説明

管端防食構造

【課題】切管の管端部に嵌められた防食コアの固定を確実に行う。
【解決手段】管端部10aに防食コア11が嵌められ、防食コア11に断面コの字状の固定具20が嵌め合わせられ、固定具20の管軸方向に延びる一対の挟持部22、23により、防食コア11を管端部10aの径方向内外側から挟む。固定具20の挟持部22、23が工具の加締めにより形成された管軸方向へ延びる凹部22b、23bを有し、凹部22b、23bにより防食コア11を管端部10aに押し付けるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水道などの各種管路を構成する金属管挿し口に取り付けられる管端防食コアなどを固定するようにした管端防食構造およびその管端防食方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ダクタイル鋳鉄管を地中に埋設して管路を布設する際に、管全体に亘って塗装やライニングによって防食を行い、図12に示すように、先行する管1の受け口1aに後続管2の挿し口2aを挿入して継合されるのが一般的である。このとき、同図に示すように、耐震性を付与したNS形継手にあっては、受け口1a内面にロックリング3を設け、同図鎖線のごとく、このロックリング3を突起4が乗り越えて挿し口2aを挿入する。図中、5はパッキング、6はライニングである。
【0003】
この管路の布設において、常に定寸法な管による継合だけでは留まらず、工事現場で所定の長さになるように後続管2を切断して継合しなければならない場合がある。このように途中で後続管2を切断すると、切断面となる管端面は塗装が剥離して地肌が露出するために、防食機能が損なわれ赤水などの発生を招くことになる。
【0004】
そのため、一般には、切管後の端面には防食塗装を再度塗布して防食を行うことが行われている。しかし、切管後の端面に防食塗料を塗布して再度防食を行う場合、寒冷時においては乾燥に時間がかかり、また、切替工事などの流水が完全に止まらない個所では、塗布しにくい等の作業しづらい、といった問題がある。
【0005】
このため、切管後の端面に防食用塗料を塗布する以外の方法として、図13、図14に示すように、防食コア7を使用して切管後の鋳鉄管10の管端部10aの露出した部分をシールする方法がある。この防食コア7はゴムなどの弾性体で構成されているので、その弾性によって保持されるが、より確実に固定する方法として、周方向一つ割の開き勝手の固定リング40を用いて防食コア7を内面から拡径力によって固定させるものがある。(特許文献1 参照)
【0006】
この固定リング40は、一端41、他端42を重ね合わせ、その一端41を他端42に形成した長孔43にかけ合わせ、一端41に形成した孔44に、他端42に形成した係止片45を挿し通して、その係止片45を折り返し、その折り返しにより、固定リング40の縮径防止機能を付与したものである。
【0007】
固定リング40による防食コア7の固定の際、管端部10aの内面に環状とした固定リング40をスナップリングプライヤーにより拡張させた状態で保持し、係止片45を折り返す必要があり、その固定に手間がかかる。また、固定リング40を拡張させた状態で保持させることが難しく、固定リング40が傾いたり、座屈させたりする恐れがあり、スナップリングプライヤーの取り扱いに習熟する必要がある。
【0008】
このため、図15に示すように、管端に嵌め合わせた防食コアをコの字状の固定片50で挟んで、管端部10aに押し付けるようにした管端防食構造が提案されている(特許文献2 図17参照)。この固定片50を使用すると、上述の固定リング40を使用する場合と比べて、防食コア7を容易に管端部10aに固定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−286195号 公報
【特許文献2】特開2003−120891号 公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献2に記載のコの字状の固定片50は、帯状の金属板をコの字状に加工したものであり、その管軸方向に延びる挟持部50a、50bが平板状となっている。このため、図16に示すように、環状の防食コア7は、管端部10aの内周側において、挟持部50aの両側縁P、P(管端の周方向の両側縁)によって、管端部10aの外周側においては、挟持部50bの中央(管端の周方向の中央)によって、管端部10aに押し付けられる。
【0011】
防食コア7に対して、挟持部50a及び挟持部50bによる押し付けの位置は、管端部10aの内外周面において周方向にずれており一致していない。このため、固定片50による挟み付けが不十分となり、確実な防食コア7の固定が難しい。
【0012】
そこで、この発明の課題は、切管の管端部に嵌められた防食コアの固定を確実に行い得るようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の課題を解決するために、この発明に係る管端防食構造は、管端部に防食コアが嵌められ、前記防食コアに断面コの字状の固定具が嵌め合わされ、前記固定具の管軸方向に延びる一対の挟持部により、前記防食コアを前記管端部の径方向内外側から挟むようにした管端防食構造であって、前記固定具の挟持部が工具の加締めにより形成された管軸方向に沿って延びる凹部を有し、前記固定具の凹部により前記防食コアが前記管端部に押し付けられるものとしたのである。
【0014】
このようにすると、固定具の両挟持部の凹部が、防食コアを管端部の径方向内外両側から挟み込むので、防食コアが管端に確実に固定される。
【0015】
前記固定具の挟持部が、その内面に前記管端部に向かって突き出す複数の歯を有し、この複数の歯が前記固定具の凹部により押し付けられることにより、前記防食コアに食い込むようにしたものとすることができる。
【0016】
歯を有する固定具を嵌め合わせると、両挟持部の複数の歯が防食コアに食い込み、固定具の位置ずれを防止することができる。
【0017】
また、前記の課題を解決するために、この発明に係る管端防食方法としては、管端部に防食コアを嵌め、前記防食コアに断面コの字状の固定具を嵌め合わせ、前記固定部の管軸方向に延びる一対の挟持部により、前記防食コアを前記管端部の径方向内外側から挟み、前記固定具の一対の挟持部を工具によって加締めて、その挟持部に管軸方向に沿って延びる凹部を形成し、前記固定具の凹部を前記防食コアに押し付けた方法を採用することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、この発明は、固定具の挟持部の凹部が管端部に嵌められた防食コアを管端部の径方向内外側から挟み付けるので、防食コアが確実に固定される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の一実施形態の管端防食構造を示す斜視図
【図2】同上の管端防食構造の要部を示す斜視図
【図3】(a)同上の防食コアを示す正面図、(b)同上の防食コアを示す断面図
【図4】(a)同上の固定具を示す斜視図、(b)同上の固定具を示す正面図、(c)同上の固定具を示す側面図
【図5】同上の管端防食構造の要部を示す径方向断面図
【図6】図5のVI−VI線における断面図
【図7】(a)この発明に係る管端防食方法に使用する工具を示す正面図、(b)同上の管端防食方法に使用する工具を示す側面図
【図8】(a)同上の管端防食方法の防食コアの取付けを示す説明図、(b)同上の固定具の取付けを示す説明図、(c)同上の工具による加締め前の状態を示す説明図、(d)同上の工具による加締め後の状態を示す説明図
【図9】(a)同上の工具による加締め前の状態を示す径方向断面図、(b)同上の工具による加締め状態を示す径方向断面図
【図10】他実施形態の管端防食構造の固定具を示す斜視図、(b)同上の固定具を示す正面図、(c)同上の固定具を示す側面図
【図11】同上の管端防食構造の要部を示す径方向断面図
【図12】管継手部の要部断面図
【図13】管挿し口の要部拡大断面図
【図14】固定リングの取付作用説明図
【図15】従来の管端防食構造を示す斜視図
【図16】同上の要部拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明に係る管端防食構造の一実施形態を図1〜図6に基づいて説明する。
この実施形態は、図1に示すダクタイル鋳鉄管等の鋳鉄管10を切断した管端部10aに防食コア11が嵌め合わされたものに適用される。防食コア11は、エチレンプロピレンゴム(EPR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)製などの弾性体からなる断面コ字状に形成されている(図3(a)、(b)参照)。
【0021】
防食コア11としては、外筒部11aの直径が、管端部10aの外径よりもわずかに小さく、一方、内筒部11bの直径が、管端部10aの内径よりもわずかに大きく形成されている。このため、管端部10aに嵌め合わされた防食コア11は、管端部10aの端面及び内外周面を覆うとともに、これらの面に密着して、管端部10aへの水分、粉塵等の侵入を防止する。
【0022】
管端部10aに嵌め合わされた防食コア11に対して、固定具20が周方向に複数取り付けられている。固定具20は、図4に示すように、矩形帯状の金属板を断面コの字状に加工したものであり、基部21と、その両端から直角に同方向に延びる一対の挟持部22、23とからなる。一対の挟持部22、23の対向する内面には、その先端に山形に突き出した歯22a、23aが一列に並んで形成されている。
【0023】
管端部10aに取り付けられた固定具20は、図1、2に示すように、一対の挟持部22、23に凹部22b、23bが形成されている。凹部22b、23bは、挟持部22、23の中央に基部21側端から先端にわたって管軸方向に沿って延びており、管端部10a側に凹んでいる。
【0024】
固定具20の歯22a、23aは、防食コア11の外筒部11a及び内筒部11bの管軸方向の先端部に食い込んでいる(図6参照)。また、凹部22b、23bは、幅wを有し底部が平坦に形成されており、その底部が防食コア11の外筒部11a、内筒部11bを幅wの範囲で押し付けている(図5参照)。凹部22b、23bの押し付けにより、凹部22b、23bに位置する歯22a、23aが、防食コア11の外筒部11a及び内筒部11bにより深く食い込んでいる。
【0025】
固定具20の凹部22b、23bは、管端部10aに嵌め合わせた防食コア11に、固定具20を取り付けた状態で、図7に示す工具であるプライヤ30の加締めにより形成される。
【0026】
プライヤ30は、一般市販品のプライヤと基本的に同等な構成で、一端にグリップ32、他端に挟持部33を有する一対のプライヤ本体部31を重ね合わせ、軸34を介して連結されたものである。対向する一対のグリップ32及び挟持部33は軸34を中心にして開閉可能となっている。
【0027】
一対の挟持部33、33の対向面に、その先端から軸34に向かって突条33aが中央に形成されている。突条33aは、固定具20の凹部22b、23bの幅wと同じ幅を有している。
【0028】
プライヤ30の一対の挟持部33、33の間に、管端部10aに取り付けた固定具20の挟持部22、23を挟み、一対のグリップ32、32を握ることで、挟持部22、23が加締められ、凹部22b、23bが形成される。
【0029】
プライヤ30の加締めにより形成された凹部22b、23bは、その底部によって防食コア11が管端部10aに押し付けられる。また、図5に示すように、固定具20の挟持部22、23の歯22a、23aが、防食コア11に食い込む。これにより、固定具20により防食コア11が管端部10aに確実に固定され、防食コア11により管端部10aが防食される。
【0030】
固定具20を使用する管端部10aを防食する方法としては、まず、図8(a)に示す切断した鋳鉄管10の管端部10aに防食コア11を管端部10aの端面及び内外面に密着するように嵌め合わせる(図8(b))。
【0031】
続いて、管端部10aに嵌め合わせた防食コア11に、一対の挟持部22、23で径方向内外側から管端部10aを挟むように、固定具20の基部21を管端部10aの端面に押し当てて、固定具20を防食コア11に嵌め合わせる。このとき、図8(c)に示すように、一対の挟持部22、23の複数の歯22a、23aは、防食コア11の外筒部11aと内筒部11bとの端縁に沿ってそれぞれ位置している。また、固定具20は、管端部10aに対して、周方向の複数箇所に等間隔で嵌め合わせる。
【0032】
続いて、図9(a)に示すように、プライヤ30の一対の挟持部33、33の突条33aを、固定具20の挟持部22、23に対して、基部21側端部から先端部にかけて、幅方向中央に位置させる。
【0033】
その後、プライヤ30の一対のグリップ32、32を握り、固定具20の挟持部22、23を加締める(図9(b)参照)。この加締めは、管端部10aの周方向に複数取り付けた固定具20に対して行い、固定具20の挟持部22、23に凹部22b、23bを形成する(図8(d)参照)。
【0034】
この加締めた凹部22b、23bの底部が、防食コア11を管端部10aの径方向内外から挟み付ける。これにより、固定具20の挟持部23は、図9(b)に示すように、幅方向の両端縁Qのみならず、幅方向の中央部分の凹部23bの底部で防食コア11を押し付けるので、管端部10aに対して防食コア11が確実に固定される。
【0035】
この発明に係る管端防食構造の他実施形態を図10、図11に基づいて説明する。
なお、以下においては、前述した一実施形態に係る管端防食構造との相違点のみを述べ、同一に考えられる構成には同符号を用いて、その説明を省略する。
この実施形態における固定具20は、図10に示すように、一対の挟持部22、23に山形の歯22a、23aを有していないものである。
【0036】
固定具20は、管端部10aに嵌め合わせた防食コア11に対して、その一対の挟持部22、23で挟む状態で嵌め合わされ、一対の挟持部22、23には、凹部22b、23bが形成されている(図11参照)。
【0037】
凹部22b、23bは、管端部10aに嵌め合わせた防食コア11に固定具20を取り付けた状態で、プライヤ30の加締めにより形成される。すなわち、プライヤ30の一対の挟持部33、33の間に、管端部10aに取り付けた固定具20の挟持部22、23を挟み、一対のグリップ32、32を握ることで、挟持部22、23が加締められ、凹部22b、23bが形成される。
【0038】
また、この実施形態での固定具20を使用する管端部10aを防食する方法としては、前述した一実施形態における管端部10aを防食する方法と同様である。
【0039】
この方法に基づいて加締められた固定具20の挟持部22、23は、凹部22b、23bの底部が防食コア11を管端部10aの径方向内外側から挟み付ける。これにより、固定具20の挟持部23は、図11に示すように、幅方向の両端縁Rのみならず、幅方向の中央部分の凹部23bの底部で防食コア11を押し付けるので、管端部10aに対して防食コア11が確実に固定される。
【符号の説明】
【0040】
1 管
1a 受け口
2 後続管
2a 挿し口
3 ロックリング
4 突起
5 パッキング
6 ライニング
7 防食コア
10 鋳鉄管
10a 管端部
11 防食コア
11a 外筒部
11b 内筒部
20 固定具
21 基部
22、23 挟持部
22a、23a 歯
22b、23b 凹部
30 プライヤ
31 プライヤ本体部
32 グリップ
33 挟持部
33a 突条
34 軸
40 固定リング
41 一端
42 他端
43 長孔
44 孔
45 係止片
50 固定片
50a、50b 挟持部
P 固定片の挟持部の両側縁
Q、R 固定具の挟持部の両側縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管端部(10a)に防食コア(11)が嵌められ、前記防食コア(11)に断面コの字状の固定具(20)が嵌め合わされ、前記固定具(20)の管軸方向に延びる一対の挟持部(22、23)により、前記防食コア(11)を前記管端部(10a)の径方向内外側から挟むようにした管端防食構造であって、前記固定具(20)の挟持部(22、23)が工具の加締めにより形成された管軸方向に沿って延びる凹部(22b、23b)を有し、前記固定具(20)の凹部(22b、23b)により前記防食コア(11)が前記管端部(10a)に押し付けられるようにした管端防食構造。
【請求項2】
前記固定具(20)の挟持部(22、23)が、その内面に前記管端部(10a)に向かって突き出す複数の歯(22a、23a)を有し、この複数の歯(22a、23a)が前記固定具(20)の凹部(22b、23b)により押し付けられることにより、前記防食コア(11)に食い込むようにした請求項1に記載の管端防食構造。
【請求項3】
管端部(10a)に防食コア(11)を嵌め、前記防食コア(11)に断面コの字状の固定具(20)を嵌め合わせ、前記固定部(20)の管軸方向に延びる一対の挟持部(22、23)により、前記防食コア(11)を前記管端部(10a)の径方向内外側から挟むようにして、前記固定具(20)の一対の挟持部(22、23)を工具によって加締めて、その挟持部(22、23)に管軸方向に沿って延びる凹部(22b、23b)を形成し、前記固定具(20)の凹部(22b、23b)を前記防食コア(11)に押し付ける管端防食方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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