説明

管理機

【課題】リヤカバーの両端部を上下位置調整自在にして、リヤカバーによる畝立て高さを変更できる管理機を提供する。
【解決手段】走行部2に支持されるロータリカバー29の後端にリヤカバー35を設け、該リヤカバー35の上端中央部を上記ロータリカバー29の後端中央部に固定し、上記リヤカバー35の上端両側部を上記ロータリカバー29の後端両側部に上下位置調整自在に取付ける取付部材36を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行車輪を有する機体の後方にロータリを配置した管理機に係り、詳しくは、ロータリカバーの後部に配置されるリヤカバーの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、機体の後方に複数の耕耘爪からなるロータリを配置し、該ロータリの上方をロータリカバーで覆って、該ロータリカバーの後端辺に取付プレートによって耕耘土を均すリヤカバーを固定する管理機が知られている。
【0003】
前記管理機では、弾性変形自在なリヤカバーの後方近傍に該リヤカバーの中央部所定位置を押さえつけて弾性変形を妨げる後方部材を備えた管理機が知られている。該管理機は、作業者が機体を前進させると、前記後方部材によって前記リヤカバーの中央部は弾性変形せず両側部が耕耘土の圧力によって後方に退避回動するため、前記リヤカバーが簡易な培土器の機能を果たし、耕耘作業と畝立て作業を同時に行うことが出来る(特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特願2010−211942号公報
【特許文献2】特願2010−258967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1及び2記載の管理機は、前記ロータリカバー後端辺に沿って配置される取付プレートによって前記リヤカバーをロータリカバーに固定していたので、耕耘土の圧力によって退避回動するリヤカバーの両側部の曲げ角度は一定であり、かつ確実な畝立てを行うには曲げ角度が不十分であった。すなわち、リヤカバーによって耕耘作業と畝立て作業を同時に行う際に、畝立て高さは常に一定であって、またしっかりした畝を立てるのは困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、リヤカバーの取付位置を変更することにより、簡易な構造にて所望の畝立てを可能とし、もって上記課題を解決した管理機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述事情に鑑みなされたものであって、走行車輪(6)を有する走行部(2)の後方にロータリ(3)を配置し、該ロータリ(3)の上方を覆うロータリカバー(29)を備える管理機(1)において、
該ロータリカバー(29)の後端部に設けられて弾性変形自在なリヤカバー(35)と、
該リヤカバーの(35)後方に設けられて、該リヤカバー(35)の所定位置を押さえることで前記リヤカバー(35)の後方への弾性変形を妨げる後方部材(33c)と、
前記リヤカバー(35)の上端中央部(40,40)を前記ロータリカバー後端中央部に固定し、前記リヤカバーの上端両側部(37,37)を前記ロータリカバーの後端両側部に上下位置調整自在に取付ける取付部材(36,36)と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
例えば図4,図5を参照して、前記リヤカバー(35)が前記ロータリ(3)の軸方向に並設される2枚の弾性板状部材(35a,35a)から構成され、前記取付部材(36,36)が前記2枚の弾性板状部材(35a,35a)の上端辺に沿って各々配置される2枚のプレート(36,36)からなり、
前記2枚のプレート(36,36)を、前記2枚のプレート(36,36)の前記ロータリカバー(29)中央側の一端(40,40)を各々支点として、他端(37,37)を上下位置調整自在に設ける。
【0009】
なお、上述カッコ内の符号は、図面と対照するものであるが、何ら本発明の構成を限定するものではない。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る本発明によると、ロータリカバー後端に取付けられるリヤカバーを、その上端中央部を前記ロータリカバーに固定し、上端両側部を上下位置調整自在に前記ロータリカバーに取付けたので、前記リヤカバーの中央後方から後方部材で押さえつけてリヤカバーを簡易の培土器として使用する際に、リヤカバー両側部の取付け位置を変えることでリヤカバーの曲げ角度が変わり、簡易な構造で畝立ての高さを変更することができる。
【0011】
請求項2に係る本発明によると、2枚の弾性板状部材をロータリの軸方向にリヤカバーとして並設し、各弾性板状部材の上端辺をプレートによってロータリカバーに取付け、前記プレートの前記ロータリカバー中央側の一端を固定し、他端を上下位置調整自在に設けたので、畝高さの調整幅を大きくすることができ、確実に畝立てを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態による管理機を示す左側面図。
【図2】(A)は、無段階のハンドル調整構造を示す平面図、(B)は、その回動合せ面を示す断面図。
【図3】ハンドル回動部にクイックリリースを用いたことを示す部分平面図。
【図4】2枚の弾性板状部材からなるリヤカバーの取付構造を示す後面図。
【図5】そのリヤカバーの両側部を上方に傾けた状態を示す後面図。
【図6】1枚の弾性板状部材からなるリヤカバーの取付構造を示す後面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に沿って、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の説明における方向は、歩行型管理機で作業を行っている際の作業者を基準とする。
【0014】
管理機1は、図1に示すように、走行部2の後方にロータリ3が配置され、上記走行部2とロータリ3が一体的に構成されている。上記走行部2は、車軸5を介して駆動輪である左右一対の走行車輪6に支持されると共に、該走行車輪6に支持される機体フレーム7上にエンジン9と、変速機構を有するミッションケース10と、燃料タンク11と、を搭載している。また、上記走行部2の左側面には、上記エンジン9の動力を上記ミッションケース10に伝達するベルト伝動機構12が配置され、該ベルト伝動機構12の上方には上記エンジン9からの排気ガスを排出するマフラ13が配置されている。
【0015】
上記走行部2の上部後端からは、ハンドルフレーム15が突設されており、該ハンドルフレーム15から該走行部2の走行方向を操作する平面視ループ状をなすハンドル16が上下回動自在に延設されている。上記ハンドルフレーム15内には複数の調整孔が設けられ、上記ハンドル16に備えたピンを上記調整孔に嵌合することで段階的に位置決めし、上記ハンドル16の上下位置調整が行われる。
【0016】
なお、上記ハンドル16の上下位置調整は、図2(A)に示すように、ハンドルフレーム15及びハンドル16にそれぞれホルダ17の一端を溶接し、2つのホルダ17の他端側を高摩擦板19を挟んで左右方向に合わせて回動合せ面17a,17aを形成して、上記ホルダ17の上記回動合せ面17aの左右方向反対面をボルト20及びナット21で締め付けることで無段階に調整できるようにしてもよい。上記回動合せ面17aは、図2(B)に示すように、中央部に穴17bが開いた円形となっており、その合せ面部分(図2(B)の斜線部)は高摩擦処理が施されている。
【0017】
また、上記ハンドル16の上下位置調整を、図3に示すように、上記ハンドルフレーム15の両側部に菊座22を溶接し、上記菊座22に噛合するように菊座23をハンドル16にも配置して、上記菊座22及び23と同軸上にクイックリリース24を備えることで回動部を締め付けて調整できるようにしてもよい。上記クイックリリース24は、ハンドル回動部である上記ハンドル16,菊座23,菊座22,ハンドルフレーム15を貫通する軸と、該軸の一端に設けられたレバー25と、によって構成され、上記レバー25で開閉を行う。上記レバー25の根元はカム機構になっているため、レバー25を倒すだけで軸方向に圧力が生まれ全体を固定することができる。
【0018】
一方、ロータリ3は、図1に示すように、上記ミッションケース10から左右方向に延設されたロータリ軸26と、該ロータリ軸26に固定されて圃場を耕すロータリ爪27と、を有し、該ロータリ爪27は、上記ロータリ軸26の周囲に多数装着され一体に回転する。
【0019】
上記ロータリ3の上方には、該ロータリ3を覆うようにロータリカバー29が上記機体フレーム7に固定されて配置されている。上記ロータリカバー29の後部には、圃場を滑走することでロータリ3の耕耘深さを規制する尾ソリ31が上下位置調整自在に設けられており、該尾ソリ31を囲むように上記ロータリカバー29に取付けられたコ字状ブラケット32を介して、尾輪体33の支持アーム33aが上下位置調整自在に設けられている。上記支持アーム33aの上記ブラケット32と反対側の一端には、尾輪33bが上下回動自在に設けられて、圃場外のコンクリート路やアスファルト路上を路面移動できるようになっていると共に、プレートからなる後方部材33cが設けられ、後述するリヤカバーの所定位置を押さえて弾性変形を妨げることができるようになっている。
【0020】
図4に示すように、上記ロータリカバー29の後端部には例えば硬質ゴムからなる弾性変形自在のリヤカバー35が配置されている。上記リヤカバー35は2枚の略々台形状の弾性部材35a,35aからなり、上記ロータリカバー29の後端辺を左右に等分したときにそれらに上記台形状の弾性部材35a,35aの上底辺が略々一致するように取付プレート36,36により取付けられて、上記弾性部材35a,35aは、後面視中央部が重なり全体では略々矩形状からなる。
【0021】
上記取付プレート36,36は、左右方向に長い板状部材からなり、長手方向両端部がボルトによって上記ロータリカバー29に取付けられている。上記ロータリカバー29の、上記取付プレート36,36を取付けるボルトのうち、上記ロータリカバー29側方側に位置する2本のボルト37,37の上方所定位置には調整孔39,39が穿設されている。該調整孔39,39は、上記取付プレート36,36を取付けるボルトのうちロータリカバー29中央側の2本のボルト40,40をそれぞれ支点として、上記取付プレート36,36を上方に回転して、ボルト37,37が上記調整孔39,39に嵌合できるように設ける。
【0022】
また、上記ボルト37,37のボルト穴及び上記調整孔39,39のロータリ爪27側には、不図示のPナットがそれぞれ溶接され、上記ボルト37,37の上記調整孔39,39への付け替えが容易となっている。
【0023】
なお、調整孔は左右一つずつではなくてもよく、上記ボルト40,40を支点として取付プレート36,36を回転したときに、上記ボルト37,37が嵌合できる位置にあるならば複数でもよい。
【0024】
本実施の形態は以上のような構成からなるので、管理機1は、エンジン9の出力により走行車輪6及びロータリ爪27が回転して走行すると共に、土を耕耘して膨軟にする。この際、予め尾ソリ31の上下方向の位置を、作業者の身長、土壌の質等により調整して、耕耘深さを設定する。
【0025】
耕耘作業のみを行う場合には、上記尾輪33bを圃場に接しないように上方に位置決めすると共に、支持アーム33aの下端に備える後方部材33cが上記リヤカバー35の弾性変形を妨げる事のないように上記支持アーム33aも上方に位置決めしておく。これにより、耕耘作業を行った際に、耕耘土の圧力によって上記リヤカバー35が後方に退避回動するが、その接地面によって圃場を均平にする。
【0026】
耕耘作業と簡易な畝立て作業を同時に行う場合には、上記尾輪33bを圃場に接しないように上方に位置決めすると共に、上記後方部材33cを上記リヤカバー35の所定位置を押さえつけて中央部の弾性変形を妨げるように配置する。これにより、耕耘作業を行った際に、上記後方部材33cによって上記リヤカバー35の中央部は弾性変形せず両端部が耕耘土の圧力によって後方に退避回動するため、上記リヤカバー35が簡易な培土器の機能を果たし、耕耘作業と畝立て作業を同時に行うことが出来る。
【0027】
さらに、図5に示すように、上記ボルト37,37を上記調整孔39,39に嵌合して、上記リヤカバー35,35のロータリカバー29側方側を上記ボルト40,40に対して上方に傾けることで、耕耘土の圧力によって退避回動するリヤカバー35,35の曲げ角度が変わり、高い畝を立てることができ、確実に畝立てを行うことができる。
【0028】
なお、リヤカバーは2枚の弾性板状部材からならなくても、図6に示すように、1枚の矩形状の弾性板状部材35aからなってもよい。その場合は該弾性板状部材35aの一辺がロータリカバー29の後端辺の長さと略々等しくなり、上述のリヤカバー35が2枚の弾性板状部材35a,35aからなる場合(図5参照)と同様に、1枚の弾性板状部材35aは取付プレート36,36によって側方が上下位置調整自在に取付けられる。該弾性板状部材35a側方の上下位置調整によって、上記弾性板状部材35の曲げ角度が変わり、畝立て高さを変更することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 管理機
2 走行部
3 ロータリ
9 エンジン
10 ミッションケース
29 ロータリカバー
33c 後方部材
35 リヤカバー
35a,35a 弾性板状部材
36,36 取付プレート
39,39 調整孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車輪を有する走行部の後方にロータリを配置し、該ロータリの上方を覆うロータリカバーを備える管理機において、
該ロータリカバーの後端部に設けられて弾性変形自在なリヤカバーと、
該リヤカバーの後方に設けられて、該リヤカバーの所定位置を押さえることで前記リヤカバーの後方への弾性変形を妨げる後方部材と、
前記リヤカバーの上端中央部を前記ロータリカバー後端中央部に固定し、前記リヤカバーの上端両側部を前記ロータリカバーの後端両側部に上下位置調整自在に取付ける取付部材と、
を備えることを特徴とする管理機。
【請求項2】
前記リヤカバーが前記ロータリの軸方向に並設される2枚の弾性板状部材から構成され、前記取付部材が前記2枚の弾性板状部材の上端辺に沿って各々配置される2枚のプレートからなり、
前記2枚のプレートを、前記2枚のプレートの前記ロータリカバー中央側の一端を各々支点として、他端を上下位置調整自在に設けた、
ことを特徴とする請求項1記載の管理機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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