説明

管球および照明装置ならびに車両

【課題】 無色透明のガラスバルブあるいは着色バルブや着色被膜等の着色層を覆い形成する金属薄膜の膜厚を配光特性等を考慮して部分的に変化させることにより、灯具等においてさらに電球の内部や着色が見え難く、また、写り込み等が少ない光学的特性に優れた車両用等に用いる電球等の管球や照明装置ならびに車両を提供することを目的とする。
【解決手段】 無色透明ガラスまたは着色ガラスあるいは着色被膜が形成されたガラスバルブ1と、このガラスバルブ1内に設けられた発光源(フィラメント)4と、上記ガラスバルブ1の外面に部分的に膜厚を変化して形成された透光性金属薄膜6a,6bとを備えている管球L1や照明装置S1ならびに車両9である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインテリア照明等に用いられる電球、自動車のターンシグナルランプ、テールランプ、ストップランプやフォグランプ等の車両あるいはディスプレー等に用いられる着色電球等の管球およびこれら管球が装着され信号表示や照明等を行う照明装置ならびにこの照明装置を有する車両に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の前後部および側面には、例えば車両の発進、進路変更、左折や右折等するときに用いられるターンシグナルランプ装置が設けられている。このターンシグナルランプ装置は、反射鏡と橙色した透光性のレンズカバーとで構成した灯具内に無色透明なガラスバルブを有する白熱電球を配設して、電球の点滅によって橙色の信号を発光するものである。そして、この種装置は、ターンシグナルランプを点灯することによって、後続車や対向車のドライバーに自車の進路等の情報を知らせることができる。
【0003】
このターンシグナルランプ装置は夜間、薄暮やトンネル等周囲が暗い状態では、カバーの色彩の橙色の点滅信号を後続車や対向車のドライバーに明瞭に見せることができ注意を喚起できる。
【0004】
しかし、このようにカバー自体が着色されていると、このカバーに直接に太陽光等の強い外光が入射しているとき等に内部の電球が点滅して橙色の信号を発しても、後続車や対向車のドライバーにはよく視認できず衝突等の事故を起こす寸前にまでいく、不安全な状態になることがあった。
【0005】
そこで、近時この視認性をよくするためや車両のデザイン性を高めるために無色透明や白色透明な透光性のレンズカバーを用い、装置内部の電球のバルブを着色ガラスで形成したり、無色透明なガラスバルブに着色膜を形成したりあるいは着色した耐熱合成樹脂製のキャップを被せる等のことをし、点灯時に着色層を透過した光が橙色や赤色等に発光する電球を得て、灯具を構成することが多く採用されている。
【0006】
そして、このガラスバルブを直接あるいは間接的に色彩を施した電球は、点灯時に所定色の発光をすることができるが、消灯時においても無色透明や白色透明な透光性のレンズカバーを通し内部のフィラメントや着色された電球が見え外観の見栄えが悪かったり、反射鏡に着色電球やその着色された色が写り込み、特に灯具内に太陽等の強い外光が射し込んだ場合には、恰も電球が点灯しているかに見え後続車や対向車のドライバーが誤認することがあり、安全上問題となることがあった。
【0007】
そこで、この灯具内の着色された電球が見えて外観を低下することや反射鏡に着色電球等の写り込みによる安全上の問題に対処して、ガラスバルブの外面やバルブの被膜上の最外面にアルミニウムや銀等のハーフミラー化した金属薄膜を形成することが知られており、これは例えば特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開2002−110107号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そして、この特許文献1に記載のように着色バルブや着色被膜を覆い金属薄膜を形成することにより上記問題を改善できることが確かめられたが、発明者はこの金属薄膜を形成した場合において、電球や灯具の発光効率をさらに高めることについて究明して本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、無色透明のガラスバルブあるいは着色バルブや着色被膜等の着色層を覆い形成する金属薄膜の膜厚を配光特性等を考慮して部分的に変化させることにより、灯具等においてさらに電球の内部や着色が見え難く、また、写り込み等が少ない光学的特性に優れた車両用等に用いる電球等の管球や照明装置ならびに車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に記載の管球は、無色透明ガラスまたは着色ガラスあるいは着色被膜が形成されたガラスバルブと、このガラスバルブ内に設けられた発光源と、上記ガラスバルブの外面に部分的に膜厚を変化して形成された透光性金属薄膜とを具備していることを特徴としている。
【0011】
本発明は管球のガラスバルブの外面に形成した白色系のハーフミラー作用をする透光性金属薄膜を均一な膜厚でなく、バルブのトップ部分や一側面部分等の必要あるいは不必要とする部分は厚膜とし、この部分から離れた部分を薄膜としたもので、消灯時にバルブの外から内部のフィラメント等の部材が容易に見られない光吸収(反射率)が高い部分と、光吸収(反射率)が小さく透過率が高い部分とを形成したもので、すなわち、バルブの光透過性を部分的に変えて所望の発光特性が得られるようにしてある。
【0012】
そして、本発明はガラスバルブまたは最外面の被膜上に透光性金属薄膜を形成したものにおいて、部分的に金属薄膜の膜厚さを変化させたもので、厚膜形成部分を通じ管球を見た場合にバルブ内のフィラメント等の部材はもちろん、バルブの着色も見え難くなる。
【0013】
なお、着色ガラスの材料として、例えば橙色の場合は顔料としてモリブデンMoと硫黄Sの混合酸化物等が、赤色の場合は顔料としてセレンSeの酸化物等が、黄色の場合は顔料としてモリブデンMoと硫黄Sの混合酸化物や硫化カドミウムCdS等がガラス成分として添加される。
【0014】
また、着色被膜の顔料材料としては、例えば橙色や黄色の場合はクロムCrの酸化物等が、赤色の場合はセレンSeや鉄Feの酸化物等が用いられる。
【0015】
また、着色被膜の形成は、上記金属薄膜の場合と同様に蒸着や浸漬等の手段で行うことができる。
【0016】
また、上記の例えば橙色の発光をなす管球は、発光色をCIE色度座標においてy≦x−0.120、y≧0.390、y≦0.790−0.670xの範囲内にあるよう、また、赤色の発光をなす管球は、y≦0.335、z≦0.008の範囲内にあるよう、また、白色の発光をなす管球は0.500≧x≧0.310、y≦0.150+0.640x、y≧0.050+0.750x、0.440≧y≧0.382の範囲内にあるように、その材料や膜厚等を選択して着色被膜5および金属薄膜6を形成すれば好ましい色の発光をなす管球が得られる。
【0017】
また、厚膜および薄膜として形成した透光性金属薄膜は、バルブ外面の全面であっても、所定の一部分であって被膜の非形成部が存在していてもよく、また、厚膜と薄膜との接続部は階段的に変化しても、傾斜的に徐々に変化していてもよい。また、上記金属薄膜の表面は鏡面をなす光沢状態であっても梨地状等の半光沢状態であっても差支えない。
【0018】
本発明および以下の各発明において、特に指定しない限り用語の定義および技術的意味は次による。
【0019】
ガラスバルブはソーダライムガラス等の軟質ガラス、アルミノシリケートガラス等の硬質ガラスや石英ガラス等の材料からなり、形状はA形、G形、S形、T形やPS形等を用いることができ、また、バルブ端部に形成する封止部は圧潰したウエッジ形等のピンチシール、ステムと封止した焼き落とし形やバットシール形等その形態はどのような形であってもよい。
【0020】
また、管球としては、照明用や車両用等に用いられる一端封止形や両端封止形の電球や放電ランプに適用できる。
【0021】
また、本発明はバルブ内にアルゴンAr、クリプトンKr、キセノンXe、窒素N2 等の少なくとも一種以上を封入したガス入りあるいはバルブ内を真空雰囲気とした管球に適用できる。また、管球は口金の有無を問わない。
【0022】
透光性金属薄膜としては、ハーフミラーを形成する材料からなり、銀Au、アルミニウムAl、モリブデンMo、チタンTi、タンタルTa、白金Pt、パラジウムPd、金AuやクロムCr等あるいはこれらの合金を主成分として用いることができる。
【0023】
また、金属薄膜は比較的屈折率の高いチタンTi、タンタルTa、ジルコニウムZr、ニオブNb等の酸化物やこれら酸化物を主成分とした材料、および上記材料に比べて屈折率の低いケイ素Si等の酸化物やこれら酸化物を主成分とした材料を用い、バルブ表面にこの高低屈折率材料を交互に薄膜コーティングした多層被膜で光干渉膜を形成することによっても、ハーフミラーを構成することができ、本発明ではこれら金属の酸化物も金属の範疇に属するものとしている。
【0024】
また、被膜の形成は真空蒸着、スパッタリング、スプレイ、浸漬(ディップ)、ゾルゲル、静電塗装、イオンプレーティングやCVD等の手段で行うことができ、膜厚を変える手段としては、部分的な重ね塗り、マスキング、蒸着等の場合の蒸発源と被膜形成部との間隔差、浸漬や流し塗り等の場合の塗布液の垂れ下がり等を利用して行うことができる。
【0025】
さらに、この管球の用途としては、後述する器具等に装着され自動車や鉄道等の車両用、工場や道路等における表示用、その他インテリアやディスプレイ等の装飾、広告等としてあるいは照明用として用いることができる。
【0026】
本発明の請求項2に記載の管球は、透光性金属薄膜の膜厚が5〜70nmであることを特徴としている。
【0027】
金属薄膜の膜厚は、薄膜側が5〜50nm(50〜500Å)、厚膜側が30〜70nm(300〜700Å)であって、薄膜側が5nm(50Å)未満となるとバルブ内のフィラメント等や着色層が透過して外から見えてしまい、また、厚膜側が70nm(700Å)を越えるとミラー状態となって光の殆どが透過しないという不具合を生じる。
【0028】
本発明の請求項3に記載の管球は、発光源が、発光するフィラメントまたは放電電極であることを特徴としている。
【0029】
管球が電球の場合は、発光源がリード線に支持されたタングステンW細線を巻回したコイル状のフィラメントを指し、また、蛍光ランプ等の放電ランプの場合はリード線に支持されたコイル状のフィラメント等の熱陰極、導電性の板状体、筒状体や棒状体等で形成された冷陰極を指す。
【0030】
また、蛍光ランプの場合は、バルブ内に水銀や希ガス等の放電媒体が封入され、バルブ表面に必要に応じ3波長発光形やハロリン酸カルシウム等の蛍光体被膜が形成してあったり、希ガス発光するランプである。
【0031】
本発明の請求項4に記載の照明装置は、反射鏡を含む器具本体と、この器具本体内に配設された請求項1ないし3のいずれか一に記載の管球と、上記器具本体の開口部を覆うように設けられた透明な制光体とを具備していることを特徴としている。
【0032】
照明装置に上記請求項1ないし3の管球を装着して、上記請求項1ないし3のいずれか一に記載と同様な作用を奏する。反射鏡に管球の着色等の写り込みもないかあっても少なく抑制できる。
【0033】
また、本発明でいう制光体とは、透明な合成樹脂やガラスで成形されたレンズ、カバー、グローブ等で、透明とは制光体を透過して内部が透けて見える無色ないしは少々白色化されているものを指す。
【0034】
本発明の請求項5に記載の車両は、車両本体と、車両本体に配設された請求項4に記載の照明装置とを具備していることを特徴としている。
【0035】
車両に上記照明装置を設けることにより、上記請求項4に記載と同様な作用を奏する。
【発明の効果】
【0036】
請求項1に記載の発明によれば、ガラスバルブの外面に形成したハーフミラーをなす金属薄膜の膜厚を所定部分に対応して変化させることにより、点灯時は所定の色光の放射が行われ、消灯時にはバルブ内のフィラメント等の部材やバルブの着色が見えないか見えても僅かな外観上の見栄えのよいとともに発光効率を低下させることなく眩しさの低減がはかれた管球を提供することができる。
【0037】
請求項2に記載の発明によれば、形成した金属薄膜の膜厚を規制することにより、上記請求項1に記載の効果を奏する管球を提供することができる。
【0038】
請求項3に記載の発明によれば、電球や放電ランプ等の管球に適用して上記請求項1または2の作用を奏する電球や蛍光ランプ等の放電ランプを提供することができる。
【0039】
請求項4に記載の発明によれば、反射鏡および無色透明ないしは白色透明な制光体を備えた内部に請求項1ないし3のいずれか一に記載の管球を配設したことにより、常時視認性のよい適確な照明や光信号を発することができ、外観的および視認性にも優れた車両用、表示用や照明用等に好適する照明装置を提供することができる。
【0040】
請求項5に記載の発明によれば、上記請求項4に記載の照明装置を設けることにより、誤認等による追突や衝突等の事故を未然に防ぐことができ安全性の向上がはかれる自動車等の車両を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下に本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は本発明を適用してなる例えば車両のターンシグナルランプ装置に用いられるウエッジベース形の定格12V25Wの着色電球L1の一部断面正面図である。
【0042】
図中、1はモリブデンMoと硫黄Sとの混合酸化物からなる橙色顔料をガラス成分として添加形成された橙色透明なソーダーライムガラス等からなる管形(T形)バルブ、2はバルブ1の端部を圧潰封止して形成したウエッジ形の封止部である。3,3はこの封止部2内に気密に封止されバルブ1の内外にそれぞれ延出してなるリード線で、バルブ1内部分の内部リード線31,31間には発光源であるタングステン細線を巻回したコイル状のフィラメント4が継線してある。
【0043】
また、バルブ1外に導出したループ状の外部リード線32,32は相互が接触しないよう封止部2の異なる圧潰面にそれぞれ添設されている。
【0044】
また、6はバルブ1の外表面に例えば銀Agを蒸着することにより形成された白色系のハーフミラーからなる透光性金属薄膜で、バルブ1のトップ側1tの膜厚は30〜70nm(300〜700Å)の厚膜6bとし、バルブ側面(中間部)1n側は5〜50nm(50〜500Å)の薄膜6a化した、バルブ側面(中間部)1nに対しトップ側1tの膜厚が厚くなるよう形成してある。(なお、この金属薄膜6は他の部分に比べで誇張した寸法て示してある。)
そして、バルブ1内にはアルゴンAr等の不活性ガスが所定圧封入してある。なお、11は封止部2内を貫通する排気管、21は封止部2の外面に形成された端子部材との係止用の凹部、35は両内部リード線31,31を一体的に固定しているガラスブリッジである。
【0045】
このように白色系をなす金属薄膜6の膜厚をバルブ1のトップ側1tに対し側面1nから封止部2寄りを薄膜6a化することにより形成した電球L1は、点灯時にバルブトップ側1tの厚膜6bは光吸収(反射率)が高く透過率が低下するが、トップ側1tに比べて光吸収(反射率)が小さく透過率が高い側面1nの方が高輝度を呈することができ電球として発光効率を低下させることがない。
【0046】
なお、この電球L1の発光色をCIE色度座標において、y≦x−0.120、y≧0.390、y≦0.790−0.670xの好ましい橙色の発光をなす範囲内にあるよう、また、0.500≧x≧0.310、y≦0.150+0.640x、y≧0.050+0.750x、0.440≧y≧0.382の好ましい白色の発光をなす範囲内にあるよう、その材料や膜厚等を選択して着色被膜5および金属薄膜6を形成すれば好ましい橙色の発光をなすものが得られる。
【0047】
なお、上記電球L1は着色層を橙色した着色ガラスによりバルブ1形成したが着色ガラスに限らず、例えば橙色顔料、分散剤、シリコーンポリエステル樹脂および酢酸エチル等の溶剤を攪拌混合した分散溶液中に無色透明のガラスバルブ1を浸漬して引上げ、塗液を乾燥した後、焼成して外表面にほぼ均一な膜厚の着色被膜5を形成し、さらにこの着色被膜5の表面を覆い上記のように部分的に膜厚を変え金属薄膜6を形成して図2(a)に示すような電球L2を得てもよい。
【0048】
また、図2(b)は、無色透明なガラスバルブ1の内表面に上記着色被膜5を形成し、外表面に上記のように部分的に膜厚を変えて金属薄膜6を形成した電球L3であって、このような構成の電球L2,L3であっても図1の電球L1と同様な作用効果を奏することができる。
【0049】
また、電球の透明な着色ガラスバルブ1のガラスを着色する色や無色透明なガラスバルブ1の表面に形成する着色被膜5は、上記橙色に限らずストップランプ等に用いる赤色やフォグランプ等に用いる黄色等であってもよい。
【0050】
また、金属薄膜6の膜厚の変化は、バルブ1のトップ1tから封止部2に向かう中間部は連続的に変化する薄膜としても、図2(c)(2段階)、図2(d)(3段階)に示すように段階的(なお、図中、6cは厚膜6bと薄膜6aとの中間の膜厚さの部分を示す。)、あるいは両者が混在して形成されていてもよい。
【0051】
また、ガラスバルブ1の表面に粒径が10〜200nm、透過性を考慮すると100nm未満が好ましい橙色顔料の酸化鉄系無機物、黄色顔料のバナジン酸ビスマス系無機物、アクリル樹脂、有機ケイ素化合物との混合溶液を用意し、この溶液中にガラスバルブ1を浸漬して1mm/secの速度で引上げ、乾燥して約350℃の電気炉中で約20分加熱焼結することによりむらのない着色被膜5を得ることができる。なお、上記材料にさらに有機チタン化合物を添加することにより、着色被膜5の耐久性の向上がはかれる。
【0052】
また、透光性金属薄膜6の別の構成としては、高低屈折率の異なる金属の酸化物からなる多層の光干渉膜を用いることができる。すなわち、比較的屈折率の高いチタンTi、タンタルTa、ジルコニウムZr、ニオブNb等の酸化物やこれら酸化物との化合物を主成分とした材料および、これら材料に対し屈折率の低いケイ素Si等の酸化物やこれら酸化物を主成分とした材料を用意し、この高低屈折率材料を上記着色被膜5の表面(着色被膜5がバルブ内面の場合はバルブの外表面。)に交互に薄膜コーティングして、多層の光干渉膜からなる透光性金属薄膜6を形成することができる。
【0053】
なお、この透光性金属薄膜6の膜厚は上記実施の形態と同様に例えばバルブ1のトップ側1tは厚く、側面1n側はトップ側1tよりも薄膜に形成してある。
【0054】
このような着色被膜5および光干渉作用を奏する透光性金属薄膜6を有する電球は、着色被膜5の表面を覆い上記のように部分的に膜厚を変え重層した金属薄膜6がハーフミラーの作用を奏し、従来の電球に対し透過率が約12%向上できるとともに、定格点灯で従来約300時間程度で剥離を生じていたのが約500時間を経過しても問題ない耐熱性を示した。また、上記実施の形態と同様に発光色をCIE色度座標において好ましい白色の発光をなす色度範囲内にあり、規格を十分満足できる等の効果を奏する。
【0055】
また、本発明はバルブ1最外表面の部分(最外表面がバルブ1の場合はバルブ1)に炭化ケイ素SiC膜を形成しておくことによって、バルブ1や被膜に傷が付くことを防止できる。
【0056】
すなわち、近時、小形高性能化のため電球等のガラスバルブ1内に封入する不活性ガスは高圧封入される傾向にあり、また、ガラスバルブ1は加工製造時の取扱いや運搬時の衝突等に起因して表面に傷が生じている場合があり、この傷に圧力や衝撃が加わったとき傷を起点にクラックが入り、このクラックが進行してバルブ1が破損し短寿命となる電球があった。
【0057】
この電球等のガラスバルブ1への炭化ケイ素SiC膜の形成は、例えば図2(a)に示す構造の電球L2において、透光性金属薄膜6の形成に引続きこの金属薄膜6表面上に放電スパッタ法により可視光領域での透過率を考慮して100〜500nmの膜厚の炭化ケイ素膜(図示しない。)を最外面に形成する。
【0058】
このようにして形成された炭化ケイ素SiC膜は共有結合により成り立っているのでガラスに比べ硬度が高く、他の物体と衝突したり擦れても傷が付きにくくバルブ1のクラック発生を防止できる。また、従来であると下層の着色被膜5や金属薄膜6に塗膜が欠落した傷が付くと、この欠落部からはフィラメントからの光色がそのまま放射され外観上も悪く、着色被膜5や金属薄膜6を設ける目的が達成できないということがあったが、これが改善される。
【0059】
なお、この炭化ケイ素膜の形成は、例えば図2(a)の電球L2において、着色被膜5および金属薄膜6が形成されたバルブ1のトップ部1tおよび側面1n部分であっても、熱加工により強度が低下している圧潰封止部2のみであってもあるいはバルブ1の全周面であっても、被膜上やガラス上であってもよく、これは電球の構造や特性等に対応した適宜の部分であればよい。
【0060】
図3は本発明の照明装置S1の実施の形態を示す縦断面図である。この照明装置S1は上記電球L1が用いられたターンシグナルランプ等の自動車の前方や後部に配設される灯具7を示し、図中71は内面にアルミニウム等の反射膜(図示しない。)が形成された反射鏡、72は反射鏡71の基部に設けられた上記ウエッジベース形の電球L1の封止部2が装着されるソケット、8は反射鏡71の開口部を覆うよう設けられた無色透明ないしは白色透明の合成樹脂製の制光体すなわちレンズカバーである。
【0061】
そして、このターンシグナルランプは、ドライバーが例えば左折する等で左側のターンシグナルランプ内の電球L1に通じるスイッチをオンすると電球L1は点滅する。
【0062】
そして、上記電球L1の点灯時はバルブ1の外表面に形成した着色被膜5および金属薄膜6を透過した光は橙色の上述したような発光作用をなす。そして、電球L1からの直射光および電球L1から反射鏡71に入射し反射した橙色光が前面の無色透明なレンズカバー8を透過して車両の前方および後方へと放射され、点滅を繰り返すことによりターンシグナルランプとして作用する。
【0063】
また、この灯具7の場合、電球L1の消灯時にレンズカバー8を通し外から直接見えるバルブ1のトップ1t部分は、金属薄膜6が厚膜6bに形成されているため着色被膜5や内部のフィラメント4等が見えないとともに反射鏡71の鏡面とほぼ同色の白色系をなしているので着色被膜5の写り込みもないかあっても僅かで、他車のドライバーが見誤ることを防止できる。
【0064】
したがって、後続車や対向車のドライバーへは明暗時に拘らず常時視認性のよい適確な色光の光信号を発することができ、追突や衝突等の事故を未然に防ぐことがはかれ安全な運転を行わせることができる。
【0065】
また、図4は本発明の照明装置の他の実施の形態を示す縦断面図で、図中図1ないし図3と同一部分には同一の符号を付してその説明は省略する。
【0066】
この照明装置S2は、車両の後部に設けられるコンビネーションランプと呼ばれている複数の灯器が一体化されたものである。
【0067】
すなわち、この図4の照明装置S2は、例えば上からブレーキランプ8A、ターンシグナルランプ8Bおよびストップランプ8Cが縦列して配設されたもので、器具本体を兼ねるそれぞれの反射鏡81,82,83に設けられたソケット84,86には着色被膜5および金属薄膜6が形成された電球L4が、また、ソケット85には電球L1が装着されているとともに反射鏡81,82,83の前面には開口部を覆うようにレンズカバー(制光体)8が設けられている。
【0068】
上記電球L4は、例えばS形をした無色透明のガラスバルブ1を、例えば赤色顔料、分散剤、シリコーンポリエステル樹脂および酢酸エチル等の溶剤を攪拌混合した分散溶液中に浸漬して引上げ、塗液を乾燥した後、焼成して外表面にほぼ均一な膜厚の赤色の着色被膜5を形成し、さらにこの着色被膜5の表面に例えば銀を蒸着することによりハーフミラーをなす白色系の金属薄膜6がその膜厚さを部分的に変えて形成してある。
【0069】
すなわち、この電球L4は図5に縦断面で示すようにレンズカバー8と対面するバルブ側面1n側の金属薄膜6を約60nmの厚膜6bとし、反射鏡81,83と対面する側が約8nmの薄膜6aとなるようバルブ1軸に沿ってほぼ二分する形で金属薄膜6が形成してある。なお、10は封止部2を覆うようバルブ1に接合されたBA形やP形の口金である。
【0070】
また、反射鏡81,82,83は金属板や合成樹脂材料から別体あるいは3者が一体に成形されその内面にはアルミニウム等からなる反射膜(図示しない、)が形成されている。
【0071】
また、レンズカバー(制光体)8は無色透明ないしは白色透明な合成樹脂やガラス材料から一体または3者別体で形成されたものからなり、各反射鏡81,82,83と対応する内面には電球L1,L4および各反射面からの放射光を所定方向に指向させる多数のレンズ素子(図示しない、)が形成されている。
【0072】
そして、上記ブレーキランプ8Aおよびストップランプ8Cは通電により点灯して透明なレンズカバー8を透過した光線は所定の赤色を放射し、また、ターンシグナルランプ8Bは透明なカバー8を透過した光線が上記実施の形態に記載と同様に所定の橙色を放射して後続車のドライバー等に注意を促すことができる。
【0073】
また、上記各電球L1,L4の消灯時、レンズカバー(制光体)8の外から内部を見たとき、各電球L1,L4はバルブ1に形成した金属薄膜6,…の厚膜側をカバー8と対面させているので、着色被膜5や内部のフィラメント4等が見えないとともに反射鏡81,82,83の鏡面とほぼ同色の白色系をなしているので着色被膜5の写り込みもないかあっても僅かで、他車のドライバーが見誤ることがなく安全な運転を行わせることができる。
【0074】
図6は本発明実施の形態の車両の一部を示す斜視図で、図中、図4と同一部分には同一の符号を付してその説明は省略する。図6において9は車両、91は車両本体、S2,S2は本体91後部のトランク92部左右横の対称位置に配設された一対の上記図4に示す照明装置(コンビネーションランプ)である。
【0075】
そして、上記コンビネーションランプS2は上記図4で説明した作用をなし、後続車や対向車のドライバーへは明暗時に拘らず常時視認性のよい適確な色度の光信号を発することができ、追突や衝突等の事故を未然に防ぐことができ安全性を向上できる。
【0076】
なお、本発明は上記実施の形態に限らない。例えばガラスバルブは着色ガラスや着色被膜を有するものに限らず、無色透明なガラスバルブに金属薄膜を形成した管球であっても差支えなく、厚膜部分を主照射面と対向させることにより光束を低下させることなく眩しさを低減できる等の作用効果を奏する。
【0077】
また、管球は電球の他、蛍光ランプやグローランプ等の放電ランプに適用することができる。
【0078】
また、ガラスバルブ表面のハーフミラーからなる透光性金属薄膜を形成する材料は、銀Auの他、アルミニウムAl、モリブデンMo、チタンTi、タンタルTa、白金Pt、パラジウムPd、金AuやクロムCr等の内からあるいはこれらの合金を主成分としたものを用いることができる。
【0079】
また、被膜の形成は真空蒸着、スパッタリング、、スプレイ、浸漬(ディップ)、ゾルゲル、静電塗装、イオンプレーティングやCVD等の手段で行うことができ、膜厚を変える手段としては、部分的な重ね塗り、マスキング、蒸着等の場合の蒸発源と被膜形成部との間隔差、浸漬や流し塗り等の場合の塗布液の垂れ下がり等を利用することに行うことができる。
【0080】
さらに、本発明の照明装置は上記の単体で設けられたターンシグナルランプや種々のランプが配設されるコンビネーションランプ装置等に限らず、配設場所も車両の前後部や左右の側面部であってもよい。さらに、照明装置の用途としては自動車等の車両用に限らず工場や道路等における表示用あるいは装飾、広告等のディスプレイ用や一般の照明用等の広い範囲に適用ができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明のウエッジベース形着色電球の実施の形態を示す一部断面正面図である。
【図2】(a)〜(d)は本発明の他の実施の形態の電球の一部を断面して示す縦断面図である。
【図3】本発明の照明装置の実施の形態を示す縦断面図である。
【図4】本発明の他の照明装置(コンビネーションランプ)の実施の形態を示す縦断面図である。
【図5】本発明の他の着色電球の実施の形態を示す一部断面正面図である。
【図6】本発明の車両の後部照明装置部分の実施の形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0082】
L1〜L4:着色電球(管球)
S1,S2:照明装置(灯具)
1:ガラスバルブ
1t:バルブトップ
1n:バルブ側面
4:フィラメント
5:着色被膜
6:透光性金属薄膜(ハーフミラー)
6a:薄膜
6b:厚膜
7:灯具
71,81〜83:反射鏡
8:制光体(レンズカバー)
9:車両
91:車両本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無色透明または着色ガラスあるいは着色被膜が形成されたガラスバルブと;
このガラスバルブ内に設けられた発光源と;
上記ガラスバルブの最外面に部分的に膜厚を変化して形成された透光性金属薄膜と;
を具備していることを特徴とする管球。
【請求項2】
上記透光性金属薄膜の膜厚が5〜70nmであることを特徴とする請求項1に記載の管球。
【請求項3】
上記発光源が、発光するフィラメントまたは放電電極であることを特徴とする請求項1または2に記載の管球。
【請求項4】
反射鏡を含む器具本体と;
この器具本体内に配設された請求項1ないし3のいずれか一に記載の管球と;
上記器具本体の開口部を覆うように設けられた透明な制光体と;
を具備していることを特徴とする照明装置。
【請求項5】
車両本体と;
車両本体に配設された請求項4に記載の照明装置と;
を具備していることを特徴とする車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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