説明

管理装置及びそれを備えた有害物質管理システム

【課題】有害物質を含む製品の取り扱いを第三者が管理して、ユーザーが使用する有害物質を含む製品がユーザーにとって不要となったとしても、当該有害物質の拡散を防止することができる有害物質管理システムを提供する。
【解決手段】有害物質を含む製品に関する管理会社とユーザーとの取決めでユーザーが使用する製品の所在と回収とを管理する有害物質管理システム100であって、管理装置10と、ネットワーク20を介して管理装置10に繋がり製品の回収作業を行う処理会社用の端末装置13と、を備え、管理装置10が、製品の設置場所の情報を記憶する第1記憶部10Aと、取決めの情報を記憶する第2記憶部と、第2記憶部の情報に基づいて上記製品を回収するか否か判断する判断部と、を備え、判断部が製品を回収すると判断した場合、管理装置10は、ネットワーク20を介して処理会社用の端末装置13へ、ユーザーから上記製品を回収すべき旨の回収情報を送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば管理会社とユーザーとのリース契約等の取決めに基づいて当該ユーザーが製品を使用することができ、契約終了などの取決めの状態に応じて当該製品を処理会社がユーザーから回収する社会システムに係り、特に製品に含まれる有害物質の拡散防止を図るための管理装置及びそれを備えた有害物質管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
日本における現状の社会システムでは、Cd,Se等の有害物質を含む製品のリサイクルは積極的に行われていない。このため、有害物質を含む製品が一旦市場に出てしまうと、その有害物質の管理が行き届かなくなり、有害物質が広範囲に拡散するおそれがある。
【0003】
有害物質の拡散防止を図る技術として、特許文献1,2が知られている。特許文献1には、有害廃棄物,薬品等の保管から処理までを一元化して管理することのできる廃棄物等の管理システムが開示されている。
特許文献2には、家庭から出る廃棄物の回収から運搬、処理までの過程を追跡、記録する家電リサイクル管理システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−99287号公報
【特許文献2】特開2006−227764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の廃棄物等管理システムは、各事業所における有害物質や薬品を管理することはできるが、家庭から出るEOL(End of Life)品に含まれる有害物質を管理する技術ではない。
【0006】
特許文献2では、家庭で不要となった製品、つまりEOL品を回収する段階以降に当該製品を管理するだけである。つまり、特許文献2の家電リサイクル管理システムは、ユーザーによって使用されている段階では、有害物質を含む製品の所在などを管理していない。また、特許文献2の家電リサイクル管理システムでは、EOL品をリサイクルするか否かは、ユーザーの任意である。これでは、例えばEOL品が放置された場合には、回収することさえできない。したがって、特許文献2の家電リサイクル管理システムでは、有害物質を含むEOL品の管理を十分に行うことはできず、結局、システムの円滑な運用も期待できない。
【0007】
このように、現在の社会システムでは、家庭から出るEOL品の処分はユーザーに委ねられているため、ユーザーが当該製品を自由に場所を移したり、処分したりすることが可能である。よって、そのような製品に含まれる有害物質が拡散して、放置されることになってしまう。これでは、環境、人体にも影響を及ぼしかねない。
【0008】
一方、有害物質であっても、原料素材として性能面、コスト面からは有効である場合がある。言い換えれば、使用履歴が適正に管理され、製品が回収・廃棄されるまでの安全性が確保されるのであれば、有害物質を原料素材として積極的に使用したいとのニーズは高い。
【0009】
このため、有害物質を含む製品の処分を、ユーザーの意思によるだけでなく、第三者が規制することができる社会システムの構築が望まれる。
【0010】
そこで、本発明は上記課題に鑑みて創作されたものであり、有害物質を含む製品の取扱いを第三者が管理して、ユーザーが使用する有害物質を含む製品がユーザーにとって不要となったとしても、当該有害物質の拡散を防止することができる、管理装置及びそれを備えた有害物質管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、有害物質を含む製品に関する管理会社とユーザーとの取決めでユーザーが使用する製品の所在と回収とを管理する有害物質管理システムであって、管理装置と、ネットワークを介して管理装置に繋がり製品の回収作業を行う処理会社用の端末装置と、を備え、管理装置が、製品の設置場所の情報を記憶する第1記憶部と、取決めの情報を記憶する第2記憶部と、第2記憶部の情報に基づいて製品を回収するか否か判断する判断部と、を備え、判断部が製品を回収すると判断した場合、管理装置は、ネットワークを介して処理会社用の端末装置へ、ユーザーから製品を回収すべき旨の回収情報を送信することを特徴としている。
【0012】
本発明の有害物質管理システムにおいて、第1記憶部は、記憶する設置場所の情報として地理情報システムを用いることを特徴とする。
【0013】
本発明の有害物質管理システムにおいて、ユーザーの製品使用がリースであり、前記取決めの情報は、ユーザーの管理会社への支払い状況の情報を含み、判断部は取決めの情報に基づいてユーザーの料金の支払いが未納である場合、製品を回収と判断することを特徴とする。
【0014】
また、上記目的を達成するために、本発明は、有害物質を含む製品に関する管理会社とユーザーとの取決めでユーザーが使用する製品の所在と回収とを管理する装置であって、製品の設置場所の情報を記憶する第1記憶部と、取決めの情報を記憶する第2記憶部と、第2記憶部の情報に基づいて製品を回収するか否か判断する判断部と、を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、第1記憶部で各製品の設置情報、つまり所在地情報が管理され、さらに、第2記憶部で各製品を回収するタイミングの情報が管理される。
よって、有害物質を含む製品の取扱いを第三者が管理して、ユーザーが使用する有害物質を含む製品がユーザーにとって不要となったとしても、当該有害物質の拡散を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係る有害物質管理システムを適用する社会システムを示す図である。
【図2】図1の社会システムにおける製品の流れを説明するための図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る有害物質管理システムを適用する社会システムの他の構成例を示す図である。
【図4】図3の社会システムにおける製品の流れを説明するための図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る有害物質管理システムを示す図である。
【図6】図5の有害物質管理システムの管理装置で管理されるデータ例を示す図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る有害物質管理システムの管理装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係る有害物質管理システムについて、下記の項目順に説明する。
〔1〕本発明の有害物質管理システムを利用する新社会システムの説明
(1−1)新社会システムの目的
(1−2)新リサイクルフローの概要
〔2〕『リサイクルフロー』の他の構成例
〔3〕本発明の実施形態に係る有害物質管理システム
(3−1)第1実施形態
(3−2)第2実施形態
〔4〕実施例
【0018】
〔1〕本発明の有害物質管理システムを利用する新社会システムの説明
(1−1)新社会システムの目的
本発明の有害物質管理システム(詳細は後述する。)を利用する新社会システムは廃棄物のリサイクルとしての新たなリサイクルフローである。
この新リサイクルフローは、下記の事項(イ)及び(ロ)を目標としている。
(イ)廃棄物に含まれる有害物質の拡散を防止すること。
(ロ)有害物質を含む製品の全ライフサイクル、つまり使用開始から廃棄処分に至る迄の全過程における製品の状態を管理すること。
【0019】
(1−2)新リサイクルフローの概要
図1は本発明の実施形態に係るリサイクルフローF1を示す概念図である。
リサイクルフローF1は、ユーザーによって使用されている製品が不要となった段階で、処理会社がユーザーから回収してリサイクル又は適正処理を行うための社会システムである。
本実施形態に係るリサイクルフローF1において、リサイクルの対象とする製品は、人が携帯して持ち運べるものではなく、ユーザー宅、工場などの施設に置いて利用に供されるものである。なお、本明細書では、用語「ユーザー」とは、個人に限らず、法人を含む概念で用いる。なお、本明細書で、用語「施設」とは、ユーザーが個人である場合はその自宅等、またユーザーが法人である場合はその会社や工場などの施設を含む概念で用いている。
【0020】
この社会システムの実行は、図1に示すように、製品を製造するメーカー1、製品を使用するユーザー2、製品のリサイクルを管理する管理会社3、製品をユーザー2に対して販売する施工業者4、不要になった製品を回収してリサイクル又は適正処理を行う処理会社5、の協働で遂行される。
図1において、実線が製品の流れ、破線がリサイクル運営資金の流れ、二点鎖線がユーザー2から施工業者4への購入代金支払いの流れ、をそれぞれ示している。
【0021】
図2は本発明の実施形態に係るリサイクルフローF1における製品の取扱いを説明するための図である。
このリサイクルフローF1は、大きく二つの段階に分かれている。具体的には、購入ステップと、回収ステップとに大別できる。以下、それぞれのステップについて説明する。
【0022】
購入ステップでは、先ずメーカー1で製造された製品が施工業者4へ納入される(ステップS1、S2)。施工業者4へ納入された製品には、リサイクルの際に、その製品を識別するための情報(以下、ID情報と呼ぶ。)が割り当てられており、このID情報もメーカー1から施工業者4へ送られる。ID情報は、例えば8桁のシリアル番号などである。
【0023】
施工業者4へ納入された製品の管理費がメーカー1から管理会社3へ支払われる(ステップS3)。ここで、管理費には、製品をリサイクルするための資金に加えて、デポジットが含まれている。デポジットは、後述するように、ユーザー2が製品のリサイクル回収に協力した場合に、ユーザー2へ支払われる。
この管理費は、例えば製品のID情報と関連付けられて管理会社3で管理される。
【0024】
このように施工業者4に納入された製品は、ユーザー2が施工業者4から購入する(ステップS4)。
ユーザー2によって購入された製品は、施工業者4によってユーザー宅などの施設に設置される(ステップS5)。施工業者4は、製品設置の際、ユーザー宅などの施設に設置した製品のID情報をユーザー2に伝える。
【0025】
ユーザー宅などの施設での製品の設置が完了すると、施工業者4は、管理会社3へ、設置完了の報告を行う(ステップS6)。この設置完了の報告の際、ユーザー2に購入された製品のID情報も施工業者4から管理会社3へ送られる。管理会社3では、予めメーカー1から通知されている製品の内、何れのものがユーザー2に購入されたかを管理する。
【0026】
このようにして、メーカー1で製造された個々の製品が販売される度にその設置情報が管理会社3で記録される。ここで、設置情報とは、個々の製品のID情報だけでなく、製品の所有者名、製品の設置場所、複数設置する製品であればその個数などの情報を含む。
【0027】
次に、回収ステップ、つまり製品がユーザー宅などの施設で不要になった場合について、説明する。
ユーザー宅で製品が不要となった場合、先ずユーザー2が管理会社3へ製品の引き取り要望の連絡を行う(ステップS7)。この連絡の際、ユーザー2が廃棄を要望する製品のID情報を管理会社3へ伝える。
【0028】
この連絡を受けて、管理会社3は、処理会社5へユーザー宅から製品を引き取るよう依頼する(ステップS8)。この依頼の際、管理会社3は、処理会社5へリサイクルに伴う費用を支払うと共に、リサイクル対象の製品のID情報を処理会社5へ伝える。
【0029】
処理会社5は、ユーザー宅などの施設から製品を引き取り(ステップS9)、製品のリサイクルを行う(ステップS10)。このリサイクルの作業として、製品の分解作業、分別作業、有価金属の回収などを行うことに加えて、有害物質の回収が行われる。
【0030】
リサイクルなどの処理が完了すると、その報告が処理会社5から管理会社3へ行われる(ステップS11)。この報告を受けて、メーカー1から預かったお金、つまりデポジットが管理会社3からユーザー2へ支払われる(ステップS12)。
【0031】
このように、本実施形態に係るリサイクルフローF1では、メーカー1から預かったデポジットが、製品がリサイクル処理された後に管理会社3からユーザー2へ支払われるため、ユーザー2からの製品の回収率を上げることが期待できる。これにより、処理会社5は、有害物質を含む製品を集中的に回収することができる。よって、有害物質の拡散を防止でき、当該処理会社5によって、有害物質を纏めて処理することができる。
【0032】
〔2〕『リサイクルフロー』の他の構成例
図3は本実施形態に係るリサイクルフローの他の構成例を示す図である。
図1に示すリサイクルフローF1ではユーザー2が製品を施工業者4から購入することを前提にしていたが、図3のリサイクルフローF2は、管理会社3がユーザー2との取決めによって製品をユーザー2に提供することを特徴としている。以下、取決めとして、リース契約を例に説明する。
【0033】
具体的には、このリサイクルフローF2では、製品のユーザー2に対する対応、例えば製品の広告、商品説明、アフターサービス等を管理会社3が窓口となって統括して行っており、ユーザー2における製品利用が管理会社3を通さないと開始できない仕組みに構築されている。例えば、本実施形態のリサイクルフローF2では、ユーザー2は、製品を利用するために管理会社3と製品リースの契約を締結する必要がある。
【0034】
さらに、本実施形態では、契約終了の段階で、製品がユーザー宅から回収されるように構築されている。
【0035】
図3において、実線が製品の流れ、破線が運営資金の流れ、二点鎖線が管理会社3から施工業者4へ支払うお金の流れ、一点鎖線がユーザー2から管理会社3へ支払うリース契約に基づいて支払われるお金の流れ、を示している。
【0036】
図4は本発明の実施形態に係るリサイクルフローF2における製品の取扱いを説明するための図である。
このリサイクルフローF2は、大きく二つの段階に分かれている。具体的には、納入ステップと、回収ステップとに大別できる。以下、それぞれのステップについて説明する。
【0037】
納入ステップでは、先ずメーカー1で製造された製品は施工業者4へ納入される(ステップS21、S22)。施工業者4へ納入された製品には、リサイクルの際に、その製品を識別するためのID情報が割り当てられており、このID情報もメーカー1から施工業者4へ送られる。
【0038】
施工業者4へ納入された製品の管理費がメーカー1から管理会社3へ支払われる(ステップS23)。ここで、管理費には、製品をリサイクルするための資金に加えて、デポジットが含まれている。
この管理費は、製品のID情報と関連付けられて、管理会社3で管理される。
【0039】
このように施工業者4に納入された製品に関して、ユーザー2は、製品利用開始に先立って、管理会社3と製品のリース契約を結ぶ(ステップS24)。例えば、リース契約は、ユーザー2が製品の購入費用を施工業者4に支払うのではなく、ユーザー2の代わりに管理会社3が支払い、ユーザー2は管理会社3へ所定期間毎に料金を支払うことで、当該製品を利用することができる内容となっている。所定期間は、例えば、毎月などに設定される。
【0040】
このリース契約締結後、管理会社3は、施工業者4に対して製品をユーザー宅などの施設に設置するよう依頼する(ステップS25)。
【0041】
リース契約に基づいて、製品は、施工業者4によってユーザー宅などの施設に設置される(ステップS26)。施工業者4は、製品設置の際、ユーザー宅に設置した製品のID情報をユーザー2に伝える。
【0042】
ユーザー宅などの施設への製品の設置が完了すると、施工業者4は、管理会社3へ、設置完了の報告を行う(ステップS27)。この設置完了の報告の際、ユーザー宅などの施設に設置された製品のID情報も施工業者4から管理会社3へ送られる。
【0043】
メーカー1で製造された個々の製品がリース契約に基づいてユーザー宅に設置される度に、設置情報が管理会社3で記録される。
【0044】
このようにして、ユーザー宅で製品は利用に供される。ユーザー2はリース契約に基づいて、例えば月々、所定の料金を管理会社3へ支払う必要がある。この支払いは、契約期間が満了する迄、支払う必要がある。
【0045】
次に、回収ステップについて説明する。
本実施形態では、契約期間満了に伴う契約終了の段階で、製品回収の処理が開始される。ここで、契約の終了とは、ユーザー2が契約に基づいて所定の料金の支払いを滞り、契約が途中で解約されて、終了する場合も含む。
【0046】
契約が終了(ステップS28)すると、管理会社3は、処理会社5へユーザー宅などの施設から製品を引き取るよう依頼する(ステップS29)。この依頼の際、管理会社3は、処理会社5へリサイクルに伴う費用を支払うと共に、リサイクル対象の製品のID情報を処理会社5へ伝える。
【0047】
処理会社5は、ユーザー宅などの施設から製品を引き取り(ステップS30)、製品のリサイクルを行う(ステップS31)。このリサイクルの作業として、製品の分解作業、分別作業、有価金属の回収などを行うことに加えて、有害物質の回収が行われる。
【0048】
リサイクルなどの処理が完了すると、その報告が処理会社5から管理会社3へ行われる(ステップS32)。この報告を受けて、メーカー1から預かったお金、つまりデポジットが管理会社3からユーザー2へ支払われる(ステップS33)。
【0049】
このように、本実施形態に係るリサイクルフローF2では、製品がリース契約に基づいてユーザー宅に設置されているため、当該製品の所在やその状態を確実に把握することができる。したがって、リース契約終了に基づいて、処理会社5は、有害物質を含む製品を集中的に回収することができる。よって、有害物質を含む製品が放置され、当該有害物質の拡散を防止することができる。
【0050】
この新社会システム、つまりリサイクルフローF1,F2において、製品の状況を明確に管理するシステムが必要である。
このために、本実施形態に係る有害物質管理システムは考案されている。
以下、有害物質管理システムについて説明する。
【0051】
〔3〕本発明の実施形態に係る有害物質管理システム
(3−1)第1実施形態
図5は本発明の第1実施形態に係る有害物質管理システム100を示すブロック図である。
第1実施形態に係る有害物質管理システム100は、前述の第1のリサイクルフローF1に対応するものである。
このため、有害物質管理システム100は、管理装置10と、第1端末装置11と、第2端末装置12と、第3端末装置13と、を備え、各装置10〜13がネットワーク20を介して繋がっている。
【0052】
管理装置10は、管理会社3が管理するコンピュータであり、例えばサーバ装置として構成されている。
第1端末装置11は、施工業者4が利用するコンピュータである。
第2端末装置12は、ユーザー2が利用するコンピュータである。なお、図5では、第1端末装置11と第2端末装置12とが、それぞれ一つだけ描かれているが、これらの端末数は複数であってもよい。
第3端末装置13は、処理会社5が利用するコンピュータである。この第3端末装置13の数も一つに限定されるものではない。
【0053】
本実施形態に係る管理装置10は記憶部10Aを備え、この記憶部10Aには、図6に示すデータDが保存されている。
図6に示すデータDは、有害物質を含む製品を個々に管理するための情報である。図中の「管理番号」は前述のID情報に相当し個々の製品に割り当てられた固有の番号であり、「所有者」は有害物質を含む製品の所有者名であり、「所在地」は有害物質を含む製品が設置されている場所の情報であり、「型番」は製品番号であり、「数量」は当該所在地に設置されている製品数であり、「施工者」は製品を設置した業者名であり、「ステイタス」は製品の状態を示す情報である。なお、ステイタスとして、例えば、使用中の旨、回収完了の旨、リサイクル完了の旨、リユースされる旨などの情報が管理される。
【0054】
本実施形態の有害物質管理システム100は、図6に示すデータDを、各装置で更新可能に構成されていることを特徴としている。
本実施形態において、製品の「所在地」に関する情報として、地理情報システム(GIS: Geographic Information System)で管理されている情報を利用する。
本実施形態で利用する地理情報システムは、例えば、以下の構成(A)〜(D)を備えている。
(A)各製品は、GPS受信機と、このGPS受信機で識別された製品の位置情報、つまり製品の緯度と経度との情報をネットワークを介してGISのサーバへ送信する送信機と、を備えている。
(B)GISのサーバは、データベースを備えている。サーバは、製品の送信機から送られてくる各製品の位置情報を記憶する。
(C)GISのデータベースには、各製品の位置情報と、本実施形態の有害物質管理システムで管理されている製品のID情報とが、関連付けられている。
(D)GISは検索機能を有する。この検索機能で検索した結果を、地図上で一覧表示することができる。例えば、各製品の属性情報として、例えば有害物質名、その量などが含まれている場合には、それらをキーワードとして検索することも可能である。これにより、有害物質ごとに検索し、地図上でその位置を管理することができる。
【0055】
本発明の実施形態に係る有害物質管理システム100では、管理装置10が、さらに更新部10Bを備えている。
更新部10Bは、各製品の緯度と経度との情報を定期的に更新する。更新するタイミングは、毎日一回、毎月一回、毎年一回などであってもよい。
更新部10Bは、例えば、地理情報システム(GIS)のデータベースにアクセスして、「所在地」に関する情報を更新する。この際、製品に固有に割り当てられたID情報を基に、当該製品の正確な位置情報を地理情報システムから入手する。
【0056】
本実施形態に係る有害物質管理システム100によれば、製品の所在地を正確に把握することができる。これにより、回収効率を上げることが期待できる。
例えば、地震などの災害時でも、各製品の緯度・経度を把握しておくことで、正確な位置情報に基づいて製品を回収することが可能である。
さらに、非常に長く使う機器であれば、市町村合併などにより住所が変更することもあり得るが、緯度・経度は普遍であり、更新部が定期的に各製品の所在地情報を地理情報システム(GIS)を利用して更新するため、情報の訂正作業を省略することもできる。
【0057】
(3−2)第2実施形態
第2実施形態に係る有害物質管理システムは、前述の第2のリサイクルフローF2に対応するものである。即ち、製品がユーザー2と管理会社3とのリース契約に基づいて、ユーザー宅などの施設に製品が設置される。そして、このリサイクルフローF2では、リース契約が終了した段階で、製品のリサイクル作業が開始される。
このため、本実施形態に係る有害物質管理システム100Aでは、前述の有害物質管理システム100と異なり、管理装置が次のように構成されている。なお、管理装置以外の構成は、前述の第1実施形態と同様であるため、同じ構成についての説明は省略する。
【0058】
図7は本発明の第2実施形態の有害物質管理システム100Aの管理装置10′を示すブロック図である。
本実施形態の管理装置10′は、前述の管理装置10の構成に加えて、リース契約情報を記憶する契約記憶部10Cと、リース契約判断部10Dとを備えている。ここで、リース契約情報とは、製品毎に、契約の始期、契約の終期、各月の支払い期限などの情報を含む。
【0059】
ここで、リース契約判断部10Dは、リース契約が有効に存続するか、契約が終了したか判断する。即ち、リース契約判断部10Dは、個々の製品に関する契約が契約期間を経過したか、判断する。この判断処理は、例えば所定期間毎に行われる。所定期間とは、例えば、毎週月曜日、毎月一回、毎年一回のスパンであってもよい。
【0060】
契約期間が満了、つまり契約期間の終期を経過した場合、管理装置10′から第3端末装置13へ、リサイクル作業開始の情報、つまり回収情報がネットワーク20を介して自動送信される。これにより、リサイクル会社である処理会社5では、その第3端末装置13で管理装置10′から回収情報を受信して、作業を開始する。
ここで、回収情報としては、回収すべき製品の所在地情報、所有者名、ID情報などが、管理装置10′から第3端末装置13へ送られる。
【0061】
また、この判断において、ユーザー2の支払い状況が考慮される。この支払い状況に関する情報が、リース契約情報に関連付けられて管理される。具体的には、個々の契約者毎に支払い状況が管理される。そして、ある一定の条件に合致、例えば、数ヶ月不払いである場合、料金未納に基づいて契約が終了し、この場合も、管理装置10′から第3端末装置13は、当該ユーザー宅の製品を回収するよう、作業開始の情報が送られる。この場合、管理装置10′の契約記憶部10Cには、前述のリース契約情報に加えて、製品のリース契約毎に、各ユーザー2の「料金の支払い状況」が情報として管理される。例えば、料金の支払い状況として、支払い済み、未納の旨の情報が管理される。管理装置10′では、例えば、未納状態が数ヶ月続いたか判断し、該当する場合に、処理会社用の第3端末装置13へリサイクル開始の情報、つまり回収情報をネットワーク20を介して自動送信する。
【0062】
第2実施形態に係る有害物質管理システム100Aは、リサイクルフローF2として、製品の取り扱いがリース契約によって管理できるため、つまり、ユーザー2の自由な意思で廃棄することはできないため、有害物質を含む製品の回収効率が、従来に技術に比べて格段に向上することができる。これにより製品がユーザー2にとって不要となったとしても、当該有害物質の拡散を防止することができる。
【0063】
〔4〕実施例
例えば、前述のリサイクルフローF2において製品として太陽光発電システムを取り扱う。
本実施例では、太陽光発電システムとして、Cd,Se等の有害物質を含む太陽電池を搭載したものを利用することができる。本リサイクルフローF2の実行に当たり、有害物質管理システム100Aによって、当該有害物質を含む製品の回収を確実に行える。これにより、Cd,Se等の有害物質の拡散を防止できる。
また、このようなCd,Se等の有害物質の管理を製品製造後、市場に出た段階から排気処分される段階まで一貫して管理することができる。このため、Cd,Se等の有害物質の使用の自由度を広げることができる。また、通常、Cd,Se等の有害物質を含めずに製造した太陽電池は高価であるが、Cd,Se等の有害物質を利用することで、太陽電池の製造コストを低減させることができる。これは、太陽光発電システムの販売価格を低減させることができ、環境エコロジーの普及促進にも貢献することができる。
さらに、従来、メーカーが管理責任に留意して有害物質の使用を控えていたが、本発明によれば、処理業者の管理まで保証されるので、メーカーは安心して有害物質を使用できる。これにより製品も安価になることを期待することができる。
【0064】
以上説明したが、本発明は発明の趣旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施をすることができる。
【0065】
本発明の有害物質管理システム100,100Aを適用できるリサイクルフローは前記説明に限定されるものではない。
また、本発明は、太陽光発電システムなどの大型製品の利用に限定されるものではないことは勿論である。
また、本発明の判断部は、契約期間経過の判断に代えて、製品の使用状況、製品の交換時期又は廃棄時期を定期的に判断し、製品の回収を決定するように構成してもよい。例えば、未使用期間が数ヶ月経過した段階、交換時期や廃棄時期に至った場合に、製品回収が決定される。これらの使用状態、交換時期や廃棄時期の情報も記憶部10Aで、製品毎に管理されるように構成されてもよい。
【0066】
上記説明では、製品がGPS受信機と送信機とを備えた構成を示したが、GPS受信機及び送信機に代えて、各製品がICチップやバーコードなどを備えてもよい。この場合、ICチップやバーコードから読み取れる情報が、管理装置の記憶部10Aで管理される。例えば、その情報には、有害物質の種類、量のデータなどが含まれる。
【符号の説明】
【0067】
1 メーカー
2 ユーザー
3 管理会社
4 施工業者
5 処理会社
10,10′ 管理装置
10A 管理装置の記憶部
10B 更新部
10C 契約記憶部
10D リース契約判断部
11 第1端末装置
12 第2端末装置
13 第3端末装置
20 ネットワーク
100,100A 有害物質管理システム
D データ
F1,F2 リサイクルフロー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有害物質を含む製品に関する管理会社とユーザーとの取決めで上記ユーザーが使用する上記製品の所在と回収とを管理する有害物質管理システムであって、
管理装置と、ネットワークを介して上記管理装置に繋がり上記製品の回収作業を行う処理会社用の端末装置と、を備え、
上記管理装置が、
上記製品の設置場所の情報を記憶する第1記憶部と、
上記取決めの情報を記憶する第2記憶部と、
上記第2記憶部の情報に基づいて上記製品を回収するか否か判断する判断部と、を備え、
上記判断部が上記製品を回収すると判断した場合、上記管理装置は、上記ネットワークを介して上記処理会社用の端末装置へ、上記ユーザーから上記製品を回収すべき旨の回収情報を送信する、有害物質管理システム。
【請求項2】
前記第1記憶部が記憶する設置場所の情報として、地理情報システムを用いることを特徴とする、請求項1に記載の有害物質管理システム。
【請求項3】
前記ユーザーの製品使用がリースであり、前記取決めの情報が、前記ユーザーの前記管理会社への支払い状況の情報を含み、
前記判断部は上記取決めの情報に基づいて前記ユーザーの料金の支払いが未納である場合、前記製品を回収すると判断することを特徴とする、請求項1又は2に記載の有害物質管理システム。
【請求項4】
有害物質を含む製品に関する管理会社とユーザーとの取決めで上記ユーザーが使用する上記製品の所在と回収とを管理する装置であって、
上記製品の設置場所の情報を記憶する第1記憶部と、
上記取決めの情報を記憶する第2記憶部と、
上記第2記憶部の情報に基づいて上記製品を回収するか否か判断する判断部と、を備えたことを特徴とする、管理装置。
【請求項5】
前記第1記憶部が記憶する設置場所の情報として、地理情報システムを用いることを特徴とする、請求項4に記載の管理装置。
【請求項6】
前記ユーザーの製品使用がリースであり、前記取決めの情報は、前記ユーザーの前記管理会社への支払い状況の情報を含み、
前記判断部は上記取決めの情報に基づいて前記ユーザーの料金の支払いが未納である場合、前記製品を回収すると判断することを特徴とする、請求項4又は5に記載の管理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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