説明

管端溶接部の補修構造及び管端溶接部の補修方法

【課題】シェル内を流れる液体の、管板外への漏洩及び伝熱管内への漏洩のいずれをも防止した、管端溶接部の補修構造及び管端溶接部の補修方法を提供する。
【解決手段】流体を流動させるための筒状のシェルと、シェルの開口部に設けられた管板3と、シェル内に配置され、かつ管板3の貫通孔に内挿された伝熱管4とを有し、伝熱管4がその端部にて溶接により管板3にシール材11で固定されてなる管端溶接部の補修構造である。筒部21とその一端側に設けられてその外側に張り出す鍔部22とからなるキャップ部材20が、筒部21が伝熱管4に内挿され、鍔部22がシール材11を覆って配置され、鍔部22が管板3に液密に溶接されてなるとともに、筒部21が伝熱管4に液密に溶接されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管端溶接部の補修構造及び管端溶接部の補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学工業等における各種プラントでは、多管式熱交換器(シェルアンドチューブ熱交換器)や多管式反応器(シェルアンドチューブ反応器)が多く用いられている。このような多管式熱交換器や多管式反応器としては、流体を流動させるための筒状のシェルと、該シェルの開口部に設けられた管板と、前記シェル内に配置され、かつ前記管板に形成された貫通孔に内挿されて該管板に保持された伝熱管(チューブ)と、を有した構造が一般的である。
【0003】
このような構造において伝熱管は、通常はその端部が溶接によって前記管板に固定されている。すなわち、伝熱管の端部外周面と管板の貫通孔内壁面との間隙は、溶接によるシール材によって覆われ、気密に封止されている。
ところで、前記多管式熱交換器や多管式反応器では、使用に伴ってシール材で覆われた溶接部が劣化したり、不測の衝撃を受けることなどにより、シール材にクラックや亀裂を生じ、例えば伝熱管の内側にシェル内を流れる液体(流体)が、クラックや亀裂から漏洩してしまうことがある。
【0004】
従来、このような溶接部におけるクラック等を補修するには、単に漏洩部を再度溶接し、クラック等を塞いでいる。
また、漏洩が生じている溶接部を覆うとともに、この溶接部で固定された伝熱管の開口を適宜なカバー部材で覆ったり、該当する伝熱管を引き抜き、管板に残った貫通孔に栓をするといったこともなされている。
また、円筒状の耐火断熱部材を該当する伝熱管内に挿入し、その端部で伝熱管の端部をU字型に包むような形状に形成して取り付ける、手法も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−79785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、単に漏洩部を再度溶接する手法では、クラック等の内部に染み込んで残存していた液体が溶接時の熱で流動し染み出てくることなどにより、再溶接が健全になされず、再溶接後もクラック等からの漏洩が再発し易くなることがある。
また、伝熱管をカバー部材で覆ったり、伝熱管を引き抜いた後貫通孔に栓をする手法では、熱交換や反応に寄与する有効な伝熱管の本数が減ってしまい、熱交換器又は反応器としての性能が低下してしまう。
【0007】
また、特許文献1の技術では、例えば耐火断熱部材によってシール材を覆うことで、シール材を保護することが可能になっている。しかし、クラック等を通って伝熱管の内側、すなわち伝熱管内に液体が流入してしまうことについては、これを防止することができない。
【0008】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、熱交換器又は反応器としての性能を低下させることなく、シェル内を流れる液体の、管板外への漏洩及び伝熱管内への漏洩のいずれをも防止した、管端溶接部の補修構造、及びこのような構造を形成することができる、管端溶接部の補修方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の管端溶接部の補修構造は、流体を流動させるための筒状のシェルと、該シェルの少なくとも一方の開口部に設けられた管板と、前記シェル内に配置され、かつ前記管板に形成された貫通孔に内挿されて該管板に保持された伝熱管と、を有し、前記伝熱管がその端部にて溶接により前記管板にシール材で固定されてなる管端溶接部の補修構造であって、
筒部と該筒部の一端側に設けられて該筒部の外側に張り出す鍔部とからなるキャップ部材が、前記筒部が前記伝熱管に内挿され、かつ前記鍔部が前記シール材を覆って配置され、
前記鍔部が前記管板に液密に溶接されてなるとともに、前記筒部が前記伝熱管に液密に溶接されてなることを特徴としている。
【0010】
この管端溶接部の補修構造によれば、キャップ部材の鍔部が管板に液密に溶接されてなるので、シェル内を流れる液体がシール材のクラック等に染み込んでも、新たな溶接によるシール材により、液体の管板外への漏洩が防止される。また、鍔部が元のシール材を覆って配置されており、したがってこの鍔部についての溶接は元のシール材を避けてなされているので、該シール材のクラック等の内部に液体が残存していても、この液体に影響されることなく、新たな溶接が良好になされる。さらに、筒部が伝熱管に液密に溶接されてなるので、シェル内を流れる液体がシール材のクラック等に染み込んでも、筒部と伝熱管との間の溶接部によって伝熱管内への液体の漏洩が防止される。
【0011】
また、前記管端溶接部の補修構造においては、前記鍔部の板厚が前記筒部の板厚より厚いのが好ましい。
このようにすれば、鍔部ではその側端面の面積が大きくなることで管板との間の溶接がし易くなる。また、筒部は薄くなることで、伝熱管との間の溶接が容易になる。
【0012】
また、前記管端溶接部の補修構造において、前記キャップ部材は、前記管板又は前記伝熱管と同じ材質であるのが好ましい。
このようにすれば、鍔部と管板とが同じ材質になるか、又は筒部と伝熱管とが同じ材質になるので、同じ材質になった組での溶接が容易になる。
【0013】
本発明の管端溶接部の補修方法は、流体を流動させるための筒状のシェルと、該シェルの少なくとも一方の開口部に設けられた管板と、前記シェル内に配置され、かつ前記管板に形成された貫通孔に内挿されて該管板に保持された伝熱管と、を有し、前記伝熱管がその端部にて溶接により前記管板にシール材で固定されてなる管端溶接部の補修方法であって、
筒部と該筒部の一端側に設けられて該筒部の外側に張り出す鍔部とからなるキャップ部材を用意し、このキャップ部材の前記筒部を前記伝熱管に内挿するとともに、前記鍔部を、前記シール材を覆った状態に配置し、
その後、前記鍔部を前記管板に液密に溶接するとともに、前記筒部を前記伝熱管に液密に溶接することを特徴としている。
【0014】
この管端溶接部の補修方法によれば、キャップ部材の鍔部を管板に液密に溶接するので、シェル内を流れる液体がシール材のクラック等に染み込んでも、新たな溶接によるシール材により、液体の管板外への漏洩を防止することができる。また、鍔部を、元のシール材を覆った状態で配置し、この鍔部についての溶接を元のシール材を避けて行っているので、該シール材のクラック等の内部に液体が残存していても、この液体に影響されることなく、新たな溶接を良好に行うことができる。さらに、筒部を伝熱管に液密に溶接するので、シェル内を流れる液体がシール材のクラック等に染み込んでも、筒部と伝熱管との間の溶接部によって伝熱管内に液体が漏洩するのを防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の管端溶接部の補修構造及び管端溶接部の補修方法にあっては、溶接部にクラック等が生じた伝熱管に対して、蓋をしたりこれを引き抜いて栓をすることなく、そのまま活用するので、熱交換器又は反応器としての性能が低下するのを回避することができる。また、シェル内を流れる液体の、管板外への漏洩及び伝熱管内への漏洩のいずれをも防止することができるため、液体の漏洩に起因する不都合を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の補修構造及び補修方法が適用される、多管式熱交換器の一例の概略構成を示す図である。
【図2】(a)は伝熱管の端部と管板との間が溶接によるシール材11で覆われている状態を示す側断面図、(b)は(a)の要部拡大図である。
【図3】(a)はキャップ部材の概略構成を示す側断面図、(b)は補修対象となる溶接部にキャップ部材を配置した状態を示す図、(c)は溶接を行った補修を終了した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の管端溶接部の補修構造及び管端溶接部の補修方法について詳しく説明する。
図1は、本発明の管端溶接部の補修構造及び管端溶接部の補修方法が適用される、多管式熱交換器(シェルアンドチューブ熱交換器)の一例の概略構成を示す図である。図1中符号1は多管式熱交換器である。なお、多管式反応器(シェルアンドチューブ反応器)も、その基本的構成は図1に示す多管式熱交換器とほぼ同様である。
【0018】
多管式熱交換器1は、円筒状のシェル2と、該シェル2の両方の開口部にそれぞれ設けられた円板状の管板3、3と、前記シェル2内に配置され、かつ前記管板3、3にそれぞれ保持された多数(数百〜数万)本の伝熱管(チューブ)4と、を有したものである。
シェル2には、その底部(一方の開口側)に、前記管板3の一方を覆って略球面状の底体5が気密に連結され、その上部(他方の開口側)に、前記管板3の他方を覆って球面状の蓋体6が気密に連結されている。これら底体5及び蓋体6は、その内部が空洞になっており、これら空洞部内に前記伝熱管4のそれぞれの端部が開口している。したがって、前記伝熱管4は、その一方の端部側が底体5の空洞部で連通しており、他方の端部側が蓋体6の空洞部で連通している。
【0019】
このような構成のもとに、シェル2の内部、すなわちシェル2内でかつ伝熱管4の外側には、シェル2の底部側に設けられた流入管7から加熱媒体となる液体が流入し、シェル2の上部側に設けられた流出管8から流出するようになっている。なお、シェル2を流れる液体については、必要に応じ、その流れを逆にしてもよい。
また、多数の伝熱管4には、蓋体6に設けられた導入管9から被熱交換体が導入され、さらに多数の伝熱管4を通った被熱交換体は底体5に設けられた導出管10から導出されるようになっている。なお、伝熱管4を流れる被熱交換体についても、必要に応じ、その流れを逆にしてもよい。
【0020】
ここで、伝熱管4を流れる被熱交換体は、各種の液体や気体からなっており、伝熱管4を介してシェル2内を流れる液体(熱媒体)と熱交換し、加熱(又は冷却)されるようになっている。また、液体は、例えば硝酸塩などを溶解した水溶液が用いられる。これは、沸点上昇を起こさせ、100℃を超える高温でも沸騰しないようにするためである。なお、伝熱管4内に液体(加熱媒体)を流し、シェル2内に被熱交換体を流すようにしてもよい。また、多管式反応器では、被熱交換体に代わって反応物が流れるようになる。
【0021】
このような多管式熱交換器1において、伝熱管4は例えば外径が30mm程度のもので、管板3に形成された貫通孔(図示せず)に内挿され、その端部が溶接によって管板3に気密(液密)に固定されている。図2(a)に示すように、伝熱管4の端部の外周面と、管板3の貫通孔3aの内壁面との間隙Sが、溶接によるシール材11で覆われて液密に封止され、管端溶接部が形成されている。ここで、間隙Sの幅は例えば0.1mm〜0.25mm程度となっており、シェル2内を流れる液体は表面張力によってこの間隙S内に入り込み易くなっている。
【0022】
この溶接によるシール材11には、前述したように劣化等によってクラックや亀裂等が形成されることがある。これらクラック等には、図2(b)に示すように、前記間隙S内から管板3側に延びてシール材11の外面に開口するもの(クラックC1)と、間隙S内から伝熱管4側に延びてシール材11の外面に開口するもの(クラックC2)とがある。従来では、このようなクラックC1、C2が存在すると、間隙S内に入り込んだ液体が、これらクラックC1、C2に染み込み、その後染み出すことで液体の漏洩が生じていた。
【0023】
そこで、このようなシール材11に生じたクラック等に起因する液体の漏洩を防止するべく、本実施形態では伝熱管4の端部(管端)における溶接部の補修を行うため、まず、図3(a)に示すようなキャップ部材20を用意する。このキャップ部材20は、円筒状の筒部21と、該筒部21の一端側に設けられて該筒部21の外側に張り出す鍔部22とからなっている。
【0024】
筒部21は、前記伝熱管4の内径より僅かに小さい外径で形成されたもので、該伝熱管4に内挿された際、伝熱管4の内壁面との間に、クリアランスとしての間隙(図示せず)を形成するようになっている。また、この筒部21の厚さ(板厚)については、後述するようにその外面と伝熱管4の内壁面との間を電気溶接(抵抗溶接)することから、比較的薄いものが好ましく、具体的には、0.25mm〜1.0mm程度とするのが好ましい。0.25mm未満では、薄くなる分強度が低下し、溶接による液密性が確保できなくなるおそれがあるからである。また、1.0mmを超えると、厚くなる分抵抗が増大し、溶接が難しくなり、さらに、筒部21の開口面積が狭くなる分、被熱交換体の流動性が低下するからである。
【0025】
鍔部22は、筒部21に連続してその一端縁から外方(筒部21の半径方向)に張り出した円環状のもので、その張り出し長さが、例えば4mm程度に形成されたものである。ただし、この張り出し長さは、後述するように図2(a)、(b)に示したシール材11の上面全域を覆うことができる長さとされる。したがって、伝熱管4の厚さに、筒部21と伝熱管4との間の間隙(図示せず)と、前記間隙Sと、シール材11が管板3に被った長さとを加え、さらにマージンを加えた長さが、最小値とされる。
【0026】
また、この鍔部22の厚さ(板厚)については、後述するようにその側端面22aと管板3との間で新たに溶接を行うため、側端面22aの高さ(厚さ)が十分に確保されているのが好ましく、したがって少なくとも前記筒部21の板厚より厚く形成されているのが好ましい。具体的には、1mm〜3mm程度とされる。1mm未満では、溶接するための側端部22aの面積が十分とはならず、溶接が難しくなるからである。また、3mmを超えると、キャップ部材20が不必要に大きくなるため、コスト等の点で不利になるからである。
【0027】
また、このような構成からなるキャップ部材20は、前記管板3又は前記伝熱管4と同じ材質で形成されているのが好ましい。ただし、通常管板3と伝熱管4とは同じ材質で形成されているため、キャップ部材20は、管板3及び伝熱管4と同じ材質で形成されているのが好ましいことになる。このように管板3及び伝熱管4と同じ材質で形成されていれば、後述するように溶接を行った際、キャップ部材20と管板3との間の溶接も、キャップ部材20と伝熱管4との間の溶接も、共に容易になり、好ましい。キャップ部材20の材質として具体的には、管板3や伝熱管4の材質となる、炭素鋼や低クロムモリブデン鋼などが好適とされる。
【0028】
このような構成のキャップ部材20を用意したら、このキャップ部材20を用いてクラック等が生じた溶接部を補修すべく、まず、伝熱管4を流れる被熱交換体を抜き、その状態で底体5又は蓋体6を取り外し、溶接部のシール材11を露出させる。そして、図3(b)に示すように補修対象となる溶接部を有する伝熱管4に、キャップ部材20の筒部21を内挿するとともに、鍔部22を、補修対象となる溶接部のシール材11を覆った状態で伝熱管4及び管板3上に載せる(配置する)。
【0029】
次いで、図3(c)に示すように鍔部22の側端面22aと管板3の表面(鍔部22側に露出する面)との間を、鍔部22の側端面22aの全周に亘って気密(液密)に溶接する。溶接については、先に行った溶接法、すなわちシール材11を盛った溶接法と同じ溶接法が採用される。このようにして溶接を行うことにより、管板3の表面と鍔部22の側端面22a及びその近傍との間には、元のシール材11の外側部を覆って新たなシール材12が盛られる。
【0030】
続いて、筒部21の外面を伝熱管4の内面に、例えば抵抗溶接法によって液密に溶接する。抵抗溶接としては、筒部21を伝熱管4側に押し付けつつ、これらの間に電流を流して抵抗熱(ジュール熱)を発生させ、この抵抗熱で加熱することにより、溶接箇所を溶着する方法が採用可能である。例えば、伝熱管4をアースに接続し、筒部21の内面に抵抗溶接用の電極を押し当て、その状態で筒部21の全周に亘って電流を流しつつライン状に溶接を行うことにより、筒部21の外面をその全周に亘って、伝熱管4の内面に液密に溶接する。
【0031】
本実施形態では、このような筒部21の全周に亘る抵抗溶接を、筒部21の異なる高さ位置で2回行うことにより、図3(c)に示すように2本の溶接ラインL1、L2を形成している。これにより、仮に一方の溶接ラインで液密性が破れても、他方の溶接ラインによって液密性を確保することができる。
このようにして溶接を終了することで、本発明の一実施形態となる管端溶接部の補修構造が得られる。なお、前記の溶接ラインについては、1本でもよく、3本以上でもよいのはもちろんである。
【0032】
このようにして形成された管端溶接部の補修構造にあっては、キャップ部材20の鍔部22がシール材11を覆って管板3に液密に溶接されているので、シェル2内を流れる液体が図2(b)に示したシール材11のクラックC1に染み込んでも、図3(c)に示す新たな溶接によるシール材12により、液体の管板3外への漏洩を確実に防止することができる。すなわち、新たな溶接によるシール材12により、前記クラックC1の露出した開口を封止することができ、したがってこのクラックC1からの液体の漏洩を確実に防止することができる。
【0033】
また、鍔部22が元のシール材11を覆って管板3上に配置されており、したがってこの鍔部22についての溶接が元のシール材11を避けてなされているので、該シール材11のクラックC1、C2の内部に液体が残存していても、この液体に影響されることなく、該鍔部22と管板3との間の新たな溶接を良好に行うことができる。
さらに、筒部21が伝熱管4に液密に溶接されているので、シェル2内を流れる液体が図2(b)に示したシール材11のクラックC2に染み込んでも、図3(c)に示した筒部21と伝熱管4との間の溶接ラインL1、L2により、伝熱管4内への液体の流入(漏洩)を確実に防止することができる。すなわち、前記クラックC2から伝熱管4の内側に液体が流入しても、溶接ラインL1、L2が形成されていることにより、流入した液体が伝熱管4と筒部21との間を通り抜け、伝熱管4内に流入するのを確実に防止することができる。
【0034】
また、このような補修構造を形成する管端溶接部の補修方法にあっては、元の状態を維持したまま、単にキャップ部材20を用いて溶接を行うことで、クラック等が生じた溶接部を容易に補修し、液体の漏洩を確実に防止することができる。
よって、本実施形態の管端溶接部の補修構造及び管端溶接部の補修方法によれば、溶接部にクラック等が生じた伝熱管4に対して、蓋をしたりこれを引き抜いて栓をすることなく、そのまま活用することができるので、熱交換器(又は反応器)としての性能が低下することを回避することができる。また、シェル2内を流れる液体の、管板3外への漏洩及び伝熱管4内への漏洩のいずれをも防止することができるため、液体の漏洩に起因する不都合を防止することができる。
【0035】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0036】
1…多管式熱交換器、2…シェル、3…管板、3a…貫通孔、4…伝熱管、11…シール材、12…シール材、20…キャップ部材、21…筒部、22…鍔部、C1、C2…クラック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を流動させるための筒状のシェルと、該シェルの少なくとも一方の開口部に設けられた管板と、前記シェル内に配置され、かつ前記管板に形成された貫通孔に内挿されて該管板に保持された伝熱管と、を有し、前記伝熱管がその端部にて溶接により前記管板にシール材で固定されてなる管端溶接部の補修構造であって、
筒部と該筒部の一端側に設けられて該筒部の外側に張り出す鍔部とからなるキャップ部材が、前記筒部が前記伝熱管に内挿され、かつ前記鍔部が前記シール材を覆って配置され、
前記鍔部が前記管板に液密に溶接されてなるとともに、前記筒部が前記伝熱管に液密に溶接されてなることを特徴とする管端溶接部の補修構造。
【請求項2】
前記鍔部の板厚が前記筒部の板厚より厚いことを特徴とする請求項1記載の管端溶接部の補修構造。
【請求項3】
前記キャップ部材は、前記管板又は前記伝熱管と同じ材質であることを特徴とする請求項1又は2に記載の管端溶接部の補修構造。
【請求項4】
流体を流動させるための筒状のシェルと、該シェルの少なくとも一方の開口部に設けられた管板と、前記シェル内に配置され、かつ前記管板に形成された貫通孔に内挿されて該管板に保持された伝熱管と、を有し、前記伝熱管がその端部にて溶接により前記管板にシール材で固定されてなる管端溶接部の補修方法であって、
筒部と該筒部の一端側に設けられて該筒部の外側に張り出す鍔部とからなるキャップ部材を用意し、このキャップ部材の前記筒部を前記伝熱管に内挿するとともに、前記鍔部を、前記シール材を覆った状態に配置し、
その後、前記鍔部を前記管板に液密に溶接するとともに、前記筒部を前記伝熱管に液密に溶接することを特徴とする管端溶接部の補修方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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