説明

管端部の超音波探傷装置

【課題】管端部と超音波探触子との間に接触媒質を安定して介在させることにより、精度の良い超音波探傷を可能とする管端部の超音波探傷装置を提供する。
【解決手段】超音波探傷装置100は、管Pの端部の下方に対向配置された超音波探触子1と、超音波探触子が収納されると共に、周方向に回転する管に追従する探触子ホルダー2とを備える。探触子ホルダーは、超音波探触子と管端部との間の空隙を囲繞して、内部に接触媒質Wを滞留させるための接触媒質滞留部を具備する。接触媒質滞留部は、内部に接触媒質が供給される接触媒質滞留部本体21と、該本体と連通するように該本体の上側に取り付けられた環状の蛇腹部22と、蛇腹部の上側に取り付けられ、少なくとも上面が平坦な水平面とされた環状のスペーサ23とを具備する。接触媒質滞留部本体は、超音波探触子の超音波送受信面に向けて接触媒質を噴出する接触媒質噴出ノズルを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管等の管の端部を超音波探傷する装置に関する。特に、本発明は、管端部と超音波探触子との間に接触媒質を安定して介在させることにより、精度の良い超音波探傷を可能とする管端部の超音波探傷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼管等の管の非破壊検査方法として、超音波探傷法が広く適用されている。この超音波探傷法では、管と超音波探触子との間に水等の接触媒質を介在させて、超音波探触子から送信した超音波を管に入射させると共に、管で反射した超音波を超音波探触子で受信している。
【0003】
ここで、水平方向に配置された管の下方に超音波探触子を配置する場合、図1に示すように、水槽T内に蓄えられた水Wに超音波探触子1を浸漬させると共に、管Pの下面を部分的に浸漬させ、管Pを軸方向に搬送すると共に管Pを周方向に回転させて超音波探傷する方法が公知である(例えば、非特許文献1参照)。
斯かる方法によれば、管Pと超音波探触子1との間に接触媒質としての水Wを安定して介在させることができるため、精度の良い超音波探傷が可能である。
【0004】
しかしながら、図1に示す構成では、水槽T外の少なくとも2点で管Pを支持するため、2点で支持できない管端部については、水槽T内の水Wに浸漬させた状態で超音波探傷することができないという問題がある。従って、図1に示す構成は、専ら管端部を除く管中央部を超音波探傷する際に用いられる構成である。
【0005】
一方、管端部の超音波探傷装置として、超音波探触子と、周方向に回転する管に前記超音波探触子を追従させるための追従装置とを備えた超音波探傷装置が公知である(例えば、特許文献1参照)。
管端部を超音波探傷するための超音波探触子を水平方向に配置された管の上方に配置する場合には、例えば、超音波探触子と管端部との間に接触媒質を垂れ流す構造を採用することが考えられる。しかしながら、超音波探触子を管の下方に配置する場合に同様の構造を採用することはできない。管端部を超音波探傷するための超音波探触子を管の下方に配置する場合には、例えば、図1に示すような水槽を用いると共に、管の支持構造や追従装置を水槽内の水に浸漬させる構成を採用することが考えられる。しかしながら、このような構成は、大がかりになる上、堅固な防水構造が必要であるため、メンテナンス性が低下したり、コストが嵩み、実用的ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−139191号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「超音波探傷シリーズ(III) 継目無鋼管の超音波探傷法」、社団法人日本鉄鋼協会、昭和63年4月15日、p.95−96
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、斯かる従来技術に鑑みなされたものであり、管端部と超音波探触子との間に接触媒質を安定して介在させることにより、精度の良い超音波探傷を可能とする管端部の超音波探傷装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明に係る超音波探傷装置は、水平方向に配置された管の端部の下方に対向配置され、前記管の端部に向けて超音波を送受信する超音波探触子と、前記管の端部の下方に対向配置され、前記超音波探触子が収納されると共に、周方向に回転する前記管に追従する探触子ホルダーとを備える。前記探触子ホルダーは、前記超音波探触子と前記管の端部との間の空隙を囲繞して、内部に接触媒質を滞留させるための接触媒質滞留部を具備する。前記接触媒質滞留部は、内部に接触媒質が供給される接触媒質滞留部本体と、前記接触媒質滞留部本体と連通するように前記接触媒質滞留部本体の上側に取り付けられ、上下方向に伸縮自在の環状の蛇腹部と、前記蛇腹部の上側に取り付けられ、少なくとも上面が平坦な水平面とされた環状のスペーサとを具備する。前記接触媒質滞留部本体は、前記超音波探触子の超音波送受信面に向けて接触媒質を噴出する接触媒質噴出ノズルを具備する。
【0010】
本発明に係る超音波探傷装置によれば、管端部の下方に対向配置され、超音波探触子を収納する探触子ホルダーが、超音波探触子と管端部との間の空隙を囲繞して内部に接触媒質を滞留させるための接触媒質滞留部を具備する。この接触媒質滞留部が具備する接触媒質滞留部本体に接触媒質が供給されると、接触媒質滞留部本体に連通する環状の蛇腹部に接触媒質が流通する。この蛇腹部に流通した接触媒質は、蛇腹部に取り付けられた環状のスペーサに流通して、管端部に接触することになる。
ここで、環状のスペーサは、少なくとも上面が平坦な水平面とされているため、接触媒質滞留部本体に供給する接触媒質の流量を適切に調整することにより、接触媒質の表面張力によって接触媒質がスペーサの上面を超えて盛り上がった膜が形成される。この接触媒質の膜が管端部に接触することにより、超音波探触子から送信された超音波は、接触媒質滞留部本体内部の接触媒質、蛇腹部内部の接触媒質、及び前記膜を介して管端部に入射する。管端部で反射した超音波は、前記膜、蛇腹部内部の接触媒質、及び接触媒質滞留部本体内部の接触媒質を介して超音波探触子で受信される。
探触子ホルダーは、周方向に回転する管に追従する(上下方向及び水平方向についての管との位置関係を一定に保つように制御される)。さらに、蛇腹部は上下方向に伸縮する。このため、管に曲がりが生じていたり、管の断面が真円でなかったとしても、接触媒質の膜は、常に管端部に接触し、且つ、乱れることが抑制されるため、管端部と超音波探触子との間に接触媒質が安定して介在することになる。これにより、精度の良い超音波探傷が可能となる。
【0011】
ここで、従来より超音波探触子を接触媒質に浸漬させる方式の超音波探傷装置においては、超音波探触子の超音波送受信面に気泡が付着し、この気泡によって超音波が散乱することで、探傷精度が低下する虞があった。従来は、1本の管の探傷が終了する毎に、超音波探触子の超音波送受信面に付着した気泡を治具を用いて除去するなどの対応をとっていた。しかしながら、オンラインで超音波探傷装置を使用することを考えると、サイクルタイムの制約があるため、1本の管の探傷が終了する毎に治具を用いた気泡の除去工程を設けることは困難である。また、本発明に係る超音波探傷装置のように、スペーサの上面を超えて盛り上がった膜を管端部に接触させて探傷する構成では、接触媒質の膜を乱さないように接触媒質滞留部本体に供給する接触媒質の流量を比較的小さく設定する必要がある。さらに、本発明に係る超音波探傷装置のように、探触子ホルダーが管に追従する構成では、追従性能を低下させないように接触媒質滞留部本体の容積を比較的小さく設定する必要があるという点でも、接触媒質滞留部本体に供給する接触媒質の流量を比較的小さくせざるを得ない。このため、いったん超音波探触子の超音波送受信面に付着した気泡は、接触媒質滞留部本体に供給する接触媒質の流れによっては剥離し難い。
そこで、本発明の接触媒質滞留部本体は、超音波探触子の超音波送受信面に向けて接触媒質を噴出する接触媒質噴出ノズルを具備する。この接触媒質噴出ノズルにより、超音波探触子の超音波送受信面に向けて接触媒質が噴出されるため、超音波探触子の超音波送受信面に付着した気泡が剥離、除去され易く、精度の良い超音波探傷が可能となる。また、接触媒質噴出ノズルから接触媒質を噴出するだけで付着した気泡を効率良く除去させることができるため、本発明に係る超音波探傷装置をオンラインで使用し易いという利点も得られる。
【0012】
好ましくは、前記接触媒質滞留部は、前記スペーサの下面に取り付けられ、前記蛇腹部の内部に嵌め込まれる筒状部材を更に具備する。
【0013】
斯かる好ましい構成によれば、蛇腹部の内部(特に、蛇腹部の折り畳み部分)に滞留する可能性のある接触媒質中の気泡が、蛇腹部の折り畳み部分に到達することなく、筒状部材の内面に沿って上昇し易くなる。仮に、接触媒質滞留部が、この筒状部材を具備しなければ、蛇腹部の折り畳み部分に滞留した気泡が纏まって、塊として一気に上昇する虞がある。そして、この上昇した気泡の塊で超音波が散乱し、探傷精度が低下する虞がある。しかしながら、上記の好ましい構成のように、接触媒質滞留部が筒状部材を具備すれば、接触媒質中の気泡が纏まって塊となる前に、筒状部材の内面に沿って気泡が逐次上昇し易いため、探傷精度の低下を回避し得ることが期待できる。
【0014】
好ましくは、前記接触媒質滞留部本体は、上下方向周りの所定の円弧の接線方向に接触媒質を供給するための接触媒質供給口と、前記円弧の接線方向に接触媒質を排出するための接触媒質排出口とを具備する。
【0015】
斯かる好ましい構成によれば、接触媒質供給口から上下方向周りの所定の円弧の接線方向に接触媒質が供給されるため、接触媒質滞留部本体の内部に、接触媒質の渦流が生じることになる。そして、この渦流によって、接触媒質中に含まれ得る汚れ(例えば、管が鋼管である場合、この鋼管表面に付着したスケールの落下物等)が接触媒質排出口に運ばれ、外部に排出されることになる。このため、接触媒質滞留部本体、ひいては接触媒質滞留部全体や超音波探触子の洗浄を探傷中に行うことが可能となり、メンテナンス性が向上するという利点が得られる。また、前記渦流によって、探傷精度に影響を及ぼし得る気泡が超音波探触子の超音波送受信面に付着し難くなるという利点も得られる。
【0016】
ここで、自動超音波探傷装置には、探傷の安定性を確保するために、図6に示すように、探傷前に予め管を接触媒質に浸す予浸装置が設けられるのが一般的である。図6に示す超音波探傷装置は、超音波探触子を管の周方向に回転させる超音波探傷機を備え、管を周方向に回転させずに軸方向(図6の一点鎖線の方向)に移動させて探傷を行う構成である。図6に示す超音波探傷装置では、管を周方向に回転させないため、超音波探傷機の前段(管の移動方向上流側)に設置される予浸装置は、管の周方向全体に接触媒質を噴出する構成とする必要があり、必然的に大型化する。一方、本発明に係る超音波探傷装置は、超音波探触子が収納された探触子ホルダーを周方向に回転する管に追従させて探傷する構成であり、探触子ホルダーを管の周方向に回転させるための機構部等が不要であるため、予浸装置以外の構成を比較的小型化することが可能である。しかしながら、図6に示すような大型の予浸装置を本発明に適用すると、予浸装置以外の構成を小型化できる利点(必要な設置スペースが少なくて済む等の利点)が薄れてしまう。従って、本発明に係る超音波探傷装置が予浸装置を備える場合、予浸装置を含めた超音波探傷装置全体を小型化するには、接触媒質を噴出する予浸装置を探触子ホルダーに取り付け、周方向に回転する管に探触子ホルダーと共に追従させることが好ましい。
【0017】
すなわち、好ましくは、本発明に係る超音波探傷装置は、前記探触子ホルダーに取り付けられた予浸装置と、制御装置とを更に備え、前記制御装置は、前記探触子ホルダーを周方向に回転する前記管の軸方向に沿って前記管に対して相対的に往復動させ、前記探触子ホルダーが前記管の端部の探傷範囲を往動する際には、前記予浸装置から接触媒質を前記管に向けて噴出し、前記探触子ホルダーが前記管の端部の探傷範囲を復動しながら超音波探傷する際には、前記予浸装置からの接触媒質の噴出を停止する。
【0018】
斯かる好ましい構成によれば、接触媒質を管に向けて噴出する予浸装置が探触子ホルダーに取り付けられ、周方向に回転する管に探触子ホルダーと共に追従するため、小型の予浸装置で且つ少量の接触媒質で、管の周方向全体を効率良く予浸することが可能である。また、探触子ホルダーが管端部の探傷範囲を往動する際にのみ予浸装置から接触媒質を管に向けて噴出するため、管の内面に接触媒質が侵入し難く、探触子ホルダーが管端部の探傷範囲を復動する際に安定した探傷が可能である。
【0019】
好ましくは、前記制御装置は、前記探触子ホルダーが前記管の端部の探傷範囲を往動する際には、前記接触媒質噴出ノズルから接触媒質を前記超音波探触子の超音波送受信面に向けて噴出し、前記探触子ホルダーが前記管の端部の探傷範囲を復動しながら超音波探傷する際には、前記接触媒質噴出ノズルからの接触媒質の噴出を停止する。
【0020】
斯かる好ましい構成によれば、探触子ホルダーが管端部の探傷範囲を往動する際には、接触媒質噴出ノズルから噴出された接触媒質によって超音波探触子の超音波送受信面に付着した気泡が除去される一方、探触子ホルダーが管端部の探傷範囲を復動しながら超音波探傷する際には、接触媒質噴出ノズルからの接触媒質の噴出が停止されるため、接触媒質の膜が乱されることなく、安定した探傷が可能である。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る管端部の超音波探傷装置によれば、管端部と超音波探触子との間に接触媒質を安定して介在させることにより、精度の良い超音波探傷が可能となる。また、超音波探触子の超音波送受信面に付着した気泡が剥離、除去され易く、精度の良い超音波探傷が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、管中央部を超音波探傷する際に用いられる装置構成を模式的に示す図である。図1(a)は側面図を、図1(b)は正面視断面図を示す。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係る超音波探傷装置の正面視断面図を示す。
【図3】図3は、図2に示す超音波探傷装置の平面図を示す。
【図4】図4は、図2に示す筒状部材の作用を説明するための正面視断面図である。
【図5】図5は、図2及び図3に示す超音波探傷装置によって、管端部に設けた人工きずを探傷した結果の一例を示す図である。図5(a)は軸方向きず検出用の超音波探触子で得られた探傷チャートを、図5(b)は人工きずの模式図を示す。
【図6】図6は、予浸装置を備えた従来の超音波探傷装置の概略構成を模式的に示す図である。
【図7】図7は、予浸装置を備えた本発明の変形例に係る超音波探傷装置の概略構成及び動作を模式的に示す図である。図7(a)は予浸時の動作を説明する図を、図7(b)は探傷時の動作を説明する図を、図7(c)は予浸装置の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る超音波探傷装置の正面視断面図を示す。図3は、図2に示す超音波探傷装置の平面図を示す。
図2又は図3に示すように、本実施形態に係る超音波探傷装置100は、水平方向に配置された管Pの端部の下方に対向配置され、管Pの端部に向けて超音波を送受信する超音波探触子1と、管Pの端部の下方に対向配置され、超音波探触子1が収納されると共に、周方向に回転する管Pに追従する探触子ホルダー2とを備える。
【0024】
管Pはターニングローラ3上に載置されており、ターニングローラ3が回転することにより、管Pは周方向に回転する。探触子ホルダー2は、ターニングローラ3から突出した管Pの端部の下方に対向配置されている。
【0025】
本実施形態に係る超音波探傷装置100は、超音波探触子1として、超音波探触子1Aと、超音波探触子1B(2個)と、超音波探触子1C(2個)とを備える。超音波探触子1Aは、管Pの肉厚方向に超音波を伝搬させることにより、ラミネーション(管Pの内外面に平行な面状のきず)を検出することを目的としている。超音波探触子1Bは、管Pの周方向に傾けて設置され、管Pの周方向に超音波を伝搬させることにより、軸方向きず(管Pの軸方向に延びるきず)を検出することを目的としている。超音波探触子1Cは、管Pの軸方向に傾けて設置され、管Pの軸方向に超音波を伝搬させることにより、周方向きず(管Pの周方向に延びるきず)を検出することを目的としている。探触子ホルダー2が管Pに追従する位置において、これら超音波探触子1A〜1Cは、それぞれから送信した超音波の管Pへの入射点が略一致するように探触子ホルダー内で位置決めされている。
【0026】
本実施形態の探触子ホルダー2は、前述のように、周方向に回転する管Pに追従するように構成されている。具体的には、探触子ホルダー2が追従装置(図示せず)に取り付けられている。この追従装置は、回転する管Pの外面の変位を測定した結果に基づき、上下方向及び水平方向についての探触子ホルダー2と管Pとの位置関係が一定となる(従って、探触子ホルダー2に収納された超音波探触子1と管Pとの位置関係も一定となる)ように、探触子ホルダー2を上下方向及び水平方向に移動させる。換言すれば、追従装置は、管Pへの追従を開始する時点での探触子ホルダー2の位置(初期位置)と管Pとの位置関係を一定に保つように(従って、探触子ホルダーPに収納された超音波探触子1A〜1Cと管Pとの位置関係を一定に保つように)、探触子ホルダー2の位置を制御する。このような追従装置としては、特に限定されるものではなく、種々の公知の追従装置を適用可能であるが、例えば、特許文献1に記載の追従装置を適用することが好ましい。
【0027】
探触子ホルダー2は、超音波探触子1と管Pの端部との間の空隙を囲繞して、内部に水等の接触媒質Wを滞留させるための接触媒質滞留部を具備する。本実施形態では、探触子ホルダー2全体が接触媒質滞留部としての機能を奏するため、以下の説明では、接触媒質滞留部に探触子ホルダー2と同一の符号を使用する。
【0028】
接触媒質滞留部2は、接触媒質滞留部本体21と、環状(本実施形態では円環状)の蛇腹部22と、環状(本実施形態では円環状)のスペーサ23とを具備する。また、本実施形態の接触媒質滞留部2は、好ましい構成として、筒状(本実施形態では円筒状)部材24を具備する。
【0029】
本実施形態の接触媒質滞留部本体21は、接触媒質供給口211(本実施形態では4つ)と、接触媒質排出口212(本実施形態では2つ)とを具備する。接触媒質滞留部本体21の内部には、接触媒質供給口211から接触媒質Wが供給される一方、接触媒質Wは接触媒質排出口212から排出される。接触媒質供給口211から供給する接触媒質Wの流量(4つの接触媒質供給口211から供給する総流量)の方が、接触媒質排出口212から排出する接触媒質Wの流量(2つの接触媒質排出口212から排出する総流量)よりも大きく設定されている。例えば、接触媒質排出口212から排出する接触媒質Wの流量は、接触媒質供給口211から供給する接触媒質Wの流量の10〜15%程度に設定される。このため、接触媒質滞留部本体21には、接触媒質Wが滞留することになる。
【0030】
本実施形態では、好ましい構成として、接触媒質供給口211が上下方向周りの所定の円弧の接線方向に接触媒質Wを供給するように配置されている。具体的には、接触媒質供給口211が前記円弧の接線方向に延びている。また、接触媒質排出口212が前記円弧の接線方向に接触媒質Wを排出するように配置されている。具体的には、接触媒質排出口212が前記円弧の接線方向に延びている。接触媒質供給口211から前記円弧の接線方向に接触媒質Wが供給されることにより、接触媒質滞留部本体21の内部に、接触媒質Wの渦流W1が生じる。そして、この渦流W1によって、接触媒質W中に含まれ得る汚れ(例えば、管Pが鋼管である場合、この鋼管表面に付着したスケールSの落下物等)が接触媒質排出口212に運ばれ、外部に排出されることになる。このため、接触媒質滞留部本体21、ひいては接触媒質滞留部2全体や超音波探触子1の洗浄を探傷中に行うことが可能となり、メンテナンス性が向上するという利点が得られる。また、渦流W1によって、探傷精度に影響を及ぼし得る気泡が超音波探触子1の超音波送受信面に付着し難くなるという利点も得られる。
【0031】
なお、接触媒質供給口211から供給する接触媒質Wの流量は、2リットル/分〜6リットル/分程度に調整することが好ましい。このとき、接触媒質排出口212から排出する接触媒質Wの流量は、上記供給する流量の10〜15%程度であり、1リットル/分未満となる。接触媒質Wの流量が2リットル/分未満であると、流量不足によって、接触媒質Wがスペーサ23の上面を超えて盛り上がることにより形成される膜W2を形成し難くなるからである。また、接触媒質Wの流量が6リットル/分を超えると、流量過多によって、スペーサ23の上面を超えて盛り上がった接触媒質の膜W2が乱れる虞が高まるからである。接触媒質供給口211から供給する接触媒質Wの流量を上記の範囲に設定し、なお且つ、後述するように、スペーサ23の内径Dsを管Pの外径Dpに対して25%以上に設定することにより、接触媒質の膜W2の厚みを2〜3mm程度に制御することが可能である。
【0032】
また、本実施形態の接触媒質滞留部本体21は、各超音波探触子1A〜1Cの超音波送受信面に向けて水等の接触媒質Wを噴出する接触媒質噴出ノズル213を具備する。本実施形態では、接触媒質噴出ノズル213として、一方の超音波探触子1Bの超音波送受信面に向けて接触媒質Wを噴出する接触媒質噴出ノズル213Aと、他方の超音波探触子1Bの超音波送受信面に向けて接触媒質Wを噴出する接触媒質噴出ノズル213Bと、一方の超音波探触子1Cの超音波送受信面に向けて接触媒質Wを噴出する接触媒質噴出ノズル213Cと、他方の超音波探触子1Cの超音波送受信面に向けて接触媒質Wを噴出する接触媒質噴出ノズル213Dとが設けられている。各接触媒質噴出ノズル213A〜213Dは、超音波探触子1Aの超音波送受信面に向けて接触媒質Wを噴出する機能も奏する。
本実施形態の接触媒質噴出ノズル213から超音波探触子1A〜1Dの超音波送受信面に向けて接触媒質Wが噴出されるため、超音波探触子1A〜1Dの超音波送受信面に付着した気泡が剥離、除去され易く、精度の良い超音波探傷が可能となる。また、接触媒質噴出ノズル213から接触媒質Wを噴出するだけで付着した気泡を効率良く除去させることができるため、本実施形態に係る超音波探傷装置100をオンラインで使用し易いという利点も得られる。
なお、接触媒質噴出ノズル213から噴出する接触媒質Wの流量は、接触媒質供給口211から供給する接触媒質Wの流量よりも大きくなるように調整する、具体的には16リットル/分〜18リットル/分程度に調整することが好ましい。接触媒質噴出ノズル213から噴出する接触媒質Wの流量を16リットル/分以上に大きく設定することにより、超音波探触子1A〜1Dの超音波送受信面に付着した気泡を効率良く剥離、除去し易い。一方、接触媒質噴出ノズル213から噴出する接触媒質Wの流量を過度に大きく設定すると、超音波探触子1A〜1Dの超音波送受信面が損傷する虞があるため、18リットル/分以下に設定することが好ましい。
【0033】
本実施形態の蛇腹部22は、接触媒質滞留部本体21と連通するように接触媒質滞留部本体21の上側に取り付けられ、上下方向に伸縮自在である。具体的には、接触媒質滞留部本体21の上面には開口(本実施形態では円形の開口)が設けられており、この開口を囲繞するように環状の蛇腹部22が取り付けられている。蛇腹部22の最内径は、前記開口の径と略同一(同一又は若干小さめ)の寸法とされている。
【0034】
蛇腹部22を形成する材料は、特に限定されるものではないが、耐摩耗性と伸縮性に優れた材料を用いることが好ましい。耐摩耗性に優れることは、蛇腹部22が伸縮を繰り返すことにより、蛇腹部22の折り畳み部分に破損が生じることを抑制するために有用である。伸縮性に優れることは、管Pとスペーサ23との接触による衝撃が接触媒質の膜W2に直接伝わって、膜W2が乱れることを抑制するために有用である。蛇腹部22を形成する材料としては、耐摩耗性と伸縮性に優れる点で、シリコンゴムを用いることが好ましい。
【0035】
本実施形態のスペーサ23は、蛇腹部22の上側に取り付けられ、少なくとも上面が(本実施形態では下面も)平坦な水平面とされている。また、本実施形態の筒状部材24は、スペーサ23の下面に取り付けられ、蛇腹部22の内部に嵌め込まれている。具体的には、筒状部材24が蛇腹部22の内部に嵌め込まれるように、筒状部材24の外径は蛇腹部22の最内径と略同一(同一又は若干小さめ)の寸法とされている。これにより、筒状部材24の外径は、接触媒質滞留部本体21の上面に設けられた開口の径と略同一(同一又は若干小さめ)となる。従って、蛇腹部22が収縮することによって、蛇腹部22に取り付けられたスペーサ23が下降し、これに伴い筒状部材24も下降したとき、筒状部材24の下端部は、接触媒質滞留部本体21の上記開口を通って、接触媒質滞留部本体21の内部に挿入されることになる。スペーサ23は、鋼管Pの端部と接触する頻度が高いことから、耐摩耗性に優れたステンレス鋼から形成することが好ましい。より好ましくは、スペーサ23及び筒状部材24は、ステンレス鋼から一体的に形成される。
【0036】
スペーサ23の蛇腹部22への取り付け方法としては、蛇腹部22の上部とスペーサ23とをビス止め等によって直接固定する方法でもよい。しかしながら、本実施形態のスペーサ23には、筒状部材24が取り付けられ、この筒状部材24が蛇腹部22の内部に嵌め込まれる。このため、スペーサ23と蛇腹部22とを直接固定しなくても、スペーサ23は、筒状部材24を介して、蛇腹部22に比較的安定した状態で取り付けられる。
【0037】
図4は、本実施形態の筒状部材24の作用を説明するための正面視断面図である。図4において、一点鎖線Cよりも左側は筒状部材24を具備しない状態を、一点鎖線Cよりも右側は筒状部材24を具備する状態を示す。図4に示すように、本実施形態の接触媒質滞留部2は、筒状部材24を具備するため、接触媒質W中の気泡Bが、蛇腹部22の折り畳み部分221に到達することなく、筒状部材24の内面に沿って上昇し易くなる。仮に、接触媒質滞留部2が、この筒状部材4を具備しなければ、蛇腹部22の折り畳み部分221に滞留した気泡Bが纏まって、塊として一気に上昇する虞がある。そして、この上昇した気泡Bの塊で超音波が散乱し、探傷精度が低下する虞がある。しかしながら、接触媒質滞留部2が筒状部材24を具備すれば、接触媒質W中の気泡Bが纏まって塊となる前に、筒状部材4の内面に沿って気泡Bが逐次上昇し易いため、探傷精度の低下を回避し得ることが期待できる。
【0038】
図2に示すスペーサ23の内径Dsは、管Pの外径Dpに対して25%以上に設定することが好ましい。スペーサ23の内径Dsが管Pの外径Dpに対して小さすぎる(25%未満である)と、管Pの外面によってスペーサ23の開口が閉塞され易くなる(スペーサ23の開口に対して管Pの外面が面接触しているのと近い状態になる)ため、接触媒質W2の膜が乱れる虞が高まるからである。ただし、スペーサ23の内径Dsが大きすぎると、これに応じて探触子ホルダー(接触媒質滞留部)2の寸法も大きくなるため、内部に滞留する接触媒質Wの重量を含んだ探触子ホルダー2全体の重量が増し、探触子ホルダー2の追従性能が低下する虞がある。従って、スペーサ23の内径Dsを過度に大きく設定しないように留意する必要がある。
【0039】
以上に説明した本実施形態に係る超音波探傷装置100において、接触媒質滞留部本体21に接触媒質Wが供給されると、接触媒質滞留部本体21に連通する蛇腹部22に接触媒質Wが流通する。この蛇腹部22に流通した接触媒質Wは、蛇腹部22に取り付けられたスペーサ23に流通して、管Pの端部に接触することになる。
【0040】
スペーサ23は、少なくとも上面が平坦な水平面とされているため、接触媒質滞留部本体21に供給する接触媒質Wの流量を前述したような適切な範囲に調整することにより、接触媒質Wの表面張力によって接触媒質Wがスペーサ23の上面を超えて盛り上がった膜W2が形成される。この接触媒質の膜W2が管Pの端部に接触することにより、超音波探触子1から送信された超音波は、接触媒質滞留部本体21内部の接触媒質W、蛇腹部22内部の接触媒質W、及び前記膜W2を介して管Pの端部に入射する。管Pの端部で反射した超音波は、前記膜W2、蛇腹部22内部の接触媒質W、及び接触媒質滞留部本体21内部の接触媒質Wを介して超音波探触子1で受信される。
【0041】
探触子ホルダー2は、周方向に回転する管Pに追従する。さらに、蛇腹部22は上下方向に伸縮する。このため、管Pに曲がりが生じていたり、管Pの断面が真円でなかったとしても、接触媒質の膜W2は、常に管Pの端部に接触し、且つ、乱れることが抑制されるため、管Pの端部と超音波探触子1との間に接触媒質W(膜W2も含む)が安定して介在することになる。これにより、精度の良い超音波探傷が可能となる。
【0042】
図5は、本実施形態に係る超音波探傷装置100によって、以下の(1)〜(6)の条件で、管Pの端部外面に設けた人工きず(軸方向きず)を探傷した結果の一例を示す図である。図5(a)は軸方向きず検出用の超音波探触子1Bで得られた探傷チャートを、図5(b)は人工きずの模式図を示す。図5(a)の横軸は管Pの軸方向の位置を、縦軸はエコー強度を意味する。
(1)管Pの外径:168mm
(2)管Pの回転速度:113rpm
(3)探触子ホルダー2の管軸方向への移動速度:15.1mm/sec
(4)スペーサ23の内径Ds:63mm
(5)供給する接触媒質(水)の流量:5.5リットル/分
(6)排出する接触媒質(水)の流量:1リットル/分未満
【0043】
図5(a)から分かるように、本実施形態に係る超音波探傷装置100によれば、管端部と超音波探触子との間に接触媒質を安定して介在させることができ、人工きずを精度良く検出可能であった。なお、図5には、軸方向きずを探傷した結果のみを図示したが、人工きずとして、周方向きずを設けて探傷した場合には超音波探触子1Cで、平底穴を設けて探傷した場合には超音波探触子1Aで、それぞれ精度良く検出可能であることが確認できた。
【0044】
<変形例>
なお、本実施形態に係る超音波探傷装置100は、探傷の安定性を確保するために、予浸装置を備えることが好ましい。
図7は、予浸装置を備えた本実施形態の第1変形例に係る超音波探傷装置の概略構成及び動作を模式的に示す図である。図7(a)は予浸時の動作を説明する図を、図7(b)は探傷時の動作を説明する図を、図7(c)は予浸装置の断面図を示す。
図7に示すように、本変形例に係る超音波探傷装置100Aは、前述した超音波探傷装置100の構成に加えて、予浸装置4と、制御装置5とを備えている。また、好ましい構成として、超音波探傷装置100Aは、管端検知センサ6を備えている。
【0045】
本変形例の予浸装置4及び管端検知センサ6は、探触子ホルダー2に設けられた基台21(図7(a)に示す待機位置にある探触子ホルダー2を参照。図7中の他の探触子ホルダー2については基台21の図示を省略している)に取り付けられている。管端検知センサ6は、予浸装置4に対して、図7(a)に示す探触子ホルダー2の往動方向上流側の位置に取り付けられている。これら予浸装置4及び管端検知センサ6は、探触子ホルダー2と共に管Pに追従する。
本変形例の予浸装置4は、図7(c)に示すように、金属製のブラシ41と、ブラシ41の周囲を被覆するゴム製の被覆材42と、被覆材42の内部ひいてはブラシ41を構成する線材の隙間に接触媒質Wを供給するホース43とを備えている。被覆材42は上端が開口し、下端がホース43と連通している。
本変形例の管端検知センサ6としては、投光器及び受光器を備えた反射型の光電センサが用いられている。すなわち、管端検知センサ6は、投光器から出射した光が管Pに照射されて管Pで反射する場合には、管Pに照射されない場合に比べて受光器に入射する光量が多くなることを利用して、管端を検知する構成である。
【0046】
本変形例の制御装置5は、探触子ホルダー2及び追従装置(図示せず)を一体として、これらを上下方向及び管Pの軸方向に沿って往復動させるためのステージ(図示せず)を駆動する機能と、管端検知センサ6による管Pの管端検知に応じて予浸装置4を駆動する(具体的には、接触媒質Wの供給源とホース43との間に介在する電磁弁等を制御してホース43への接触媒質Wの供給をオン・オフさせる)機能とを奏する。また、本変形例の制御装置5は、前述した接触媒質噴出ノズル213を駆動する(具体的には、接触媒質Wの供給源と接触媒質噴出ノズル213との間に介在する電磁弁等を制御して接触媒質噴出ノズル213への接触媒質Wの供給をオン・オフさせる)機能も奏する。
【0047】
以下、上記の構成を有する超音波探傷装置100Aの動作について説明する。
図7(a)に示す予浸時において、制御装置5は、前記ステージを駆動して、管Pの管端から離れた待機位置にある探触子ホルダー2を徐々に上昇させると同時に、周方向に回転する管Pの軸方向に沿って探触子ホルダー2を往動(図7に示す例では、管Pの管端側から管中央側に向けた移動)させる。なお、制御装置5は、前記ステージの駆動を開始するタイミングで、接触媒質噴出ノズル213への接触媒質Wの供給を開始させる。これにより、接触媒質噴出ノズル213から超音波探触子1の超音波送受信面に向けて接触媒質Wが噴出し、超音波探触子1の超音波送受信面に付着した気泡が剥離、除去されることになる。制御装置5は、予め設定した予浸装置4のブラシ41の先端(上端)が管Pの外面に接触し得る高さで探触子ホルダー2の上昇動作を停止させ、その後は探触子ホルダー2を管Pの軸方向に沿って往動させる。この際、制御装置5は、管端検知センサ6が管Pの管端を検知したタイミングで、予浸装置4のホース43への接触媒質Wの供給を開始させる。これにより、予浸装置4のブラシ41を構成する線材の隙間から管Pに向けて接触媒質Wが噴出する。このように予浸装置4から管Pに向けて接触媒質Wを噴出した状態で、探触子ホルダー2は追従装置によって管Pに追従しながら、管Pの軸方向に沿って予め設定した探傷開始位置まで往動する。管Pの端部の探傷範囲の内、予浸装置4が通過する範囲については、予浸装置4から噴出する接触媒質Wによって予浸がなされる。上記以外の範囲については、接触媒質の膜W2によって予浸がなされることになる。
【0048】
図7(b)に示す探傷時において、制御装置5は、前記ステージを駆動して、探傷開始位置にある探触子ホルダー2を復動(図7に示す例では、管Pの管中央側から管端側に向けた移動)させる。この際、制御装置5は、予浸装置4のホース43への接触媒質Wの供給を停止させる。また、この際、制御装置5は、接触媒質噴出ノズル213への接触媒質Wの供給を停止させる。探触子ホルダー2は追従装置によって管Pに追従しながら、管Pの軸方向に沿って探傷開始位置から予め設定した探傷終了位置まで復動し、この間で超音波探傷を行う。超音波探傷終了後、制御装置5は、管Pの軸方向に沿って更に探触子ホルダー2を復動させると同時に、待機位置まで探触子ホルダー2を徐々に下降させる。
【0049】
以上に説明した超音波探傷装置100Aによれば、接触媒質Wを管Pに向けて噴出する予浸装置4が探触子ホルダー2に取り付けられ、周方向に回転する管Pに探触子ホルダー2と共に追従するため、小型の予浸装置4で且つ少量の接触媒質Wで、管Pの周方向全体を効率良く予浸することが可能である。また、探触子ホルダー2が管端部の探傷範囲を往動する際にのみ予浸装置4から接触媒質Wを管Pに向けて噴出(しかも、本変形例では、予浸装置4に対して探触子ホルダー2の往動方向上流側の位置に取り付けられた管端検知センサ6が管Pの管端を検知したタイミング以降で接触媒質Wを噴出)するため、管Pの内面に接触媒質Wが侵入し難く、探触子ホルダー2が管端部の探傷範囲を復動する際に安定した探傷が可能である。また、本変形例では、予浸装置4がブラシ41を備え、ブラシ41が管Pの外面に接触しながら(管Pの周方向及び軸方向に沿って管Pの外面を摺動しながら)予浸を行う構成である。つまり、ブラシ41によって管Pの外面に接触媒質Wを塗布する構成であるため、より一層効率良く予浸することが可能であると共に、探傷精度に影響を及ぼし得る管Pの外面の汚れを効率良く除去することも可能である。さらに、本変形例では、探触子ホルダー2が管端部の探傷範囲を往動する際には、接触媒質噴出ノズル213から噴出された接触媒質Wによって超音波探触子1の超音波送受信面に付着した気泡が除去される一方、探触子ホルダー2が管端部の探傷範囲を復動しながら超音波探傷する際には、接触媒質噴出ノズル213からの接触媒質の噴出が停止されるため、接触媒質の膜W2が乱されることなく、安定した探傷が可能である。
【0050】
なお、本変形例では、管端を確実に検知するために好ましい構成として、管端検知センサ6を備える構成について説明したが、管Pの予浸を行う上で管端検知センサ6は必ずしも必要ではない。つまり、管Pの管端位置(管Pの軸方向に沿った位置)がいずれの管Pについてもほぼ一定であるとみなせる場合には、図7(a)に示す管端検知位置に相当する位置を制御装置5に予め設定しておけばよい。そして、この予め設定した位置に探触子ホルダー2が到達したタイミングで予浸装置4のホース43への接触媒質Wの供給を開始させればよい。
また、本変形例では、探触子ホルダー2を管Pの管端側から管中央側に向けて移動させるときに予浸を行い、探触子ホルダー2を管Pの管中央側から管端側に向けて移動させるときに探傷を行う構成について説明したが、逆に、探触子ホルダー2を管Pの管中央側から管端側に向けて移動させるときに予浸を行い、探触子ホルダー2を管Pの管端側から管中央側に向けて移動させるときに探傷を行う構成とすることも可能である。接触媒質噴出ノズル213からの接触媒質Wの噴出についても同様である。
【符号の説明】
【0051】
1・・・超音波探触子
2・・・探触子ホルダー(接触媒質滞留部)
21・・・接触媒質滞留部本体
22・・・蛇腹部
23・・・スペーサ
24・・・筒状部材
211・・・接触媒質供給口
212・・・接触媒質排出口
213・・・接触媒質噴出ノズル
P・・・管
W・・・接触媒質
W2・・・接触媒質の膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に配置された管の端部の下方に対向配置され、前記管の端部に向けて超音波を送受信する超音波探触子と、
前記管の端部の下方に対向配置され、前記超音波探触子が収納されると共に、周方向に回転する前記管に追従する探触子ホルダーとを備え、
前記探触子ホルダーは、前記超音波探触子と前記管の端部との間の空隙を囲繞して、内部に接触媒質を滞留させるための接触媒質滞留部を具備し、
前記接触媒質滞留部は、
内部に接触媒質が供給される接触媒質滞留部本体と、
前記接触媒質滞留部本体と連通するように前記接触媒質滞留部本体の上側に取り付けられ、上下方向に伸縮自在の環状の蛇腹部と、
前記蛇腹部の上側に取り付けられ、少なくとも上面が平坦な水平面とされた環状のスペーサとを具備し、
前記接触媒質滞留部本体は、前記超音波探触子の超音波送受信面に向けて接触媒質を噴出する接触媒質噴出ノズルを具備することを特徴とする管端部の超音波探傷装置。
【請求項2】
前記接触媒質滞留部は、前記スペーサの下面に取り付けられ、前記蛇腹部の内部に嵌め込まれる筒状部材を更に具備することを特徴とする請求項1に記載の管端部の超音波探傷装置。
【請求項3】
前記接触媒質滞留部本体は、上下方向周りの所定の円弧の接線方向に接触媒質を供給するための接触媒質供給口と、前記円弧の接線方向に接触媒質を排出するための接触媒質排出口とを具備することを特徴とする請求項1又は2に記載の管端部の超音波探傷装置。
【請求項4】
前記探触子ホルダーに取り付けられた予浸装置と、制御装置とを更に備え、
前記制御装置は、前記探触子ホルダーを周方向に回転する前記管の軸方向に沿って前記管に対して相対的に往復動させ、前記探触子ホルダーが前記管の端部の探傷範囲を往動する際には、前記予浸装置から接触媒質を前記管に向けて噴出し、前記探触子ホルダーが前記管の端部の探傷範囲を復動しながら超音波探傷する際には、前記予浸装置からの接触媒質の噴出を停止することを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の管端部の超音波探傷装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記探触子ホルダーが前記管の端部の探傷範囲を往動する際には、前記接触媒質噴出ノズルから接触媒質を前記超音波探触子の超音波送受信面に向けて噴出し、前記探触子ホルダーが前記管の端部の探傷範囲を復動しながら超音波探傷する際には、前記接触媒質噴出ノズルからの接触媒質の噴出を停止することを特徴とする請求項4に記載の管端部の超音波探傷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−58077(P2012−58077A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201606(P2010−201606)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】