説明

管楽器の管体

【課題】本発明は、分岐管を有する管楽器において、マウスピースの交換を可能とすることを目的とする。
【解決手段】管楽器は、テーパー管およびストレート管が接続して構成されている管体とマウスピースとで構成されている。管体は、2本のストレート管が分岐する形状に接続されている分岐管と吹込部とで構成されている。分岐管は、断面積Saのストレート管である主管の側面に両端が開口するストレート管である副管部が接続して構成されている。主管は、副管部と接続している側の開口する開口部で吹込部と接続されている。分岐管は、高さLa、上底面から頂点までの距離Raおよび上底面の中空部分の断面積Saであるテーパー管の共鳴特性を近似する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管楽器の管体に関する。
【背景技術】
【0002】
自然楽器における発音メカニズムをシミュレートして楽音を合成する技術が知られている。特許文献1では、円錐面を有する共鳴管における共鳴特性を2種のストレート管を分岐接続したもので近似して再現する技術が開示されている。
【0003】
図1は、円錐面を有する共鳴管における共鳴特性の近似を説明する図である。図1(a)は、円錐面204を有する共鳴管200の断面図である。共鳴管200は、中空の円錐形を円錐形の頂点Vから円錐形の回転軸X1に沿った矢印D1の方向に距離Rだけ離れた位置にある平面と頂点Vから矢印D1の方向に距離(R+L)だけ離れた位置にある平面とで切り取った形状に形成されている。共鳴管200は、頂点Vから距離(R+L)の位置に開口する開口部201を有し、頂点Vから距離Rの位置に開口する開口部202を有する。開口部202における中空部分の面積を面積Sとし、開口部201における中空部分の面積を面積S2とする。共鳴管200においては、面積Sと面積S2とは異なっている。このように、共鳴管200は、両端の開口部の断面積が異なる管体(以下、「テーパー管」という。)である。このとき、回転軸X1を「テーパー管の回転軸」、断面積が大きい開口部201を「下底面」、断面積が小さい開口部202を「上底面」、下底面から上底面までの長さLを「高さ」および長さRを「上底面から頂点までの距離」という。
【0004】
共鳴管200においては、開口部202から入力される音によって共鳴管200内部の気柱203が共鳴する。入力される音の音速をc、気柱203の空気密度をρ、入力される音の波数をkとする。共鳴管200と空気との摩擦などの減衰を無視し、終端が開口部201で完全反射する場合、矢印D1が示す部分から見た共鳴管200の入力音響インピーダンスZは以下の数式(1)で表される。
【0005】
【数1】

【0006】
ここで、数式(1)の一部を数式(2)、数式(3)と置き換えると、数式(4)が成り立つ。
【0007】
【数2】

【0008】
数式(4)に示されるとおり、Zは、ZRとZLの並列接続により実現される。ここで、ZRは、kRが小さいとき数式(5)のように近似される。
【0009】
【数3】

【0010】
数式(5)に示されるとおり、断面積Sおよび長さLで終端を開口部としたストレート管の音響インピーダンスがZLとなり、kRが小さい場合、断面積Sおよび長さRで終端を開口部としたストレート管の音響インピーダンスがZRとなる。以上の結果から、共鳴管200の音響インピーダンスは、接続した2本のストレート管の音響インピーダンスによって近似される。以下、説明の便宜上、2つの管体の音響インピーダンスが近似している場合を指して、2つの管体が近似しているという。
【0011】
図1(b)は、共鳴管200を近似する管体210の断面図である。管体210は、中空の円柱を回転軸X2に直交する平面で切り取った形状に形成されている。管体210は、一方の端部に開口する開口部211を有し、反対側の端部に開口する開口部216を有する。管体210においては、開口部211および開口部216の中空部分の面積が面積Sとする。また、管体210は、回転軸X2に直交する平面で切り取った断面における中空部分の面積(以下、「断面積」という。)はどの位置であっても面積Sとなる。このように、管体210は、断面積が変化しない管体(以下、「ストレート管」という。)である。このとき、回転軸X2を「ストレート管の回転軸」およびストレート管が両端に有する開口部同士の距離を「ストレート管の長さ」という。
【0012】
管体210は、長さがLのストレート管214と長さがRのストレート管215とを接続させた形状に形成されている。ストレート管214は、一方の端部に開口する開口部211を有する。ストレート管215は、一方の端部に開口する開口部216を有する。ストレート管214およびストレート管215は、断面の位置によって断面積が変化しないものとする。なお、実際に断面積が全く変化しないストレート管を作成することは困難であるが、概ね断面積が変化せずに数式(5)等の近似式における有効桁数の範囲で誤差が収まっていればよい。以下の説明においては、便宜上ストレート管の断面積は変化しないものとする。
【0013】
ストレート管214は、内部に気柱213を有する。気柱213は、ストレート管214の回転軸X2に沿った方向の長さがLである。以下、説明の便宜上、ストレート管内部の気柱におけるこのストレート管の回転軸に沿った方向の長さを、気柱の長さという。また、テーパー管内部の気柱においてもテーパー管の回転軸に沿った方向の長さを気柱の長さという。管体210においては、矢印D2が示すストレート管214とストレート管215との接続部に音を入力するものとする。ここで、正の定数であるHを式(5)に加える。
【0014】
【数4】

【0015】
kRに対して1より小さいHを乗じてより小さい値kHRとしてからtan(kHR)と近似することで、近似の精度が向上する。kHRが小さい場合、断面積HS、長さHRのストレート管で終端を開口部とした場合の音響インピーダンスが数式(6)で表される
。以上の結果から、太さの異なる2本のストレート管が共鳴管200を近似する。
図1(c)は、共鳴管200を近似する管体220の断面図である。管体220は、断面積がSで長さLのストレート管224と断面積がHSで長さHRのストレート管225とを接続させた形状に形成されている。ストレート管224は、内部に長さがLの気柱を有する。管体220においては、矢印D2が示すストレート管224とストレート管225との接続部に音を入力するものとする。
【0016】
図2は、管体210および管体220のインピーダンスカーブICを示す図である。インピーダンスカーブIC210は管体210の、インピーダンスカーブIC220は管体220のインピーダンスICをそれぞれ示す。図2に示されるように、管体210と管体220とではインピーダンスカーブのピークにおける周波数の調和度が異なる。この場合、管体210に比べて管体220の方がより調和から外れるため、テーパー管の特性に近くなる。特許文献1においては、上述した共鳴管200をストレート管で近似して自然楽器に応用した例が示されている。
【0017】
図3(a)は、図1(a)の円錐管204にマウスピース300を取り付けた管楽器を示す図である。管体200は、円錐管204とこの円錐管の入口部に取り付けられたコルクからなる。このコルクを介して管体200はマウスピースの内側へ装着される。
図3(b)は、分岐管を備える管楽器を示す図である。この管楽器は、例えばサキソフォーンのように、マウスピース内から管体が開始する図3(a)のような構造を持つ管体全体を分岐管で近似する。このような構造から、マウスピース300内に存在するストレート管231とマウスピース300との継ぎ目の部分にマウスピース300およびストレート管231を貫通する開口部800が形成されており、この開口部800に中空円筒形状のアタッチメント801が嵌め込まれるようになっている。このアタッチメント801は、上述の説明における長さがHRであり、かつ、断面積がHSであるストレート管としての機能を果すために装着されるものである。以下、説明の便宜上、ストレート管231を主管部、アタッチメント801を副管部、主管部と副管部とによって構成される部分を分岐管という。
後述する音孔と上記副管部の違いは、音孔の終端部は所望の音高を得る用途のために開状態と閉状態が変化するのに対し、副管部の終端部は、所望の音高を得る用途のために常に開状態とする点である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特許第2707913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、このような構成では、マウスピースが取り付けられる位置に副管部が位置するため、マウスピースに穴を開けて副管部を通す必要がある。このためマウスピースは固定され、演奏者が好みのマウスピースに交換することができないという不都合があった。
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、分岐管を有する管楽器において、マウスピースの交換を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するため、本発明は、マウスピースを着脱可能とする着脱部を有する管状の1つの吹込部と、管状の主管部と管状の副管部とに分岐した分岐管であって、前記主管部と前記副管部とが分岐した部分に前記吹込部が接続された分岐管とを具備し、前記主管部または前記吹込部は、前記副管部の終端部もしくは前記副管部の一部が開口した状態
で所望の音高を得るための音高調整部を有し、前記吹込部から気体が吹き込まれると、当該気体が前記主管部および前記副管部の双方に流れることを特徴とする管楽器の管体を提供する。
【0021】
本発明の好ましい態様において、前記音高調整部は、音孔、迂回管またはスライド管であってもよい。
【0022】
本発明の好ましい態様において、前記主管部および前記副管部はストレート管であってもよい。
【0023】
本発明の好ましい態様において、前記着脱部は、薄片状のリードまたはリップリードを用いるマウスピースを着脱可能としてもよい。
【0024】
本発明の好ましい態様において、前記吹込部は、ストレート管であってもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、分岐管を有する管楽器において、マウスピースの交換が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】円錐形の共鳴管における共鳴特性の近似を説明する図である。
【図2】管体のインピーダンスカーブを示す図である。
【図3】テーパー管を備える管楽器と、これを近似する分岐管を備える管楽器を説明する図である。
【図4】テーパー管を備える管楽器を説明する図である。
【図5】第1実施形態に係る管体の外観図である。
【図6】第1実施形態に係る管体を備える管楽器を説明する図である。
【図7】テーパー率の異なるテーパー管を備える管楽器を説明する図である。
【図8】第2実施形態に係る管楽器の管体を説明する図である。
【図9】第3実施形態に係る管楽器の管体を説明する図である。
【図10】第4実施形態に係る管楽器の管体を説明する図である。
【図11】変形例1に係る管楽器の断面図である。
【図12】リップリードのマウスピースを備える管楽器を説明する図である。
【図13】変形例2に係る管楽器の管体を説明する図である。
【図14】変形例3に係る管楽器の管体を説明する図である。
【図15】変形例4に係る管楽器の管体を説明する図である。
【図16】変形例5に係る管楽器の管体を説明する図である。
【図17】変形例6を適用した管楽器の例を示す図である。
【図18】変形例7に係る管楽器の管体を説明する図である。
【図19】変形例8に係る管楽器の管体を説明する図である。
【図20】変形例9に係る管楽器の管体を説明する図である。
【図21】変形例10を適用した管楽器の一例を示す図である。
【図22】変形例11を適用した管楽器の一例を示す図である。
【図23】変形例17を適用する前の管楽器の管体を説明する図である。
【図24】変形例17を適用した管楽器の例を示す図である。
【図25】変形例18を適用する前の管楽器の管体を説明する図である。
【図26】変形例18を適用した管楽器の例を示す図である。
【図27】変形例21に係る管楽器の管体を説明する図である。
【図28】変形例22に係る管楽器の管体を説明する図である。
【図29】第1実施形態に係る管楽器全体の音響特性を説明する図である。
【図30】変形例11に係る管楽器全体の音響特性を説明する図である。
【図31】変形例21に係る管楽器全体の音響特性を説明する図である。
【図32】変形例22に係る管楽器全体の音響特性を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<第1実施形態>
図4は、テーパー管122aを備える管楽器100aを説明する図である。この管楽器の形状は図3(a)と全く同じであるが説明の都合上テーパー管を2分割し、新たに寸法や符号が振られている。よってS2aは図3(a)のSに等しく、RaとLaの合計長は図3(a)のRとLの合計長と等しい、という関係にある。図4は、管楽器100aの断面図である。管楽器100aは、管体120aとマウスピース130aとで構成されている。管体120aは、真鍮等の金属またはプラスチックなどで形成されている。管体120aは、テーパー管122aとテーパー管122aに連続するテーパー管124aとで構成されている。ここで、円錐形における回転軸に沿った単位長さ当たりの広がりの大きさをテーパー率TRといい、円錐形の広がり方の度合いを示す尺度として用いる。このとき、テーパー管122aおよびテーパー管124aのテーパー率は同じである。テーパー管122aは、高さがLa、上底面における断面積がSa、上底面から頂点までの長さがRaのテーパー管である。テーパー管124aは、下底面における断面積がSa、上底面における断面積がS2aである。テーパー管124aには、上底面側からマウスピース130aが装着される。
【0028】
図5は、第1実施形態に係る管体20aの外観図である。図5を含む以下の図においては、各構成要素の寸法は、構成要素の形状を容易に理解できるように実際の寸法とは異ならせてある。図5においては、分かりやすくするため、断面積を示す部分を網目に塗りつぶして示した。管体20aは、真鍮等の金属またはプラスチックなどで形成されている。管体20aは、管軸方向が直線状のストレート管状の主管部22a、管軸方向が直線状のストレート管状の副管部23aおよびテーパー管状の吹込部24aとを備える。主管部22aおよび副管部23aは互いに接続して、主管部22aと副管部23aとに分岐した分岐管21aを構成する。
【0029】
図6は、第1実施形態に係る管体20aを備える管楽器10aを説明する図である。図5と共通の部分は、同じ符号を用いて説明を省略する。図6(a)は、図5に示した切断線AAにおける管体20aの断面図である。吹込部24aは、テーパー管の下底面側に中空の接続部24a1を有し、テーパー管の上底面側に開口する開口部24a2を有する。ここで、図4に示す接続部24a1における吹込部24a内部の中空部分の面積はSaで、開口部24a2の断面積はS2aであるとする。断面積Saは断面積S2aよりも大きい。
【0030】
主管部22aは、一方の端部に開口する開口部22a1を有し、他方側に中空の接続部22a2を有する。主管部22aは、接続部22a2において吹込部24aと接続している。主管部22aの断面積はSaである。すなわち、接続部22a2における断面積はSaである。主管部22aは、接続部22a2側の端部の側面で副管部23aと接続されている。副管部23aは、一方の端部で主管部22aと接続し、他方の端部は開口している。主管部22aおよび副管部23aの内部の空間は接続している。すなわち、接続部22a2は、分岐管21aが主管部22aと副管部23aとに分岐した部分に位置する。分岐管21aは、接続部22a2と接続部24a1とを向かい合わせて吹込部24aと接続されている。このように構成されることで、1つの吹込部24aから吹き込まれた気体(例えば空気)が主管部22aおよび副管部23aを流れる。
【0031】
図6(b)は、図6(a)に示す管体20aを備える管楽器10aの断面図である。管楽器10aは、管体20aとマウスピース30aとで構成されている。マウスピース30
aは、演奏者が唇を当てて息を吹き込む管楽器の部品である。マウスピース30aは、エボナイト等で形成されている。マウスピース30aは、ケーン等で形成されている薄片状のリード31aを備える。マウスピース30aは、自然楽器においては、木管楽器に用いられる。マウスピース30aは、演奏者がリード31aを振動させて生じる空気の振動を管体20aに伝達する。
【0032】
吹込部24aは、開口部24a2側にマウスピース30aが装着されている。吹込部24aは、マウスピース30aを着脱可能とする着脱部24a3を有する。吹込部24aには、コルク40aが接着されて、これにかぶせるようにマウスピース30aを嵌め込む。吹込部24aおよびマウスピース30aの位置を固定すると同時にマウスピース30aを嵌め込む長さを調整することにより管楽器10aが発音する音高を微調整することができる。コルク40a付き吹込部24aに装着されたマウスピース30aは着脱可能である。管楽器10aにおいては、着脱部24a3と副管部23aとが異なる位置にあるため、図3のマウスピース300のようにマウスピース30aに開口部を形成する必要がない。このため、着脱部24a3には、通常のサックス等に用いられるマウスピースを着脱することができる。
【0033】
開口部22a1から副管部23aの中心線Daまでの距離がLaである。ここで、主管部22aにおいて開口部22a1のみが開口した状態であり、副管部23aの長さがH×Raで断面積がH×Saである場合には、分岐管21aは、上底面から頂点までの距離がRa、上底面の断面積がSaおよび上底面と下底面との距離がLaであるテーパー管に近似される。Hは、上述の式(6)で示した1よりも小さい正の定数である。
【0034】
図29は、第1実施形態に係る管楽器10a全体の音響特性を説明する図である。図29中の線Aは、図4に示すマウスピース130aが円錐管(管体120a)に接続された場合の入力インピーダンスカーブである。図29中の線Bは、図4に示す管楽器100aを図3(b)に示すように副管部(アタッチメント801)がマウスピース300の内部で分岐する形態で近似し、主管(ストレート管231)の断面積Sが図4に示す円錐管(管体120a)の上底面の断面積S2aと等しく音孔(不図示)をすべて閉じた場合の入力インピーダンスカーブである。図29中の線Cは第1実施形態における図6(b)に示すように吹込部24a以降を分岐管21aとして近似し、音孔(後述する音孔25a)をすべて閉じた場合の入力インピーダンスカーブである。
これらを比較すると、第1実施形態(線C)では、図3(b)に示すように、副管部がマウスピースの内部で分岐する従来の分岐管楽器(線B)に比べ、特に低音の入力インピーダンスカーブのピーク値が、近似前の図4に示す管楽器100a(線A)に近く、良好な音響特性を持つことがわかる。
【0035】
上述のとおり、分岐管21aは、テーパー管122aを近似している。このため、管楽器10aが発音する音の音色は、管楽器100aが発音する音の音色を近似したものになる。以下、説明の便宜上、発音する音の音色が近似する関係を指して、2つの管楽器が近似しているという。なお、分岐管21aは、テーパー管122aを近似する形状に限られるものではない。
【0036】
図6(b)に戻る。主管部22aは、開口部22a1に近い側から側壁に開口する音孔25a1,25a2,25a3,25a4,25a5,25a6,25a7(以下、区別しない場合は「音孔25a」という。)を有する。音孔25aは、演奏者の操作によって開閉される。音孔25aは、開閉される音孔25aの組み合わせに応じて主管部22a内部で共鳴する気柱の長さを変化させて所望の音高を得る。本実施形態においては、音孔25aが、本発明に係る「音高調整部」に相当する。このため、演奏者が管楽器10aを演奏しながら音孔25aを操作して開閉すると、分岐管21a内部で共鳴する音の波長が変
化し、管楽器10aが発音する音高が変化する。
【0037】
管楽器10aは、開閉する音孔25aの組み合わせに応じてあらかじめ設定された高さの音(以下、「設定音」という。)を発音する。例えば、演奏者が、音孔25a1〜25a3を開いて音孔25a4〜25a7を閉じた状態に操作して管楽器10aを演奏すると、管楽器10aは、Fの音を発音する。この状態を、音孔25a3まで開いた状態で演奏するといい、音孔25a3の設定音がFに設定されているという。これと同様に、音孔25a1,25a2,25a3,25a4,25a5,25a6,25a7は、設定音がそれぞれD,E,F,G,A,B,Cに設定されている。各音孔25aは、副管部23aの終端部が開口した状態で、各々の設定音の音高で発音されるような配置と大きさとで形成されている。なお、これら設定音は一例であり、各音孔25aに他の音が設定されてもよいし、他の開閉の組み合わせに対して音が設定されてもよい。また、音孔25aの個数、配置または大きさなどは管楽器に発音させる音や音域に応じて定めればよい。
【0038】
<第2実施形態>
図7は、テーパー率の異なるテーパー管122bを備える管楽器100bの断面図である。管楽器100bは、管体120bとマウスピース130bとで構成されている。管体120bは、真鍮等の金属またはプラスチックなどで形成されている。管体120bは、テーパー管122bとテーパー管122bに接続するテーパー管124bとで構成されている。テーパー管122bは、高さがLb、上底面における断面積がSb、上底面から頂点までの長さがRbのテーパー管である。テーパー管124bは、下底面における断面積がSb、上底面における断面積がS2bである。テーパー管124bには、上底面側からマウスピース130bが装着される。
【0039】
テーパー管122bとテーパー管124bとは、円錐形の広がり方が異なっている。具体的には、テーパー管122bのテーパー率は、テーパー管124bのテーパー率よりも小さい。テーパー管124bのテーパー率は、テーパー管124bの上底面の直径を、上底面から頂点までの長さR2bで除して求められる。また、テーパー管122bのテーパー率は、テーパー管122bの上底面の直径を、上底面から頂点までの長さRbで除して求められる。
【0040】
図8は、第2実施形態に係る管楽器10bの管体20bを説明する図である。図8では、管楽器10aと同じではないが対応する構成の符号のaをbに変えて示す。この構成においては、同じ特徴の説明は省略し、異なる特徴についてのみ説明する。図8は、管楽器10bの断面図である。管楽器10bは、テーパー管およびストレート管が接続して構成されている管体20bとマウスピース30aに対応するマウスピース30bとを含んで構成されている。管体20bは、分岐管21aに対応する分岐管21bと吹込部24bとで構成されている。
【0041】
吹込部24bは、テーパー管の下底面側に中空の接続部24b1を有し、テーパー管の上底面側に開口する開口部24b2を有する。接続部24b1の断面積はSbで、開口部24b2の断面積はS2bである。断面積Sbは断面積S2bより大きく、接続部24b1の半径は開口部24b2の半径よりも大きい。吹込部24bは、断面積の大きい接続部24b1側で分岐管21bと接続している。吹込部24bは、断面積の小さい開口部24b2側にマウスピース30bが装着されている。吹込部24bとマウスピース30bとの間には、コルク40bが装着されて隙間を埋めている。吹込部24bに装着されたマウスピース30bは着脱可能である。吹込部24bは、マウスピース30bを着脱する着脱部24b3を有する。このように構成されることで、1つの吹込部24bから吹き込まれた空気が主管部22bおよび副管部23bを流れる。
【0042】
管楽器10bは、テーパー管の吹込部24bを備えているため、吹込部をストレート管とした場合に比べて、演奏者にテーパー管の吹込部を有する管楽器に似た吹奏感を与えることができる。また、この吹込部の長さを調節することにより、演奏者が感じる吹き込む息に対する抵抗感を調節することもできる。さらに、管楽器10bは、テーパー率の異なるテーパー管を備える管楽器の音を再現することもできる。以下、その説明をする。
【0043】
管楽器10bにおいては、開口部22b1から副管部23bの中心線Dbまでの距離がLbである。ここで、主管部22bにおいて開口部22b1のみが開口した状態であり、副管部23bの長さがH×Rbで断面積がH×Sbである場合には、分岐管21bは、上底面から頂点までの距離がRb、上底面の断面積がSbおよび上底面と下底面との距離がLbであるテーパー管に近似される。Hは、上述の式(6)で示した正の定数である。また、吹込部24bはテーパー管124bと同じ形状である。以上のとおり構成されることで、管楽器10bは、テーパー率の異なるテーパー管を有する管楽器100bの音を再現することができる。なお、分岐管21bは、テーパー管122bを近似する形状に限られるものではない。
【0044】
<第3実施形態>
図9は、第3実施形態に係る管楽器10cの管体20cを説明する図である。図9は、管楽器10cの断面図である。図9では、管楽器10aと同じ構成には、同一の符号を用いて説明を省略する。また、管楽器10aの部分と寸法や数量のみ異なり同じ特徴を有する部分は、対応する管楽器10aの部分を示し説明を省略する。管楽器10cは、主管部22cの接続部22c2付近にオクターブ孔26cが設けられている。オクターブ孔26cを閉じた状態で演奏されると、管体20c内部に音孔25aの設定音に応じた波長の定在波が生じる。ここで、オクターブ孔26cを開いて管楽器10cが演奏されると、管体20c内部の定在波が影響を受けて波長が半分となる定在波に変化し、音孔25aにおける設定音の1オクターブ上の音を発音することができる。
【0045】
<第4実施形態>
図10は、第4実施形態に係る管楽器10dの管体20dを説明する図である。図10は、管楽器10dの断面図である。図10では、管楽器10aと同じ構成には、同一の符号を用いて説明を省略する。また、管楽器10aの部分と寸法や数量のみ異なり同じ特徴を有する部分は、対応する管楽器10aの部分を示し説明を省略する。管体20dは、主管部22a、副管部23dおよび吹込部24aを備える。管体20dは、主管部22aの接続部22a2付近にオクターブ孔26dを有する。副管部23dは、ストレート管状に形成され、一方の端部で主管部22aと接続し、他方側の端部は開口している。主管部22aおよび副管部23dの内部の空間は接続している。副管部23dは、演奏者によって操作されると開閉する開閉孔27dを側壁に有する。開閉孔27dは、副管部23dの主管部22a側の端部から長さLdの位置に設けられている。ここで、副管部23dの中心線Ddと音孔25aとの間の距離をLt(以下、「音孔距離Lt」という。)とする。例えば、音孔25a7と中心線Ddとの間の距離はLt7という。音孔距離Ltは、主管部22a内部の共鳴する気柱の長さを表わしている。
【0046】
ここで、管楽器10dでは、各音孔25aまでを開いた状態で演奏したときに、管体20dにおける偶数次モードの共鳴が強い場合と弱い場合とがある。例えば、音孔25a1〜25a5は前者である。この場合、オクターブ孔26dを開くことで各音孔25aに設定された設定音の1オクターブ上の音が容易に得られる。一方、音孔25a6〜25a7は、音孔距離Ltが副管部23dの長さに対して短いため、管体20dにおける偶数次モードの共鳴が弱くなる。さらに、第2次モードの共鳴周波数が第1次モードの共鳴周波数の1オクターブ上となる第1次モードの2倍の周波数に比べて高くなる。このため、演奏者が、オクターブ孔26dおよび音孔25a6または25a7までを開いた状態で管楽器
10dを演奏する場合、設定音の1オクターブ上の音を発音させることは困難である。また、発音されたときも音高が高くなって他の音域における音色とは差異が生じる。
【0047】
演奏者は、音孔25a6または25a7に設定された設定音の1オクターブ上の音を発音させる場合、オクターブ孔26dおよび開閉孔27dを開いた状態で管楽器10dを演奏する。この場合、開閉孔27dを閉じた状態で演奏する場合に比べて、副管部23d内部の共鳴する気柱の長さは短くなる。このように、開閉孔27dは、開閉孔27dの開閉に応じて副管部23d内部の共鳴する気柱の長さを変化させる。本実施形態においては、開閉孔27dが、本発明に係る「副管変化部」に相当する。このとき、副管部23dは、長さがLdの副管部と概ね同じ働きをする。このため、音孔距離Ltが副管部の長さLdに対して短い状態ではなくなり、管体20dにおける偶数次モードの共鳴が強くなる。管楽器10dは、全ての音孔25aに設定された設定音の音域で1オクターブ上の音の発音が容易となり、好適な音高や音色で発音される。
【0048】
演奏者が、オクターブ孔26dを閉じた状態で演奏する場合、管楽器10dは、各音孔25aに設定された設定音を発音する。この場合に開閉孔27dを開閉すると、発音される音の音色が変化する。以上のとおり構成することで、管楽器10dは、副管部23dに設けられた開閉孔27dを操作することによって演奏の途中で音高や音色を変化させることができる。なお、管楽器10dは、1オクターブ上の発音を指示する指示部をさらに備え、この指示部の指示内容、および音孔25aの開閉状態に応じて、オクターブ孔26dおよび開閉孔27dのいずれか一方または双方を開閉させる開閉部をさらに備え付けてもよい。また、開閉孔27dは、複数個設けられてもよい。この場合、演奏者は、音孔25aの開閉状態に応じて、副管部23d内部で共鳴する気柱の長さが好適となるように開閉孔27dの各々を開閉させた状態で演奏すればよい。もしくは、副管部23dの終端部を閉じた状態とし、副管部の途中に設けられた複数の開閉孔27dのうち、一つ以上の任意の音孔を開けることで同様の効果を得てもよい。すなわち、副管部23dは、終端部もしくは一部が開口した状態であればよい。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は他の形態でも実施可能である。<変形例1>
上述した第1、3、4実施形態においては、テーパー管状の吹込部24aを用いたが、ストレート管状の吹込部を用いてもよい。この場合、管体はいずれもストレート管状の主管部、副管部および吹込部で構成される。この管体を有する管楽器は、図4に示すテーパー管122aならびに124aを有する管楽器を近似する。
【0050】
図11は、変形例1に係る管楽器10eの断面図である。図11では、管楽器10aと同じ構成には、同一の符号を用いて説明を省略する。また、図11では、管楽器10aと同じではないが対応する構成の符号のaをeに変えて示す。この構成においては、同じ特徴の説明は省略し、異なる特徴についてのみ説明する。管楽器10eは、ストレート管が接続して構成されている管体20eとマウスピース30eとで構成されている。管体20eは、真鍮等の金属で形成されている。管体20eは、ストレート管状の吹込部24eを備える。吹込部24eには、吹込部24eの外側の面を覆う形に形成されているコルク40eが接着されている。吹込部24eは、コルク40eを介してマウスピース30eが装着されている。吹込部24eは、マウスピース30e側に開口する開口部24e2を有する。コルク40eが接着された吹込部24eに装着されたマウスピース30eは着脱可能である。吹込部24eのマウスピース30eを着脱する部分を着脱部24e3という。なお、マウスピース30eは管体20eに固定してもよい。
【0051】
吹込部24eは、開口部24e2の反対側の端部に接続部24e1を有する。接続部24e1の断面積はSaである。吹込部24eは、接続部24e1と主管部22aの接続部
22a2とを向かい合わせて分岐管21aに接続されている。以上のとおり構成されている管楽器10eは、図4に示すテーパー管122aに吹込部24eと同じ形状の吹込部を接続した管楽器を近似する。このように、吹込部は、テーパー管状、ストレート管状など管状であればよい。なお、吹込部は、一部をテーパー管状、一部をストレート管状としてこれらが接続された形状であってもよい。
【0052】
図30は、変形例1に係る管楽器10e全体の音響特性を説明する図である。図30中の線Dは、上述した第1実施形態における図6(b)に示すような吹込部24a以降を分岐管21aとして近似し、音孔25aをすべて閉じた場合の入力インピーダンスカーブである。図30中の線Eは、変形例1における図11に示すように吹込部24aをストレート管(吹込部24e)に置き換えて近似し、音孔をすべて閉じた場合の入力インピーダンスカーブである。
これらを比較すると、変形例1(線E)では、吹込部24eがストレート管のような単純形状ではあるが、図6(b)のように吹込部24a以降で分岐する実施形態(線D)とほぼ同等の入力インピーダンスカーブとなっているので、変形例1における管楽器10eは、図6(b)の管楽器10aと同様、良好な音響特性を持つことがわかる。
このように着脱部を含む吹込部の形状をストレート管とすることにより、所望の音響的特性を極力満足させながら楽器の製造を簡単とすることができる。
【0053】
<変形例2>
上述した実施形態においては、管楽器に1枚の薄片状のリードを有するシングルリードのマウスピースを用いたが、ダブルリードまたはリップリードのマウスピースを用いてもよい。以下、図を用いて変形例2を適用した管楽器の例を示す。
【0054】
図12は、リップリードのマウスピースを備える管楽器100fを説明する図である。図12は、管楽器100fの断面図である。管楽器100fは、管体120fとマウスピース130fおよびマウスピース取付部品132fで構成されている。管体120fにマウスピース取付部品132fが接着される。管体120fとマウスピース130fおよびマウスピース取付部品132fは、真鍮等の金属で形成されている。管体120fは、テーパー管122fとテーパー管122fに連続するテーパー管124fとで構成されている。すなわち、テーパー管122f,124fは、それぞれが管体120fの一部である。テーパー管122fは、高さがLf、上底面の断面積がSf、上底面から頂点までの長さがRfとなるテーパー管である。テーパー管124fは、高さがL2f、上底面の断面積がS2f、下底面の断面積がSf、上底面から頂点までの長さがR2fとなるテーパー管である。この例においては、テーパー管122fのテーパー率に比べてテーパー管124fのテーパー率の方が小さくなっている。
【0055】
図13は、変形例2に係る管楽器10fの管体20fを説明する図である。図13では、管楽器100fと同じ特徴を有する構成については、対応する構成の符号の百の位を除いて示し、その特徴の説明を省略する。図13は、管楽器10fの断面図である。管楽器10fは、テーパー管およびストレート管が接続して構成されている管体20fとマウスピース30fとで構成されている。管体20fは、真鍮等の金属で形成されている。管体20fは、テーパー管状の吹込部24fを備える。吹込部24fは、テーパー管の下底面側に中空の接続部24f1を有し、テーパー管の上底面側に開口する開口部24f2を有する。接続部24f1の断面積はSfで、開口部24f2の断面積はS2fである。断面積Sfは断面積S2fより大きい。
【0056】
吹込部24fは、開口部24f2側にマウスピース30fを装着する着脱部24f3を有する。着脱部24f3には、マウスピース取付部品32fが取り付けられる。マウスピース30fは、マウスピース取付部品32fに嵌め込まれて位置を固定される。マウスピ
ース30fは、演奏者が唇を当てて息を吹き込む管楽器の部品である。マウスピース30fは、真鍮等で形成されている。演奏者がマウスピース30fに当てた唇を振動させて生じる空気の振動は管楽器10fの音源となる。マウスピース30fは、この空気の振動を吹込部24fに入力する。管楽器10fにおいては、着脱部24f3と副管部23fとが異なる位置にあるため、図3のマウスピース300のようにマウスピース30fに開口部を形成する必要がない。このため、着脱部24f3には、通常のトランペット等に用いられるマウスピースを着脱することができる。
【0057】
管体20fは、ストレート管状の主管部22fとストレート管状の副管部23fとに分岐した分岐管21fを備える。主管部22fは、両端の一方に開口する開口部22f1を有し、他方に中空の接続部22f2を有する。主管部22fは、接続部22f2側の端部の側面で副管部23fと接続されている。副管部23fは、一方の端部で主管部22fと接続し、他方の端部は開口している。主管部22fおよび副管部23fの内部の空間は接続している。すなわち、接続部22f2は、分岐管21fが主管部22fと副管部23fとに分岐している部分に位置する。分岐管21fは、接続部22f2と接続部24f1とを向かい合わせて吹込部24fと接続されている。開口部22f1から副管部23fの中心線Dfまでの距離がLfである。ここで、分岐管21fが、上底面から頂点までの距離がRf、上底面の断面積がSfであるテーパー管を近似するため、副管部23fは、長さがH×Rfで断面積がH×Sfとなるように形成されている。Hは、上述の式(6)で示した正の定数である。
【0058】
以上のように構成されることで、管楽器10fは、リップリードのマウスピースおよびテーパー率の異なる2つの円錐形を連続させた形状の共鳴管を備える管楽器100fを近似した音色で発音することができる。なお、本実施の形態では、吹込部はテーパー管による例を示したが、ストレート管で実現してもよい。また、本実施の形態では、ストレート管の主管部と副管部の組み合わせによる例を示したが、どちらか一方、あるいは両方をテーパー管で実現してもよい。
【0059】
<変形例3>
上述した第3実施形態においては、主管部22cにオクターブ孔26cを配置したが、管体20cの他の箇所に設けてもよい。例えば、副管部の長さに比べて音孔距離Lt7が短い場合、第2モードの定在波の節は、副管部23a内部にできる。この場合、音孔25a7に設定された設定音の1オクターブ上の音は、主管部22cの開口部22c2付近に配置されたオクターブ孔26cを開けても発音させることができない。この場合、副管部にオクターブ孔を設けてもよい。また、主管部および副管部の両方にオクターブ孔を設けてもよい。
【0060】
図14は、変形例3に係る管楽器10gの管体20gを説明する図である。図14は、管楽器10gの断面図である。図14では、管楽器10cと同じ構成には、同一の符号を用いて説明を省略する。管楽器10gは、主管部22aの吹込部24a側の側面にオクターブ孔26gを有する。管楽器10gは、副管部23gの側面にオクターブ孔26g2を有する。管楽器10gは、オクターブ孔26g,26g2を閉じた状態で演奏されると、管体20g内部に音孔25gの設定音に応じた波長の定在波が生じる。オクターブ孔26g2を閉じた状態で、オクターブ孔26gを開いた状態で演奏されると、管楽器10gは、音孔25a1〜25a7に設定されている設定音の1オクターブ上の音を発音する。一方、オクターブ孔26g2を開いた状態で、オクターブ孔26gを閉じた状態で演奏されると、管楽器10gは、音孔25a7に設定されている設定音の1オクターブ上の音を発音する。以上のように構成することで、管楽器10gは、副管部の長さに比べて音孔の有効距離が短い場合でも、オクターブ孔を操作することでこの音孔に設定されている設定音の1オクターブ上の音を発音することができる。
【0061】
<変形例4>
上述した第3実施形態または変形例3においては、主管部22cまたは副管部23gにそれぞれオクターブ孔26cならびに26g2を設けたが、管体20cならびに20gの他の箇所に設けてもよい。例えば、吹込部24aの長さに比べて音孔距離Lt7が短い場合、第2モードの定在波の節は、吹込部24a内部にできる。この場合、音孔25a7の設定音Cは、主管部22cの開口部22c2付近に配置されたオクターブ孔26cを開けても発音させることができない。この場合、吹込部にオクターブ孔を設けてもよい。また、主管部および吹込部または主管部、副管部および吹込部にオクターブ孔を設けてもよい。
【0062】
図15は、変形例4に係る管楽器10hの管体20hを説明する図である。図15は、管楽器10hの断面図である。管楽器10hは、テーパー管およびストレート管が接続して構成されている管体20hとマウスピース30hとで構成されている。管体20hは、真鍮等の金属で形成されている。管体20hは、テーパー管状の吹込部24hを備える。吹込部24hは、テーパー管の下底面側に中空の接続部24h1を有し、テーパー管の上底面側に開口する開口部24h2を有する。接続部24h1の断面積はShで、開口部24h2の断面積はS2hである。断面積Shは断面積S2hより大きく、接続部24h1の半径は開口部24h2の半径よりも大きい。吹込部24hには、半径の小さい開口部24h2側にマウスピース30hが装着されている。
【0063】
吹込部24hとマウスピース30hとの間には、コルク40hが装着されて隙間を埋めている。吹込部24hに装着されたマウスピース30hおよびコルク40hは着脱可能である。吹込部24hは、マウスピース30hを着脱する着脱部24h3を有する。なお、マウスピース30hは管体20hに固定してもよい。ここで、断面積Shは、管楽器10aにおける断面積Saよりも大きいものとする。この場合、吹込部24hは、管楽器10aにおける吹込部24aよりも大きく、マウスピース30hは、マウスピース30aよりも大きく、吹込部24hは、吹込部24aに比べて開口部24h2と接続部24h1とが離れている。このため、管楽器10aに比べて接続部24h1とマウスピース先端(マウスピース30hの吹込部24hと接続されていない側の端部)までが離れている。吹込部24hは、着脱部24h3よりも接続部24h1側の側面にオクターブ孔26hが設けられている。
【0064】
管体20hは、ストレート管状の主管部22hとストレート管状の副管部23hとに分岐した分岐管21hを備える。主管部22hは、両端の一方に開口する開口部22h1を有し、他方に中空の接続部22h2を有する。主管部22hは、接続部22h2側の端部の側面で副管部23hと接続されている。副管部23hは、一方の端部で主管部22hと接続し、他方の端部は開口している。主管部22hおよび副管部23hの内部の空間は接続している。すなわち、接続部22h2は、分岐管21hが主管部22hと副管部23hとに分岐している部分に位置する。分岐管21hは、接続部22h2と接続部24h1とを向かい合わせて吹込部24hと接続されている。開口部22h1から副管部23hの中心線Dhまでの距離がLhである。ここで、分岐管21hが、上底面から頂点までの距離がRh、上底面の断面積がShであるテーパー管を近似するため、副管部23hは、長さがH×Rhで断面積がH×Shとなるように形成されている。Hは、上述の式(6)で示した正の定数である。
【0065】
以上のとおり構成されていることで、管楽器10hは、オクターブ孔26hを開いて演奏されると、音孔25hに設定されている設定音の1オクターブ上の音を発音することができる。上述のとおり、分岐管を有する管楽器においては、オクターブ孔を主管部、副管部または吹込部における分岐管が共鳴する気柱の長さに応じた位置に配置すればよい。こ
の場合、オクターブ孔は、音孔25h(音高調整部)によって変化する共鳴する気柱の長さがあらかじめ定められた長さよりも短くなる場合に吹込部24hまたは副管部23hに設けられればよい。また、オクターブ孔が複数ある場合、これらのオクターブ孔の開閉を指示する指示部と、この指示部および音孔25h(音高調整部)の状態に応じてオクターブ孔を開閉する開閉部を設けてもよい。
【0066】
<変形例5>
上述した第4実施形態においては、開閉孔27dを操作することで管楽器10dの音高や音色を演奏途中で変化させたが、副管部の長さを変化させることで管楽器10dの音高や音色を演奏途中で変化させてもよい。
【0067】
図16は、変形例5に係る管楽器10iの管体20iを説明する図である。図16では、管楽器10aと同じ構成には、同一の符号を用いて説明を省略する。管体20iは、主管部22aの接続部22a2付近にオクターブ孔26iを有する。副管部23iは、主管部22aに固定される固定部23i1を有する。固定部23i1は、真鍮等でストレート管状に形成されている。副管部23iには、真鍮等で形成されたストレート管状のスライド管23i2が設けられている。スライド管23i2は、固定部23i1の内側に差し込まれてあらかじめ定められた範囲を移動する。図16(a)では、副管部23iの長さがH×Raとなる位置にスライド管23i2が位置している。図16(b)では、スライド管23i2が移動し、副管部23iの長さがLiとなる位置にスライド管23i2が位置している。スライド管23i2は、移動して副管部23i内部の共鳴する気柱の長さを変化させる。本変形例においては、固定部23i1およびスライド管23i2が、本発明に係る「副管変化部」に相当する。
【0068】
例えば、演奏者が、図16(a)の状態に管楽器10iを操作してオクターブ孔26iを開いて演奏する。この場合、音孔25a6または25a7の設定音の音域においては、上述の通り、管体20dにおける偶数次モードの共鳴が弱くなり、第2次モードの共鳴周波数は第1次モードの1オクターブ上に相当する第1モードの2倍の共鳴周波数に比べて大幅に高くなる。演奏者がスライド管23i2を操作して管楽器10iを図16(b)の状態にすると、副管部23i内部の共鳴する気柱の長さは図16(a)の状態に比べて短く変化する。このとき、音孔距離Ltは、副管部23iの長さLiに対して十分長くなり、管体20iにおける偶数次モードの共鳴が強くなる。これにより、管楽器10iは、全ての音孔25aに設定された設定音の音域で1オクターブ上の音の発音が容易となり、好適な音高や音色で発音される。以上のとおり構成することで、管楽器10iは、副管部23iに設けられたスライド管23i2を操作されることで演奏の途中で音高や音色を調整することができる。
【0069】
また、副管部は、後述の変形例6で記載の迂回管を有する迂回部を備えてもよい。この場合、迂回部は、副管部内部の経路を迂回管へ経由させるか否かを切り替える。迂回部は、この経由の有無を切り替えて副管部内部の共鳴する気柱の長さを変化させる。これにより、主管部内部の共鳴する気柱の長さが副管部内部の共鳴する気柱の長さに対して短い状態となることがなくなり、管楽器が発音する全ての設定音の音域で1オクターブ上の音の発音が容易となり、好適な音高や音色で発音される。
【0070】
また、副管部は、その内径を変化させることができる構成とし、副管部内部の共鳴する気柱の振幅を変化させてもよい。内径を変化させる構成としては、例えば、副管部内部に内径が小さくなるようにインナーチューブを嵌め込むことができる構成にすればよい。このように構成することで、音色を調整することができる。
【0071】
<変形例6>
上述した実施形態においては、音孔によって発音される音高を変化させたが、迂回部を用いて音高を変化させてもよい。例えば、トランペットなどで用いられる迂回部を用いる。以下、図を用いて変形例6を適用した管楽器の一例を説明する。
【0072】
図17は、変形例6に係る管楽器10jの平面図である。図17では、管楽器10aと同じ構成には、同一の符号を用いて説明を省略する。図17では、管楽器10aの部分と寸法や数量のみ異なり同じ特徴を有する部分は、対応する管楽器10aの部分を示し説明を省略する。管楽器10jは、ストレート管状の管体が接続されている管体20jとマウスピース30aとで構成されている。管体20jは、ストレート管状の主管部22j、副管部23aに対応する副管部23jおよび吹込部24aに対応する吹込部24jを備える。管楽器10jは、管楽器10aに比べて、主管部22jの長さが長く、断面積が小さく形成されている。すなわち、管楽器10jは、管楽器10aに比べると上底面が細く長いテーパー管を有する管楽器を近似している。
【0073】
主管部22jは、迂回部28j1,28j2,28j3,28j4,28j5,28j6,28j7(以下、区別しない場合は「迂回部28j」という。)を有する。迂回部28jは、主管部22j内部の空間が形成する経路(以下、「主管経路」という。)に比べて長く迂回する経路(以下、「迂回経路」という。)を有する迂回管を備える。また迂回部28jは、演奏者が迂回操作を行うための迂回キーと、この操作に連動して経路を切り替えるバルブを備える。迂回キーが操作されると迂回バルブ(図ではロータリーバルブ)を移動(回転)させて主管経路の迂回経路への経由の有無を切り替える。すなわち、迂回部28jは、主管部22j内部で共鳴する気柱の長さを変化させて所望の音高を得る。本実施形態においては、迂回部28jが、本発明に係る「音高調整部」に相当する。このため、演奏者が管楽器10jを演奏しながら迂回部28jを操作して主管経路と迂回経路とを切り替えると、分岐管21j内部で共鳴する音の波長が変化し、管楽器10jが発音する音高が変化する。迂回部28jは、各々が操作されたときにあらかじめ設定された音高となるように設計されている。主管部22jには、全音トリルキーTC1および半音トリルキーTC2(以下、区別しない場合は「トリルキーTC」という。)が備えられている。トリルキーTCは、迂回部28jの迂回キーがどの操作状態であっても、操作すると全音または半音が変化する。
【0074】
なお、迂回部は、従来の木管楽器の運指操作と整合性を取るために、操作されていないときに主管部の内部の空間が迂回経路を通るように構成されてもよい。この場合、演奏者が迂回部を操作すると迂回させていた主管部内部の空間が短く接続されて気柱の長さが短くなり、発音される音高が高くなる。また、迂回部を副管部に備えて、演奏中に副管部内部の共鳴する気柱の長さを変化させるように構成してもよい。この場合、この迂回部は、本発明に係る「副管変化部」に相当する。
迂回部28jによって音高を操作する管楽器10jは、演奏時に音孔を開くことがないため、開口部22j1および開口部23j1にミュートを設置すると静音演奏または消音演奏を実現できる。なお、他の実施例または変形例においても、ミュートを適用してもよい。
なお、図17では、フレンチホルンなどの金管楽器に用いられるロータリーバルブによる経路の切替機構を用いたが、通常のトランペットなどの金管楽器に用いられるピストンバルブによる経路の切替機構を用いてもよい。
【0075】
<変形例7>
上述した実施形態においては、主管部に設けた音孔によって音高を変化させたが、主管部に設けた移動するストレート管によって音高を変化させてもよい。例えば、トロンボーンなどで用いられるスライド管を設けてもよい。
【0076】
図18は、変形例7に係る管楽器10kの管体20kを説明する図である。図18では、管楽器10aと同じ構成には、同一の符号を用いて説明を省略する。管体20kは、主管部22kおよび副管部23aで構成される分岐管21kと吹込部24aとで構成されている。主管部22kは、副管部23aおよび吹込部24aと接続して固定される固定部22k3を有する。固定部22k3は、真鍮等でストレート管状に形成されている。主管部22kには、真鍮等で形成されたストレート管状のスライド管22k4が設けられている。スライド管22k4は、固定部22k3の内側に差し込まれてあらかじめ定められた範囲を移動する。スライド管22k4は、固定部22k3とは反対の端部に開口する開口部22k1を有する。管体20kは、主管部22kの開口部22k2付近にオクターブ孔26kを有する。
【0077】
図18(a)では、主管部22kの長さがLaとなる位置にスライド管22k4が位置している。図18(b)では、スライド管22k4が移動し、主管部22kの長さがLkとなる位置にスライド管22k4が位置している。以上のとおり構成されることで、固定部22k3およびスライド管22k4は、主管部22kの長さを変化させて主管部22k内部で共鳴する気柱の長さを変化させて所望の音高を得る。このため、演奏者が管楽器10kを演奏しながらスライド管22k4を操作して主管部22kの長さを変化させると、分岐管21k内部で共鳴する音の波長が変化し、管楽器10kが発音する音高が変化する。本変形例においては、固定部22k3およびスライド管22k4が、本発明に係る「音高調整部」に相当する。この構成によれば、従来のサックスなどの木管楽器は、音高が飛び飛びにしか演奏できなかったのに対し、金管楽器のトロンボーンのように音高を連続して演奏するポルタメント奏法に対応できるというメリットがある。
【0078】
<変形例8>
上述した実施形態においては、管軸方向が直線状の真っ直ぐなストレート管を用いたが、管体が曲がったストレート管を用いてもよい。例えば、主管部、副管部または吹込部のいずれかに曲がったストレート管を用いてもよい。なお、そのうちの複数に曲がったストレート管を用いてもよい。
【0079】
図19は、変形例8に係る管楽器10mの管体20mを説明する図である。図19では、管楽器10aと同じ構成には、同一の符号を用いて説明を省略する。管体20mは、主管部22m、副管部23mおよび吹込部24aを備えている。主管部22mおよび副管部23mは、分岐する分岐管21mを構成している。主管部22mおよび副管部23mは、回転軸が曲線状のストレート管である。主管部22mは、一方の端部に開口する開口部22m1を有し、他方側に中空の接続部22m2を有する。主管部22mは、接続部22m2において吹込部24aと接続している。主管部22mの断面積はSaである。すなわち、接続部22m2における断面積はSaである。主管部22mは、接続部22m2側の端部の側面で副管部23mと接続されている。主管部22mは、接続部22m2における断面の中心から開口部22m1における断面の中心を結ぶ中心線22Lmの長さが長さLaとなっている。
【0080】
副管部23mは、一方の端部に開口する開口部23m1を有し、他方側に中空の接続部23m2を有する。副管部23mは、接続部23m2において主管部22mと接続している。主管部22mおよび副管部23mの内部の空間は接続している。すなわち、接続部22m2は、分岐管21mが主管部22mと副管部23mとに分岐した部分に位置する。副管部23mは、接続部23m2における断面の中心から開口部23m1における断面の中心を結ぶ中心線23Lmの長さが長さH×Raとなっている。分岐管21mは、接続部22m2と接続部24a1とを向かい合わせて吹込部24aと接続されている。以上のとおり構成されることで、管楽器10mは、よりコンパクトに、図4に示した管楽器100aの音高や音色を再現することができる。
【0081】
<変形例9>
上述した実施形態および変形例に係る管楽器は、副管部を主管部の側壁に接続したが、主管部のマウスピース側の開口部と副管部の開口部とを並べて構成してもよい。この場合、主管部および副管部の形状は、円筒とは異なっていてもよい。
図3(b)のような副管部がマウスピースの内部で分岐する従来の分岐管楽器では、図3(a)のような近似前の管楽器200の吹込管入口部(円錐管204の上底面)の断面積Sと、主管部(ストレート管231)の断面積Sがほぼ等しいので、主管部(ストレート管231)の断面積Sと副管部(アタッチメント801)の断面積HSの和が、吹込管入口部の断面積Sよりも大きくなるため、吹鳴時の抵抗は、近似前の図3(a)よりも小さい。吹鳴の抵抗が小さいと、音を持続させて吹鳴するロングトーン時に息が続かなくなるなどの弊害が出る場合がある。変形例9はこれを改善する例である。
【0082】
図20は、変形例9に係る管楽器10nの管体20nを説明する図である。図20(a)は、管楽器10nの断面図である。管楽器10nは、2つの筒状の管が接続して構成されている管体20nとマウスピース30nとで構成されている。管体20nは、真鍮等の金属で形成されている。管体20nは、2本の筒状の管である主管部22nおよび副管部23nが接続して構成されている。主管部22nは長さがL、中空部分の断面積がSnの筒状の管である。副管部23nは、長さがH×R、中空部分の断面積がH×Snの筒状の管である。主管部22nは、長手方向の端部に開口する開口部22n1,22n2を有する。副管部23nは、長手方向の端部に開口する開口部23n1,23n2を有する。開口部22n2および開口部23n2は同じ面上に位置し、各々がマウスピース30nに向いている。マウスピース30nは、コルク40nを差し込んで主管部22nおよび副管部23nと接続する。
【0083】
図20(b)は、図20(a)の切断線BBにおける断面図である。主管部22nの中空部分および副管部23nの中空部分は、それぞれ断面が円の一部を形成し、合わせて断面積Sの円の形状とほぼ等しくなるように形成されている。以上のとおり構成されることで、管楽器10nは、上底面の中空部分の断面積がS、上底面から頂点までの長さがRのテーパー管を有する管楽器を概ね近似する。
主管部22nの中空部分の断面積Sn、副管部23nの中空部分の断面積H×Snの和が、図3(a)に示す近似前の管楽器200の吹込部の入口部(円錐管204の上底面)の断面積Sにほぼ等しいので、この形態の管であれば、他の管の形態に比較して、他の形態で得られる効果に加えて、従来のアコースティック楽器と比較しても、吹奏感を良好に保つことができる。
【0084】
また、管楽器10nは、副管部23nが主管部22nに沿って配置されているため、かさばらず収容性の高い形状となっている。主管部、副管部の断面を円形とし、息が隙間から抜けてしまわないよう接続部に近い部分の隙間をコルクやゴムなどの部材で充填する構成を取ってもよい。
この例では、主管部22nの中空部分の断面積Sn、副管部23nの中空部分の断面積H×Snの和が、図3(a)に示す近似前の管楽器200の吹込部の入口部(円錐管204の上底面)の断面積Sにほぼ等しくなるように設定したが、吹奏感を調整するため、主管部22nの中空部分の断面積Sn、副管部23nの中空部分の断面積H×Snの和が、図3(a)に示す近似前の管楽器200の吹込部の入口部(円錐管204の上底面)の断面積Sよりも小さくなるように設定してもよい。
【0085】
<変形例10>
上述した実施形態に係る管楽器は、主管部の一方の端部には開口する開口部を設けたが、この端部にベルまたはテーパー管等のテーパー率を有する管体を設けてもよい。例えば
、主管部22aにおいて、吹込部24aが接続された側とは反対側にベルを接続して構成する。この場合、発音される音の量がベルの働きにより大きくなる。また、ベルの代わりに先が狭くなる形状のテーパー管を接続して主管部を構成してもよい。この場合、発音される音の量がテーパー管の働きにより小さくなる。以上のとおり構成されることで、テーパー率を有する管体は、分岐管21aから外部へ出力される音の量を変化させる。
【0086】
図21は、変形例10を適用した管楽器の一例を示す図である。図21では、管楽器10aと同じ構成には、同一の符号を用いて説明を省略する。図21(a)は、ベル50pを有する管楽器10pの断面図である。管楽器10pは、管体20a、マウスピース30a、コルク40aおよびベル50pで構成されている。ベル50pは、真鍮等の金属またはプラスチックなどで形成されているテーパー率が連続的に変化するテーパー管状の管体である。ベル50pは、中空部分の面積が小さい側を開口部22a1側に向けて管体20aに接続されている。以上のとおり構成されることで、管体20aの内部で共鳴した音は、増幅されて外部に伝わる。
【0087】
図21(b)は、テーパー管50qを有する管楽器10qの断面図である。管楽器10qは、管体20a、マウスピース30a、コルク40aおよびテーパー管50qで構成されている。テーパー管50qは、真鍮等の金属またはプラスチックなどで形成されているテーパー率が連続的に変化するテーパー管状の管体である。テーパー管50qは、中空部分の面積が大きい側を開口部22a1側に向けて管体20aに接続されている。以上のとおり構成されることで、管体20aの内部で共鳴した音は、減衰されて外部に伝わる。
【0088】
<変形例11>
上述した実施形態においては、副管部は主管部の側面に接続し、吹込部が主管部における開口部とは反対側の中空の接続部と接続したが、副管部と吹込部とが接続する位置を反対にしてもよい。この場合、主管部と副管部とは、図1(c)に示した管体220と同様の位置関係となる。
【0089】
図22は、変形例11を適用した管楽器の一例を示す図である。図22では、管楽器10aと同じ特徴を有する構成については、対応する構成の符号のaをrに変えて示し、その特徴の説明を省略する。図22は、変形例11に係る管楽器10rの断面図である。管楽器10rは、管体20r、マウスピース30aに対応するマウスピース30rおよびコルク40rで構成されている。管体20rは、主管部22aに対応する主管部22r、副管部23aに対応する副管部23rおよびストレート管状の吹込部24rとを備える。
【0090】
副管部23rは、主管部22rの開口部22r1とは反対側の中空の接続部22r2において主管部22rと接続している。吹込部24rは、主管部22rの接続部22r3側の側面で主管部22rと接続している。この場合、分岐管21rは、接続部22r2から主管部22rと副管部23rとが反対の方向に分岐する。吹込部24rが接続されている位置は、図1(c)における矢印D2が示す位置を近似している。以上のとおり構成されることで、管楽器10rは、主管部22rの断面積、副管部23rの断面積および副管部23rの長さに応じたテーパー管を有する管楽器を近似する。
【0091】
<変形例12>
上述した第2から4までの実施形態および各々の変形例においては、マウスピースは吹込部に対して着脱可能としたが、吹込部に固定されていてもよい。例えば、マウスピースは、吹込部が有する着脱部に接着材などにより固定されたものであってもよいし、吹込部と一体に形成されたものであってもよい。
【0092】
<変形例13>
上述した実施形態においては、断面の形状が円形のストレート管を用いたが、断面の形状が楕円形または多角形のストレート管を用いてもよい。この場合、切り取る位置によって断面の形状および断面積が変化しないストレート管を用いればよい。
【0093】
<変形例14>
上述した実施形態においては、断面の形状が円形のテーパー管を用いたが、断面の形状が楕円形または多角形のテーパー管を用いてもよい。この場合、両端の開口部における中空部分の形状が相似の関係にあり、この中空部分の面積が異なるテーパー管を用いればよい。
【0094】
<変形例15>
上述した実施形態においては、主管部は副管部よりも長さが長い関係となっていたが、これに限らず、主管部と副管部とが同じ長さであってもよいし、副管部が主管部よりも長くてもよい。
【0095】
<変形例16>
上述した実施形態においては、分岐管を構成する主管部および副管部はストレート管としたが、これに限らず、いずれかまたは両方がテーパー管であってもよい。この場合、管楽器は、テーパー管の形状の影響を受けて分岐管の内部に生じる定在波が変化して、全てストレート管である場合に比べて音色や音高が変化する。
【0096】
<変形例17>
上述した第2実施形態においては、吹込部24b内部の共鳴する気柱の長さが変化しなかったが、上述した音孔を吹込部に設けて吹込部24b内部の共鳴する気柱の長さを変化させてもよい。吹込部に音孔を設けた場合、この音孔を開いた状態にすると分岐管内部の気柱は共鳴しなくなるため、音孔を閉じた状態と比べて発音される音色や音高が大幅に変化する。本変形例においては、吹込部に設けられた音孔が、本発明における「音高調整部」に相当する。
【0097】
図23は、変形例17を適用する前の管楽器100sの管体120sを説明する図である。管楽器100sは、管体120sおよびマウスピース130sで構成されている。管体120sは、テーパー管124sとベル150sとで構成されている。テーパー管124sは、上底面における断面積がS2s、下底面における断面積がS1sのテーパー管である。テーパー管124sには、上底面側からマウスピース130sが装着される。テーパー管124sは、側面に音孔125sを有する。ベル150sは、一方の端部に開口する開口部150s1を有し、他方側に中空の接続部150s2を有する。開口部150s1と接続部150s2との距離はLs2である。ベル150sは、接続部150s2側でテーパー管124sと接続している。ベル150sは、上底面における断面積がS1s、高さがLs1、上底面から頂点までの距離がRs1のテーパー管を近似しているとする。
【0098】
図24は、変形例17を適用した管楽器の例を示す図である。図24では、管楽器100sと同じ特徴を有する構成については、対応する構成の符号の百の位を除いて示し、その特徴の説明を省略する。管体20tは、主管部22t、副管部23tおよび吹込部24sを備えている。吹込部24sは、管楽器100sが備えるテーパー管124sと同じ構成である。主管部22tおよび副管部23tは、分岐する分岐管21tを構成している。主管部22tおよび副管部23tは、ストレート管である。主管部22tは、一方の端部に開口する開口部22t1を有し、他方側に中空の接続部22t2を有する。ここで、主管部22t、副管部23tおよび吹込部24sは、上述した管体20aにおける主管部22a、副管部23aおよび吹込部24aと同じ位置関係で接続されている。
【0099】
開口部22t1から副管部23tの中心線Dtまでの距離がLs1である。ここで、副管部23tの長さがH×Rs1で断面積がH×S1sである場合には、分岐管21tは、上底面から頂点までの距離がRs1、上底面の断面積がS1sおよび上底面と下底面との距離がLs1であるテーパー管に近似される。Hは、上述の式(6)で示した正の定数である。すなわち、分岐管21tは、ベル150sを近似している。このため、管楽器10tが発音する音高や音色は、管楽器100sが発音する音高や音色を近似したものになる。
【0100】
<変形例18>
上述した第2実施形態においては、吹込部24b内部の共鳴する気柱の長さが変化しなかったが、上述した迂回管を吹込部に設けて吹込部24b内部の共鳴する気柱の長さを変化させてもよい。吹込部に迂回管を設けた場合、マウスピースから主管や副管までの距離が変化して演奏者が感じる吹奏感に変化を与えるとともに音高が変化する。本変形例においては、吹込部に設けられた迂回管が、本発明における「音高調整部」に相当する。
【0101】
図25は、変形例18を適用する前の管楽器100uの管体120uを説明する図である。管楽器100uは、管体120uとマウスピース130uおよびマウスピース取付部品132uとで構成されている。管体120uは、テーパー管124u1、ストレート管124u2およびベル150uで構成されており、これにマウスピース取付部品132uが接着される。テーパー管124u1およびストレート管124u2は、吹込部124uを構成している。テーパー管124u1には、上底面側からマウスピース130uが装着される。ストレート管124u2は、迂回部128u1,128u2,128u3(以下、区別しない場合は「迂回部128u」という。)を有する。迂回部128uは、ストレート管124u2内部の空間が形成する経路(以下、「ストレート管経路」という。)に比べて長く迂回する経路(以下、「迂回経路」という。)を有する迂回管を備える。また迂回部128uは、演奏者が迂回操作を行うための迂回キーと、この操作に連動して経路を切り替えるバルブを備える。迂回キーが操作されると迂回バルブ(図ではロータリーバルブ)を移動(回転)させてストレート管経路の迂回経路への経由の有無を切り替える。
すなわち、迂回部128uは、ストレート管124u2内部で共鳴する気柱の長さを変化させて所望の音高を得る。
【0102】
ベル150uは、一方の端部に開口する開口部150u1を有し、他方側に中空の接続部150u2を有する。開口部150u1と接続部150u2との距離はLu2である。ベル150uは、接続部150u2側でストレート管124u2と接続している。ベル150uは、上底面における断面積がS1u、高さがLu1、上底面から頂点までの距離がRu1のテーパー管を近似しているとする。
【0103】
図26は、変形例18を適用した管楽器の例を示す図である。図26では、管楽器100uと同じ特徴を有する構成については、対応する構成の符号の百の位を除いて示し、その特徴の説明を省略する。管体20vは、主管部22v、副管部23vおよび吹込部24uを備えている。吹込部24uは、管楽器100uが有する吹込部124uと同じ構成である。主管部22vおよび副管部23vは、分岐する分岐管21vを構成している。主管部22vおよび副管部23vは、ストレート管である。主管部22vは、一方の端部に開口する開口部22v1を有し、他方側に中空の接続部22v2を有する。ここで、主管部22v、副管部23vおよび吹込部24uは、上述した管体20aにおける主管部22a、副管部23aおよび吹込部24aと同じ位置関係で接続されている。
【0104】
開口部22v1から副管部23vの中心線Dvまでの距離がLu1である。ここで、副管部23vの長さがH×Ru1で断面積がH×S1uである場合には、分岐管21vは、上底面から頂点までの距離がRu1、上底面の断面積がS1uおよび上底面と下底面との
距離がLu1であるテーパー管に近似される。Hは、上述の式(6)で示した正の定数である。すなわち、分岐管21vは、ベル150sを近似している。このため、管楽器10vが発音する音高や音色は、管楽器100sが発音する音高や音色を近似したものになる。なお、図25、26では、フレンチホルンなどの金管楽器に用いられるロータリーバルブによる経路の切替機構を用いたが、通常のトランペットなどの金管楽器に用いられるピストンバルブによる経路の切替機構を用いてもよい。
【0105】
<変形例19>
上述した第2実施形態においては、吹込部24b内部の共鳴する気柱の長さが変化しなかったが、上述したスライド管を吹込部に設けて吹込部24b内部の共鳴する気柱の長さを変化させてもよい。吹込部にスライド管を設けた場合、マウスピースから副管までの距離が変化して演奏者が感じる吹奏感に変化を与えるとともに音高が変化する。本変形例においては、吹込部に設けられたスライド管が、本発明における「音高調整部」に相当する。
【0106】
<変形例20>
上述した変形例17、18、19においては、吹込部に音高調整部を設けたが、主管部および吹込部の両方に音高調整部を設けてもよい。この場合、主管部および吹込部に設ける音高調整部(音孔、迂回部またはスライド管)は、これらの組み合わせが異なっていてもよい。
【0107】
<変形例21>
変形例9に係る管楽器10nは、主管部22nのマウスピース側の開口部と副管部23nの開口部とを上下に並べて構成したが、内側と外側の関係でもよい。
【0108】
図27は、変形例21に係る管楽器10wの管体20wを説明する図である。図27(a)は、管楽器10wの断面図である。副管部23wの筒状の管体の内側に筒状の主管部22wの管体を配置して構成される管体20wおよびマウスピース30wとで構成されている。管体20wは、真鍮等の金属で形成されている。管体20wは、2本の筒状の管である主管部22wおよび副管部23wが接続して構成されている。主管部22wは長さがL、中空部分の断面積がSwの筒状の管である。副管部23wは、長さがH×R、中空部分の断面積がH×Swの筒状の管である。
主管部22wは、長手方向の端部に開口する開口部22w1,22w2を有する。副管部23wは、長手方向の端部に開口する開口部23w1,23w2を有する。開口部22w2および開口部23w2は同じ面上に位置し、各々がマウスピース30wに向いている。マウスピース30wは、コルク40wを差し込んで副管部23wと接続する。副管部23wは支柱41wを介して主管部22wと接続する。
【0109】
図27(b)は、図27(a)の切断線CCにおける断面図である。主管部22wの中空部分は、主管部22wの管体の内壁に囲まれた部分であり、上述のように断面積がSwになっている。副管部23wの中空部分は、副管部23wの管体の内壁、主管部22wの管体の外壁、および支柱41wの側壁に囲まれた部分であり、上述のように断面積がH×Swになっている。この例においては、図27(b)に示すように、副管部23wの中空部分は、3つの支柱41wによって3つの中空部分に分離され、それぞれの断面積は(1/3)×H×Swになっている。よって、主管部22wの中空部分および副管部23wの中空部分は、それぞれ断面が円の一部を形成し、合わせて断面積Sの円の形状(副管部23wの管体の内壁形状)とほぼ等しくなるように形成されている。以上のとおり構成されることで、管楽器10wは、上底面の中空部分の断面積がS、上底面から頂点までの長さがRのテーパー管を有する管楽器を概ね近似する。
【0110】
図31は、変形例21に係る管楽器10w全体の音響特性を説明する図である。図31中の線Fは、図4に示すマウスピース130aが円錐管(管体120a)に接続された場合の入力インピーダンスカーブである。図31中の線Gは、図4に示す管楽器100aを図3(b)に示すように副管部(アタッチメント801)がマウスピース300の内部で分岐する形態で近似し、主管(ストレート管231)の断面積Sが図4に示す円錐管(管体120a)の上底面の断面積S2aと等しく音孔(不図示)をすべて閉じた場合の入力インピーダンスカーブである。図31中の線Hは、変形例21に示すように、主管部22wの中空部分の断面積と副管部23wの中空部分の断面積の和(Sw+H×Sw)が、図4に示す円錐管(管体120a)の上底面の断面積S2aとほぼ同一として近似し、音孔をすべて閉じた場合の入力インピーダンスカーブである。
【0111】
これらを比較すると、変形例21(線H)では、図3(b)に示すように副管部がマウスピースの内部で分岐する従来の分岐管楽器で、主管(ストレート管231)の断面積Sが図4に示す円錐管(管体120a)の上底面の断面積S2aと等しい場合の分岐管楽器(線G)に比べ、特に低音の入力インピーダンスカーブのピーク値が、近似前の図4に示す管楽器100a(線F)に近く、良好な音響特性を持つことがわかる。
【0112】
主管部22wの中空部分の断面積Sw、副管部23wの中空部分の断面積H×Swの和が、図3(a)に示す近似前の管楽器200の吹込部の入口部(円錐管204の上底面)の断面積Sにほぼ等しいので、この形態の管であれば、他の管の形態に比較して、他の形態で得られる効果に加えて、従来のアコースティック楽器と比較しても、吹奏感を良好に保つことができる。
管楽器10wは、副管部23wが主管部22wの外側に沿って配置されているため、かさばらず収容性の高い形状となっている。
この例では、主管部の中空部分の断面積Sw、副管部の中空部分の断面積H×Swの和が、図3(a)に示す近似前の管楽器200の吹込部の入口部(円錐管204の上底面)の断面積Sにほぼ等しくなるように設定したが、吹奏感を調整するため、主管部22wの中空部分の断面積Sw、副管部23wの中空部分の断面積H×Swの和が、図3(a)に示す近似前の楽器の吹込部の入口部(円錐管204の上底面)の断面積Sよりも小さくなるように設定してもよい。
【0113】
<変形例22>
図6に示す第1実施形態に係る管楽器100aは、主管部22aの断面積と吹込部24aの終端部の断面積がSaと等しい。したがって、主管部22aの断面積Saと副管部23aの断面積H×Saの和が、吹込部24aの終端部の断面積Saよりも大きくなるため、吹鳴時の抵抗は、図3(b)のマウスピース内部で分岐している場合よりは良好なものの、近似前の図4に示す管楽器100aよりも小さい。吹鳴時の抵抗が小さいと、音を持続させて吹鳴するロングトーン時に息が続かなくなるなどの弊害が出る場合がある。変形例22はこれを改善する例である。
【0114】
図28は、変形例22に係る管楽器10xの管体20xを説明する図である。図28(a)は、管楽器10xの断面図である。管楽器10xは、副管部23xの筒状の管体の内側に筒状の主管部22xの管体を配置して構成される管体20xおよび吹込部24xおよびマウスピース30xとで構成されている。管体20xは、真鍮等の金属で形成されている。管体20xは、主管部22xおよび副管部23xにより構成される2本の筒状の管と、吹込部24xとが接続して構成されている。主管部22xは長さがLa、中空部分の断面積がSxの筒状の管である。副管部の管体23xは、長さがH×Ra、中空部分の断面積がH×Sxの筒状の管である。
主管部22xは、長手方向の端部に開口する開口部22x1,22x2を有する。副管部23xは、長手方向の端部に開口する開口部23x1,23x2を有する。開口部22
x2および開口部23x2は同じ面上に位置し、各々がマウスピース30xに向いている。マウスピース30xは、コルク40xを差し込んで吹込部24xと接続する。副管部23xは支柱41xを介して主管部22xと接続する。
【0115】
図28(b)は、図28(a)の切断線DDにおける断面図である。主管部22xの中空部分は、主管部22xの管体の内壁に囲まれた部分であり、上述のように断面積がSxになっている。副管部23xの中空部分は、副管部23xの管体の内壁、主管部22xの管体の外壁、および支柱41xの側壁に囲まれた部分であり、上述のように断面積がH×Sxになっている。この例においては、図28(b)に示すように、副管部23xの中空部分は、3つの支柱41xによって3つの中空部分に分離され、それぞれの断面積は(1/3)×H×Sxになっている。よって、主管部22xの中空部分および副管部23xの中空部分は、それぞれ断面が円の一部を形成し、合わせて断面積Saの円の形状(副管部23xの管体の内壁形状)とほぼ等しくなるように形成されている。以上のとおり構成されることで、管楽器10xは、上底面の中空部分の断面積がSa、上底面から頂点までの長さがRaのテーパー管を有する管楽器を概ね近似する。
【0116】
図32は、変形例22に係る管楽器10x全体の音響特性を説明する図である。図32中の線Iは、図4に示すマウスピース130aが円錐管(管体120a)に接続された場合の入力インピーダンスカーブである。図32中の線Jは、図6(b)に示すような吹込部24a以降を分岐管21aとして近似し、図4に示す吹込部(テーパー管124a)の終端部の断面積と主管部22aの断面積とがSaで等しく、主管部22aの断面積と副管部23aの断面積の和が、吹込部(テーパー管124a)の終端部での断面積Saよりも大きくなる場合で、音孔をすべて閉じた場合のインピーダンスカーブである。図32中の線Kは、変形例22に示すように、主管部22xの断面積Sxと副管部23xの断面積H×Sxの和が、吹込部(テーパー管124a)の終端部での断面積(図4に示す断面積Saに相当)とほぼ同一として近似し、音孔をすべて閉じた場合のインピーダンスカーブである。
【0117】
これらを比較すると、変形例22(線K)では、図6に示すように吹込部24aの終端部の断面積と主管部22aの断面積とがSaで等しい第1実施形態における管楽器10a(線J)に比べ、特に低音のインピーダンスカーブのピーク値が、近似前の図4に示す管楽器100a(線I)に近く、良好な音響特性を持つことがわかる。
【0118】
主管部22xの中空部分の断面積Sx、副管部23xの中空部分の断面積H×Sxの和が、図4に示す近似前の管楽器100aの吹込部(テーパー管124a)の終端部の断面積Saにほぼ等しいので、この形態の管であれば、他の管の形態に比較して、他の形態で得られる効果に加えて、従来のアコースティック楽器と比較しても、吹奏感を良好に保つことができる。
管楽器10xは、副管部23xが主管部22xの外側に沿って配置されているため、かさばらず収容性の高い形状となっている。
副管部23xは主管部22xの外側に沿って配置される以外に、吹込部24xの終端の管壁から管の外側に向かって垂直に設置される配置を取ってもよい。
この例では、主管部22xの中空部分の断面積Sx、副管部23xの中空部分の断面積H×Sxの和が、図4に示す近似前の管楽器100aの吹込部(テーパー管124a)の終端部の断面積Saにほぼ等しくなるように設定したが、吹奏感を調整するため、主管部22xの中空部分の断面積Sx、副管部23xの中空部分の断面積H×Sxの和が、図4に示す近似前の管楽器100aの吹込部(テーパー管124a)の終端部の断面積Saよりも小さくなるように設定してもよい。すなわち、主管部22xの入口部の断面積Sxと副管部23xの入口部の断面積H×Sxとの和が、吹込部24xの終端部の断面積Sa以下となっていれば、吹奏時の抵抗を大きくすることができる。
【符号の説明】
【0119】
10a,10b,10c,10d,10e,10f,10g,10h,10i,10j,10k,10m,10n,10p,10q,10r,10t,10v,10w,10x…管楽器、20a,20b,20c,20d,20e,20f,20g,20h,20i,20j,20k,20m,20n,20r,20t,20v,20w,20x…管体、21a,21b,21c,21d,21f,21g,21h,21i,21j,21k,21m,21n,21r,21t,21v,21w,21x…分岐管、22a,22b,22c,22f,22h,22j,22k,22m,22n,22r,22t,22v,22w,22x…主管部、22k3,23i1…固定部、22k4,23i2…スライド管、23a,23b,23d,23f,23g,23h,23i,23j,23m,23n,23r,23t,23v,23w,23x…副管部、24a,24b,24e,24f,24h,24j,24r,124s,24s,124u,24u,24x…吹込部、24a3,24b3,24e3,24f3,24h3,24u3…着脱部、25a,25b,25h,25r,125s,25s…音孔、26c,26d,26g,26g2,26h,26i,26j,26k…オクターブ管、27d…開閉孔、28j,128u,28u…迂回管、130a,30a,130b,30b,30e,130f,30f,30h,30n,30r,130s,30s,130u,30u,30w,30x…マウスピース、31a…リード、132f,32f,132u,32u…マウスピース取付部品、40a,40b,40e,40h,40n,40r,140s,40s,40w,40x…コルク、41w,41x…支柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マウスピースを着脱可能とする着脱部を有する管状の1つの吹込部と、
管状の主管部と管状の副管部とに分岐した分岐管であって、前記主管部と前記副管部とが分岐した部分に前記吹込部が接続された分岐管と
を具備し、
前記主管部または前記吹込部は、前記副管部の終端部もしくは前記副管部の一部が開口した状態で所望の音高を得るための音高調整部を有し、
前記吹込部から気体が吹き込まれると、当該気体が前記主管部および前記副管部の双方に流れる
ことを特徴とする管楽器の管体。
【請求項2】
前記音高調整部は、音孔、迂回管またはスライド管である
ことを特徴とする請求項1に記載の管楽器の管体。
【請求項3】
前記主管部および前記副管部はストレート管である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の管楽器の管体。
【請求項4】
前記着脱部は、薄片状のリードまたはリップリードを用いるマウスピースを着脱可能とする
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の管楽器の管体。
【請求項5】
前記吹込部は、ストレート管である
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の管楽器の管体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2011−186443(P2011−186443A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22079(P2011−22079)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)