説明

管状埋設物及びその製造方法

【課題】 既に埋設され又はこれから埋設される管状埋設物の耐震性及び水密性を向上させる管状埋設物及びその製造方法を創出することを課題とする。
【解決手段】 前後に連設された管状埋設物(1)間の継目部(J)又は壁面にひび割れを誘導する脆弱部(3)が形成された管状埋設物(1)において、管状埋設物(1)の壁面で且つ継目部(J)又は脆弱部(3)を挟んだ両側の位置に凹設された一対の凹溝(4)と、一方の凹溝(4a)と他方の凹溝(4b)との間に配置されて継目部(J)又は脆弱部(3)を覆うシート部材(6)と、凹溝(4)内にシート部材(6)と共に挟み込まれてシート部材(6)を保持固定する固定部材(8)と、を有する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既に埋設され又は今後埋設される管渠に耐震性及び水密性を付与する管状埋設物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高レベルな地震が発生すると、下水道、雨水排水、電気・通信、地下通路など、地下に埋設されている管渠(管状埋設物)に甚大な被害をおよぼし、その復旧には多大な時間と費用を要する。
地震時の地震動や地盤の不等沈下などによる管渠の被害としては、ひび、破損、抜け出し、ずれなどがあるが、これらは管渠の継目部分、あるいは地盤が変化する場所に集中して発生する。
【0003】
特に管渠の継目部分での抜け出しやずれ、地盤の急変部で管渠の折れ、破損などが発生すると、管渠内への浸水、土砂の流入・堆積がおこり、流下機能を阻害してしまう。
このような管渠被害への対応策として、最近では管渠の敷設時、あるいは築造時に耐震性を有する可撓継手や可撓部材が用いられるようになってきている。
【0004】
特許文献1及び特許文献2に記載の発明は、環状シート部材(ゴム製)を目地部に設置して、その内側からステンレス製などの円筒形スリーブを拡径して、環状シート部材を管路内周面に押圧設置するものである。
【0005】
この方法は、円形の函渠では、円筒形のスリーブを拡径することにより、止水用部材である環状シート部材を管渠内周面に均等な力で押し付けることができるため、地震時などで管渠の抜出し、ずれなどがあった場合でも、その動きに追従して押圧力を保持して水密性の確保が可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−144229号公報
【特許文献2】特開2006−83888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1及び特許文献2に記載のものでは、以下に示すような問題がある。
【0008】
(1)上記方法では、矩形、あるいは馬蹄形の管渠に環状シート部材を均等な力で押し付けることができない。
【0009】
(2)管渠にホールインアンカーを打込んでボルトによって環状シート部材を固定する方法もあるが、この場合、土砂などの流入はある程度防止できるが、水圧がかかったときに、ボルトとボルトの間では、ボルト近傍に比べて加圧力が弱く、この部分から漏水が発生するため確実な水密性を確保することは難しい。
【0010】
(3)ボルトによる固定と接着剤などで管渠と環状シート部材の接着を併用することも考えられるが、既設管渠では水などが流れている場合があり、確実な接着は困難である。また、地震時など動いた場合に、接着が剥がれてしまう虞れがある。
【0011】
(4)剛性のある鋼材などで押え付ける方法も考えられるが、この場合、部材が流水面に突出するため流下機能を阻害する。また、部材が大掛かりになるため現実的でない。
【0012】
本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく、既に埋設され又はこれから埋設される管状埋設物(管渠)の耐震性及び水密性を向上させる管状埋設物及びその製造方法を創出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための手段のうち、第1の発明の構成は、前後に連設された管状埋設物間の継目部又は壁面にひび割れを誘導する脆弱部が形成された管状埋設物において、
管状埋設物の壁面で且つ継目部又は脆弱部を挟んだ両側の位置に凹設された一対の凹溝と、一方の凹溝と他方の凹溝との間に配置されて継目部又は脆弱部を覆うシート部材と、凹溝内にシート部材と共に挟み込まれてシート部材を保持固定する固定部材と、を有することを特徴とする、と云うものである。
【0014】
第1の発明では、継目部又は脆弱部をシート部材で覆うことにより管状埋設物内への水の浸入、あるいは土砂の流入・堆積を防止するが、継目部又は脆弱部の両側に形成した一対の凹溝内に固定部材をシート部材と共に狭入することにより、シート部材の固定を達成する。
【0015】
凹溝は、管状埋設物の製造時に、埋設後に管状埋設物の継目部となる目地位置の近傍(管状埋設物の両端)にあらかじめ形成してもよいし、既設の管状埋設物の場合には、継目部を挟んだ両側の位置にそれぞれ削設することにより形成したものであってもよい。
【0016】
管状埋設物としては、例えばコンクリート製の流水管路を挙げることができるが、一般的な円筒状の管渠に限られるものではなく、例えば矩形状のボックスカルバート、多角形状、あるいは馬蹄形状の管渠などその他の形状から構成される管渠であってもよい。
【0017】
また、第1の発明の他の構成は、請求項1に記載の発明において、シート部材の幅方向の両端に、断面U字形状からなる挟持部を形成した、と云うものである。
【0018】
上記構成では、シート部材及び固定部材の凹溝内への挿入を容易にすると共に、シート部材の確実な固定を達成する。
【0019】
また、第1の発明の他の構成は、請求項1又は2に記載の発明において、シート部材が蛇腹状の伸縮部を備える、と云うものである。
【0020】
上記構成では、シート部材の全体の大きさをコンパクト化することができると共に、蛇腹状の伸縮部がシート部材に大きな伸び代を付与することで、特に継目部に大きな隙間が発生した場合の対応が可能となる。
【0021】
また、第1の発明の他の構成は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の発明において、一対の凹溝内に、断面コの字形状からなる補強部材を設けた、と云うものである。
【0022】
上記の構成では、凹溝の精度を高めることにより、固定部材と凹溝の壁面との間に挟んでシート部材を押え付ける圧着力の低下防止を達成する。補強部材の材質としては、金属製が好ましく、特には強度及び防錆効果に優れたステンレスが好ましい。
【0023】
また、第1の発明の他の構成は、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の発明において、固定部材を鋼管で形成した、と云うものである。
【0024】
上記構成では、凹溝内に固定部材を挿入した後、固定部材を加圧して凹溝幅方向へ断面略楕円形状に変形させることで、凹溝の両壁面からのより強い反力を得てシート部材の確実な保持固定を達成する。
【0025】
また、第1の発明の他の構成は、請求項5記載の発明において、鋼管を断面楕円状とした、と云うものである。
【0026】
上記構成では、幅寸法の狭い凹溝内への固定部材の挿入を容易にすると共に、固定部材を凹溝内で加圧・変形させることで、シート部材をより大きな力で凹溝幅方向に圧着することにより、固定部材の脱落防止を確実に達成する。
【0027】
また、第1の発明の他の構成は、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の発明において、一対の凹溝を管状埋設物の壁面に沿って周状に形成すると共に、シート部材を環帯状に形成し且つ固定部材を線状又は円弧状に形成した、と云うものである。
【0028】
上記構成では、環帯状のシート部材で管状埋設物の壁面を周方向に切れ目なく覆うことにより、地震動あるいは不等沈下などによって脆弱部に発生したひび割れ及び前後する管状埋設物間の継目部からの浸水や土砂の流入の防止を達成する。
【0029】
また、第1の発明の他の構成は、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の発明において、一対の凹溝、シート部材及び固定部材を管状埋設物の内壁面に設けた、と云うものである。
【0030】
すなわち、一対の凹溝、シート部材及び固定部材を管状埋設物の内壁面に設けることもできるし、埋設前の管状埋設物であれば管状埋設物の外壁面に設けることもできる。
【0031】
また、第1の発明の他の構成は、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の発明において、シート部材を覆う保護カバーを設けた、と云うものである。
【0032】
上記構成では、シート部材の表面を保護カバーで覆うことにより、地震動などによって管状埋設物の継目部が開き、土砂あるいは水などの圧力がシート部材に作用した際、シート部材が圧力により膨らみ管状埋設物の内側に突出することを防止する。
【0033】
また、第1の発明の他の構成は、請求項9記載の発明において、保護カバーが、管状埋設物側に固定されてシート部材の両端部をそれぞれ覆う一対の端部カバーと、両端部を除くシート部材の中央部を覆うと共に端部カバーに対してスライド可能に取り付けられた中央カバーとを有して構成される、と云うものである。
【0034】
上記構成では、地震動などによって管状埋設物の継目部が開いてシート部材が伸び変形しても、それに追従して保護カバーがスライド移動することで変形後においてもシート部材を保護すると共に、シート部材が土砂あるいは水などの圧力により膨らみ、管状埋設物の内側への突出を防止することを達成する。
【0035】
また、第1の発明の他の構成は、請求項1乃至10のいずれかに一項に記載の発明において、凹溝と対向する位置に、固定部材が凹溝から抜け出るのを防止する脱落防止部材を設けた、と云うものである。
【0036】
上記構成では、凹溝内からの固定部材の脱落防止をより確実に達成する。
【0037】
また第1の発明の他の構成は、請求項11に記載の発明において、端部カバーの一部を凹溝に対向させることにより脱落防止部材とした、と云うものである。
【0038】
上記構成では、スライド可能に取り付けられた保護カバーにおける凹溝内からの固定部材の脱落防止を達成する。
【0039】
また、第2の発明の構成は、前後に連設された管状埋設物間の継目部又は壁面にひび割れを誘導する脆弱部が形成された管状埋設物の製造方法において、
管状埋設物の壁面で且つ継目部又は脆弱部を挟んだ両側に一対の凹溝をそれぞれ凹設する第1の工程と、一方の凹溝と他方の凹溝との間にシート部材を配置されて継目部又は脆弱部を覆う第2の工程と、一対の固定部材をシート部材と共に一対の凹溝のそれぞれに狭入してシート部材を固定する第3の工程と、を有することを特徴とする、と云うものである。
【0040】
上記構成では、継目部又は脆弱部をシート部材で覆うと共に、継目部又は脆弱部の両側に形成した一対の凹溝内に固定部材を狭入することにより、シート部材を固定部材で強固に圧着して保持固定する管状埋設物の製造方法を達成する。
【0041】
また、第2の発明の他の構成は、請求項13に記載の発明において、一対の凹溝をそれぞれ凹設する第1の工程の後に、一対の凹溝の内面に断面コの字形状からなる補強部材を設ける工程を有する、と云うものである。
【0042】
上記構成では、凹溝内におけるシート部材を押える圧着力を一定とすることを達成する。
【0043】
また、第2の発明の他の構成は、請求項13又は14に記載の発明において、断面中空円形状の固定部材を凹溝内に挿入する第3の工程の後に、固定部材を加圧して凹溝幅方向へ断面略楕円形状に押し潰す工程を備える、と云うものである。
【0044】
上記構成では、固定部材を凹溝内で押し潰すことにより、シート部材に対する圧着力を高めることを達成する。
【0045】
また、第2の発明の他の構成は、請求項13乃至15のいずれか一項に記載の発明において、第1乃至第3の工程を管状埋設物の内壁面に対して行う、と云うものである。
【0046】
上記構成では、埋設前の管状埋設物であるか、または既設の管状埋設物であるかを問わず、シート部材の迅速且つ容易な取り付けを達成する。
【発明の効果】
【0047】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
第1の発明においては、管状埋設物の形状が円形であるか、矩形であるかなど、形状を問わず、高い水密性を備えた耐震継手構造からなる管状埋設物とすることができる。しかも簡単な構成であるため、ある程度の流水下でも施工することができ、施工乃至は製造コストを低減できる。
【0048】
また、シート部材の幅方向の両端に、断面U字形状からなる挟持部を形成した構成にあっては、シート部材及び固定部材の凹溝内への挿入を容易とすることができると共に、シート部材が脱落しない程度に仮固定できるため、施工性が向上する。また、シート部材を設置固定した際に、シート部材両端部のはみ出しがないため、流下機能を阻害することがない。
【0049】
また、シート部材が蛇腹状の伸縮部を備える構成にあっては、特に地震などにおいて、連設された一方の管状埋設物と他方の管状埋設物との継目部分(目地部分)に大きな外力が作用して互いに離れ、軸方向又は径方向に大きく位置ずれした場合であっても、蛇腹状の伸縮部がこれらの動きに追従して伸びることにより、管渠内への浸水及び土砂の流入の防止を効果的に達成することができる。また蛇腹状の伸縮部を有しないシート部材を用いる場合には、伸縮性に富むシート材料を選定する。
【0050】
また、既設の管状埋設物では厳しい条件下での作業となるため、凹溝の深さ、幅、高さの各寸法を高精度に削設することが困難であり、凹溝に蛇行などの施工誤差が発生しやすい。
【0051】
そこで、一対の凹溝内に、断面コの字形状からなる補強部材を設けた構成にあっては、凹溝に曲がりや、幅の不均一、あるいは溝の角が欠けるなどの不具合が発生しても凹溝の精度を維持し、シート部材を押える圧着力の低下を防止することができる。よって、水圧が掛かった場合や地震時などにおいて、固定部材が凹溝から脱落し、シート部材の保持固定ができなくなって、浸水や土砂の流入が起こるような二次的災害の発生を未然に防止することが可能となる。
【0052】
また、固定部材を鋼管で形成した構成にあっては、安価な部材であり、且つ管状埋設物の形状に合わせた加工が容易にできるため、施工コストを低廉なものとすることができる。また、施工後には鋼管は凹溝内に収納され、流水面側に突出されることがないため、流下機能の低下を防止することができる。
【0053】
また、鋼管を断面楕円状とした構成にあっては、幅寸法の狭い凹溝内への固定部材の挿入を容易にすると共に、固定部材を凹溝内で加圧・変形させた状態において、シート部材からの反発力を大きくすることができるため、より強い挟持力でシート部材を確実に保持固定することができるので、固定部材を挿入する作業性が向上するばかりでなく、狭持力を向上させる効果も得られる。
【0054】
また、一対の凹溝を管状埋設物の内面に沿って周状に形成すると共に、シート部材を環帯状に且つ固定部材を線状又は円弧状に形成した構成にあっては、シート部材で管状埋設物の内面を切れ目なく周状に覆う状態で保持固定することができるため、継目部又は脆弱部からの浸水あるいは土砂の流入を確実に防止することができる。
【0055】
また、シート部材を覆う保護カバーを設けるようにした構成にあっては、シート部材を磨耗や損傷などから保護すると共に、地震動などによって管状埋設物の継目部が開き、土砂あるいは水などの圧力がシート部材に作用した際に、シート部材が圧力により膨らみ管状埋設物の内側に突出することを防止することができる。
【0056】
また、保護カバーが、管状埋設物側に固定されてシート部材の両端部をそれぞれ覆う一対の端部カバーと、両端部を除くシート部材の中央部を覆うと共に端部カバーに対してスライド可能に取り付けられた中央カバーとを有して構成されるとした構成にあっては、地震動などによって管状埋設物の継目部が開き、伸張変形したシート部材に土砂あるいは水などの圧力が作用しても、膨らんだシート部材が管状埋設物の内側に突出することを阻止することが可能となるため、流下機能の著しい低下を防止することができる。
【0057】
また、凹溝と対向する位置に、固定部材が凹溝から抜け出るのを防止する脱落防止部材を設けた構成にあっては、固定部材の凹溝からの脱落を防止することにより、シート部材の保持固定状態を維持することができる。
【0058】
また、端部カバーの一部を凹溝に対向させることにより脱落防止部材とした構成にあっては、スライド可能に取り付けられた保護カバーにおける凹溝内からの固定部材の脱落防止を、他の部材を使用することなく簡単な構成で達成できる。
【0059】
また、第2の発明では、これから敷設する管状埋設物は勿論のこと、既設の管状埋設物に対しても高い水密性を有する耐震継手構造を付与することのできる管状埋設物の製造方法を提供することができる。
しかも円筒状であるか、矩形状、多角形状、あるいは馬蹄状であるか等、管状埋設物の形状を問わず、すべての管状埋設物に応用することが可能である。
【0060】
また、一対の凹溝をそれぞれ凹設する第1の工程の後に、一対の凹溝の内面に断面コの字形状からなる補強部材を設ける工程を有する構成にあっては、凹設精度の低い凹溝、あるいは強度の低い凹溝であっても、シート部材を確実に固定することができるようになる。
【0061】
また、断面中空円形状の固定部材を凹溝内に挿入する第3の工程の後に、固定部材を断面略楕円形状に押し潰す工程を備える構成にあっては、より大きな圧着力でシート部材を保持固定することが可能となるため、容易に固定部材及びシート部材が凹溝から離脱することがない。
【0062】
また、第1乃至第3の工程を管状埋設物の内壁面に対して行う構成にあっては、シート部材等の取り付けを、管路内から行うことができるため、既設の管状埋設物の周囲を掘削する必要がなく、外壁面に取り付ける場合に比較して迅速且つ容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施の形態における管状埋設物としてボックスカルバートを示す斜視図である。
【図2】図1のII−II線における断面を拡大して示す斜視図である。
【図3】本発明の第1実施例として凹溝部分を拡大して示す断面図である。
【図4】Aは補強部材の第1実施例を示す凹溝の拡大断面図、Bは補強部材の第2実施例を示す断面図である。
【図5】本発明の第2実施例として凹溝部分を拡大して示す断面図である。
【図6】シート部材の他の実施例の部分断面図を示し、Aは変動前の状態、Bは変動後の状態を示している。
【図7】シート部材の他の実施例を拡大して示す部分断面図である。
【図8】保護カバーを設けた第1実施例として管状埋設物の一部を示す断面図である。
【図9】保護カバーを設けた第2実施例として管状埋設物の一部を示す断面図である。
【図10】保護カバーを設けた第3実施例として管状埋設物の一部を示す断面図である。
【図11】第3実施例の保護カバーの一部構成を示す斜視図である。
【図12】第3実施例の保護カバーを管状埋設物としてのボックスカルバートに設けた実施例を示す断面図である。
【図13】保護カバーを設けた第4実施例として管状埋設物の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の実施の形態として管状埋設物及びその製造方法を示す斜視図、図2は図1のII−II線における断面を拡大して示す斜視図、図3は本発明の第1実施例として凹溝部分を拡大して示す断面図、図4Aは補強部材の第1実施例を示す凹溝の拡大断面図、Bは補強部材の第2実施例を示す断面図、図5は本発明の第2実施例として凹溝部分を拡大して示す断面図、図6はシート部材の他の実施例の部分断面図を示し、Aは変動前の状態、Bは変動後の状態を示している。
【0065】
本発明の管状埋設物1としては、例えば図1に示すような矩形形状からなるコンクリート製のボックスカルバート2である。ボックスカルバート2は、上壁面2a,下壁面2b,左壁面2c及び右壁面2dからなる4つの内壁面と、これらの4つの内壁面が隣接する角部に傾斜面2e,2e,2e及び2eを有して構成されている。一方の開口端である先端部2Aと他方の開口端である後端部2Bとの間がボックスカルバート2の長さ方向である。このようなボックスカルバート2は、長さ方向の前段に設けられたボックスカルバート2の後端部2Bに、その後段に設けられたボックスカルバート2の先端部2Aを連設させた状態で地中に埋設される。
【0066】
ここで、埋設後の地震動や地盤の不等沈下などにより、ボックスカルバート2の下壁面2b上に、例えば図1,2に示すようなひび割れを誘導する脆弱部3にひび割れが発生した場合を想定し、この場合の耐震性及び水密性を向上させる管状埋設物の製造方法について説明する。
【0067】
第1の工程では、ボックスカルバート2の内壁面、すなわち脆弱部3が形成された下壁面2bで、且つ脆弱部3の端からボックスカルバート2の長さ方向ほぼ等距離の両側の位置に、幅寸法20mm,深さ寸法30mm程度の一対の凹溝4(凹溝4a及び凹溝4b)を平均距離L1で凹設する。このような一対の凹溝4(凹溝4a及び凹溝4b)は、その他の内壁面、すなわち上壁面2a,左壁面2c、右壁面2d及びこれらの間の4つの傾斜面2eの内壁面にも平均距離L1を維持しながら互いに平行な状態で連続的に周設する。
【0068】
第2の工程では、環帯状のシート部材6を、ボックスカルバート2の内部から脆弱部3及びその両端の一対の凹溝(凹溝4a及び凹溝4b)を覆うように設置する。環帯状のシート部材6は、一方の凹溝4aと他方の凹溝4bとの間の平均距離L1より若干広い幅寸法W1とする方が、余裕を持って固定することができる点で好ましい。なお、シート部材6は、可撓性及び防水性を有すると共に、引張り強さが強く伸縮性を有するゴムなどが好ましい。
【0069】
第3の工程では、丸鋼8a又は鋼管8bからなる固定部材8をシート部材6の表面側から一方の凹溝4a内に共に挟み込まれるようにしながら挿入(狭入)することにより、シート部材6の幅方向の一端を一方の凹溝4a内に保持固定する。同様に、他の固定部材8をシート部材6の表面側から他方の凹溝4b内に狭入することにより、シート部材6の幅方向の他端を他方の凹溝4b内に保持固定する(図3参照)。
【0070】
なお、固定部材8の外形寸法φの寸法の範囲は、シート部材6の板厚寸法をt、凹溝4の幅寸法をW2としたときに、W2−2×tよりも大きく、幅寸法W2よりも小さい範囲(W2>φ>W2−2×t)で適宜決定することができる。これにより、強力な圧着力でシート部材6を、凹溝4の両側方向から保持固定することが可能となる。
【0071】
また、固定部材8の外形寸法φは、凹溝4の深さ寸法をHとしたときに、H−t以下であることが好ましい(φ≦H−t)。この範囲に設定することにより、固定部材8が完全に凹溝4内に収納され、流水面側に突出されることがなくなるため、管状埋設物1内における流下機能の低下を防止することが可能となる。
【0072】
図3に示すように、丸鋼8aからなる固定部材8をシート部材6と共に凹溝4内に狭入すると、凹溝4内で、シート部材6が主として幅方向の加圧力を受けて圧縮変形させられるため、シート部材6を強固に保持固定することが可能である。このような工程で製造されたボックスカルバート2は、ひび割れを誘導する脆弱部3に発生するひび割れに対して、優れた耐震性及び水密性を有した管状埋設物1となる。
【0073】
固定部材8を構成する丸鋼8aとしては、シート部材6同様にリング状である必要はなく、作業性を考慮して適宜分割したものを用いることができる。個々の固定部材8の長さ寸法の和は、上壁面2a,下壁面2b,左壁面2c及び右壁面2dからなる4つの内壁面と、これらの内壁面が隣接する角部の傾斜面2eからなる、ボックスカルバート2の内周面の長さ寸法と同じか、それよりも若干長い寸法であればよい。複数の固定部材8を用いることにより、各壁面又は傾斜面2eごとに強固に固定することができると共に、固定部材8を複数に分割することで、リング状に比べて狭入時の作業効率を高めることができる。
【0074】
なお、管状埋設物1の形状が円筒状である場合には、任意の長さ寸法からなる円弧状の固定部材8を用いることにより、上記同様の効果が期待できる。
【0075】
また、図4Aに示すように、第2の工程の後に、一対の凹溝4内に、断面コの字形状からなる補強部材9をそれぞれ設ける工程を導入してもよい。補強部材9としては金属製、例えば強度的に強く、防錆作用も備えるステンレスなどが好適である。また、シート部材6を凹溝4内に狭入する際に、補強部材9あるいは凹溝4の角部分によるシート部材6の損傷を防止するために、補強部材9を図4Bに示すように上端部9aを側方に延長した延出部9b,9bを形成すると共に、上端部9aと延出部9bとの角に湾曲形状からなるR部9cを設けた断面形状としてもよい。なお、延出部9b,9bはボックスカルバート2の一つの壁面である下壁面2b内に埋設してもよいし、下壁面2b上に露出するように設けてもよい。
【0076】
凹溝4に断面コの字形状の補強部材9を設けることにより、例えば凹設後の凹溝4に、曲がり、幅の不均一、あるいは角部が欠けるなどの不具合が発生しても、凹溝4の寸法精度を高度に維持することが可能である。このため、凹溝4と固定部材8との間に設けられた可撓性のシート部材6に作用する加圧力を、凹溝4の全周に亘って均一化することができる。このため、シート部材6及び固定部材8の脱落を防止することができると共に、より確実な水密性を確保することが可能となる。
【0077】
また、断面コの字形状からなる補強部材9を図4Aに示すように、上端部9aの幅寸法W3を底部9dの幅寸法W4よりも狭めた形状とすることで、狭入後の固定部材8が凹溝4からより抜け出し難くすることが可能となり、シート部材6の脱落防止をより確実にすることができる。
【0078】
固定部材8として鋼管8bを用いる場合には、図5に示すように、固定部材8をシート部材6と共に凹溝4内に狭入する第3の工程の後に、断面中空円形状の固定部材8を油圧ジャッキ等で加圧して凹溝幅方向へ押し潰して略楕円状に変形させてもよい。この工程を行うと、シート部材6の圧縮変形を凹溝幅方向に増大させることが可能となり、シート部材6を更に強固に保持固定することが可能な管状埋設物1とすることができる。
【0079】
なお、あらかじめ断面略楕円状の鋼管8bからなる固定部材8を用意し、シート部材6と共に一対の凹溝4内にそれぞれ狭入してもよい。この場合、固定部材8の長軸を下壁面2bに対して垂直に向く状態で狭入することになるので、固定部材8の凹溝4内への挿入が容易となる。また、狭入後に固定部材8を凹溝4内でジャッキ等により加圧して、長軸が下壁面2bに対して略平行に向くように変形させることで、上記同様にシート部材6を更に強固に保持固定することが可能となる。
【0080】
前段に連設されたボックスカルバート2の後端部2Bとその後段に設けられたボックスカルバート2の先端部2Aとの継目部については、上述の脆弱部3を継目部とみなし、上記同様、第1の工程として前段側のボックスカルバート2の後端部2Bに一方の凹溝4aを、後段側のボックスカルバート2の先端部2Aに他方の凹溝4bをそれぞれ凹設することにより、継目部において高い水密性及び耐震性を備える管状埋設物1とすることができる。
【0081】
このような製造工程による管状埋設物1の製造は、ボックスカルバート2の先端部2Aと後端部2Bにあらかじめ一対の凹溝4(4a,4b)を設けて製作することで、管状埋設物1の耐震化を埋設時に行うこともできるし、既に埋設され使用されている管状埋設物1に行うことも可能である。
【0082】
また、地震時の地震動や地盤の不等沈下において、継目部の水密性に対する信頼性を向上させるためには、想定される変動量に対してある程度の余裕が生まれるように、より幅寸法W1の広いシート部材6を用いることが好ましいが、コスト、あるいは施工性の面からの制約等により、幅の広いシート部材6を使用するには限界がある。
【0083】
そこで、例えば図6A,Bに示すような、シート部材6が蛇腹状の伸縮部6Aを備える構成とすることで対応することが可能となる。図6A,Bに示すように、伸縮部6Aはシート部材6の両端を除く全体を蛇腹状の伸縮部6Aとした構成であってもよいし、中間部分の一部を蛇腹状に形成した構成であってもよい。
【0084】
図6Aに示すように、地震動や不等沈下が起きる変動前の段階、すなわち前段のボックスカルバート2の後端部2Bとその後段のボックスカルバート2の先端部2Aとが連結されて継目部Jが形成された状態では伸縮部6Aは収縮状態にある。そして、図6Bに示すように、地震動や不等沈下が発生し、例えば前段のボックスカルバート2の後端部2Bとその後段のボックスカルバート2の先端部2Aとの間が軸方向に沿って離れ、この間に隙間Sが発生すると、伸縮部6Aがシート部材6の伸縮方向に大きく伸長することにより、隙間Sが形成された後も水密性を維持することが可能となる。
【0085】
なお、このような伸縮部6Aによる効果は、前後するボックスカルバート2の長さ方向(シート部材6の伸縮方向)に位置ずれした場合だけでなく、これと略直交する剪断方向(径方向ともいう)に位置ずれした場合も同様に有効である。
【0086】
次に、シート部材の他の実施例について説明する。
図7はシート部材の他の実施例を拡大して示す部分断面図である。なお、図7ではシート部材の幅方向の一端のみを示しているが、他方の端部も同様の構成である。
図7に示すシート部材6が、上述のシート部材6と異なる点は、シート部材6の幅方向の両端に断面U字形状からなる挟持部6Bを形成した点にある。
【0087】
挟持部6Bの外幅寸法Waは、凹溝4の幅寸法W2とほぼ同寸法で形成されている。また挟持部6B内の内壁6a,6a間の内幅寸法Wbは固定部材8の外形寸法φよりも狭い幅寸法で形成されている(φ>Wb)。このような挟持部6Bは、例えば図6に示すように伸縮部6Aの幅方向の両端にそれぞれ設けられる。
なお、この場合にも上述の断面コの字形状の補強部材9を凹溝4内に設置してもよく、この場合には補強部材9の両壁間の幅寸法がW2に設定される。
【0088】
この実施例では、施工時において、挟持部6Bを凹溝4内に容易に挿入することができ、シート部材6が脱落しない程度に仮固定できるため、施工性が向上する。すなわち、管状埋設物1を短時間で製造することができる。また、シート部材6を固定部材8により、設置・固定した際に、シート部材6の両端部にはみ出しがないため、流下機能を阻害することがない。そして、挟持部6B内の内幅寸法Wbよりも広い外形寸法φからなる固定部材8を凹溝4内に狭入することにより、両幅方向からの強力な加圧力を発生させてシート部材6を強固に固定することが可能である。これにより、高い水密性及び耐震性を有する管状埋設物1とすることができる。
【0089】
さらに、シート部材6を磨耗や損傷から保護するため、以下に示すような保護カバー10を管状埋設物1の内壁面に取り付ける構成とすることが望ましい。
図8は保護カバーを設けた第1実施例として管状埋設物の一部を示す断面図、図9は保護カバーを設けた第2実施例として管状埋設物の一部を示す断面図、図10は保護カバーを設けた第3実施例として管状埋設物の一部を示す断面図、図11は第3実施例の保護カバーの一部構成を示す斜視図、図12は第3実施例の保護カバーを管状埋設物としてのボックスカルバートに設けた実施例を示す断面図、図13は実施例4として管状埋設物の一部を示す断面図である。なお、図8、図10及び図13は管状埋設物間に継目部が形成された例を、図9は管状埋設物の壁面にひび割れを誘導する脆弱部が形成された例を示している。
【0090】
図8乃至図11に示す保護カバー10は、シート部材6を磨耗や損傷などから保護すると共に、地震動などによって管状埋設物の継目部が開き土砂あるいは水などの圧力がシート部材6に作用した際に、シート部材6が圧力により膨らみ、管状埋設物の内側に突出することを防止するためのものである。
【0091】
図8及び図9の第1実施例及び第2実施例では、保護カバー10が主としてシート部材6の伸縮方向の両端部を覆う一対の端部カバー11,11と、シート部材6の中央を覆う中央カバー12とで構成される。
【0092】
図8に示す第1実施例では、一対の端部カバー11,11が継目部Jを挟んでその両側の位置に設けられている。一方の端部カバー11は、一方の管状埋設物1の内壁である下壁面2bに、シート部材6の一方の端部を覆う状態で固定され、同様に他方の端部カバー11は、他方の管状埋設物1の内壁である下壁面2bに、シート部材6の他方の端部を覆う状態で固定されている。
【0093】
端部カバー11は、基部11aとこの基部11aから断面クランク状(または段差状)に形成されて継目部Jに向かって延びるカバー部11bとを有して構成されている。基部11aは管状埋設物1の内壁面である下壁面2bに固定ボルト16を介して取り付けられ、カバー部11bがシート部材6の一方の端部を覆っている。基部11aの段差部分は、凹溝4に対向配置されており、凹溝4から鋼管8bなどの固定部材8が抜け出てしまうことを防止する脱落防止部材15として機能している。またカバー部11bの下面には、内壁面である下壁面2b側に突出するガイド突起13がそれぞれ形成されている。ガイド突起13は、少なくともカバー部11bの前後方向(紙面と直交する方向)の両端に設けられている。
【0094】
他方、第1実施例に示す中央カバー12は平板状の部材であり、その前後方向の両端にはシート部材6が伸縮する方向を長手方向とするガイド長孔14が穿設されており、ガイド突起13がこのガイド長孔14に挿入されている。なお、このようなガイド長孔14は、ガイド突起13と対向する位置、すなわち少なくとも長手方向と直交する前後方向(紙面と直交する方向)の両端にそれぞれ設けられている。
【0095】
中央カバー12は一対の端部カバー11の各カバー部11b,11bとシート部材6との間に配置されており、両端の端部カバー11,11は、ガイド突起13とガイド長孔14からなる案内機構によって案内されることにより、中央カバー12に対して長手方向(シート部材6の伸縮方向)に沿って相対的にスライド移動可能な状態にある。
【0096】
図9に示す第2実施例は、中央カバー12を一対の端部カバー11の各カバー部11b,11bの上側(ボックスカルバート2の内部中心側)に設けるようにした構成である点、ガイド突起13を中央カバー12側に設け且つガイド長孔14を端部カバー11側に設けた点などにおいて上記第1実施例と相違するが、全体的な基本構成は図8の第1実施例と同様である。
【0097】
図8及び図9に示す第1実施例及び第2実施例では、地震動などによって隣接する管状埋設物1間の継目部Jが開くことにより、またはひび割れを誘導する脆弱部3にひび割れが発生することにより、継目部J又は脆弱部3に隙間が形成されることにより、シート部材6が伸長させられる。同時に、ガイド突起13がガイド長孔14内を移動するため、シート部材6の伸長に追従して一方の端部カバー11と他方の端部カバー11との対向間隔が広がる。
【0098】
よって、土砂あるいは水などの圧力が、上記隙間を介してシート部材6に直接作用した場合でも、シート部材6が管状埋設物1の内側に大きく突出することを防止することができる。よって、流下機能の低下を小さくできる。
なお、ガイド突起13とガイド長孔14は、一方が端部カバー11側のカバー部11bに設けられ、他方が中央カバー12に設けられる構成であればよい。
【0099】
図10乃至図13に示すように、第3及び第4実施例に示す保護カバー10は平板状の金属板(例えばステンレス)から形成された第1部材10Aと第2部材10Bとを複数枚組み合わせることにより構成される。第1部材10A及び第2部材10Bは、平板部10aの幅方向(伸縮方向と同方向)の両端を鈍角状に折り曲げて形成したテーパ部10b,10bを備えた部材である。特に、第2部材10Bは平板部10aの長手方向の2箇所の位置で鈍角(図11では略135度)に折り曲げることにより、長手方向両側の平板部10aと平板部10aとが互いに直交するように形成された部材である。
【0100】
図12に示すように、第1部材10Aが上壁面2a,下壁面2b,左壁面2c及び右壁面2dからなる4つの内壁面に対向配置され、第2部材10Bがこれらの4つの内壁面と隣接する角部である4つの傾斜面2eに対向して設けられることにより、保護カバー10は管状埋設物1の内壁面に沿って周状に設置される。
このように設置された保護カバー10は、例えば図13に示すように保護カバー10の長手方向の両端を押さえ付ける機能を備えた保持部材17と固定ボルト18とによって取り付けることができる。なお、このような保持部材17は、周方向に並ぶ保護カバー10の両端に沿って周状に取り付けてもよいし、あるいは保護カバー10の両端の任意の位置に、周方向に間隔を置いて複数取り付けるようにしてもよい。
【0101】
図10及び図13に示すように、第3及び第4実施例においてもシート部材6が保護カバー10によって覆われるため、シート部材6が流水面に突出することがない。また第1部材10A及び第2部材10Bのテーパ部10b,10bが流水の上流側及び下流側に配置されるようになるため、流下機能の低下を抑えることが可能である。
【0102】
なお、第3及び第4実施例に示す保護カバー10は、ボックスカルバート2の下壁面2bなど平面に限って使用されるものではなく、第2部材10Bを内壁面に倣う形状で形成することにより、例えば円筒状や馬蹄形状の内壁面を有する管状埋設物1に使用することも可能である。
【0103】
また、図9に示すように、第3実施例においても、シート部材6の脱落をより確実に防止するために、凹溝4と対向する位置に脱落防止部材15及びこれを固定する固定ボルト16を設けた構成とすることが好ましい。なお、脱落防止部材15は、管状埋設物1の形状あるいは大きさなどを考慮して、任意の位置に任意の個数取り付けることができる。なお、図13の第4実施例に示すように、固定部材8の脱落防止のため、固定部材8と保護カバー10との隙間にスペーサ19を入れるとよい。
【0104】
以上、実施例に沿って本発明の構成とその作用効果について説明したが、本発明の実施の形態は上記実施例に限定されるものではない。
【0105】
例えば、上記実施の形態では、既に地中に埋設され、管渠の壁面に地震時などにひび割れを誘導するために形成された脆弱部又は管渠の継目部に対して耐震性及び水密性を付与する管状埋設物及びその製造方法について説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、これから埋設される管状埋設物に対しても有効である。
【0106】
すなわち、埋設される前の管状埋設物1の内壁面に、あらかじめ凹溝4を、長さ方向に沿って所定間隔で複数形成しておくことにより、あるいは管状埋設物1の後端部及び前端部に周設しておくことにより、管状埋設物1の埋設時に地盤の急変部にあたる箇所あるいは管渠の継目部Jに対して、あらかじめ設けておいた一対の凹溝4(4a,4b)間にシート部材6を配置し、上記同様に固定部材8,8で保持固定するようにすればよい。この場合、凹溝4の形成は、型枠内にコンクリートを流し込んで管状埋設物1を築造する段階で同時に形成することが可能である。この際同時に、各凹溝4内に断面コの字状の補強部材9を埋め込むことも可能である。
【0107】
また上記実施の形態では、シート部材6を、管状埋設物1の内壁面に取り付けた構成を示して説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、埋設前の管状埋設物1であれば、管状埋設物1の外壁面にシート部材6を取り付ける構成とすることもできる。この場合、上で説明した第1〜第3の工程については、管状埋設物1の外壁面に対して行うことは勿論である。
【0108】
管状埋設物1の外壁面にシート部材6を取り付ける構成では、内側に取り付ける場合に比較し、内面側にシート部材6や保護カバー10などが管状埋設物1内に露出されないため、流下機能の低下を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の管状埋設物は、地中の埋設される下水道、雨水排水、電気・通信、地下通路などを構成するコンクリート製のボックスカルバートや円筒状の管渠の分野における用途展開をさらに広い領域で図ることができる。
【符号の説明】
【0110】
1 ; 管状埋設物
2 ; ボックスカルバート
2A ; 先端部
2B ; 後端部
2a ; 上壁面
2b ; 下壁面
2c ; 左壁面
2d ; 右壁面
2e ; 傾斜面
3 ; 脆弱部
4 ; (一対の)凹溝
4a ; 一方の凹溝
4b ; 他方の凹溝
6 ; シート部材
6A ; 伸縮部
6B ; 挟持部
6a ; 挟持部の内壁
8 ; 固定部材
8a ; 丸鋼
8b ; 管鋼
9 ; 補強部材
10 ; 保護カバー
10A; 第1部材
10B ; 第2部材
10a ; 平板部
10b ; テーパ部
11 ; 端部カバー
11a ; 基部
11b ; カバー部
12 ; 中央カバー12a
13 ; ガイド突起
14 ; ガイド長孔
15 ; 脱落防止部材
16 ; 固定ボルト
17 ; 保持部材
18 ; 固定ボルト
J ; 継目部
19 ; スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後に連設された管状埋設物(1)間の継目部(J)又は壁面にひび割れを誘導する脆弱部(3)が形成された管状埋設物(1)において、
前記管状埋設物(1)の壁面で且つ前記継目部(J)又は前記脆弱部(3)を挟んだ両側の位置に凹設された一対の凹溝(4)と、一方の凹溝(4a)と他方の凹溝(4b)との間に配置されて前記継目部(J)又は前記脆弱部(3)を覆うシート部材(6)と、前記凹溝(4)内に前記シート部材(6)と共に挟み込まれて前記シート部材(6)を保持固定する固定部材(8)と、を有することを特徴とする管状埋設物。
【請求項2】
シート部材(6)の幅方向の両端に、断面U字形状からなる挟持部(6B)を形成した管状埋設物。
【請求項3】
シート部材(6)が蛇腹状の伸縮部(6A)を備えたものである請求項1又は2記載の管状埋設物。
【請求項4】
一対の凹溝(4)内に、断面コの字形状からなる補強部材(9)を設けた請求項1乃至3のいずれか一項に記載の管状埋設物。
【請求項5】
固定部材(8)を鋼管(8b)で形成した請求項1乃至4のいずれか一項に記載の管状埋設物。
【請求項6】
鋼管(8b)を断面楕円状とした請求項5記載の管状埋設物。
【請求項7】
一対の凹溝(4)を管状埋設物(1)の壁面に沿って周状に形成すると共に、シート部材(6)を環帯状に形成し且つ固定部材(8)を線状又は円弧状に形成した請求項1乃至6のいずれか一項に記載の管状埋設物。
【請求項8】
一対の凹溝(4)、シート部材(6)及び固定部材(8)を管状埋設物(1)の内壁面に設けた請求項1乃至7のいずれか一項に記載の管状埋設物。
【請求項9】
シート部材(6)を覆う保護カバー(10)を設けた請求項1乃至8のいずれか一項に記載の管状埋設物。
【請求項10】
保護カバー(10)が、管状埋設物(1)側に固定されてシート部材(6)の両端部をそれぞれ覆う一対の端部カバー(11)と、前記両端部を除くシート部材(6)の中央部を覆うと共に前記端部カバー(11)に対してスライド可能に取り付けられた中央カバー(12)とを有して構成される請求項9記載の管状埋設物。
【請求項11】
凹溝(4)と対向する位置に、固定部材(8)が前記凹溝(4)から抜け出るのを防止する脱落防止部材(15)を設けた請求項1乃至10のいずれか一項に記載の管状埋設物。
【請求項12】
端部カバー(11)の一部を凹溝(4)に対向させることにより脱落防止部材(15)とした請求項11記載の管状埋設物。
【請求項13】
前後に連設された管状埋設物(1)間の継目部(J)又は壁面にひび割れを誘導する脆弱部(3)が形成された管状埋設物の製造方法において、
前記管状埋設物(1)の壁面で且つ前記継目部(J)又は前記脆弱部(3)を挟んだ両側に一対の凹溝(4)をそれぞれ凹設する第1の工程と、一方の凹溝(4a)と他方の凹溝(4b)との間にシート部材(6)を配置されて前記継目部(J)又は前記脆弱部(3)を覆う第2の工程と、一対の固定部材(8)を前記シート部材(6)と共に前記一対の凹溝(4a,4b)のそれぞれに挿入して前記シート部材(6)を固定する第3の工程と、を有することを特徴とする管状埋設物の製造方法。
【請求項14】
一対の凹溝(4)をそれぞれ凹設する第1の工程の後に、前記一対の凹溝(4)の内面に断面コの字形状からなる補強部材(9)を設ける工程を有する請求項13記載の管状埋設物の製造方法。
【請求項15】
断面中空円形状の固定部材(8)を凹溝(4)内に挿入する第3の工程の後に、前記固定部材(8)を断面略楕円形状に押し潰す工程を備える請求項13又は14記載の管状埋設物の製造方法。
【請求項16】
第1乃至第3の工程を管状埋設物(1)の内壁面に対して行う請求項13乃至15のいずれか一項に記載の管状埋設物の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−100669(P2013−100669A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244510(P2011−244510)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000224215)藤村ヒューム管株式会社 (24)
【出願人】(591082362)シントク工業株式会社 (14)
【Fターム(参考)】