管状部材の連結構造体の固定部材および固定方法
【課題】 1対の管状部材が連結具により連結されて成る連結構造体を廃棄物処理場の法面に簡便に固定することができる固定部材を提供する。
【解決手段】 管状部材20を挿入する開口部6を有する第1部分2、および面に取り付けられる第2部分4を有し、第1部分2と第2部分4との間で折り曲げ可能である固定部材10を用い、固定部材の第2部分4を所定の面22に取り付けて、第1部分2と第2部分4との間を線fに沿って折り曲げ、固定部材の開口部6に管状部材20を挿入することにより、管状部材20が連結されて成る連結構造体を所定の面22に固定する。
【解決手段】 管状部材20を挿入する開口部6を有する第1部分2、および面に取り付けられる第2部分4を有し、第1部分2と第2部分4との間で折り曲げ可能である固定部材10を用い、固定部材の第2部分4を所定の面22に取り付けて、第1部分2と第2部分4との間を線fに沿って折り曲げ、固定部材の開口部6に管状部材20を挿入することにより、管状部材20が連結されて成る連結構造体を所定の面22に固定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1対の管状部材が連結具により連結されて成る連結構造体を所定の面に固定するための固定部材および1対の管状部材が連結具により連結されて成る連結構造体を、複数、相互に固定する固定部材に関し、特に廃棄物処理場の法面に設けられるガス抜き管の固定に適した固定部材、および廃棄物処理場の底面に立設される複数本のガス抜き管の固定に適した固定部材に関する。
【背景技術】
【0002】
流体(気体を含む)のための通路を備えた管状部材は、種々多様な分野で用いられている。管状部材は、例えば、廃棄物処理場において、排水管およびガス抜き管として用いられる。ここで、「ガス抜き管」とは、埋設した廃棄物から生じるガスを大気中に放出させるために設けられる管状部材である。ガス抜き管に適した構造体は、例えば、流体が通過する中空部(即ち、管路)に加えて、外周面と内周面とをつなぐ流路が壁全体に形成されている管状部材であり、より具体的には、熱可塑性樹脂からなる連続フィラメントを不規則に蛇行、集積させて、フィラメント間の空隙により流路が形成された網状体である。
【0003】
廃棄物処理場にガス抜き管を設けることは、例えば、特許文献1に記載されている。特許文献1には、ガス抜き有孔管が廃棄物処理場の斜面部分における遮水シートの敷設面において、斜面部分の傾斜方向と交差する方向に延長して多段に配設され、ガス抜き有孔管が配設された敷設面に遮水シートが敷設され、遮水シートの表面に覆土が堆積保持されている遮水シート表面の覆土構造が開示されている。
【特許文献1】特開平11−179320号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
管状部材は、円形の断面を有する場合には滑りやすく、所定の面に取り付けることが困難である。特に、廃棄物処理場の法面は表面が平滑なプラスチック製の遮水シートで覆われているために、その上にガス抜き管等の管状部材を取り付けることは非常に難しい。特に、廃棄物処理場においては、金属から成る部材(例えば、鉄釘)を使用すること、ならびに遮水シートに孔をあけることが許されていないことからも、管状部材を遮水シート上に固定することは極めて困難である。また、前記管状網状体をガス抜き管として使用する場合、管状網状体は嵩高であって比較的大きい外径を有し、且つその外側表面が連続した面でないために、それ自体を廃棄物処理場の法面等に固定する作業は非常に煩雑となる。
【0005】
前述の管状網状体は複数本を束ねて、廃棄物処理場の底面の中央部付近に立設して、ガス抜き構造体として使用することもできる。このガス抜き構造体は、従来、石を積み重ねることにより構成されていたガス抜き構造体に代わるものであり、従来のものと比較して容易に施工できるという利点を有する。しかし、このガス抜き構造体は、比較的大量のガスを排出させるために複数本の管状網状体を束ねて(即ち、バンドルにして)構成する必要があるところ、管状網状体は比較的大径であり、連続した表面を与えないために、このバンドル作業もまた煩雑となる。
【0006】
本発明はかかる実情に鑑みてなされたものであり、それ自体を面に固定することが困難な管状部材を所望の面に取り付けることを可能にする固定部材、特に、廃棄物処理場の法面に敷設された遮水シート上に管状部材を安定的に固定することを可能にする固定部材、およびそれ自体バンドルにすることが困難な管状部材を複数本相互に固定するのに適した固定部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、第1の固定部材として、1対の管状部材が連結具により連結されて成る連結構造体を面に固定する固定部材であって、連結具を挿入する開口部を有する第1部分、および面に取り付けられる第2部分を有し、第1部分と第2部分との間で折り曲げ可能である、固定部材を提供する。この固定部材は、第1部分に形成された開口部に連結具を挿入し、固定された連結具の両端に管状部材を接続するとともに、第2部分を管状部材が取り付けられるべき面に固定し、取り付け面の勾配に応じて、第1部分と第2部分との間で所望の角度、好ましくは直角が形成されるように折り曲げて使用する。連結具への管状部材の接続は、具体的には連結具を管状部材の開口端部に挿入することにより実施される。この固定部材は、連結具を所望の面に固定することによって、連結具により連結される管状部材を所望の面に固定することを可能にするものである。
【0008】
この固定部材により固定される連結構造体は、連結具が固定部材の開口部に挿入され、連結具が1対の対向する管状部材の開口端部内に挿入された構成を有する。3以上の管状部材が連結される場合には、両端に位置する管状部材を除く各管状部材の両方の開口端部内に連結具が挿入され、管状部材の長さおよび質量等に応じて、1もしくは複数または全部の連結具が固定部材の開口部に挿入された構成をとる。また、この連結構造体は、所定の面に固定された状態において、固定部材の第2部分が折り曲げられた構成を有することとなる。
【0009】
ここで、「管状部材を面に固定する」とは、面に対する管状部材の位置が変化しないようにすることをいう。「管状部材」とは、略中央に貫通した通路を有する部材を総称し、その外周の断面形状および通路の断面形状は、円形、矩形、または三角形等、いずれの形状であってよい。「連結具」とは、その両端部または両半部が、1対の管状部材の開口端部内に挿入されることにより、1対の管状部材を連結する部材である。連結具はそれ自体管状部材であってよく、あるいは、管状部材に挿入されたときに、管状部材の内壁との間で通路を形成するような溝が外周面に設けられた構造のものであってよい。「面」とは、固定部材を固定すべき面をいい、例えば、建造物の壁面および廃棄物処理場の法面等を指す。第1部分と第2部分の境界は、固定部材を使用する前に明瞭に定められている必要は必ずしもなく、固定時の折り曲げの際に初めて定められてよい。また、「折り曲げ可能である」とは、最終的な使用形態において、第1部分と第2部分との間で角度が形成された状態になることを意味し、固定部材を使用する前に、既に折り曲げられていることが必ずしも要求されないことを意味する。
【0010】
この固定部材は、極めてシンプルな構成でありながら、第1部分および第2部分ならびに開口部の寸法等を適宜選択することにより、種々多様な管状部材を、任意の取り付け面に固定するために用いることができるという特徴を有する。
【0011】
連結具により連結される管状部材は、好ましくは、外周面と内周面とをつなぐ流路が壁全体に形成されている流通管である。そのような流通管は、例えば、背景技術の欄にて説明した熱可塑性樹脂からなる連続フィラメントを不規則に蛇行、集積させて、フィラメント間の空隙により流路が形成された管状網状体である。この管状網状体は嵩高であって、それ自体を固定することは煩雑ないし困難であるが、本発明の固定部材を使用すれば、連結具を本発明の固定部材を用いて所定の面に固定し、固定された連結具の両端に管状部材を接続するという比較的簡便な作業でそのような管状網状体を所望の面に取り付けることが可能となる。
【0012】
本発明は、第2の固定部材として、1対の管状部材が連結具により連結されて成る連結構造体を、複数、互いに対して固定する固定部材であって、連結具を挿入する開口部を複数有している固定部材を提供する。即ち、第2の固定部材は、連結具により管状部材が連結されて長尺にされた連結構造体が、複数本、束ねられた構造を与えうる。この固定部材によれば、複数の開口部の各々に連結具を挿入し、各連結具の両端部または両半部を管状部材の開口端部に挿入することにより、複数の連結構造体の相対的な位置が固定された構成が得られる。即ち、この固定部材を用いれば、例えば大径である管状部材又は管壁が網状体である管状部材同士を束ねるためにロープ等で括る作業が必要でなくなり、任意の構成の管状部材を、所望の数だけ束ねた構成を容易に得ることができる。
【0013】
本発明はまた、1対の管状部材が連結具により連結されて成る連結構造体を面に固定する方法であって、
(a)上記本発明の第1の固定部材の第2部分を面に取り付けること、
(b)第1部分と第2部分との間を折り曲げること、
(c)固定部材の開口部に連結具を挿入すること、および
(d)1対の管状部材の対向する開口端部内に連結具を挿入すること
を含む方法を提供する。この方法は、先に述べたように、大径の管状部材を効率良く接続するとともに固定する方法として、好ましく実施される。上記(a)〜(d)の操作は、この順に実施される必要はなく、例えば、先に(c)を実施した後、(d)を実施して連結構造を得た後、固定部材を(a)および(b)の操作に付してよい。また、(a)〜(d)の操作を2回以上繰り返すことにより、3つ以上の管状部材を連結して、所定の面に取り付けることができる。本発明の方法において、連結具により連結される管状部材は、好ましくは、外周面と内周面とをつなぐ流路が壁全体に形成されている流通管である。
【0014】
上記本発明の方法は、特に、廃棄物処理場の法面に敷設された遮水シートの表面に、管状部材を取り付ける際に好ましく実施される。その場合、固定部材を構成する材料の少なくとも1つと、遮水シートを構成する材料の少なくとも1つとを同系樹脂とすることが好ましく、同系の熱可塑性樹脂とすることがより好ましい。「同系樹脂」とは、例えば、オレフィン系、エステル系、アミド系、塩化ビニル系、アクリル系、ウレタン系と称される一群に含まれる樹脂をいう。同系樹脂同士は、樹脂自体を軟化または溶融させて接合させる場合、および適当な接着剤を用いて接合させる場合のいずれにおいても、良好に接合する。特に、熱可塑性樹脂は加熱により溶融または軟化して接着性を示すので、固定部材および遮水シートを同系の熱可塑性樹脂で構成すると、熱接着処理により、固定部材を遮水シートに簡便且つ良好に取り付けることができる。したがって、本発明の方法は、固定部材および遮水シートの材料を適宜選択することにより、金属部材の使用が禁止されている廃棄物処理場において好適に実施される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1の固定部材は、連結具を挿入する開口部を有する第1部分と、第1部分から折り曲げ可能で所定の面に取り付けられる第2部分とを含む形状構成を有し、連結具を開口部に挿入して所定の面に固定することにより、連結具で連結される1対の管状部材が当該面に固定されるようにすることを特徴とする。したがって、管状部材に応じた連結具、ならびに第1の固定部材の第1部分および第2部分ならびに開口部の寸法等を適宜選択することにより、種々多様な管状部材を固定部材に担持させ、当該固定部材を所望の面に取り付けて、それにより管状部材を固定できる。また、この固定部材はその構成材料を少なくとも1つの熱可塑性樹脂を含む材料とすることにより、所望の面、特に、固定部材に含まれる熱可塑性樹脂と同系の樹脂を含む材料から成る面に熱接着により取り付けることが可能となる。したがって、本発明の第1の固定部材を使用すれば、廃棄物処理場の法面に敷設された遮水シートの表面に、金属部材を使用することなく、また遮水シートに孔をあけることなく、固定部材の熱接着性を利用して固定部材を取り付けることが可能となる。
【0016】
本発明の第2の固定部材は、連結具を挿入する開口部を複数有する形状構成を有し、複数の連結具を開口部に挿入して互いの位置を固定することにより、1対の管状部材が連結具で連結されて成る連結構造体が複数個(即ち、複数の対の管状部材が)、互いに対して固定されるようにすることを特徴とする。したがって、この固定部材によれば、管状部材に応じた連結具、および開口部の寸法および数を適宜選択することにより、種々多様な管状部材が複数本束ねられた構造体を容易に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を必要に応じて図面を参照して説明する。
最初に、本発明の第1の固定部材、即ち、連結具で連結される管状部材を所定の面に固定する固定部材、およびそれを用いて管状部材を所定の面に固定する方法を説明する。本発明の第1の固定部材は、連結具を挿入する開口部を有する第1部分、および面に取り付けられる第2部分を有する。第1部分と第2部分との間は折り曲げ可能であり、折り曲げにより2つの部分の境界が定められることとなる。
【0018】
本発明の固定部材は、シート状物であることが好ましい。シート状物は薄くて取り扱いが容易であり、また、曲げやすいことによる。シート状物は、例えば、熱可塑性樹脂シート、不織布シート、金属シート、およびこれらのシートから選択される2以上のシートから成る積層シートであってよい。
【0019】
好ましくは、本発明の固定部材は、熱可塑性樹脂から成るシート状物である。熱可塑性樹脂は、熱および必要に応じて圧力を加えることにより溶融または軟化して熱接着性を示すので、熱可塑性樹脂から成る固定部材は、熱風溶着機等を用いる簡便な操作で、所定の面に取り付けることができる。特に、廃棄物処理場の遮水シートは一般に熱可塑性樹脂から成るため、熱可塑性樹脂から成る固定部材は当該遮水シート表面に熱接着により固定するのに適している。
【0020】
固定部材を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレンおよびプロピレンなどのオレフィン系モノマーの単独重合体および共重合体、ならびにエチレンおよびプロピレン等のオレフィンとこれと共重合可能なモノマーとの共重合体等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレート等のエステル系樹脂、ナイロン−6等のアミド系樹脂が挙げられる。これらの樹脂は単独で使用しても、あるいは2以上組み合わせて使用してよい。固定部材を構成する熱可塑性樹脂は、より具体的には、高密度ポリエチレン、メタロセン触媒により重合されたポリエチレン(低密度ポリエチレン)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ポリプロピレンおよび塩化ビニルから選択される1または複数の樹脂を主成分とする樹脂であることが好ましい。例えば、廃棄物処理場の法面に固定部材を取り付ける場合には、引張強さが高く、熱接着強力が高いメタロセン触媒により重合されたポリエチレン樹脂を使用することが好ましい。
【0021】
廃棄物処理場の遮水シートに固定部材を取り付ける場合には、固定部材を構成する熱可塑性樹脂の少なくとも1つを、遮水シートを構成する熱可塑性樹脂の少なくとも1つと同系にすることが好ましい。固定部材と固定部材が取り付けられる面の材料を同系とすることにより、熱接着強度をより向上させ得る。樹脂系は、オレフィン系(ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレンプロピレンジエンゴム等)、エステル系(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート)、アミド系(ナイロン6、ナイロン66)、塩化ビニル系(ポリ塩化ビニル)、ウレタン系(ポリウレタン)に大別される。例えば、遮水シートを構成する材料がオレフィン系樹脂であるポリプロピレンを含む場合には、固定部材は、オレフィン系樹脂であるメタロセン触媒により重合されたポリエチレン、ポリプロピレン、またはエチレン−プロピレンジエンゴムを含む材料で好ましく形成される。固定部材は、遮水シートと同じ材料から成ることがより好ましく、具体的には、遮水シートとなるべきシート状物(即ち、遮水シートの原反)を適宜加工して固定部材を作製することが好ましい。
【0022】
シート状の固定部材の厚さは特に限定されず、例えば、0.5〜3mmとすることが好ましい。固定部材の厚さが小さすぎる場合には、機械的強度が小さくなって、管状部材を固定する作業の間に破損することがあり、厚さが大きすぎる場合には、折り曲げにくくなることがある。
【0023】
固定部材の寸法は、挿入すべき連結具の外径に応じて所望の寸法の開口部が形成され、かつ連結具により連結される管状部材が所定の面上で配置されるのに十分な大きさを有する第1部分と、所定の面に取り付けるのに十分な大きさを有する第2部分とを固定部材が含むように、連結具および管状部材の寸法および質量等を考慮して決定される。第1部分に形成される開口部の直径は、連結具の外径と同じであるか、あるいはそれよりも若干小さくして、開口部に連結具を挿入した後に連結具が滑りにくくなるようにしてよい。第1部分は、第1部分と第2部分との間の境界(即ち、折り曲げ線)と開口部の下端(即ち、開口部の輪郭において当該境界に最も近い位置)との間の距離が、連結具により連結される管状部材の壁の厚さよりも大きくなるような寸法とする必要がある。第1部分はまた、第1部分から第2部分を折り曲げたときに、連結具で連結された管状部材が折り曲げ部から所望の距離だけ離れて位置すべき場合には、その距離に相当する部分を含む寸法にする必要がある。また、複数の管状部材(即ち、複数の連結具)を一度に固定する場合には、第1部分を複数の開口部が形成されるような形状および寸法とする。
【0024】
第2部分は、取り付けに用いられる部分であり、その寸法は、取り付け方法、連結具および管状部材の寸法および質量等に応じて適宜選択される。第2部分が小さい場合には、固定部材を安定的に所定の面に取り付けることが困難となり、また、取り付けた後に、固定部材が外れる又は破損することがある。
【0025】
前述したように、第1部分と第2部分との境界は、使用前において明瞭に定められていなくてもよく、その場合は、使用に際して形成される折り曲げ線がそれらの部分の間の境界となる。固定部材の折り曲げ部が湾曲して、明瞭な折り曲げ線が形成されない場合は、取り付け面に接触している部分を第2部分とする。
【0026】
図1に本発明の固定部材の一形態を平面図にて模式的に示し、図2に図1に示す固定部材を所定の面に取り付けて、1対の管状部材が連結具により連結されて成る連結構造体を固定した状態を、連結部付近を断面図で示した、側面図にて模式的に示す。図1に示す固定部材10は、第1部分2と第2部分4とを有する長方形のシート状物であり、第1部分2に開口部6が設けられている。開口部6は、第1部分と第2部分との間に形成される折り曲げ線fから距離hだけ離れている。折り曲げ線fは、図1においては仮想的なものである。必要に応じて、予め折り曲げ線を表示してよく、その場合、折り曲げ作業を容易に実施できる。図2に示すように、固定部材10による管状部材28の固定は、固定部材10を折り曲げ線fを形成するように折り曲げ、第2部分4を所定の面22に取り付け、開口部6に連結具20を挿入し、連結具20を2つの管状部材28の開口端部に挿入することにより実施される。図1において、符号hで示す距離は、図2において、固定面22と開口部6との間の距離に相当し、この距離hは、管状部材28の壁の厚さ(より正確には、管状部材の厚みと固定部材の厚さを合わせた長さ)よりも大きいことを要する。hが管状部材28の壁の厚さよりも小さいと、連結具を管状部材に挿入することができなくなる。
【0027】
図1に示す固定部材10は、折り曲げ線fに平行な方向を幅方向とした場合に、第1部分2および第2部分4がともに同じ幅を有する構成である。第1部分と第2部分とは、必ずしも同じ幅を有する必要はなく、第1部分に開口部が形成される限りにおいて、第1部分の幅を第2部分の幅よりも小さくしてよく、あるいは大きくしてよい。図3に、第1部分32の幅が第2部分34の幅よりも狭い固定部材30を示す。
【0028】
また、第1部分および第2部分は、矩形以外の形状であってよく、例えば、一方または両方を三角形または多角形としてよい。尤も、固定部材が全体として図1に示すような矩形の形状を有する場合には、固定部材をより低コストで且つ効率的に製造することができる。
【0029】
図2において、管状部材28は、その中央を略円形の通路が貫いている、一般的な円筒形状の管状部材として示されている。一対の管状部材28は、それぞれ、一方の開口端部に管状の連結具20の半部が挿入されることにより連結される。あるいは、連結具は、その両端部のみが管状部材に挿入されて、一部が露出されるような形態で使用してよい。連結具20は、管状部材28の種類および寸法等に応じて、任意の形態のものを使用でき、図示したような形状のものに限定されない。図示した形態において、連結具20は張り出し部として、フランジ20aを有する。フランジ20aを有する連結具20は、フランジが固定部材10に当接するまで開口部6を挿入させるやり方で、容易に位置決めすることができ、また、固定部材からずれにくいため、好ましく用いられる。フランジ20aは、円環状、または外周形状が四角形などの多角形状であることが好ましい。あるいは、フランジ20aは、環状形状の一部を径方向に切欠き、連結具20の周方向に断続的に形成されたものであってもよい。あるいは、連結具の張り出し部は、フランジでなくてもよく、1または複数の突起であってよく、当該突起を開口部の周囲に当接させて、連結具の位置決めを実施してよい。連結具の張り出し部は、固定部材の開口部の周囲に当接するように連結具の外周から突出または広がっている限りにおいて、任意の形状であってよい。
【0030】
連結具により固定される管状部材は、好ましくは、外周面と内周面とをつなぐ流路が壁全体に形成されている流通管である。そのような流通管は、管壁が、多孔性であって高い空隙率を有する材料から成る管状部材である。流通管は、好ましくは、熱可塑性樹脂からなる連続フィラメントを不規則に蛇行、集積させて、フィラメント間の空隙により前記流路が壁全体に形成された管状の網状体である。そのような管状の網状体の斜視図を模式的に図5に示し、これを製造する装置を図4に模式的に示す。
【0031】
管状の網状体は、図4に示すように、上下方向に貫通する円柱状の貫通孔306を有する外側規制具302と、この外側規制具302の貫通孔306の上端開口部内に配設される円柱状の内側規制具304とからなる規制具300を用いて製造される。具体的には、押出機にて溶融混練されてから押出された、溶融状態の熱可塑性樹脂製のフィラメントを内外規制具300、304の対向内面間に形成された空間部内に不規則に蛇行させながら供給して集積する。次いで、この集積体は、外側規制具302からその下方開口部を通じて下方に送り出され、冷却水槽内にて冷却された後、引き取り機によって連続的に引取り、冷却水槽から取り出される。その結果、壁の厚みが一定である管状(円筒状)の流通管200が製造される。この流通管200は、図5に示したように、フィラメント間に形成された空隙が外周面と内周面とをつなぐ流路202を多数与えている。したがって、この流通管200は、この流路202を通じて、流通管200の内側から外側へ、或いは、流通管200の外側から内側に液体や気体などの流体を流通させることができる。
【0032】
この管状網状体を連結するのに特に適した連結具の一例を図6(a)に示す。この連結具100は流通管200の内径に略合致した外径を有し且つ長さ方向に貫通する流通孔110を有する円筒状に形成され、長さ方向の両端部110は僅かに縮径した状態とされている。
【0033】
そして、上記連結具本体102における長さ方向の中央部には、流通管200の開口端面に当接する一定幅及び一定厚みを有する円環状の仕切部104が連結具本体102の外周面に対して直交する方向に形成されており、連結具本体102は、外観上、仕切部104を中心にして一半部(図6(a)にて、連結具本体102における仕切部104の下側部分)と、他半部(図6(a)にて、連結具本体102における仕切部104の上側部分)とに区画されている。なお、仕切部104は、円環状、または外周形状が四角形などの多角形状であることが好ましい。あるいは、仕切部104は、環状形状の一部を径方向に切欠き、連結具本体102の周方向に断続的に形成されたものであってもよい。この仕切り部104は連結具100が固定部材で固定されるときに、前述の張り出し部として機能し得る。
【0034】
更に、上記連結具本体102の外周面には、流通管200の壁に設けられた流路202内に係止する係止突起120、120’・・・が多数、形成されている。具体的には、全ての係止突起120、120’は截頭四角錐形状に形成されており、係止突起120における連結具本体102の流通管200の開口端部204への挿入側端面121及び連結具本体102の周方向側端面122、122を連結具本体1の外周面に対してなす角度が鈍角な傾斜案内面に形成している一方、係止突起120における中央側端面123を連結具本体1の外周面に対してなす角度が鋭角な係止面に形成している(図6(b)および図6(c)参照)。これらの、係止突起120、120’・・・は、図7に示すように、連結具本体102の軸芯Xに対して所定角度aをなして連結具本体102を斜めに輪切りして形成された、互いに平行な四本の楕円形状の仮想線130上の夫々に、三個以上(図7では6個)、所定間隔を存して突設されている。図示した連結具は、さらに、仮想線130上以外の部分に係止突起120’が突設されているが、この係止突起120’は突設されていなくてもよい。このように、係止突起120および120’が連結具本体102の外周面に分散した状態に形成されているので、流通管の連結具100の係止突起120をその連結具本体102の長さ方向及び周方向において偏りなく流通管200の流路202に係止させることができ、流通管200の連結具100の一半部又は他半部を全体的に流通管200の開口端部204内に安定的に固定させることができる。
【0035】
この連結具を本発明の固定部材で所定の面に固定し、さらに連結具で2つの管状網状体を連結した状態を模式的に図8に示す。図8は、連結部付近を断面図にて示し、その他の部分の側面図にて示したものである。図8に示す固定部材40は、図1に示す連結具と同様の構成を有する。連結具100は、第1部分42に設けられた開口部46を通過し、仕切部200が開口部46にて第1部分42に当接している。第2部分44は折り曲げられて面48に取り付けられている。連結具100の両方の半部は管状網状体200に挿入され、連結具における係止突起が流通管の貫通孔に係止させられて、流通管が直列状に接続されている。
【0036】
前述のように、折り曲げ後の固定部材における開口部46と面48との間の距離hは、その周囲に位置することとなる流通管200の厚みよりも大きいことを要する。hが流通管200の壁厚よりも小さいと、連結具を流通管に挿入することができなくなる。
【0037】
流通管200として使用される管状の網状体は、後述する図11に示すように、その外周形状が矩形であることが好ましい。外周形状が矩形である管状網状体は、施工の際に転がりにくく、取り付け面に近接する部分の面積が大きいために安定的に取り付け面に固定し得るという利点を有する。さらに、外周形状が矩形である管状網状体は、後述するように2以上束ねて使用する場合に、安定的に束ねることができる。
【0038】
本発明の固定部材は、1つの好ましい形態において、第1部分に複数の開口部を有していて、複数の連結具および管状部材を一度に所定の面に固定するものであってよい。そのような固定部材の例を図9(a)および(b)に示す。図9(a)に示す固定部材50は、開口部56が3つ設けられた第1部分52を有する。この固定部材50もまた、折り曲げ線fにて折り曲げて、第2部分54を取り付け面に取り付けて使用する。図9(b)に示す固定部材70は、開口部76が2つ設けられた第1部分72を有する。この固定部材70もまた、折り曲げ線fにて折り曲げて、第2部分74を取り付け面に取り付けて使用する。開口部の数は、固定すべき管状部材の数に応じて任意に選択することができる。また、複数の開口部を有する固定部材を用いる場合には、連結具の周囲に位置する管状部材の厚みを考慮して、開口部の間の間隔を十分にとる必要がある。図9においては、第1部分を分割する仮想線を破線で示して、連結管により連結される管状部材がとり得る寸法を表している。
【0039】
流通管は、特に廃棄物処理場にてガス抜き管として使用する場合には、生分解性不織布でその外周面(即ち、長手方向に平行な外側表面)を覆った状態にて、連結具により連結され、本発明の固定部材で固定されることが好ましい。廃棄物処理場において廃棄物の堆積を開始した直後は、廃棄物は水等の液体を多く含んでいるために流動しやすく、流通管の流路を塞ぐことがある。その結果、廃棄物から生じたガスを大気中に放出させることが困難となる場合がある。流通管の外周面を生分解性不織布で覆うと、廃棄物から生じるガスの流通管への通過性は初期の段階ではやや低下するものの、流路に廃棄物が流入することが有効に防止される。この生分解性不織布は、廃棄物の堆積の進行に伴い廃棄物の水分が排出されて、廃棄物が硬くなるころには生分解されるので、最終的には不織布により流通管のガス透過性が影響を受けることは殆どない。このように、生分解性不織布の使用は、流通管の有する機能をより有効に利用することを可能にする。流通管の外周面を生分解性不織布で覆うことは、複数枚の不織布を貼付等することにより実施してよく、あるいは簡便には1枚の不織布を流通管の外周面に巻きつけ、必要に応じて不織布の一部を流通管に固定することにより実施してよい。生分解性不織布としては、例えば、レーヨンから成る目付10〜100g/m2程度の水流交絡不織布を使用できる。
【0040】
次に、本発明の固定部材を使用して、管状部材を所定の面に固定する方法を説明する。前述したように、本発明の固定方法は、
(a)本発明の第1の固定部材の第2部分を面に取り付けること、
(b)第1部分と第2部分との間を折り曲げること、
(c)固定部材の開口部に連結具を挿入すること、および
(d)1対の管状部材の対向する開口端部内に連結具を挿入すること
を含む。
【0041】
固定部材の第2部分は、例えば、接着剤、釘、またはネジを用いて、取り付け面に取り付けてよい。固定部材が熱可塑性樹脂から成り、取り付け面が当該熱可塑性樹脂と接着する性質を有する場合には、熱接着により、固定部材の第2部分を取り付け面に取り付けることが好ましい。熱接着は、例えば、熱風溶着機(例えば、ライスター(Leister)熱風溶着機)を使用して実施してよい。あるいは、熱接着は、超音波ウェルダーまたは高周波ウェルダーを使用して実施してよい。
【0042】
第1部分と第2部分との間を折り曲げる工程は、施工現場で実施することが好ましい。あるいは、折り曲げ工程は、第2部分を所定の面に取り付ける前に(即ち、準備工程的に)実施してよい。折り曲げは、例えば、第2部分の取り付けと同時に、第2部分を押さえながら実施してよい。固定部材の厚さが大きくて折り曲げにくい場合には、固定部材の折り曲げ線に沿って浅い切り込みを入れて、折り曲げを容易にしてよい。第2部分は、例えば、廃棄物処理場の法面に取り付ける場合には、第1部分に対して上方に位置するように取り付けてよく、あるいは下方に位置するように取り付けてよい。
【0043】
固定部材の開口部に連結具を挿入することは、連結具が所定の位置に配置されるように実施する。そのために、例えば、連結具に前記張り出し部を設けて、張り出し部を第1部分に当接させて、連結具の位置決めを行ってよい。
【0044】
固定部材の開口部に連結具を挿入することは、連結具の半部が固定部材の第1部分の両側で等しく延びるように実施することが好ましい。そのため、連結具の略半分の位置に前記張り出し部(図6(a)を参照して説明した連結具における仕切部に相当)を設けて、張り出し部が第1部分に当接するように連結具を挿入することが好ましい。
【0045】
1対(即ち、2つ)の管状部材は、それぞれの開口端部内に連結具を挿入することにより連結されて、1つの連結構造体を成す。管状部材は、例えば、固定部材の第1部分に当接する位置まで進行させてよい。連結される1対の管状部材は、前述したように、好ましくは、外周面と内周面とをつなぐ流路が壁全体に形成されている流通管である。
【0046】
上記(a)〜(d)の操作を繰り返すことにより、3本以上の管状部材を連結して、長い距離にわたって管状部材を延在させることが可能となる。その場合、2回目以降の操作において、1対の管状部材の一方は、既に一方の開口端部に連結具が挿入されて、別の管状部材と連結されている状態にて、上記(d)の連結操作に付される。よって、例えば、管状部材A、B、Cを円滑に連結するには、AおよびBを連結した後、連結具をBの開口端部に挿入し、その後、連結具の一方の半部を固定部材(既に折り曲げた状態であってもよい)の開口部に挿入して、固定部材を取り付け面に固定し、それから、連結具の他方の半部を管状部材Cに挿入することが好ましい。このように、連結具を用いる管状部材の固定に際して、上記(a)〜(d)の操作は、この順に実施される必要は必ずしもない。管状部材の質量および長さ、ならびに取り付け面の状態によっては、すべての連結具を必ずしも固定部材に挿入する必要はなく、その場合には、上記(c)の操作を実施しなくともよい。
【0047】
前述の(a)〜(d)の操作を含む方法は、好ましくは、廃棄物処理場の法面に敷設された遮水シートの表面に固定部材を取り付け、当該表面に所望の管状部材を固定する方法として実施されることが好ましい。特に、連結具により連結される管状部材を図4および図5を参照して説明した前述の管状網状体とし、連結具を図6(a)および図7を参照して説明した構成のものとした連結構造体は、廃棄物から生じるガスを大気中に放出させるガス抜き管として作用する。
【0048】
管状網状体(またはそれ以外の流通管)を使用する場合には、先に説明したように、廃棄物の堆積開始時に目詰まりが生じることを防止するべく、管状網状体の外周面を生分解性不織布で覆うことが好ましい。生分解性不織布で管状網状体を覆う操作は、管状網状体の外周面に複数枚の不織布を貼付する、または1枚の不織布を巻き付ける方法により実施される。いずれの方法をとる場合も、当該操作は管状網状体の開口端部内に連結具を挿入する前に実施することが効率の面からは好ましい。生分解性不織布は、好ましくは、先に説明したレーヨン水流交絡不織布である。
【0049】
図10および図11に、管状網状体および連結具を用いて、廃棄物処理場の法面にガス抜き管を固定した形態を断面図および斜視図にて模式的に示す。法面300は、例えば、法勾配1:2および法高さ5mの2つの傾斜面300aが幅約2mの小段300bで接続された構造を有する。法面300及び底面302には、下部保護マット60、下部遮水シート62、中間保護マット64、および表面側遮水シート66がこの順に敷設され、表面側遮水シート66の表面に、複数の連結具100が固定部材70により固定され、連結具100の両半部がそれぞれ管状網状体200に挿入され、それにより管状網状体200が連結されて、長尺のガス抜き管を形成している。図示した形態において、連結される網状体は、直線状の網状体200aと小段300bの屈曲部に対応する屈曲した網状体200bの2種類で構成されている。ガス抜き管の表面には、遮光性保護マット68が敷設される。
【0050】
管状網状体200は、図11に模式的に示すように、例えば、100mm×100mmの正方形の外周形状を有し、中央に直径50mmの流路を有し、1つあたりの長さは、例えば4mまたは2mである。この管状網状体は、例えば、2つの開口部を有する固定部材を用いて2本ずつ、約10mの間隔をあけて配置され、固定される。
【0051】
連結具100は、例えば、図6(a)および7に示す形状のものであって、内径が40mm、外径が50mm、長さが250mmの円筒状の連結具本体102の中央部に、幅が10mmで且つ厚みが2mmの円環状の仕切部104が連結具本体102の外周面に対して直交する方向に形成された構成を有する。係止突起120は、例えば、連結具本体102の軸芯Xに対して角度25°をなして連結具本体102を斜めに輪切りして形成された、互いに平行な二本の楕円形状の仮想線130上のそれぞれに、6個ずつ形成される。さらに、連結具本体101の各半部の外周面における先端部及び基端部(仕切部に近い側)に、上記仮想線130から外れた状態に連結具本体102の周方向に180°の位相差でもって二個の係止突起120’が突設されていてもよい。
【0052】
固定部材70は、例えば、図9(b)に示すように、全体が20cm×20cmの正方形であり、略半分に折り曲げ可能なものである。第1部分72および第2部分74はそれぞれ、20cm×10cmの寸法を有する。第1部分72においては、2つの管状網状体の断面に対応するように、第1部分72を分割した各領域の中央に、連結具本体の外径と略同じ直径を有する開口部76がそれぞれ設けられる。
【0053】
固定部材70は、固定部材の第2部分を熱風により溶融または軟化させて、熱接着または熱圧着させる方法で表面側遮水シート66に取り付けることが好ましい。かかる熱接着または熱圧着を強固にするために、固定部材70を構成する材料の少なくとも1つが熱可塑性樹脂であって、表面側遮水シート66を構成する熱可塑性樹脂の少なくとも1つと同系であることが好ましい。
【0054】
下部保護マット60、下部遮水シート62、中間保護マット64および表面側遮水シート66は、廃棄物処理場の施工に際し、通常用いられている不織布またはシートから任意に選択される。
【0055】
以上において、本発明の固定部材を特に廃棄物処理場のガス抜き管を固定するために用いる方法を説明した。本発明の固定部材の用途はそれに限定されるものでなく、一般的な土木工事において、所望の面に所望の管状部材(例えば、排気管、排水管、給気管、給水管)を設置するために使用することが可能である。
【0056】
次に、本発明の第2の固定部材、即ち、1対の管状部材が連結具で連結されて成る連結構造体を、複数個、束ねた形態にする固定部材を説明する。第2の固定部材は、連通具を挿入させるための開口部を複数個有することを要し、また、第2の固定部材において、開口部同士の間隔は、先に図9を参照して説明したように、管状部材の厚みを考慮して十分に広くする必要がある。
【0057】
第2の固定部材は、複数の開口部が形成されることを要し、かつ第2の部分を必ずしも要しないという点を除いて、第1の固定部材と同じである。したがって、第2の固定部材もまた、上記第1の固定部材に関連して挙げた材料を用いて、好ましくはシート状物として形成される。第1の固定部材と異なり、第2の固定部材は面に取り付けられないから、面を構成する材料(例えば、樹脂)を考慮して、第2の固定部材の材料を選択する必要はない。但し、第2の固定部材で複数本の管状部材を束ねて廃棄物処理場のガス抜き構造体を構成する場合には、第2の固定部材は、金属以外の材料で構成することが好ましく、先に例示した樹脂で構成することが好ましい。また、この固定部材を使用する場合も、連結具に張り出し部を設けることが好ましい。
【0058】
複数の連結構造体を束ねるバンドル部材としての第2の固定部材は、例えば、前述の連結具およびそれで連結された管状網状体の連結構造体を数本(例えば、4本)束ねて成るガス抜き構造体を、廃棄物の底面中央に設置する際に好ましく用いられる。図12に、本発明の固定部材を用いて、4本の連結構造体を束ねて成るガス抜き構造体を模式的に示す。図示したガス抜き構造体400において、連結具100は固定部材80の開口部82に挿入され、挿入した連結具100の両方の端部が管状網状体200の開口端部に挿入されて連結構造体800が形成されている。図示した形態において、各連結構造体800は、短い(例えば、1〜2メートル程度)の管状部材を連結具で順次連結することにより構成されている。また、各連結構造体において、連結具は、本発明の固定部材により他の連結構造体の連結具に対して固定されている。そのため、各連結構造体において生じるたわみ量は比較的小さい。一方、長尺の管状部材(即ち、連結具を用いることなく連続している管状部材)を一度に束ねる場合には、管状部材が大きく撓んで、束ねる作業が困難となることがある。したがって、本発明の第2の固定部材は、複数本の管状部材が束ねられた構造体を施工性良く、安定した形態で得ることを可能にするという点でも有用である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の第1の固定部材は、斜面または垂直面に固定しにくい管状部材を、容易にそれらの面に固定することを可能にしたものであり、特に廃棄物処理場において、法面に敷設された遮水シート表面にガス抜き管を固定する部材として有用である。また、本発明の第2の固定部材は、長尺の管状部材が束ねられた構造体を安定して施工することを可能にしたものであり、特に廃棄物処理場において、底面の中央に形成するガス抜き構造体を構成する複数のガス抜き管を相互に固定する部材として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の固定部材の一形態を示す平面図である。
【図2】本発明の固定部材を用いて連結具により連結される管状部材を所定の面に固定した状態を模式的に示す一部断面側面図である。
【図3】本発明の固定部材の別の一形態を示す平面図である。
【図4】管状網状体である流通管の製造装置を示す模式図である。
【図5】管状網状体である流通管を示す斜視図である。
【図6】図6(a)は、図3に示す流通管の連結具を示す斜視図であり、図6(b)は、係止突起を示した平面図であり、図6(c)は、係止突起を示した側面図である。
【図7】図6に示す連結具の正面図である。
【図8】本発明の固定部材を用いて連結具により連結される流通管を所定の面に固定した状態を模式的に示す一部断面側面図である。
【図9】本発明の固定部材の別の一形態を示す平面図である。
【図10】本発明の固定部材を用いて連結具により連結される流通管を廃棄物処理場の法面および底面に固定した状態を示す模式図である。
【図11】本発明の固定部材を用いて連結具により連結される流通管を廃棄物処理場の法面および底面に固定し、連結具で流通管を連結した状態を示す模式図である。
【図12】本発明の固定部材を用いて、連結具により連結された管状部材から成る連結構造体が複数固定されて成る構造体を示す模式図である。
【符号の説明】
【0061】
2、32、42、52、72 第1部分
4、34、44、54、74 第2部分
6、36、46、56、76、82 開口部
10、30、40、50、70、80 固定部材
20 連結具
20a 張り出し部
28 管状部材
22、48 取り付け面
100 連結具
200、200a、200b 流通管
300 廃棄物処理場の法面
302 廃棄物処理場の底面
400 ガス抜き構造体
800 連結構造体
【技術分野】
【0001】
本発明は、1対の管状部材が連結具により連結されて成る連結構造体を所定の面に固定するための固定部材および1対の管状部材が連結具により連結されて成る連結構造体を、複数、相互に固定する固定部材に関し、特に廃棄物処理場の法面に設けられるガス抜き管の固定に適した固定部材、および廃棄物処理場の底面に立設される複数本のガス抜き管の固定に適した固定部材に関する。
【背景技術】
【0002】
流体(気体を含む)のための通路を備えた管状部材は、種々多様な分野で用いられている。管状部材は、例えば、廃棄物処理場において、排水管およびガス抜き管として用いられる。ここで、「ガス抜き管」とは、埋設した廃棄物から生じるガスを大気中に放出させるために設けられる管状部材である。ガス抜き管に適した構造体は、例えば、流体が通過する中空部(即ち、管路)に加えて、外周面と内周面とをつなぐ流路が壁全体に形成されている管状部材であり、より具体的には、熱可塑性樹脂からなる連続フィラメントを不規則に蛇行、集積させて、フィラメント間の空隙により流路が形成された網状体である。
【0003】
廃棄物処理場にガス抜き管を設けることは、例えば、特許文献1に記載されている。特許文献1には、ガス抜き有孔管が廃棄物処理場の斜面部分における遮水シートの敷設面において、斜面部分の傾斜方向と交差する方向に延長して多段に配設され、ガス抜き有孔管が配設された敷設面に遮水シートが敷設され、遮水シートの表面に覆土が堆積保持されている遮水シート表面の覆土構造が開示されている。
【特許文献1】特開平11−179320号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
管状部材は、円形の断面を有する場合には滑りやすく、所定の面に取り付けることが困難である。特に、廃棄物処理場の法面は表面が平滑なプラスチック製の遮水シートで覆われているために、その上にガス抜き管等の管状部材を取り付けることは非常に難しい。特に、廃棄物処理場においては、金属から成る部材(例えば、鉄釘)を使用すること、ならびに遮水シートに孔をあけることが許されていないことからも、管状部材を遮水シート上に固定することは極めて困難である。また、前記管状網状体をガス抜き管として使用する場合、管状網状体は嵩高であって比較的大きい外径を有し、且つその外側表面が連続した面でないために、それ自体を廃棄物処理場の法面等に固定する作業は非常に煩雑となる。
【0005】
前述の管状網状体は複数本を束ねて、廃棄物処理場の底面の中央部付近に立設して、ガス抜き構造体として使用することもできる。このガス抜き構造体は、従来、石を積み重ねることにより構成されていたガス抜き構造体に代わるものであり、従来のものと比較して容易に施工できるという利点を有する。しかし、このガス抜き構造体は、比較的大量のガスを排出させるために複数本の管状網状体を束ねて(即ち、バンドルにして)構成する必要があるところ、管状網状体は比較的大径であり、連続した表面を与えないために、このバンドル作業もまた煩雑となる。
【0006】
本発明はかかる実情に鑑みてなされたものであり、それ自体を面に固定することが困難な管状部材を所望の面に取り付けることを可能にする固定部材、特に、廃棄物処理場の法面に敷設された遮水シート上に管状部材を安定的に固定することを可能にする固定部材、およびそれ自体バンドルにすることが困難な管状部材を複数本相互に固定するのに適した固定部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、第1の固定部材として、1対の管状部材が連結具により連結されて成る連結構造体を面に固定する固定部材であって、連結具を挿入する開口部を有する第1部分、および面に取り付けられる第2部分を有し、第1部分と第2部分との間で折り曲げ可能である、固定部材を提供する。この固定部材は、第1部分に形成された開口部に連結具を挿入し、固定された連結具の両端に管状部材を接続するとともに、第2部分を管状部材が取り付けられるべき面に固定し、取り付け面の勾配に応じて、第1部分と第2部分との間で所望の角度、好ましくは直角が形成されるように折り曲げて使用する。連結具への管状部材の接続は、具体的には連結具を管状部材の開口端部に挿入することにより実施される。この固定部材は、連結具を所望の面に固定することによって、連結具により連結される管状部材を所望の面に固定することを可能にするものである。
【0008】
この固定部材により固定される連結構造体は、連結具が固定部材の開口部に挿入され、連結具が1対の対向する管状部材の開口端部内に挿入された構成を有する。3以上の管状部材が連結される場合には、両端に位置する管状部材を除く各管状部材の両方の開口端部内に連結具が挿入され、管状部材の長さおよび質量等に応じて、1もしくは複数または全部の連結具が固定部材の開口部に挿入された構成をとる。また、この連結構造体は、所定の面に固定された状態において、固定部材の第2部分が折り曲げられた構成を有することとなる。
【0009】
ここで、「管状部材を面に固定する」とは、面に対する管状部材の位置が変化しないようにすることをいう。「管状部材」とは、略中央に貫通した通路を有する部材を総称し、その外周の断面形状および通路の断面形状は、円形、矩形、または三角形等、いずれの形状であってよい。「連結具」とは、その両端部または両半部が、1対の管状部材の開口端部内に挿入されることにより、1対の管状部材を連結する部材である。連結具はそれ自体管状部材であってよく、あるいは、管状部材に挿入されたときに、管状部材の内壁との間で通路を形成するような溝が外周面に設けられた構造のものであってよい。「面」とは、固定部材を固定すべき面をいい、例えば、建造物の壁面および廃棄物処理場の法面等を指す。第1部分と第2部分の境界は、固定部材を使用する前に明瞭に定められている必要は必ずしもなく、固定時の折り曲げの際に初めて定められてよい。また、「折り曲げ可能である」とは、最終的な使用形態において、第1部分と第2部分との間で角度が形成された状態になることを意味し、固定部材を使用する前に、既に折り曲げられていることが必ずしも要求されないことを意味する。
【0010】
この固定部材は、極めてシンプルな構成でありながら、第1部分および第2部分ならびに開口部の寸法等を適宜選択することにより、種々多様な管状部材を、任意の取り付け面に固定するために用いることができるという特徴を有する。
【0011】
連結具により連結される管状部材は、好ましくは、外周面と内周面とをつなぐ流路が壁全体に形成されている流通管である。そのような流通管は、例えば、背景技術の欄にて説明した熱可塑性樹脂からなる連続フィラメントを不規則に蛇行、集積させて、フィラメント間の空隙により流路が形成された管状網状体である。この管状網状体は嵩高であって、それ自体を固定することは煩雑ないし困難であるが、本発明の固定部材を使用すれば、連結具を本発明の固定部材を用いて所定の面に固定し、固定された連結具の両端に管状部材を接続するという比較的簡便な作業でそのような管状網状体を所望の面に取り付けることが可能となる。
【0012】
本発明は、第2の固定部材として、1対の管状部材が連結具により連結されて成る連結構造体を、複数、互いに対して固定する固定部材であって、連結具を挿入する開口部を複数有している固定部材を提供する。即ち、第2の固定部材は、連結具により管状部材が連結されて長尺にされた連結構造体が、複数本、束ねられた構造を与えうる。この固定部材によれば、複数の開口部の各々に連結具を挿入し、各連結具の両端部または両半部を管状部材の開口端部に挿入することにより、複数の連結構造体の相対的な位置が固定された構成が得られる。即ち、この固定部材を用いれば、例えば大径である管状部材又は管壁が網状体である管状部材同士を束ねるためにロープ等で括る作業が必要でなくなり、任意の構成の管状部材を、所望の数だけ束ねた構成を容易に得ることができる。
【0013】
本発明はまた、1対の管状部材が連結具により連結されて成る連結構造体を面に固定する方法であって、
(a)上記本発明の第1の固定部材の第2部分を面に取り付けること、
(b)第1部分と第2部分との間を折り曲げること、
(c)固定部材の開口部に連結具を挿入すること、および
(d)1対の管状部材の対向する開口端部内に連結具を挿入すること
を含む方法を提供する。この方法は、先に述べたように、大径の管状部材を効率良く接続するとともに固定する方法として、好ましく実施される。上記(a)〜(d)の操作は、この順に実施される必要はなく、例えば、先に(c)を実施した後、(d)を実施して連結構造を得た後、固定部材を(a)および(b)の操作に付してよい。また、(a)〜(d)の操作を2回以上繰り返すことにより、3つ以上の管状部材を連結して、所定の面に取り付けることができる。本発明の方法において、連結具により連結される管状部材は、好ましくは、外周面と内周面とをつなぐ流路が壁全体に形成されている流通管である。
【0014】
上記本発明の方法は、特に、廃棄物処理場の法面に敷設された遮水シートの表面に、管状部材を取り付ける際に好ましく実施される。その場合、固定部材を構成する材料の少なくとも1つと、遮水シートを構成する材料の少なくとも1つとを同系樹脂とすることが好ましく、同系の熱可塑性樹脂とすることがより好ましい。「同系樹脂」とは、例えば、オレフィン系、エステル系、アミド系、塩化ビニル系、アクリル系、ウレタン系と称される一群に含まれる樹脂をいう。同系樹脂同士は、樹脂自体を軟化または溶融させて接合させる場合、および適当な接着剤を用いて接合させる場合のいずれにおいても、良好に接合する。特に、熱可塑性樹脂は加熱により溶融または軟化して接着性を示すので、固定部材および遮水シートを同系の熱可塑性樹脂で構成すると、熱接着処理により、固定部材を遮水シートに簡便且つ良好に取り付けることができる。したがって、本発明の方法は、固定部材および遮水シートの材料を適宜選択することにより、金属部材の使用が禁止されている廃棄物処理場において好適に実施される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1の固定部材は、連結具を挿入する開口部を有する第1部分と、第1部分から折り曲げ可能で所定の面に取り付けられる第2部分とを含む形状構成を有し、連結具を開口部に挿入して所定の面に固定することにより、連結具で連結される1対の管状部材が当該面に固定されるようにすることを特徴とする。したがって、管状部材に応じた連結具、ならびに第1の固定部材の第1部分および第2部分ならびに開口部の寸法等を適宜選択することにより、種々多様な管状部材を固定部材に担持させ、当該固定部材を所望の面に取り付けて、それにより管状部材を固定できる。また、この固定部材はその構成材料を少なくとも1つの熱可塑性樹脂を含む材料とすることにより、所望の面、特に、固定部材に含まれる熱可塑性樹脂と同系の樹脂を含む材料から成る面に熱接着により取り付けることが可能となる。したがって、本発明の第1の固定部材を使用すれば、廃棄物処理場の法面に敷設された遮水シートの表面に、金属部材を使用することなく、また遮水シートに孔をあけることなく、固定部材の熱接着性を利用して固定部材を取り付けることが可能となる。
【0016】
本発明の第2の固定部材は、連結具を挿入する開口部を複数有する形状構成を有し、複数の連結具を開口部に挿入して互いの位置を固定することにより、1対の管状部材が連結具で連結されて成る連結構造体が複数個(即ち、複数の対の管状部材が)、互いに対して固定されるようにすることを特徴とする。したがって、この固定部材によれば、管状部材に応じた連結具、および開口部の寸法および数を適宜選択することにより、種々多様な管状部材が複数本束ねられた構造体を容易に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を必要に応じて図面を参照して説明する。
最初に、本発明の第1の固定部材、即ち、連結具で連結される管状部材を所定の面に固定する固定部材、およびそれを用いて管状部材を所定の面に固定する方法を説明する。本発明の第1の固定部材は、連結具を挿入する開口部を有する第1部分、および面に取り付けられる第2部分を有する。第1部分と第2部分との間は折り曲げ可能であり、折り曲げにより2つの部分の境界が定められることとなる。
【0018】
本発明の固定部材は、シート状物であることが好ましい。シート状物は薄くて取り扱いが容易であり、また、曲げやすいことによる。シート状物は、例えば、熱可塑性樹脂シート、不織布シート、金属シート、およびこれらのシートから選択される2以上のシートから成る積層シートであってよい。
【0019】
好ましくは、本発明の固定部材は、熱可塑性樹脂から成るシート状物である。熱可塑性樹脂は、熱および必要に応じて圧力を加えることにより溶融または軟化して熱接着性を示すので、熱可塑性樹脂から成る固定部材は、熱風溶着機等を用いる簡便な操作で、所定の面に取り付けることができる。特に、廃棄物処理場の遮水シートは一般に熱可塑性樹脂から成るため、熱可塑性樹脂から成る固定部材は当該遮水シート表面に熱接着により固定するのに適している。
【0020】
固定部材を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレンおよびプロピレンなどのオレフィン系モノマーの単独重合体および共重合体、ならびにエチレンおよびプロピレン等のオレフィンとこれと共重合可能なモノマーとの共重合体等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレート等のエステル系樹脂、ナイロン−6等のアミド系樹脂が挙げられる。これらの樹脂は単独で使用しても、あるいは2以上組み合わせて使用してよい。固定部材を構成する熱可塑性樹脂は、より具体的には、高密度ポリエチレン、メタロセン触媒により重合されたポリエチレン(低密度ポリエチレン)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ポリプロピレンおよび塩化ビニルから選択される1または複数の樹脂を主成分とする樹脂であることが好ましい。例えば、廃棄物処理場の法面に固定部材を取り付ける場合には、引張強さが高く、熱接着強力が高いメタロセン触媒により重合されたポリエチレン樹脂を使用することが好ましい。
【0021】
廃棄物処理場の遮水シートに固定部材を取り付ける場合には、固定部材を構成する熱可塑性樹脂の少なくとも1つを、遮水シートを構成する熱可塑性樹脂の少なくとも1つと同系にすることが好ましい。固定部材と固定部材が取り付けられる面の材料を同系とすることにより、熱接着強度をより向上させ得る。樹脂系は、オレフィン系(ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレンプロピレンジエンゴム等)、エステル系(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート)、アミド系(ナイロン6、ナイロン66)、塩化ビニル系(ポリ塩化ビニル)、ウレタン系(ポリウレタン)に大別される。例えば、遮水シートを構成する材料がオレフィン系樹脂であるポリプロピレンを含む場合には、固定部材は、オレフィン系樹脂であるメタロセン触媒により重合されたポリエチレン、ポリプロピレン、またはエチレン−プロピレンジエンゴムを含む材料で好ましく形成される。固定部材は、遮水シートと同じ材料から成ることがより好ましく、具体的には、遮水シートとなるべきシート状物(即ち、遮水シートの原反)を適宜加工して固定部材を作製することが好ましい。
【0022】
シート状の固定部材の厚さは特に限定されず、例えば、0.5〜3mmとすることが好ましい。固定部材の厚さが小さすぎる場合には、機械的強度が小さくなって、管状部材を固定する作業の間に破損することがあり、厚さが大きすぎる場合には、折り曲げにくくなることがある。
【0023】
固定部材の寸法は、挿入すべき連結具の外径に応じて所望の寸法の開口部が形成され、かつ連結具により連結される管状部材が所定の面上で配置されるのに十分な大きさを有する第1部分と、所定の面に取り付けるのに十分な大きさを有する第2部分とを固定部材が含むように、連結具および管状部材の寸法および質量等を考慮して決定される。第1部分に形成される開口部の直径は、連結具の外径と同じであるか、あるいはそれよりも若干小さくして、開口部に連結具を挿入した後に連結具が滑りにくくなるようにしてよい。第1部分は、第1部分と第2部分との間の境界(即ち、折り曲げ線)と開口部の下端(即ち、開口部の輪郭において当該境界に最も近い位置)との間の距離が、連結具により連結される管状部材の壁の厚さよりも大きくなるような寸法とする必要がある。第1部分はまた、第1部分から第2部分を折り曲げたときに、連結具で連結された管状部材が折り曲げ部から所望の距離だけ離れて位置すべき場合には、その距離に相当する部分を含む寸法にする必要がある。また、複数の管状部材(即ち、複数の連結具)を一度に固定する場合には、第1部分を複数の開口部が形成されるような形状および寸法とする。
【0024】
第2部分は、取り付けに用いられる部分であり、その寸法は、取り付け方法、連結具および管状部材の寸法および質量等に応じて適宜選択される。第2部分が小さい場合には、固定部材を安定的に所定の面に取り付けることが困難となり、また、取り付けた後に、固定部材が外れる又は破損することがある。
【0025】
前述したように、第1部分と第2部分との境界は、使用前において明瞭に定められていなくてもよく、その場合は、使用に際して形成される折り曲げ線がそれらの部分の間の境界となる。固定部材の折り曲げ部が湾曲して、明瞭な折り曲げ線が形成されない場合は、取り付け面に接触している部分を第2部分とする。
【0026】
図1に本発明の固定部材の一形態を平面図にて模式的に示し、図2に図1に示す固定部材を所定の面に取り付けて、1対の管状部材が連結具により連結されて成る連結構造体を固定した状態を、連結部付近を断面図で示した、側面図にて模式的に示す。図1に示す固定部材10は、第1部分2と第2部分4とを有する長方形のシート状物であり、第1部分2に開口部6が設けられている。開口部6は、第1部分と第2部分との間に形成される折り曲げ線fから距離hだけ離れている。折り曲げ線fは、図1においては仮想的なものである。必要に応じて、予め折り曲げ線を表示してよく、その場合、折り曲げ作業を容易に実施できる。図2に示すように、固定部材10による管状部材28の固定は、固定部材10を折り曲げ線fを形成するように折り曲げ、第2部分4を所定の面22に取り付け、開口部6に連結具20を挿入し、連結具20を2つの管状部材28の開口端部に挿入することにより実施される。図1において、符号hで示す距離は、図2において、固定面22と開口部6との間の距離に相当し、この距離hは、管状部材28の壁の厚さ(より正確には、管状部材の厚みと固定部材の厚さを合わせた長さ)よりも大きいことを要する。hが管状部材28の壁の厚さよりも小さいと、連結具を管状部材に挿入することができなくなる。
【0027】
図1に示す固定部材10は、折り曲げ線fに平行な方向を幅方向とした場合に、第1部分2および第2部分4がともに同じ幅を有する構成である。第1部分と第2部分とは、必ずしも同じ幅を有する必要はなく、第1部分に開口部が形成される限りにおいて、第1部分の幅を第2部分の幅よりも小さくしてよく、あるいは大きくしてよい。図3に、第1部分32の幅が第2部分34の幅よりも狭い固定部材30を示す。
【0028】
また、第1部分および第2部分は、矩形以外の形状であってよく、例えば、一方または両方を三角形または多角形としてよい。尤も、固定部材が全体として図1に示すような矩形の形状を有する場合には、固定部材をより低コストで且つ効率的に製造することができる。
【0029】
図2において、管状部材28は、その中央を略円形の通路が貫いている、一般的な円筒形状の管状部材として示されている。一対の管状部材28は、それぞれ、一方の開口端部に管状の連結具20の半部が挿入されることにより連結される。あるいは、連結具は、その両端部のみが管状部材に挿入されて、一部が露出されるような形態で使用してよい。連結具20は、管状部材28の種類および寸法等に応じて、任意の形態のものを使用でき、図示したような形状のものに限定されない。図示した形態において、連結具20は張り出し部として、フランジ20aを有する。フランジ20aを有する連結具20は、フランジが固定部材10に当接するまで開口部6を挿入させるやり方で、容易に位置決めすることができ、また、固定部材からずれにくいため、好ましく用いられる。フランジ20aは、円環状、または外周形状が四角形などの多角形状であることが好ましい。あるいは、フランジ20aは、環状形状の一部を径方向に切欠き、連結具20の周方向に断続的に形成されたものであってもよい。あるいは、連結具の張り出し部は、フランジでなくてもよく、1または複数の突起であってよく、当該突起を開口部の周囲に当接させて、連結具の位置決めを実施してよい。連結具の張り出し部は、固定部材の開口部の周囲に当接するように連結具の外周から突出または広がっている限りにおいて、任意の形状であってよい。
【0030】
連結具により固定される管状部材は、好ましくは、外周面と内周面とをつなぐ流路が壁全体に形成されている流通管である。そのような流通管は、管壁が、多孔性であって高い空隙率を有する材料から成る管状部材である。流通管は、好ましくは、熱可塑性樹脂からなる連続フィラメントを不規則に蛇行、集積させて、フィラメント間の空隙により前記流路が壁全体に形成された管状の網状体である。そのような管状の網状体の斜視図を模式的に図5に示し、これを製造する装置を図4に模式的に示す。
【0031】
管状の網状体は、図4に示すように、上下方向に貫通する円柱状の貫通孔306を有する外側規制具302と、この外側規制具302の貫通孔306の上端開口部内に配設される円柱状の内側規制具304とからなる規制具300を用いて製造される。具体的には、押出機にて溶融混練されてから押出された、溶融状態の熱可塑性樹脂製のフィラメントを内外規制具300、304の対向内面間に形成された空間部内に不規則に蛇行させながら供給して集積する。次いで、この集積体は、外側規制具302からその下方開口部を通じて下方に送り出され、冷却水槽内にて冷却された後、引き取り機によって連続的に引取り、冷却水槽から取り出される。その結果、壁の厚みが一定である管状(円筒状)の流通管200が製造される。この流通管200は、図5に示したように、フィラメント間に形成された空隙が外周面と内周面とをつなぐ流路202を多数与えている。したがって、この流通管200は、この流路202を通じて、流通管200の内側から外側へ、或いは、流通管200の外側から内側に液体や気体などの流体を流通させることができる。
【0032】
この管状網状体を連結するのに特に適した連結具の一例を図6(a)に示す。この連結具100は流通管200の内径に略合致した外径を有し且つ長さ方向に貫通する流通孔110を有する円筒状に形成され、長さ方向の両端部110は僅かに縮径した状態とされている。
【0033】
そして、上記連結具本体102における長さ方向の中央部には、流通管200の開口端面に当接する一定幅及び一定厚みを有する円環状の仕切部104が連結具本体102の外周面に対して直交する方向に形成されており、連結具本体102は、外観上、仕切部104を中心にして一半部(図6(a)にて、連結具本体102における仕切部104の下側部分)と、他半部(図6(a)にて、連結具本体102における仕切部104の上側部分)とに区画されている。なお、仕切部104は、円環状、または外周形状が四角形などの多角形状であることが好ましい。あるいは、仕切部104は、環状形状の一部を径方向に切欠き、連結具本体102の周方向に断続的に形成されたものであってもよい。この仕切り部104は連結具100が固定部材で固定されるときに、前述の張り出し部として機能し得る。
【0034】
更に、上記連結具本体102の外周面には、流通管200の壁に設けられた流路202内に係止する係止突起120、120’・・・が多数、形成されている。具体的には、全ての係止突起120、120’は截頭四角錐形状に形成されており、係止突起120における連結具本体102の流通管200の開口端部204への挿入側端面121及び連結具本体102の周方向側端面122、122を連結具本体1の外周面に対してなす角度が鈍角な傾斜案内面に形成している一方、係止突起120における中央側端面123を連結具本体1の外周面に対してなす角度が鋭角な係止面に形成している(図6(b)および図6(c)参照)。これらの、係止突起120、120’・・・は、図7に示すように、連結具本体102の軸芯Xに対して所定角度aをなして連結具本体102を斜めに輪切りして形成された、互いに平行な四本の楕円形状の仮想線130上の夫々に、三個以上(図7では6個)、所定間隔を存して突設されている。図示した連結具は、さらに、仮想線130上以外の部分に係止突起120’が突設されているが、この係止突起120’は突設されていなくてもよい。このように、係止突起120および120’が連結具本体102の外周面に分散した状態に形成されているので、流通管の連結具100の係止突起120をその連結具本体102の長さ方向及び周方向において偏りなく流通管200の流路202に係止させることができ、流通管200の連結具100の一半部又は他半部を全体的に流通管200の開口端部204内に安定的に固定させることができる。
【0035】
この連結具を本発明の固定部材で所定の面に固定し、さらに連結具で2つの管状網状体を連結した状態を模式的に図8に示す。図8は、連結部付近を断面図にて示し、その他の部分の側面図にて示したものである。図8に示す固定部材40は、図1に示す連結具と同様の構成を有する。連結具100は、第1部分42に設けられた開口部46を通過し、仕切部200が開口部46にて第1部分42に当接している。第2部分44は折り曲げられて面48に取り付けられている。連結具100の両方の半部は管状網状体200に挿入され、連結具における係止突起が流通管の貫通孔に係止させられて、流通管が直列状に接続されている。
【0036】
前述のように、折り曲げ後の固定部材における開口部46と面48との間の距離hは、その周囲に位置することとなる流通管200の厚みよりも大きいことを要する。hが流通管200の壁厚よりも小さいと、連結具を流通管に挿入することができなくなる。
【0037】
流通管200として使用される管状の網状体は、後述する図11に示すように、その外周形状が矩形であることが好ましい。外周形状が矩形である管状網状体は、施工の際に転がりにくく、取り付け面に近接する部分の面積が大きいために安定的に取り付け面に固定し得るという利点を有する。さらに、外周形状が矩形である管状網状体は、後述するように2以上束ねて使用する場合に、安定的に束ねることができる。
【0038】
本発明の固定部材は、1つの好ましい形態において、第1部分に複数の開口部を有していて、複数の連結具および管状部材を一度に所定の面に固定するものであってよい。そのような固定部材の例を図9(a)および(b)に示す。図9(a)に示す固定部材50は、開口部56が3つ設けられた第1部分52を有する。この固定部材50もまた、折り曲げ線fにて折り曲げて、第2部分54を取り付け面に取り付けて使用する。図9(b)に示す固定部材70は、開口部76が2つ設けられた第1部分72を有する。この固定部材70もまた、折り曲げ線fにて折り曲げて、第2部分74を取り付け面に取り付けて使用する。開口部の数は、固定すべき管状部材の数に応じて任意に選択することができる。また、複数の開口部を有する固定部材を用いる場合には、連結具の周囲に位置する管状部材の厚みを考慮して、開口部の間の間隔を十分にとる必要がある。図9においては、第1部分を分割する仮想線を破線で示して、連結管により連結される管状部材がとり得る寸法を表している。
【0039】
流通管は、特に廃棄物処理場にてガス抜き管として使用する場合には、生分解性不織布でその外周面(即ち、長手方向に平行な外側表面)を覆った状態にて、連結具により連結され、本発明の固定部材で固定されることが好ましい。廃棄物処理場において廃棄物の堆積を開始した直後は、廃棄物は水等の液体を多く含んでいるために流動しやすく、流通管の流路を塞ぐことがある。その結果、廃棄物から生じたガスを大気中に放出させることが困難となる場合がある。流通管の外周面を生分解性不織布で覆うと、廃棄物から生じるガスの流通管への通過性は初期の段階ではやや低下するものの、流路に廃棄物が流入することが有効に防止される。この生分解性不織布は、廃棄物の堆積の進行に伴い廃棄物の水分が排出されて、廃棄物が硬くなるころには生分解されるので、最終的には不織布により流通管のガス透過性が影響を受けることは殆どない。このように、生分解性不織布の使用は、流通管の有する機能をより有効に利用することを可能にする。流通管の外周面を生分解性不織布で覆うことは、複数枚の不織布を貼付等することにより実施してよく、あるいは簡便には1枚の不織布を流通管の外周面に巻きつけ、必要に応じて不織布の一部を流通管に固定することにより実施してよい。生分解性不織布としては、例えば、レーヨンから成る目付10〜100g/m2程度の水流交絡不織布を使用できる。
【0040】
次に、本発明の固定部材を使用して、管状部材を所定の面に固定する方法を説明する。前述したように、本発明の固定方法は、
(a)本発明の第1の固定部材の第2部分を面に取り付けること、
(b)第1部分と第2部分との間を折り曲げること、
(c)固定部材の開口部に連結具を挿入すること、および
(d)1対の管状部材の対向する開口端部内に連結具を挿入すること
を含む。
【0041】
固定部材の第2部分は、例えば、接着剤、釘、またはネジを用いて、取り付け面に取り付けてよい。固定部材が熱可塑性樹脂から成り、取り付け面が当該熱可塑性樹脂と接着する性質を有する場合には、熱接着により、固定部材の第2部分を取り付け面に取り付けることが好ましい。熱接着は、例えば、熱風溶着機(例えば、ライスター(Leister)熱風溶着機)を使用して実施してよい。あるいは、熱接着は、超音波ウェルダーまたは高周波ウェルダーを使用して実施してよい。
【0042】
第1部分と第2部分との間を折り曲げる工程は、施工現場で実施することが好ましい。あるいは、折り曲げ工程は、第2部分を所定の面に取り付ける前に(即ち、準備工程的に)実施してよい。折り曲げは、例えば、第2部分の取り付けと同時に、第2部分を押さえながら実施してよい。固定部材の厚さが大きくて折り曲げにくい場合には、固定部材の折り曲げ線に沿って浅い切り込みを入れて、折り曲げを容易にしてよい。第2部分は、例えば、廃棄物処理場の法面に取り付ける場合には、第1部分に対して上方に位置するように取り付けてよく、あるいは下方に位置するように取り付けてよい。
【0043】
固定部材の開口部に連結具を挿入することは、連結具が所定の位置に配置されるように実施する。そのために、例えば、連結具に前記張り出し部を設けて、張り出し部を第1部分に当接させて、連結具の位置決めを行ってよい。
【0044】
固定部材の開口部に連結具を挿入することは、連結具の半部が固定部材の第1部分の両側で等しく延びるように実施することが好ましい。そのため、連結具の略半分の位置に前記張り出し部(図6(a)を参照して説明した連結具における仕切部に相当)を設けて、張り出し部が第1部分に当接するように連結具を挿入することが好ましい。
【0045】
1対(即ち、2つ)の管状部材は、それぞれの開口端部内に連結具を挿入することにより連結されて、1つの連結構造体を成す。管状部材は、例えば、固定部材の第1部分に当接する位置まで進行させてよい。連結される1対の管状部材は、前述したように、好ましくは、外周面と内周面とをつなぐ流路が壁全体に形成されている流通管である。
【0046】
上記(a)〜(d)の操作を繰り返すことにより、3本以上の管状部材を連結して、長い距離にわたって管状部材を延在させることが可能となる。その場合、2回目以降の操作において、1対の管状部材の一方は、既に一方の開口端部に連結具が挿入されて、別の管状部材と連結されている状態にて、上記(d)の連結操作に付される。よって、例えば、管状部材A、B、Cを円滑に連結するには、AおよびBを連結した後、連結具をBの開口端部に挿入し、その後、連結具の一方の半部を固定部材(既に折り曲げた状態であってもよい)の開口部に挿入して、固定部材を取り付け面に固定し、それから、連結具の他方の半部を管状部材Cに挿入することが好ましい。このように、連結具を用いる管状部材の固定に際して、上記(a)〜(d)の操作は、この順に実施される必要は必ずしもない。管状部材の質量および長さ、ならびに取り付け面の状態によっては、すべての連結具を必ずしも固定部材に挿入する必要はなく、その場合には、上記(c)の操作を実施しなくともよい。
【0047】
前述の(a)〜(d)の操作を含む方法は、好ましくは、廃棄物処理場の法面に敷設された遮水シートの表面に固定部材を取り付け、当該表面に所望の管状部材を固定する方法として実施されることが好ましい。特に、連結具により連結される管状部材を図4および図5を参照して説明した前述の管状網状体とし、連結具を図6(a)および図7を参照して説明した構成のものとした連結構造体は、廃棄物から生じるガスを大気中に放出させるガス抜き管として作用する。
【0048】
管状網状体(またはそれ以外の流通管)を使用する場合には、先に説明したように、廃棄物の堆積開始時に目詰まりが生じることを防止するべく、管状網状体の外周面を生分解性不織布で覆うことが好ましい。生分解性不織布で管状網状体を覆う操作は、管状網状体の外周面に複数枚の不織布を貼付する、または1枚の不織布を巻き付ける方法により実施される。いずれの方法をとる場合も、当該操作は管状網状体の開口端部内に連結具を挿入する前に実施することが効率の面からは好ましい。生分解性不織布は、好ましくは、先に説明したレーヨン水流交絡不織布である。
【0049】
図10および図11に、管状網状体および連結具を用いて、廃棄物処理場の法面にガス抜き管を固定した形態を断面図および斜視図にて模式的に示す。法面300は、例えば、法勾配1:2および法高さ5mの2つの傾斜面300aが幅約2mの小段300bで接続された構造を有する。法面300及び底面302には、下部保護マット60、下部遮水シート62、中間保護マット64、および表面側遮水シート66がこの順に敷設され、表面側遮水シート66の表面に、複数の連結具100が固定部材70により固定され、連結具100の両半部がそれぞれ管状網状体200に挿入され、それにより管状網状体200が連結されて、長尺のガス抜き管を形成している。図示した形態において、連結される網状体は、直線状の網状体200aと小段300bの屈曲部に対応する屈曲した網状体200bの2種類で構成されている。ガス抜き管の表面には、遮光性保護マット68が敷設される。
【0050】
管状網状体200は、図11に模式的に示すように、例えば、100mm×100mmの正方形の外周形状を有し、中央に直径50mmの流路を有し、1つあたりの長さは、例えば4mまたは2mである。この管状網状体は、例えば、2つの開口部を有する固定部材を用いて2本ずつ、約10mの間隔をあけて配置され、固定される。
【0051】
連結具100は、例えば、図6(a)および7に示す形状のものであって、内径が40mm、外径が50mm、長さが250mmの円筒状の連結具本体102の中央部に、幅が10mmで且つ厚みが2mmの円環状の仕切部104が連結具本体102の外周面に対して直交する方向に形成された構成を有する。係止突起120は、例えば、連結具本体102の軸芯Xに対して角度25°をなして連結具本体102を斜めに輪切りして形成された、互いに平行な二本の楕円形状の仮想線130上のそれぞれに、6個ずつ形成される。さらに、連結具本体101の各半部の外周面における先端部及び基端部(仕切部に近い側)に、上記仮想線130から外れた状態に連結具本体102の周方向に180°の位相差でもって二個の係止突起120’が突設されていてもよい。
【0052】
固定部材70は、例えば、図9(b)に示すように、全体が20cm×20cmの正方形であり、略半分に折り曲げ可能なものである。第1部分72および第2部分74はそれぞれ、20cm×10cmの寸法を有する。第1部分72においては、2つの管状網状体の断面に対応するように、第1部分72を分割した各領域の中央に、連結具本体の外径と略同じ直径を有する開口部76がそれぞれ設けられる。
【0053】
固定部材70は、固定部材の第2部分を熱風により溶融または軟化させて、熱接着または熱圧着させる方法で表面側遮水シート66に取り付けることが好ましい。かかる熱接着または熱圧着を強固にするために、固定部材70を構成する材料の少なくとも1つが熱可塑性樹脂であって、表面側遮水シート66を構成する熱可塑性樹脂の少なくとも1つと同系であることが好ましい。
【0054】
下部保護マット60、下部遮水シート62、中間保護マット64および表面側遮水シート66は、廃棄物処理場の施工に際し、通常用いられている不織布またはシートから任意に選択される。
【0055】
以上において、本発明の固定部材を特に廃棄物処理場のガス抜き管を固定するために用いる方法を説明した。本発明の固定部材の用途はそれに限定されるものでなく、一般的な土木工事において、所望の面に所望の管状部材(例えば、排気管、排水管、給気管、給水管)を設置するために使用することが可能である。
【0056】
次に、本発明の第2の固定部材、即ち、1対の管状部材が連結具で連結されて成る連結構造体を、複数個、束ねた形態にする固定部材を説明する。第2の固定部材は、連通具を挿入させるための開口部を複数個有することを要し、また、第2の固定部材において、開口部同士の間隔は、先に図9を参照して説明したように、管状部材の厚みを考慮して十分に広くする必要がある。
【0057】
第2の固定部材は、複数の開口部が形成されることを要し、かつ第2の部分を必ずしも要しないという点を除いて、第1の固定部材と同じである。したがって、第2の固定部材もまた、上記第1の固定部材に関連して挙げた材料を用いて、好ましくはシート状物として形成される。第1の固定部材と異なり、第2の固定部材は面に取り付けられないから、面を構成する材料(例えば、樹脂)を考慮して、第2の固定部材の材料を選択する必要はない。但し、第2の固定部材で複数本の管状部材を束ねて廃棄物処理場のガス抜き構造体を構成する場合には、第2の固定部材は、金属以外の材料で構成することが好ましく、先に例示した樹脂で構成することが好ましい。また、この固定部材を使用する場合も、連結具に張り出し部を設けることが好ましい。
【0058】
複数の連結構造体を束ねるバンドル部材としての第2の固定部材は、例えば、前述の連結具およびそれで連結された管状網状体の連結構造体を数本(例えば、4本)束ねて成るガス抜き構造体を、廃棄物の底面中央に設置する際に好ましく用いられる。図12に、本発明の固定部材を用いて、4本の連結構造体を束ねて成るガス抜き構造体を模式的に示す。図示したガス抜き構造体400において、連結具100は固定部材80の開口部82に挿入され、挿入した連結具100の両方の端部が管状網状体200の開口端部に挿入されて連結構造体800が形成されている。図示した形態において、各連結構造体800は、短い(例えば、1〜2メートル程度)の管状部材を連結具で順次連結することにより構成されている。また、各連結構造体において、連結具は、本発明の固定部材により他の連結構造体の連結具に対して固定されている。そのため、各連結構造体において生じるたわみ量は比較的小さい。一方、長尺の管状部材(即ち、連結具を用いることなく連続している管状部材)を一度に束ねる場合には、管状部材が大きく撓んで、束ねる作業が困難となることがある。したがって、本発明の第2の固定部材は、複数本の管状部材が束ねられた構造体を施工性良く、安定した形態で得ることを可能にするという点でも有用である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の第1の固定部材は、斜面または垂直面に固定しにくい管状部材を、容易にそれらの面に固定することを可能にしたものであり、特に廃棄物処理場において、法面に敷設された遮水シート表面にガス抜き管を固定する部材として有用である。また、本発明の第2の固定部材は、長尺の管状部材が束ねられた構造体を安定して施工することを可能にしたものであり、特に廃棄物処理場において、底面の中央に形成するガス抜き構造体を構成する複数のガス抜き管を相互に固定する部材として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の固定部材の一形態を示す平面図である。
【図2】本発明の固定部材を用いて連結具により連結される管状部材を所定の面に固定した状態を模式的に示す一部断面側面図である。
【図3】本発明の固定部材の別の一形態を示す平面図である。
【図4】管状網状体である流通管の製造装置を示す模式図である。
【図5】管状網状体である流通管を示す斜視図である。
【図6】図6(a)は、図3に示す流通管の連結具を示す斜視図であり、図6(b)は、係止突起を示した平面図であり、図6(c)は、係止突起を示した側面図である。
【図7】図6に示す連結具の正面図である。
【図8】本発明の固定部材を用いて連結具により連結される流通管を所定の面に固定した状態を模式的に示す一部断面側面図である。
【図9】本発明の固定部材の別の一形態を示す平面図である。
【図10】本発明の固定部材を用いて連結具により連結される流通管を廃棄物処理場の法面および底面に固定した状態を示す模式図である。
【図11】本発明の固定部材を用いて連結具により連結される流通管を廃棄物処理場の法面および底面に固定し、連結具で流通管を連結した状態を示す模式図である。
【図12】本発明の固定部材を用いて、連結具により連結された管状部材から成る連結構造体が複数固定されて成る構造体を示す模式図である。
【符号の説明】
【0061】
2、32、42、52、72 第1部分
4、34、44、54、74 第2部分
6、36、46、56、76、82 開口部
10、30、40、50、70、80 固定部材
20 連結具
20a 張り出し部
28 管状部材
22、48 取り付け面
100 連結具
200、200a、200b 流通管
300 廃棄物処理場の法面
302 廃棄物処理場の底面
400 ガス抜き構造体
800 連結構造体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対の管状部材が連結具により連結されて成る連結構造体を面に固定する固定部材であって、連結具を挿入する開口部を有する第1部分、および面に取り付けられる第2部分を有し、第1部分と第2部分との間で折り曲げ可能である、固定部材。
【請求項2】
連結具を挿入する開口部を2以上有する、請求項1に記載の固定部材。
【請求項3】
1対の管状部材が連結具により連結されて成る連結構造体を、複数、互いに対して固定する固定部材であって、連結具を挿入する開口部を複数有している、固定部材。
【請求項4】
シート状物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の固定部材。
【請求項5】
熱可塑性樹脂から成る、請求項1〜4のいずれか1項に記載の固定部材。
【請求項6】
連結具により連結される管状部材が、外周面と内周面とをつなぐ流路が壁全体に形成されている流通管である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の固定部材。
【請求項7】
流通管が、その外周面が生分解性不織布で覆われたものである、請求項6に記載の固定部材。
【請求項8】
連結具が、固定部材の開口部の周囲に当接する張り出し部を有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の固定部材。
【請求項9】
1対の管状部材が連結具により連結されて成る連結構造体を面に固定する方法であって、
(a)請求項1または2に記載の固定部材の第2部分を面に取り付けること、
(b)第1部分と第2部分との間を折り曲げること、
(c)固定部材の開口部に連結具を挿入すること、および
(d)1対の管状部材の対向する開口端部内に連結具を挿入すること
を含む方法。
【請求項10】
上記(a)〜(d)を2回以上繰り返す、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
連結具が張り出し部を有し、上記(c)において、張り出し部が開口部の周囲で当接する位置まで連結具を挿入する、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
連結具により連結される前記管状部材が、外周面と内周面とをつなぐ流路が壁全体に形成されている流通管である、請求項9〜11のいずれか1項に記載の方法
【請求項13】
流通管の外周面を生分解性不織布で覆うことを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
流通管が、矩形の外周形状を有する、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
固定部材を取り付ける面が、廃棄物処理場の法面に敷設された遮水シートの表面である、請求項9〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
固定部材を構成する材料の少なくとも1つと、遮水シートを構成する材料の少なくとも1つとを同系樹脂とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項3に記載の固定部材の複数の開口部に連結具が挿入され、各連結具が1対の対向する管状部材の開口端部内に挿入されて当該1対の管状部材を連結して連結構造体を成しており、複数の連結構造体の位置が互いに対して固定されている構造体。
【請求項1】
1対の管状部材が連結具により連結されて成る連結構造体を面に固定する固定部材であって、連結具を挿入する開口部を有する第1部分、および面に取り付けられる第2部分を有し、第1部分と第2部分との間で折り曲げ可能である、固定部材。
【請求項2】
連結具を挿入する開口部を2以上有する、請求項1に記載の固定部材。
【請求項3】
1対の管状部材が連結具により連結されて成る連結構造体を、複数、互いに対して固定する固定部材であって、連結具を挿入する開口部を複数有している、固定部材。
【請求項4】
シート状物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の固定部材。
【請求項5】
熱可塑性樹脂から成る、請求項1〜4のいずれか1項に記載の固定部材。
【請求項6】
連結具により連結される管状部材が、外周面と内周面とをつなぐ流路が壁全体に形成されている流通管である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の固定部材。
【請求項7】
流通管が、その外周面が生分解性不織布で覆われたものである、請求項6に記載の固定部材。
【請求項8】
連結具が、固定部材の開口部の周囲に当接する張り出し部を有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の固定部材。
【請求項9】
1対の管状部材が連結具により連結されて成る連結構造体を面に固定する方法であって、
(a)請求項1または2に記載の固定部材の第2部分を面に取り付けること、
(b)第1部分と第2部分との間を折り曲げること、
(c)固定部材の開口部に連結具を挿入すること、および
(d)1対の管状部材の対向する開口端部内に連結具を挿入すること
を含む方法。
【請求項10】
上記(a)〜(d)を2回以上繰り返す、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
連結具が張り出し部を有し、上記(c)において、張り出し部が開口部の周囲で当接する位置まで連結具を挿入する、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
連結具により連結される前記管状部材が、外周面と内周面とをつなぐ流路が壁全体に形成されている流通管である、請求項9〜11のいずれか1項に記載の方法
【請求項13】
流通管の外周面を生分解性不織布で覆うことを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
流通管が、矩形の外周形状を有する、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
固定部材を取り付ける面が、廃棄物処理場の法面に敷設された遮水シートの表面である、請求項9〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
固定部材を構成する材料の少なくとも1つと、遮水シートを構成する材料の少なくとも1つとを同系樹脂とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項3に記載の固定部材の複数の開口部に連結具が挿入され、各連結具が1対の対向する管状部材の開口端部内に挿入されて当該1対の管状部材を連結して連結構造体を成しており、複数の連結構造体の位置が互いに対して固定されている構造体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−305415(P2006−305415A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−128121(P2005−128121)
【出願日】平成17年4月26日(2005.4.26)
【出願人】(000002923)大和紡績株式会社 (173)
【出願人】(000204099)太洋興業株式会社 (30)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月26日(2005.4.26)
【出願人】(000002923)大和紡績株式会社 (173)
【出願人】(000204099)太洋興業株式会社 (30)
【Fターム(参考)】
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