管理対象区画保全方法
【課題】新型インフルエンザなどのパンデミックが発生した場合に、管理対象区画における感染症による汚染を防止し、該区画の保全を行うための管理対象区画保全方法を提供する。
【解決手段】廊下区画(C)と建物外部との間に特別区画(S)を設け、建築物外における気圧より高い気圧に保ち、廊下区画(C)を特別区画(S)より高い気圧に保ち、管理対象区画(M)を廊下区画(C)より高い気圧に保ち、建築物外と特別区画(S)との間には、進入者が感染防止用品を装着しているか否かを検出する機構を設け、特別区画(S)には、進入者の体温が平常であるか否かを検出する機構、進入者に対して殺菌剤が混入されたエアシャワーを噴出する機構、及び、進入者による手洗いの実行を検出する機構を設け、特別区画(S)とで廊下区画(C)との間に殺菌機能を有するパスボックスを設ける。
【解決手段】廊下区画(C)と建物外部との間に特別区画(S)を設け、建築物外における気圧より高い気圧に保ち、廊下区画(C)を特別区画(S)より高い気圧に保ち、管理対象区画(M)を廊下区画(C)より高い気圧に保ち、建築物外と特別区画(S)との間には、進入者が感染防止用品を装着しているか否かを検出する機構を設け、特別区画(S)には、進入者の体温が平常であるか否かを検出する機構、進入者に対して殺菌剤が混入されたエアシャワーを噴出する機構、及び、進入者による手洗いの実行を検出する機構を設け、特別区画(S)とで廊下区画(C)との間に殺菌機能を有するパスボックスを設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新型インフルエンザなどのパンデミックが発生した場合に、管理対象区画における感染症による汚染を防止し、該区画の保全を行うための管理対象区画保全方法に関する。
【背景技術】
【0002】
新型インフルエンザなどのパンデミックが発生すると、企業活動などが制約され、企業への大きなダメージとなることが想定される。そこで、パンデミック時における事業継続のために、企業としては、企業活動に対するパンデミックの影響を最小限に抑えるための方策を平時より検討しておくことが重要となる。パンデミック対策の一つとしては、適切な除菌装置を事業所建物内に備えておくことが考えられる。このような装置としては、例えば、特許文献1(特開2005−249299号公報)を挙げることができる。この特許文献1には、室内を抗菌加工した空間と非抗菌加工空間とを隣接させた2室以上の並列密閉空間を設け、前記抗菌加工空間を部外者立ち入り空間とし非抗菌加工空間を部外者立ち入り禁止空間とすると共に、前記両空間への循環空気路に、紫外線殺菌灯を併用する化学フィルタと空気清浄器からなる空気浄化装置を配置し、該空気浄化装置で処理した清浄空気を、並列密閉に供給して空間の空気の循環により、換気を重ねることを特徴とする汚染物質を除去する装置が開示されている。
【特許文献1】特開2005−249299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
パンデミックが発生した場合の管理においては、以下の事項などを考慮することにより、管理している区画内での感染拡大の防止を図ることが可能となると言われている。
(a)飛沫感染を防止するために、マスクなどの感染防止用品を着用していない者は入場させないこと。
(b)手洗いを行っていない者を入場させないこと。
(c)検温をパスしない者は区画内に入場させないこと。
【0004】
しかしながら、引用文献1に記載の装置を用いることでは、上記(a)乃至(c)に関する事項に対応するための構成については開示されておらず、効率的に感染防止拡大を図ることが困難である、という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決するものであって、請求項1に係る発明は、建築物内における所定の管理対象区画を感染症による汚染から保全する保全方法において、前記管理対象区画に通ずる廊下区画を設け、前記廊下区画と建物外部との間に特別区画を設け、前記特別区画を建築物外における気圧より高い気圧に保ち、前記廊下区画を前記特別区画より高い気圧に保ち、前記管理対象区画を前記廊下区画より高い気圧に保ち、建築物外と前記特別区画との間には、進入者が感染防止用品を装着しているか否かを検出する機構を設け、前記特別区画には、進入者の体温が平常であるか否かを検出する機構、及び、進入者に対して殺菌剤が混入されたエアシャワーを噴出する機構、及び、進入者による手洗いの実行を検出する機構を設け、前記特別区画とで前記廊下区画との間に殺菌機能を有するパスボックスを設けることを特徴とする管理対象区画保全方法である。
【0006】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の管理対象区画保全方法において、前記廊下区画には、2つのカーテン手段を設け、これら2つのカーテン手段との間のカーテン
内空間と、該カーテン内空間以外の空間とに分けると共に、前記カーテン内空間に殺菌剤を噴霧する手段を設けることを特徴とする。
【0007】
また、請求項3に係る発明は、請求項2に記載の管理対象区画保全方法において、前記カーテン手段がエアカーテンであることを特徴とする。
【0008】
また、請求項4に係る発明は、請求項2乃至請求項3のいずれか1項に記載の管理対象区画保全方法において、カーテン内空間と、該カーテン内空間以外の空間とで気圧を異ならせることを特徴とする。
【0009】
また、請求項5に係る発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の管理対象区画保全方法において、前記管理対象区画の空調設備を構成するダクトには殺菌装置を取り付けるための分岐部が設けられることを特徴とする。
【0010】
また、請求項6に係る発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の管理対象区画保全方法において、前記管理対象区画の空調設備を構成するダクトの一部にはHEPAフィルタを装着可能なフィルタホルダが設けられることを特徴とする。
【0011】
また、請求項7に係る発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の管理対象区画保全方法において、前記管理対象区画の空調設備の配管路として、HEPAフィルタ装着ダクト、又は、HEPAフィルタを装着していないダクトのいずれかを選択可能としたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項8に係る発明は、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の管理対象
区画保全方法において、前記管理対象区画には、組み込まれたHEPAフィルタによって清浄処理した空気を空気吹き出し口から局所に向けて吹き出すと共に、前記空気吹き出し口周縁から吹き出す気流が、前記空気吹き出し口周縁以外から吹き出す気流より強くなるように設定された空気清浄装置を設けることを特徴とする。
【0013】
また、請求項9に係る発明は、請求項8に記載の管理対象区画保全方法において、前記空気吹き出し口の外周縁に殺菌剤を噴出する殺菌剤吹き出し口を有することを特徴とする。
【0014】
また、請求項10に係る発明は、請求項8又は請求項9に記載の管理対象区画保全方法において、前記空気清浄装置下方の床部には空気の吸い込み手段を設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の管理対象区画保全方法によれば、管理対象区画、廊下区画、特別区画を設け、これらの区画管に所定の圧力差が設定されると共に、進入者が感染防止用品を装着しているか否かを検出する機構、進入者の体温が平常であるか否かを検出する機構、進入者に対して殺菌剤が混入されたエアシャワーを噴出する機構、進入者による手洗いの実行を検出する機構などが設けられているので、
(a)飛沫感染を防止するために、マスクなどの感染防止用品を着用していない者は入場させないこと。
(b)手洗いを行っていない者を入場させないこと。
(c)検温をパスしない者は区画内に入場させないこと。
などの事項を遵守することが可能となり、適切な感染防止対策を実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る管理対象区画保全方法を適用したスペースを鳥瞰的にみた図である。
【図2】本発明の実施形態に係る管理対象区画保全方法で用いる殺菌トンネル区画の概要を説明する図である。
【図3】本発明の実施形態に係る管理対象区画保全方法の管理対象区画で用いる空調システムの概要を説明する図である。
【図4】本発明の実施形態に係る管理対象区画保全方法における管理対象区画保全時の空調システムの概要を説明する図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る管理対象区画保全方法の管理対象区画で用いる空調システムの概要を説明する図である。
【図6】本発明の実施形態に係る管理対象区画保全方法においてパーソナル執務スペースに空気清浄装置400を適用した例を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係る管理対象区画保全方法で用いるパーソナル執務スペースに対応した管理対象区画で用い空気清浄装置400の概要を説明する図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係る管理対象区画保全方法で用いるパーソナル執務スペースに対応した管理対象区画で用い空気清浄装置400の概要を説明する図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係る管理対象区画保全方法においてパーソナル執務スペースに空気清浄装置400を適用した例を示す図である。
【図10】本発明の他の実施形態に係る管理対象区画保全方法の管理対象区画で用いる床吹き出し空調システムの概要を説明する図である。
【図11】本発明の他の実施形態に係る管理対象区画保全方法における管理対象区画保全時の床吹き出し空調システムの概要を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。本実施形態においては、パンデミックが発生した場合における管理対象区画保全を例に説明する。また、本発明の管理対象区画保全方法については、病院、オフィス、官公庁などの建築物に適用されることが想定されるが、本実施形態ではオフィスへの適用事例に基づいて説明を行う。図1は本発明の実施形態に係る管理対象区画保全方法を適用したスペースを鳥瞰的にみた図である。図1に示すスペースは、大きく分けて3つの区画に分類することができる。第1の区画は「特別区画」(S)であり、第2の区画は「廊下区画」(C)であり、第3の区画は「管理対象区画」(M)である。これらの区画のうち、本発明の管理対象区画保全方法では、第3の「管理対象区画」を、感染症による汚染から保全することを目的としている。なお、「特別区画」に属する空間としては、ドアで仕切られたS1、S2、S3の3つの空間が
あり、「廊下区画」に属する空間としては、ドア、カーテン手段で仕切られたC1、C2、C3、C4の4つの空間が存在する。
【0018】
管理対象区画(M)の入退を管理する上で、本実施形態に係る管理対象区画保全方法においては、パンデミック拡散防止のために次の諸点が考慮されている。
(a)管理対象区画(M)を保全するために外気と所定の圧力差が設けられること。
(b)飛沫感染を防止するために、マスク等の感染防止用品を着用していない者は入場させないこと。
(c)検温をパスしない者は区画内に入場させないこと。
(d)進入者には殺菌エアシャワーによる殺菌で衣服等に付着している可能性のあるウイルスを除菌すること。
(e)手洗いを行っていない者を入場させないこと。
以下、建物内の区画毎で設定される圧力について説明する。特別区画に属するS1、S2及びS3はいずれも大気圧より5Pa気圧が高く保たれている。また、廊下区画に属するC1は大気圧より5Pa気圧が高く保たれ、C2はC1の設定気圧より5Pa気圧が高く保たれ、C3はC2の設定気圧より5Pa気圧が高く保たれ、C4は大気圧より5Pa気圧が高く
保たれている。また、管理対象区画(M)はC3の設定気圧より5Pa気圧が高く保たれ
ている。このように、「管理対象区画」(M)が最も高圧に保たれ、管理対象区画」(M)→「廊下区画」→「特別区画」→建物外(大気圧)の順で圧力差が設けられているので、ウイルスなどの感染源が管理対象区画(M)に到達しにくく、管理対象区画(M)における感染症による汚染からの保全が図られるようになっている。
【0019】
なお、図1において、「気圧(+)」は大気圧より5Pa気圧が高く保たれている空間であることを示しており、「気圧(++)」は大気圧より10Pa気圧が高く保たれている空間であることを示しており、「気圧(+++)」は大気圧より15Pa気圧が高く保たれている空間であることを示しており、「気圧(++++)」は大気圧より20Pa気圧が高く保たれている空間であることを示している。
【0020】
図1において、100はドア、101は撮像部、102は報知部、110はドア、111はサーモグラフィー、112は報知部、120はドア、121は吹き出し部、130はドア、131は廃棄箱、140は殺菌パスボックス、141は特別区画側扉、142は廊下区画側扉、150は手洗い場、151は撮像部、152は報知部、160、161、162はドア、200は殺菌トンネル、210は第1カーテン部、220は第2カーテン部をそれぞれ示している。
【0021】
次に、本発明の実施形態に係る管理対象区画保全方法を適用したスペースにおいて、管理対象区画(M)に進むための工程について説明する。
【0022】
管理対象区画(M)に進もうとする進入者は、ドア100から建物内に入場することが想定されている。ここで、本実施形態で用いるドア100としては、入場者が手をふれる必要がないスライド式の自動ドアであることが望ましい。また、このドア100は、進入者が適正な感染防止用品を装着しているか否かを検出した上で、適正な感染防止用品を装着していると判定されたときに開くように設定されていることが好ましい。
【0023】
撮像部101はドア100から建物内に入場しようとする進入者を撮影する。撮像部101で撮影された撮影データは、不図示の情報処理装置によって画像解析が施され、進入者が適正な感染防止用品(例えば、マスク、ゴーグル、手袋など。なお、どの感染防止用品が適切であるかは、流行している感染症の種別によって適宜変更可能とするとよい)を装着しているか否かが判定される。このような判定結果は、先のドア100の開閉の許可・不許可に反映される。
【0024】
報知部102は例えばスピーカーなどであり、進入者に対して音声案内を行うものである。この報知部102は、進入者が適正な感染防止用品を装着していない場合などについては、進入を許可しない旨のメッセージなどを報知する。なお、報知部102としては、スピーカーなどの音声報知手段の他に、ディスプレイなどの視覚的報知手段、あるいは音声報知手段及び視覚的報知手段の両方を用いた報知手段とすることもできる。
【0025】
上記のような撮像部101の取得画像で適正な感染防止用品を装着していると判定された進入者は(1)を経て、次に特別区画のS1の空間に進み、体温のチェックを受ける。
空間S1に設置されているサーモグラフィー111は、進入者の顔のサーモグラフデータ
を取得する。不図示の情報処理部によって、このサーモグラフデータが解析され、入場者平熱であるか否かが判定される。報知部112は先の報知部と同様で、進入者が平熱でない場合については、進入を許可しない旨のメッセージなどを報知する。また、このような場合、スライド式のドア110が開かないように設定されることが望ましい。
【0026】
さて、サーモグラフィー111によって進入者が平熱であることが判定された場合は、
進入者は(2)を経て、次に特別区画のS2の空間に進む。空間S2は、殺菌エアシャワーの区画であり、この区画に設けられている吹き出し部121からは、殺菌剤が混入されたエアシャワーが噴出されるようになっている。このような殺菌剤としては、人体への影響を最小限に抑えつつ、感染症のウイルスなどへの殺菌効果を有する次亜塩素酸や二酸化塩素などが含まれた殺菌剤が用いられることが好ましい。このような殺菌エアシャワー区画によって、進入者の衣服などの付着していることが考えられる感染症ウイルスなどを払い落としつつ同時に殺菌を行う。所定時間の殺菌エアシャワーが実施されると、ドア120が開き、入者は(3)を経て、次に特別区画のS3の空間に進むことができるようになっ
ている。
【0027】
空間S3に進入した者は、まず廃棄箱131に、使用済みのマスク、手袋などを廃棄し
、次に(4)の順路で殺菌パスボックス140の方に進む。殺菌パスボックス140は特別区画と廊下区画との間に配され、特別区画側には特別区画側扉141が、また、廊下区画側には廊下区画側扉142が設けられている殺菌機能を有するパスボックスである。このような殺菌パスボックス140の特別区画側扉141と廊下区画側扉142とは同時に開くことができないようになっている。また、殺菌パスボックス140における殺菌機能としては、UVによる殺菌や、先の次亜塩素酸や二酸化塩素などが含まれた殺菌剤による殺菌など任意のものを用いることができる。
【0028】
進入者は、殺菌パスボックス140はこの殺菌パスボックス140の特別区画側扉141を開き、自らの私物やゴーグルなどを置き、特別区画側扉141を閉じる。殺菌パスボックス140では、進入者が廊下区画側扉142からこれら私物やゴーグルなどを取り出すまでに所定の殺菌を実施する。
【0029】
次に進入者は(5)の順路で、手洗い場150に向かい手洗いを行うことが想定されている。この手洗い場150では、洗浄液が流れ、進入者は手洗いを行うことができるようになっている。手洗い場150の周辺には、撮像部151及び報知部152が設けられている。撮像部151で撮影した画像データは不図示の情報処理装置によって画像解析され、進入者が適切に手洗いを実行したか否かが判定される。情報処理装置によって進入者が適切に手洗いを行っていないことが判明した場合には、報知部152によって進入者に対して警告メッセージなどを報知する。
【0030】
手洗い場150で適切に手洗いを実行した者は、次に(6)の順路で、ロッカー132に赴き、ロッカー132に備え付けられている取り替え用のマスクや手袋を自身に装着し、次に(7)の順路で、廊下区画のC1の空間に進み、さらに順路(8)へと進む。空間
C1から、管理対象区画(M)に進む間には、殺菌トンネル200の区画(順路(9))
が設けられている。
【0031】
このような殺菌トンネル200の構成について、図2を参照して詳細に説明する。図2は本発明の実施形態に係る管理対象区画保全方法で用いる殺菌トンネルの概要を説明する図である。
【0032】
殺菌トンネル200は、2つのカーテン手段(第1カーテン部210、第2カーテン部220)と、これら2つのカーテン手段との間のカーテン内空間(C2)に設けられた殺
菌剤を噴霧する殺菌剤噴霧装置230とから構成されている。本実施形態では、第1カーテン部210及び第2カーテン部220をエアカーテンによって構成している。このような構成の殺菌トンネル200を、進入者が通過することによって進入者に付着した感染源などの除菌を行うことができるようになっている。
【0033】
吹き出し口211は、第1カーテン部210のエア吹き出し口であり、吸い込み口21
2は吹き出し口211に体操するエアの吸い込み口である。また、吹き出し口221は、第2カーテン部220のエア吹き出し口であり、吸い込み口222は吹き出し口221に対応するエアの吸い込み口である。このように本実施形態では、第1カーテン部210及び第2カーテン部220をエアカーテンによって構成しているが、これらのカーテン部はビニールカーテンなどによって構成することも可能である。
【0034】
また、本実施形態では、カーテン部で仕切られたC1、C2、C3の空間には、5Paず
つの圧力差が設定され、管理対象区画(M)にウイルスなどの進入することを厳格に防止しているが、このような圧力差を設けなくとも、殺菌トンネル200は十分効果的に進入者に付着した感染源などの除菌を行うことができるようになっている。
【0035】
以上のような殺菌トンネル200の区画(順路(9))を経た進入者は、次に(10)の順路で、殺菌パスボックス140に向かうことが想定されている。この殺菌パスボックス140においては、廊下区画側扉142を開き、殺菌済みの私物やゴーグルなどを取り出す。
【0036】
次に進入者は順路(11)を進み、ドア160から管理対象区画(M)に入ることができる。管理対象区画(M)では、例えばデスクと椅子とかなる自らのパーソナル執務スペースに進み着席し、執務を行う。なお、ここで、パーソナル執務スペースの間の間隔としては、感染を防御するために少なくとも2m以上の間隔が設けられることが好ましい。また、管理対象区画(M)は温度24〜28℃、相対湿度50〜60%に空調されることによって、ウイルスなどの繁殖を防止することが可能である。
【0037】
管理対象区画(M)から退出する際には、管理対象区画(M)から廊下区画(C)に出て、順路(13)→(14)を経ることが想定されている。
【0038】
次に、管理対象区画(M)における空調システムについてより詳しく説明する。図3は本発明の実施形態に係る管理対象区画保全方法の管理対象区画で用いる空調システムの概要を説明する図である。本実施形態に係る管理対象区画保全方法では、新型インフルエンザなどのパンデミックが発生した場合、平時において図3に示す形態で用いられている空調システムを、図4に示す形態に変更して用いることが想定されている。図4は本発明の実施形態に係る管理対象区画保全方法における管理対象区画保全時の空調システムの概要を説明する図である。
【0039】
まず、図3を参照して、平時における空調システムの運用について説明する。図3において、300は空調システム、309は吸気口、310は中性能フィルタ、311はダクト、312はフィルタホルダ、314はダクト、315は空調機、316はダクト、317、318は分岐部、321は換気口、322、323、324はダクト、325は排気口をそれぞれ示している。
【0040】
空調システム300においては、中性能フィルタ310が装着された吸気口309から外気を吸い込み、これをダクト311→ダクト314の経路で空調機315に導入する。ダクト311とダクト314との間には、平時には用いられいが、管理対象区画保全時に用いられるフィルタホルダ312が予め装備されている。
【0041】
空調機315は、内蔵している冷却器、加熱器、加湿器、フィルタ(いずれも図示略)により温湿度調整と粉塵除去などを行い、送風機によりダクト316を通して管理対象区画(M)室内に給気SAを供給している。
【0042】
ダクト316には、分岐部317、318が設けられている。この分岐部317、31
8は平常時においては閉栓されており、実質的な流路はダクト316のみとなっている。
【0043】
管理対象区画(M)空間の天井面には換気口321が設けられており、ここから還気RAを吸い込み、ダクト322→ダクト324の経路で空調機315に戻して循環させるようになっている。また、ダクト322はダクト323にも枝分かれしており、還気RAの一部は排気EAとして排気口325から建物の外部に排気するようになっている。
【0044】
平時において図3に示す形態で用いられている空調システム300は、本発明の管理対象区画保全方法では、図4に示す形態に変更して用いる。
【0045】
まず、ダクト311とダクト314との間の経路中に設けられているフィルタホルダ312には、HEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタ313が装着され、外気からの感染源ウイルスなどの侵入を阻止するようにする。さらに、 ダクト316に設けられている分岐部317、318を利用して、殺菌装置320が取り付けられる。この殺菌装置320としては任意のものを用いることができるが、次亜塩素酸や二酸化塩素などが含まれた殺菌剤を噴霧する形式のものを用いることが好ましい。このような殺菌装置320の働きにより、管理対象区画(M)室内への給気SAは、殺菌が行われたものとなり、管理対象区画(M)の保全をより効果的に保つことができるようになっている。また、排気口325には、HEPAフィルタ326が装着され、万が一管理対象区画(M)に感染源ウイルスなどが存在していたとしても、これを建物外部に散布することを防止している。
【0046】
なお、本実施形態では、パンデミック対応時に殺菌装置320を取り付ける例につき説明したが、分岐部317、318を利用して予め殺菌装置320を取り付けておき、パンデミック対応時にのみこれを動作させるように運用することもできる。いずれにしても、空調機315からのダクト316に、分岐部317、318が設けられていることにより、上記のような殺菌装置320を取り付けることが可能となり、パンデミック対策を行い、管理対象区画(M)空間を保全することが可能となる。
【0047】
次に、本発明の他の管理対象区画保全方法に係る空調システムについて説明する。図5は本発明の他の実施形態に係る管理対象区画保全方法の管理対象区画で用いる空調システムの概要を説明する図である。本実施形態においては、ダクト311とダクト314との間には、並列的にダクト330とダクト331とが設けられており、一方のダクト330の経路中にはHEPAフィルタ313が介挿されており、他方のダクト331にはフィルタ類などは設けられていない。ダクト330を利用するか、ダクト331を利用するかはバルブ操作によって選択することができるようになっており、平時にはダクト331を利用し、パンデミック対応時にはダクト330を利用し、外気からの感染源ウイルスなどの侵入を阻止する。
【0048】
次に、本発明の管理対象区画(M)の保全方法において、必要に応じて設ける空気清浄装置について説明する。図6は本発明の実施形態に係る管理対象区画保全方法においてパーソナル執務スペースに空気清浄装置400を適用した例を示す図であり、図7は本発明の実施形態に係る管理対象区画保全方法で用いるパーソナル執務スペースに対応した管理対象区画で用い空気清浄装置400の概要を説明する図である。
【0049】
設置用フレーム410は、個々のパーソナル執務スペース上部に、パーソナル用途の空気清浄装置400を設置するための枠組み構造である。設置用フレーム410は床面に設地され、空気清浄装置400を設置するようにしているが、空気清浄装置400を設置する方式としては、空気清浄装置400を天井の構造部材から吊架する方式を採用しても良い。例えば、天井がグリッド天井であるような場合には、このグリッド天井を利用し、空
気清浄装置400をチェーンブロック等で吊る方式も行なえる。一般的に、チェーブロックは滑車型なので、使用者や使用用途に応じて空気清浄装置400の高さ調整も行なえる。
【0050】
このような空気清浄装置400は、パンデミックが発生した場合、管理対象区画(M)におけるタスククリーン空調として用いられるものであり、局所的な空気清浄を行うことを想定したものである。このような空気清浄装置400は、組み込まれたHEPAフィルタ423によって清浄処理した空気を空気吹き出し口425から、パーソナル用途のために、局所に向けて吹き出すが、吹き出し口425周縁から吹き出す気流が、吹き出し口425周縁以外から吹き出す気流より強くなるように設定されている(図6中の矢印参照)。このため、出し口425から吹出る空気は、出し口425の周縁部分の風速が中央部分よりも大きくなって当出し口425の周縁部分で吹出す空気が、その内側を囲むエアカーテンを形成することになる。
【0051】
上記のような気流の強弱差を設けるために、空気清浄装置400は本体筐体部420の上部に設けられたファン421で吸い込んだ空気を、抵抗板422で装置周縁の風量が多く、装置周縁以外の風量が少なくなるように調整し、風向調整部424へと送り出すようにする。このような抵抗板422は、例えば、抵抗グラデーションをつけたパンチングメタル等によって実現することができる。
【0052】
抵抗板422と風向調整部424との間に設けられたHEPAフィルタ423は、抵抗板422された空気を高清浄度として、風向調整部424へと送り出す。吹き出し口425における風向調整部424は、吹き出し口425からの空気の吹出し方向に延在して配置してある。また、風向調整部424を構成する仕切板は、空気の吹出し方向に向けて拡開して設けてあり、吹き出し口425から吹出す空気が、仕切板の内側と外側とで仕切られることになる。
【0053】
このように、本発明の実施形態に係る管理対象区画保全方法においては、管理対象区画(M)におけるパーソナル執務スペースに対応して、空気清浄装置400を設けるようにしているので、個々人のパーソナル空間を高い確度で保全することが可能となる。
【0054】
次に、本発明の管理対象区画(M)の保全方法において用いられる空気清浄装置400の他の実施形態について説明する。図8は本発明の他の実施形態に係る管理対象区画保全方法で用いるパーソナル執務スペースに対応した管理対象区画で用い空気清浄装置400の概要を説明する図である。図8に示す空気清浄装置400が先の実施形態に係る空気清浄装置400と異なる点は、本体筐体部420の外側に殺菌剤噴霧装置430が設けられており、風向調整部424の周縁に、殺菌剤噴霧装置430により発生させた殺菌剤を噴出するための殺菌剤吹き出し口431が設けられている点である。殺菌剤噴霧装置430としては、次亜塩素酸や二酸化塩素などが含まれた殺菌剤を噴霧する形式のものを用いることができる。このような他の実施形態によれば、個々人のパーソナル空間をより高い確度で保全することが可能となる。
【0055】
次に、本発明の管理対象区画(M)の保全方法において用いられる空気清浄装置400の他の実施形態について説明する。図9は本発明の他の実施形態に係る管理対象区画保全方法においてパーソナル執務スペースに空気清浄装置400を適用した例を示す図である。本実施形態は、図6に示した実施形態に加えて、空気清浄装置400下方の床部において、パーソナル執務スペースを囲むような吸い込み口441を有する吸い込み装置440が配されている点で、先の実施形態と相違している。このような床部に空気の吸い込み口441を設けることにより、吹き出し口425周縁から吹き出される強い気流は、床部でまき上げられることなく、吸い込み口441で吸引されるので、パーソナル執務スペース
を囲むエアカーテンが形成されることとなるので、個々人のパーソナル空間をより高い確度で保全することが可能となる。
【0056】
次に、本発明の他の管理対象区画保全方法に係る空調システムについて説明する。本実施形態は、空調システムとして、床吹き出し空調システムが採用されている場合に係るものである。図10は本発明の他の実施形態に係る管理対象区画保全方法の管理対象区画で用いる床吹き出し空調システムの概要を説明する図である。
【0057】
図10を参照して、床吹き出し空調システム450の平時の利用方法について説明する。床吹き出し空調システム450が採用されている管理対象区画(M)空間の天井部においては天井面による仕切りによって天井チャンバー470が形成されており、また、床下部においてはフロアパネルで仕切られることによって、床スラブと当該フロアパネルとの間に床下チャンバー460が形成される。また、この床下チャンバー460の空間には床下給気口461を設けることによって床下チャンバー460内への給気を行い、また天井チャンバー470には天井環気口471を設ける。これによって、平時は床下給気口461→床下チャンバー460→管理対象区画(M)空間→天井チャンバー470→天井環気口471の経路で空調された空気の循環を行う。
【0058】
なお、上記のような床吹き出し空調システムの詳細については、特開2007−155222号公報「パーソナル空調システム」、特開2007−132564号公報「送風機」、特開2004−239525号公報「床吹出し空調システム」、特開2003−329294号公報「床吹出し空調システム」、特開2001−032509号公報「床吹出し空調における二重床構造」を参照して援用するものとする。
【0059】
この実施形態に係る管理対象区画保全方法では、新型インフルエンザなどのパンデミックが発生した場合、平時において図10に示す形態で用いられている空調システムを、図11に示す形態に変更して用いる。図11は本発明の他の実施形態に係る管理対象区画保全方法における管理対象区画保全時の床吹き出し空調システムの概要を説明する図である。
【0060】
管理対象区画(M)におけるパーソナル執務スペース上部には、図6に示す実施形態と同様に、パーソナル用途の空気清浄装置400を設置用フレーム410によって設置する。なお、空気清浄装置400についてはこれまで説明したものと同様のものを用いる。一方、床吹き出し空調システム450における不図示のファンの運転方向を逆方向とするなどして、天井環気口471を給気口として運用して給気を行い、床下給気口461を吸い込み口として運用し空気の吸い込みを行うようにする。このようなパンデミック発生時の運用によれば、床部の略全領域が吸い込み部として機能することによって、空気清浄装置400の吹き出し口425から吹き出される気流は、床部でまき上げられることなく、床部で吸引され、パーソナル執務スペースを囲むスペースは高い確度で保全することが可能となる。
【0061】
以上、本発明の管理対象区画保全方法によれば、管理対象区画、廊下区画、特別区画を設け、これらの区画管に所定の圧力差が設定されると共に、進入者が感染防止用品を装着しているか否かを検出する機構、進入者の体温が平常であるか否かを検出する機構、進入者に対して殺菌剤が混入されたエアシャワーを噴出する機構、進入者による手洗いの実行を検出する機構などが設けられているので、
(a)飛沫感染を防止するために、マスクなどの感染防止用品を着用していない者は入場させないこと。
(b)手洗いを行っていない者を入場させないこと。
(c)検温をパスしない者は区画内に入場させないこと。
などの事項を遵守することが可能となり、適切な感染防止対策を実施することが可能となる。
【符号の説明】
【0062】
100・・・ドア、101・・・撮像部、102・・・報知部、110・・・ドア、111・・・サーモグラフィー、112・・・報知部、120・・・ドア、121・・・吹き出し部、130・・・ドア、131・・・廃棄箱、132・・・ロッカー、140・・・殺菌パスボックス、141・・・特別区画側扉、142・・・廊下区画側扉、150・・・手洗い場、151・・・撮像部、152・・・報知部、160、161、162・・・ドア、200・・・殺菌トンネル、210・・・第1カーテン部、211・・・吹き出し口、212・・・吸い込み口、220・・・第2カーテン部、221・・・吹き出し口、222・・・吸い込み口、230・・・殺菌剤噴霧装置、300・・・空調システム、309・・・吸気口、310・・・中性能フィルタ、311・・・ダクト、312・・・フィルタホルダ、313・・・HEPAフィルタ、314・・・ダクト、315・・・空調機、316・・・ダクト、317、318・・・分岐部、320・・・殺菌装置、321・・・換気口、322、323、324・・・ダクト、325・・・排気口、326・・・HEPAフィルタ、330、331・・・ダクト、400・・・空気清浄装置、410・・・設置用フレーム、420・・・本体筐体部、421・・・ファン、422・・・抵抗板、423・・・HEPAフィルタ、424・・・風向調整部、425・・・吹き出し口、430・・・殺菌剤噴霧装置、431・・・殺菌剤吹き出し口、440・・・吸い込み装置、441・・・吸い込み口、床吹き出し空調システム450、460・・・床下チャンバー、461・・・床下給気口、470・・・天井チャンバー、471・・・天井環気口
【技術分野】
【0001】
本発明は、新型インフルエンザなどのパンデミックが発生した場合に、管理対象区画における感染症による汚染を防止し、該区画の保全を行うための管理対象区画保全方法に関する。
【背景技術】
【0002】
新型インフルエンザなどのパンデミックが発生すると、企業活動などが制約され、企業への大きなダメージとなることが想定される。そこで、パンデミック時における事業継続のために、企業としては、企業活動に対するパンデミックの影響を最小限に抑えるための方策を平時より検討しておくことが重要となる。パンデミック対策の一つとしては、適切な除菌装置を事業所建物内に備えておくことが考えられる。このような装置としては、例えば、特許文献1(特開2005−249299号公報)を挙げることができる。この特許文献1には、室内を抗菌加工した空間と非抗菌加工空間とを隣接させた2室以上の並列密閉空間を設け、前記抗菌加工空間を部外者立ち入り空間とし非抗菌加工空間を部外者立ち入り禁止空間とすると共に、前記両空間への循環空気路に、紫外線殺菌灯を併用する化学フィルタと空気清浄器からなる空気浄化装置を配置し、該空気浄化装置で処理した清浄空気を、並列密閉に供給して空間の空気の循環により、換気を重ねることを特徴とする汚染物質を除去する装置が開示されている。
【特許文献1】特開2005−249299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
パンデミックが発生した場合の管理においては、以下の事項などを考慮することにより、管理している区画内での感染拡大の防止を図ることが可能となると言われている。
(a)飛沫感染を防止するために、マスクなどの感染防止用品を着用していない者は入場させないこと。
(b)手洗いを行っていない者を入場させないこと。
(c)検温をパスしない者は区画内に入場させないこと。
【0004】
しかしながら、引用文献1に記載の装置を用いることでは、上記(a)乃至(c)に関する事項に対応するための構成については開示されておらず、効率的に感染防止拡大を図ることが困難である、という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決するものであって、請求項1に係る発明は、建築物内における所定の管理対象区画を感染症による汚染から保全する保全方法において、前記管理対象区画に通ずる廊下区画を設け、前記廊下区画と建物外部との間に特別区画を設け、前記特別区画を建築物外における気圧より高い気圧に保ち、前記廊下区画を前記特別区画より高い気圧に保ち、前記管理対象区画を前記廊下区画より高い気圧に保ち、建築物外と前記特別区画との間には、進入者が感染防止用品を装着しているか否かを検出する機構を設け、前記特別区画には、進入者の体温が平常であるか否かを検出する機構、及び、進入者に対して殺菌剤が混入されたエアシャワーを噴出する機構、及び、進入者による手洗いの実行を検出する機構を設け、前記特別区画とで前記廊下区画との間に殺菌機能を有するパスボックスを設けることを特徴とする管理対象区画保全方法である。
【0006】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の管理対象区画保全方法において、前記廊下区画には、2つのカーテン手段を設け、これら2つのカーテン手段との間のカーテン
内空間と、該カーテン内空間以外の空間とに分けると共に、前記カーテン内空間に殺菌剤を噴霧する手段を設けることを特徴とする。
【0007】
また、請求項3に係る発明は、請求項2に記載の管理対象区画保全方法において、前記カーテン手段がエアカーテンであることを特徴とする。
【0008】
また、請求項4に係る発明は、請求項2乃至請求項3のいずれか1項に記載の管理対象区画保全方法において、カーテン内空間と、該カーテン内空間以外の空間とで気圧を異ならせることを特徴とする。
【0009】
また、請求項5に係る発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の管理対象区画保全方法において、前記管理対象区画の空調設備を構成するダクトには殺菌装置を取り付けるための分岐部が設けられることを特徴とする。
【0010】
また、請求項6に係る発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の管理対象区画保全方法において、前記管理対象区画の空調設備を構成するダクトの一部にはHEPAフィルタを装着可能なフィルタホルダが設けられることを特徴とする。
【0011】
また、請求項7に係る発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の管理対象区画保全方法において、前記管理対象区画の空調設備の配管路として、HEPAフィルタ装着ダクト、又は、HEPAフィルタを装着していないダクトのいずれかを選択可能としたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項8に係る発明は、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の管理対象
区画保全方法において、前記管理対象区画には、組み込まれたHEPAフィルタによって清浄処理した空気を空気吹き出し口から局所に向けて吹き出すと共に、前記空気吹き出し口周縁から吹き出す気流が、前記空気吹き出し口周縁以外から吹き出す気流より強くなるように設定された空気清浄装置を設けることを特徴とする。
【0013】
また、請求項9に係る発明は、請求項8に記載の管理対象区画保全方法において、前記空気吹き出し口の外周縁に殺菌剤を噴出する殺菌剤吹き出し口を有することを特徴とする。
【0014】
また、請求項10に係る発明は、請求項8又は請求項9に記載の管理対象区画保全方法において、前記空気清浄装置下方の床部には空気の吸い込み手段を設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の管理対象区画保全方法によれば、管理対象区画、廊下区画、特別区画を設け、これらの区画管に所定の圧力差が設定されると共に、進入者が感染防止用品を装着しているか否かを検出する機構、進入者の体温が平常であるか否かを検出する機構、進入者に対して殺菌剤が混入されたエアシャワーを噴出する機構、進入者による手洗いの実行を検出する機構などが設けられているので、
(a)飛沫感染を防止するために、マスクなどの感染防止用品を着用していない者は入場させないこと。
(b)手洗いを行っていない者を入場させないこと。
(c)検温をパスしない者は区画内に入場させないこと。
などの事項を遵守することが可能となり、適切な感染防止対策を実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る管理対象区画保全方法を適用したスペースを鳥瞰的にみた図である。
【図2】本発明の実施形態に係る管理対象区画保全方法で用いる殺菌トンネル区画の概要を説明する図である。
【図3】本発明の実施形態に係る管理対象区画保全方法の管理対象区画で用いる空調システムの概要を説明する図である。
【図4】本発明の実施形態に係る管理対象区画保全方法における管理対象区画保全時の空調システムの概要を説明する図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る管理対象区画保全方法の管理対象区画で用いる空調システムの概要を説明する図である。
【図6】本発明の実施形態に係る管理対象区画保全方法においてパーソナル執務スペースに空気清浄装置400を適用した例を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係る管理対象区画保全方法で用いるパーソナル執務スペースに対応した管理対象区画で用い空気清浄装置400の概要を説明する図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係る管理対象区画保全方法で用いるパーソナル執務スペースに対応した管理対象区画で用い空気清浄装置400の概要を説明する図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係る管理対象区画保全方法においてパーソナル執務スペースに空気清浄装置400を適用した例を示す図である。
【図10】本発明の他の実施形態に係る管理対象区画保全方法の管理対象区画で用いる床吹き出し空調システムの概要を説明する図である。
【図11】本発明の他の実施形態に係る管理対象区画保全方法における管理対象区画保全時の床吹き出し空調システムの概要を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。本実施形態においては、パンデミックが発生した場合における管理対象区画保全を例に説明する。また、本発明の管理対象区画保全方法については、病院、オフィス、官公庁などの建築物に適用されることが想定されるが、本実施形態ではオフィスへの適用事例に基づいて説明を行う。図1は本発明の実施形態に係る管理対象区画保全方法を適用したスペースを鳥瞰的にみた図である。図1に示すスペースは、大きく分けて3つの区画に分類することができる。第1の区画は「特別区画」(S)であり、第2の区画は「廊下区画」(C)であり、第3の区画は「管理対象区画」(M)である。これらの区画のうち、本発明の管理対象区画保全方法では、第3の「管理対象区画」を、感染症による汚染から保全することを目的としている。なお、「特別区画」に属する空間としては、ドアで仕切られたS1、S2、S3の3つの空間が
あり、「廊下区画」に属する空間としては、ドア、カーテン手段で仕切られたC1、C2、C3、C4の4つの空間が存在する。
【0018】
管理対象区画(M)の入退を管理する上で、本実施形態に係る管理対象区画保全方法においては、パンデミック拡散防止のために次の諸点が考慮されている。
(a)管理対象区画(M)を保全するために外気と所定の圧力差が設けられること。
(b)飛沫感染を防止するために、マスク等の感染防止用品を着用していない者は入場させないこと。
(c)検温をパスしない者は区画内に入場させないこと。
(d)進入者には殺菌エアシャワーによる殺菌で衣服等に付着している可能性のあるウイルスを除菌すること。
(e)手洗いを行っていない者を入場させないこと。
以下、建物内の区画毎で設定される圧力について説明する。特別区画に属するS1、S2及びS3はいずれも大気圧より5Pa気圧が高く保たれている。また、廊下区画に属するC1は大気圧より5Pa気圧が高く保たれ、C2はC1の設定気圧より5Pa気圧が高く保たれ、C3はC2の設定気圧より5Pa気圧が高く保たれ、C4は大気圧より5Pa気圧が高く
保たれている。また、管理対象区画(M)はC3の設定気圧より5Pa気圧が高く保たれ
ている。このように、「管理対象区画」(M)が最も高圧に保たれ、管理対象区画」(M)→「廊下区画」→「特別区画」→建物外(大気圧)の順で圧力差が設けられているので、ウイルスなどの感染源が管理対象区画(M)に到達しにくく、管理対象区画(M)における感染症による汚染からの保全が図られるようになっている。
【0019】
なお、図1において、「気圧(+)」は大気圧より5Pa気圧が高く保たれている空間であることを示しており、「気圧(++)」は大気圧より10Pa気圧が高く保たれている空間であることを示しており、「気圧(+++)」は大気圧より15Pa気圧が高く保たれている空間であることを示しており、「気圧(++++)」は大気圧より20Pa気圧が高く保たれている空間であることを示している。
【0020】
図1において、100はドア、101は撮像部、102は報知部、110はドア、111はサーモグラフィー、112は報知部、120はドア、121は吹き出し部、130はドア、131は廃棄箱、140は殺菌パスボックス、141は特別区画側扉、142は廊下区画側扉、150は手洗い場、151は撮像部、152は報知部、160、161、162はドア、200は殺菌トンネル、210は第1カーテン部、220は第2カーテン部をそれぞれ示している。
【0021】
次に、本発明の実施形態に係る管理対象区画保全方法を適用したスペースにおいて、管理対象区画(M)に進むための工程について説明する。
【0022】
管理対象区画(M)に進もうとする進入者は、ドア100から建物内に入場することが想定されている。ここで、本実施形態で用いるドア100としては、入場者が手をふれる必要がないスライド式の自動ドアであることが望ましい。また、このドア100は、進入者が適正な感染防止用品を装着しているか否かを検出した上で、適正な感染防止用品を装着していると判定されたときに開くように設定されていることが好ましい。
【0023】
撮像部101はドア100から建物内に入場しようとする進入者を撮影する。撮像部101で撮影された撮影データは、不図示の情報処理装置によって画像解析が施され、進入者が適正な感染防止用品(例えば、マスク、ゴーグル、手袋など。なお、どの感染防止用品が適切であるかは、流行している感染症の種別によって適宜変更可能とするとよい)を装着しているか否かが判定される。このような判定結果は、先のドア100の開閉の許可・不許可に反映される。
【0024】
報知部102は例えばスピーカーなどであり、進入者に対して音声案内を行うものである。この報知部102は、進入者が適正な感染防止用品を装着していない場合などについては、進入を許可しない旨のメッセージなどを報知する。なお、報知部102としては、スピーカーなどの音声報知手段の他に、ディスプレイなどの視覚的報知手段、あるいは音声報知手段及び視覚的報知手段の両方を用いた報知手段とすることもできる。
【0025】
上記のような撮像部101の取得画像で適正な感染防止用品を装着していると判定された進入者は(1)を経て、次に特別区画のS1の空間に進み、体温のチェックを受ける。
空間S1に設置されているサーモグラフィー111は、進入者の顔のサーモグラフデータ
を取得する。不図示の情報処理部によって、このサーモグラフデータが解析され、入場者平熱であるか否かが判定される。報知部112は先の報知部と同様で、進入者が平熱でない場合については、進入を許可しない旨のメッセージなどを報知する。また、このような場合、スライド式のドア110が開かないように設定されることが望ましい。
【0026】
さて、サーモグラフィー111によって進入者が平熱であることが判定された場合は、
進入者は(2)を経て、次に特別区画のS2の空間に進む。空間S2は、殺菌エアシャワーの区画であり、この区画に設けられている吹き出し部121からは、殺菌剤が混入されたエアシャワーが噴出されるようになっている。このような殺菌剤としては、人体への影響を最小限に抑えつつ、感染症のウイルスなどへの殺菌効果を有する次亜塩素酸や二酸化塩素などが含まれた殺菌剤が用いられることが好ましい。このような殺菌エアシャワー区画によって、進入者の衣服などの付着していることが考えられる感染症ウイルスなどを払い落としつつ同時に殺菌を行う。所定時間の殺菌エアシャワーが実施されると、ドア120が開き、入者は(3)を経て、次に特別区画のS3の空間に進むことができるようになっ
ている。
【0027】
空間S3に進入した者は、まず廃棄箱131に、使用済みのマスク、手袋などを廃棄し
、次に(4)の順路で殺菌パスボックス140の方に進む。殺菌パスボックス140は特別区画と廊下区画との間に配され、特別区画側には特別区画側扉141が、また、廊下区画側には廊下区画側扉142が設けられている殺菌機能を有するパスボックスである。このような殺菌パスボックス140の特別区画側扉141と廊下区画側扉142とは同時に開くことができないようになっている。また、殺菌パスボックス140における殺菌機能としては、UVによる殺菌や、先の次亜塩素酸や二酸化塩素などが含まれた殺菌剤による殺菌など任意のものを用いることができる。
【0028】
進入者は、殺菌パスボックス140はこの殺菌パスボックス140の特別区画側扉141を開き、自らの私物やゴーグルなどを置き、特別区画側扉141を閉じる。殺菌パスボックス140では、進入者が廊下区画側扉142からこれら私物やゴーグルなどを取り出すまでに所定の殺菌を実施する。
【0029】
次に進入者は(5)の順路で、手洗い場150に向かい手洗いを行うことが想定されている。この手洗い場150では、洗浄液が流れ、進入者は手洗いを行うことができるようになっている。手洗い場150の周辺には、撮像部151及び報知部152が設けられている。撮像部151で撮影した画像データは不図示の情報処理装置によって画像解析され、進入者が適切に手洗いを実行したか否かが判定される。情報処理装置によって進入者が適切に手洗いを行っていないことが判明した場合には、報知部152によって進入者に対して警告メッセージなどを報知する。
【0030】
手洗い場150で適切に手洗いを実行した者は、次に(6)の順路で、ロッカー132に赴き、ロッカー132に備え付けられている取り替え用のマスクや手袋を自身に装着し、次に(7)の順路で、廊下区画のC1の空間に進み、さらに順路(8)へと進む。空間
C1から、管理対象区画(M)に進む間には、殺菌トンネル200の区画(順路(9))
が設けられている。
【0031】
このような殺菌トンネル200の構成について、図2を参照して詳細に説明する。図2は本発明の実施形態に係る管理対象区画保全方法で用いる殺菌トンネルの概要を説明する図である。
【0032】
殺菌トンネル200は、2つのカーテン手段(第1カーテン部210、第2カーテン部220)と、これら2つのカーテン手段との間のカーテン内空間(C2)に設けられた殺
菌剤を噴霧する殺菌剤噴霧装置230とから構成されている。本実施形態では、第1カーテン部210及び第2カーテン部220をエアカーテンによって構成している。このような構成の殺菌トンネル200を、進入者が通過することによって進入者に付着した感染源などの除菌を行うことができるようになっている。
【0033】
吹き出し口211は、第1カーテン部210のエア吹き出し口であり、吸い込み口21
2は吹き出し口211に体操するエアの吸い込み口である。また、吹き出し口221は、第2カーテン部220のエア吹き出し口であり、吸い込み口222は吹き出し口221に対応するエアの吸い込み口である。このように本実施形態では、第1カーテン部210及び第2カーテン部220をエアカーテンによって構成しているが、これらのカーテン部はビニールカーテンなどによって構成することも可能である。
【0034】
また、本実施形態では、カーテン部で仕切られたC1、C2、C3の空間には、5Paず
つの圧力差が設定され、管理対象区画(M)にウイルスなどの進入することを厳格に防止しているが、このような圧力差を設けなくとも、殺菌トンネル200は十分効果的に進入者に付着した感染源などの除菌を行うことができるようになっている。
【0035】
以上のような殺菌トンネル200の区画(順路(9))を経た進入者は、次に(10)の順路で、殺菌パスボックス140に向かうことが想定されている。この殺菌パスボックス140においては、廊下区画側扉142を開き、殺菌済みの私物やゴーグルなどを取り出す。
【0036】
次に進入者は順路(11)を進み、ドア160から管理対象区画(M)に入ることができる。管理対象区画(M)では、例えばデスクと椅子とかなる自らのパーソナル執務スペースに進み着席し、執務を行う。なお、ここで、パーソナル執務スペースの間の間隔としては、感染を防御するために少なくとも2m以上の間隔が設けられることが好ましい。また、管理対象区画(M)は温度24〜28℃、相対湿度50〜60%に空調されることによって、ウイルスなどの繁殖を防止することが可能である。
【0037】
管理対象区画(M)から退出する際には、管理対象区画(M)から廊下区画(C)に出て、順路(13)→(14)を経ることが想定されている。
【0038】
次に、管理対象区画(M)における空調システムについてより詳しく説明する。図3は本発明の実施形態に係る管理対象区画保全方法の管理対象区画で用いる空調システムの概要を説明する図である。本実施形態に係る管理対象区画保全方法では、新型インフルエンザなどのパンデミックが発生した場合、平時において図3に示す形態で用いられている空調システムを、図4に示す形態に変更して用いることが想定されている。図4は本発明の実施形態に係る管理対象区画保全方法における管理対象区画保全時の空調システムの概要を説明する図である。
【0039】
まず、図3を参照して、平時における空調システムの運用について説明する。図3において、300は空調システム、309は吸気口、310は中性能フィルタ、311はダクト、312はフィルタホルダ、314はダクト、315は空調機、316はダクト、317、318は分岐部、321は換気口、322、323、324はダクト、325は排気口をそれぞれ示している。
【0040】
空調システム300においては、中性能フィルタ310が装着された吸気口309から外気を吸い込み、これをダクト311→ダクト314の経路で空調機315に導入する。ダクト311とダクト314との間には、平時には用いられいが、管理対象区画保全時に用いられるフィルタホルダ312が予め装備されている。
【0041】
空調機315は、内蔵している冷却器、加熱器、加湿器、フィルタ(いずれも図示略)により温湿度調整と粉塵除去などを行い、送風機によりダクト316を通して管理対象区画(M)室内に給気SAを供給している。
【0042】
ダクト316には、分岐部317、318が設けられている。この分岐部317、31
8は平常時においては閉栓されており、実質的な流路はダクト316のみとなっている。
【0043】
管理対象区画(M)空間の天井面には換気口321が設けられており、ここから還気RAを吸い込み、ダクト322→ダクト324の経路で空調機315に戻して循環させるようになっている。また、ダクト322はダクト323にも枝分かれしており、還気RAの一部は排気EAとして排気口325から建物の外部に排気するようになっている。
【0044】
平時において図3に示す形態で用いられている空調システム300は、本発明の管理対象区画保全方法では、図4に示す形態に変更して用いる。
【0045】
まず、ダクト311とダクト314との間の経路中に設けられているフィルタホルダ312には、HEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタ313が装着され、外気からの感染源ウイルスなどの侵入を阻止するようにする。さらに、 ダクト316に設けられている分岐部317、318を利用して、殺菌装置320が取り付けられる。この殺菌装置320としては任意のものを用いることができるが、次亜塩素酸や二酸化塩素などが含まれた殺菌剤を噴霧する形式のものを用いることが好ましい。このような殺菌装置320の働きにより、管理対象区画(M)室内への給気SAは、殺菌が行われたものとなり、管理対象区画(M)の保全をより効果的に保つことができるようになっている。また、排気口325には、HEPAフィルタ326が装着され、万が一管理対象区画(M)に感染源ウイルスなどが存在していたとしても、これを建物外部に散布することを防止している。
【0046】
なお、本実施形態では、パンデミック対応時に殺菌装置320を取り付ける例につき説明したが、分岐部317、318を利用して予め殺菌装置320を取り付けておき、パンデミック対応時にのみこれを動作させるように運用することもできる。いずれにしても、空調機315からのダクト316に、分岐部317、318が設けられていることにより、上記のような殺菌装置320を取り付けることが可能となり、パンデミック対策を行い、管理対象区画(M)空間を保全することが可能となる。
【0047】
次に、本発明の他の管理対象区画保全方法に係る空調システムについて説明する。図5は本発明の他の実施形態に係る管理対象区画保全方法の管理対象区画で用いる空調システムの概要を説明する図である。本実施形態においては、ダクト311とダクト314との間には、並列的にダクト330とダクト331とが設けられており、一方のダクト330の経路中にはHEPAフィルタ313が介挿されており、他方のダクト331にはフィルタ類などは設けられていない。ダクト330を利用するか、ダクト331を利用するかはバルブ操作によって選択することができるようになっており、平時にはダクト331を利用し、パンデミック対応時にはダクト330を利用し、外気からの感染源ウイルスなどの侵入を阻止する。
【0048】
次に、本発明の管理対象区画(M)の保全方法において、必要に応じて設ける空気清浄装置について説明する。図6は本発明の実施形態に係る管理対象区画保全方法においてパーソナル執務スペースに空気清浄装置400を適用した例を示す図であり、図7は本発明の実施形態に係る管理対象区画保全方法で用いるパーソナル執務スペースに対応した管理対象区画で用い空気清浄装置400の概要を説明する図である。
【0049】
設置用フレーム410は、個々のパーソナル執務スペース上部に、パーソナル用途の空気清浄装置400を設置するための枠組み構造である。設置用フレーム410は床面に設地され、空気清浄装置400を設置するようにしているが、空気清浄装置400を設置する方式としては、空気清浄装置400を天井の構造部材から吊架する方式を採用しても良い。例えば、天井がグリッド天井であるような場合には、このグリッド天井を利用し、空
気清浄装置400をチェーンブロック等で吊る方式も行なえる。一般的に、チェーブロックは滑車型なので、使用者や使用用途に応じて空気清浄装置400の高さ調整も行なえる。
【0050】
このような空気清浄装置400は、パンデミックが発生した場合、管理対象区画(M)におけるタスククリーン空調として用いられるものであり、局所的な空気清浄を行うことを想定したものである。このような空気清浄装置400は、組み込まれたHEPAフィルタ423によって清浄処理した空気を空気吹き出し口425から、パーソナル用途のために、局所に向けて吹き出すが、吹き出し口425周縁から吹き出す気流が、吹き出し口425周縁以外から吹き出す気流より強くなるように設定されている(図6中の矢印参照)。このため、出し口425から吹出る空気は、出し口425の周縁部分の風速が中央部分よりも大きくなって当出し口425の周縁部分で吹出す空気が、その内側を囲むエアカーテンを形成することになる。
【0051】
上記のような気流の強弱差を設けるために、空気清浄装置400は本体筐体部420の上部に設けられたファン421で吸い込んだ空気を、抵抗板422で装置周縁の風量が多く、装置周縁以外の風量が少なくなるように調整し、風向調整部424へと送り出すようにする。このような抵抗板422は、例えば、抵抗グラデーションをつけたパンチングメタル等によって実現することができる。
【0052】
抵抗板422と風向調整部424との間に設けられたHEPAフィルタ423は、抵抗板422された空気を高清浄度として、風向調整部424へと送り出す。吹き出し口425における風向調整部424は、吹き出し口425からの空気の吹出し方向に延在して配置してある。また、風向調整部424を構成する仕切板は、空気の吹出し方向に向けて拡開して設けてあり、吹き出し口425から吹出す空気が、仕切板の内側と外側とで仕切られることになる。
【0053】
このように、本発明の実施形態に係る管理対象区画保全方法においては、管理対象区画(M)におけるパーソナル執務スペースに対応して、空気清浄装置400を設けるようにしているので、個々人のパーソナル空間を高い確度で保全することが可能となる。
【0054】
次に、本発明の管理対象区画(M)の保全方法において用いられる空気清浄装置400の他の実施形態について説明する。図8は本発明の他の実施形態に係る管理対象区画保全方法で用いるパーソナル執務スペースに対応した管理対象区画で用い空気清浄装置400の概要を説明する図である。図8に示す空気清浄装置400が先の実施形態に係る空気清浄装置400と異なる点は、本体筐体部420の外側に殺菌剤噴霧装置430が設けられており、風向調整部424の周縁に、殺菌剤噴霧装置430により発生させた殺菌剤を噴出するための殺菌剤吹き出し口431が設けられている点である。殺菌剤噴霧装置430としては、次亜塩素酸や二酸化塩素などが含まれた殺菌剤を噴霧する形式のものを用いることができる。このような他の実施形態によれば、個々人のパーソナル空間をより高い確度で保全することが可能となる。
【0055】
次に、本発明の管理対象区画(M)の保全方法において用いられる空気清浄装置400の他の実施形態について説明する。図9は本発明の他の実施形態に係る管理対象区画保全方法においてパーソナル執務スペースに空気清浄装置400を適用した例を示す図である。本実施形態は、図6に示した実施形態に加えて、空気清浄装置400下方の床部において、パーソナル執務スペースを囲むような吸い込み口441を有する吸い込み装置440が配されている点で、先の実施形態と相違している。このような床部に空気の吸い込み口441を設けることにより、吹き出し口425周縁から吹き出される強い気流は、床部でまき上げられることなく、吸い込み口441で吸引されるので、パーソナル執務スペース
を囲むエアカーテンが形成されることとなるので、個々人のパーソナル空間をより高い確度で保全することが可能となる。
【0056】
次に、本発明の他の管理対象区画保全方法に係る空調システムについて説明する。本実施形態は、空調システムとして、床吹き出し空調システムが採用されている場合に係るものである。図10は本発明の他の実施形態に係る管理対象区画保全方法の管理対象区画で用いる床吹き出し空調システムの概要を説明する図である。
【0057】
図10を参照して、床吹き出し空調システム450の平時の利用方法について説明する。床吹き出し空調システム450が採用されている管理対象区画(M)空間の天井部においては天井面による仕切りによって天井チャンバー470が形成されており、また、床下部においてはフロアパネルで仕切られることによって、床スラブと当該フロアパネルとの間に床下チャンバー460が形成される。また、この床下チャンバー460の空間には床下給気口461を設けることによって床下チャンバー460内への給気を行い、また天井チャンバー470には天井環気口471を設ける。これによって、平時は床下給気口461→床下チャンバー460→管理対象区画(M)空間→天井チャンバー470→天井環気口471の経路で空調された空気の循環を行う。
【0058】
なお、上記のような床吹き出し空調システムの詳細については、特開2007−155222号公報「パーソナル空調システム」、特開2007−132564号公報「送風機」、特開2004−239525号公報「床吹出し空調システム」、特開2003−329294号公報「床吹出し空調システム」、特開2001−032509号公報「床吹出し空調における二重床構造」を参照して援用するものとする。
【0059】
この実施形態に係る管理対象区画保全方法では、新型インフルエンザなどのパンデミックが発生した場合、平時において図10に示す形態で用いられている空調システムを、図11に示す形態に変更して用いる。図11は本発明の他の実施形態に係る管理対象区画保全方法における管理対象区画保全時の床吹き出し空調システムの概要を説明する図である。
【0060】
管理対象区画(M)におけるパーソナル執務スペース上部には、図6に示す実施形態と同様に、パーソナル用途の空気清浄装置400を設置用フレーム410によって設置する。なお、空気清浄装置400についてはこれまで説明したものと同様のものを用いる。一方、床吹き出し空調システム450における不図示のファンの運転方向を逆方向とするなどして、天井環気口471を給気口として運用して給気を行い、床下給気口461を吸い込み口として運用し空気の吸い込みを行うようにする。このようなパンデミック発生時の運用によれば、床部の略全領域が吸い込み部として機能することによって、空気清浄装置400の吹き出し口425から吹き出される気流は、床部でまき上げられることなく、床部で吸引され、パーソナル執務スペースを囲むスペースは高い確度で保全することが可能となる。
【0061】
以上、本発明の管理対象区画保全方法によれば、管理対象区画、廊下区画、特別区画を設け、これらの区画管に所定の圧力差が設定されると共に、進入者が感染防止用品を装着しているか否かを検出する機構、進入者の体温が平常であるか否かを検出する機構、進入者に対して殺菌剤が混入されたエアシャワーを噴出する機構、進入者による手洗いの実行を検出する機構などが設けられているので、
(a)飛沫感染を防止するために、マスクなどの感染防止用品を着用していない者は入場させないこと。
(b)手洗いを行っていない者を入場させないこと。
(c)検温をパスしない者は区画内に入場させないこと。
などの事項を遵守することが可能となり、適切な感染防止対策を実施することが可能となる。
【符号の説明】
【0062】
100・・・ドア、101・・・撮像部、102・・・報知部、110・・・ドア、111・・・サーモグラフィー、112・・・報知部、120・・・ドア、121・・・吹き出し部、130・・・ドア、131・・・廃棄箱、132・・・ロッカー、140・・・殺菌パスボックス、141・・・特別区画側扉、142・・・廊下区画側扉、150・・・手洗い場、151・・・撮像部、152・・・報知部、160、161、162・・・ドア、200・・・殺菌トンネル、210・・・第1カーテン部、211・・・吹き出し口、212・・・吸い込み口、220・・・第2カーテン部、221・・・吹き出し口、222・・・吸い込み口、230・・・殺菌剤噴霧装置、300・・・空調システム、309・・・吸気口、310・・・中性能フィルタ、311・・・ダクト、312・・・フィルタホルダ、313・・・HEPAフィルタ、314・・・ダクト、315・・・空調機、316・・・ダクト、317、318・・・分岐部、320・・・殺菌装置、321・・・換気口、322、323、324・・・ダクト、325・・・排気口、326・・・HEPAフィルタ、330、331・・・ダクト、400・・・空気清浄装置、410・・・設置用フレーム、420・・・本体筐体部、421・・・ファン、422・・・抵抗板、423・・・HEPAフィルタ、424・・・風向調整部、425・・・吹き出し口、430・・・殺菌剤噴霧装置、431・・・殺菌剤吹き出し口、440・・・吸い込み装置、441・・・吸い込み口、床吹き出し空調システム450、460・・・床下チャンバー、461・・・床下給気口、470・・・天井チャンバー、471・・・天井環気口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物内における所定の管理対象区画を感染症による汚染から保全する保全方法において、
前記管理対象区画に通ずる廊下区画を設け、
前記廊下区画と建物外部との間に特別区画を設け、
前記特別区画を建築物外における気圧より高い気圧に保ち、
前記廊下区画を前記特別区画より高い気圧に保ち、
前記管理対象区画を前記廊下区画より高い気圧に保ち、
建築物外と前記特別区画との間には、進入者が感染防止用品を装着しているか否かを検出する機構を設け、
前記特別区画には、進入者の体温が平常であるか否かを検出する機構、及び、進入者に対して殺菌剤が混入されたエアシャワーを噴出する機構、及び、進入者による手洗いの実行を検出する機構を設け、
前記特別区画とで前記廊下区画との間に殺菌機能を有するパスボックスを設けることを特徴とする管理対象区画保全方法。
【請求項2】
前記廊下区画には、2つのカーテン手段を設け、これら2つのカーテン手段との間のカーテン内空間と、該カーテン内空間以外の空間とに分けると共に、前記カーテン内空間に殺菌剤を噴霧する手段を設けることを特徴とする請求項1に記載の管理対象区画保全方法。
【請求項3】
前記カーテン手段がエアカーテンであることを特徴とする請求項2に記載の管理対象区画保全方法。
【請求項4】
カーテン内空間と、該カーテン内空間以外の空間とで気圧を異ならせることを特徴とする請求項2乃至請求項3のいずれか1項に記載の管理対象区画保全方法。
【請求項5】
前記管理対象区画の空調設備を構成するダクトには殺菌装置を取り付けるための分岐部が設けられることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の管理対象区画保全方法。
【請求項6】
前記管理対象区画の空調設備を構成するダクトの一部にはHEPAフィルタを装着可能なフィルタホルダが設けられることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の管理対象区画保全方法。
【請求項7】
前記管理対象区画の空調設備の配管路として、HEPAフィルタ装着ダクト、又は、HEPAフィルタを装着していないダクトのいずれかを選択可能としたことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の管理対象区画保全方法。
【請求項8】
前記管理対象区画には、組み込まれたHEPAフィルタによって清浄処理した空気を空気吹き出し口から局所に向けて吹き出すと共に、前記空気吹き出し口周縁から吹き出す気流が、前記空気吹き出し口周縁以外から吹き出す気流より強くなるように設定された空気清浄装置を設けることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の管理対象
区画保全方法。
【請求項9】
前記空気吹き出し口の外周縁に殺菌剤を噴出する殺菌剤吹き出し口を有することを特徴とする請求項8に記載の管理対象区画保全方法。
【請求項10】
前記空気清浄装置下方の床部には空気の吸い込み手段を設けることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の管理対象区画保全方法。
【請求項1】
建築物内における所定の管理対象区画を感染症による汚染から保全する保全方法において、
前記管理対象区画に通ずる廊下区画を設け、
前記廊下区画と建物外部との間に特別区画を設け、
前記特別区画を建築物外における気圧より高い気圧に保ち、
前記廊下区画を前記特別区画より高い気圧に保ち、
前記管理対象区画を前記廊下区画より高い気圧に保ち、
建築物外と前記特別区画との間には、進入者が感染防止用品を装着しているか否かを検出する機構を設け、
前記特別区画には、進入者の体温が平常であるか否かを検出する機構、及び、進入者に対して殺菌剤が混入されたエアシャワーを噴出する機構、及び、進入者による手洗いの実行を検出する機構を設け、
前記特別区画とで前記廊下区画との間に殺菌機能を有するパスボックスを設けることを特徴とする管理対象区画保全方法。
【請求項2】
前記廊下区画には、2つのカーテン手段を設け、これら2つのカーテン手段との間のカーテン内空間と、該カーテン内空間以外の空間とに分けると共に、前記カーテン内空間に殺菌剤を噴霧する手段を設けることを特徴とする請求項1に記載の管理対象区画保全方法。
【請求項3】
前記カーテン手段がエアカーテンであることを特徴とする請求項2に記載の管理対象区画保全方法。
【請求項4】
カーテン内空間と、該カーテン内空間以外の空間とで気圧を異ならせることを特徴とする請求項2乃至請求項3のいずれか1項に記載の管理対象区画保全方法。
【請求項5】
前記管理対象区画の空調設備を構成するダクトには殺菌装置を取り付けるための分岐部が設けられることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の管理対象区画保全方法。
【請求項6】
前記管理対象区画の空調設備を構成するダクトの一部にはHEPAフィルタを装着可能なフィルタホルダが設けられることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の管理対象区画保全方法。
【請求項7】
前記管理対象区画の空調設備の配管路として、HEPAフィルタ装着ダクト、又は、HEPAフィルタを装着していないダクトのいずれかを選択可能としたことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の管理対象区画保全方法。
【請求項8】
前記管理対象区画には、組み込まれたHEPAフィルタによって清浄処理した空気を空気吹き出し口から局所に向けて吹き出すと共に、前記空気吹き出し口周縁から吹き出す気流が、前記空気吹き出し口周縁以外から吹き出す気流より強くなるように設定された空気清浄装置を設けることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の管理対象
区画保全方法。
【請求項9】
前記空気吹き出し口の外周縁に殺菌剤を噴出する殺菌剤吹き出し口を有することを特徴とする請求項8に記載の管理対象区画保全方法。
【請求項10】
前記空気清浄装置下方の床部には空気の吸い込み手段を設けることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の管理対象区画保全方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−286165(P2010−286165A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−139962(P2009−139962)
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】
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