孔壁141aを有している。基材孔141xの中心軸Oに対して、管台部11の管台孔11xの中心軸があうように、胴部141に管台部11が溶接部14を介して溶接接合されている。そして、管台孔11xから基材孔141xにかけて開口され溶接部孔14xが貫通している。そして、管台孔11xと溶接部孔14xと基材孔141xにより、通路が形成されている。通路には溶接部が溶接部孔内壁14aに露出する。通路は同内径となっており、管台孔壁21と、溶接部孔内壁14aと基材孔壁141aとは連接して表面がなめらかに繋がっている。管台部11のテーパー部17は、胴部141の外表面141bに対して溶接部を介して対向している。管台部11のテーパー部17により、管台部11と胴部141の外表面141bの距離は徐々に広がることとなる。従って、管台部11のテーパー部17と胴部141の外表面141bの隙間に少なくとも形成される中心軸O方向の溶接部の厚みは溶接部孔内壁14aに近づく程小さくなる。また、実施例1の管台10は、管台部11のテーパー部17の全ての領域にわたって溶接部と溶接されている溶け込みであるから、完全溶け込みの状態となっている。管台部11と溶接部14との境界はボンド部14bとなる。また、胴部141と溶接部14との境界はボンド部14cとなる。また、管台部11の外周面11bと、溶接部14の外周面14dとは表面仕上げされている。溶接部14の外周面14dは、所定の曲率をもつように削られている。
【0044】
管台10は、管台孔11xと溶接部孔14xと基材孔141xとを有する通路を有している。少なくとも溶接部を貫通する通路を有しているので、溶接部14が通路に露出している。管台10は、完全溶け込みの状態で胴部141に溶接接合された管台部11を介して外部へ継管することができる。また、管台10は、正確な位置に接合されており、継手として高温・高圧でも信頼性を高くすることができる。
【0045】
[管台の製造方法]
実施例1に係る管台接合法について、図3から図7を参照して説明する。図5に示すように、図3における管台部11となる管台用部材111を用意する。管台用部材111は略円筒形の外径をしている。そして、テーパー部17は、管台用部材111の円筒中心軸Oに近づく程外径が小さくなるテーパー形状となっている。管台用部材111の円筒中心軸Oと同一の中心軸をもつ固定部13が管台用部材111のテーパー部17側である底部に形成されている。実施例1においては、テーパー部17と固定部13とは、底上げ部16を介して接続されている。底上げ部16は、本発明の必須の構成要素ではないが底上げをすることにより溶接後の溶接部の中心軸O方向の厚みを規定できる。実施例1に係る底上げ部16の外形は、固定部13と略同一形状である。また、管台用部材111は、基材である胴部141と溶接する溶接面となるテーパー部17と、継管するための継手端部12と、継手端部12から内径方向へ径が順次小さくなるすり鉢状のすり鉢壁22とを有している。すり鉢壁22は、加工穴23と接続する。加工穴23の中心には、開口用工具41をガイドするセンタガイド24を有する。固定部13の外周には、雄螺子15がねじ山加工されている。
【0046】
図4に示すように、基材である胴部141には、下穴32を加工した上でガイド穴31が形成されている。ガイド穴31は、管台用部材111の固定部13の雄螺子を受け入れ可能な雌螺子を形成するタップ加工が施されている。固定部13は雄螺子15であって、基材には雌螺子が形成されているので締結強度を大きくすることができる。ガイド穴31の加工は、胴部141に雌螺子加工を行う際に予め形成しておくと胴部141に加工する他の雌螺子加工と続けて加工することが可能となる。
【0047】
次に、図4及び図5を用いて仮固定工程について説明する。図4に示すガイド穴31に図4に示す管台用部材111の固定部13が締結されて図5に示すように仮固定される。雄螺子15をガイド穴31の雌螺子へねじ込むだけで予熱を加えずに簡単に、胴部141に対する管台用部材111の位置決めをすることができる。また、仮固定における検査を省くことも可能となる。
【0048】
次に図6を用いて接合工程について説明する。図6に示すように、管台用部材111と基材である胴部141との隙間の少なくとも一部を溶接により接合させる。具体的には、底上げ部16により、胴部141の外表面141bとテーパー部17との中心軸O方向の隙間の距離が規定されている。トーチ等の溶接工具が管台用部材111のテーパー部17と外表面141bとの間の隙間に差し込まれ肉盛溶接される。管台用部材111のテーパー部17があることで、胴部141の外表面141bの基準面と管台用部材111のテーパー部17との間に外周に向かって広がる空間が確保される。また、管台用部材111のテーパー部17があることで、作業者は管台用部材111と基材との隙間へ溶接工具を届きやすくなる。また、作業者は管台用部材111と基材との隙間の奥を認識し易くなる。従って、作業者は溶接止端Lの溶接品質を向上させることができる。肉盛溶接は、テーパー部17のテーパー外周端17aを超えて溶接止端Mをつくるように、溶接することが好ましい。後工程で、溶接止端Mを表面仕上げ加工することが容易となるからである。
【0049】
ところで、接合工程により、引張応力等の力が仮固定された管台用部材111にかかり、管台用部材111に浮き上がりの力を受けることがある。雄螺子と雌螺子との噛み合わせにより、管台用部材111が基材に対して浮き上がらないように、基材からの管台用部材111の抜けが規制される。仮固定工程において締結された締結構造(螺子構造)により、管台用部材111が胴部141から浮きあがり難いので、管台用部材111と胴部141とを高精度で接合できる。胴部141からの管台用部材111の抜けを規制する構造となっているため、接合工程での精度の狂い(基準面同士のくい違い、目違い)は最小限に抑えられている。胴部141の外表面141b上の溶接止端は溶接止端Nとなる。
【0050】
次に、図6及び図7を用いて開口工程について説明する。ここで、図7は、図6の管台用部材111の平面視における重なり合いを説明するための説明図である。図6に示すように、接合工程を経て、胴部141に接合された管台用部材111を例えばドリルのような開口用工具41で管台用部材111から胴部141へ開口する。ここで、管台用部材111の加工穴23は、開口用工具41の加工ガイドとなる。管台用部材111の円筒中心軸Oと一致するセンタガイド24から加工が開始される。開口工程は、開口用工具41が少なくとも胴部141に到達するまで継続される。開口工程は、少なくとも溶接部14を貫通する通路とすればよい。開口工程は、胴部141を全て貫通させる開口だけでなく、途中で開口用工具41による加工を止めてもよい。この場合図3の基材孔141xは、貫通孔でなく凹穴形状となる。凹穴形状となった基材孔141xであっても、例えば胴部141に他の横穴を開けて、凹穴形状となった基材孔141xへ他の横穴を接続することで通路とすることができる。ここで、図7に示すように、センタガイド24は、円筒中心軸Oと一致しており、円筒中心軸Oに沿って加工が行われる。開口用工具41が円筒中心軸O方向に加工するので、開口用工具41の加工中心と固定部13の外径中心が円筒中心軸Oの延長線上で一致する。図7において破線で示される固定部13の外径Pよりも開口用工具41をガイドする加工穴の直径Qを大きくしておくと、一般に開口用工具41の外径Rはガイドに倣うように選ばれるので、開口用工具41の外径Rが固定部13の外径Pよりも大きくなる。そうすると、開口工程を行うことにより、固定部13は開口用工具41により除去されることになる。開口工程と共に固定部13が除去されるため、不要な固定部13の除去を別工程とすることなく製造時間を短縮することができる。また、固定部13を除去することに伴い、管台用部材111と基材との溶接止端Lを除去する。従って、溶接止端Lに伴う不具合が仮に存在しても排除することができる。さらに、溶接止端Lの除去により、管台用部材111と基材との接合が完全溶け込みの状態となり接合の信頼性が向上する。開口用工具41の外径Rが固定部13の外径Pよりも大きくなっていれば、固定部13の中心軸と加工の軸は必ずしも一致しなくてもよい。図7に示すように、固定部の中心軸(外径中心)と、加工軸である円筒中心軸Oとが一致するように、平面視において加工穴23の内径中心と、固定部13の外径中心とが重なりあう方が、固定部13は開口用工具41により確実に除去されることになる。
【0051】
実施例1においては、図3に示すように、図6の開口用工具41が胴部141の外表面141bから内表面141cに到達するまで開口加工を行っている。開口加工は、開口用工具41が胴部141の外表面141bから内表面141cに到達するまで行わなくても、途中で止めてもよい。開口用工具41が胴部141の外表面141bを超えると、図6に示す溶接止端Lが除去されるため、完全溶け込みの状態で溶接接合された管台部11を介して外部へ継管することができる。
【0052】
次に、図3及び図6を用いて仕上げ工程について説明する。仕上げ工程では、図6に示す溶接止端M、Nをグラインダー等でなだらかにする。管台10の長期的な疲労強度を向上させるためである。仕上げ工程に伴い、図3に示すように、管台部11の外周面11bと、溶接部14の外周面14dとは表面仕上げされる。管台部11の外周面11bが例えば外径1mm〜6mm程度研削され細くなる。また、溶接部14の外周面14dは、所定の曲率を有するように加工される。また、通路内壁をなだらかにするため、管台孔壁21、溶接部孔内壁14a、基材孔壁141aも研削する等なだらかにすることが好ましい。その後、溶接後一般的な焼鈍工程等を施すことが好ましい。
【0053】
本発明は、管台用部材と基材とを高精度に接合できる。また、溶接止端の除去により溶接部が通路に露出するので、管台用部材と基材との接合が完全溶け込みの状態となり接合の信頼性が向上する。原子力プラントの設備において管台接合の完全溶け込みの状態が実現できるため信頼性が確保できる。実施例1の管台10は、基材が蒸気発生器140の胴部141として説明したが、基材を制限するものではなく、例えば基材は管板1411でもよい。
【実施例2】
【0054】
[管台]
図8は、実施例2に係る管台を示す断面図である。図9は、実施例2に係る管台接合方法を説明するための断面図である。なお、前述した実施例で説明したものと同じ部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。実施例2の管台20において、図8に示すように、管台20は、基材である蒸気発生器140の管板1411に管状の継ぎ手である管台部19が溶接接合されている。管台部19は、略円筒形の外形をしており、内部には管板1411の外表面1411bと垂直な方向へ中心軸をもつ管台孔19xが開口されており、管台孔壁21を有している。
【0055】
また、管板1411には、外表面1411bと内表面1411cとを貫通する基材孔1411xが開口されており、基材孔壁1411aを有している。基材孔1411xの中心軸に対して、管台部19の管台孔19xの中心軸があうように、管板1411に管台部19が溶接部14を介して溶接接合されている。そして、管台孔19xから基材孔1411xにかけて開口され溶接部孔14xが貫通している。管台孔19xと溶接部孔14xと基材孔141xとにより通路が形成されている。通路には溶接部14が溶接部孔内壁14aに露出する。通路は同径となっており、管台孔壁21と、溶接部孔内壁14aと基材孔壁1411aとは連接して表面がなめらかに繋がっている。また、実施例1の管台10と同様に、実施例2の管台20は、管台部19のテーパー部17の全ての領域にわたって溶接材料と溶接されている溶け込みであるから、完全溶け込みの状態となっている。管台部19と溶接部14との境界はボンド部14bとなる。また、管板1411と溶接部14との境界はボンド部14cとなる。管台部19の外周面19bと、溶接部14の外周面14dとは表面仕上げされている。実施例2の管台20は、管台部19の外周面19bと溶接部14の外周面14dを所定の曲率をもつように削っている。管台20は、管台孔19xと溶接部孔14xと基材孔1411xとを有する通路を有している。少なくとも溶接部14を貫通する通路を有しているので、溶接部14が通路に露出している。管台20は、完全溶け込みの状態で管板1411に溶接接合された管台部19を介して外部へ継管することができる。また、管台20は、正確な位置に接合されており、継手として高温・高圧でも信頼性を高くすることができる。
【0056】
[管台の製造方法]
実施例2に係る管台接合方法について、図9を参照して説明する。なお、前述した実施例で説明したものと同じ部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。図9に示すように、図8における管台部19となる管台用部材191を用意する。管台用部材191は略円筒形の外形をしている。管台用部材191は、基材である管板1411と溶接する溶接面となるテーパー部17を有している。テーパー部17は、管台用部材191の円筒中心軸Oに近づく程外径が小さくなるテーパー形状となっている。また、管台用部材191の円筒中心軸Oと同一の中心軸をもつ固定部13が管台用部材191のテーパー部17側である底部に形成されている。実施例2においては、管台用部材191の底部と固定部13とは、底上げ部16を介して形成されている。底上げ部16は、本発明の必須の構成要素ではないが底上げをすることにより溶接後の溶接部14の中心軸O方向の厚みを規定できる。実施例2に係る底上げ部16の外径Sは、固定部13の外径Pより大きく、固定部13と略相似形状である。底上げ部16の底面は、固定部13の周囲に位置し基材表面である管板1411の外表面1411bに突き当て可能な突き当て面を形成している当接部18である。当接部18の突き当て面は、中心軸Oに直交する面を含んでいる。
【0057】
また、管台用部材191は、継管するための継手端部12と、継手端部12から内径方向へ径が順次小さくなるすり鉢状のすり鉢壁22とを有している。
【0058】
次に、図9を用いて仮固定工程について説明する。図9に示すように、ガイド穴31に管台用部材191の固定部13が締結されて仮固定される。雄螺子15をガイド穴31の雌螺子へねじ込むだけで予熱を加えずに簡単に、管板1411に対する管台用部材191の位置決めをすることができる。また、仮固定における検査を省くことも可能となる。実施例2の管台用部材191においては、ガイド穴31に管台用部材191の固定部13が締結されると共に、当接部18が基材表面である管板1411の外表面1411bと当接される。
【0059】
次に図9を用いて接合工程について説明する。図9に示すように、管台用部材191と基材である管板1411との隙間の少なくとも一部を溶接により接合させる。
【0060】
ところで、接合工程により、引張応力等の力が仮固定された管台用部材191にかかり、管台用部材191に浮き上がりの力を受けることがある。雄螺子と雌螺子の噛み合わせにより、管台用部材191が管板1411に対して浮き上がらないように、基材からの管台用部材191の抜けが規制される。仮固定工程において締結された締結構造(螺子構造)により、管台用部材191が管板1411から浮きあがり難いので、管台用部材191と管板1411とを高精度で接合できる。管板1411からの管台用部材191の抜けを規制する構造となっているため、接合工程での精度の狂い(基準面同士のくい違い、目違い)は最小限に抑えられている。
【0061】
そして、実施例2の管台接合方法においては、さらに、当接部18が基材表面である管板1411の外表面1411bと当接される。当接部18により、基材である管板1411に対する管台用部材191の姿勢が安定する。また、接合工程により、引張応力等の力が仮固定された管台用部材191にかかり、管台用部材191が管板1411に対して傾斜させる力を受けることがあっても当接部18で力を受けとめることができる。基材に対する管台用部材191の姿勢を保ったまま溶接できるため、管台用部材191と管板1411とを高精度で接合できる。
【0062】
次に、図9を用いて開口工程について説明する。図9に示すように、接合工程を経て、管板1411に接合された管台用部材191を例えばドリルのような開口用工具である開口用工具41で管台用部材191から管板1411へ開口する。ここで、管台用部材191の加工穴23は、開口用工具41の加工ガイドとなる。管台用部材191の円筒中心軸Oと一致するセンタガイド24から加工が開始される。開口工程は、開口用工具41が少なくとも管板1411に到達するまで継続される。開口工程は、少なくとも溶接部14を貫通する通路とすればよい。開口工程は、管板1411を全て貫通させる開口だけでなく、途中で開口用工具41による加工を止めてもよい。この場合図8の基材孔1411xは、貫通孔でなく凹穴形状となる。凹穴形状となった基材孔1411xであっても、例えば管板1411に他の横穴を開けて、凹穴形状となった基材孔1411xへ他の横穴を接続することで通路とすることができる。ここで、図9に示すように、センタガイド24は、円筒中心軸Oと一致しており、円筒中心軸Oに沿って加工が行われる。図9において、当接部18(底上げ部16)の外径Sよりも開口用工具41をガイドする加工穴23の直径Qを大きくしておくと開口用工具41の外径Rはガイドに倣うように選ばれるので、開口用工具41の外径Rが当接部18(底上げ部16)の外径Sよりも大きくなる。そうすると、開口工程を行うことにより、当接部18(底上げ部16)と固定部13は開口用工具41により除去されることになる。開口工程と共に固定部13及び当接部18が除去されるため、不要な固定部13及び当接部18の除去を別工程とすることなく製造時間を短縮することができる。また、固定部13及び当接部18を除去することに伴い、管台用部材191と基材との溶接止端Lを除去する。従って、溶接止端Lに伴う不具合が仮に存在しても排除することができる。さらに、溶接止端Lの除去により、管台用部材191と基材との接合が完全溶け込みの状態となり接合の信頼性が向上する。
【0063】
実施例2においては、図8に示すように、開口用工具41が管板1411の外表面1411bから内表面1411cに到達するまで開口加工を行っている。開口加工は、開口用工具41が管板1411の外表面1411bから内表面1411cに到達するまで行わなくても、途中で止めてもよい。開口用工具41が管板1411の外表面1411bを超えると、図9に示す溶接止端Lが除去されるため、完全溶け込みの状態で溶接接合された管台部19を介して外部へ継管することができる。
【0064】
次に、図8及び図9を用いて仕上げ工程について説明する。仕上げ工程では、図9に示す溶接止端M、Nをグラインダー等でなだらかにする。管台20の長期的な疲労強度を向上させるためである。仕上げ工程に伴い、図8に示すように、管台部19の外周面19bと、溶接部14の外周面14dとは表面仕上げされる。管台部19の外周面19bは例えば外径1mm〜6mm程度研削され細くなる。また、管台部19の外周面19bと溶接部14の外周面14dは、所定の曲率を有するように加工される。また、開口した加工痕をなだらかにするため、管台孔壁21、溶接部孔内壁14a、基材孔壁1411aも研削する等なだらかにすることが好ましい。その後、溶接後一般的な焼鈍工程等を施すことが好ましい。
【0065】
本発明は、管台用部材と基材とを高精度に接合できる。また、溶接止端の除去により溶接部が通路に露出するので、管台用部材と基材との接合が完全溶け込みの状態となり接合の信頼性が向上する。原子力プラントの設備において管台接合の完全溶け込みの状態が実現できるため信頼性が確保できる。実施例2の管台20は、基材が蒸気発生器140の管板1411として説明したが、基材を制限するものではなく、例えば基材は実施例1と同様に胴部141でもよい。
【実施例3】
【0066】
図10は、実施例3に係る管台接合方法を説明するための断面図である。なお、前述した実施例で説明したものと同じ部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0067】
図10に示すように、図3における管台部11となる管台用部材112を用意する。管台用部材112は略円筒形の外形をしている。実施例3においては、管台用部材112のテーパー部17側である底部に底上げ部16を形成し、底上げ部16内に固定部となるガイド穴33が形成されている。ガイド穴33の内壁面に雌螺子36がタップ加工形成されている。そして、固定部のガイド穴33は、管台用部材112の円筒中心軸Oと同一の中心軸を有している。底上げ部16は、本発明の必須の構成要素ではないが底上げをすることにより溶接後の溶接部の中心軸O方向の厚みを規定できる。実施例3に係る底上げ部16の外形は、ガイド穴33と略同一形状であり、ガイド穴33の内径よりも大きな外径となる。底上げ部16の底面は、固定部の周囲に位置し基材表面である胴部141の外表面141bと平行な平坦面を形成している当接部18である。
【0068】
図10に示すように、基材である胴部141には、突出部34が形成されている。突出部34は、管台用部材112の固定部であるガイド穴33の雌螺子36へ挿入可能な雄螺子35を形成するねじ山加工が施されている。
【0069】
次に、仮固定工程について説明する。図10に示すように、固定部であるガイド穴33に突出部34が締結されて仮固定される。雄螺子35を雌螺子36へねじ込むだけで予熱を加えずに簡単に管台用部材112の位置決めをすることができる。
【0070】
以後、実施例1及び2と同様に、接合工程、開口工程及び仕上げ工程を施し、図3に示すような管台を完成させる。ところで、接合工程により、引張応力等の力が仮固定された管台用部材112にかかり浮き上がりの力を受けることがある。雄螺子35と雌螺子36の噛み合わせにより、管台用部材112が胴部141から浮き上がらないように、胴部141からの管台用部材112の抜けが規制される。仮固定工程において、締結された締結構造(螺子構造)により、管台用部材112が胴部141から浮きあがることがなく接合精度を向上できる。胴部141からの管台用部材112の抜けを規制する構造となっているため、接合工程での精度の狂い(基準面同士のくい違い、目違い)は最小限に抑えられている。
【実施例4】
【0071】
図11は、実施例4に係る管台接合方法を説明するための断面図である。なお、前述した実施例で説明したものと同じ部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0072】
図11に示すように、図3における管台部11となる管台用部材113を用意する。管台用部材113は略円筒形の外形をしている。そして、管台用部材113の円筒中心軸Oと同一の中心軸をもつ固定部51が管台用部材113のテーパー部17側である底部に形成されている。実施例4においては、管台用部材113の底部に底上げ部16を形成し、底上げ部16と固定部51とが連続形成されている。底上げ部16は、本発明の必須の構成要素ではないが底上げをすることにより溶接後の溶接部の中心軸O方向の厚みを規定できる。実施例4に係る底上げ部16の外形は、固定部51と略同一形状であり、同一径となる。
【0073】
図11に示すように、基材である胴部141には、ガイド穴52が形成されている。固定部51の外径Tは、ガイド穴52の内径Uよりもしばりばめに適切な範囲で設定される。
【0074】
次に、仮固定工程について説明する。図11に示すように、固定部51をガイド穴52へ圧入装着し締結されて仮固定される。固定部51が凸形状を形成し、基材に形成されたガイド穴52に凹形状を形成して固定部51とガイド穴52とが嵌め合い可能となっている。固定部51とガイド穴52との凹凸の嵌合は、逆でもよい。凹凸の嵌め合いだけで予熱を加えずに簡単に胴部141に対して管台用部材113を位置決めすることができる。以後、実施例1及び2と同様に、接合工程、開口工程及び仕上げ工程を施し、図3に示すような管台を完成させる。ところで、接合工程により、引張応力等の力が仮固定された管台用部材113にかかり、管台用部材113に浮き上がりの力を受けることがある。凹凸の嵌合により、管台用部材113が基材に対して浮き上がらないように、基材からの管台用部材113の抜けが規制される。仮固定工程において、締結された締結構造(嵌合構造)により、管台用部材113が胴部141から浮きあがり難くなる。つまり、胴部141からの管台用部材113の抜けを規制する構造となっているため、接合工程での精度の狂い(基準面同士のくい違い、目違い)は最小限に抑えられている。
【0075】
図12は、実施例4に係る管台接合方法の変形例を説明する説明図である。なお、前述した実施例で説明したものと同じ部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。図12に示すように、図3における管台部11となる管台用部材114を用意する。管台用部材114は、図12に示すようなピン形状の固定部53を有している。胴部141の外表面141bは、図12に示すような固定部53に対応する穴形状のガイド穴54を有している。図12に示すように、固定部53をガイド穴54へ装着し締結されて仮固定される。すなわち、固定部53が凸形状を形成し、基材に形成されたガイド穴54に凹形状を形成して固定部53とガイド穴54とが嵌め合い可能となっている。固定部53とガイド穴54との凹凸の嵌合は、逆でもよい。凹凸の嵌め合いだけで予熱を加えずに簡単に胴部141に対して管台用部材114を位置決めすることができる。以後、実施例1及び2と同様に、接合工程、開口工程及び仕上げ工程を施し、図3に示すような管台を完成させる。ところで、接合工程により、引張応力等の力が仮固定された管台用部材114にかかり、管台用部材114に浮き上がりの力を受けることがある。凹凸の嵌合により、管台用部材114が基材に対して浮き上がらないように、基材からの管台用部材114の抜けが規制される。仮固定工程において、締結された締結構造(嵌合構造)により、管台用部材114が胴部141から浮きあがり難くなる。つまり、胴部141からの管台用部材114の抜けを規制する構造となっているため、接合工程での精度の狂い(基準面同士のくい違い、目違い)は最小限に抑えられている。
【0076】
図13−1、図13−2及び図13−3は、実施例4に係る管台接合方法の他の変形例を説明する説明図である。なお、前述した実施例で説明したものと同じ部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。図13−1に示すように、図3における管台部11となる管台用部材115を用意する。管台用部材115は、図13−1に示すような係合凸部56がついた固定部55を有している。胴部141は、ガイド穴57を有しており、図13−1に示すような係合凹部59をつけた穴形状とする。図13−2は、固定部55のみを管台用部材115のテーパー部17側である底部より平面視でみた平面図である。固定部55は、固定部55の外周の一部に係合凸部56を有している。図13−3は、ガイド穴57を胴部141b側である上面より平面視でみた平面図である。ガイド穴57は、挿入溝58を有しており、挿入溝58以外では係合凹部59は、胴部141bの陰となっている。図13−1、図13−2及び図13−3を用いて、固定部55とガイド穴57との係合を説明する。固定部55の係合凸部56をガイド穴57の挿入溝58を通すように挿入する。挿入後に、図13−1に示すように係合凸部56と係合凹部59が噛み合うように管台用部材115を回転する。係合凸部56と係合凹部59が噛み合うことで、胴部141からの管台用部材115の抜けを規制されることになり、締結されて仮固定される。凹凸の係合だけで予熱を加えずに簡単に胴部141に対して管台用部材115を位置決めすることができる。以後、実施例1及び2と同様に、接合工程、開口工程及び仕上げ工程を施し、図3に示すような管台を完成させる。ところで、接合工程により、引張応力等の力が仮固定された管台用部材115にかかり、管台用部材115に浮き上がりの力を受けることがある。凹凸の係合により、管台用部材115が胴部141に対して浮き上がらないように、基材からの管台用部材115の抜けが規制される。仮固定工程において、締結された締結構造(係合構造)により、管台用部材115が胴部141から浮きあがり難くなる。つまり、胴部141からの管台用部材115の抜けを規制する構造となっているため、接合工程での精度の狂い(基準面同士のくい違い、目違い)は最小限に抑えられている。
【0077】
以上、実施例で説明してきた管台を用いて、伝熱管、ドレイン用や検査用等のため、管板、管群外筒や胴部に管を支持することが可能となる。加圧水型軽水炉原子力発電設備を例に説明してきたが、沸騰水型及びその他の原子力プラントにも適用可能である。また、一般の熱交換器、火力発電プラントにも応用可能である。高温・高圧な配管において、本発明はより効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0078】
以上のように、本発明に係る管台接合方法、管台用部材は、例えば、蒸気発生器等の熱交換器及びその製造方法に有用であり、特に、原子力プラント、火力発電プラント等に適している。
【符号の説明】
【0079】
10、20 管台
11x、19x 管台孔
13、33、51、53、55 固定部
14a 溶接部孔内壁
14d 外周面
14x 溶接部孔
15 雄螺子
17 テーパー部
17a テーパー外周端
18 当接部
11、19 管台部
11b、19b 外周面
21 管台孔壁
24 センタガイド
31、52、54、57 ガイド穴
34 突出部
41 開口用工具
58 挿入溝
100 原子力プラント
110 原子炉格納容器
111、191、112、113、114、115 管台用部材
130 加圧器
141 胴部
141a 胴部の基材孔壁
141b 胴部の外表面
141c 胴部の内表面
141x 基材孔
1411 管板
1411a 管板の基材孔壁
1411b 管板の外表面
1411c 管板の内表面
1411x 基材孔
1413、1414 水室
1415 入口側ノズル
1416 出口側ノズル
142 各伝熱管
143 気水分離器
145 管群外筒
146 管支持板
160 一次冷却材管
210 タービン
220 発電機
230 復水器
L、M、N 溶接止端
O 円筒中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、管台とを接合する管台接合方法であって、
前記管台となる管台用部材は前記基材に固定可能な固定部を有し、前記固定部により前記基材に前記管台用部材を仮固定する仮固定工程と、
仮固定された前記管台用部材と前記基材との隙間の少なくとも一部を溶接させる接合工程と、
溶接後の前記管台用部材から前記基材にかけて通路を開口する開口工程と、を有することを特徴とする管台接合方法。
【請求項2】
前記開口工程において、前記固定部を除去することを特徴とする請求項1記載の管台接合方法。
【請求項3】
前記固定部は前記基材からの前記管台用部材の抜けを規制する構造となっている請求項1又は2記載の管台接合方法。
【請求項4】
前記固定部は基材に対して締結可能な締結構造となっている請求項1から3のいずれか一つに記載の管台接合方法。
【請求項5】
前記固定部は雄螺子であって、前記基材には雌螺子が形成されている請求項3又は4記載の管台接合方法。
【請求項6】
前記固定部と前記基材とのいずれか一方に凸形状を形成し、他方に前記凸形状が嵌め合わされる凹形状を有している請求項3又は4記載の管台接合方法。
【請求項7】
前記管台用部材は前記固定部の周囲に前記基材表面に突き当て可能な突き当て面を有して基材表面と当接可能とする当接部を有している請求項1から6のいずれか一つに記載の管台接合方法。
【請求項8】
前記開口工程において、前記当接部を除去する請求項7記載の管台接合方法。
【請求項9】
前記管台用部材は、前記固定部に近づく程外径が小さくなるテーパー形状を有する請求項1から8のいずれか一つに記載の管台接合方法。
【請求項10】
前記管台用部材は、平面視において前記固定部の外径より大きい外径の開口用工具により加工されることを特徴とする請求項1から9のいずれか一つに記載の管台接合方法。
【請求項11】
前記管台用部材は、平面視において前記開口用工具の加工中心と、前記固定部の外径中心とが重なりあうことを特徴とする請求項10記載の管台接合方法。
【請求項12】
前記基材は、蒸気発生器の胴又は管板である請求項1から11のいずれか一つに記載の管台接合方法を用いて製造される蒸気発生器の製造方法。
【請求項13】
基材に管台として接合されるための管台用部材であって、
前記管台用部材は前記基材に固定可能な固定部を有することを特徴とする管台用部材。
【請求項14】
前記管台用部材が開口用工具の挿入可能な加工穴を有し、平面視において前記加工穴の直径が前記固定部の外径より大きいことを特徴とする請求項13記載の管台用部材。
【請求項15】
平面視において前記加工穴の内径中心と、前記固定部の外径中心とが重なりあうことを特徴とする請求項14記載の管台用部材。
【請求項16】
蒸気発生器の基材と、
前記基材の表面上に溶接部を介して溶接接合された管台と、少なくとも前記溶接部を貫通する通路とを有し、
前記溶接部が前記通路に露出すると共に前記溶接部の前記通路の中心軸方向の厚みは前記通路に近づく程小さくなることを特徴とする蒸気発生器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13−1】
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【図13−2】
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【図13−3】
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【公開番号】特開2012−45639(P2012−45639A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187649(P2010−187649)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】