説明

管球および照明装置

【課題】内部に発光部を配設したガラス製外管などのバルブのネック部やこのネック部に形成された封止部を覆うよう熱収縮樹脂チューブ材料からなる被膜を形成し、これらの部分に多少の肉薄部分や残存歪があってもこれらの部分を補強するとともにこれらの部分において万一クラックなどが生じても外管バルブが口金部から離れ脱落することを防止できるようにした高圧放電ランプなどの管球およびこの管球を用いた照明装置を提供する。
【解決手段】内部に発光部1が配設されるとともにネック部51に封止部が形成されたガラス製の外管バルブ5と、上記封止部に接合されるとともに上記発光部1に電気的に接続された口金6と、上記口金6から外管バルブ5のネック部51の外表面にかけて周状に被着された保護被膜7を備えた高圧放電ランプL1などの管球およびこの管球を用いた照明装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に発光管などの発光部が設けられたガラス製外管バルブのネック部に封止部が形成され、この封止部に口金が接合された高圧放電ランプや電球などの管球およびこの管球を用いた照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧放電ランプ、例えばメタルハライドランプは、高効率、光演色性の光源として、店舗、工場、ホールやスポーツ施設などの照明用として広く用いられている。
【0003】
この外管バルブは、放電電極および金属ハロゲン化物や希ガスなどの放電媒体を封装した発光管を発光源として、この発光管を支持させたマウントのステム管と外管バルブのネック部とを封止し、外管バルブ内を不活性ガスや窒素ガスあるいは真空雰囲気として発光管の保護、保温や外管内金属部品の酸化を防止をはかった二重管構造となっている。
【0004】
ところで、このメタルハライドランプは、稀にではあるが寿命末期などに発光管容器材料の石英ガラスが、ハロゲン化金属と反応してその強度を低下させ発光管を破損し、その破片が外管バルブに衝突して外管バルブをも破損飛散させるという危険性を有していた。
【0005】
そこで、この対策として発光管を耐熱透光性のガラス管(中管)で囲い外管バルブ内に配設するなどの対応がとられ一応の効果を上げている。(特許文献1)
また、この種高圧金属蒸気放電ランプは、照明装置のソケットへの口金の装着時あるいは点灯経過時においても稀有ではあるがマウントのステム管と外管バルブネック部との封止部やこの封止部近傍においてクラックなどの割れを生じることがあった。
【0006】
これは、ガラス製外管バルブとステム管との封止作業時の加熱バーナや除歪バーナの調整不具合、封止部をモールド成形した際などに封止部や封止部近傍のガラスが均一な肉厚で縮径や膨出されず厚肉や薄肉の部分が生じたり、微小な傷やひび割れの進行、加工残存歪強度や部分的に歪差が大きくなったりあるいはバルブから導出した外部導入線と口金とを半田などのろう材を用い接続するスポット的な加熱時に生じる歪などに起因している。
【0007】
すなわち、E(ねじ込み)形口金をソケットにねじ込みながら装着する際に外管バルブの封止部やその近傍のネック部に強い捻り力が加わったり、ランプ点滅による熱的衝撃あるいは振動衝撃などが薄肉部や微小な傷やひび割れ部分、あるいは歪量が大きい部位に作用した場合にクラックや割れが生じることがあった。
【0008】
そして、上述したメタルハライドランプやハロゲン電球を内部に封装した二重管構造の管球において、内部の発光管などの破損による外管バルブの破損や何らかの原因で外管バルブが破損した場合でも、外管バルブ部分の飛散や脱落を防止する手段として、外管バルブと口金の固着部の外表面に一体的にフッ素樹脂被膜を形成することが知られている。(特許文献2〜6)
【特許文献1】特開平6−295708号公報
【特許文献2】実開昭63−6662号公報
【特許文献3】特開平3−295147号公報
【特許文献4】特開平8−129992号公報
【特許文献5】特開平9−237609号公報
【特許文献6】特開平9−283095号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明者等は完成されたランプのガラス製外管バルブの封止部および封止部近傍のネック部に少々の傷や歪などがあってもその強度を高める手段として、上記特許文献2〜6に記載されているように、外管バルブと口金の固着部の外表面に一体的に強化被膜を形成することに着目した。
【0010】
上記特許文献2〜6の記載によればフッ素樹脂被膜の形成は、形成面である外管バルブの全外表面と口金の固着部の外表面あるいはバルブの略全外表面にプライマーを塗布し、この塗布面上にフッ素樹脂粉末を塗装して焼成することにより行われている。
【0011】
しかしながら、上記のようにバルブの全外表面に被膜が形成された場合は、フッ素樹脂とはいえ経時とともに被膜に変色を来たし透明度が低下して発光管から放射された可視光の透過率を下げ、ランプの光束維持特性であるパフォーマンス(働程)特性の低下が被膜を有しないランプに比べ加速される。
【0012】
また、外管ガラスバルブの外表面全面に被膜することは形成作業が容易ではなく特に大形バルブの場合には設備を含め大変であり問題を生じることもあった。すなわち、プライマーによる場合は二度塗り以上の重層作業が必要であり、また、バルブ全面への被膜形成であると材料の使用量も大量でコストアップの一因でもあり、プライマーの種類によっては引火性や環境衛生上など溶剤使用による安全面への管理が煩雑であった。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、内部に発光源を配設したガラス製外管などのバルブのネック部やこのネック部に形成された封止部を覆うよう熱収縮樹脂チューブ材料からなる被膜を形成し、これらの部分に多少の肉薄部分や残存歪があってもこれらの部分を補強するとともにこれらの部分において万一クラックなどが生じてもバルブが口金部から離れ脱落することを防止できるようにしたもので、この被膜は口金の近傍のみ形成され外管などのバルブ部分における光透過度の低下を来たさないとともに形成作業が容易で材料の使用量も少ない、品質および生産性の向上がはかれた高圧放電ランプなどの管球およびこの管球を用いた照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の請求項1に記載の管球は、内部に発光部が配設されるとともにネック部に封止部が形成されたガラス製の外管バルブと;上記封止部に接合されるとともに上記発光部に電気的に接続された口金と;上記口金から外管バルブのネック部の外表面にかけて周状に被着された保護被膜と;を具備していることを特徴とする。
【0015】
ガラス製の外管バルブ端部のネック部を加熱溶融して形成されるステム管との封止部は、熱加工による残存歪、傷や薄肉部分などが生じることがあり、これらを起点として発生したクラックによってバルブが口金から脱落することがある。
【0016】
しかし、本発明のように口金から外管バルブのネック部の外表面にかけて強化被膜を被着形成することにより万一この部分にクラックが発生しても、被膜が外管バルブのネック部を覆い保持した状態にあるのでバルブが落下することを防止できる。また、この強化被膜は外管バルブの全外表面に形成されていないので、バルブの光放射部において経時による被膜の変色などの劣化もなく管球の光束維持特性などの低下も抑制できる。
【0017】
なお、本発明および以下の発明において外管バルブの材質は管球の種類や点灯時の温度などに対応して決められるが、石英ガラス、ホウケイ酸ガラスやアルミノシリケートガラスあるいはソーダライムガラスが用いられ、その形状はA形、G形、R形、T形,PS形やBT形あるいはこれらの複合形で端部のネック部にフレアステムやボタンステムなどが焼落とし封止や衝合封止により封止されたもので、この封止部には後述するE(ねじ込み)形などの口金が接着剤を介しあるいは螺合や係合されるねじ溝が予めモールド成形されていてメカニカル的に接合できるものであってもよい。
【0018】
ガラス製の外管バルブは内部に発光源を収容するもので、発光源を支持するサポート部材や点灯回路部品が収容されていてもよく、また、内部に発光管を収容した二重管など多重構造の最外側のバルブを本発明では外管バルブとも呼ぶ。また、発光管の周囲を耐熱透光性材料からなるシュラウド(中管)などで囲ぎょうしてあってもよい。
【0019】
また、二重管構造の外管バルブの場合は、内部に収容して発光源となる発光管や電球などを構成するバルブは、ガラス製に限らず高耐熱性を有するアルミナなどのセラミックス製のものであってもよい。
【0020】
口金はE(ねじ込み)形に限らず、S(差込み)形などであってもよい。また、シェル部と一体または一体的に設けられた金属製あるいはセラミックスなどの電気絶縁性の材料で形成された外管バルブの封止部およびネック部を収容して接合するアダプタ部を有する口金であってもよい。
【0021】
また、強化被膜の膜厚は、管球の大きさや重量にもよるが好ましくは0.1〜1.0mm位あればよい。
【0022】
さらに、本発明の発光部は少なくとも一対の熱陰極や冷陰極からなる放電電極あるいは白熱体tなるコイル状フィラメントを封装したランプであって、メタルハライドランプ、高圧ナトリウムランプや水銀ランプなどの高圧放電ランプあるいはハロゲン電球などの管球に適用できる。
【0023】
本発明の請求項2に記載の管球は、上記保護被膜が、熱収縮チューブを口金から外管バルブのネック部にかけて収縮させることによって形成されていることを特徴とする。
【0024】
本発明の管球は、外管バルブ端部の封止部を覆い接合された口金から、バルブで最も機械的強度が弱い封止部が形成されたネック部にかけフッ素樹脂やシリコン樹脂などからなる熱収縮チューブを熱収縮して形成した保護被膜が被着させてあるので、封止部やネック部にかけた部分において傷や歪などにより万一破損しても強化被膜がそのガラス破片の落下を防ぐことができる。
【0025】
また、外管バルブが口金と分離するように分裂破損した場合であっても、強化被膜が口金に支持されているとともにバルブ外表面に常に収縮力を付与した状態で被着してあるので分裂した外管バルブ部分が脱落することがない。
【0026】
また、例えばフッ素樹脂からなる熱収縮チューブは最高260℃位までの耐熱性を有しているので、高出力タイプの高圧放電ランプやハロゲン電球などを、ベースアップ(口金上方)で点灯させて、口金部分が高温になった場合に耐えことができる。
【0027】
また、保護被膜の形成は、所定寸法にカットしたフッ素樹脂などの熱収縮チューブを口金のスカート部から外管バルブのネック部の被着予定部に遊嵌して、温風などで加熱して収縮させる簡単な作業により行うことができ、公知のプライマー上にフッ素樹脂粉末などを重層して形成する場合に比べ、形成温度も低く被着設備および形成作業が容易となる。さらに、コスト低減や生産性の向上がはかれるとともに溶剤を用いていないので安全性が高く環境上も好ましい。
【0028】
本発明の請求項3に記載の管球は、上記保護被膜が被着される外管バルブのネック部または口金の外表面には、凹凸部が形成されていることを特徴
外管バルブのネック部または口金あるいは両者の外表面の強化被膜が被着される部分の少なくとも一部に凹部または凸部あるいは粗面や孔などを含む凹凸部を形成しておくことにより、フッ素樹脂製の熱収縮したチューブがこれら凹凸部や粗面に沿って硬化密着される結果、形成された強化被膜がずれ難くなり口金側から分離しようとするバルブ側を強固に支持することができる。
【0029】
この凹凸部は、シェル部のスカート部外側面に凹部や凸部または孔を設けても、あるいはE(ねじ込み)形口金の場合はスカート部先端の外方に拡開した開口端部やソケットの受金との電気的接続にあまり支障のないシェル部のスカート部に続く螺旋状の突状部または溝状部を利用しこの部分にまで被膜を形成することにより達成できる。また、外管バルブ側への凹凸部の形成は封止部をモールド成形する際に同時に成形すれば格別な作業や加工は必要ない。
【0030】
本発明の請求項4に記載の照明装置は、本体と;この照明装置本体に配設された上記請求項1ないし3のいずれか一に記載の管球とを備えていることを特徴とする。
【0031】
この照明装置は、本体内に点灯回路装置を備えていても、本体外に点灯回路装置を設け管球と接続されるものであってもよい。また、本体内に反射鏡や光放射側にレンズや透光性のカバー部材が設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0032】
請求項1記載の発明によれば、ガラス製外管バルブの封止部やネック部にかけた部分において傷や歪などにより万一破損しても強化被膜が口金に支持されているとともに外管バルブ外表面に収縮力を常に付与した状態で被着しているので、分裂したバルブが脱落することがなく、周囲の人や物品などに危害を与えることがない。このように、保護被膜の被着により管球の強度が高められた安全性の向上した管球を提供することができる。
【0033】
また、保護被膜は、外管バルブの全外表面に被着していないので、膨出部などの主光放射部における被膜の経時劣化による透過光量の低下も少なく光束維持特性などの発光特性の向上がはかれる。
【0034】
請求項2記載の発明によれば、保護被膜を熱収縮チューブを用い形成してあるので、被着に要する設備および形成作業が容易となり、コスト低減や生産性の向上がはかれる管球を提供することができる。
【0035】
請求項3記載の発明によれば、熱収縮したチューブが凹凸部や粗面に沿って硬化密着される結果、形成された保護被膜がずれ難くなり口金側から分離しようとする外管バルブ側を強固に支持させることができる利点を有する。
【0036】
請求項4記載の発明によれば、請求項1ないし3のいずれか一に記載の効果を奏する管球を備えているので、点灯経時による光束維持率の低下が少なく、また、管球の外管バルブの落下による事故の防止がはかれる照明装置(器具)を提供することができる。
【0037】
なお、この照明装置(器具)は、店舗、ホール、地下街、事務所やスポーツ施設などの照明用として用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0039】
図1は本発明に係る高圧放電ランプとして、例えば定格400Wのメタルハライドランプの概略を示す正面図である。
【0040】
図1において1は発光部となる発光管、3はこの発光管1などを支持するとともに発光管1に給電をなすマウント、5はこのマウント3を内部に封装したガラス製の外管バルブ、6はこの外管バルブ5の端部に接合されたE(ねじ込み)形の口金、7は口金6から外管バルブ5のネック部51の外表面にかけ被着された両者を固定している保護被膜で、これらを主要部材としてメタルハライドランプL1を構成している。
【0041】
これら各部分について詳述すると、上記発光管1は石英ガラスやセラミックスなどからなる透光性容器、ここでは石英ガラスからなる肉厚が1.0mm〜2.0mm程度で、内径10〜20mm程度、長手方向の内側端部の間隔が25〜60mm程度の直管(T)形の容器11が用いられ、この容器11の両端部には圧潰封止部12,13が形成されていて、一方の圧潰封止部12内にはリボン状のモリブデン(Mo)からなる一対の金属箔21,22が、他方の圧潰封止部13内には金属箔21がそれぞれ気密に封止られている。
【0042】
また、各金属箔21,21,22の内寄りにはタングステン(W)などで構成した放電電極2a,2a,2bを有する内部リード部材22、…が、容器11の外寄りにはモリブデン(Mo)線などからなる外部リード部材23,23、24がそれぞれ溶接やかしめ止めなどの手段で接続されている。上記放電電極2a,2aの先端間は15〜45mmの間隔を隔て主電極として対向配置され、また、放電電極2bは補助電極として一方の放電電極2aの近傍に配置されている。
【0043】
また、発光管容器11内には、発光および放電媒体として所定量の水銀と金属ハロゲン化物および5kPa〜20kPaのアルゴン(Ar)ガスが封入してある。
【0044】
なお、希ガスとしてはアルゴン(Ar)ガスが適しているが、分圧比で10%以下、好ましくは5%以下のネオン(Ne)などの他の希ガスが混入されていてもよい。また、金属ハロゲン化物としては、よう素(I)や臭素(Br)や塩素(Cl)などのハロゲンと、ナトリウム(Na)、スカンジウム(Sc)、セシウム(Cs)やディスプロシウム(Dy)などの少なくとも一種の発光金属とが封入され、発光効率、演色性や色温度などの特性向上をはかっている。
【0045】
マウント3は、一対の導入線32,33が気密封着されたステム管31と、一方の導入線32に溶接などの手段で接続されたモリブデンMoやステンレスなどの線材や板状体を略長四角形状の枠状に成形したサポート部材4と、上記発光管1両端の圧潰封止部12,13を両側から挟圧支持して略並行したサポート線41,42に接続固定した一対のバンド状部材43,43と、このバンド状部材43,43またはサポート線41,42に取付片(図示しない。)を介し固定されたリング状などをなす固定部材44,44と、この固定部材44,44に上下端面部が支持されるとともに上記発光管1を囲ぎょうするよう配設された透明石英ガラス管からなるシュラウド(中管)45と、補助電極として作用する上記放電電極2bの外部リード部材24とサポート線41との間に接続された抵抗器やバイメタルなどの熱応動スイッチからなる始動回路部46と、主電極として作用する上記放電電極2aの外部リード部材23と導入線32との間に接続された給電部材47と、主電極として作用する上記放電電極2aの外部リード部材23とサポート線41との間に接続された給電部材48とを主要部品として構成されている。
【0046】
また、外管バルブ5は全長が約260mmのホウケイ酸ガラスなどの透光性の硬質ガラスからなり、中央部に最大外径が約116mmの膨出部52を有するとともに図示下部側の閉塞されたトップ部53および上部側の外径が約50mmの小径のネック部51を有するいわゆるBT形をなしている。このネック部51側には上記ステム管31のフレア部(図示しない。)が封止られた封止部(図示しない。)を有し、封止後ステム管31に設けられた排気管(図示しない。)を通じ外管バルブ5内は排気され、アルゴン(Ar)などの不活性ガスや窒素(N2 )ガスなどが封入あるいは真空とした気密雰囲気としてある。
【0047】
また、この封止部には封止部を覆ってE39(ねじ込み)形口金6のシェル部61が耐熱性の接着剤を介し接合されていたり、モールドにより形成された螺旋状のねじ溝にE形口金6のシェル部61が螺合されることにより取付けられている。
【0048】
また、上記口金6シェル部61のスカート部62から外管バルブ5のネック部の外表面にかけて、フッ素樹脂製の熱収縮チューブを縮径して周状に被着した保護被膜7が形成されメタルハライドランプL1を構成している。
【0049】
そして、図1に示す高圧放電ランプは、BT型の外管バルブ5内に発光管1を収容した二重管構造のメタルハライドランプL1として、口金6側が上方にくる鉛直あるいは傾斜した状態のベースアップで点灯される。
【0050】
すなわち、このメタルハライドランプL1の点灯は、ランプL1をソケットに装着して電源から安定器などを有する点灯回路装置(図示しない。)を介し通電される。このランプL1は、始動時、口金6の端子部(シェル61およびアイレット63)と電気的に接続した導入線32,33、サポート部材4、給電部材47,48、リード線47、外部リード部材23,24、金属箔21,22などを介し主電極2a,2aおよび補助電極2bに電圧が印加される。
【0051】
そして、放電はまず近接している一方の主電極2aと補助電極2bとの間で起り、ついで主電極2a,2a間の放電へと移行しランプL1が発光する。主電極2a,2a間で放電が始まれば、抵抗器や熱応動スイッチなどからなる始動回路部46は、熱応動スイッチが動作して回路を遮断したり、抵抗器により電圧が低下して主電極2aとこの主電極2aに近接する補助電極2bとの間の放電は停止され、その後は主電極2a,2a間での放電で安定した点灯を持続させることができる。
【0052】
本実施形態のメタルハライドランプL1によれば、外管バルブ5端部の封止部を覆い接合された口金6のスカート部62から、外管バルブ5で最も機械的強度が弱い封止部が形成されたネック部51にかけフッ素樹脂からなる熱収縮チューブを熱収縮させ形成した保護被膜7が周状に被着してあるので、封止部やネック部51にかけた部分において傷や歪などにより万一破損しても保護被膜7がその破片の落下を防ぐことができる。
【0053】
また、外管バルブ5が口金6側と分離するように分裂破損した場合であっても、保護被膜7が口金6に支持されているとともに外管バルブ5外表面に収縮力を常に付与した状態で被着してあるので分裂した外管バルブ5が脱落することがなく、安全性の向上したメタルハライドランプL1を提供することができる。
【0054】
また、フッ素樹脂からなる保護被膜7は、外管バルブ5の全外表面に被着していないので、膨出部52など主光放射部における被膜の経時劣化による透過光の低下も少なく光束維持特性などの発光特性の向上がはかれる。
【0055】
また、保護被膜7の形成は、ネック部51の外径に対し少々の余裕をもった内径の熱収縮チューブを所定寸法にカットし、この熱収縮チューブを口金6のスカート部62から外管バルブ5のネック部51の被着予定部に遊嵌して、温風などで加熱して収縮させることにより行うことができ、公知のプライマー上にフッ素樹脂粉末などを重層して形成する場合に比べ焼成温度が低いなど、被着設備および形成作業が容易でコスト低減や生産性の向上がはかれるとともに溶剤を用いていないので安全性が高く環境上も好ましい。
【0056】
なお、外管バルブ5内部の発光管1の破裂については、発光管1を囲ぎょうしたシュラウド(中管)45により対応することができる。
【0057】
また、上記実施の形態において、本発明は口金6スカート部62および外管バルブ5のネック部51の保護被膜7が被着される部分の少なくとも一部に凹部や凸部または両者あるいは粗面や孔を形成しておくことにより、フッ化樹脂製などの熱収縮したチューブがこれら凹凸部や粗面などに沿って硬化密着される結果、形成された保護被膜7がずれ難くなり口金6側から分離しようとする外管バルブ5側を強固に支持することができる。
【0058】
そして、この凹凸部は、シェル部61に凹部や凸部または粗面や孔を設けても、あるいはスカート部62先端の外方に拡開した開口端部64部分あるいはソケットの受金との電気的接続にあまり支障のないシェル部61のスカート部62に続く螺旋状の突状部または溝状部(ねじ部)を利用しこの部分にまで保護被膜7を形成することにより達成できる。また、バルブ5側への凹凸部の形成は封止部をモールド成形する際に同時に成形すれば容易に形成でき、格別な作業や加工は必要ない。
【0059】
また、上記実施の形態に示す各種定格のメタルハライドランプにおいてフッ素樹脂からなる保護被膜7の被着(形成)面積は口金6の大きさにもよるが、E26形およびE39形の口金では、口金6側にはスカート部62の開口端面から2〜15mmの高さで1.63〜18,37cm2 の面積範囲、また、ネック部51側にはスカート部62の開口端面から10〜100mmの高さで15.17〜226.08cm2 の面積範囲内にあれば、万一、ネック部51においてクラックが発生しても口金6から外管バルブ5が離れ落下することがなかった。
【0060】
すなわち、例えばE26形の口金6ではシェル部61のスカート部62から2〜5mmの外表面に保護被膜7を被着した場合では1.63〜4.08cm2 の面積範囲、E39形の口金6ではシェル部61のスカート部62から2〜15mmの外表面に被着した場合では2.45〜18.37cm2 の面積範囲である。
【0061】
また、ネック部51側にはスカート部62の開口端面から直管状をなすネック部51の外表面に保護被膜7を被着した場合では、外径が50mmのネック部51の外表面に10mmの高さで被着した場合では15.7cm2 の面積範囲、外径が56mmのネック部51の外表面に10mmの高さで被着した場合では17.58cm2 の面積範囲、外径が40mmのネック部51の外表面に10mmの高さで被着した場合では12.56cm2 の面積範囲、外径が22mmのネック部51の外表面に10mmの高さで被着した場合では6.91cm2 の面積範囲、外径が72mmのネック部51の外表面に100mmの高さで被着した場合では226.08cm2 の面積範囲である。
【0062】
図2は本発明に関わる上記高圧放電ランプL1を装着したスポーツ施設照明用などの高天井用の照明器具9の実施の形態の概略を示す正面図である。
【0063】
図2において照明器具9は、天井面などへの取付部をなす基台91にソケット92が取着されているとともにこのソケット92を囲みガード93が設けられている。そして、このガード93の下端には金属板やほうろう製の円錐状をなし内面に反射面が形成された反射笠94が固定され、上記ソケット92に放電ランプL1の口金3が装着されることにより保持と電気的な接続がなされる。
【0064】
なお、この実施の形態では上記基台91、ガード93および反射笠94などで器具本体を構成している。また、ランプの点灯回路装置および電源スイッチ(いずれも図示しない。)は器具本体とは別の所に設けられている。
【0065】
このような照明器具9は、スポーツ施設の天井面に反射笠94の開口部側を下方に向けて取付けられ、電源スイッチを入れることにより電源から点灯回路装置、ソケット92を介して放電ランプL1に通電される。
【0066】
そして、この反射笠94内で口金6側を上方(ベースアップ)にした垂直状態にあるランプL1が点灯されると、ランプL1からの可視光は反射面で反射され、あるいは直接に開口部を透過して、被照射物であるコートやグランド面を照射して所定の照度を得ることができる。
【0067】
したがって、上記高圧放電ランプL1を用いた本発明の実施の形態に係わる照明器具9は、口金6からの外管バルブ5の分離落下が防げ安全性の向上がはれるとともにランプL1に対応して光束維持率などの発光特性の向上ができる。
【0068】
また、図3は本発明に関わる他の管球の実施の形態の概略を示し、図中、図1と同一部分には同一の符号を付してその説明は省略する。
【0069】
図3はアルミナなどのセラミックスからなるバルブ11内に一対の電極と金属ハロゲン化物としてよう素(I)などのハロゲンと、ナトリウム(Na)、スカンジウム(Sc)、セシウム(Cs)やディスプロシウム(Dy)などの少なくとも一種の発光金属および不活性ガスとが封入された発光管1を、ステム管31に支持させ、T(直管)形をなす外管バルブ5内に封装し、外管バルブ5端部に形成した封止部(図示しない。)を覆うようネック部51に口金6が接合してある。
【0070】
この口金6は、シェル部61の開口部側にアルミナなどの耐熱性材料で筒状に形成したボディ65が設けられこのボディ65内において耐熱性接着剤やメカニカル的な手段を介しネック部51が接合されている。また、66は絶縁筒65の外周に形成された環状突起である。
【0071】
そして、この場合は口金6側の外径がバルブ5のネック部51の外径よりも大きくなるが、口金6のボディ65部分からネック部51にかけてフッ素樹脂製の熱収縮チューブを被せ形成した保護被膜7が設けられている。
【0072】
上記高圧放電ランプL2においても、万一、封止部の近傍に何らかの原因でクラックなどを生じ、口金6からバルブ5が分離してもネック部51が保護被膜7の収縮により外方から押圧された状態で支持されている結果、前記実施の形態と同様に破損したバルブ5の脱落が阻止される。
【0073】
したがって、破損したバルブ5部分の不所望な落下がない寿命末期まで安全、安心度が高く、かつ、ガラスバルブ5の主光放射をなす部分には保護被膜7を形成していないので光束維持率の低下が少ないパフォーマンス(働程)特性の向上がはかれた管球を提供することができる。
【0074】
また、上記実施の形態において、本発明は口金6スカート部62およびバルブ5ネック部51の保護被膜7が被着される部分の少なくとも一部に凹部や凸部または両者あるいは粗面や孔を形成しておくことにより、フッ素樹脂製の熱収縮したチューブがこれら凹凸部や粗面などに沿って硬化密着される結果、形成された保護被膜7がずれ難くなり口金6側から分離しようとするバルブ5側を強固に支持することができる。
【0075】
そして、この凹凸部は、シェル部61に凹部や凸部または粗面や孔を設けても、あるいはスカート部62先端の外方に拡開した開口端部64部分や図3に示す口金6のようにアダプタ部65の環状突起66部分あるいはソケットの受金との電気的接続にあまり支障のないシェル部61のスカート部62に続く螺旋状の突状部または溝状部(ねじ部)を利用しこの部分にまで被膜7を形成することにより達成できる。また、外管バルブ5側への凹凸部の形成は封止部をモールド成形する際に同時に成形すれば格別な作業や加工は必要ない。
【0076】
また、図4は三重管形の高圧放電ランプL3を示す。このランプL3は上記実施の形態と同種のセラミックスを用いた発光管1で石英ガラス製の中管50内に収容し、この中管50内を不活性ガスあるいは真空雰囲気として密封したものを、さらに硬質ガラスからなるT形の外管バルブ5内に収容した三重管構造のランプL3である。
【0077】
このランプL3の場合は、口金6のシェル部61の開口部にセラミックス製のボディ65が設けられ、このボディ65内に中管50と外管バルブ5の端部を入れ、耐熱接着剤(図示しない)で固定してあるメタルハライドランプL3である。
【0078】
このランプL3の場合もベースアップで点灯し、寿命末期など耐熱接着剤が劣化して接合力が低下したり、外管バルブ5の開口部にクラックが入った時、外管バルブ5と口金6のボディ65とは、保護皮膜7が被着されているので、外管バルブ5の落下を防ぐことができる。
【0079】
よって、上記実施の形態と同様に安全性を向上したランプL3を提供できる。
【0080】
なお、本発明は上記実施の形態に限るものではない。たとえば、管球はメタルハライドランプ、高圧ナトリウムランプや水銀ランプなどの高圧放電ランプあるいはハロゲン電球などに適用しても上記作用効果を奏する。また、外管バルブは、石英ガラスまたはホウケイ酸ガラスやアルミノシリケートガラスなどの硬質ガラスあるいはソーダライムガラスなどの軟質ガラスからなり、その形状はA形、G形、R形、T形、PS形やBT形あるいはこれらの複合形状で形成されているものを用いることができる。
【0081】
また、管球のバルブ構成が二重構造の場合、外管となるバルブの内部は、不活性ガスまたは窒素ガス雰囲気あるいは真空雰囲気などの気密雰囲気としてある。すなわち、外管バルブ内に不活性ガスまたは窒素ガスを低圧封入するか真空雰囲気とすることにより、点灯時に高温となる発光管構成部材、サポート部材やステム構成部材の酸化などを防止するとともにランプの再始動時間を短縮したり、万一の外管バルブ破損時の破裂を防止できる。
【0082】
また、高圧放電ランプは、発光源が少なくとも一対の熱陰極や冷陰極からなる放電電極が封装され、また、外管ガラスバルブ内に配設される始動回路部は、点灯管やUVエンハンサが用いられるものであってもよい。
【0083】
また、口金はE(ねじ込み)形に限らず、S(差込み)形などであってもよい。また、シェル部と一体または一体的に設けられた金属製あるいはセラミックスなどの電気絶縁性の材料で形成されたバルブの封止部およびネック部を収容して接合する口金ボディを有する口金であってもよい。
【0084】
また、熱収縮チューブは同径一本のものでなく、外管バルブのネック部と口金の外径差が大きい場合は、夫々の外径に対応した中間部において径差のあるチューブを用いることによって膜厚の均一化がはかれる。
【0085】
また、発光管を囲ぎょうするシュラウド(中管)は、必須のものではないが、発光管容器と同様な石英ガラス、硬質ガラスやセラミックスなどの耐熱透光性の材料を用いることができ、このシュラウドを二重管として耐衝撃強度を高めるようにしてもよい。また、このシュラウドの強度を高める手段として、外周面に耐熱性のセラミックスなどの無機系繊維からなる線状の補強体やシュラウドの外周面に耐熱性の材料で形成したメッシュ状などの補強体を巻装することにより対応させてもよい。
【0086】
このシュラウドのサポート部材への取り付けは、シュラウドの端面とほぼ同形のリング状の金属板の複数箇所に起立片を設けた保持板を両端部に当て起立片を起立させてシュラウドの端部を外側から抑えたり内外面の両側から挟むようにするとともに一部の起立片をサポート部材やバンド部材に溶接などの手段で接続することにより固定したり、シュラウドの端部の相対した部分に軸方向に切込みを設け、この一対の切込みを発光管を固定するバンド部材に装着するなどの手段で係止するようにしてもよい。
【0087】
また、発光管およびシュラウドを支持する枠状のサポート部材は、光電子作用を回避するため電位のかからない構成としたり、ハロゲン化ナトリウムを封入しない発光管などにおいては電極への給電部材として用いられてサポート部材に電位がかかるものであってもよく、また、発光管およびシュラウドの上下端部分の支持が分離した2部品からなる構成のサポート部材であってもよい。
【0088】
さらに、照明装置は上記実施の形態に示すものに限らず、本体内に点灯回路装置を備えていても、本体外に点灯回路装置を設け管球と接続されるものであってもよく、本体内に反射鏡や光放射側にレンズや透光性のカバー部材が設けられていてもよい。
【0089】
この照明装置は、店舗、ホール、地下街、事務所やスポーツ施設などの照明用として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の実施の形態に係る高圧放電ランプとして、例えばメタルハライドランプの概略を示す正面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る上記メタルハライドランプを装着したスポーツ施設照明用などの高天井用の照明器具の概略を示す縦断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る高圧放電ランプの概略を示す正面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る高圧放電ランプの概略を示す正面図である。
【符号の説明】
【0091】
L1,L2,L3:メタルハライドランプ(管球)、
1:発光管、
11:発光管容器、
12:ネック部、
3:マウント、
4:サポート部材、
5:外管バルブ、
6:口金、
61:シェル部、
7:保護被膜、
9:照明装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に発光部が配設されるとともにネック部に封止部が形成されたガラス製の外管バルブと;
上記封止部に接合されるとともに上記発光部に電気的に接続された口金と;
上記口金から外管バルブのネック部の外表面にかけて周状に被着された保護被膜と;
を具備していることを特徴とする管球。
【請求項2】
上記保護被膜は、熱収縮チューブを口金から外管バルブのネック部にかけて収縮させることによって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の管球。
【請求項3】
上記保護被膜が被着される外管バルブのネック部または口金の外表面には、凹凸部が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の管球。
【請求項4】
照明装置本体と;
この照明装置本体に配設された上記請求項1ないし3のいずれか一に記載の管球と;
を備えていることを特徴とする照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−40219(P2010−40219A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−199023(P2008−199023)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(301010951)オスラム・メルコ・東芝ライティング株式会社 (37)
【Fターム(参考)】