説明

管状膜モジュール

管状膜モジュールにおいて、円筒形ケーシング(102)内に軸方向に走る多数のチューブラ膜区間(104)が配置され、これらのチューブラ膜区間はそれらの端部(105,105’)で互いに連結されてさらに長いチューブラ膜区間を形成している。円筒形ケーシング(102)は片側または両側に、内部にU字形連結管(115)の配置された加熱チャンバ(110)を有し、これらのU字形連結管の両端の開口端はチャンバ(110)とケーシング(102)との間の隔壁(117,114)を貫き、それぞれ、並行した2チューブラ膜区間の開口端(112,112’)と連結して、膜ループを形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器の組み込まれた管状膜モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
液体混合物及び気体混合物を分離するための膜分離技術において、使用される膜は合理的なユニットにまとめられてモジュールとされる。一般に公知の形のこれらのモジュールは、一方で折畳み膜型モジュール、プレート型モジュール及びスパイラル型モジュールであり、他方で中空糸膜モジュール、毛管膜モジュール及びチューブラ又は管状膜モジュールである。最初に挙げたモジュールグループは、フラット膜用に使用され、第二のグループはホース膜用に使用される。個々の膜ホースの直径は様々である。直径は、中空糸膜モジュールにあっては30〜100μmの範囲内にあり、毛管膜モジュールにあっては0.2〜3mmの範囲内にあり、チューブラ又は管状膜モジュールにあっては4〜50mmの範囲内にある。膜透過流れは中空糸膜の場合には外側から内側へ向けられ、毛管膜の場合には内側から外側並びに外側から内側のいずれにも向けることができ、チューブラ膜の場合には一般に内側から外側へ向けられる。
【0003】
チューブラ又は管状膜モジュールにおいて、ホース状の膜は耐圧支持管の内側に配設されている。この場合、支持管の材料は十分な多孔度を有し、透過物に対して透過性を有していてよい。支持管の材料自体が透過物に対して不透過性を有している場合には、支持管は透過物を搬出するための十分多数の孔(穴)を有していなければならない。この場合、支持管と膜との間にたとえばポリエチレンからなる薄い多孔質の管を配置し、この多孔質管が一方で、短い間隔をおいて配置された支持管孔への透過物の横断輸送を妨げずかつまた、他方で、膜に対して特にこれらの孔の領域で所要の支柱を供するのが好適である。
【0004】
膜は、交換可能であるかあるいは支持材料に固着されていてもよい。前述した構造により、膜分離技術において、前述した(一般に4〜50mmの範囲内の)直径の(膜分離技術においてチューブラ膜と称される)支持層付きホース膜を備えたモジュールには管状膜モジュールとの名称が定着していることから、以下では、チューブラ膜を備えたモジュールに管状膜モジュールとの名称が使用される。管状膜モジュールのチューブラ膜は、それぞれの方法に応じ、分離されるべき混合物によって直列(順次)に貫流されるか、または2本またはそれ以上の膜が並列して貫流されてよい。したがって、プロセスの要件に応じ、並列貫流と直列貫流の任意のコンビネーションが実現されてよい。
【特許文献1】欧州特許第0 096 339号[EP−B−0 096 339]明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
チューブラ膜の特別な態様に応じ、該膜は例えば精密濾過、限外濾過、ナノ濾過の各方法に使用され、あるいは逆浸透、パーベーパレーションないし蒸気透過の各方法に使用される。液体混合物の分離を行うためのパーベーパレーション法においては、透過物の気化に要される熱が液体混合物の顕熱から奪われ、これによって生ずる温度低下は推進力と膜透過流れの減少をもたらし、方法の効率の低下をもたらす。蒸気又はガス混合物の分離に際しては、不可避の熱損失によって、冷却と混合物成分の凝縮が生ずることがあり、これが却って膜の閉塞を招くことがある。したがって、損失された熱は、分離さるべき混合物にできるだけ不断に補給されなければならない。公知の管状膜モジュールにおいて、熱供給はモジュールの外部で、中間に介在する熱交換器内部での分離されるべき出発混合物の昇温によって段階的に行われる。従来の技術によれば、出発混合物が熱交換器を離れて管状膜モジュールに流入した後は、もはや熱供給は不可能である。特に、非常に長いホース状膜ないし大きな膜面積を有し、大量の透過物が生ずる管状膜モジュールにおいては、出発混合物の著しい冷却が生じ、これによって分離効率が損なわれあるいは全面的な機能停止に至ることさえもある。そのため、面積の限定されたモジュールしか使用し得ず、また、中間にそれぞれ熱交換器が接続されなければならない。これによって不可避となる各モジュール当たりの膜面積の制限、所要の数の中間熱交換器、これらの装置の間に要される付加的な配管系並びに付加的な制御コストにより、特に比較的大型の設備にあっては、配備された膜の単位面積当たりの比コストは不経済に高まることになる。本発明の目的はこうした点から生じたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、円筒形ケーシング内に軸方向に走る多数のチューブラ膜区間が配置され、これらのチューブラ膜区間は、場合により部分的に、それらの端部で互いに連結されてさらに長いチューブラ膜区間を形成する管状膜モジュールであって、円筒形ケーシングは片側または両側に、内部にU字形連結管の配置された加熱チャンバを有し、これらのU字形連結管の両端の開口端はチャンバとケーシングとの間の隔壁を貫き、それぞれ、並行した2チューブラ膜区間の開口端と連結して、膜エンドレスループを形成していることを特徴とする管状膜モジュールによって解決される。
【0007】
公知の管状膜モジュールでは、円筒形ケーシング内を走るチューブラ膜区間は端部で結合されてエンドレス膜ホースを形成している。本発明による管状膜モジュールはそれとは異なり、一定数の並行したチューブラ膜区間は円筒形ケーシングの一端あるいは両端で開口したままとされ、これらの開口端は続いて、チャンバとケーシングとの間の隔壁を貫く開口端を有するU字形連結管によって互いに連結される。分離されるべき混合物はこれらの連結箇所において加熱チャンバを貫流し、これによって必要な熱供給が保証される。
【0008】
したがって、チャンバは熱交換器の機能を有しており、この場合、熱供給は例えば蒸気又はその他の熱担体によって行うことができる。
【0009】
本発明による管状膜モジュールの特別な態様において、チューブラ膜区間は一端が、あるいは両端が、孔の設けられたプレートに嵌挿固定されている。また、U字形連結管の開口端もこれらの孔に嵌挿されている。この場合、封止材を設けることができるのは言うまでもない。熱交換器に連結されていないチューブラ膜区間はケーシングの内部で互いに連結されているか、エンドプレートに設けられた孔に嵌挿固定されている場合には、エンドプレートに設けられた適切な刳り貫き孔によって互いに連結されていてよい。
【0010】
管状膜モジュールの円筒形ケーシングは、例えばスチール又はその他の金属材料からなるか、場合によりプラスチックからなり、発生する透過物用の適切な搬出口を備えている。
【0011】
熱交換器として機能する加熱チャンバは熱担体用の適切な給排孔を有している。熱担体として蒸気が使用される場合には、チャンバは好ましくはスチールからなり、適切な耐熱・耐圧設計が行われている。
【0012】
好ましい実施形態において、円筒形ケーシングの両側に熱交換器としての加熱チャンバが設けられている。いずれのチャンバも温度制御用の適切な装置を備えている。円筒形ケーシングの両側に熱交換器が設けられている場合には、それらのチャンバの少なくとも一方にモジュール内で処理されるべき液体の給排出用の適切な管路が設けられていなければならない。
【0013】
さらに別途の好ましい実施形態において、片側または両側に設けられたチャンバは取外し可能な装置として構成されている。これにより、故障発生時に、損傷したチューブラ膜区間の交換を容易に行うことができる。
【0014】
本発明による管状膜モジュールはあらゆるタイプのチューブラ膜に適している。つまり、一方で、透過物に対して透過性を有する支持管を備えているか又は支持管が不透過性を有する場合に、支持管と膜との間にさらに別の薄い多孔質管が間挿される代表的なタイプのチューブラ膜に適しており、他方で、好ましくは、膜層、支持層及び場合によりさらに別のキャリア層がすでに一体に形成されているタイプの膜にも適している。この場合、パーベーパレーション法による液体混合物の分離には、化学的組成の異なる少なくとも2層からなり、場合により、フリースまたクロスからなるさらにもう一つのキャリア層が設けられている好ましくは多層膜が使用される。一般にこの種の合成または複合膜は、膜の機械的耐久性を基本的に決定する多孔質の基層(支持層)と、その上に設けられた、化学的性質の異なる材料からなる、膜の分離特性を基本的に決定する層(分離層)とを有している。好ましくは、支持層の下側に、フリースまたはクロスからなるもう一つのキャリア層が配されているのがよい。蒸留によっては分離が困難な液体混合物のパーベーパレーションないし蒸気透過法による分離用又はガス分離用のフラット膜として使用されるこの種の合成膜は欧州特許第0 096 339号[EP−B−0 096 339]明細書から公知である。これらのフラット膜は、ホース膜に加工された後、本発明による管状膜モジュールの好ましい実施形態に使用される。この場合、チューブラ膜は4〜50mmの範囲内、好ましくは8〜30mmの範囲内の直径を有しており、実地には12〜25mmの直径が特に有利であることが判明した。
【0015】
特別な実施形態において、チューブラ膜はその成形後に、すでに十分な耐圧性を有しかつ補助的な支持管なしでモジュールに使用することができるように、フリースまたはクロスからなる単層または複層の外側層で被覆されているか又はそれらの層が外側層として製紡被着されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を図面を参照して説明する。
【0017】
図1に示したモジュール101は、チューブラ膜区間104を有した、軸方向に走る多数の支持管103を内蔵した円筒形ケーシング102を有している。別法(図示せず)として、支持管なしの、十分な耐圧性を有したチューブラ膜区間が使用される。円筒形ケーシング102は、チューブラ膜を透過する透過物を搬出するための少なくとも1接続口120を備えている。
【0018】
図1において、モジュール101の一方の側で、チューブラ膜区間104のそれぞれの一端105は隔壁107に設けられた孔108に嵌挿固定され、隔壁107に設けられた孔108’に嵌挿固定された第二のチューブラ膜区間104’の末端105’と、連結具106を経て接続されている。図1において、この連結具106はU字形の湾曲管であるが、これはエンドプレート109に設けられた適切な刳り貫き孔であってもよい。したがって、エンドプレート109に設けられたこの種の刳り貫き孔を経て複数のチューブラ膜区間が互いに連結されていてもよい。エンドプレート109と隔壁107との間には適切なシール材(図示せず)が配置されている。
【0019】
モジュール101の他方の側には、熱媒給排用の接続口111,111’を備えた加熱チャンバ110が配置されている。チューブラ膜区間の一端112は隔壁114に設けられた孔113に嵌挿固定され、U字形の連結管115を介して、隔壁114に設けられた孔113’に嵌挿固定された第二のチューブラ膜区間104’の端部112’と接続されている。U字形連結管115の長さは、U字形連結管115の内部を貫流する分離されるべき混合物への十分な熱伝達が保証されるように選択されている。U字形の連結管115は、それ自体で、エンドプレート117に設けられた孔116,116’に嵌挿固定されていてよい。この場合、エンドプレート117と隔壁114との間には適切なシール材(図示せず)が配置されている。分離されるべき混合物の給排出用の接続口119,119’を備えた管路118,118’は加熱チャンバ110を貫通している。
【0020】
図2は、2加熱チャンバ210a,210bを備えた、本発明によるモジュール201を示している。この場合、モジュール201の円筒形ケーシング202は、チューブラ膜区間204を有した、軸方向に走る多数の支持管203を内蔵している。別途実施形態
(図示せず)において、支持管なしの、十分な耐圧性を有したチューブラ膜が使用される。モジュール201の円筒形ケーシング202は、チューブラ膜を透過する透過物を搬出するための少なくとも1接続口220を備えている。各々のチューブラ膜204は両端205a,205bで、隔壁207a,207bに設けられた孔208a,208bに嵌挿固定されている。隔壁207a,207bに設けられた各々の孔208a,208bはエンドプレート217a,217bに設けられた孔213a,213bと整列している。エンドプレート217a,217bに設けられた孔213a,213bには、隔壁207a,207bとは反対側に、U字形の連結管215a,215bが嵌挿固定されており、該連結管はエンドプレート217a,217bに設けられたそれぞれ2孔213a,213a’;213b,213b’を互いに連結し、したがって、チューブラ膜区間204のそれぞれ2端205a,205a’;205b,205b’を互いに連結している。
【0021】
隔壁207とエンドプレート217との間には必要に応じてシール材(図示せず)が配置されている。U字形の連結管215は加熱チャンバ210内に突き出ており、その長さはその内部を貫流する分離されるべき液体混合物に管表面から伝達される熱量によって定まる。
【0022】
加熱チャンバ210a,210bは、それぞれの熱媒給排用の接続口211a,211a’;211b,211b’を備えている。分離されるべき混合物の給排出用の接続口119a,119a’を備えた管路218a,218a’は加熱チャンバの少なくとも一方(この場合、210a)を貫通している。特別な実施形態において、モジュールの右側にも、接続口119a,119a’に相当する接続口が設けられている。
【0023】
本発明によるモジュールは工業的使用にとって著しい利点を供する。パーベーパレーション法による液体混合物の分離に従来使用されてきたモジュールでは、透過物の気化による過度の冷却と共に流れの過度の減少が回避されなければならないために、モジュールユニットに有意に配備し得る膜面積は制限されている。本発明によるモジュールでは、分離さるべき液体混合物は限定されたチューブラ膜区間を貫流した後、加熱チャンバ内での熱交換によって昇温されるため、こうした制限はない。したがって、いかなる熱損失も直ちに補われるため、膜はほぼ一定の高さの温度下でかつ流れの最適利用下で稼働されることとなる。これは、特にパーベーパレーション法にあっては、所要の膜面積の著しい減少とコスト節減とをもたらす。また、別々のモジュールと熱交換器との間の配管系が不要となるために、さらなるコスト節減が実現される。蒸気透過及びガス透過の各方法にあっては、膜表面における流入混合物成分の凝縮と、それによる膜の閉塞ならびに膜透過輸送の阻害が回避される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】片側のみに加熱チャンバを備えた、本発明によるモジュールを示す図である。
【図2】モジュールの両側にそれぞれ加熱チャンバを備えた、本発明によるモジュールを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形ケーシング(102)内に軸方向に走る多数のチューブラ膜区間(104)が配置され、これらのチューブラ膜区間は、場合により部分的に、それらの端部(105,105’)で互いに連結されてさらに長いチューブラ膜区間を形成する管状膜モジュールであって、
円筒形ケーシング(102)は片側または両側に、内部にU字形連結管(115)の配置された加熱チャンバ(110)を有し、これらのU字形連結管の両端の開口端はチャンバ(110)とケーシング(102)との間の隔壁(117,114)を貫き、それぞれ、並行した2チューブラ膜区間の開口端(112,112’)と連結して、膜エンドレスループを形成していることを特徴とする管状膜モジュール。
【請求項2】
請求項1において、
チューブラ膜区間は12〜25mmの範囲内の直径を有することを特徴とする管状膜モジュール。
【請求項3】
請求項1または2において、
チューブラ膜区間はフリースまたはクロスからなる単層または複層の外側層で被覆されているかまたはそれらの層が外側層として製紡被着されており、そのため、高度な耐圧性を有しかつ支持管なしでモジュールに使用することができることを特徴とする管状膜モジュール。
【請求項4】
前記請求項のいずれか1項において、
チューブラ膜はパーベーパレーションに適した合成膜であることを特徴とする管状膜モジュール。
【請求項5】
前記請求項のいずれか1項において、
片側または両側に設けられた加熱チャンバ(210a,210b)は取外し可能な装置として構成されていることを特徴とする管状膜モジュール。
【請求項6】
パーベーパレーション法による液体混合物の分離のための、請求項1から5までのいずれか1項に記載の管状膜モジュールの使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−504949(P2007−504949A)
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529875(P2006−529875)
【出願日】平成16年5月19日(2004.5.19)
【国際出願番号】PCT/EP2004/005405
【国際公開番号】WO2004/103531
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(505433851)ズルツアー ヒェムテヒ ゲーエムベーハー−メムブラーンテヒニク− (1)
【Fターム(参考)】